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修士論文要旨 (2011 年度)
確率奥行マップを用いたディジタル・リフォーカス法
Digital Refocusing Method Using Probability Depth Maps
電気電子情報通信工学専攻 池藤広司
10N5100005C Koji IKEFUJI
Signal Processing Lab
Block diagram of our method
1.
まえがき
多視点カメラ
⊗ h3
⊗ h2
⊗ h1
近年,撮像系を物理的に工夫することで複数条件化で
存在確率
の画像群を同時に取得し,それらを処理することによって
新しい視覚効果を付与するコンピュテーショナルイメー
確率
ぼけカーネル
⊕
フィルタ
処理
ジングの研究が盛んに行われている.
多視点画像から自由に焦点合わせを変化させた画像
(自由焦点画像)を生成する手法として,取得画像を平行
自由焦点画像
移動させて重み付け加算平均する合成開口法 [1] がある.
7 January 2011
多視点画像の視点間隔が十分に小さい場合は,この合成
IWAIT2011
8
図 1: 提案手法のアルゴリズム
開口法により,単なる線形処理によって滑らかな焦点ぼ
群 {Ii } から原点における自由焦点画像 I を生成するこ
けを容易に生成できる.一方で視点間隔が大きい場合,
とを目的とする.
焦点ぼけ領域にゴースト劣化が生じる問題がある.この
2.2
ゴースト劣化を抑制するためには,奥行シーンを推定す
確率奥行マップの生成
るか,視点間の画像を内挿することで密な光線データと
奥行方向(Z 軸方向)に L 層のレイヤ Z = dj (j = 1
する必要があるが,後者は視点間の画像すべての内挿を
,· · · ,L) を仮定する.原点の画像において,画素 (m,n)
行うため処理量が多く高度な処理技術を必要とする.
における奥行 dj の確からしさを p(m,n; dj ) と表し,確
率奥行マップと呼ぶ.確率奥行マップ p(m,n; dj ) の生
本研究では,多視点画像から確率奥行マップ [2] を用
成方法を以下に述べる.
いて奥行を推定し,これに基づいて自由焦点画像を生成
する新手法を提案する.確率奥行マップから求める被写
まず,奥行 dj に基づいて,原点の画像の画素 (m,n)
体の存在確率を重みとして採用することで空間可変型の
に対する取得画像 Ii の対応点を求める.次に,対応点を
ぼけカーネルを生成し,それを取得画像群の一枚に施す
中心とした 9 × 9 ブロック内での輝度値の分散値を求め
ことで自由焦点画像を高品質に生成できることを示す.
る.最後に,得られたカメラ台数分の分散値を用いて再
2.
提案手法
2.1
問題設定
度分散値を計算することで,奥行 dj における代表の分
散値 σj2 (m,n) を決定する.同様な処理をすべてのレイ
ヤで行い,p(m,n; dj ) を次式のように生成する.
XY Z 世界座標系の XY 平面に N 台のピンホールカメ
ラが Z 軸に平行に配置されているとする.ただし,カメ
p(m,n; dj ) =
ÁX
L
σj2 (m,n)
σj2 (m,n)
(1)
j=1
ラの外部および内部パラメータはすべて既知である.i 番
目のカメラにおける取得画像を Ii (m,n) (i = 1,· · · ,N )
2.3
ぼけカーネルの生成
と表す.ただし,原点の取得画像は IO (m,n) と表す.こ
焦点を合わせる奥行を dp (p ∈ {1,
...,L}),所望の開
こに,(m,n) は画素の座標である.本稿では,取得画像
口半径を R とする.このとき,奥行 dj に対する錯乱円
1
1
の半径 rj は次式で与えられる.
¯
¯
¯1
1¯
rj = ¯¯ − ¯¯ R
(2)
dj
dp
√
標準偏差が 2ri の 2 次元ガウス関数を画素間隔でサ
各奥行の画像を作成する.(以下,確率カラーマップ) 作
ンプリングした後,サンプル値の和を正規化して,ぼけ
斑点状の歪みが生じている.この原因は,各奥行の画像
カーネル h(k ,l; rj ) を作る.ただし,j = p のときは,
にぼけカーネルを先に施すと,統合時にぼけによるにじ
h(k ,l; rj ) はデルタ関数とする.
