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学会等による人材育成関連事業に関する 実態調査 報 告 書
平成23年度産業技術調査事業 学会等による人材育成関連事業に関する 実態調査 報 告 書 平成24年3月 ■■■ 目 次 ■■■ I. 調査の背景と目的 ....................................................... 1 II. 学協会による初等中等及び高等教育における人材育成への取組状況 ........... 2 1. 学協会による初等中等及び高等教育における人材育成事業の分類 .............. 2 2. 学協会による初等中等及び高等教育における人材育成事業の実施状況 .......... 3 (1) 初等中等及び高等教育における人材育成事業を実施している学協会の一覧 ..... 3 (2) 学協会による初等中等及び高等教育における人材育成事業の実施状況の分析 ... 5 3. 学協会による初等中等及び高等教育における人材育成事業の概要 .............. 7 (1) 応用物理学会「リフレッシュ理科教室」................................... 7 (2) 化学史学会「化学史研修会」............................................. 8 (3) 環境情報科学センター「環境情報科学ポスターセッション」 ................. 9 (4) こども環境学会他「東日本大震災復興プラン提案競技」 .................... 10 (5) 生物物理若手の会主催、日本生物物理学会後援「生物物理夏の学校」 ........ 13 (6) 石油技術協会「特別見学会(地質巡見および物理探査の実態)」 ............. 14 (7) 電気学会「IEEJプロフェッショナル制度」................................ 15 (8) 電気学会「電気理科クラブ」............................................ 17 (9) 都市住宅学会「親子の住まい方教室」.................................... 19 (10) 土木学会「キッズプロジェクト」....................................... 20 (11) 日本医学教育学会「医学教育者のためのワークショップ」 ................. 21 (12) 日本化学会「化学の大学入試問題を考える」............................. 22 (13) 日本機械学会「人材育成と人材活躍支援」............................... 23 (14) 日本機械学会「LAJ (Ladies' Association of JSME)出前授業」 ............ 24 (15) 日本経済新聞社主催、日本化学会他後援「日経テクノルネサンス・ジャパン」 i ..................................................................... 25 (16) 日本建築学会「優秀卒業論文賞」「優秀修士論文賞」 ...................... 26 (17) 日本高圧力学会「若手奨励事業」....................................... 27 (18) 日本工学教育協会「教育士(工学・技術)資格制度」 ..................... 29 (19) 日本鋼構造協会「研究助成事業」....................................... 31 (20) 日本材料学会「技能検定・認証制度」................................... 32 (21) 日本材料学会「講師派遣事業」......................................... 33 (22) 日本植物学会「若手奨励賞」........................................... 34 (23) 日本生体医工学会「生体医工学サマースクール」......................... 35 (24) 日本製薬工業協会「作文コンクール」................................... 36 (25) 日本造園学会「学生公開アイデアコンペ」............................... 37 (26) 日本造船工業会「海の仕事.com」....................................... 38 (27) 日本地学教育学会「地層宅配便」....................................... 39 (28) 日本電機工業会「理科教育支援活動」................................... 40 (29) 日本天文学会「ジュニアセッション」................................... 42 (30) 日本物理教育学会「高校物理の授業に役立つ基本実験講習会」 ............. 43 (31) 日本放射光学会「若手研究会」......................................... 44 (32) 日本理科教育振興協会「小学校教師のための理科実験セミナー」 ........... 45 (33) 日本理科教育振興協会「スクールワンダークラブ in 東京」 ............... 46 (34) 日本ロボット学会「ロボット工学セミナー」............................. 47 (35) 物理オリンピック日本委員会「全国物理コンテスト『物理チャレンジ』」 .... 48 (36) 夢・化学-21 委員会、日本化学会「化学グランプリ」 ..................... 51 (37) 日本造園建設業協会「全国造園デザインコンクール」 ..................... 53 (38) 日本地震学会他「地震火山こどもサマースクール」 ....................... 54 ii III. 学協会による初等中等及び高等教育における人材育成事業の詳細 ........... 55 1. 日本化学工業協会「化学人材育成プログラム(化学産業による大学院博士後期課程 支援制度)」............................................................. 56 (1) 事業概要と成果........................................................ 56 (2) 事業の課題 ........................................................... 59 2. 日本数学協会、国際教育学会「教師と大人のための算数・数学講座」 ......... 60 (1) 事業概要と成果........................................................ 60 (2) 受講者アンケート結果.................................................. 63 (3) 事業の課題 ........................................................... 69 3. 「夢・化学-21」委員会「夢・化学-21『わくわく理科・実験教室』 」 .......... 70 (1) 事業概要と成果........................................................ 70 (2) 受講者アンケート結果.................................................. 73 (3) 事業の課題 ........................................................... 80 4. 蔵前理科教室ふしぎ不思議(くらりか)................................... 82 (1) 事業概要と成果........................................................ 82 (2) 受講者アンケート結果.................................................. 85 (3) 事業の課題 ........................................................... 91 5. 日立理科クラブ......................................................... 92 (1) 事業概要と成果........................................................ 92 (2) 受講者アンケート結果.................................................. 97 (3) 事業の課題 .......................................................... 105 IV. 学協会による初等中等及び高等教育における人材育成事業の課題 .......... 106 1. 学協会による初等中等及び高等教育における人材育成事業に関する有識者の意見 ................................................................... 106 2. 学協会による初等中等及び高等教育における人材育成事業の課題 ............ 115 iii (1) 学校教育における理科教育の状況....................................... 115 (2) 学協会による初等中等及び高等教育における人材育成事業の課題 ........... 117 V. 学協会により今後実施される初等中等及び高等教育における人材育成事業の情報 発信 ..................................................................... 121 iv I.調査の背景と目的 初等中等教育段階における理科離れが言われて久しい。また、高等教育段階においては、 専門教育科目と企業ニーズとのミスマッチが生じており、これにより中長期的には産学連 携の要となる「人材」特に技術系人材の量、質がともに低下する事が懸念されている。 こうしたことを背景として、企業や大学、公的研究機関の研究者の集まりである学協会 でも、危機感が高まり、初等教育から高等教育までの幅広い段階において様々な人材育成 の取組が試みられている。 しかし、学協会を中心とした活動は、①各取組に関する情報が共有されず過去の経験が 十分に活かされていないこと、②単独、単発のイベントがほとんどであること、③コンタ クト先や手続きがそれぞれ異なること、などの課題があり、必ずしも教育現場のニーズと スムーズに結びついているとはいえない状況にある。 本調査では、各学協会のこれまでの取組について、①その実施内容、成果及び課題を調 査するとともに、学協会ならではのグッドプラクティスを抽出した。また、学協会同士で の情報共有を促進するとともに、学協会の取組について教育現場から容易にアクセスでき るようにするため、②今後の実施計画、体制、責任者等の情報を集約し、③開催情報、内 容等を、インターネット上で一元化して公開した。これにより、今後より一層多くの企業 を巻き込んだ形での新たな取組に対する布石とすることを目指したものである。 1 II.学協会による初等中等及び高等教育における人材育成への取組状況 学会及び業界団体等の協会(以下、両者を合わせて「学協会」という。)により行われて いる初等中等及び高等教育における人材育成事業の実態を、各学協会のウェブサイト等に より調査し、整理した。 1.学協会による初等中等及び高等教育における人材育成事業の分類 本調査では、学協会により行われている初等中等及び高等教育における人材育成事業の 実態を調査・整理するに当たって、該当する事業を、事業対象者や事業内容等により次の ように分類した。 事業対象者には、初等中等及び高等教育に在学している児童・生徒・学生が中心である が、その指導者である教員も含めている。 ただし、教員自らの研究を支援する事業は、本調査の対象に含めていない。(例えば、大 学の若手教員(研究者)育成を目的とした事業は調査対象に含めていない。ただし、大学生 を対象とした事業は調査対象に含めている。) 学協会により行われている初等中等及び高等教育における人材育成事業の分類 〔対象者に直接働きかけるもの〕 ・講座・教室・セミナー・研修 ・講師(専門家)派遣 ・コンテスト・表彰 ・学会・国際大会への参加推薦 ・奨学金支給 等 〔対象者の教育環境を整えるもの〕 ・教育プログラム・教材の開発 ・教育プログラム・入試問題の評価 ・実験環境の整備(学校の理科教室の整理整頓、実験器具の修理等) ・講師資格認定 等 以下で人材育成事業を紹介する際には、その事業がどのような内容の事業か一目で分か るよう、最初に、上記に基づく事業分類を記載している。 2 2.学協会による初等中等及び高等教育における人材育成事業の実施状 況 (1) 初等中等及び高等教育における人材育成事業を実施している学協会の一覧 本調査では、約 100 の学協会を、学問分野が偏らないよう、また学会と協会のバランス にも配慮して選定して、初等中等及び高等教育における人材育成事業の実施状況を調査し た。 調査の結果、以下の学協会において、初等中等及び高等教育における人材育成事業の実 施がみられた。 なお、下表で用いている分野分類は、日本学術会議の「日本学術会議協力学術研究団体」 をベースに、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)にて加工したものである。 本調査において初等中等及び高等教育における人材育成事業の実施がみられた学協会 生 命 科 学 分野 基礎生物学 農学 統合生物学 基礎医学 臨床医学 健康・生活科学 理 学 ・ 工 学 薬学 環境学 数理科学 物理学 学会 日本植物学会 日本造園学会 農業農村工学会 日本水産学会 協会 日本造園建設業協会 日本公園施設業協会 日本公園緑地協会 ランドスケープコンサルタ ンツ協会 バイオメカニズム学会 日本生物物理学会 日本医学教育学会 日本生体医工学会 日本小児科学会 日本発達心理学会 日本コンピュータ外科学会 日本保育学会 日本体育学会 空気調和・衛生工学会 日本小児科医会 日本小児保健協会 日本製薬工業協会 環境情報科学センター 人間・環境学会 廃棄物資源循環学会 日本水環境学会 こども環境学会 日本数学協会 日本物理学会 応用物理学会 日本物理教育学会 日本生物物理学会 日本高圧力学会 日本放射光学会 3 分野 地球惑星科学 情報学 化学 総合工学 機械工学 電気電子工学 土木工学・建築学 教 育 材料工学 理科教育 学会 協会 日本地震学会 石油技術協会 日本火山学会 日本天文学会 日本地質学会 日本自然災害学会 日本地学教育学会 天文教育普及研究会 情報処理学会 日本災害情報学会 地理情報システム学会 日本神経回路学会 人工知能学会 システム制御情報学会 日本シミュレーション学会 日本化学会 日本化学工業協会 化学工学会 新化学技術推進協会 日本高分子学会 夢・化学-21 委員会 日本工学会 日本造船工業会 日本人間工学会 日本工学教育協会 日本安全教育学会 地域安全学会 日本原子力学会 計測自動制御学会 日本機械学会 日本ロボット工業会 日本ロボット学会 自動化推進協会 精密工学会 機械技術協会 農業機械学会 電気学会 日本電機工業会 電子情報通信学会 日本バーチャルリアリティ学会 日本時計学会 都市住宅学会 日本建築家協会 土木学会 日本鋼構造協会 日本建築学会 建築業協会 日本都市計画学会 都市計画コンサルタンツ協 地盤工学会 会 日本地震工学会 日本コンクリート工学会 日本設計工学会 日本材料学会 国際教育学会 日本理科教育振興協会 日本理科教育学会 日本理化学協会 4 (2) 学協会による初等中等及び高等教育における人材育成事業の実施状況の分 析 3.で紹介する 38 の人材育成事業および、III.で詳細に紹介する人材育成事業のうち 学協会が実施している3事業分の計 41 事業について、分野別・事業類型別に実施学協会数 (延べ数)をカウントした(次頁図表参照)。カウントの仕方は、以下の方法に依っている。 ・学協会数には、共催・後援・協力分も含めた。 ・同一分野の複数の学協会によって実施されている事業は、構成学協会の数分をカウン トした。 ・一つの名称の人材育成事業内に、複数種の事業類型が含まれる場合は、複数種分をカ ウントした。 この結果、本調査で調査した人材育成事業 41 事業には、延べ 152 の学協会が関与してい ることが分かった。 分野別に人材育成事業の実施状況をみると、全般に、生命科学分野よりも理学・工学分 野において多く実施されている。延べ 10 学協会以上が人材育成事業を実施している分野と しては、「農学」「物理学」「化学」「機械工学」「電機電子工学」「土木工学・建築学」が挙 げられる。特に「物理学」「化学」分野では、延べ 20 学協会以上で人材育成事業が実施さ れている。 また、人材育成事業として多く実施されている事業分類は、 「講座・教室・セミナー・研 修」と「コンテスト・表彰」であり、いずれも延べ 50 学協会以上で実施されている。これ らに次いでは、 「学会・国際大会への参加推薦」が多くなっており、ここに含まれる国際大 会の中には長い歴史を有している大会もある。 5 分野別・事業類型別人材育成事業実施学協会数 対象者に直接働きかけるもの 事業類型 分野 対象者の教育環境を整えるもの 学会・国際大会 講座・教室・セミ 講師(専門家)派 奨学金支給 コンテスト・表彰 への参加推薦 ナー・研修 遣 教育プログラム・ 教育プログラム・ 実験環境の整備 講師資格認定 教材の開発 入試問題の評価 計 基礎生物学 1 1 農学 10 10 生 統合生物学 命 基礎医学 工 学 臨床医学 1 1 2 1 3 1 3 4 健康・生活科学 4 4 薬学 1 1 環境学 4 4 数理科学 1 物理学 8 5 地球惑星科学 4 4 5 2 5 6 2 4 理 情報学 学 ・ 化学 工 総合工学 学 機械工学 1 5 1 1 20 1 9 7 4 4 5 24 1 9 2 3 1 電気電子工学 6 1 3 1 土木工学・建築学 3 材料工学 1 1 教 理数教育 育 4 1 計 52 5 1 1 16 2 10 1 8 1 2 14 16 1 1 4 5 61 11 6 6 8 6 0 3 152 3.学協会による初等中等及び高等教育における人材育成事業の概要 学協会により行われている初等中等及び高等教育における主な人材育成事業に関する文 献調査結果を以下に整理する。 各事業とも、事業内容を一目で把握できるよう、最初に、1.で決めた事業分類を示し ている。 (1) 応用物理学会「リフレッシュ理科教室」 ①事業分類 講座・教室・セミナー・研修 ②事業実施者 応用物理学会 ③目的・位置づけ 青少年対象科学啓発活動・教育支援事業の一環で実施。 ④実施時期・頻度 全国各地の学会支部により、夏休みを中心とした時期に年 2~5 回程度開催している。 ⑤対象 小中学生及び小中高校教員 ⑥内容 科学実験教室 ⑦その他 2008 年度に開始 7 (2) 化学史学会「化学史研修会」 ①事業分類 講座・教室・セミナー・研修 ②事業実施者 化学史学会 ③目的・位置づけ 高校の理科教員が自信を持って授業で化学史上の事項を扱えるように、授業で直接に使 えるものというよりは、まず教える側の教養を高めることを意図している。 ④実施時期・頻度 年1回(夏休み期間) ⑤対象 高校教員 ⑥内容 科学史を中心とした理科基礎の授業が暗中模索で行われていることから、このような状 況の改善をめざし、教える側の教養を高めるという趣旨のもと、多様な講師を招き、研修 会を実施している。 8 (3) 環境情報科学センター「環境情報科学ポスターセッション」 ①事業分類 コンテスト・表彰 ②事業実施者 環境情報科学センター ③目的・位置づけ 若手研究者の育成および本学会会員との交流促進 ④実施時期・頻度 毎年 11 月頃 ⑤対象 部門が複数あるが、「学生の部」のみ表彰対象。 「学生の部」の対象は、学部生・大学院生等の学生の本学会正会員または準会員 ⑥内容 参加者は、環境動態、人体影響、環境改善技術、環境評価、環境計画、環境管理、環境 情報、環境理念、環境政策、国際協力、保健医療他に関する研究成果をポスターと発表要 旨にまとめて応募し、本学会の全国大会である「環境研究発表会」においてポスターの展 示ならびに来場者への口頭説明を行う。 同日夕方に出展者を中心とする交流会を開催し、優秀ポスターを表彰する。 ⑦その他 2011 年度で第 8 回。 9 (4) こども環境学会他「東日本大震災復興プラン提案競技」 ①事業分類 コンテスト・表彰 ②事業実施者 a)主催 こども環境学会 b)協力 日本ユニセフ協会 c)後援(予定・順不同) 日本学術会議、 日本小児科学会、日本小児科医会、日本小児保健協会、日本保育学会、Children Youth Environment、日本建築学会、日本建築家協会、日本公園緑地協会、日本都市計画学会、日 本造園学会、土木学会、アジア建築家評議会(ARCASIA)、地盤工学会、日本発達心理学会、 日本子ども社会学会、人間・環境学会、日本安全教育学会、日本体育学会、都市計画コン サルタンツ協会、世界建築会議日本組織委員会 JOB、ランドスケープコンサルタンツ協会、 科学技術振興機構、公園緑地管理財団、都市緑化機構、建築業協会、日本造園建設業協会、 日本公園施設業協会、日本ユネスコ協会連盟、日本子ども NPO センター、IPA 日本支部、 チャイルドライン支援センター、日本世代間交流協会、日本機械学会、日本地震工学会、 日本地震学会、日本自然災害学会、地域安全学会、日本災害情報学会、空気調和・衛生工 学会、電気学会、日本コンクリート工学会、廃棄物資源循環学会、日本地域経済学会、農 業農村工学会、日本水環境学会、日本水産学会、日本原子力学会、地理情報システム学会、 まちづくり NEXT 運動 他 ③目的・位置づけ 次世代を担う子どもが元気に育つことができるまちをつくるため、子ども達の意見や視 点を尊重しながら、東日本大震災の被災地が復興するためのプランやプログラムについて、 そのアイデアを世界中から広く求める。 ④実施時期・頻度 内容に記載。 ⑤対象 東日本大震災復興にあたり、まちづくりについて支援したいと考えるすべての人々。 10 参加資格について、年齢により 4 つのカテゴリーを設け、次世代を担う子どもたちや若 者のアイデアが「子どもが元気に育つまちづくり」を具体的に推進するためには非常に重 要として、18 歳以下、12 歳以下という子どもを対象としたカテゴリーを設定した。 カテゴリー1:12 歳以下(Kids) カテゴリー2:18 歳以下(Junior) カテゴリー3:24 歳以下(Senior) カテゴリー4:25 歳以上(Adult) また、子ども達が夏休みの期間を利用して提案できるよう、締切を一般とは別に設定し たり、子どもの参加費は無料にする等の配慮も行われた。 