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新 潟 県 農 林 公 社 の 分 収 林 事 業 に つ い て
1
農林公社の分収林事業の現状と課題
(1)農林公社設立の沿革
ア
林業公社の設立
昭和30年代、経済の急速な発展に伴って木材需
要が増大し、森林資源の充実が不可欠となったこ
とを背景に国の拡大造林政策のもと、全国的に林
業公社が設立され、個人では進み難い箇所の人工
林整備を推進してきました。現在33都道府県35公
社において約36万ヘクタールの森林を造成してい
ます。
十日町市真田第2団地
新潟県では、昭和47年に社団法人新潟県林業公社
が設立されました。
イ
農林公社への統合
林業公社は、昭和60年に「分収林特別措置法」に基づく森林整備法人に認定され森林整備
の推進母体として位置付けられました。平成9年には農業公社等と統合し、名称を社団法人
新潟県農林公社に改め、平成25年度から国の公益法人制度改革に伴い公益社団法人に移行し
ています。社員数は現在、新潟県及び29市町村、県森林組合連合会など8関係団体、合わ
せて38団体となっています。
(2)分収林事業の概要
ア
分収林事業の目的
・森林資源の造成
・水源のかん養および県土の保全
・農山村地域経済の振興および地域住民の福祉の向上
イ
組織体制(農林公社)
役員及び職員内訳(平成25年6月1日)「農林公社」全体
区
分
その他
計
常勤役員
2人
2人
非常勤役員
14人
14人
職
員
公社職員
10人
県職員(出向)
1人
(6人)
計
10人
(6人)
注1:(
1人
嘱
託
15人
26人
(1人)
(7人)
15人
(1人)
16人
42人
(7人)
)は分収林事業関係職員で内数(森林・林業課4人、総務課3人)
2:役員〔代表理事 ※1、業務執行理事 ※1、理事11、監事3〕(※常勤)
ウ
分収林事業による造林面積
これまでに、約1万ヘクタール(県内民有林人工林面積の約7.2%)の森林を造成し
てきました。
平成24年度末の管理面積は、10,192ヘクタールで、間伐対象林分が増加しています。
(ha)
3,000
2,509
管理団地面積 10,192ha
2,500
2,241
2,144
2,000
1,601
1,500
880
1,000
423
500
0
0
333
61
6~10 11~15 16~20 21~25 26~30 31~35 36~40
~5
齢級別分収林面積
エ
41~
林齢
(平成24年度末)
分収林事業の仕組み
①
分収造林
農
林
公
社
(費用負担者、造林者)
土
地
所
有
者
(土
地
提
供
者)
②
分
植
収
公
社
収契
林
益
造約
保
分
土
林
育
収
所有者
60% ※
(70%)
地
40%
(30%)
分収育林
既に 植 林 さ れた 造 林 地に つい て、 農 林公社
が、森林所有者に今までにかかった経費を支
払い、土地所有者と分収契約を結ぶもの。
※
分収率:平成9年以前
公社6:所有者4
平成10年以降
公社7:所有者3
胎内市須巻第2団地
【土地所有者別分収林面積】
区 分
市町村
財産区
生産森林
個人
面積(ha)
1,648
225
3,175
4,632
割合(%)
16%
2%
31%
46%
その他
512
5%
計
10,192
100%
(3)資金の調達と債務状況
ア
資金の調達について
農林公社は、事業資金のほとんどすべてを
「日本政策金融公庫(以下、公庫とする)」
「新潟県」
等からの借入金によって運営しています。
①公庫:植栽や保育にかかる経費を借りています。
②新潟県:公庫への償還金や管理運営費を借りて
枝打ち
います。
イ
村上市笹川団地
枝打ち 村上市笹川団地
債務状況
【平成24年度末の債務状況】310億円
310億円
公庫借入金
107(34%)
県利息
41(13%)
157(51%)
県借入金
民間 5(2%)
新潟県農林公社の全国での位置付け
全国
項
目
管理面積(ha)
新潟県
1県平均
全国順位
364,129
11,034
10,192
18
長期債務残高(億円)
9,659
287
310
15
haあたり債務残高(千円)
-
2,653
3,040
16
注:平成25年3月31日現在(森林整備法人全国協議会調査による)
平成25年4月に解散した青森県、栃木県を除く。
〔 問題点 〕
①
公庫償還金ピークの後に伐採収入のピークが来るため、今後公庫償還金返済のための県貸
付金が増加する。
②
売り払い収入だけでは公庫償還金を賄えない見込み。
③
伐採後の再造林や将来の森林をどのような姿にするかが課題。
(4)林業をとりまく情勢の変化等
ア
木材価格の下落と保育・管理経費の増大
木 材 輸入 自 由 化 など に よ る木 材価 格の 大 幅な下
落と、保育作業賃金の上昇などにより、経営環境
が厳しくなっています。
胎内市坪穴団地
・スギ立木価格
:昭和55年 22,938円/m 3(ピーク) →
・労務賃金(公社):昭和55年
イ
5,200円/日
