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QuantiFERON TB 2G検査の再現性に関する基礎的検討

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QuantiFERON TB 2G検査の再現性に関する基礎的検討
信州公衆衛生雑誌,5⑴:81~86,2
01
0
Qua
n
t
i
FERON TB 2G検査の再現性に関する基礎的検討
久保田紀子、奥 田 富 貴、羽 場 昇、寺 井 直 樹
長野県松本保健福祉事務所
Thef
undament
alexper
i
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orr
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oduc
i
bi
l
i
t
yofQuant
i
FERON 2G
No
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oKUBOTA,FukiOKUDA,No
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Ma
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f
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c
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i
ma
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a
t
i
,Ma
t
s
umo
t
oc
i
t
y
,Na
g
a
no
目的:松本保健福祉事務所において結核接触者健康診断としての QFT 2
Gを導入するため、QFT 2
Gの
再現性に関する基礎的検討を行い考察した。
方法:QFT 2
Gの第1ステップ、第2ステップそれぞれについての同時再現性・日差再現性について検
討した。また、測定条件として規定されている反応温度内(1
7~27℃)における反応温度の違いによる
I
FN γ定量値についても検討した。
結果:第2ステップにおいては、同時再現性・日差再現性とも良好であることが示された。第1ステップ
の刺激培養においても同一採血検体を用いて行なった同時再現性は良好な結果を示したものの、日差再現
性に関しては、異なる3日間にそれぞれ採血を行い刺激培養した場合に、3検体中1検体において大きな
バラツキが認められた。
第2ステップでの反応温度を17、22、27℃で変化させた場合、標準液希釈系列の最高濃度(およそ
10I
U/
ml
)までは濃度依存的に吸光度が上昇し、標準曲線から換算する I
FN γ値は反応温度の違いに
よって変化することはなかったが、I
FN γ値が高値となる健康正常人の陽性コントロール刺激検体は反
応温度の違いによって I
FN γ値が大きく変化した。
考察:QFT 2
Gは同時再現性には優れているものの、日差再現性ではバラツキが認められることがある
ため、同一被検者であっても採血日を変えることで I
FN γ値が大きく変動する可能性があることを念頭
において結果の解釈を行なう必要があることが示唆された。
また、QFT 2
Gによって算出される測定値は、低~中濃度領域での定量性はあるものの高濃度領域に
おいての定量性には乏しいため、I
FN γ値の定量的な解釈をしたいときにはそのときの吸光度値にも注
目する必要がある。
Keywor
ds
:Qua
nt
i
FERON 2
G、同時再現性、日差再現性
Ⅰ.はじめに
なわれ、その実務的役割の多くを各地域保健所が担っ
ている。
結核の制圧に向けた対策の中でも、結核患者と接触
これまで接触者健診では、胸部X線検査およびツベ
のあった者に対する接触者健診は患者の治療についで
ルクリン反応検査(ツ反)が実施されてきたが、潜在
優先度の高い重要な対策であり、発病および潜在性結
性結核感染者を検出できる検査は唯一ツ反検査に限ら
核感染の有無について感染症法に基づく健康診断が行
れていた。しかしツ反は BCG接種や非結核性抗酸菌
感染によっても陽性反応を示す場合があり1)、本邦の
(20
10年2月1
6日受付、2010年7月7日受理)
No
.