み込みが強く発生するためである.提案手法では,ぼけ
成した画像に h(k ,l; rj ) を畳み込み,すべての結果を加
算した.手前に焦点を合わせたときの生成画像を図 2 (c)
に示す.合焦領域は概ね良好であるが,非合焦領域には,
カーネルを先に統合し,一枚の画像に施すことによって
原点の取得画像 I0 に施すべきぼけカーネルを h(k ,l; rj )
この影響を抑えている.
の確率奥行マップによる重み付け加算
hs (k ,l; m,n) =
L
X
奥行を一意に決定し,奥行マップに基づいてぼけカー
p(m,n; dj )h(k ,l; rj )
(3)
ネルを生成し,原点の画像にぼけを与えた場合の画像(一
j=1
部拡大)との比較を図 4 に示す.奥行マップを用いた方
として生成する.その結果,生成されるぼけカーネルは,
法では奥行を一意に決定するために,物体の境界付近に
空間可変型となる.
2.4
おいて不正確な奥行が推定されている.その結果,背景
自由焦点画像の生成
の Checker にぼけが生じていない領域がある(図 4 (b)
自由焦点画像 I は,原点の取得画像 I0 にぼけカーネ
の楕円で示した領域).提案手法では,奥行を一意に決
ル hs (k ,l; m,n) を施して生成する.
I(m,n) =
X
定せず存在する確率を重みとして利用しているため,こ
IO (k ,l)hs (k ,l; m,n).
(4)
のような劣化が抑えられていると考えられる.
k,l
3.
実験
3.1
シミュレーション実験
さらに開口半径 R = 5.0 とした自由焦点画像の正解
画像と図 4 (a),図 4 (b) の PSNR での定量評価を以
下で示す.前者の PSNR 値は 39.66[dB] であり,後者は
中心が原点の 5×5 の 2 次元格子点からの画像を 3DCG
38.76[dB] となった.また開口半径 R = 10.0 とした正
ソフト(Pov-ray)を用いて作成した.画像の解像度は
解画像でも評価を行い,前者では 35.23[dB],後者では
640×480,画角は 50 度,視点間隔は 5 とした.シーン
34.19[dB] を示した.定量評価方法の PSNR において自
は奥行の異なる 3 枚の平板から構成され,手前から画像
由焦点画像への適用が有効であるかは不確かであるが,
“Lena”,“Pepper” および “Checker” がマッピングして
両者とも提案手法が 1[dB] 近く高いため,提案手法の有
ある.それらの奥行は順に 150.0,167.6,190.0 である.
用性を示していると考えられる.
奥行の数を L = 10 とし,dj = (L − 1)((L − j)/150 −
(j − 1)/190)−1 として各奥行を設定した.また,所望の
3.1.1
奥行推定における算出方法
開口半径 R = 5.0 とした.この条件では,合成開口法で
多視点カメラの対応点の色情報が似ているほど被写体
生成した自由焦点画像にゴースト劣化が生じる.
が存在する確率が高くなり,生成画像にも大きな影響を
提案手法による生成画像を図 2 (a) と (b) に示す.こ
与える為,確率奥行マップから奥行を推定する際の算出
こでは,焦点を合わせる奥行を前景の d1 と背景の d10 と
方法の検討を以下に示す.今回は提案手法で用いた分散
した.合焦領域は鮮鋭であり,非合焦領域には滑らかな
の分散,一般的な正規化相関を検討した.
焦点ぼけの効果が見られる.
確率奥行マップによる存在確率の算出結果をより分か
ぼけカーネルを一つに統合する効果を検証するために,
りやすくするために,1 層目と推定した奥行に色情報を
各奥行にぼけカーネル h(k ,l; rj ) を施す手法を試みた.
付与した確率カラーマップを生成した.各算出方法を利
原点の画像 I に対して,各確率奥行マップを乗算して,
2
2012/2/10
2012/2/10
(a) 提案手法
(Lena に合焦)
(b) 提案手法
(Checker に合焦)
(c) 奥行ごとぼけカーネルを施す手法
(Lena に合焦)
図 2: シミュレーション結果
(a) 分散の分散
(b) 正規化相関
(c) 中心カメラにおける分散
図 3: 各算出方法の検討
用して生成した確率マップ画像を図 3 (a),(b) に示す.本
来 lena のテクスチャが存在する奥行を,確率奥行マップ
にて推定し色情報を付与した画像である.