応募者の年齢は 2011 年 4 月 1 日時点の満年齢とし、構成員が複数のカテゴリーにまたが る際は、上位のカテゴリー(最年長者の属するカテゴリー)での応募登録とされた。 応募者の国籍・年齢、個人・グループの別は問わなかった。 ⑥内容 「子どもが元気に育つまちづくり『東日本大震災復興プラン国際提案競技-“知恵と夢” の支援-』」と題し、被災地において、子どもが元気に育つまちづくりを推進するための方 策に関する提案を募集した。ハード・ソフトに関わらず、内容は自由とし、被災された自 治体や住民の方々が希望を持てる提案を求めた。 提案は、参加登録時に以下の2つの分類から選択して受け付けた。 A:震災により甚大な被害を受けた地域・地区に共通するまちづくり等に関する提案 B:震災により甚大な被害を受けた特定の地区に対するまちづくり等に関する提案 スケジュールは以下の通りである。年は全て 2011 年。 ●公告 5 月 25 日(水) ●質疑 6 月 1 日(水)~6 月 10 日(金) ●質疑回答 6 月 17 日(金)まで ●参加登録 6 月 1 日(水)~7 月 15 日(金)(カテゴリー4のみ) 6 月 1 日(水)~8 月 15 日(月)(カテゴリー1、2、3) ●提案書締切 7 月 15 日(金)17:00 必着 (カテゴリー4のみ) 8 月 15 日(月)17:00 必着 (カテゴリー1、2、3) 2011 年 8 月 30 日に審査結果を日本ユニセフ協会において発表し、9 月 25 日(日)から 10 月 2 日(日)まで、UIA(国際建築家協会)の大会が東京で開催される時期に合わせて 建築会館建築博物館において応募作品の展示会を行った。また、作品集と各賞の賞状を 9 月 25 日(日)に会場にて授与した。 11 提案は、被災地の首長宛に寄贈され、また、被災された住民主体によるまちづくりの資 料として活用され、日本ユニセフ協会、関係学協会をはじめとする専門家集団がサポート し、速やかな復興、まちづくりの実現への推進力となることが期待されている。 12 (5) 生物物理若手の会主催、日本生物物理学会後援「生物物理夏の学校」 ①事業分類 講座・教室・セミナー・研修 ②事業実施者 a)主催 生物物理若手の会 b)後援 日本生物物理学会 ③目的・位置づけ 生物物理の若手研究者が、研究室や分野の垣根を飛び越え、交流を深めること。 生物物理若手の会で最も重要な活動との位置付け。 ④実施時期・頻度 年1回 ⑤対象 大学生・院生、社会人 ⑥内容 毎年夏に全国から生物物理若手研究者が集い、研究室や分野の垣根を飛び越え、交流を 深めるゼミ合宿を行う。活動には、講演やグループディスカッション、ポスターセッショ ン等が含まれる。 ⑦その他 1961 年に開始され、2010 年が 50 回目となる。 13 (6) 石油技術協会「特別見学会(地質巡見および物理探査の実態)」 ①事業分類 講座・教室・セミナー・研修 ②事業実施者 石油技術協会 ③目的・位置づけ 石油・天然ガスの開発(探鉱・掘削・生産など)に対する関心や理解を高めてもらうこ とを目的に、大学の資源・地質系研究室に属する学生・院生および同学会の会員の周囲に おられて関心を有する非会員の方を主な対象として、石油技術協会のアウトリーチ活動と して実施。 ④実施時期・頻度 原則年 2 回 ⑤対象 関心を有する学生・院生及び同学会会員周辺の関心を有する者 ⑥内容 年 2 回のうち 1 回は(地質編)は、水溶性天然ガスやヨウ素の生産施設、天然ガスの自 然湧出現場、貯留層であるタービダイト砂層などが露出する地質の露頭現場の見学を 3 本 柱に、毎年秋に房総半島(千葉県)で実施。 ⑦その他 2008 年度に開始し、毎回 40 名程度が参加している。 14 (7) 電気学会「IEEJプロフェッショナル制度」 ①事業分類 講師資格認定 ②事業実施者 電気学会 ③目的・位置づけ 講習会・セミナーでの講演、技術課題の解決・指導、非常勤講師としての講義、技術者の 育成、調査業務の支援など企業や教育の現場において、高度な知識・経験を有するプロの 技術者、教育者が求められていることをふまえ、永年、電気学会の会員であって、高度な 技術力・専門性を有する会員を「IEEJ プロフェッショナル」として電気学会が認定し、登 録された専門分野、活動形態、活動地域、セールスポイントなどのデータに基づき、技術 コンサルタント、講師、実験指導員などとして活躍してもらえるよう、電気学会がその橋 渡しを行うサービスを「会員の知識・経験流通サービス」として開始した。 ④実施時期・頻度 申請は随時受け付けており、審査は原則年 2 回 ⑤対象 認定基準は以下の通りである。 ・電気学会の正員であること ・IEEJ プロフェッショナルとして活動することに強い熱意を持っていること ・会員在籍期間が累積で 10 年間以上であること ・「指導・研究・その他の実績」があること ・IEEJ プロフェッショナル倫理規程を遵守すること ⑥内容 「IEEJ プロフェッショナル資格認定規程」を定めており、本規程に基づき電気学会に設 置した「IEEJ プロフェッショナル運営委員会(委員長:副会長(総務企画担当)) 」が主催 する審査会にて審査し、総務会議と理事会での承認を経て、「IEEJ プロフェッショナル」 として認定する。 以下のような人材を対象として想定している。 ・専門的な技術力を有する人材 ・豊富な経験により蓄積された職業的な知恵を有する人材 15 ・電気学会のネットワークを生かした問題解決・提案ができる人材 ・日本の産業活性化を望む熱き人材 ・収入目的だけでなく、社会貢献による充実感の獲得を目的とする人材 認定希望者は、本学会のウェブサイト上で、認定に必要な事項と希望する活動に関する 項目(専門分野、希望する活動形態、希望する活動地域、学会における活動履歴、取得資 格、指導・研究・その他の実績、セールスポイント)を記入して申請する。 申請は随時受け付けており、審査は原則年 2 回としており、スケジュールは下記の通り である。 9 月初旬までの申請分:10 月下旬に審査結果を通知 3 月初旬までの申請分:4 月下旬に審査結果を通知 認定者は、認定証を授与される他、学会名入りの名刺の発行を有料で受けられ、活動評 価のフィードバックを受けられる。また、活動実績が学会誌等で報告される。 ⑦その他 2012 年 2 月現在で 131 人の「IEEJ プロフェッショナル」が認定されている。 認定された IEEJ プロフェッショナルは、原則として個人で倫理規定を遵守して活動する。 また、電気学会があらかじめ「IEEJ パートナー」として認定した外部団体が、電気学会 事務局に代わって、企業や教育現場などクライアントを発掘し、クライアントからの要望 と IEEJ プロフェッショナルの希望をマッチングして、活動の場を提供することもある。そ の場合は、IEEJ プロフェッショナルは、IEEJ パートナーと業務委託契約を結んで活動する。 2007 年から 3 年間武蔵村山市において実施した例、科学技術振興機構(JST)の「理科 支援員等配置事業(SCOT 事業)」への参加や各区市町村教育委員会の理科支援施策への参 加などの実績がある。 16 (8) 電気学会「電気理科クラブ」 ①事業分類 教育プログラム・教材の開発 講師(専門家)派遣 ②事業実施者 電気学会 ③目的・位置づけ 技術が日本の維持発展をさせるベースになっているが、子供達の理科離れは、それを危 うくすることが懸念される。 「技術立国日本」の再生のために、低年齢層から理科/科学に 親しむ機会を増やす。 ④実施時期・頻度 随時 ⑤対象 小中学校教員、理科支援員、教員志望者 ⑥内容 IEEJ プロフェショナルを中心として、個別の案件に対して必要な人材を募り、活動を遂 行している。 具体的には、次のような事項を、教育委員会や学校の要望に合わせて企画し、実施して いる。 a)理科実験 小中学生を対象とした理科実験のプログラムと教材を開発して提供している。 また、依頼に応じて学校に講師を派遣して理科実験を支援している。 1)小中学生の理解を促す理科実験機材の開発 2)電気技術等の体験に基づく経験の講演/公開体験実験 キャリア教育目的での講演も行っている。 教材は、出典明記を条件に、ウェブサイト上から無料でダウンロードできる形で提供し ている。 17 b)学校理科支援 学校教員や理科支援員を対象とした講演等を、依頼に応じて実施している。 1)小中学生対象の理科実験事例を先生や支援員へ講演 2)地域で実施される理科支援事業のアドバイザー また、教員を目指す学生を対象とした電気、力学を中心とした工学系の講義等も、依頼 に応じて実施している。 なお、活動に必要となる実験機材の貸出費、人件費、交通費等の最低限必要とする費用 は、原則依頼元に応分の予算化をお願いしている。 ⑦その他 2009 年 1 月発足 18 (9) 都市住宅学会「親子の住まい方教室」 ①事業分類 教育プログラム・教材の開発 ②事業実施者 都市住宅学会、住まいの情報発信局 ③目的・位置づけ 「住まいの場」「歴史、気候・風土」 「ライフスタイル」の3つの視点を取り上げ、すま いのありかたを親子で見直すこと。 ④実施時期・頻度 不定期更新(随時) ⑤対象 親子を対象とし、特に対象年齢は設定されていない。 ⑥内容 「住まいの場」「歴史、気候・風土」 「ライフスタイル」の3つの視点に基づき、専門の 研究者の監修の下、クイズを交えながら、以下の内容等について親子で学ぶことができる。 町並み保存とその取組、福祉のまちづくり、集住のルール、緑地の役割、不動産の価値、 環境に配慮した住まいと暮らし、伝統的建造物(城、長屋)、食卓、採光、防犯、涼と暖の とり方等。 19 (10) 土木学会「キッズプロジェクト」 ①事業分類 教育プログラムの開発 講座・教室・セミナー・研修 ②事業実施者 土木学会 教育企画・人材育成委員会 キッズプロジェクト検討小委員会 ③目的・位置づけ 小・中学校における「総合学習」や理科・社会の授業に関する支援活動を行い、支援の 仕組みを検討すること。 その際、他の機関との情報交換や協力体制の構築を図ること。 また、一般市民を対象とし、社会基盤に関する啓発や土木を身近に感じてもらうための 情報提供を図ること。 ④実施時期・頻度 随時 ⑤対象 小学校・中学校教員 ⑥内容 小中学校の「総合学習」および理科・社会などの教科教育における学習支援(環境,暮 らし・地域) ⑦その他 各地域での支援事例や、総合学習に使用し得るテキストについては、土木学会のキッズ プロジェクト検討小委員会(http://committees.jsce.or.jp/education12/)ホームページ 上でリスト化している。 20 (11) 日本医学教育学会「医学教育者のためのワークショップ」 ①事業分類 講座・教室・セミナー・研修 ②事業実施者 主催:日本医学教育学会 共催:厚生労働省、文部科学省 ③目的・位置づけ 医師養成機関(医学部・医科大学、臨床研修指定病院等)において、指導的立場にある 人材を対象に、それぞれが所属する施設や地域におけるファカルティ・ディベロップメン ト(FD)を企画・運営する能力を修得すること。 ④実施時期・頻度 年1回 ⑤対象 医学部・医科大学における教務委員長等、卒前教育の責任ある立場の方、臨床研修指定 病院における臨床研修委員長等、臨床研修指導の責任ある立場の方 ⑥内容 ワークショップ、講演 ⑦その他 2010 年度に第 37 回が実施されている。同学会では、他にも医学教育に関する情報提供 や表彰、セミナー等を実施している。 21 (12) 日本化学会「化学の大学入試問題を考える」 ①事業分類 教育プログラム・入試問題の評価 ②事業実施者 日本化学会 教育・普及部門 入試問題検討小委員会 ③目的・位置づけ 大学入試問題が高等学校の学習指導要領に準拠した内容となっているかどうかを確認す るとともに、入試問題の作成に携わる大学教員に対して、入試問題を作成する際の指針と して活用してもらうことを意図している。一方で、大学が求める知識レベル・学生像を、 受験指導に当たる高等学校の先生に理解してもらうことも意図している。 ④実施時期・頻度 毎年 ⑤対象 大学教員、高校教員 ⑥内容 旺文社『全国大学入試問題正解』に掲載された全国の大学の化学の入試問題を対象とし、 大学と高校の教員からなる委員 9 名と協力委員 8 名で、入試問題の検討を行っている。 ⑦その他 検討結果は、毎年、日本化学会が発行する月刊誌『化学と教育』に掲載されている。 22 (13) 日本機械学会「人材育成と人材活躍支援」 ①事業分類 講座・教室・セミナー・研修 講師(専門家)派遣 教育プログラム・入試問題の評価 ②事業実施者 日本機械学会内の組織である「イノベーションセンター」 ③目的・位置づけ イノベーションセンターは、技術者の人材育成・活用、技術者資格の認証・認定や産業 界の技術開発・生産活動を支援することにより、機械工学分野のイノベーションを牽引し、 産官学の連携強化、外部資金の導入促進による学会事業の拡大と学会プレゼンスの向上に 貢献するために 2009 年 4 月に設置された。 ④実施時期・頻度 事業による ⑤対象 学会員 ⑥内容 イノベーションセンターでは、大きく「人材育成と人材活躍支援」「技術相談・研究協力・ 技術ロードマップ」「資格・認証・認定」の 3 つの事業を行っているが、以下、「人材育成 と人材活躍支援」について記す。(「資格・認証・認定」事業は、教育資格の認定ではなく、 技術者資格の認定であるため、除いた。) 「人材育成と人材活躍支援」では、次のような事業を実施している。 ・中小企業技術者と学生 交流研修バスツアーの開催 ・大学院教育に関する提言、修士論文の位置づけと達成度評価 ・インターンシップ教育支援 ・シニア年代の会員の活躍の場として,中小企業支援,教育現場支援などとマッチング 23 (14) 日本機械学会「LAJ (Ladies' Association of JSME)出前授業」 ①事業分類 講座・教室・セミナー・研修 講師(専門家)派遣 ②事業実施者 日本機械学会内の組織である「Ladies' Association of JSME」 ③目的・位置づけ 「Ladies' Association of JSME」は、機械工学分野における女性研究者・技術者の活動 を支援し,女性会員の増強を図ることを目的に 2004 年 10 月に発足した。1.機械工学分野 で活躍している女性の積極的な情報発信、2.機械工学に携わっている女性のネットワーク の充実化と拡大、3.性別をこえた研究・職場の環境つくりを主な目標に活動しており、「LAJ 出前授業」は、その活動の一つである。 ④実施時期・頻度 依頼に応じ ⑤対象 主に文理選択を前にした女子生徒 ⑥内容 高等学校や中学校からの依頼を受けて学校で物理や力学の授業を実施したり、女子学生 向けのセミナーや交流会、女性フォーラム等を開催している。 機械工学を学ぶ女性は少ないため、機械工学科を卒業した後の仕事の内容についても、 学会員である大学教員や企業の研究者が話し、生徒が未来を描けるようにするキャリア教 育の面も兼ねている。就職やその後仕事を長く続けていくための支援も行っている。 24 (15) 日本経済新聞社主催、日本化学会他後援「日経テクノルネサンス・ジャパ ン」 ①事業分類 コンテスト・表彰 ②事業実施者 a)主催 日本経済新聞社 b)共催 日経サイエンス c)後援 文部科学省、国立高等専門学校機構、 日本化学会、日本機械学会、日本工学会、日本生体医工学会、高分子学会、電気学会 ③目的・位置づけ 理工系学生が日ごろの研究のなかで思い描く、「企業が持つ最先端技術があればこんな ことができるかも」「こんな製品があれば未来はすてきになるはず」といったアイデアと企 業の技術や事業を組み合わせたらどんな画期的なことができるかを考える場とする。 ④実施時期・頻度 年 1 回。募集期間は 6 月~8 月頃。 ⑤対象 大学生、修士課程・博士課程大学院生、高等専門学校生(3 年生以上および専攻科)の 個人またはチーム(チームは 5 名まで)。チームで応募する場合、チームリーダーが理工系 学生であれば、文系学生の参加も自由。 ⑥内容 応募者は、参加企業が示す各社の募集テーマと技術情報をもとに、「企業に研究開発して ほしい未来の夢」を提案する。参加企業各社の技術者・研究員が、それぞれの募集テーマ に対する応募アイデアを審査し、受賞アイデアを決定する。 ⑦その他 過去に 4 回実施されている。 25 (16) 日本建築学会「優秀卒業論文賞」「優秀修士論文賞」 ①事業分類 コンテスト・表彰 ②事業実施者 日本建築学会 ③目的・位置づけ 教育的観点から、卒業論文・修士論文を学業のひとつの成果として評価・顕彰すること。 ④実施時期・頻度 年1回 ⑤対象 大学生、大学院生 ⑥内容 当該年度の卒業論文・修士論文について、指導教員の推薦書を付して本人が応募したも のに対し、卒業論文 15 件以内、大学院修士論文 15 件以内をそれぞれ表彰する。 選考は 2 段階方式であり、第 1 次選考は概要で行われ、候補論文に選定されると第 2 次 選考が論文本文にて行われる。 表彰論文は、題名、著作者名、推薦理由が学会誌『建築雑誌』に発表される。 ⑦その他 田島ルーフィング(株)および(株)タジマからの基金 1 億 5 千万円により設置された 「建築教育振興基金(タジマ基金) 」により、顕彰されている。 1990 年の開始以来、年別応募総数は次のとおりである。 年 数 1990 88 1991 108 1992 133 1993 145 1994 128 1995 115 1996 133 1997 136 1998 142 年 数 2003 208 2004 162 2005 178 2006 211 2007 204 2008 224 2009 212 2010 216 2011 204 26 1999 161 2000 195 2001 199 2002 231 (17) 日本高圧力学会「若手奨励事業」 ①事業分類 コンテスト・表彰 学会・国際大会への参加推薦 奨学金支給 ②事業実施者 日本高圧力学会 ③目的・位置づけ 学生会員や学位取得後間もない正会員を奨励すること ④開始時期・開始経緯 2005 年 ⑤実施時期・頻度 毎年 ⑥対象 ポスター賞、学生海外発表奨励金:学生会員 博士論文紹介:学位取得後2年以内の正会員 ⑦内容 学生会員や学位取得後間もない正会員を奨励するため、以下の事業を実施。 ○ポスター賞 高圧討論会で筆頭発表者としてポスター講演を行う学生会員で,予めポスター賞にエン トリーした中から,「研究のアイディアの良さ」「実験の見事さ」「ポスターの分かりやす さ」など何らかの点で見る人に強くアピールするポスター発表を 3 件程度,学会評議員等 からなる審査員に選んでもらい,その発表者に対して授与される賞 ○学生海外発表奨励金 国際的な視野をもった若手研究者の育成を促すために,海外で開催される国際研究集会 等で研究発表をおこなう学生の中から,海外での発表機会の少ない学生に対して、奨励金 27 を贈呈 ○博士論文紹介 本会員を対象とした若手奨励策の一つとして,会誌「高圧力の科学と技術」に博士論文 紹介用の解説記事の分野を新設し,学位取得後間もない若手研究者の博士学位論文を要約 した解説記事を募集。この企画の主旨は,学位取得後間もない新進気鋭の若手研究者を学 会内外の多くの研究者に知っていただくこと,若手研究者自らの進路を開拓するための自 己アピールの場を広げること。 ⑧実績 ○ポスター賞 過去に 30 名が受賞 ○学生海外発表奨励金 4 名が受賞 28 (18) 日本工学教育協会「教育士(工学・技術)資格制度」 ①事業分類 講師資格認定 ②事業実施者 日本工学教育協会 ③目的・位置づけ 高等教育機関や企業において工学教育・技術者教育に携わる者の教育上の能力の維持向 上を図る。 ④実施時期・頻度 毎年1回認定希望者を募集し、認定 2011 年は 7~9 月に受け付け、10~12 月に審査を行った。 ⑤対象 高等教育機関や企業において工学教育・技術者教育に携わる者 ⑥内容 教育士(工学・技術)資格に、特別、上級、中級、初級の4つの級別を置き、それぞれ の資格に必要とされる能力は以下の通りと定め、毎年1回認定希望者を募集し、書類審査 並びに面接審査を行い、認定している。 資格の有効期間は、その資格を認定された日(理事会承認日)から、資格認定年度の翌 年度から数えて5年目の年度末(3月末)までとしている。 1)特別教育士(工学・技術) 高度な専門知識を有し、教育に関する高潔な情熱と見識を有し、広範で総合的な知見や 十分な経験をもとに、所属機関ならびに学協会等において適切な指導・教育、企画、マネ ジメントできる能力を有する者 2)上級教育士(工学・技術) 高度な専門知識を有し、教育に関する高潔な情熱と見識を有し、広範で総合的な知見や 十分な経験のもとに、適切な指導・教育を実践し学習者の能力を引き出せる者、または企 業にあって複数のグループのリーダーを指導し、全体として適切な人材育成ができる者 3)中級教育士(工学・技術) 専門知識を有し、教育に関する高潔な情熱と見識を有し、総合的な知見や十分な経験を 29 もとに、適切な指導・教育を実践し学習者の能力を引き出せる者、または企業にあって複 数の人材に対して、仕事を通じてそれぞれの長所を伸ばす育成を実践できる者 4)初級教育士(工学・技術) 専門知識を有し、教育に関する高潔な情熱と見識を有し、適切な指導・教育を実践し学 習者の能力を引き出せる者、または企業にあってメンター、チューターなどの役割をこな して、後輩の育成指導ができる者 ⑦その他 2005 年度に開始。 30 (19) 日本鋼構造協会「研究助成事業」 ①事業分類 奨学金(助成金)支給 ②事業実施者 日本鋼構造協会 ③目的・位置づけ 土木・建築の両分野で、鋼構造を研究する若手グループに対する研究助成。 ④実施時期・頻度 年1回 ⑤対象 協会会員で 49 歳以下の若手研究者。学生会員による研究も、ほぼ毎年助成対象となって いる。 ⑥内容 土木・建築の両分野で、鋼構造を研究する若手グループの研究に対し、1 グループ 30 万 円~50 万円の規模の研究助成を行う。応募研究は、協会内に設けられた「学術委員会」と 「学術研究助成小委員会」で審査された上で助成が決まる。 ⑦その他 2004 年度から開始。以前は募集地域の指定があったが、現在では、全国の国内研究者を 対象としている。学生会員への研究助成実績は以下のとおり。 年度 件数 2004 0 2005 0 2006 4 2007 3 31 2008 2 2009 4 2010 2 2011 1 (20) 日本材料学会「技能検定・認証制度」 ①事業分類 講座・教室・研修・セミナー 講師資格認定 ②事業実施者 日本材料学会 ③目的・位置づけ 機械構造物や土木・建築構造物の製品設計や既設製品の安全性を評価する上では、使用 部材の各種強度の実測データの正確性・信頼性の確保が求められる。また、化学組成等の 材料分析や強度以外の諸機能の評価、さらに各種シミュレーション技術等についても、可 能な限り客観的で標準的な方法に従うことにより、得られた結果の普遍性を保証すること が重要である。このような機能評価の際に要求される知識や技能を身に付けた人材を、講 習や検定試験を通じて養成し、材料学および科学技術の更なる発展と産業振興に資するこ とを目的としている。 なお、現在実施されている技能検定講習・技能検定試験は、金属材料に対する「硬さ試 験・引張試験」と「疲労試験」である。今後、実施可能な分野から順次立上げられる予定 である。 ④実施時期・頻度 年1回。