平成24年
→
3,280円/m 3(7分の1)
平成24年 12,400円/日 ( 2 倍 )
国の森林・林業政策の転換
平成13年の「森林・林業基本法」改正により、国の森林・林業政策は、木材生産中心か
ら森林の持つ多面的機能(国土保全、水源かん養、地球温暖化防止、林産物の供給など)
を持続的に発揮させる方向へ転換しました。
ウ
二酸化炭素吸収源としての期待
「京都議定書(平成7年)」の発効(平成17年2月16日)にともない、地球温暖化防止のた
めの森林の働きが注目されています。平成21年度には、カーボン・オフセット制度(間伐
促進による森林のCO 2吸収量の増分等を認証・クレジット化し、CO 2 を排出する企業等が、
そのクレジットを購入することにより自主的に相殺する任意の取り組み)が始まりました。
新潟県農林公社では、佐渡市内で管理する分収林で行った間伐を対象としてクレジット
化(トキの森プロジェクト)し販売しています。
エ
公益的機能の評価
管理森林の全ては「水土保全林」に位置づけられ、水資源のかん養や二酸化炭素の吸収
機能などを通じて県民生活の安定に貢献しています。
また、評価には計上されていませんが、農林公社が実施してきた森林整備事業は、中山
間地における「雇用の確保」「地域振興」に大きく貢献しています。
【森林の多面的機能の貨幣価値(年間)】
(単位:億円/年)
答申本体に盛り込まれた評価
答申の付属資料に盛り込まれた評価
区 分
合計
水源かん 表面浸食 表面崩壊 二酸化炭素
化石燃料代 保健・レクリエー
小計
小計
養機能
防止
防止
吸収機能
替機能
ション機能
新 潟 県
15,631
9,607
2,870
421 28,529
56
767
823 29,352
うち公社
182
112
33
5
332
1
9
10
342
(注) ① 新潟県分は、平成13年11月 日本学術会議答申の全国評価額の算出と同様の手法で試算
② 学術会議答申では、機能によって評価方法が異なっていることから合計額は記載されていない。
(5)事業実施の状況
農林公社では5年毎に事業計画を作成しており、
現在「 公社 造 林第 9次 5カ 年計 画」 (H25~ H29)に
沿って事業を実施しています。
【H24年度事業実績】
利用間伐 保育間伐
66
172
除伐
135
枝打
416
(ha)
(m)
作業道開設
計
789
8,083
利用間伐
上越市南中島団地
(5)経営改善の取組
県では平成19年度~20年度に学識経験者や森林・林業関係者等からなる「農林公社分収
林事業改革検討委員会」(県検討委員会)を設置し、分収林事業のあり方や今後の取組方
向について検討しました。
また、全国的に林業公社等の経営が非常に厳しいことから、林野庁・総務省および都道
府県の代表による「林業公社の経営対策等に関する検討会」(国検討会)が設置され、経
営対策や将来の森林整備のあり方について検討されました。(平成20年度~21年度)
現在、これらの検討結果を踏まえ、経営改善を図っています。
県検討委員会報告の概要
国検討会報告の概要
【分収林事業のあり方】
・情報開示と存廃を含む抜本的な経営見直しが必要
・多面的機能の持続的発揮をめざした森林施業
・長伐期化など多様な森林への誘導が課題
の推進
・県は無利子貸付を、公社は分収割合見直しをすべき
・情報公開し県民理解を求めていくことが必要
【主な支援策】
【経営対策】
○県から公社への貸付金の財源として転貸債を創設
・繰上償還や県貸付金の無利子化による利息低減
○低利な公庫資金を活用した利子負担軽減
・森林の育成状況や搬出条件等に応じた施業基準を
○不採算林整理や公社の廃止に伴う償還財源として第
設定し事業費を縮減
三セクター等改革推進債を活用
・分収割合見直しや不採算林整理による収益性向上
○県貸付金の無利子化に対する特別交付税措置を活用
・利用間伐やカーボン・オフセットによる収入確保
【
取組内容 】
①
新規植栽の休止(平成16年度~)
②
高利率の公庫資金の借換により利息を軽減
・平成16年度~17年度:借換額42.5億円 → 利息軽減額 約18億円
①
・平成18年度
:借換額36.8億円 →
〃
約8.9億円
・平成19年度
:借換額 5.9億円 →
〃
約5.9億円
県貸付利率を3.0%から0.5%に引き下げ(平成15年度~
)
・0.5%から0%に引き下げ(平成24年~)
④
農林公社役職員の報酬・給与の10%を削減・定期昇給停止(平成16年度~平成21年)
・役員報酬の10%、職員給与の7%を削減(平成22年度~)
・職員給与の2.4%を削減(平成24年度~)
⑤
大径材生産による伐採収入の増大や公益的機能維持のため長伐期施業も導入
⑥
保育体系を見直し、35年生までの投下経費を削減(平成20年度~)
②
カーボン・オフセット制度への取組による新たな収入源の確保(平成21年度~)
⑧
CSRを利用した企業の森の取組を実施(平成24年度~)
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