ICCAIA年次総会について - 一般社団法人 日本航空宇宙工業会

工業会活動
ICCAIA年次総会について
6月23日、パリ市内でICCAIA（International Coordinating Council of Aerospace
Industries Association；国際航空宇宙工業会協議会）の年次総会が開催されたので、そ
の概要を以下に報告する。
左から伯 バルテル専務、欧州 ギジツキ新専務、米 ブレーキ専務、
加 クイック新専務、日 今清水専務、オブザーバの露 フェドソフ専務
（フランス航空宇宙工業会会議室屋上にて）
1．ICCAIAとは
世界の航空宇宙工業会が集まり、1）ICAO
（国際民間航空機関）などの環境、安全など
空性委員会、④安全性委員会）の活動報告を
受けるとともに、国際企業倫理など国際的な
案件を議論している。
の規制に製造業者の経験、意見を反映させる
ための活動を協力して推進する、2）それぞ
れの国の活動について情報交換する、等の目
2．2011年度年次総会報告
今回は総会での議論のうちから、会員企業
的で1972年に設立された。現在、米国（AIA）、
の関心が高いとみられる各地域の航空宇宙産
欧州（ASD）、カナダ（AIAC）、ブラジル（AIAB）
業の動向と昨年からオブザーバ参加している
そして日本（SJAC）が加盟している。
ロシアの動向について報告する。
毎年、6∼7月、ファンボロウまたはパリの
エア･ショウ開催時に、専務レベルの総会を
開催し、各国の航空宇宙産業について情報交
（1）2010年の航空宇宙産業の状況
米 国、カ ナ ダ を 除 く 欧 州（ド ル ベ ー ス）、
換するほか、ICAOへの取り組みについて4つ
ブラジル、日本は、航空宇宙産業の売り上げ
の委員会（①騒音・エンジン排出物委員会、
が、2008年の金融危機の状態から回復しきれ
②通信・航法・監視・交通管制委員会、③耐
ず、1%前後の前年度割れを起こしている。こ
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平成23年7月　第691号
の原因は民間航空機の売り上げが落ち込んで
伸びに起因するものである。各国の状況は以
いることに起因するもので、売り上げの伸び
下の表による。
ている米国も、民間でなく防衛の売り上げの
各国の航空宇宙産業の売り上げ比較
（単位）
2010
対前年比
2009
米国
US $ B
214.5
1.2％
211.9
欧州
€B
111.12
5.0％
105.86
（2）ロシアの動向について
US $ B
139.2
−0.6％
140.04
ブラジル
US $ B
6.7
−0.9％
6.76
カナダ
Can $ B
23.2
5.0％
22.1
日本
¥B
1321
−1.6％
1342
議が2010年9月19∼24日にニースで開催され、
2002年にロシア航空宇宙工業会の前進が設
ロシアも派遣団を送った。④2010年11月30日
立 さ れ た が、2010 年 6 月 に UAI（Union of
∼12月1日にCEAS/ASD主催のAeroweekがブ
Aviation Industrialists）として改組した。設立
リュッセルで開催され、参加した。ここで、
当時は、10社が発起会社で、それらは、UAC社、
欧 州 の 研 究 プ ロ グ ラ ム で あ る S E S A R、
スホーイ社、ツボレフ社、イリューシン社、
Claenskyへの参加がASDとUAIの間で議論さ
ミコヤン社、ロシア・ヘリコプターズ社、中
れた。⑤2011年3月30日∼4月1日にマドリッ
央空力研究所、などがあげられる。なお、現
ドでAerodaysが開催され、訪問団を送った。
在31社が正会員で、1社が賛助会員へと増加
ロシア・ウクライナとの共同研究というセッ
している。
ションがあり、空力プログラムの研究につい
UAIには7つの委員会を持っており、それら
て発表した。⑥2011年5月9∼11日にICASエグ