1
,
2
010
ように積極的に BCG接種を行なってきている集団を
81
久保田・奥田・羽場・寺井
対象とした場合、ツ反のみで潜在性結核感染を正確に
より正しい結果解釈を導くために必須である。今回
診断することはきわめて困難である。
我々は、松本保健福祉事務所における接触者検診を目
近年、BCGやほとんどの非結核性抗酸菌には存在
的とした QFT 2
G導入のために、QFT 2
Gに関する
しない結核菌特異的刺激抗原
2
,
3
)
に対するリンパ球の
同時再現性、日差再現性、第2ステップ反応温度につ
インターフェロンγ(I
FN γ)産生能を測定するこ
いての基礎的検討を行ったので、その検討結果につい
とによって結核感染の診断を行なう Qua
nt
i
FERON
て考察し報告する。
TB 2
G(QFT 2
G)が開発された。QFT 2
Gは、優
なお、本研究は信州公衆衛生学会倫理委員会による
れた感度と特異性を示し、BCG接種の有無に影響を
倫理審査受け、承認を得たものである。
受けることなく結核患者・潜在性結核感染者を検出で
Ⅱ.方 法
きる4,5)。そのため、新感染症法に基づいて2
0
0
7年改訂
6
)
された「結核の接触者健康診断の手引き」
において、
A QFT 2G検査方法
一定の条件付ではあるものの接触者検診の第一選択検
QFT 2
G(日本 BCG製造、東京)は全血検体に免
査に位置づけられた。
疫抗原を添加して刺激培養する第1ステップとその免
検査データには、その測定原理、使用機器、検査実
疫反応によって放出される I
FN γ を ELI
SA
施環境、被検者自身の生理的変動等による様々な不確
(Enz
yme
Li
nke
dI
mmuno
s
o
r
be
ntAs
s
a
y)に よ っ て
かさが内包されている。そのため、目的とする検査
定量する第2ステップから構成される。検査方法概略
データに存在する不確かさの程度(データ再現性のバ
図を図1に示した。
ラツキとして表されることが多い)を把握することは、
図1 QFT2
G検査法概略図
検査は QFT 2
Gキット添付文書に従い、刺激抗原
て主波長4
5
0nm にて測定した。
と全血検体の混和はマルチマイクロプレートジェニー
標 準 曲 線 の 作 成 と、 作 成 さ れ た 標 準 曲 線 か ら の
(Sc
i
e
nt
i
f
i
cI
ndus
t
r
i
e
s、Ne
w Yo
r
k)にてスピード4で
I
FN γ 濃 度 の 算 出 に は 専 用 の ソ フ ト ウ ェ ア(ht
t
p:
1分 間 の 攪 拌 を 行 な っ た。 洗 浄 操 作 は オ ー ト ミ ニ
/
/
www.
bc
gqf
t
.
c
o
m/
)を用い、I
FN γ値は、刺激抗
ウォッシャーAMW (
8バイオテック、東京)を用い
原(ESAT 6
ま た は CFP 10ま た は 陽 性 コ ン ト ロ ー
て6回洗浄を行い、吸光度は MTP 3
1
0La
b吸光マイ
ル)添加検体の I
FN γ値から陰性コントロール添加
クロプレートリーダー(コロナ電気、茨城県)を用い
検体の I
FN γ値を差し引いたものである。
82
信州公衆衛生雑誌 Vo
l
.
5
QFT 2
G検査の再現性に関する基礎検討
なお、QFT 2
Gキット添付文書では同時再現性に
D 第2ステップ反応温度の検討
関する性能を変動係数(CV)
1
5%以下としている。
第2ステップにおける抗原抗体反応と発色反応の指
B 同時再現性の検討
定反応温度1
7~2
7℃内での温度の違いにより、吸光度
1 第1ステップの同時再現性の検討
とI
FN γ値が変化するかどうかを調べるために、
松本保健福祉事務所内において、業務上結核罹患リ
QFT 2
Gキット添付の I
FN γ標準液希釈系列(S1
スクが高いと考えられる職員の QFTベースラインを
~S7)とゼロポイントのS0と4名の正常健康人の
把握することを目的とした QFT 2
G検査において、
陽性コントロール血漿4件(検体番号N4~N7とす
検体の提供と今回の知見を発表することに同意が得ら
る)を用いて、1
7℃、22℃、27℃の3温度で反応させ
れた健康成人ボランティア3名からそれぞれ1
0mlず
た。このとき室温は22.