硬さ試験・引張試験:2012 年 9 月 18 日(火)、19 日(水) 疲労試験 :2012 年 9 月 20 日(木)、21 日(金) ⑤対象 本技能検定・認証制度は、企業の若手・中堅・壮年技術者ならびに大学学部高学年生(高 専専攻科学生を含む) ・大学院学生を対象としている。なお、大学院生については、在学中 の研究活動を実務経験とみなし、在学中の受検が認められているが、大学学部3年生以上 および高専専攻科学生については、 「硬さ試験・引張試験」の3級の受験のみ認められてい る。 ⑥内容 技能検定講習受講後に、技能検定試験を受検する。現時点では、初心者から材料試験の 分野で種々のレベルの経験を有する者まで受講者の幅がかなり広いことが予想されるため、 それぞれの技能種別において到達水準に応じた複数の級区分が設けられている。 32 (21) 日本材料学会「講師派遣事業」 ①事業分類 講師(専門家)派遣 教育プログラムの開発 ②事業実施者 日本材料学会 ③目的・位置づけ 身近な材料に関する理解を深めることを目的としている。また、小中学校の総合学習の 対応にも資することを目的としている。 ④実施時期・頻度 依頼に応じ、随時開催 ⑤対象 小学生・中学生・高校生、一般 ⑥内容 小学校・中学校・高等学校の先生、PTA 等の要請に応じ、無料で講師を派遣している。 申込者は 12 のテーマの中から受けたい授業を選び、そのテーマ別にプログラムが用意され ている。 33 (22) 日本植物学会「若手奨励賞」 ①事業分類 コンテスト・表彰 ②事業実施者 日本植物学会 ③目的・位置づけ 優れた研究を行う大学院生、ポスドク等を中心とした若手研究者の表彰。 ④実施時期・頻度 年1回 ⑤対象 当該年 4 月 1 日において満 32 歳未満あるいは研究歴(大学院在籍時を含む)が 10 年未 満の者。主に大学院生,ポスドク等が対象。 ⑥内容 受賞者には当該年の大会において賞状ならびに副賞が授与される。また,受賞者は受賞 講演などの研究発表を行う。 ⑦その他 2004 年から開始され、毎年 3~4 名程度が受賞している。 34 (23) 日本生体医工学会「生体医工学サマースクール」 ①事業分類 講座・教室・セミナー・研修 ②事業実施者 主催:日本生体医工学会 ③目的・位置づけ ・ 工学系の学生にとっては医学生物系分野に関する教育の一貫。また、同学会医学生 物系の会員にとっては、医学生物学における諸問題を工学的手法によって解決をは かる事例を学ぶことができる。医学生物系の教育が工学でも重要視されているが、 現状は日本の工学系大学ではそれが十分になされているとはいえない。本サマース クールは工学系における医学生物系教育の底上げと医学生物学における諸問題への 工学系サイドからのアプローチの仕方を学ぶことが目的のひとつである。 ・ 学生や若い人たちが率先して研究会などの企画をするチャンスが少なくなっている。 将来的にはこのサマースクールの企画は若い人たちに任せる方向で考えている。い ろんな分野の日本の将来を担う若手が交流を深めながら生物を理解するというのは 有意義なことと考える。 ④実施時期・頻度 年 1 回、夏に開催 ⑤対象 若手研究者や医療関係者、ポスドク、大学院生、大学生など。 ⑥内容 合宿形式による講演、演習等 ⑦その他 2002 年に開始し、毎年 20 名程度が参加している。 35 (24) 日本製薬工業協会「作文コンクール」 ①事業分類 コンテスト・表彰 ②事業実施者 主催:日本製薬工業協会 後援:朝日小学生新聞 ③目的・位置づけ 小中学生を中心とした若年層への教育・啓発活動推進 ④実施時期・頻度 不定期(同協会ウェブサイトでは、2004 年、2006 年、2008 年の受賞作品一覧あり。) ⑤対象 小中学生 ⑥内容 「夢のくすり」をテーマにした作文コンクール。全国の小・中学生を対象に、まわりの 誰かのため、自分のため、あるいは社会のため、世界全体のために「あったらいいな!」 と思う「夢のくすり」をテーマにして、自由な発想による作文を募集。審査により受賞す る個人・団体を選定。 ⑦その他 同協会ウェブサイトでは、「小中学生のためのくすり情報」として、上記の作文コンクー ルのほか、「くすり研究所」(くすりについての正しい知識を楽しく身に付けられるウエブ ベースの学習教材)、「見学できる施設一覧」の情報提供をしている。 36 (25) 日本造園学会「学生公開アイデアコンペ」 ①事業分類 コンテスト・表彰 ②事業実施者 日本造園学会 ③目的・位置づけ ランドスケープ分野の若手人材の育成 ④実施時期・頻度 年1回 登録期間 2012 年 2 月 15 日(水)~2012 年4月 10 日(火) 応募作品の受付 2012 年 4 月 16 日(月)~2012 年 4 月 30 日(月)(必着) 一次審査会 2012 年 5 月初旬 二次審査会 2012 年 5 月 18 日(金) 審査結果発表・表彰式 2012 年 5 月 19 日(土)(平成 24 年度全国大会) ⑤対象 高校生、専門学校生、短大生、大学生、大学院生の個人またはグループ ⑥内容 実在の地域を指定し、①対象地全域のマスタープラン、②拠点のデザイン(選択は自由) および③パブリックスペースの活動やマネジメントのプログラムの提案を受け付け、学会 員の研究者のみならず、当該地域の関係団体や自治体と連携して審査を行い、学会の全国 大会にて表彰する。 37 (26) 日本造船工業会「海の仕事.com」 ①事業分類 教育プログラム・教材の開発 ②事業実施者 日本造船工業会 ③目的・位置づけ 海洋国家日本の将来を担う青少年の皆様に、海の仕事の魅力や重要性などについて理解 を深めてもらう。 ④実施時期・頻度 常時 ⑤対象 学校、家庭 ⑥内容 科学者・技術者に限ってはいないが、造船業や舶用工業を含めて、海の仕事の魅力や重 要性を伝えるウェブサイト。学校教育の副教材や家庭学習の資料として、海や海の仕事に 関する資料をダウンロードすることもできる。 38 (27) 日本地学教育学会「地層宅配便」 ①事業分類 教育プログラム・教材の開発 ②事業実施者 日本地学教育学会 広報委員会メンバー (文部科学省科学研究費補助金を利用した研究) ③目的・位置づけ 最近では、都市化の影響や、道路工事等で新たな露頭が現れてもすぐに被植されるなど して露頭が消滅する場合が多く、観察可能な露頭がどんどん少なくなっている。その一方 で、学習指導要領では地層分野の学習で野外観察を大変重視している。このギャップを宅 配によって埋めることが目的。 ④実施時期・頻度 要請に応じて実施 ⑤対象 小学校、中学校、高等学校 ⑥内容 利用を希望する学校が借りたい標本を「標本リスト」から選定して申し込み、同学会が 標本を送付する方式。 同学会ウェブサイトでは、標本の活用例も示している。 ⑦その他 本事業の利用者は小学校が最も多いとのことである。同学会では、他に地学教育の発展 や同学会に貢献および尽力している小学校・中学校・高等学校等に勤務する会員を対象と し、児童・生徒の指導実践およびそれに関する研究(論文・ポスターセッション・口頭発 表等)の奨励に寄与することを目的とする「渡部景隆奨励賞」を実施。 39 (28) 日本電機工業会「理科教育支援活動」 ①事業分類 a)教育プログラム・教材の開発 b)講座・教室・セミナー・研修 ②事業実施者 日本電機工業会 ③目的・位置づけ 子どもたちの科学・技術への興味・関心や理科学習への有用感を高め、次世代を担う科 学技術人材を育成する。 ④実施時期・頻度 a)常時 b)希望に応じ ⑤対象 小学校 理科専科教員または 6 年生担当教員 ⑥内容 教育関係者とともに「社会とつながる理科授業」を支援している。 新学習指導要領から実施される小学校 6 年生 理科「電気の利用」の単元と連動した“社 会とつながる理科授業 JEMA プログラム”と小学校教員のための“理科教育セミナー”を 提供している。 a)社会とつながる理科授業 JEMAプログラム 小学校6年生 理科「電気の利用」の単元と連動した授業プログラムと教材。 身の回りにある電気製品をはじめ、発電機や電子基板など普段目にすることのない産業 製品を題材に、学習した内容が社会でどのように活用されているのか、子どもたちの好奇 心を引き出す情報を教材化して提供しており、単元の展開構想や時数にあわせて、教員が 自由にアレンジして活用できる。 教材は、「ティーチャーズガイド(現在 第 2 版)」と「授業用教材 CD(パワーポイント教 材、児童用ワークシート)」から構成され、ウェブ上でダウンロードできる形で提供してい る。 40 b)授業で活かせる理科教育セミナー 小学校6年生 理科「電気の利用」の単元に特化した、教員を対象とした研修。 電気の専門家である講師が、実験の注意事項や実験器具選定の視点、電気に関する基礎 知識を解説するとともに、「社会とつながる理科授業 JEMA プログラム」 の模擬授業を行う。 教員は、児童がどのように感じ、考えるのか、児童の立場で学習のポイントを体験するこ とで、思考プロセスを検証できる。セミナーでは、 「ティーチャーズガイド(現在 第 2 版)」 と「授業用教材 CD(パワーポイント教材、児童用ワークシート)」も提供する。 プログラムは 3 時間で、教育委員会、学校、教員の任意団体からの依頼を受けて、教育 委員会が開催する教員研修として、または教員が任意で参加している「研究部会」等の研 修プログラムとして無料で開催している。 ⑦その他 2008 年から開始 41 (29) 日本天文学会「ジュニアセッション」 ①事業分類 コンテスト・表彰 ②事業実施者 主催:日本天文学会 共催:天文教育普及研究会 ③目的・位置づけ ・ 中学生や高校生が発表する場を天文学会の中につくり、天文学についての学習や研 究活動をより活性化させるきっかけとすること。 ・ プロの天文学者に接することで、生の天文学を知り、天文学の楽しさを感じること ・ 天文学会で議論されているような最先端の天文学について、まだ理解はできなくて もよいので、その面白さ・奥深さを体験すること ④実施時期・頻度 年 1 回(天文学会の年会時) ⑤対象 中学生及び高校生 ⑥内容 天文学会にて、中学生及び高校生が口頭またはポスターにて発表 ⑦その他 2000 年に開始。毎年、口頭及びポスターをあわせて 20 件程度の発表がある。 42 (30) 日本物理教育学会「高校物理の授業に役立つ基本実験講習会」 ①事業分類 教育プログラム・教材の開発 ②事業実施者 主催:日本物理教育学会 *毎回、主催に日本物理教育学会は含まれているが、他の主催者がいる場合もある。 共催者、後援者もいる。 ③目的・位置づけ 物理教育研究会ではかねてより、授業の中で有効に使える演示実験や生徒実験の開発や その普及に努めてきた。その成果に基づき、東京大学教養学部附属教養教育開発機構の協 力を得て、DVD付き教材「見て体験して物理が分かる実験ガイド」を作成した。この教 材は、授業に必要な基本的な実験を誰でも確実に効果的に実施できるようにすることを目 的に編纂されたものである。本講習会は、同教材を利用し、高校物理の基本的な実験を体 験し、実験のための基礎的技術を実習するものである。 ④実施時期・頻度 不定期 ⑤対象 現職の物理(理科)教員、物理(理科)教員を志望する学生 ⑥内容 2012 年 1 月 10 日開催分については、高校物理の基本実験について、1 テーマ 40 分程度 で実験実習を行った。参加者は4名ずつ6つの班に分かれ、班ごとのローテーションで 6 テーマ全てについて実習した。 ⑦その他 各回 30 名程度が参加しているとみられる。 43 (31) 日本放射光学会「若手研究会」 ①事業分類 講座・教室・セミナー・研修 事業実施者 日本放射光学会 ②目的・位置づけ 若手研究者のリーダシップの育成、および、研究会で議論されるサイエンスを通じた新 しいネットワークの形成に貢献するとともに、独創的・萌芽的な研究テーマの発掘および その研究促進に寄与すること ③実施時期・頻度 年1回 ④対象 代表者と共同申請者が学会員であること。 その他、2012 年の募集条件には、以下が含まれる。 ・放射光科学の将来を議論する若手主体の研究会である ・放射光科学に関するものであれば研究分野は問わない ・代表者、共同申請者は学会員である ・代表者と共同申請者は全て異なる研究室・研究グループに所属している ・代表申請者および1名以上の共同申請者が 40 歳以下 ・50 万円を上限とした開催費用を補助する(他予算との共催も可能) ・採択された研究会は学会誌への開催報告書提出を義務付ける ・参加想定人数 30 名程度以上とする ・開催時期: 2012 年夏(7 月から 9 月)に開催可能なもの ⑤内容 今後の放射光科学を担う若手研究者が中心となって、放射光科学をどのように展開して いくのかを考える研究会。講演会、ポスター発表、交流会等を実施。 ⑥その他 2009 年(2010 年に第 2 回、2011 年に第 3 回が開催され、2012 年に第 4 回が募集されて いることから推定。) 44 (32) 日本理科教育振興協会「小学校教師のための理科実験セミナー」 ①事業分類 講座・教室・セミナー・研修 ②事業実施者 a)主催 日本理科教育振興協会 共催:全国小学校理科教育研究協議会、愛知教育大学、大阪教育大学 協力:日本理化学協会、日本理科教育学会 b)後援 文部科学省、東京都教育委員会、東京都公立小学校長会 、東京都小学校理科教育研究会 愛知県教育委員会、三重県教育委員会、岐阜県教育委員会、名古屋市教育委員会、刈谷 市教育委員会、愛知県小中学校長会、名古屋市立小中学校長会、愛知県小中学校理科教育 研究協議会、岐阜県小学校理科教育研究会 大阪府教育委員会、奈良県教育委員会、大阪市教育委員会、堺市教育委員会、大阪府小 学校長会、大阪府小学校理科教育研究協議会、奈良県小学校理科教育研究会、大阪市小学 校教育研究会理科部 ③目的・位置づけ 小学校教師が理科の実験を安全に、かつ子どもにとって面白く実施するためのセミナー ④実施時期・頻度 年1回(夏休み時期) ⑤対象 小学校教師(東京地区 100 名、東海地区 60 名、関西地区 50 名) ⑥内容 2011 年度の場合、エネルギー(電機)分野と粒子分野を必修とし、生命分野か地球分野 から一つを選択し、実験材料・器具を用いながら講習を受ける。 ⑦その他 2001 年から開始。2004 年度より毎年開催。2009 年度からは関西地区、2011 年度からは 東海地区でも開催が始まっている。 45 (33) 日本理科教育振興協会「スクールワンダークラブ in 東京」 ①事業分類 講師(専門家)派遣 ②事業実施者 日本理科教育振興協会 ③目的・位置づけ 将来の産業界を支える子どもたちの理科離れを防ぐため ④実施時期・頻度 随時 ⑤対象 小学校 ⑥内容 講師派遣を希望する小学校に対して、一般企業から社会人講師を派遣する。授業プログ ラムは予めリスト化された中から選択する。 46 (34) 日本ロボット学会「ロボット工学セミナー」 ①事業分類 講座・教室・セミナー・研修 ②事業実施者 a)主催 日本ロボット学会 b)協賛(予定) 計測自動制御学会、精密工学会、電気学会、電子情報通信学会、土木学会、日本機械学 会、日本ロボット工業会、農業機械学会、自動化推進協会、バイオメカニズム学会、産業 技術連携推進会議、機械・金属連合部会/福祉技術部会、機械技術協会、応用物理学会、 人工知能学会、日本神経回路学会、システム制御情報学会、情報処理学会、日本人間工学 会、日本時計学会、日本バーチャルリアリティ学会、日本設計工学会、日本コンピュータ 外科学会、日本シミュレーション学会 ③目的・位置づけ ロボットに関する基盤的な技術を解説し、研究者の裾野を広げる ④実施時期・頻度 毎年、月に 1 回程度開催している。 ⑤対象 学会会員以外にも公開している点が特徴。 ⑥内容 通常、大学を会場として、最先端のロボット研究者が、ロボットに関する基盤的な技術 を解説する。 ⑦その他 2001 年から開始。 47 (35) 物理オリンピック日本委員会「全国物理コンテスト『物理チャレンジ』」 ①事業分類 コンテスト・表彰 学会・国際大会への参加推薦 講座・教室・セミナー・研修 ②事業実施者 a)主催 (特定非営利活動法人)物理オリンピック日本委員会 事務所は、日本物理学会内にある。 役員は、大学や高校の教員などから構成され、すべてボランティア。 関連学協会から推薦された役員と個人として参加している役員とから構成される。 また、第 1 チャレンジや第 2 チャレンジの実施、オリンピック選手の指導などでは、 全国の多くの人が協力している。 b)共催(2012 年度事業の場合) 日本物理学会、応用物理学会、日本物理教育学会、日本生物物理学会、電気学会、日本 機械学会、 岡山県、岡山光量子科学研究所、岡山大学、茨城県、茨城県教育委員会、筑波大学、東 京理科大学、東京工科大学、 全国高等学校文化連盟自然科学専門部、 理化学研究所、(独)科学技術振興機構、日本科学技術振興財団 c)助成 東京倶楽部 d)後援(2012 年度事業の場合) 文部科学省、岡山県教育委員会 ③目的・位置づけ 物理の面白さと楽しさを体験してもらうことを目的としている。 ④実施時期・頻度 毎年 6 月~翌年 3 月にかけて開催される。 ⑤対象 20 歳未満で高等教育機関に在学していない人(第2チャレンジ開催時) 48 ・中心は高校生 ・現在は年齢に下限を設けていないが、小学生以下は事前相談要。 ⑥内容 物理分野における全国規模のコンテスト。 翌年に開催される国際物理オリンピックの日本代表選手の選考も兼ねている。 a)物理チャレンジの内容 2012 年度の開催内容は、以下の通りである。 参加申込 2012 年 4 月 2 日(月)~30 日(月) 第1チャレンジ 2012 実験課題レポートと理論問題コンテストへのチャレンジ 実験課題レポート提出締切 2012 年 6 月 11 日(月)消印有効 実験優秀賞の授与 理論問題コンテスト(90 分) 2012 年 6 月 24 日(日) 第2チャレンジ 2012 第1チャレンジの実験レポートおよび理論試験での成績によって選抜された選手 約 70 名が進出する。3泊4日の合宿形式でのコンテスト 保護者や学校教員の付き添いは認められない。 2012 年 8 月 5 日(日)~8 日(水) 開催地:岡山県 理論コンテスト(5 時間) 実験コンテスト(5 時間) 特別講話: 益川 敏英 先生(2008 年ノーベル物理学賞受賞者) フィジックスライブ 見学:各研究所 表 彰:金賞(6 名), 銀賞(12 名), 銅賞(12 名), 優良賞(若干名)など 2013 年国際物理オリンピック(デンマーク大会)日本代表選手候補者の選抜 (高校2年生以下の成績優秀者の中から)代表候補者 2013 年国際物理オリンピック(デンマーク大会)に向けた研修 第2チャレンジで選抜された日本代表選手候補者のための研修 理論研修: 理論課題レポートの添削(9 月から翌年 3 月まで毎月) 実験研修:冬合宿(3泊4日)2012 年 12 月末 49 八王子セミナーハウス+東京工科大学 チャレンジ 2012・ファイナル 国際物理オリンピックに出場する日本代表選手5名の最終選抜 春合宿(3泊4日)2013 年 3 月末 於:八王子セミナーハウス+東京工科大学 最終選考試験(理論試験および実験試験) 日本代表選手5名の決定 引き続き、オリンピックまで過去問演習・添削の続行 実験研修: 2013 年国際物理オリンピック(デンマーク大会)に出場予定 2013 年 7 月中旬 (デンマーク出発直前の2日間でも合宿研修を行う) 場所:コペンハーゲン(デンマーク) b)国際物理オリンピックとは 主に高校生のための物理の国際的なコンテストで、1967 年にポーランドで第 1 回大会が 開催された。各国内で選抜された最大 5 名の代表選手たちが引率役員とともに参加する。 選手は理論と実験問題にそれぞれ 5 時間をかけて挑戦するほか、開催国主催の様々なイベ ントに参加し、国際的な交流を深める。 日本は、2006 年の第 37 回大会から代表選手役員団を派遣している。 ⑦その他 2005 年の世界物理年を機に開始された。 参加者は年々増加しており、近年は中学生や小学生も参加している。 50 (36) 夢・化学-21 委員会、日本化学会「化学グランプリ」 ①事業分類 コンテスト・表彰 学会・国際大会への参加推薦 ②事業実施者 主催:「夢・化学-21」委員会、日本化学会 共催:科学技術振興機構、慶應義塾大学 理工学部、全国高等学校文化連盟自然科学専門 部 後援:文部科学省、経済産業省 ③目的・位置づけ 高校生が、化学の実力を競い合うことを目的としている。 ④実施時期・頻度 年1回。 2012 年度「化学グランプリ 2012」の開催要領は以下のとおりである。 一次選考 2012 年 7 月 16 日(月・祝) 全国 55 会場 二次選考 2012 年 8 月 9 日(木)~10 日(金) 慶應義塾大学日吉キャンパス(神奈川県) 表彰式 2012 年 9 月 29 日(土)化学会館 ⑤対象 高校生以下で 20 歳以下なら誰でも参加可能。 ⑥内容 一次選考でマークシート試験を実施し、その中の成績優秀者約 80 名が二次選考に進出し、 合宿形式で実験を伴う記述式試験を実施する。成績上位者は表彰され、さらに、 「化学グラ ンプリ 2012」に参加した中学 3 年生、高校 1、2 年生の中から 20 名程度が 2013 年の「国 際化学オリンピックロシア大会」代表候補に推薦される。 51 ⑦その他 化学グランプリは、高校生の化学の実力を競い合う場として 1998 年より毎年開催されて いる。2010 年度までの参加人数の推移は、以下のとおりである。 図表 年 人 1998 131 1999 316 開催年度別一次選考(マークシート試験)参加人数 2000 598 2001 902 2002 1164 2003 1138 2004 1201 52 2005 1193 2006 1318 2007 2009 2008 2105 2009 3078 2010 2879 (37) 日本造園建設業協会「全国造園デザインコンクール」 ①事業分類 コンテスト・表彰 ②事業実施者 a)主催 日本造園建設業協会 b)共催 ランドスケープコンサルタンツ協会 全国高等学校造園教育研究協議会 c)後援 文部科学省 国土交通省 全国農業高等学校長協会 日本造園学会 NHK ③目的・位置づけ 造園のデザインと製図技術の向上を図ること。造園学科を持つ学校の授業の一環として、 また造園家を目指す一つの目標として認知されている。 ④実施時期・頻度 年1回 ⑤対象 一般・大学生・高校生 ⑥内容 応募条件を一般・大学生・高校生の 3 部に分けており、課題は「住宅庭園」 「街区公園」 「実 習作品」「公共的空間」の 4 部門から構成されている。 ⑦その他 1974 年から開始した。毎年 100~500 件弱の応募がある。 53 (38) 日本地震学会他「地震火山こどもサマースクール」 ①事業分類 講座・教室・セミナー・研修 ②事業実施者 a)主催 日本地震学会、日本火山学会、日本地質学会が中心となり、実行委員会を構成 b)後援 内閣府、文部科学省、国土交通省、消防庁、気象庁、 産業技術総合研究所 地質調査総合センター及び開催地域の自治体、団体 ③目的・位置づけ 目的は以下の 2 点。 x 研究の最前線にいる専門家が、こどもの視点にまで下りて、地震・火山現象のしくみ・ 本質を直接語る。 x 災害だけでなく,災害と不可分の関係にある自然の大きな恵みを伝える。 ④実施時期・頻度 ほぼ毎年、夏休みに開催。 ⑤対象 小学生・中学生・高校生 ⑥内容 自然災害の本質を理解する感性を次世代に伝えることを目的に、第一線の研究者が小中 高生の視野に立って、地形の観察や実験の指導と講義を行う。 ⑦その他 日本地震学会学校教育委員会の初代委員長であった桑原央治の呼びかけによって、日本 地震学会と日本火山学会の有志が集まって 1999 年夏から開始。 54 III.学協会による初等中等及び高等教育における人材育成事業の詳細 II.で調査した学協会による初等中等及び高等教育における人材育成事業のうち、調査 期間中に事業が実施された事業を中心に成功事例を 3 事業選定し、さらに詳細な調査を実 施した。 また、学協会による事業との比較対象として、学協会以外による初等中等及び高等教育 における人材育成事業の成功事例を 2 事業選定し、同様に詳細な調査を実施した。 詳細調査では、事業の実施者及び講師に対してヒアリング調査を行い、事業の目的や内 容、成果・評価や課題等を把握した。また、受講者(小学生以下の場合は、引率者)に対 してアンケート調査を行い、参加の経緯や満足度、内容への評価や、改善要望、さらに類 似イベントへの参加状況等を調査した。 詳細調査の対象とした初等中等及び高等教育における人材育成事業 事業実施者 学協会 日本化学工業協会 事業名 日本数学協会、国際教育学会 「夢・化学-21」委員会 *日本化学会、化学工学会、新化学技術推 進協会、日本化学工業協会で構成 学協会以外 蔵前理科教室ふしぎ不思議(くらりか) *国立大学の同窓会を母体とした任意団体 日立理科クラブ *NPO 法人 化学人材育成プログラム(化学産業に よる大学院博士後期課程支援制度) 教師と大人のための算数・数学講座 夢・化学-21『わくわく理科・実験教室』 蔵前理科教室ふしぎ不思議(くらりか) 日立理科クラブ 以下、上記の人材育成事業に関し、文献調査・ヒアリング調査・アンケート調査結果に 基づく詳細調査結果を紹介する。 なお、ここでも、各事業とも、事業内容を一目で把握できるよう、最初に、1.で決め た事業分類を示している。 55 1.日本化学工業協会「化学人材育成プログラム(化学産業による大学 院博士後期課程支援制度)」 日本化学工業協会では、 「化学人材育成プログラム協議会」を組成して、公募した大学院 の教育カリキュラムを評価し、化学産業が大学に求める人材ニーズに応えている専攻を 2011 年度から毎年選定して 5 年間、学生の就職支援などのサポートを行うとともに、その うち特に優れた 4 専攻を毎年選定し、各専攻が推薦する 1 専攻につき 1 人の在学生に対し て毎月 20 万円の奨学金を支給している。 (1) 事業概要と成果 ①事業分類 教育プログラム・入試問題の評価 奨学金支給 ②事業実施者 a)主催 日本化学工業協会 化学人材育成プログラム協議会 b)後援 文部科学省、経済産業省、日本化学会、化学工学会、日本高分子学会 ③目的・位置づけ 化学産業が大学に求める人材ニーズを発信し、これに応える大学を支援すること。 ④開始時期・開始経緯 2010 年 12 月 1 日に日本化学工業協会の中に化学人材育成プログラム協議会を設立した。 会費は 1 社当たり年間 250 万円で、2011 年 10 月 1 日現在で会員数は 37 社。従って、年 間 1 億円近い資金を得ている。 この資金を基に、2011 年 4 月から奨学金の支給を開始した。 本事業は、経済産業大臣の肝いりで開始されたものである。きっかけは、2010 年 4 月に 経済産業省がまとめた「化学ビジョン研究会報告書」である。上記報告書は、日本の化学 産業の技術力と競争力を維持・向上させていくために幅広い提言をおこなったものだった が、そのうちの一つに「化学人材育成プログラムの創設」があった。2010 年 9 月頃に経済 産業省から正式に本プログラムを創設してほしいと依頼を受け、10 月 1 日には協議会を設 立し、2011 年 4 月には事業を開始した。極めてスピーディーだった。 56 250 万円は、学生に対する奨学金が 1 人月額 20 万円×12 カ月=240 万円で、残り 10 万 円が経費として会員企業には説明した。会員は、苦労して集めた。また、会員が減ると、 奨学金の給付が難しくなるため、容易に退会はできない仕組みもつくっている。 ⑤実施時期・頻度 毎年秋頃に公募して、3 月に、翌年 4 月から支援する大学院の化学系専攻の博士後期課 程を選定 ⑥対象 大学院の化学系専攻の博士後期課程及び同課程学生 ⑦内容 a)大学院博士後期課程に対する支援 化学企業が望ましいと考える教育カリキュラムを持つ大学院の化学系専攻の博士後期課 程を毎年選定し、5 年間支援を行う。特定の教員ではなく専攻を選定する。 2011 年度は 7 大学院 11 専攻が選定された。 具体的には、予定も含めて、次のような支援を行っている。 ○選定した大学院専攻に対する支援メッセージの発信 新聞広告を出す等、積極的な広報活動を実施している。 ○学生の就職支援 協議会会員企業だけを集めて選定した大学院専攻に対する就職説明会を開催予定。 ○インターンシップの拡大 化学工学会は盛んに実施しているので、一緒に行おうとしている。 ○定期的な研究発表会の開催 ○カリキュラム改革の支援 b)大学院博士後期課程学生に対する支援 a)の対象の専攻の中から特に優れた専攻を毎年 4 専攻選定し、選定した各大学院専攻が 推薦する 1 専攻当たり 1 人の学生×4 専攻=4 人に対して毎月 20 万円を支給している。返 還は求めない。なお、月額 20 万円は、日本学術振興会の特別研究員に対する研究奨励金と 同額である。 57 学生については、専攻が推薦するものであり、協議会は選考しない。学生は、支援を受 けたからといって、協議会会員企業への就職義務等は一切無い。協議会会員企業と学生が 接点を持つことは一切なく、給付対象の学生が誰であるかは協議会事務局の限られた人し か知らない。 各大学院専攻は、3 年間にわたり毎年 1 人の学生を推薦でき、3 年目の学生が卒業する 5 年目まで給付を受けることができる。また、給付決定後に学生が給付を辞退した場合、そ の大学院専攻は、他の学生を選出することが可能としている。 学生は、月額 8 万円以上、他の奨学金や政府からの支援を受けていないことが受給の条 件である。 ⑧内容決定の経緯 大学院専攻で学んでいる学生の研究テーマを選定基準にするのではなく、教育カリキュ ラムしか選定基準にしていないことには、議論があったが、そうしている。 また、東京と地方のバランスへの配慮が必要ではないかとの意見もあった。実際、東京 の有名大学の博士課程の学生であれば、大抵は何らかの奨学金か日本学術振興会の研究奨 励金を受けていてお金には困って折らず、本当に困っているのは地方の学生だとの状況も ある。それでも普通に選定することとした。 ⑨情報発信の方法 プレスリリースを行うとともに、主催者や、後援者の学会を通じて公募等の情報発信を している。 ⑩学校等の教育現場との関連 大学院の教育カリキュラムを評価している。 ⑪実績・成果 徐々に成果が出てきて、協議会に加盟していて良かったと言う企業が増えてきている。 本事業により、博士課程修了者が(企業が求める水準に)標準化される効果は見込める だろう。 ⑫事業成功の秘訣・運営ノウハウ 行政の支援を受けずに協会が独自に比較的多額の資金を集めて実施している点である。 58 ⑬今後の方向 本事業は公益法人が遂行するのに相応しい事業であり、元々、新化学発展協会 1 とJCII (化学研究評価機構。旧名称は化学技術戦略推進機構)が統合したらスタートする予定の 事業であったため、日本化学工業協会内の協議会は、適切な受け皿が設置されれば、本事 業を新組織に引き継ぐ予定であった。「化学人材育成プログラム協議会規約」第1条2に、 「本協議会の設置期間は・・・本化学人材育成プログラムを継続的に実施する適切な組織 への移管が完了するまでは、設置を継続する」と書いているのは、その趣旨のためである。 しかし、新化学発展協会と化学技術戦略推進機構の戦略推進部が統合されて 2011 年4月 に新化学技術推進協会は設立されたが、状況が変わったため、引き続き、本事業は、日本 化学工業協会で実施していく予定である。 (2) 事業の課題 ①事業実施者の意見 a)これまでに経験した問題・困難な点 大手企業も小規模企業も会費が同額なため、協議会会員を集める際、このように支援し ても、学生は、大手有名企業に就職するだろうから、実質的には、大手有名企業の採用を 小規模企業が助けていることになるとの不満があった。直接的な見返りが無いことに対す る出資は、いつも問題になるが、これは、人材の底上げが目的なのだと説明した。 b)今後の課題 協議会会員を減らすことなく、増やしていき、事業を継続していくこと。 1 新化学発展協会は、隔膜法設備設置促進協会が、従来の目的である食塩電解法を水銀法から隔 膜法に転換を促進するという役割をほぼ完了させたことから、これを抜本的に拡充・改組し、 ①産・学・官の連携、②異業種間の交流、③技術情報等の国際化の目的を達成するため、1986 年 5 月に設立された。 59 2.日本数学協会、国際教育学会「教師と大人のための算数・数学講座」 日本数学協会と国際教育学会では、3 年前に学習指導要領が変わり、小学校教員が自ら は小学校時代に学んでいない内容を授業で教える必要が生じたことを受けて、小学校教員 に対し、算数教育のノウハウではなく数学の根本・本質を教えて、算数教育の実力を上げ るための講座を毎月 1 回開催している。講座は、小学校教員のみならず中学校・高等学校 の教員や塾講師、学生など広く一般を対象としている。 (1) 事業概要と成果 ①事業分類 講座・教室・セミナー・研修 ②事業実施者 a)主催 日本数学協会、国際教育学会 日本数学協会は、大学の数学者と珠算関係の団体と日本商工会議所とで立ち上げた協会 である。 b)後援 (株)正進社が会場を提供し、資料をコピー配付している。また、希望者に対し、内容や 開催日程等の案内メールを開催日の 2 週間程度前に送っている。 ③目的・位置づけ 数学を学ぶ楽しさを語り合うことができる場、自らの発見を語ることのできる場、数学 と関連する諸分野の方たちと互いに語り合うことができる場をつくり、皆で数学を楽しみ、 数学文化を豊かに育む。 元々は、小学校教員の算数教育の実力を向上させることが目的だった。 ④開始時期・開始経緯 米国には、アメリカ数学会(American Mathematical Society)の他に、Mathematical Association of America があるが、日本には数学会しかなかったので、学者向けではなく、 一般の数学愛好家のために、数学の持つ面白さ、美しさや不思議さを味わうことのできる 場をつくるため、日本数学協会(会長:上野健爾氏)が設立された。 一方、日本では、3 年前から学習指導要領が変わり、ゆとり教育で中学生に回っていた 60 授業内容が小学生に戻って来た。また、「数学的行動」なども教える必要が発生した。しか し、現在の小学校の教員は、ゆとり教育を受けた世代で、自らは小学生時代に習ったこと のない内容を教えなければならなくなった。 小学校の子どもを育てるには小学校教員の実力を上げなければならないとして、日本数 学協会会員の小学校教員の発案で、小学校の若手教員を対象として、2009 年度から日本数 学協会の事業として開始された。 ⑤実施時期・頻度 毎月 1 回土曜日午後 14:00~16:30 ただし、2012 年 4 月は休講。 ⑥対象 広く一般(ウェブサイトから誰でも参加申込できる)。数学協会会員、国際教育学会会員、 学校教員、塾講師、学生、企業人など。 毎回の参加者は 15 名程度。 もともと小学校教員を対象として開始したため、現在も、参加者の半分以上が小学校や 中学校の教員である。その他、塾の講師や大学の教員、教科書の出版社の人なども参加し ており、中には広島や四国など遠隔地から参加する人もいる。また、現状の理数教育に対 するものづくり企業の危機感は大きく、メーカーの参加もある。 実際の参加者の年齢層は、20 代くらいから 60 代くらいまで様々。男女比は男 7:女 1(当 日の出席者 15 人のうち女性は(株)正進社のスタッフ 1 人を含めて 2 人) 。 ⑦内容 算数・数学の“教え方(ハウツー) ”ではなく、小中学校教育での算数・数学の根本や数 学史を数学者から学び、教員の立場からどのように教えるべきかを発案者の小学校教員が 話し、講師・参加者を含めて全員で情報交換やディスカッションを行う。 小学校の算数教育は、数千年の数学の歴史を圧縮して教えているものであり、本当は非 常に難しいことを教えている。主催者の意向をふまえて、数学の概念が生まれてきた根本、 数学の本質的な意味といった基礎を教える内容としている。こうした根本・基礎の上に立 っていれば、多少学習指導要領が変わっても対応できるようになることを企図している。 受講料は無料である。 ⑧内容決定の経緯 教え方のハウツ-・テクニックだけしか知らないようではだめだという発案者の小学校 教員の信念のもとで、毎回のテーマと内容を同教員が決定している。 61 ⑨講師決定の経緯・選定方法 講師は、主に発案者の小学校教員が、日本数学協会と国際教育学会の会員からテーマに 合わせて選定し、依頼している。 ポイントとしては、学校教員が話を聞く機会のある“数学教育”の専門家ではなく、“数 学の専門家=数学者”を選定している点である。 ⑩情報発信の方法 日本数学協会と国際教育学会のウェブサイト及び会報で広報している。 従って、新規の参加者を集めることは難しく、参加者が少ないのがもったいないことだ と事業実施者は感じている。 ウェブサイトに講座の主旨や内容(ハウツーを学ぶのではなく根幹を学ぶ等)があまり 書かれていないため、ウェブで初めて知った人に伝わっていない面がある(そのため、誤 解して参加した人がいる。)。 既存参加者のうち希望者に対しては、次回の内容や開催日程等の案内メールを開催日の 2 週間程度前に送っている。 ⑪学校等の教育現場との関連 参加者の大半は学校教員だが、学校自体や教育委員会とは連携していない。 ⑫実績・成果 過去にアンケート等が行われたことはなく、正確には分からないが、参加したことによ って授業を自分なりに工夫する教員が増えたとのことである。 講師にとっても、特に教職関係の授業を担当している講師にとっては、小学校の教員の 現場の話を聞くのは非常に参考になるとのこと。また、小中高校の生徒や大学の学生に関 する情報も入手できるので、どのような教員を育てるべきかも分かり、役に立っていると のことである。 ⑬事業成功の秘訣・運営ノウハウ 皆がボランティアで協力し合って運営している点。 講師には、謝金はもちろん交通費も支給されていない。 数学界では、もともとこのように無償で広く数学を知ってもらおうとする文化が強く、 数学会も、会員の学会費は 2 万円だが、学会の年会等への参加費は、学会員以外の人につ いても無料である。日本数学協会についても、機関誌に原稿を執筆しても原稿料は支払わ れない。謝金等が支払われないのは数学界では当然のことなので、講師も特に違和感や不 62 満は感じていないとのことである。 ⑭今後の方向 現在、算数・数学講座の来年度の計画を検討しているとともに、社会を変えるには高校 生に数学を面白いと思ってもらわないといけないと考え、全国のスーパーサイエンスハイ スクール(SSH)に働きかけて、日本数学協会の年会で、高校生に数学研究を発表してもら う場を持とうとしている。 (2) 受講者アンケート結果 本調査の一環として、受講者に対してアンケートを実施し、14 名から回答を得た。 1. この講座に参加したきっかけは何ですか? 参加のきっかけは、「内容が面白そうだから」が 7 割強でもっとも多かった。次いで、 「授業(仕事)に役立ちそうだから」が挙げられている。 「以前に参加してよかったか ら」との回答も 5 割あり、リピーターが多いことがうかがえる。 (n=14) 0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% 60.0% 35.7% (イ)自身の研究に関係があるから 57.1% (ウ)授業(仕事)に役立ちそうだから (エ)人に勧められたから 7.1% (オ)友人が参加するから 7.1% 50.0% (カ)以前に参加して良かったから 35.7% (キ)主催団体を知っているから 28.6% (ク)講師が有名だから 0.0% (ケ) 0.0% FA 無回答 80.0% 71.4% (ア)内容が面白そうだから (ケ)その他 70.0% 0.0% 63 2. この講座のことをどのようにして知りましたか? 認知経路は、主催者からの案内がほとんどであった。友人/知人からの案内及び新 聞・雑誌もそれぞれ 2 割程度あった。 (n=14) 0.0% 30.0% 40.0% 50.0% 60.0% 70.0% 80.0% 21.4% 0.0% 78.6% (オ)主催者からの案内 7.1% (カ)インターネットで見付けて 21.4% (キ)新聞・雑誌 (ク)その他 90.0% 0.0% (ウ)友人/知人からの案内 (エ)塾・他の教室からの案内 20.0% 7.1% (ア)学校からの案内 (イ)教育委員会からの案内 10.0% 0.0% (ク) 0.0% FA 無回答 0.0% 3. 参加してどのように感じましたか? 参加者の感想は、全員が「非常によかった」あるいは「よかった」と回答しており、 満足度が高い。 (n=14) 0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% 60.0% 57.1% (ア)非常によかった 42.9% (イ)よかった (ウ)どちらともいえない 0.0% (エ)悪かった 0.0% (オ)非常に悪かった 0.0% 無回答 0.0% 64 70.0% 4. 特によかったのはどの点ですか? 全員が内容を評価している。また、講師をよかったとする回答者も約 75%いた。 (n=14) 0.0% 20.0% 40.0% 60.0% 80.0% 100.0% 100.0% (ア)内容 14.3% (イ)難易度 71.4% (ウ)講師 28.6% (エ)場所・設備 50.0% (オ)開催時期・時間帯・所要時間 (カ)その他 120.0% 0.0% (カ) 0.0% FA 無回答 0.0% 5. 改善してほしいのはどの点ですか? 改善してほしい点としては、難易度及び場所・設備との回答が若干あった。 (n=14) 0.0% (ア)内容 15.0% 20.0% 25.0% 30.0% 35.0% 40.0% 7.1% 0.0% (エ)場所・設備 (オ)開催時期・時間帯・所要時間 10.0% 0.0% (イ)難易度 (ウ)講師 5.0% 7.1% 0.0% (カ)その他 35.7% (オ) 0.0% FA (カ) 0.0% FA 無回答 0.0% 具体的なコメントとしては以下が挙げられている。(「特になし」のみのコメントは表 65 記していない。) ・ 話が小学算数に限定されている感じがもったいない ・ 内容の重なりを防いでほしい ・ 特に無し。無料なのもよい。 ・ ゲスト講師の先生を増やして、いろいろな数学の話題を盛り込んで欲しい。 6. 参加したことにより、ご自身にとって今後どのような効果や影響があると思います か? 参加したことによる効果や影響としては、「算数・数学に対する理解が深まった」、 「授業(仕事)に役に立つと思った」との回答が最も多く、それぞれ 6 割を超えてい る。 (n=14) 0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% 60.0% 70.0% 14.3% (ア)同分野や関連する分野の専門家として(引き続き)歩みたいと思った 35.7% (イ)同分野や関連する分野をもっと研究/勉強したくなった 42.9% (ウ)類似のイベント・教室にまた参加したいと思った (エ)算数・数学に対する理解が深まった 64.3% (オ)授業(仕事)に役に立つと思った 64.3% (カ)その他 0.0% (カ 0.0% FA 無回答 66 0.0% 7. 最近 1 年間に類似するイベントや教室には参加しましたか? 類似のイベントへの参加経験を持つ参加者が 6 割強いた。 (n=14) 無回答 14.3% (2)参加しなかった 21.4% (1)参加した 64.3% 類似するイベントとしては、日本数学協会の年次大会のほか、以下のようなものが 挙げられた。 新春特別講義 東大での高校生・社会人のための現代数学・物理学講座 森上セミナー 数学教育学会 TOSS 熱海セミナー 67 8. 参加を決めるに当たってどのような情報が必要ですか? 参加を決めるにあたっては、内容及び開催年月日がもっとも重視されている。次い で、講師、時間帯、場所が重要な要因となっている。 (n=14) 0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% 60.0% 70.0% (ア)内容 90.0% 78.6% 28.6% (イ)難易度 (ウ)講師 71.4% 64.3% (エ)場所 (オ)開催年月日 78.6% 71.4% (カ)時間帯 (キ)所要時間 (ク)保護者同伴の必要性 80.0% 42.9% 0.0% 7.1% (ケ)事前準備や当日の持ち物・服装 35.7% (コ)参加費 (サ)アレルギー等の注意 0.0% (シ)万一の事故に備えた保険加入の有無 0.0% (ス)その他 0.0% (ス) 0.0% FA 無回答 0.0% 9. 今後、この講座にどのようなことを期待したいですか?<自由回答> 参加者からは、以下のような期待が挙げられた。 ○内容 ・ 教師を職業とするものだけでなく一般の数学愛好者にとっても参考になり面白い内 容にしてほしい。 ・ できれば今までのように今日的な課題を扱っていただきたい。 ○より広い参加者 ・ 小学算数だけでなく日本の数学教育全体を考える機会となるとよいと思います。こ 68 のままでも非常に有意義ですが、高校教員なので、もっと楽しめると思います。 ・ 参加者が年々固定化、専門化してきている印象がある。小学校教員としては、小学 校教員に広く参加できるように呼びかけてほしい。授業論などはなくてよいので。 ○継続 ・ 長く続けてほしいです。 (3) 事業の課題 ①事業実施者の意見 a)これまでに経験した問題・困難な点 例えば、分数の割り算ではなぜひっくり返してかけるのかを、どのように教えるかとい った算数・数学の教え方(ハウツー)を教えてくれると期待して参加した人から、苦情を 言われたことはある。 b)今後の課題 事業を企画・開始した小学校教員も講師も年をとり、継続希望はあるものの、継続方法 に悩んでいるところである。 ②事業対象者の意見 a)本事業の評価 参加者にはリピーターも多く、評価は総じて高い。今後に対する要望としては、継続的 な実施のほか、より広い参加者層に向けた内容を求める声や、今日的な課題を取り扱って ほしいという声が挙げられた。 b)事業参加を決めるために必要な情報 参加を決めるにあたっては、内容及び開催年月日がもっとも重視されている。次いで、 講師、時間帯、場所が重要な要因となっている。 69 3.「夢・化学-21」委員会「夢・化学-21『わくわく理科・実験教室』 」 日本化学会、化学工学会、新化学技術推進協会、日本化学工業協会の4団体で構成され る「『夢・化学-21』委員会」では、小学1~4年生を対象に、実験体験を通じて理科や自 然に興味を持ってもらえるようにすることを目的とした講座を毎月 1 回開催している。 (1) 事業概要と成果 ①事業分類 講座・教室・セミナー・研修 ②事業実施者 日本化学会、化学工学会、新化学技術推進協会、日本化学工業協会の4団体で構成され る「『夢・化学-21』委員会」による主催。主管事務局は日本化学工業協会に置かれている。 