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カバードボンド購入の規模感 ~年間900億ユーロのペースに相当
EU Trends カバードボンド購入の規模感 発表日:2014年10月28日(火) ~年間900億ユーロのペースに相当~ 第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト 田中 理 03-5221-4527 ◇ ECBのカバードボンドの購入額は第1週目で17億ユーロ。過去の買い入れ時と比べて大きく、市場 の失望を招かないよう、スタートダッシュを演出した可能性がある。 ◇ このままのペースが続けば1年後の買い入れ規模は900億ユーロ。主要調査機関の予測中央値では 1,500億ユーロのカバードボンドの買い入れを予想。バランスシート拡大の高い期待値には届かず、社 債や国債購入開始への期待が高まろう。 ECBが20日に開始したカバードボンド購入プログラム第3弾(CBPP3)の第1週目の購入金額が27日に 公表された。24日時点の購入残高は17億ユーロ。過去2回の購入プログラム(CBPP1とCBPP2)では、第1 週目の購入金額が各々6,600万ユーロ、1,100万ユーロ、第2週目の購入金額が各々10億ユーロ、4億ユー ロだった(図表1)。プログラムの開始当初としては、過去に比べて大胆な買い入れを行ったことになる。 9月18日のTLTRO第1弾の利用額が不発に終わり、カバードボンドの買い入れ規模も小額に留まれば、 「ECBのバランスシートを2012年初の水準に向けて拡大する」とのドラギ総裁の発言の実現可能性が疑 われかねない。スタートダッシュを演出する狙いもあったのだろう。 (図表1)ECBのカバードボンド購入残高(週毎) (億ユーロ) 1,000 CBPP1(2009年7月~) CBPP2(2011年11月~) CBPP3(2014年10月~)第1週の購入ペースが続いた場合 900 800 700 600 500 400 300 200 100 0 1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25 27 29 31 33 35 37 39 41 43 45 47 49 51 53 (週) 出所:欧州中央銀行資料より第一生命経済研究所が作成 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 1 過去のプログラムでは、購入金額の上限(CBPP1が600億ユーロ、CBPP2が400億ユーロ)やプログラムの 存続期間(CBPP1が2009年7月からの1年間、CBPP2が2011年11月からの1年間)が予め定められていたの に対し、CBPP3では上限金額や存続期間は定められていない。そこには中期的な物価安定の政策目標に照ら して必要なだけ購入を続けるとのメッセージが込められているのだろうが、同時に購入金額の規模感が市 場の失望を誘わないような配慮も窺える。このままのペースで購入を続けた場合、1年後の買い入れ規模 は約900億ユーロに達する計算となる。買い入れの規模感としてはそれなりのものだが、市場参加者の期待 値に届くかは微妙なところだ。Bloombergが集計した主要調査機関の予測では、中央値で1,500億ユーロ、 レンジで450~6000億ユーロの買い入れ規模が予想されている(図表2・3)。新発債の購入やプログラム の存続期間が1年超となることで買い入れ規模はさらに拡大可能だが、市場参加者の間では買い入れ対象 の拡大(社債や国債)への期待が膨らむ可能性がある。 (図表2)ECBのTLTRO利用額と資産買入れ額の予想 TLTRO全体 TLTRO①(実績) TLTRO② TLTRO③~⑧ ABS購入 カバードボンド購入 中央値 (億ユーロ) 5,775 826 1,775 2,974 2,000 1,500 レンジ (億ユーロ) 4,000~8,000 1,000~3,000 800~3,000 1,174~4,924 500~4,000 450~6,000 出所:Bloombergより第一生命経済研究所が作成 (図表3)カバードボンド購入金額の主要調査機関の予想分布 (社) 3,000以上 2,500以上~3,000未満 2,000以上~2,500未満 1,500以上~2,000未満 1,000以上~1,500未満 500以上~1,000未満 500未満 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0 出所:Bloombergより第一生命経済研究所が作成 以上 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 2