5度、洗浄工程はオートミニ
つヘパリンナトリウム採血管にて採血し、1mlずつ
ウォッシャーAMW 8
を使用し同一工程にて行なった。
の全血に陰性コントロール、陽性コントロールを添加
Ⅲ.結 果
し、37℃にて18時間培養した。それぞれ同一検体につ
き同時に3回第1ステップを行ない、全検体同時に
A 同時再現性
I
FN γ定量を行なった。陽性コントロール添加検体
1 第一ステップ同時再現性
のI
FN γ値から陰性コントロール添加検体の I
FN 健康正常人3名から得られた検体につき3回ずつ刺
γ値を差し引いたものを Mi
t
o
ge
n値(M値)とした。
激培養を行なった第1ステップの同時再現性について
2 第2ステップの同時再現性の検討
表1に示した。3検体ともM値にバラツキは認められ
QFT 2
Gキット添付のヒト I
FN γ標準品を添付文
ず変動係数(CV)は4.
5%以下であった。
書に従って溶解し、この溶解液を原液(S1とする)
表1 第1ステップ同時再現性(M値)
として希釈用緩衝液にて6段階の2倍希釈系列(S2
~S7とする)を作製した。この希釈系列とゼロポイ
ントとしての I
FN γ不含希釈用緩衝液(S0とす
No
.
1s
t
2nd
3r
d
(I
U/
ml
) (I
U/
ml
) (I
U/
ml
)
CV
(%)
N1
15.
1
4
15.
1
3
15.
1
3
0.
1以下
N2
10.
3
6
10.
6
9
11.
3
2
4.
5
吸光度を測定した。
N3
15.
1
1
15.
1
5
15.
1
1
0.
2
C 日差再現性の検討
注:N1~N3は健康正常人検体
る)について、それぞれ3回ずつ第2ステップを行い
1 第1ステップの日差再現性
第1ステップの同時再現性の検討と同様に、松本保
2 第2ステップ同時再現性
健福祉事務所内において、QFTベースライン把握を
I
FN γ標準品の希釈系列についてそれぞれ3回ず
目的として行なった QFT 2
G検査において、検体の
つ同時に測定した第2ステップの同時再現性について
提供と今回の知見を発表することに同意が得られた健
表2に示した。吸光度の低下にしたがって CVが上
康成人ボランティア3名から3日間(Da
y1,Da
y2,
がっていく傾向は認められたものの、CVは最大でも
Da
y3とする)にそれぞれ採血し、1mlずつの全血
約4.
3%であった。
に陰性コントロール、陽性コントロールを添加し、
表2 第2ステップ同時再現性(吸光度値)
37℃にて18時間培養した。それぞれの刺激済み血漿を
回収し、I
FN γ定量検査まで4℃にて保存した。全
No
.
1s
t
(a
bs
)
2nd
(a
bs
)
3r
d
(a
bs
)
CV
(%)
S1
2.
00
3
2.
00
4
1.
99
3
0.
3
S2
1.
20
1
1.
21
3
1.
19
8
0.
7
付のヒト I
FN γ標準品を添付文書に従って溶解し、
S3
0.
66
6
0.
67
3
0.
67
5
0.
7
3日間(Da
y1,Da
y2,Da
y3)にそれぞれこの溶
S4
0.
34
7
0.
35
3
0.
35
4
1.
1
解液(S1とする)を原液として6段階の2倍希釈系
S5
0.
17
9
0.
17
9
0.
18
1
0.
6
列(S2~S7)を作製した。この希釈系列とゼロポ
S6
0.
09
9
0.
09
7
0.
09
7
1.
2
S7
0.
06
4
0.
06
1
0.
06
5
3.
3
S0
0.
03
6
0.
03
7
0.
03
4
4.
3
検体同時に I
FN γ定量を行いM値を算出した。
2 第2ステップの日差再現性は、QFTキットに添
イントとしての I
FN γ不含希釈用緩衝液(S0とす
る)について、3日間それぞれ第2ステップを行い吸
光度測定を行なった。
No
.