分散の分散による確率カラーマップは,テクスチャの
変化が穏やかな領域の場合でも,高精度な奥行推定が行
(a) 提案手法 (確率奥行マップを利用)
われているため,Lena が鮮明となっている.ここで図1
3 (c) は,中心のカメラのブロック領域での分散値を正規
1
化し画像とした結果である.取得画像に対して分散を取
ることで,テクスチャの変化が激しいエッジ付近が抽出
されたため,奥行推定が高精度となったと考えられる.
より一般的な正規化相関では,劣化した確率カラー
(b) 比較手法 (奥行マップを利用)
マップとなった.これは相関値の取りうる値が −1∼1 と
図 4: 確率奥行マップの効果 (一部画像拡大)
狭い範囲のため,精度が低くなったと考えられる.また
Checker において,推定誤りから異なる奥行が 1 層目と
視点画像データベース」を使用した.それらの画像は,
推定された.これは,正規化相関が基準の画像と対応す
カメラを水平および垂直方向に 20[mm] 間隔で移動さ
る画像の対のみの算出となるため,ブロック領域で色情
せて,合計 25 視点から取得したものである.画像の解
報に対応できず,推定誤りが生じたものである.
3.2
像度は 480×360[pixels],すべてのカメラの画角は 27.4
実シーンによる実験
度である.対象シーンは人形であり,その奥行き範囲は
実写の多視点画像を用いて,提案手法による任意視
590–1500[mm] である.奥行の数を L = 32 とし,dj =
点画像の生成を行った.多視点画像には,
「筑波大学多
3
を図 5 (c) に示す.奥行を一意に決定するために奥行の
推定誤りが発生するため,所望の焦点ぼけ効果が生成で
きていないことがわかる.
4.
むすび
本研究では,多視点画像から推定した確率奥行マップ
を用いて空間可変なぼけカーネルを生成し,一枚の取得
画像をフィルタリングすることによって自由焦点画像を
(a) 提案手法 (前景に合焦)
生成する手法を提案した.奥行を一意に決定する手法で
は,推定誤りが生じた領域において,所望な焦点ぼけ効
果が得られなかった.また,分散の分散を用いた確率奥
行マップがより高精度な奥行推定となることを示した.
今後は,PSNR 以外の定量評価を検討すべきである.
謝辞
久保田彰准教授には,日々御多忙にもかかわらず,献
身的に御指導頂いたことで充実した研究活動が出来まし
(b) 提案手法 (背景に合焦)
た.また,国内外の学会に参加する機会を与えて頂き,
大変よい経験となりました.ありがとうございました.
研究業績
1. 池藤広司,久保田彰,“確率奥行きマップを用いた
多視点画像からの自由焦点画像の生成”,画像電子学会
第 250 回研究会講演予稿,pp 63-66,2010
2. 池藤広司,久保田彰,“確率奥行マップを用いたディ
ジタル・リフォーカスの検討”,Forum on Information
Technology 2010,第 9 回情報科学フォーラム,I-055,
pp 369-370,2010
(c) 比較手法 (奥行マップを利用,前景に合焦)
図 5: 実シーンによる結果
3. Koji Ikefuji,Akira Kubota,“A Digital Refocusing Method Using Probability Depth Maps””,Workshop on Picture Coding and Image Processing,WP229,pp 93,2010
(L − 1)((L − j)/590 − (j − 1)/1500)−1 として各奥行を
設定した.さらに,所望の開口半径 R = 20 とした.シ
ミュレーション実験同様,合成開口法で生成した自由焦
4. Koji Ikefuji,Akira Kubota,Toru Adachi,“A
Digital Refocusing Method Using Probability Depth
Maps””,International Workshop on Advanved Image
Technology 2011,1569362391,2011
点画像にゴースト劣化が生じる条件である.
提案手法によって生成された自由焦点画像を図 5 (a),
図 5 (b) に示す.前者の合焦面は前景 (590[mm]) であり,
参考文献
後者の合焦面は背景 (1500[mm]) である.シミュレーショ
[1] A.Isaksen,L.McMillan,S.J.Gortler,“Dynamically reparameterized light fields”,SIGGRAPH2000,pp 297-306,2000
ン結果同様,合焦領域は鮮鋭であり,非合焦領域には滑
らかな所望の焦点ぼけ効果が見られる.
また,奥行マップに基づいてぼけカーネルを生成し,
[2] 國田,上野,田中,“多層信頼度マップを用いた 3 次
元映像の実時間生成システム”,映情学誌, Vol. 60,
No. 7, pp. 1102–1110, 2006
原点の画像にフィルタリングして生成した自由焦点画像
4
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