は、1）科 学 委 員 会、2）耐 空 性 委 員 会、3）
ゼクティブ会議が開催され、2014年セント・
規格委員会、4）品質管理・サプライチェー
ピータイズバーグ会議の事前打ち合わせを
ン委員会、5）アビオニックス委員会、6）技
行った。
術認証委員会、7）国際委員会、である。
耐空性委員会は、①2010年1月18日にロシ
科学委員会の主な活動として、ここ1年で6
ア国内でEUが主導する研究的プログラムに関
件の活動を報告している。①国際ヘリコプタ
する国際会議を開催し、同委員会のプレゼン
展示会を2010年5月20∼22日に開催した。1つ
テーションの他、Eurocae、Eurocontrol、ロシ
のテーマとして、ブタン/プロパン代替燃料を
ア運輸省が講演を行った。②UAIとASDの工
ヘリコプターに使用することを提案してい
業会同志の耐空性会議を開催し、2010年−
た。②2010年9月9∼12日に国際水上航空機
2011年の共同作業に関する展望や方向性を議
ショウを開催し、10万人以上の参加を得た。
論した。③ASDと宇宙、防衛面で連携を構築
この中で、フランスの研究所ONERAとロシ
することができた。④2011年4月6日にモスク
アの空力研究所TsAGIが共同セミナーを開催
ワで「ICAOの航空機の耐空性Appendix8に対
し、不安定空力、コンピュータによる演算の
する改定110を航空機製造業界が認識するこ
モデリング、耐荷重構造、飛行制御などがそ
と」と銘打った会議を開催した。
の対象となった。③航空科学における国際会
規格委員会は、①2010年8月に航空機規格
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工業会活動
の協力についてSAE国際幹部と交渉をする機
「航空備品の品質と信頼性の保証」と題する
会があった。その結果、SAE Internationalと
国際会議を開催した。⑤ILA-2010のエアショ
UAIとの間で、MOU調印間近かになってきた。
ウにおいて、「欧州・ロシアの中小企業」に
②2010年12月にASD標準委員会幹部との交渉
参加した。
で、航空機産業の標準化に焦点を当てたUAI
国際委員会としては、関係各国との協力協
とASDの間で航空機標準の協力協定の原案が
定の調印を以下の7つの団体に対して行った。
準備された。③同委員はISO/TC20の国際標準
①欧州航空宇宙防衛工業会（ASD）、②イタ
化の活動に参加した。④同委員は、第4回航
リア航空宇宙工業会（AIAD、③ザクセン航
空 フ ォ ー ラ ム（ロ シ ア の 新 型 航 空 機 の
空宇宙イニシアティブ、④ドイツ航空宇宙工
Integrated Logistics Support）に参加した。⑤戦
業 会（BDLI）、⑤ フ ラ ン ス 航 空 宇 宙 工 業 会
略的協力協定は、NIISU（ロシア産業貿易省
（GIFAS）
、⑥英国航空宇宙防衛工業会（ADS）
、
の航空機規格における先導的団体）との間で
⑦カナダ航空宇宙工業会（AIAC）
以上に述べてきたように、この1年間に技
調印された。
品質管理・サプライチェーン委員会では、
術、耐空性、規格、品質・サプライチェーン、
①従来の品質管理への取り組みを見直し、共
国際的協定など広範な活動を展開し、特に欧
通の品質管理ポリシーを持つ、航空部品供給
州を中心として工業会同志の連携を強めてき
者へ要求事項を共通化する、といった取り組
ている。戦略として、西側国の委員会などに
みを行った。②IAGGの総会に参加した。③
積極的に参加し、また事業も西欧国と共同で
イタリア航空宇宙工業会と共催で「国際的承
行うことにより、多くの情報を得、その実力
認システム：イタリアの法制と優良事例」の
を高めてきており、ロシアの動向に目が離せ
ワークショップを開催した。④第14回、15回
ない。
〔（社）日本航空宇宙工業会 国際部長 板原 寛治〕
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