1
,
2
010
注:S0~S7は I
FN γ標準液希釈系列
83
久保田・奥田・羽場・寺井
表4 第2ステップ日差再現性(吸光度値)
B 日差再現性
1 第一ステップ日差再現性
3名の健康正常人から3日間採血し、それぞれ刺激
培養を行なった第1ステップの日差再現性について表
3に示した。3検体中2検体(検体番号N1とN3)
No
.
Da
y1
(a
bs
)
Da
y2
(a
bs
)
Da
y3
(a
bs
)
CV
(%)
S1
2.
00
0
2.
00
5
2.
04
4
1.
2
S2
1.
20
4
1.
11
2
1.
11
2
4.
6
S3
0.
67
1
0.
63
7
0.
63
5
3.
2
では採血日の違いによるM値の差は認められず CVは
S4
0.
35
1
0.
33
2
0.
32
5
4.
0
およそ1.
5%だったが、検体番号N2では採血日に
S5
0.
18
0
0.
17
9
0.
17
0
3.
0
よ っ て M 値 が1
0.
7
9I
U/
ml
、5.
5
0I
U/
ml
、4.
2
8I
U/
ml
S6
0.
09
8
0.
10
0
0.
09
2
4.
3
を示し、CVは50%以上となり、良好な再現性が得ら
S7
0.
06
3
0.
06
0
0.
06
4
2.
9
S0
0.
03
6
0.
03
0
0.
03
1
8.
7
れなかった。
C 第2ステップ反応温度の違いによる I
FN γ値の
表3 第1ステップ日差再現性(M値)
Da
y1
Da
y2
Da
y3
No
. (I
U/
ml
) (I
U/
ml
) (I
U/
ml
)
CV
(%)
N1
1
5.
15
15.
18
14.
78
1.
4
N2
1
0.
79
5.
50
4.
28
5
0.
5
N3
1
5.
12
14.
86
14.
63
1.
7
注:N1~N3は同時再現性検討と同一被検者を由来
とする検体。
変動
第2ステップの反応温度を1
7、2
2、27℃の各温度で
行なったときの吸光度値とそれぞれの温度で作成した
標準曲線から算出した I
FN γ値を表5に示した。こ
のときの I
FN γ値は陰性コントロールによる補正は
行なっていない。
S0(0I
U/
ml
)~ S1(1
0.
13I
U/
ml
)で は 各 温
2 第2ステップ日差再現性
度の違いによる吸光度に差はあっても I
FN γ換算値
I
FN γ標準品の希釈系列について異なった3日間
に大きな差はなかったが、正常健康人の陽性コント
に測定した第2ステップの日差再現性について表4に
ロール検体(N4~N7)は反応温度の違いによって
示した。1日あたりに吸光度を3回測定したデータを
I
FN γ換算値が変化した。17℃から反応温度が上が
平均しその平均値を1日のデータとした。S0(I
FN
るにつれて I
FN γ換算値は低下し、17℃と27℃での
γ値0I
U/
ml
)の CVは8.
7%を示したが、S1から
差はN4では4.
27I
U/
ml
、N5では4.
23I
U/
ml
、N6
S7の CVは1.
2~4.
6%の範囲内に含まれていた。
では4.
2
7I
U/
ml
、N7では3.
5
4I
U/
mlであり、全検体
表5 第2ステップ反応温度の違いによる吸光度値と I
FN γ値
1
7℃
検体番号
(標準液 I
FN γ濃度
I
U/
ml
)
22℃
27℃
吸光度
(a
bs
)
I
FN γ値
(I
U/
ml
)
吸光度
(a
bs
)
I
FN γ値
(I
U/
ml
)
吸光度
(a
bs
)
I
FN γ値
(I
U/
ml
)
S1(10.
13)
2.
184
9.
3
2
2.
6
08
8.
6
0
2.
8
21
8.
5
2
S2(5.
065)
1.
303
5.
2
6
1.
7
01
5.
3
0
1.
9
62
5.
5
7
S3(2.
533)
0.
728
2.
7
6
1.
0
23
2.
9
8
1.
1
14
2.
8
7
S4(1.
266)
0.
372
1.
3
1
0.
5
06
1.
3
4
0.
5
70
1.
3
1
S5(0.
633)
0.
182
0.
6
1
0.
2
58
0.
6
2
0.
3
09
0.
6
4
S6(0.
317)
0.
099
0.
3
0
0.
1
38
0.
3
1
0.
1
61
0.
3
0
S7(0.
158)
0.
056
0.
1
6
0.
0
73
0.
1
5
0.
0
91
0.
1
5
S0(0.
000)
0.
010
0.
0
2
0.
0
14
0.
0
2
0.
0
19
0.
0
2
N4
3.
113
13.
81
3.
0
87
10.
39
3.
1
07
9.
5
4
N5
3.
096
13.
72
3.
0
66
10.
33
3.
0
95
9.
4
9
N6
3.
106
13.
77
3.
0
84
10.
38
3.
0
98
9.
5
0
N7
2.
948
13.
00
3.
0
65
10.
32
3.
0
87
9.
4
6
注:S0~S7は I
FN γ標準液希釈系列、N4~N7は正常健康人陽性コントロール検体
84
信州公衆衛生雑誌 Vo
l
.
5
QFT 2
G検査の再現性に関する基礎検討
とも27℃反応で得られた I
FN γ値は1
7℃反応で算出
にも日差間のバラツキを引き起こす可能性が存在する
された I
FN γ値のおよそ3
0%程度低下していた。
ことを報告している。
我々の検討結果とこれまでに報告された事例から、
Ⅳ.考 察
QFT検査は同時再現性には優れているものの、日差
QFT 2
Gに関する今回の基礎検討の結果から、採
再現性ではバラツキが認められることがあるため、同
血日を替えて採取した同一被験者検体において、良好
一被検者であっても再検査をすることで抗原刺激によ
な日差再現性が得られない場合があることが示された。
るI
FN γ放出値が変動し判定結果が変動する可能性
この被験者の同一採血検体を3分割して第1ステップ
があることを念頭におき、結果の解釈を行なう診断の
を行なったときの同時再現性は良好であったこと、
際には、臨床症状や患者背景を十分考慮した上で判断
I
FN γ標準品の希釈系列を用いて検討した第2ス
する必要があることが示唆される。
テップ(ELI
SA)のみの同時再現性と日差再現性は
QFT 2
Gの第2ステップでの反応温度を17、22、
良好であったことから、今回の検討結果では、日差再
2
7℃で変化させた場合、標準液希釈系列の最高濃度
現性のバラツキの原因は健康成人において存在する何
(およそ1
0I
U/
ml
)までは反応温度が上がるにつれ濃
らかの生理的変動を反映した可能性、もしくは第1ス
度依存的に吸光度も上昇し、標準曲線から換算した
テップ(抗原刺激培養)過程に日差間のバラツキが存
I
FN γ値は反応温度の違いによって大きく変化する
在する可能性が示唆された。QFT 2
Gは採血後12時
ことはなかった。一方、健康正常人の陽性コントロー
間以内の第1ステップ反応開始が必要であるため、同
ル刺激血漿検体は反応温度の違いによって吸光度に差
一採血検体による第1ステップの日差再現性の検討は
が生じることはなく、このため各温度での標準曲線か
不可能なため、原因の確定は難しいと考えられる。
ら換算した I
FN γ値は大きく変化した。ELI
SAは測
今回我々は、健康正常人の Mi
t
o
ge
n値を対象とし
定しようとする抗原(QFT 2
Gでは I
FN γ)と標識
7
)
た再現性について検討しているが、De
t
j
i
n らは結核
した抗体を抗原抗体反応させ、標識抗体と反応した成
感染リスクの高い結核医療施設職員を対象に、QFT 分だけを測定する方法であるため10)、QFT 2
Gでは検
Go
l
d(QFT 2
Gの後継試薬)における結核菌特異抗
体中に I
FN γが試薬としてあらかじめ含まれている
原刺激による I
FN γ放出値の同時再現性と日差再現
抗体量以上に存在する場合には抗体と反応できない
性の検討を行っており、同時再現性は良好であるが、
I
FN γが残存し、この残存部分については検出がで
3日間の間隔をあけて採血した検体を用いて検討した
きない。つまり実際に存在する I
FN γ濃度よりも低
日 差 再 現 性 で は、27名 中5名 で I
FN γ値の変動に
い数値しか算出されないマイナス誤差が生じる。よっ
よって判定結果が反転したことを報告している。また、
て QFT 2
Gによって算出される測定値は、低~中濃
8
)
Ve
e
r
a
pa
t
hr
a
nら は QFT Go
l
dを用いて QFT陽性者
度領域での定量性はあるものの高濃度領域においての
と QFT陰性者の結核菌特異抗原値を対象に0日目、
定量性には乏しいということができる。本来であれば
3日目、9日目、1
2日目の4日間での日差再現性を調
高濃度検体に関しては、検体を希釈して再測定を行い
べており、それぞれの検査日によって結核菌特異抗原
定量値を算出することが正しい方法である。しかしな
に対する I
FN γ値の変動が認められ、一部の検体で
がら判定基準値付近ではこのような現象は認められな
は判定結果が反転したことを報告している。
いため、定性検査としては十分実用に足るものである。
9
)
さらに、Tuumi
ne
n らは、過去に結核に罹患した
結核予防会から発行されている QFTのQ&Aと使用
ことのある無症状の被検者を対象に、2~8日の間隔
指針の解説11)では、QFT検査結果の解釈に際して判
をあけて採血日を変えて採取した検体について検討し
定区分のみでなく I
FN γ値までも吟味すべきことが
たときの同時再現性は良好であったものの、日差再現
求められており、また、QFT 2
Gを含めた I
FN γ放
性は CV30%を超えるバラツキを認めたことを報告し
出測定値が化学療法による活動性結核治療の治療効果
9
)
て い る。 し か し Tuumi
ne
n ら は、 同 一 論 文 中 に て
判定に利用できるといった報告12,13)や I
FN γ産生濃度
I
FN γ値0.
5I
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mlを理論値とて作成した検体を凍結
が高いほど結核発病の危険性が高いという報告14)のよ
保存し測定日を変えて8
9回の重複測定を行ったとき、
うな、I
FN γ産生量値の有用性を示している報告も
I
FN γ値の CVが2
3%となったと述べ、被験者側の
ある。今回の検討結果から、I
FN γ値について定量
生理的変動のみでなく、QFT 2
G第2ステップ自体
的な解釈をしたいときには注意が必要な場合があり、
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久保田・奥田・羽場・寺井
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FN γ高値データではその吸光度に注目すべきであ
られてまだ日が浅く、多くの研究者や検査者が知見を
ると考えられる。また、QFT 2
G検査実施の際には、
集積している段階であり、情報の周知が十分でない部
許容された範囲内の反応温度であっても常に一定の条
分もあると思われる。今回の基礎検討から得られた情
件による実施が望ましいと考えられる。
報を積極的に臨床の現場に還元していきたい。
QFT検査は結核の接触者健康診断として取り入れ
文 献
1)日本結核病学会予防委員会:今後のツベルクリン反応検査の暫定的技術的基準.結核 8
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5)原田登之,森亨,宍戸眞司,他:集団感染事例における新しい結核感染診断法 Qua
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FERON TB 2
Gの有効性の検討.
結核 79:9
637 9643,2004.
6)石川信克:接触者検診の実施.感染症法に基づく結核の接触者健康診断の手引き 改訂第3版(石川信克監修)
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0)日高宏哉:免疫学的定量法.臨床検査法提要 改訂第32版(金井正光編集).5
3 64,金原出版,2005.
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2)鈴木公典:
「クォンティフェロン TB 2
Gの使用指針」の解説.QFTのQ&Aと使用指針の解説 平成2
0年改訂版(森
亨監修)
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5 26,財団法人結核予防会,2008.
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