「『夢・化学-21』委員会」では、「夢・化学-21『わくわく理科・実験教室』」の他、 「子 ども化学実験ショー」、「全国高校化学グランプリ」、「国際化学オリンピックへの派遣」な どの事業を実施している。 なお、本事業については、経済産業省の支援を受けている。 ③目的・位置づけ 化学の啓発と化学産業の社会への貢献の理解促進を目的としている。 子供たちに、実験体験を通じて理科や自然に興味を持ってもらえるようにすること。 ④開始時期・開始経緯 「夢・化学-21」事業は 1993 年より開始された。現在のメンバーで『わくわく理科・実 験教室』を開催するようになったのは、約5~6年前からである。 5~6年前に、品川区の中学校教員が、朝日小学生新聞から依頼を受けて、子ども向け に理科の実験を紹介する「わくわく理科タイム」という連載記事を企画した。その執筆を、 同教員が主宰する東京都内の学校の理科教員のサークルである「東京都中学校理科教育研 究会」のメンバーの一部で、交代で担当した。 連載終了後、 「わくわく理科タイム」で紹介した理科の実験を、実際に子ども達に対して 見せようという話になった。中学校の教員は、日本化学会に加入している人も多く、それ で日本化学会が実施することになった。そして、日本化学会を日本化学工業協会が支援す るようになったと思われる。 当初は、講師が実験をしている様子を子どもが見る形でスタートした。子どもは好きな 時に来て、見て、帰る形式である。4年ほど前から、今のように時間枠を決め、講座形式 70 で行うようになった。ただし、当初から、毎月 1 回・年 10 回程度土日に小学1年生~4年 生を対象に行う、という点は変わっていない。 「夢・化学-21『わくわく理科・実験教室』」は、現在も、「わくわく理科タイム」の執筆 を担当したメンバー数人を中心に担当している。 ⑤実施時期・頻度 わくわく理科・実験教室は、ほぼ1ヶ月に1回、年間計 10 回程度開催している。 以前は九段にある科学技術館で行っていたが、恐らくは賃料が安いという理由で、国立 科学博物館で開催することに変更した。ただし、来年度は国立科学博物館が使えないので、 新たな場所を探しているとのことで、科学技術館に戻る可能性が高いようである。 ⑥対象 小学1~4年生(保護者同伴)。毎回の定員は 32 名だが、実際にはそれ以上に参加して いる。 ⑦内容 テーマや内容、講師については、「東京都中学校理科教育研究会」に一任している。 身近な題材をテーマに、体験を通じて理科や自然に興味を持ってもらえるような実験を 提供している。 ⑧内容決定の経緯 年度開始前に、「東京都中学校理科教育研究会」の主宰者である品川区の中学校教員が日 本化学工業協会の担当者と共に、何回・いつ・誰を講師にして開催するかを企画する。講 師は、同教員が、朝日小学生新聞の「わくわく理科タイム」の執筆を担当した「東京都中 学校理科教育研究会」のメンバー数人を中心に声をかけて希望を受けて決定する。 各回の内容は、担当講師が企画する。各講師は、日本化学工業協会の担当者と事前に電 子メールで必要な道具・材料等に関する調整を行う。例えば、はさみ等の備品は、日本化 学工業協会が用意し、消耗品等の材料は、講師がスーパーや 100 円ショップ等で買って用 意し、後から協会が精算する。 ⑨講師決定の経緯・選定方法 同上。 ⑩情報発信の方法 広報はインターネットのみであるが、毎回満員になっている。したがって、保護者の間 71 ではかなり周知されている。 ⑪学校等の教育現場との関連 特に連携しているわけではないが、学校の授業では体験できない機会の提供を目指して いる。 ⑫実績・成果 インターネットのみの募集ではあるが、毎回予約で満員御礼(定員は 32 名)となってい るので、世の中に、特に保護者の間には、このような実験教室へのニーズはあると推察さ れる。 過去にアンケート等を実施したことはないが、終了直後に「面白くてよかった」「家に帰 ってもやってみる」等の声を聞くことも多く、また、リピーターとなっている子供たちも いるので、相応に評価されていると考えられる。 小学校の教員は、理科の専門家ではないため、実験が少なかったり、実験から学ぶこと が難しかったりするので、こうした理科実験教室は、学校の授業を補うことができて意義 がある。楽しんで理科を学び、理科や自然が好きになることが期待されている。 ⑬事業成功の秘訣・運営ノウハウ 保護者の間には、このような実験教室への潜在ニーズはあり、このようなニーズに応え るプログラムになっている。 小学4年生くらいまでは、遊びながら触れさせて、関心を高めることが重要である。本 講座が小学4年生程度までを対象としているのは、親が博物館へ子供を連れてきたついで に参加できる、というメリットもある。 事業費の内訳は、以下のとおりである。費用は日本化学工業協会等が負担している。 会場費:3万円×10 回=30 万円 講師への謝礼・交通費:6千円/人×10 回=6万円 実験器具代は、講師が立て替えて調達し、後日返金するが、毎回2千円もかかっていな い。多くは、百円ショップ等で調達可能なものである。 他に、参加者から、保険代として 50 円/人を徴収している。 ⑭今後の方向 子供たちに理科への関心を持ってもらう取り組みとしては非常に良い活動だと思われる が、現状では開催が関東だけとなっている。全国に支部がある日本化学会とタイアップし、 各支部で1箇所開催場所を決め、同種の教室を年間 5~6 回開催することが検討されている。 72 (2) 受講者アンケート結果 本調査の一環として、受講者(実際には引率の保護者)に対してアンケートを実施し、 39 名から回答を得た。 1. わくわく理科・実験教室に参加したきっかけは何ですか? 参加のきっかけは、9 割以上が内容に関する関心であった。過去の参加経験による参 加者も 3 割弱存在している。 (n=39) 0.0% 10.0% 20.0% 30.0% (ア)内容が面白そうだから 5.1% 2.6% (エ)人に勧められたから (オ)友人が参加するから 10.3% 0.0% (カ)以前に参加して良かったから 28.2% (キ)主催団体を知っているから 10.3% (ク)講師が有名だから 2.6% (ケ)その他 2.6% 無回答 50.0% 60.0% 70.0% 80.0% 90.0% 100.0% 92.3% (イ)学校の勉強に関係があるから (ウ)受験に役立ちそうだから 40.0% 0.0% 73 2. わくわく理科・実験教室のことをどのようにして知りましたか? 認知経路は大半がインターネットで見つけたものであり、友人/知人からの案内も 2 割強みられた。 (n=39) 0.0% 10.0% (ア)学校からの案内 0.0% (イ)親からの案内 0.0% 30.0% 40.0% 50.0% 60.0% 70.0% 5.1% 79.5% (カ)インターネットで見付けて (キ)新聞・雑誌 無回答 90.0% 0.0% (オ)主催者からの案内 (ク)その他 80.0% 23.1% (ウ)友人/知人からの案内 (エ)塾・他の教室からの案内 20.0% 5.1% 2.6% 0.0% 3. 参加してどのように感じましたか? 参加者の感想としては、全員が「非常によかった」あるいは「よかった」と回答し ている。 (n=39) 0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% (ア)非常によかった 60.0% 56.4% 43.6% (イ)よかった (ウ)どちらともいえない 0.0% (エ)悪かった 0.0% (オ)非常に悪かった 0.0% 無回答 0.0% 74 4. 特によかったのはどの点ですか? 特によかった点として、内容を挙げた回答者が 8 割程度と最も多い。講師を挙げた 参加者も 7 割近くいる。これに、場所・設備が 6 割弱で続いている。 (n=39) 0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% 60.0% 70.0% 80.0% 79.5% (ア)内容 35.9% (イ)難易度 66.7% (ウ)講師 56.4% (エ)場所・設備 (オ)開催時期・時間帯・所要時間 41.0% 5.1% (カ)その他 無回答 90.0% 0.0% 5. 改善してほしいのはどの点ですか? 改善してほしい点としては、 「開催時期・時間帯・所要時間」が 3 割強でもっとも多 かった。これに関連するコメントとしては、時間を長くしてほしいという要望が最も 多かった。土曜日の開催だと学校行事と重なってしまうコメントもあった。 また、 「難易度」を挙げた回答者も 2 割弱存在している。これに関連するコメントと しては、小学生向けの単語の説明、学年別の教室、復習するために内容・解説のプリ ントを求める声があった。 「その他」としては、参加機会(開催頻度、受講人数)の増加の要望が多い。付き 添いの親向けの椅子の設置も複数挙げられた。 (n=39) 0.0% 5.0% 10.0% 15.0% 25.0% 30.0% 35.0% 2.6% (ア)内容 17.9% (イ)難易度 (ウ)講師 20.0% 0.0% 5.1% (エ)場所・設備 (オ)開催時期・時間帯・所要時間 33.3% 30.8% (カ)その他 無回答 0.0% 75 40.0% 6. 参加したことにより、ご自身(お子様)にとって今後どのような効果や影響があると 思いますか? 参加による効果や影響としては、類似のイベント・教室に対する参加意欲が 8 割弱 と高い。また、半数を超える参加者が、同分野や関連分野に対する勉強意欲の高まり を示している。 (n=39) 0.0% 10.0% (ア)同分野や関連する分野の専門家の道を目指したい(目指して欲しい) と思った 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% 70.0% 80.0% 90.0% 12.8% 53.8% (イ)同分野や関連する分野をもっと勉強したい(して欲しい)と思った 76.9% (ウ)類似のイベント・教室にまた参加したい(参加して欲しい)と思った 28.2% (エ)学校の勉強に対する理解が深まった(深まると思った) (オ)受験勉強に役に立つと思った 5.1% 7.7% (カ)その他 無回答 60.0% 0.0% 7. 最近 1 年間に類似するイベントや教室には参加しましたか? 類似するイベントへの参加経験がある参加者は半分を超えている。 (n=39) 無回答 0.0% (2)参加しなかった 43.6% (1)参加した 56.4% 類似するイベントとしては、夢・化学-21 による他の教室のほか、以下のような多数の イベントが挙げられた。 リスーピア(台場)のイベント 科学博物館の夏休みのサイエンスフェスタ 私たちの体の不思議 日能研 GEMS 理科実験 76 子ども理科実験フェア(未来館でやったもの) サピックス・エコハウスを作ろう CAMP 主催 クリケットを作る 日本科学未来館実験工房 月はどうしてできたのか?UDX にて 早稲田アカデミー実験教室 パナソニックのイベント 近所の地域センターでの科学イベント 芝浦工大“スノードームを作ろう” 日本科学未来館 実験教室 宇宙少年団活動 科学未来館での科学工業会のイベント 化学実験ショー 身近な水をつかって 地域の実験教室 CANVAS 主催 エコ魚を作ろう NEC ガリレオ教室“犯人を探せ” サイエンスアゴラ 東芝科学館 ものの重さとバランス モノクロ写真を現像しよう 科学の祭典 はまぎん宇宙科学館 あそびじゅつ 工大祭(理科実験) サイエンスフェスティバル神奈川県立青少年センター 駒場祭(理科実験) 77 8. 参加を決めるに当たってどのような情報が必要ですか? 参加の決定に必要な情報は、ほとんどの参加者が内容を挙げている。これに、場所 や開催年月日、時間帯、所要時間といった、関心以外の参加可否の決定要因が続いて いる。 (n=39) 0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% 60.0% 70.0% 80.0% 90.0% (ア)内容 92.3% (イ)難易度 46.2% 35.9% (ウ)講師 (エ)場所 82.1% (オ)開催年月日 79.5% 66.7% (カ)時間帯 (キ)所要時間 61.5% (ク)保護者同伴の必要性 28.2% (ケ)事前準備や当日の持ち物・服装 30.8% (コ)参加費 (サ)アレルギー等の注意 61.5% 2.6% (シ)万一の事故に備えた保険加入の有無 (ス)その他 無回答 100.0% 7.7% 2.6% 0.0% 9. 今後、わくわく理科・実験教室にどのようなことを期待したいですか?<自由回答> ○内容・難易度に関するもの x 低学年と高学年に分けていただき、難易度を変えていただけるといいと思います。 x 「理科って楽しいな」、「不思議なことが解き明かされるのは嬉しいな」と思える 機会を与えて下さるといいなと思います。 x 日頃、体験出来ない事やものを見られるだけでも本人は嬉しいのでまた是非参加 したいです。現状で大満足しています。(欲を言えば、所要時間がもっとあったら いいと思います) x 学校でやらない(やれない)ようなこと。科学的な実験。 x 小学生が興味を示すような内容にして欲しい。先生も小学生がわかるように説明 してほしい。たまにうるさい子どもがいるので、そういう子どもは次回以降参加 78 できないようにしてほしい。 x 学年別または低学年・中学年・高学年に分かれた内容の方がより深く学べると思 いました。 x 何度も参加しているが、先生方が日常のものを使って楽しく授業のようにされる ので、子どもが楽しいようです。 x 日常生活に結びついた実験 x 楽しんでやっていました。ありがとうございます。植物(花など)分解してみる とか何かを分解してつくりを見る実験をしてみたいです。 x 身近な物でできる実験をたくさんやってほしいです。サポートは保護者ではなく スタッフでやってほしいです。(うちはなんでもかんでも親を頼るので) x 身近な物でできる実験ややってみて子ども達が楽しい実験を多くやっていただく と子ども達も理科に対する興味も増すと思います。 x とても良いので今後もやってほしいです。 x 毎回とても楽しみにしていました。4 年生までしか参加できないのがとても残念で す。5 年生以上も参加できる教室をぜひつくって下さい。内容的に 1~3 年、4~6 年と分かれた教室があると、とてもうれしいです。 ○講師に関するもの x いろいろなタイプの先生に出会えることが非常に良い点だと思います。 ○時期・時間に関するもの x 子ども達があきる様子もなく楽しんでいるので時間を長くしてもいいのではない かと思います。(60 分位) x 毎回魅力的な講師の方々の話を興味深く聞いていたのですが、時間が短いかなぁ と思いました。倍くらいの所要時間があった方がじっくりと内容を深められたか なぁと思いました。 ○開催自体に関するもの x 子どもが 2 人いますが、長男(現在 5 年生)は、この実験教室をきっかけに化学 に興味を持ち、将来研究者になるべく講師の先生がお勤めの学校を志望校として 勉強中です。斯様なイベントを小学校高学年や中高生向けにも大々的にやってい ただけるとありがたいです。 x 今回参加できてとても有意義でした。次期(後期)も参加したいのですが、抽選 なのではずれてしまったらとても残念です。ぜひ継続して参加できる環境にして いただけることを期待します。幼児~低学年向きのクラスも開催してほしいです。 x 今年小学 4 年生なので、5 年以降の授業も開いてほしいです。 79 x 抽選にもっと当たるようにしてほしいと思います。 x もっとたくさんの子どもが参加できるよう回数を増やしてほしいです。 x 抽選となり参加がむずかしいことがあるので、もう少し機会を増やしていただけ るとありがたいです。 ○その他 x 子どもは作ったりしたものを持ち帰りができると、とても喜んでいました。おみ やげがあると参加したいようです。 x また参加したいです。 (3) 事業の課題 ①事業実施者の意見 a)これまでに経験した問題・困難な点 これまでにトラブル事例は起きておらず、保険を使わなければならないような事故も発 生していない。 開催場所については、少し苦労している。実験ができないといけないので、学校の理科 教室等、場所の提供をしてもらえるとありがたい。消防法などもクリアーしなければなら ない。かつて、廃校を利用する申し出もあったが、場所が不便であったため、断念した経 緯がある。理科教育について問題意識を持つ教員と、何か事故が起こったら責任を負いき れないという教員との間での合意が難しく、学校はなかなか利用できない。 b)今後の課題 全国各地で開催しようとしても、日本化学会支部と地域の中学・高校の先生たちとの間 でつながりが少なく、このつながりを構築する必要がある。実験教室を継続するには、1) 担当する仲間と 2)場所、3)情報発信、4)資金面でのバックアップの4要素が必要となる。 ②講師の意見 a)本事業の課題 現在は、国立科学博物館の教室を借りているが、テーマや実験器具に制約がある。具体 的には、科学博物館のお湯や火など、備品・器具を使うことは制限されており、ハサミ等 は、本講座専用に日本化学工業協会が用意している。また、科学博物館のオリジナル企画 との関係でテーマの選定にも配慮が必要となっている。 80 b)学協会による初等中等及び高等教育における人材育成事業全般の課題 実験教室形式等による人材育成事業には、年齢に応じたアプローチ方法があり、これを 外すと、人材育成事業の効果は小さくなってしまう。 小学4年生くらいまでは、遊びながら触れさせて、関心を高めることが重要である。本 講座が小学4年生程度までを対象としているのは、親が博物館へ子供を連れてきたついで に参加できる、というメリットもある。 小学校5年生くらいになると、友達同士で遊んだり、部活に参加したりする機会が増え、 親と一緒に行動する機会が減るため、博物館へ訪れる頻度は減ってくる。 また、小学校5年生から中学生くらいの年齢からは、科学と自分との関わり、社会との 関わり、なぜそうなるのかといった理屈、疑問を自分で解決することなど、考える部分を 重視したプログラムが必要になる。 高校生・大学生になると、科学を世の中でどのように役立たせるのか、といった視点で のプログラムが必要になる。 なお、中学・高校生は、カリキュラム上、受験を意識せざるを得ないので、実験機会は 限られる。したがって、広く一般の中学生以上を対象に理科実験教室を募集しても、一部 の関心層を除けば、希望者を集められないのではないか。学会が主催する事業であれば、 自由に専門的なテーマに絞っても良いと思う。 このような実験教室として、地域の学校に「場所や器具の提供」を依頼することは可能 かと思う。中学校を会場として、その学校の生徒でない子どもや小学生も含めて対象とし て、特別なイベントとして実験教室を開催するといった取り組みである。企業の出前授業 も増えているので、企業との連携もよい。 ③事業対象者の意見 a)本事業の評価 内容に対する受講者(付き添いの保護者)の評価は非常に高い。そのため、要望として は、参加機会の増加に対するものが多く挙げられた。一方、難易度に関連して、学年別の 教室や所要時間の拡大、小学生向けの言葉の解説等、よりきめ細やかな対応を希望してい る。 b)事業参加を決めるために必要な情報 参加の決定に必要な情報は、ほとんどの参加者が内容を挙げている。これに、場所や開 催年月日、時間帯、所要時間といった情報が続いている。 81 4.蔵前理科教室ふしぎ不思議(くらりか) 蔵前理科教室ふしぎ不思議(くらりか)は、東京工業大学の OB により 2005 年に設立さ れ、現在、首都圏を中心として、全国各地で小中学生向けに理科教室を開催している。開 催回数は年々増加しており、現在では、約 90 名のメンバーと、20 を超えるテーマを抱え ている。参加者が実際に手を動かし、完成させるという体験を重視しており、毎回の教室 では講師の他に助手が複数名ついて参加者の作業を補助している。 なお、くらりかは東京工業大学の同窓会である社団法人蔵前工業会に所属している。 (1) 事業概要と成果 ①事業分類 講座・教室・セミナー・研修 ②事業実施者 蔵前理科教室ふしぎ不思議(以下、 「くらりか」 ) ※本調査で見学をした教室は、大田区立東調布第一小学校で開催され、主催者はその保 護者の会である「とういちサポーターズリンク」であり、くらりかは、講師を務めていた が、以下では、くらりかの教室一般について記述する。 ③目的・位置づけ くらりかは、将来の日本を担う子供たちに理科に対する興味、関心と、好奇心を持って もらい、理科に、さらには科学技術に対して受け身ではなく、積極的に取り組む意欲を育 む草の根の活動である。 ④開始時期・開始経緯 くらりかは、児童・生徒の理科離れに危機感を持った東京工業大学の卒業生有志が、遊 びの側面も加味した理科教室を開催して少しでも多くの児童・生徒が理科好きになっても らうことを目的として、平成 17 年 5 月に設立した、シニアボランティア団体である。 ⑤実施時期・頻度 年間を通じて実施している。 現在では、東京、神奈川、埼玉、千葉地区(首都圏)では年間 250 教室程度を開催して いる。 近年の実績は以下の通り。 82 平成 21 年度 平成 22 年度 平成 23 年度 合計 230 263 295 首都圏 230 256 254 関西 0 7 30 静岡 0 0 9 鹿児島 0 0 1 秋田 0 0 1 当初は、田園調布の児童館等で実施していたが、口コミ等で広がり、要望が増えたこと もあって開催が急激に増えたという経緯がある。 ⑥対象 小中学生を対象に、広く一般に開いた教室である。 ⑦内容 1 回の教室内で、基本的な科学原理を示唆する工作、実験と説明を行う。教室を通して 不思議を実感する機会、感動を実感する機会、理科と日常の生活とのつながりを実感する 機会を得るように努めている。 大きな特徴として、参加者が自ら手を動かすことを重視している。基本形は大人が準備 し、教室に参加する子供たちが工夫する余地がある教材となっている。 本調査で見学した教室のテーマは、振動の原理を応用した「ギシギシプロペラ」の作成 であった。これは、割り箸のような棒に刻みを入れたり、凹凸のある材料を取り付けて、 それをこすることによって先端に取り付けたプロペラに直接触れることなく回転させると いうものである。ギシギシプロペラは 3 種類作成した。また、プロペラ作成後には、振動 に関する講義形式での説明と、振動を応用した他の素材(糸電話、グラニド図形、皿回し) を参加者が体験する機会があった。 ⑧内容決定の経緯 時間をかけたメンバーの検討と吟味、それに基づく討議による。 くらりかとして、開始当初の教室のテーマは 2 種類程度であったが、現在では 20 を超え るテーマを有している。具体的内容は、開催場所(小学校や児童館等)の希望を踏まえ、 くらりかメンバーが協議をして決定している。 ⑨講師決定の経緯・選定方法 講師はくらりかメンバーが務める。テーマに応じてメンバーより選定する。 くらりかメンバーは、東京工業大学の卒業生であり、それに加えた資格等を講師選定の 条件にしているわけではない。必要な準備をし、講師が理論を理解していれば良く、経験 や資質が重要と考えている。 より一般的には、現業のものづくりに関わった職人のような人が教室で教えるのが子供 83 たちにとって良いと考えている。 ⑩情報発信の方法 くらりかによる教室を担当するメンバーは首都圏を中心に約 90 名いる。地域ごとに担当 者がおり、児童館、教育委員会、小中学校、科学館等に活動を紹介している。 ⑪学校等の教育現場との関連 小中学校で実施の場合、教育指導要領との兼ね合い、学校側の要望を聴取しながら内容 を決定している。 ⑫実績・成果 参加児童・生徒並びに保護者のアンケート調査の結果から見て、高く評価されている。 これが、引き続いての理科教室開催希望に反映されている。 ⑬事業成功の秘訣・運営ノウハウ くらりかでは以下を特徴として挙げている。 1)身近な材料で子供たち全員が教材を作り、実験を行う「簡単」 2)教材は持ち帰り家庭で子供が自分で再演できる「安全」、 「安心」 3)実験の科学的な原理を説明する「わかりやすく」、「親しみやすく」、 「楽しく」 また、上記の 3 つの特徴を支えるものとして以下を挙げている。 A)テーマを開発する/説明用の資料を作成する B)工作のための教材をくらりかメンバーが手作りで準備する C)一人の講師と複数の TA(助手)で対応をし、生徒に達成感を与える 特に、B)については、準備をする段階で安全対策を施している。例えば、本調査で見学 をした教室(小学校 3~4 年生が参加)では、割り箸にピンを指すにあたり、手にけがをし ないようにあらかじめ全ての割り箸に穴を開けてあった。 また、C)については、毎回の教室で講師以外に必ず複数名のくらりかメンバーが助手と して参加をし、参加者が手を動かす場面では作業状況をつぶさに見て回り、必要に応じて 助言をしたり手伝ったりということを行っている。これは、できなかったという経験が理 科嫌いを生むという懸念があるため、できたという成功体験をさせることを重視している ためである。 加えて、理科教育というボランティア活動を通じて社会に恩返しするという真摯な姿勢 と母校を同じくする同窓の仲間の協調性も成功の要因として挙げられている。これには、 84 東京工業大学の前身である東京高等工業学校の校長を務め、工業教育の父と言われた手島 精一氏の精神が反映されているとのことであった。 なお、日本の理科教育全般に関して、学校の授業の支援として、企業 OB をより積極的に 活用すること、特に、モノづくりの現場を経験し、技術を持った人材による子供たちへの 教育が有効ではないかという意見が挙げられた。 ⑭今後の方向 引き続き活動を活発化させていきたいと考えている。ただし、後述するような資金面で の課題がある。 ⑮これまでに経験した問題・困難な点 開催場所の理科教室に関する要望の多様さに対応するのが困難な点である。例えば、理 科教育というよりも子供を遊ばせるということを求めている場合のように、そもそもの目 的と異なる要望がある場合もある。 ⑯今後の課題 課題は活動資金である。社団法人蔵前工業会の支援を受けているが、 (独)科学技術振興 機構の活動実施支援に依存する部分もある。しかしながら、国の科学技術予算がここ数年 逓減傾向にあり、その直接的な影響を受けている。これをどう克服するかが課題となって いる。 (2) 受講者アンケート結果 本調査研究の一環として、同事業の参加受講者(実際には引率・手伝いの保護者)に対 してアンケートを実施し、13 名から回答を得た。 85 1. 蔵前理科教室ふしぎ不思議に参加したきっかけは何ですか?(MA) 参加のきっかけは内容に対する関心が大半であった。他に、学校の勉強との関連も 15%程度挙げられている。 2. 蔵前理科教室ふしぎ不思議のことをどのようにして知りましたか?(SA) 認知経路は学校からの案内が 8 割超であった。これは、アンケートの対象となった 教室が、大田区の小学校で 5、6 年生向けにくらりかが行っていた授業の展開として、 同小学校の 3、4 年生向けに開催されたためと考えられる。 86 3. 参加してどのように感じましたか?(MA) 9 割を超える回答者が「非常によかった」と回答しており、満足度が非常に高い。 4. 特によかったのはどの点ですか?(MA) 回答者全員が内容を高く評価している。特によかった点として、他に難易度が 5 割 程度、講師が 4 割程度挙げられた。 87 5. 改善してほしいのはどの点ですか?(MA) 改善点としては、「開催時間・時間帯・所要時間」との回答が 1 割弱あった。他に、 「スライドの内容をプリントにしてほしい」、「プロペラ作りでちょっと進行が早かっ た。子供たちの進捗を見ながら進めてほしい」というコメントがあった。 6. 参加したことにより、ご自身(お子様)にとって今後どのような効果や影響があると 思いますか?(MA) 参加したことによる効果や影響としては、「(イ)同分野や関連する分野をもっと勉 強したい(して欲しい)と思った」、「(ウ)類似のイベント・教室にまた参加したい(参 加して欲しい)と思った」との回答がそれぞれ 6 割強あった。 88 7. 最近 1 年間に類似するイベントや教室には参加しましたか?(SA) 最近 1 年間での類似イベントへの参加経験は 4 割弱であった。 なお、参加したことがある類似イベントとしては、次のようなものが挙げられた。 ○光追跡マイクロロボット ○大田区の科学教室 ○学校主催のスタディルーム(ロボット製作) ○がすてなーにのイベント ○環境エネルギー館のイベント 89 8. 参加を決めるに当たってどのような情報が必要ですか?(MA) 参加決定の要因としては大半の回答者が「内容」を挙げている。他には、 「開催年月 日」、「場所」が決定要因として大きいことがうかがえる。 9. 今後、蔵前理科教室ふしぎ不思議にどのようなことを期待したいですか?<自由回答 > 今後の期待としては、継続・定期開催や理科教育の環境整備に関する次のようなコ メントがあった。 x 定期的に開いていただきたい x 子供が理科に興味を持つ環境を作っていてほしいです x 興味深く楽しい企画だったのでまたやってほしいです 90 (3) 事業の課題 ①事業実施者の意見 a)これまでに経験した問題・困難な点 開催要望が多様であることが困難な点である。また、例外的ではあるが、参加者の親の 期待が受験勉強の補足にあり、実際自分の手を使って体験してみるという趣旨とギャップ があるという事例もみられた。 b)今後の課題 今後の課題として最も大きなものは運営資金である。くらりかでは、講師や助手に対す る報酬は支払っておらず、交通費のみの支給になっている。これに加えて、材料費が 1 回 につき数千円程度必要となる。上記のように、社団法人蔵前工業会の支援の他、これまで は科学技術振興機構等の支援に依存している面があったが、その予算が削減されると直接 的な影響を受けるため、今後の課題となっている。 ②講師の意見 本事業は、事業実施者及び講師がともにくらりかメンバーであるため、①事業実施者の 意見に含める。 ③事業対象者の意見 a)本事業の評価 参加者(保護者)へのアンケート結果からは、本事業に対する満足度が非常に高いこと がうかがえる。特に、内容に対する評価が高く、今後の継続的・定期的な開催に対する要 望は大きいとみられる。 改善点としては、「開催時間・時間帯・所要時間」との回答が若干みられた。 b)事業参加を決めるために必要な情報 参加決定の要因としては「内容」が最も大きく、次いで「開催年月日」、「場所」が挙げ られた。 91 5.日立理科クラブ 日立理科クラブでは、主として日立製作所グループの技術者や研究者の OB が会員登録し、 日立市教育委員会と連携して、日立市内の小中学生の理数学力向上を支援する取り組みを 実施している。具体的には、日立市内の小学校の理科室に週 2 回、人を派遣・常駐させ、 理科室の整理整頓や器具の修理、理科実験の支援、児童や教員からの質問への対応等を行 っている。また、学習指導要領及び年間カリキュラムと教科書をふまえて学校の授業に対 応する理科教材を開発し、日立市内の小中学校等から依頼を受けて講師を派遣している。 さらに、日立市内の小中学生を対象とした各種の講座を開催している。 (1) 事業概要と成果 ①事業分類 実験環境の整備 教育プログラム・教材の開発 講師(専門家)派遣 講座・教室・セミナー・研修 ②事業実施者 NPO 法人 日立理科クラブ ③目的・位置づけ 科学創造立国日本の将来を担う小中学生の理数学力向上を支援する ④開始時期・開始経緯 2009(平成 21)年 5 月 9 日に開所式をおこなって設立した。 平成 20 年頃、日立製作所 OB の代表理事に対して日立製作所から、子ども達の理科嫌い への対応が必要との問題提起があり、日立市教育委員会を訪問しヒアリングをしたところ、 多くの小中学生が理科は好きだと回答しているアンケート調査結果を見た。しかし、よく 見ると、“好きだけど難しい”“実験や観察が少ない”⇒“楽しくない”との声が見られた。 また、日立市教育委員会は、「国際社会に生きる子ども達の科学を育む教育の実践」という ビジョンを掲げていたが、具体的に実践する手段を必要としていた。 そこで、日立製作所グループの技術者や研究者の OB(日立理科クラブでは「シニアエン ジニア」と呼称)がボランティアで市内 40 校(小学校 25 校、中学校 15 校)の小中学生の 理科の勉強が楽しくなるような支援を行う組織をつくろうと提案したところ、日立市教育 委員会からもぜひとの話になった。 92 当時、日立製作所は、創業 100 周年を迎えていた。日立市内にある同社の日立工場は、 発祥の地であったため、日立製作所が創業 100 周年記念事業の一つとして、日立市に対し て理数学力の向上支援を提案し「日立理科クラブ」を全面的に支援することとした。 ⑤実施時期・頻度 「⑦内容」に併せて記載。 ⑥対象 日立市内の小中学校に在校する児童・生徒 ⑦内容 小中学生が理科と算数・数学を学ぶ支援をボランティアでおこなっている。 大きく以下の6事業を実施している。(以下で、年度は 4~3 月。) なお、事業の案内は、日立市教育委員会から学校に対して行われている。 1)理科教室のおじさん 週 2 回、学校の理科室に人(「⑧講師決定の経緯・選定方法」を参照)を派遣・常駐させ、 理科実験の事前準備や先生の補助をするとともに、先生や生徒の科学(さらには人生)の 相談相手を務めている。また、理科室の整理整頓、器具の修理もおこなっている。 当初は、理科室のおじさんの派遣されている小学校も少なかったが、学校の先生は忙し く、理科の実験準備や器具の修理等をする時間が乏しいため、現在は日立市全 25 小学校に 派遣して、そのメリットを多くの学校が実感し、助かっていると喜ばれている。 また、従来、鍵がかかっていた理科室が、オープンな場所になり、子どもが休み時間等 に来て、おじさんに相談したり、遊んだりする、楽しい場所になった。 派遣実績 2009 年度 11 校、2010 年度 19 校、2011 年度 25 校(市内の全小学校) 2011 年度には市内全小学校に派遣するまでになった。ただし、全て小学校であり、中学 校には理科の先生がいるため、派遣は実現していない。 2)理科授業支援 学習指導要領と、教育委員会から提供される年間カリキュラムと教科書をふまえて、 学校の授業に対応する理科教材を開発・手作りで制作し、それらを紹介するメニュー (1 プログラム A4・1 枚)を教育委員会経由で、各学校に配付し、各学校から随時依頼 を受けて、講師を派遣している。 93 日立技術士会の東京本部では、技術情報の提供と教材やテキストの開発を実施して いる。 教材は、日立理科クラブのオフィス内だけでは保管しきれないほどあるため、日立 製作所グループの社宅(6 畳と 8 畳)を貸してもらい、そこにも保管している。これら 教材のメニューは、当クラブの大きな財産となっている。 派遣実績 2009 年度 小中学校合計 118 回 2010 年度 小学校 147 回、中学校 8 回、その他 4 回 *1 回の派遣で複数クラスあれば、同じ授業を複数回行うため、実際の授業回数はも っと多い。 小学校への派遣回数が多いが、中学校には理科の先生がいるため、中学校への派遣は現 状少ない。中学校からの依頼は、カリキュラムに 2 年前に新規に加わったプラスチックに 関する授業や、原子力発電等に関する授業の依頼がほとんどである。 中学校では、子ども達は体育系の部活動に多くの時間をさき、ほとんどの学校に理科・ 科学のクラブはないことから、今年度から、中学校に対しては、学校に「科学クラブ」を つくることを提案している。 3)モノづくり工房 毎月第2・第4土曜日の午前・午後に日立理科クラブで、主に小学生を対象に、自分で 教材をつくらせ、つくった道具で実験させる教室を開催している。1 回の参加費は工作テー マによるが 300 円から 700 円としている。 自分でモノづくりを体験することが、感動と喜びにつながっている。 依頼を受けて、市内の交流センターなどクラブの外での出前工房もおこなっている。 4)理数アカデミー 理数への関心が高く、将来的に科学者やエンジニアを目指している日立市内の中学生を 対象に、理科のクラス(物理、化学のみ。生物、地学は実施していない)と数学のクラス (数学と数学的パズル)を、それぞれ中学 1~3 年生の学年別に開講している。 クラスは、それぞれ毎月 1 回程度・年間 13 回、1 回 3 時間で日曜日に開講している。 講師は、理工学博士号を有する研究者を中心に、技術士資格を持つ人や技術者 OB が務め ている。 年度始めに入学式、終わりに終了式を行う。保護者も参加することが多い。 講義・演習・実験の他、先端技術研究所等への見学ツアーを今年度は 1 回おこなった。 基礎的授業は学校で行われていることを前提に、その応用として実験を中心におこなって 94 いる。例えば 2 年前に新規にカリキュラムに加わったプラスチックをはじめ、半導体や液 晶など教科書には載っていないが身近な社会・生活の中にあるものについてや、地図を作 るのに数学が使われていることなどを教えて、勉強が何に役立つのかを具体的に理解でき るようにしている。こうした社会と勉強の関わりは、学校の教師が教えるのは難しく、産 業界の人材だからこそ教えられることである。使用しているテキストは、大人向けの『発 展コラム式 中学理科の教科書』である。 今年度は、また、「『私の夢・過去・未来』発表会」を開催したところ、キャリア教育と してもよいとの評価を得て、来年度も行う予定である。 教材費として理科クラスは年間 5 千円、数学クラスは 4 千円を徴収している。 生徒数は、1 クラス 15 名程度×3 学年としており、生徒募集のチラシを教育委員会の書 面を付けた上で、教育委員会経由→学校経由で生徒に配付し、生徒を募集している。市内 の中学校数は 15 校であるため、応募のない学校もあるものの 1 学年 1 人程度ということに なるため、当クラブでは選考はしていないが、学校で選考していると思われる。過去に 22 名応募があったことがあったが、抽選はせず受け入れた。 日立市教育委員会では「未来の科学者海外派遣」という事業をここ 3 年間ほど実施して おり、今年度(昨年夏)は米国の科学に関する施設見学等に 19 人の中学生が派遣されたが、 そのうち7名は理数アカデミー参加者であった。“理数アカデミーに積極参加すると、アメ リカへ行ける”というようになればいいと考えているとのことである。なお、本海外派遣 においても、日立製作所の米国の現地法人が、現地での施設訪問等を支援している。 5)科学ふしぎ発見教室 毎月 1 回日曜日に日立理科クラブで開催している。1 回の参加費は 300 円。 この 3 年間は、水ロケットを作る活動をしており、今年度は、作った水ロケットを飛ば す「日立市子ども水ロケット大会」を開催した。テレビ局の取材も受けた。 6)地域科学教室 地域社会への貢献として、地域で開催される各種イベントや行事に参加して、手作りの 理科教材等の展示・実演や親子出前工作教室を開催して、参加する子どもたちに「科学す る心を養い、モノづくりを大切にする」風土の醸成に地域と協働で取り組んでいる。 以上の6事業とは別に、日立一高がスーパーサイエンスハイスクール(SSH)に指定され ており、40 人ほどの生徒のうち何人かの生徒の研究指導をおこなっている。二重振り子の 研究をした生徒が、昨年神戸の全国大会で発表して優秀な成績を収めた。 95 ⑧内容決定の経緯 モノづくりの感動をベースに理科実験の楽しさ、おもしろさを体験できる教育の進め方 を基本としている。また、教育テーマは学習指導要領に沿った独自開発の実験教材を活用 し、学校の理科授業に直結した支援を行なっている。 ⑨講師決定の経緯・選定方法 日立理科クラブを立ち上げる時に、日立製作所グループで部課長を経験した OB で構成す る組織である「日立社友クラブ」に声をかけたところ、39 人が賛同してくれた。 また、日立製作所グループ在勤中に博士号を取得した OB で構成する組織である「日立返 仁(へんじん)会」に声をかけたところ、22 人が賛同してくれた。 さらに、技術士の資格を持つ日立製作所グループ OB で構成する「日立技術士会」に声を かけたところ、16 人が賛同してくれた。 その他、日立製作所グループで職長を務めていた人など「ものづくりの匠」と言うべき 技術者 OB(中には「現代の名工」に認定されている人もいる)に声をかけたところ、20 人 が賛同してくれた。 これら合計 97 名を「科学大好きエキスパート」として登録し、彼らが各種事業の講師を 務めている。 通常の小中学校にこれだけの専門家はいないため、貴重な人材のリソースである。 各講師は、わずかな交通費と弁当代しか受け取っておらず、報酬は“子ども達の笑顔” としているが、楽しんで活動に参加している。 ⑩情報発信の方法 日立理科クラブのホームページで広く公開しているほか、活動計画は日立市教育委員会 経由で学校を通して配布している。 ⑪学校等の教育現場との関連 上述したように、日立市教育委員会と設立時から密接な関わりがあり、連携して事業を 推進している。日立市教育委員会は日立市教育プラザ 3 階にあり、日立理科クラブが 2 階 にある。したがって、教育委員会を通じて学校とのパイプも太い。 ⑫実績・成果 「⑦内容」に併せて記載。 全事業の実施回数合計 2009 年度 230 回 2010 年度 280 回 96 参加した子ども達の感想文をみると、理科が好きになった、楽しくなった、という感想 が増えてきて、子ども達が変わってきたと感じている。 ⑬事業成功の秘訣・運営ノウハウ 産学官が協調し、学習指導要領に即し、学校の授業に対応した内容で事業展開している ところが成功の秘訣である。 ⑭今後の方向 今後、幅広い活動展開とその充実を図るための更なる資金確保のため、現在、賛助会員 制度をつくり、賛助会員を募集しようとしている。理事も(無給だが)年間数万円を拠出 する予定である。 また、科学技術立国日本をつくるために、企業 OB が小中学校の理科実験を支援する事業 を全国展開しようとしている。具体的は、4 月に日立栃木理科クラブが設立される予定で ある。また、山口県下松市でも、日立笠戸理科クラブを立ち上げようとしている。静岡市 清水区でも、設立の動きがあり、三菱重工業(株)広島製作所の「ものづくり教室」と連 携していく計画も進められている。 (2) 受講者アンケート結果 本調査の一環として、3 月の理数アカデミーの修了式で受講者に対してアンケートを実 施し、30 名から回答を得た。 97 1. 日立理数アカデミーに参加したきっかけは何ですか?(MA) 参加のきっかけは、「内容が面白そうだから」を挙げた人が 83.3%で高い割合となっ ている。「人に勧められたから」が 33.3%を占め、「友人が参加するから」 「以前に参加 して良かったから」が 20%を超えている。 (n=30) 0% 10% 20% 30% 40% (ア)内容が面白そうだから 16.7% (ウ)受験に役立ちそうだから 13.3% (エ)人に勧められたから 33.3% (オ)友人が参加するから 26.7% (カ)以前に参加して良かったから (ク)講師が有名だから (ケ)その他 無回答 60% 70% 80% 90% 83.3% (イ)学校の勉強に関係があるから (キ)主催団体を知っているから 50% 23.3% 3.3% 0.0% 3.3% 0.0% 98 2. 日立理数アカデミーのことをどのようにして知りましたか?(MA) 日立市教育委員会経由で学校を通して案内していることから、 「学校からの案内」が 全体の 86.7%で最も多く、「友人/知人からの案内」が 16.7%、「親からの案内」が 10.0%となっている。これら以外の回答はなかった。 (n=30) 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 86.7% (ア)学校からの案内 10.0% (イ)親からの案内 16.7% (ウ)友人/知人からの案内 (エ)塾・他の教室からの案内 0.0% (オ)主催者からの案内 0.0% (カ)インターネットで見付けて 0.0% (キ)新聞・雑誌 0.0% (ク)その他 0.0% 無回答 0.0% 3. 参加してどのように感じましたか?(SA) 参加者の感想としては、 「よかった」がちょうど 50%で最も高く、「非常によかった」 と回答した人が 46.7%で、これら2つの回答で 96.7%を占めている。 (n=30) 0% 10% 20% 40% 50% 46.7% (ア)非常によかった 50.0% (イ)よかった (ウ)どちらともいえない 30% 3.3% (エ)悪かった 0.0% (オ)非常に悪かった 0.0% 無回答 0.0% 99 60% 4. 特によかったのはどの点ですか?(MA) 特によかった点として、 「内容」を挙げた回答者が 90.0%と最も多い。20.0%超える 回答に「難易度」「講師」「場所・設備」が上がっている。 (n=30) 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 90.0% (ア)内容 23.3% (イ)難易度 (ウ)講師 20.0% (エ)場所・設備 20.0% (オ)開催時期・時間帯 ・所要時間 13.3% 6.7% (カ)その他 無回答 100% 0.0% 5. 改善してほしいのはどの点ですか?(MA) 改善してほしい点としては、「開催時期・時間帯・所要時間」が 33.3%で最も多くな っている。これに次ぐ回答は「難易度」で 23.3%、「その他」が 20.0%である。「その 他」では改善点してほしい点がないといった趣旨の回答が最も多く、 「実験、見学をも っと増やしてほしい」「もっといろいろなところに行きたい」という回答が見られた。 (n=30) 0% (ア)内容 5% 10% 15% 20% 30% 35% 0.0% 23.3% (イ)難易度 3.3% (ウ)講師 6.7% (エ)場所・設備 (オ)開催時期・時間帯 ・所要時間 33.3% 20.0% (カ)その他 無回答 25% 0.0% 100 40% 6. 参加したことにより、ご自身にとって今後どのような効果や影響があると思います か?(MA) 参加による効果や影響としては、「学校の勉強に対する理解が深まった」という回答 が最も多く 70.0%を占めており、「同分野や関連する分野をもっと勉強したくなった」 という回答が 40.0%でこれに続いている。「受験勉強に役に立つと思った」「類似のイ ベント・教室にまた参加したいと思った」「同分野や関連する分野の専門家になりたい と思った」といった回答も 20%を超えている。 (n=30) 0% 10% 20% (ア)同分野や関連する分野の 専門家になりたいと思った 30% 40% 70% 80% 40.0% (ウ)類似のイベント・教室に また参加したいと思った 26.7% (エ)学校の勉強に対する理解が 深まった 70.0% 33.3% (オ)受験勉強に役に立つと思った 無回答 60% 23.3% (イ)同分野や関連する分野を もっと勉強したくなった (カ)その他 50% 3.3% 0.0% 101 7. 最近 1 年間に日立理科クラブ以外の類似するイベントや教室には参加しましたか? (SA) 類似のイベントに関して「参加しなかった」と回答した参加者が 66.7%であり、「参 加した」の 30.0%より大きくなっている。 (n=30) 無回答 3.3% (1)参加した 30.0% (2)参加しなかった 66.7% 類似するイベントとして日立理数アカデミー以外では、以下のようなものが挙げられた。 ○日立少年少女発明クラブ ○未来の科学者海外派遣 ○前橋ロボコン 102 8. 参加を決めるに当たってどのような情報が必要ですか?(MA) 参加の決定に必要な情報としては「内容」が 80.0%で最も多くなっており、「場所」「開 催年月日」「時間帯」を挙げる回答者も 63.3%でこれに続いている。このほか、50%を超 える回答としては「所要時間」「参加費」「事前準備や当日の持ち物・服装」が挙げられてい る。 (n=30) 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 40.0% (イ)難易度 20.0% (ウ)講師 (エ)場所 63.3% (オ)開催年月日 63.3% (カ)時間帯 63.3% 56.7% (キ)所要時間 6.7% (ケ)事前準備や当日の 持ち物・服装 50.0% (コ)参加費 (サ)アレルギー等の注意 90% 80.0% (ア)内容 (ク)保護者同伴の必要性 80% 56.7% 6.7% (シ)万一の事故に備えた 保険加入の有無 26.7% (ス)その他 3.3% 無回答 3.3% 103 9. 今後、日立理数アカデミーにどのようなことを期待したいですか?<自由回答> ○主に実験に関するもの x やっていて楽しくなるような実験 x もっと実験などをしてほしい。分かりやすいように動画などを取り入れて説明し てほしい。 x 科学的、お菓子作りがしたい(かるめやきなど) x 実演などを増やしてほしい。 x 実験を見るだけでなく、自分で原理を理解していきたい。 x 身近なものを、簡易的なものをつくりたい。 ○イベントに関するもの x 有名な工場や研究所の見学。工業大学や工業系の場所の見学。 x 普段行けないようなところに行きたい。 x 実験や現地に行くことをもっと増やしてほしい。 x 社会への貢献交流(フェスティバルへの参加など) ○要望 x 新しい発見をたくさんしたい。 x 理数アカデミーでしかできないことをたくさんしたい。 x たくさんの資料を使って詳しく説明してほしい。 x 今までと同様にこの分野について学校で習わないような発展的な内容を教えてほ しい。 x 数検を受けられるようにしてほしい。 x 学校の授業で役に立つようにしたい。 x 学校の授業のことをやりたい。 x 受験に役立つような内容の勉強。 ○感想・その他 x 質問したら詳しく答えてくれる。3年間楽しかった。 x 発表したりして、理解を深めたり、実物に実際に触れることがとても楽しかった ので、これからも続けてほしい。 x さらなる発展。 x 高校生にも参加できるイベントがあってほしい x 理数に関して理解が深まったので来年もやってほしいです。 x 楽しくやりたいです。 104 (3) 事業の課題 ①事業実施者の意見 a)これまでに経験した問題・困難な点 企業は、企業 OB を学校教育にもっと取り込んでいくことが必要である。 理科教育支援員の制度はあるが、理科の専門家ではない人が登録されていたり、派遣さ れている人数もわずかであり、その成果については種々課題があるようである。 当クラブが企画し、中学校に対して働きかけている科学クラブの設置は、企業 OB の活躍 を広げる力となる筈である。 b)今後の課題 日本には、貴重な企業 OB 人材がいるのだから、国としてもっと積極的に活用すべきであ る。そのために、「シニアエンジニア」という呼称は、当クラブが独自に付けた呼称である が、国として、企業 OB にもっとふさわしい呼称を付けて活用すべきである。 全国展開するには活動費が必要であるが、各地それぞれの資金集めの方法を考える必要 があると考えている。 ②事業対象者の意見 a)本事業の評価 実施している事業のうち「理数アカデミー」については、参加者の 96.7%が「非常によ かった」または「よかった」と回答しており、特に「内容」についての評価が高い結果と なっている。受講者自身「学校の勉強に対する理解が深まった」と感じている割合が高い。 一方、「開催時期・時間帯・所要時間」については、3分の1の参加者から改善して欲し いという意見が出ている。 b)事業参加を決めるために必要な情報 理数アカデミーへの参加を決めるにあたっては、「内容」が最も重視されている。このほ か、「場所」 「開催年月日」「時間帯」を挙げる回答も多くなっている。 105 IV.学協会による初等中等及び高等教育における人材育成事業の課題 学協会によるによる初等中等及び高等教育における人材育成事業に見識を持つ有識者に ヒアリングを行い、Ⅱ.~Ⅲ.の調査結果も合わせて、学協会による初等中等及び高等教 育における人材育成事業の課題を分析した。 1.学協会による初等中等及び高等教育における人材育成事業に関する 有識者の意見 本調査では、学協会によるによる初等中等及び高等教育における人材育成事業に見識を 持つ以下の 5 人の有識者に対してヒアリングを実施した。 ヒアリングを実施した有識者(敬称略、五十音順) 池田 駿介 大島 まり 小倉 康 左巻 健男 千葉 和義 ・科学技術人材育成コンソーシアム幹事会 代表 ・日本工学会 副会長 ・(株)建設技術研究所 池田研究室 室長 ・東京工業大学 名誉教授 ・東京大学 生産技術研究所 教授 ・埼玉大学 教育学部 准教授 ・(独)科学技術振興機構(JST)理科教育支援センター シニアアナリスト ・法政大学 生命科学部 環境応用化学科 科学コミュニケーション研究室 教授 ・お茶の水女子大学 サイエンス&エデュケーションセンター長・教授 有識者からの意見のポイントを、以下、項目別に整理する。 ◆学協会による初等中等及び高等教育における人材育成事業の評価 ・ 気付き、興味関心を喚起するのには効果的である。参加者は、楽しい、面白いと皆言う。 一方、この経験が理科好き、理科への興味につながる、理解の深化に至っているかとい うと疑問である。それは、イベントとしてやっており、一過性であるためであることが 要因と考えられる。講師もボランティア的活動であるため、これは致し方ないと思う。 常勤で先生がいられれば異なってくる可能性がある。この状況を変えるには、取組を継 続し、興味を持続することが必要である。それには学校との協力が欠かせない。外部か ら人が入って興味・関心を活性化したところを、学校の先生が継続してくれるとよいと 考えられる。(出張授業の事前・事後・6カ月後の追跡調査をしたところ、事後には関 心が高まったが、6カ月後には興味・関心が薄れることがわかった。 ) 106 ・ 問題は現場が忙しいので、実施する企業に丸投げになることである。授業時間を設定す るので、やってくださいということになり、打ち合わせの時間すらないこともある。企 業の出前授業はある意味投げ込み的。一時的にやってきて、そこで完結することをやっ ている。出前授業自体はよいと思う。子供たちは常にやっていることに対する飽きはあ る。それが、出前授業等のイベントは、普段と異なるので刺激になる。 ・ 学校の今の授業は座学が多い。一方、出張授業の取組は、視覚に訴えたり、手を動かす ところから入る。学校の授業を補えるところが良い点である。 ・ 先生が募集して人を集めると、理科好きしか集まらない。本当は、既に理科好きとなっ ている生徒の周辺にいる予備群に参加してもらって好きになってほしいのだが、なかな かそれができない。したがって、最初は出席に強制力が働く場で行うことが必要。 ・ 出張授業だと一度に教えられる人数は 30 人が限界である。通常の授業であれば、全ク ラスに対して同じように展開することができる。そのため、貸出教材の意味がある。 ・ 学協会は人数も限られているので、200~300 人に対して一気に支援するのは無理である。 したがって、科学部等の部活動や SSH の授業への支援等を行うレベルにならざるを得な い。 ・ 学校をサポートする社会の仕組みができればよいと思う。企業の技術者が退職してから、 地域における出前授業や教室をボランティア的にやるという芽は出ている。そういうの はもっとやってほしいと思う。そのためには、会社員の現職の時に、出前授業をやる経 験を持つというのは重要だと思う。 ・ 子供たちが喜んだときは、教える側にもすごく快感になる。これがすごく良いと思う。 企業で色々な技術者の人たちが地域の学校やイベントで教える、子供たちに科学技術の 面白さを伝えるという体験は重要。 ・ 学協会自らが活動しなくても、構成員を通じてイベントを運営したり、ノウハウを提供 することによって構成員に動いてもらうなど、学協会は司令塔あるいは中核的存在には なり得るはすである。このように、学校や地域では対応できないことを学協会がサポー トすることが、人材育成事業にとって重要なことだろう。 ・ 初等中等段階の理科教育の質を向上させるには、子ども達を教えるよりも、教員を教え る方が、はるかに効率が良いため、教員向け教育の方が重要である。 ・ 学協会での人材育成事業は、大別すると①その領域での後継者育成、②その領域の社会 の中での認知を高めることの2つの目的に分けられる。世の中の動きと無関係に学術活 動はできないため、②も重要である。 107 ・ 会場の手配、ポスターパネルの設置等には、人手やリソースが必要となる。ゆえに、学 協会の人材育成事業には、学協会としてのスケールメリットが働くことになる。 ・ 活動の場を維持していくにはコストがかかる。学協会から予算を割り当てられていれば 継続できるかもしれないが、どのようにしてランニングコストを賄うかは大きな課題で ある。 ・ 学会は事業の継続性を保ち、生徒に対して、互いに切磋琢磨できる機会を提供し続ける ことが重要である。そのためには、財政基盤の強化も必要だろう。 ・ イギリスではウェルカムトラスト、ケミカルソサイエティー、ロイヤルアカデミー等、 学協会の役割が大きい。日本でも学協会は、国ができない持続的・主体的な取組を展開 できるはずである。しかし、財政基盤が脆弱のため、継続性がない。 ◆民間事業者の理科実験教室等の事業の評価 ・ 公的に実施しようすると、資金を確保するのが大変なので、あまり商業的になってもよ くないが、大いにやってほしい。 ・ 塾と同じ位置付けでよいのではないか。 ・ このような取組に対しては事業費を税制上優遇する措置なども有効であろう。 ・ 有料の実験教室もビジネスとしてはよいと思う。こういうものが成り立ってしまうとい うのが、学校教育の観点からどうかというと複雑である。 ◆初等中等レベルの学校教育における理科教育の評価 ・ 理科教育を見ると、この 30 年間「ゆとり教育」が進んできて、この 10 年間については、 その中でも「極限のゆとり教育」が行われた。難しいものは全部高校の教育課程にまわ すことにし、易しいものだけを「基礎・基本」呼んで小学校の教育課程に残すことにし た。この結果、何よりも問題なのは、面白くなくなり、優秀な子がまず理科を嫌になっ た。学習が遅い子供にとってはある意味よいかもしれないが、本質的なことは学ぶこと はできないし、難しいものは高校に先送りされているため、高校までの過程を考慮する と、結局難しいものはやはり学べない。また、家に帰って勉強しなくても済むようなこ としか学校で教えなくなり、暗記だけでよくなってしまった。文部科学省が本当に狙っ たのは、じっくりと学んで、もっと勉強したいという学習意欲を高めて、もっと勉強す る子、主体的に学ぶ子を育てることであった。「ゆとり教育」は、このような壮大な社 会的な実験をして失敗したことになる。 ・ 日本はそれまで、理科教育において優れていると各国から評価されてきた。高度経済成 長を成し遂げた日本を評価したときに、究極的には教育がよいという評価を受けてきた。 日本においては、義務教育が隅々まで浸透し、識字率も高く、ある意味、労働者として の基礎も作られていた。よく聞かれた話では、日本で理科や数学のレベルの高いことを 学んでいたため、親の転勤等で海外の学校に入学したときにも、英語ができなくても数 108 学がよくできて現地の大学に進学できたということがあった。その頃は、日本の理数教 育は、世界でトップクラスだった。様々な批判はあったが、全体としては誇りを持てた 教育だった。ところが、この 30 年間でそのような教育を劣化させてしまった。 ・ 今になって、他国の例も目にして、日本の学習内容が少なすぎるということになり、理 数教育充実への展開が行われるようになった。しかし、教育現場としてこの 30 年間の 状態に慣れすぎた。まだ 30 年前は、精選したとはいえ、科学技術の進歩も早く、時代 が進んでいたので、新しいものを教えるための教材の研究が活発に行われていた。それ がこの 30 年間で「難しいものは教えなくてよい」という考え方になってしまった。こ のような問題が、理科や数学だけではなく、もっと広範な問題に包含されている。無気 力、無感動といった「三無主義」が当たり前となっていった。それが 10 年続いたら当 たり前になる。20 年続いたら空気になる。もう少し過ぎたら、ゆとり教育で学んだ人た ちが教員になる。ゆとり教育で学んだ教員たちは、自分たちが学んだことがないことを 教えなくてはならない。理科・数学の授業時間を増やしたからと言って簡単には解決す る問題ではない。(変化が現れるには)10 年はかかるだろう。その間にゆとり教育で育 った人たちが教員になっていくから大変である。教員が学ぶ意欲を持っていれば変える ことができるが、それどころではないといわれている。以前の日本の教育が優れていた のは、志の高い教師が、手弁当で集まって勉強していたことである。先生の志を活かし て立て直すようなことをしないと、今般の立て直しがうまくいかない。 ・ 30 数年前は、親は、先生の方針でどんどんやってくださいという感じだった。それが、 今は、親は子供を通して学校を批判するようになっている。教師にとっては、難しいレ ベルの子供の指導が増え、親との関係が難しくなった。 ・ まず、小学校の低学年に理科がないというのは致命的な問題である。小学校の 1、2 年 には理科がない。生活科は社会には似ているかもしれないが、理科ではない。理科の土 台になる体験を低学年からやることが必要である。自身が産業界の人間だったら、それ をしないとだめだと思うだろう。 ・ 次に、小中学校の技術教育が不足している。小学校では技術教育をどこでやっているか というと、図工である。しかし、今の図工の授業は美術的側面が強い。一方、中学校の 技術は時間数がすごく少ない。他の国には、サイエンスとテクノロジーの授業が小学校 にある。日本では、技術過程の半分は情報教育。情報教育自体が悪いとは言わないが、 のこぎりを使ったり、金属をたたいたりということは小学校でやった方がよい。かつて、 電気の授業はもっとレベルの高いことをやっていた。 ・ 現在では、理科教育の中に、生活と産業との関連がほとんどない。高校は後半に少し、 化学で薬品の話が出てくる。技術教育はないに等しい。 ・ 小学校の教員養成課程での必要単位数は以前よりも増えたが、2単位増加させたところ 109 で実践できるようになるかどうか分からない。それに理科で必要単位を増やすと、他の 科目では増やさないのか、英語も増やす必要はあるのではないか、等の意見が必ず出る。 理科だけを優遇してもらうわけにはなかなかいかない。 ・ 学校の授業は、カリキュラムが非常にタイトになっている。最近は授業内容が増えてい るので、なおさら余裕がない。 ・ 現在の学校の理科教育には問題がある。大学で、かつて 1 日で出来ていた実験ができな くなってしまった。理由は、学生がモノを扱うのが遅くなり、速く作業できなくなって しまったためである。聞いてみると、初等中等教育でほとんど手を動かして実験をした 経験がないと言う。 ・ 理科教育の影響は、大人にも及んでいる。理科教育をきちんと実施していないため、日 本人の大人の科学リテラシーは極めて低い。例えば、原発でも食品でも「絶対安全」を 求める人がほとんどだが、「絶対安全」を求めるのはおかしなことである。絶対安全な どあり得ないし、それに限りなく近いものを求めれば、ものすごくコスト高になること を分かっていない。一方の政府側も、“無用の混乱を引き起こす”と言って、必要な情 報を隠蔽するから問題である(例えば、SPEEDI)。市民は何か起こるとすぐ政府を攻め る、政府は攻められるから余計に出さない。情報不足から疑心暗鬼になって市民は、絶 対安全を求めるようになっている。リスクは恐れないといけないが、正しく理解すべき。 ・ 他の国はもっと様々な試みをしていることである。イギリスでは、科学リテラシーを高 める教育を実施している。科学者の専門教育としてではなく、一般人としても必要な科 学リテラシーを高めている。 ・ 子どもが屋外で過ごす時間が減り、自然環境で過ごさなくなっている。自然体験を持つ のは子どもの成長に非常に重要であり、人工環境でしか過ごさなくなっていることは、 子どもの物事に取り組む姿勢にも影響を与えている。 ◆学校教育の場も含め現在の理科/科学の指導者の能力・資質の評価 ・ 小学校教員には、文系出身者が多く、必ずしも理科全科目を受講していなくても教員免 許を取ることができてしまう。しかし、経験を経ないで教壇に立つと、実験、実技等の 実践面が弱くなるきらいがある。 ・ ゆえに、教員対象の研修制度が必要となる。学期前に不得意科目を含め、必ず単元につ いて一通り研修を受けることが効果的であろう。 ・ 小学校に理科専科の先生を置くというのも一つの選択肢であるが、専門性に基づいてう まく任命できるかどうか分からない。 ・ 中学校からは理数系には専科教員が置かれるが、得意・不得意科目はある。ゆえに、こ 110 こでも研修が必要となる。問題は、中学校教員の研修になると自主的参加となるため、 少数の受ける教員は積極的に受けるが、多数の受けない教員はいつまでたっても受けな いことである。さらに、中学校教員は部活動での指導に忙しく、なかなか研修時間を捻 出できない。部活動は地域の指導員に任せ、教員を学校の外に出し研修を受けさせなけ ればならない。教員としての専門性をどうやって高めるか、そのインセンティブをどう やって与えるかが課題である。 ・ 高校教員のレベルは、総じて中学教員のレベルよりも高いと感じている。サイエンス・ リーダーズ・キャンプを開催すると、全国から理科好きの名人先生が集まるが、必ず高 校の先生の参加希望者数の方が中学の先生の参加希望者数よりも多い。高校教員は、新 学習指導要領を押さえるだけでは不足である。SSH でさえ、「課題研究」や「自由研究」 の教え方は確立していない。 ・フィンランドでは、理系の学位を持つ専門家が小中学校での理科教育を支援している。 JST の理科教育支援員は、これに似た良い仕組みである。理科教育は、一定の専門性が 必要なため、小学校では特に、フィンランドのように、補助員を入れればいいと思う。 ◆理科/科学の指導者に必要な能力・資質 ・ 相手の反応に応じて講義内容をアレンジできることが重要。一方通行ではだめ。 ・ 必要な資質・能力は小中高それぞれで異なるし、一対一か集団かでも異なる。 ・ 中学校までは既存の教材を少しアレンジすればできる。中学生以上であれば、講師側の 言わんとすることを理解しようとして聞いてくれる。小学校は、まったく違うものが必 要なため、小学校教育の経験者との連携も必要。小さいと、子どもが自身の研究に関心 を持ってくれない場合もあり、そうなると研究者が教えに行く意味がなくなってしまう。 ・ 企業の CSR の活動の一環として出前授業をやる際や、大学の先生が小中高で教えると、 難しすぎるということがある。子供のレベルや、感じ方、考え方がつかめておらず、自 己満足的になって終わってしまう。目新しいので子どもたちは良い反応を示すが、では 子供たちに何が残ったのかというのが問題である。しかし、これは、慣れてくると分か ってくるので、資質的な問題ではない。必要な資質は、子供が喜ぶことがうれしいと感 じられることだけではないか。 ・ ポスドクに限らず、芸人的資質、エンターテインできる資質が必要。 ・ サイエンスショーでのパフォーマーのように、理科の楽しさを伝えられるかどうかは、 属人的要素が強い。 ◆ポスドクを活用した初等中等教育について ・ 講師としてポスドクを派遣するケースについては、その人の資質・キャラクターによっ て成否が異なる。 111 ・ 大学生や大学院生を連れて行くと、生徒の側と年齢層が近く、生徒からお兄ちゃん、お 姉ちゃんの感覚を持ってもらえるのでやりやすい。 ・ ポスドク自身が将来教育界に入りたいのなら有効な方法かもしれない。小中学生にとっ ても、年寄りから教わるよりも、世代が近く、お兄さん、お姉さん感覚で接することの できる若いポスドクの方が魅力的だろう。 ・ 純粋に研究者の道を進みたいポスドクに対して、義務としてやらせるのは無理だろう。 やはり、教育界とポスドクのお互いニーズの一致が必要となる。加えて、生活の足しに はできる程度のサラリーの支給は必要だろう。 ◆講師の認定制度・資格について ・ Informal education であれば、特に資格は必要ないだろうが、formal education であ れば何らかの認定がある方が受け入れ側も安心ではないか。 ・ 資格認定事業は、費用がかかるため、実務に関係していることが重要。子ども教育だけ を目的とした資格だと取得が必須の資格ではないので、あまり取得されず、維持してい くのは大変なのではないか。 ・ 現在、日本工学会で、子ども教育の講師資格に対する“考え方”を統一したいと思って いる。既に資格を制定している学会の制度も取り入れたい。 ◆理科/科学教育の安全確保、事故のリスクについて ・ 出張授業に行く場合も、講座に参加してもらう場合も保険をかけている。 ・ 現在は、川で子どもが深みにはまって死んだら、管理者が訴えられるため、川は危ない から入るな、というのが一般的な行動パターンである。昔であれば、子どもはため池な どに落ち、自分で落ちた経験から危険を学んでいた。しかし、危険を経験させないから、 危険を察知する能力が低下している。 ・ もちろん自己責任だけではだめで、学校から一定距離内にある危険な場所については、 危険であるとの標示をするなど情報提供はすべきである。どこの場所で事故が起きてい るかウェブサイトで公表している団体もある。自然は恐れなければならないが、危険を 知った上で自然を体験することは重要である。 ・ 報告書やウェブサイトに結果を掲載する場合は、肖像権にも留意が必要である。写真撮 影をする時は、保護者の許可を得て、写真をとらないでほしいという人がいた場合は、 映らないように隅に座らせる。 ◆学校教育を受けてきた人材と、産業界で求める技術人材像とのギャップが生まれる要因 およびその克服策 ・ 産業界は、すぐに役立つ人、即戦力の技術者を育ててほしいと要求する。一方、大学は、 112 論文を書くという研究の観点での教育を中心に行いたいと考えており、教員もそれで評 価されるため、そこにミスマッチが生まれる。現在は、実際問題と関連するプロジェク ト研究も増えてはいるが、それでも研究の観点での教育が中心である。 ・ 産業界からどのような人材を求めているかを発信してほしい。想像するに、産業界では 「考える力を持った人」がほしいのではないか。このようなことをうまく学校教育に入 れられるとよいと思う。 ・ 産業界からは、「大学は産業界に役立つ人材を育てていない。社会に出てから産業界が 教育し直している」という批判はよく聞く。しかし、それでは、産業界はどういう人材 を求めているのか。具体的で明確な意見がないのに批判しているだけのようにも聞こえ る。 ・ 産業界が日本の教育にあまり興味関心を持っていないように思う。ひどい状態にならな いと気にしない。近年入社する若者が問題になっているが、あれは末期(教育課程を最 後まで終えた後)の姿である。産業界が学校教育を見るような機会があってよいのでは ないか。産業界も今はその意識でやっているのだと思う。 ・ 現状の教育は、ドリル回答力の養成が多い。一方、社会に出るとそのような課題は出な い。学生から見て、自分の勉強が社会の役に立つかどうかがわからないのではないか。 (勉強がどう役に立つかを)例として示すことができるのは産業界の人である。産業界 は、製品といった「本物」を持っている。塾では提供できないものを提供することがで きる。CSR の一環として人材育成にもっと携わるとよいではないか。 ・ 学校の周りに(産業界による)サポーターの集団を作っていくのも重要だと思う。それ が企業の CSR の一環であったとしてもかまわない。 ・ 米国の大学院では「産業界が求める人材」向けに教育方法を変えることはしていない。 ・ イギリスでは、(同様の問題点に直面した結果)入試制度から変革したようである。日 本でいうところの総合学習の時間を活用して、考える力を養おうとしている。ただし、 教えられる人がいるかどうかの問題が大きい。 ◆複数の学協会の協力による人材育成事業を推進するために必要なこと ・ バラバラにやるより一緒にする方がよい。そのために科学技術人材育成コンソーシアム をつくった。様々な分野全てに共通しているのが人材育成である。 ・ 日本には、学会の総元締めとして「日本学術会議」があるが、学会同士が連携した事業 は、現状では少ない。諸学会に対して貢献を促し、人材育成のための情報を共有できる よう、加盟学会に「呼びかけ」「表彰し」「紹介する」ことが重要であろう。このような 113 取 組 の 例 と し て は 、 ICSU, “Report on the ICSU Ad-hoc Review Panel on Science Education”が参考になる 2 。 ・ 一つ一つの学会は小さくとも、集まることは良い情報交換の機会である。 2 ICSU とは、The International Council for Science の略称。レポートの URL は以下の通り。 http://www.icsu.org/publications/reports-and-reviews/report-of-the-icsu-ad-hoc-review -panel-on-science-education 114 2.学協会による初等中等及び高等教育における人材育成事業の課題 (1) 学校教育における理科教育の状況 小学校・中学校における理科の授業時間数は、1989(平成元)年公示の学習指導要領か ら、大きく削減された。まず、小学校 1・2 年生は、理科(と社会)の授業がなくなり、生 活科に統合された。小学校 3・4 年生の授業時間数は変わらなかったものの、5 年生以上中 学生の授業時間数は、年間 140 時間であったものが 105 時間に 25%も削減された。 その後、1998(平成 10)年告示の学習指導要領において、小学校の 3~6 年生と中学校 3 年生の理科の授業時間数はさらに削減され、小学校は昭和時代の 3 分の 2 程度に、中学校 3 年生に至っては 57%にまで減少した。 2008(平成 20)年に告示された現行の学習指導要領において、小学校 4 年生以上の理科 の時間数は、概ね平成元年の水準にまで増加したが、小学校 3 年生は昭和から平成元年ま での水準の 86%の時間数となっており、小学校 1・2 年生の理科の授業は生活科に統合さ れた状況で変わっていない。 小・中学校理科 学習指導要領 告示年 昭和22年 昭和27年 昭和33年 昭和43年 昭和52年 平成元年 平成10年 平成20年 第1学年 70 第2学年 70 68 68 68 - 70 70 70 - 授業時間数の変遷 小学校 第3学年 第4学年 70 105 105 105 105 105 70 90 105 105 105 105 90 105 第5学年 105-140 第6学年 105-140 140 140 140 105 95 105 140 140 140 105 95 105 第1学年 140 105-175 140 140 140 105 105 105 中学校 第2学年 140 105-175 140 140 140 105 105 140 第3学年 140 105-175 140 140 140 105-140 80 140 出典)大阪府教育センター(2002)「学習指導要領の変遷」ウェブサイト (http://www.osaka-c.ed.jp/kak/karikenweb/webpdf/webcur/wc10rika/wc1001.pdf) 及び文部科学省「学習指導要領」より作成。 高等学校の理科の授業については、1989(平成元)年告示の学習指導要領から、それま で物理・化学・生物・地学の基礎全般を学ぶ「理科Ⅰ」が必修であったのが、総合理科・ 物理・化学・生物・地学の中から 2 科目選択した上での必修となった。これにより、理科 全般にわたっての基礎の習得が必修でなくなり、生徒による学習内容のばらつきが大きく なったと指摘されている。 その後、1999(平成 11)年告示の学習指導要領においては、総合理科の代わりに理科基 礎・理科総合 A・理科総合 B が新設され、この 3 科目の中の 1 科目と、物理・化学・生物・ 地学の中から 1 科目を選択した上での必修となったが、理科総合 A は物理と化学、理科総 合 B は生物と地学を扱う科目であり、理科全般の基礎を学ぶ理科基礎が必修でない点は変 わらなかった。 2009(平成 21)年に告示された現行の学習指導要領において、新設された「科学と人間 115 生活」を含む 2 科目または物理・化学・生物・地学の中から 3 科目を選択した上での必修 となり、従前よりは広く基礎の習得が求められるようになった。 高等学校理科 学習指導要領 告示年 科目構成 必修 学習指導要領 告示年 科目構成 必修 昭和23年 物理 化学 生物 地学 5単位 5単位 5単位 5単位 1科目選択 昭和53年 昭和27年 物理 化学 生物 地学 科目構成及び単位の変遷 昭和30年 5単位 5単位 5単位 5単位 物理 化学 生物 地学 1科目選択 3単位 3単位 3単位 3単位 又は 又は 又は 又は 2科目選択 昭和35年 5単位 5単位 5単位 5単位 基礎理科 6単位 物理Ⅰ 3単位 物理Ⅱ 3単位 物理A 3単位 又は 物理B 5単位 化学Ⅰ 3単位 化学A 3単位 又は 化学B 4単位 化学Ⅱ 3単位 生物 4単位 生物Ⅰ 3単位 地学 2単位 生物Ⅱ 3単位 地学Ⅰ 3単位 地学Ⅱ 3単位 2科目選択 平成元年 昭和45年 平成11年 「基礎理科」1科目 又 は「物理Ⅰ」、「化学 Ⅰ」、「生物Ⅰ」、「地 学Ⅰ」のうち2科目選 択 平成21年 理科Ⅰ 4単位 理科Ⅱ 2単位 物理 4単位 化学 4単位 生物 4単位 地学 4単位 総合理科 4単位 物理ⅠA 2単位 物理ⅠB 4単位 物理Ⅱ 2単位 化学ⅠA 2単位 化学ⅠB 4単位 化学Ⅱ 2単位 生物ⅠA 2単位 生物ⅠB 4単位 生物Ⅱ 2単位 地学ⅠA 2単位 地学ⅠB 4単位 地学Ⅱ 2単位 理科基礎 2単位 理科総合A 2単位 理科総合B 2単位 物理Ⅰ 3単位 物理Ⅱ 3単位 化学Ⅰ 3単位 化学Ⅱ 3単位 生物Ⅰ 3単位 生物Ⅱ 3単位 地学Ⅰ 3単位 地学Ⅱ 3単位 科学と人間生活 2単位 物理基礎 2単位 物理 4単位 化学基礎 2単位 化学 4単位 生物基礎 2単位 生物 4単位 地学基礎 2単位 地学 4単位 理科課題研究 1単位 「理科Ⅰ」必修 「総合理科」、「物理ⅠA」又は「物理Ⅰ B」、「化学ⅠA」又は「化学ⅠB」、「生 物ⅠA」又は「生物ⅠB」及び「地学Ⅰ A」又は「地学ⅠB」の5区分から2区 分にわたって2科目選択 「理科基礎」、「理科総合A」、「理科 総合B」、「物理Ⅰ」、「化学Ⅰ」、「生 物Ⅰ」及び「地学Ⅰ」のうちから2科目 選択 (「理科基礎」、「理科総合A」及び「理 科総合B」のうちから1科目以上を含 むものとする。) 「科学と人間生活」、「物理基礎」、 「化学基礎」、「生物基礎」、「地学 基礎」のうち「科学と人間生活」を含 む2科目、又は、「物理基礎」、「化 学基礎」、「生物基礎」、「地学基 礎」のうちから3科目 出典)大阪府教育センターウェブサイト (http://www.osaka-c.ed.jp/kak/karikenweb/webpdf/webcur/wc10rika/wc1007.pdf) 及び文部科学省「学習指導要領」より作成。 116 (2) 学協会による初等中等及び高等教育における人材育成事業の課題 Ⅱ.、Ⅲ.の調査結果と有識者ヒアリングの結果、及び学校教育における理科教育の状況 をふまえて、学協会による初等中等及び高等教育における人材育成事業の課題を以下に整 理する。 ◆学協会による人材育成事業へのニーズの高まり 初等中等段階の学校教育における理科教育が、前ページ(1) で示した通り削減されるに 従って、学協会や企業など学校教育以外において人材育成事業が活発化してきており、ま た、こうした学校教育以外において人材育成事業に対するニーズも高まっている。 Ⅱ.で示した通り、本調査で調査した学協会の範囲だけでも、多様な種類の人材育成事 業 41 事業が、延べ 152 の学協会により実施されている。 また、Ⅲ.の詳細調査結果の受講者アンケート結果をみると、受講者の多くが過去にも 類似の事業に参加した経験があると回答しており、学校教育以外の場での人材育成事業へ の参加に積極的であることがうかがえる。特に、比較対象として調査した、学校と連携し て実施されている学協会以外による事業に比べ、学協会による事業は、広く一般を対象と しており、インターネット等で受講者自らが自発的に見付けて参加していることもあり、 類似事業への過去の参加実績は 6 割前後にものぼっている。また、「以前に(同じ事業に) 参加して良かったから」との回答割合も高く、事業に対する評価も高い。 事業に参加して、今後「(類似の事業に)また参加したいと思った」との回答は、いずれ の事業でも一定割合がみられ、事業に対する今後の期待に関する自由回答においても、継 続や実施回数の増加を求める声が多くみられる。 ◆学校教育を補完することが期待される学協会による人材育成事業 学校教育以外の場での人材育成事業への期待が大きいものとしては、実験等の体験が挙 げられる。有識者ヒアリングでも聞かれたが、授業時間数が削減されて、学校教育におい ては、実験にさける時間が大幅に減少し、児童・生徒が自ら手を動かして実験し、発見す る体験が減ってきている。特に、小学校では、理科の専任教員がいないため、理科室を有 効に活用することも難しいとの指摘もある。 こうした中、Ⅲ.の詳細調査結果の受講者アンケート結果をみると、実験中心の事業の 「内容」が特に良かった点として挙げている割合が高く、自由回答においても、実験を高 く評価する結果が得られている。 つまり、学校教育以外の場での人材育成事業が、学校教育を補完していることが分かり、 そのことに対する受講者・保護者の評価も高いことがうかがえる。 有識者の中からは、今後、理科教育が削減された時期に教育を受けた世代が学校教員の 職に就くようになると、より一層、学校教育以外の場での人材育成事業への期待が高まる 117 ことになると指摘する声も聞かれる。 ◆産業界が関わって人材育成事業を行うメリット 学校教育以外の場で行われる人材育成事業の中でも、特に、産業界が関わって行う人材 育成事業のメリットは、実社会を伝えることができることである。学校教員は、学校以外 の社会、産業界での経験を有さない人材が大半を占めている。 そこに、例えば、プラスチックや液晶など児童・生徒が生活の中で関わっている物や、 発電や半導体など直接目には見えなくても関わっている事柄の仕組みや技術について、実 物を用いて実務に基づいて説明することができるのは、企業・産業界の大きな強みである。 また、こうした説明を通じて、学校で学ぶことが実社会で具体的に活用されていること を示すことができるのも、企業・産業界の強みである。児童・生徒には、学校の勉強が実 社会とどのように関わっているのかを実感するのが難しいことも少なくない。学校の勉強 が、社会において実際に役立っていること、必要であることを実感させられれば、勉学の 意欲も高まることが期待できる。 ◆期待される産業界OB人材の活用 産業界が人材育成事業を行うことに大きな強みを有していることから、期待されるのは、 産業界の OB 人材の活用である。もちろん現役の産業人材の活用も有効ではあるが、本業と の関係で制約がある場合も少なくない。一方、産業界を引退した OB 人材は、時間的に余裕 があり、所属組織からの制約も基本的にないため、自由な活動が可能である。団塊の世代 の引退が順次行われる中で、多数輩出されることが見込まれる、知見や経験を豊富に有し ている貴重な産業界 OB 人材を積極的に活用することが、大いに期待される。 Ⅲ.で詳細調査を実施した事例のうち学協会以外による事業である「日立理科クラブ」 と「蔵前理科教室ふしぎ不思議(くらりか)」は、産業界の OB 人材が主導的に遂行してい る事業であるが、講座等の実施以外に、「日立理科クラブ」では、教育委員会と連携して、 小学校の理科室に定期的に人を派遣・常駐させる事業や、教育プログラム・教材の開発等 も行っており、高く評価されている。特に、理科室への人材の派遣は、理科実験の事前準 備や教員の補助、理科室の整理整頓や器具の補修等を行うもので、忙しい教員にメリット がある他、児童が理科室を好きな時に訪れることができるようになり、理科への関心が高 まる効果が生まれている。 また、詳細調査を通じて、事業を遂行している産業界 OB 人材にとっても、児童・生徒を 対象とした人材育成事業に関わることは、報酬はほとんど得られないにもかかわらず、生 きがいややりがいになっていることが強く感じられた。学校教育を補完する人材育成事業 に産業界 OB 人材を活用することにより、産業界 OB 人材にも生きがいを感じてもらいなが ら、社会全体で学校教育を支える仕組みの構築につながっていくことが期待できる。 産業界と密接な関わりのある経済産業省が促進する人材育成事業として、産業界 OB 人材 118 という貴重な人材を活用することは、有意義であると思われる。 ◆求められる産業界OB人材への社会的呼称の付与 産業界の OB 人材を学校教育以外における人材育成事業にさらに活用するために、一つ求 められることとしては、こうした産業界 OB 人材に社会的なステータスを付与する呼称であ る。長く社会で働いてきた産業界 OB 人材には、何らかの肩書があることで、より一層やり がいを感じる側面があると考えられ、Ⅲ.で詳細調査を実施した事例においても「シニア エンジニア」という独自の呼称を付けている例がある。国が定めて広く普及した呼称がで きれば、より一層こうした事業への参加意欲も高まると考えられる。 一方、学校教員免許を有さない人が教育を行うことについて、一定の要件を設定し資格 認定を行うべきとの意見もあり、Ⅱ.の調査結果にも記したように、講師の資格認定を行 う取り組みも既にみられる。しかし、有識者ヒアリングによれば、学校教育を補完する教 育を行うに当たって必要な資質は、児童・生徒と双方向のコミュニケーションが取れるこ とと児童・生徒が喜ぶことを嬉しいと感じられることであり、経験を積むことの方がむし ろ重要との意見もある。また、実際問題、資格認定のための要件を作成し、応募を受け付 けて審査を行い、認定証を発行する等のプロセスに一定の費用がかかるため、取得が必須 でない資格にそれだけのコストをかけるのは運用が難しいのではないかとの指摘も聞かれ た。 ◆求められる事務運営費の支援 産業界の OB 人材を活用しているケースを含めて、本調査で調査したほとんどの人材育成 事業は、講師謝金を支払っていないか、支払っていてもごくわずかである。必要となって いる費用は、会場費、講師の交通費、実験等に使用する材料費、配付する印刷物のコピー 代など各回数万円程度であるが、そのわずかな費用ですら工面に苦労している面がみられ る。 善意によって支えられている事業の火を絶やさないためにも、事務運営に係る費用の支 援が求められる。 ◆求められる学校教員を対象とした人材育成事業の拡充 Ⅲ.で詳細調査を実施した事例のうち日本数学協会と国際教育学会主催の「教師と大人 のための算数・数学講座」は、学校教員の実力向上を目的とした事業である。(1) で示し た通り、学校教育における授業時間数が削減され、その頃に教育を受けた世代が学校教員 の職に順次就いてきているが、2008(平成 20)年に告示された現行の学習指導要領で授業 時間数が増加した結果、自らがその学年で習わなかったことを教えなければならない教員 が生まれている。 「教師と大人のための算数・数学講座」は、このことに対応することを主 たる目的として開始された算数・数学分野の事業であるが、理科・科学の分野においても 119 同様に、学校教員を対象とした人材育成事業へのニーズはあると考えられる。 既にⅡ.の調査結果でも紹介したように、学校教員を対象とした講座等や、学校教育で 使用できる教育プログラム・教材の開発も複数行われている。 しかしながら、学校教員が、教育委員会で行われる研修以外に参加することには限界が あると推察でき、また、本調査で紹介した教育プログラム・教材は無料のものが多いが、 仮に有料で有益なプログラム・教材があったとしても、学校にはそれを購入する予算は無 いことが多い。 学校教員を対象とした教育を拡充するためには、教育委員会との連携が必須であり、ま た学校教育以外において行われる児童・生徒を対象とした人材育成事業を拡充するために も、教育委員会との連携が必要である。有識者ヒアリングでも、学校教育以外における人 材育成事業は、一過性のイベントで終わりがちであり、その効果を根付かせるためには、 学校教育現場でのフォローが欠かせないとの指摘がある。 しかし、Ⅲ.で詳細調査を実施した事例のうち「日立理科クラブ」は、教育委員会の建 物内に事務所もあり、教育委員会が同クラブの事業を学校に対して広報しているなど、教 育委員会と密接に連携して活動しているが、こうした事例は全国的には珍しいのが現状で ある。 学校教育における理科等の教育を強化していくことの喫緊の必要性と、産業界を活用し た学校教育以外における人材育成事業の有効性に対する文部科学省の理解を求めていくこ とが期待される。 ◆求められる高等教育への産業界ニーズの発信 高等教育段階の教育(大学教育)については、初等中等教育とは状況がまた異なり、学 校教育から輩出される人材と産業界が求める人材とのギャップについては、産業界からよ り積極的に求める人材像を発信することが必要との意見が、有識者からは聞かれた。 この問題に対応すべく、既にⅡ.の調査結果で紹介したように、コンテスト・表彰事業 を行い、若手人材の育成を図る取り組みが行われている。 また、Ⅲ.で詳細調査を実施した日本化学工業協会による「化学人材育成プログラム(化 学産業による大学院博士後期課程支援制度)」は、画期的な取り組みである。本事業では、 日本化学工業協会が組成した「化学人材育成プログラム協議会」が、公募した大学院の教 育カリキュラムを評価し、化学産業が大学に求める人材ニーズに応えている専攻を毎年選 定して 5 年間、学生の就職支援などのサポートを行うとともに、そのうち特に優れた 4 専 攻を毎年選定し、各専攻が推薦する 1 専攻につき 1 人の在学生に対して毎月 20 万円の奨学 金を支給している。 同様の取り組みが、今後、他の分野においても行われるようになることが期待される。 ただし、この事業には、比較的多額の費用が必要なことから、産業界からのより大きな 協力を得ることが必要となる。 120 V.学協会により今後実施される初等中等及び高等教育における人材育 成事業の情報発信 本調査の調査結果を活用し、初等中等及び高等教育現場に向けて、学協会が今後実施予 定の人材育成関連事業に関する情報を一元的に提供するポータルサイトのウェブコンテン ツを作成し、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社のウェブサイト上に公開し た(http://www.murc.jp/rika/)。 作成したポータルサイトのイメージは、次ページ以降に掲載する。 なお、本調査事業終了後、作成したポータルサイトを継続するためには、以下が必要と 考える。 ○運営方針・ルールの整備 まず、ポータルサイトの運営方針・ルールが必要である。運用が開始されることになる と、想定していなかったトラブルや利用に当たっての問い合わせが発生することが考えら れるため、これらに対応するためのルールも事前に整備することが必要である。 ○情報の定期的更新 学協会の人材育成事業全体を見ると、日々更新されている状況である。学協会の実施す る人材育成事業の情報について、ポータルサイトを運営する事務局が情報を収集し、入力 することが必要である。 人材育成事業を実施する学協会による本サイトへの認知が進み、同意が得られれば、情 報入力用のフォーマットを整備し、個々の学協会が自ら情報を入力できるようにする方法 も考えられる。 また、学協会の組織変更や URL の変更も発生しうる。人材育成情報及び関連サイトへの リンク情報については、ポータルサイトを管理・運営する組織において、新しい情報や正 しいリンクが表示されるように継続的にメンテナンスをすることが必要となる。 ○システム更改 ポータルサイト公開後、サイト運営上の様々な課題や不具合に対応したり、新たなニー ズに対応する必要が生じることが想定されるが、システム更改のために必要となるドキュ メント類を整備するとともに、拡張可能性を前提としたサイトの構築が必要となる。 ○責任ある管理・運営組織 上記を行うためには、責任を持って責任を持って継続的に本ポータルサイトを公開・運 営・維持管理・更新する組織の存在が不可欠である。 121 学協会により今後実施される初等中等及び高等教育における人材育成事業 情報発信ポータルサイト イメージ No. 事業内容分類 事業実施者 講座・教室・セミ 1 化学史学会 ナー・研修 人材育成事業名 化学史研修会 対象者 高校教員、その他 実施日 URL 夏休み期間(年 http://kagakushi.org/?pag e_id=11 1回) 中学生・高校生の 講座・教室・セミ 電子情報技術産業 2 依頼に応じ ための IT・エレク 中学生・高校生 ナー・研修 協会 トロニクス講座 ①小学 5 年生から 講座・教室・セミ 3 電子情報通信学会 科学実験教室 中学生、または② 依頼に応じ ナー・研修 中学生・高校生 2012 年 8 月 18 講座・教室・セミ 日本地震学会、日 地震火山こどもサ 小学生・中学生・ 日(土)~19 日 4 ナー・研修 本火山学会他 マースクール 高校生 (日) 硬さ試験・引張 試験:2012 年 9 企業の若手・中 月 18 日(火)、19 堅・壮年技術者な 日(水) 講座・教室・セミ 技能検定・認証制 らびに大学学部高 5 ナー・研修、講師 日本材料学会 疲 労 試 学年生(高専専攻 度 験 : 資格認定 科学生を含む) ・大 2012 年 9 月 20 学院学生 日 ( 木 ) 、 21 日 (金) 小学校 理科専科 教育プログラム・ 授業で活かせる理 教員または 6 年生 依頼に応じ 6 日本電機工業会 教材の開発 科教育セミナー 担当教員 7 講師(専門家)派 電気学会 遣 電 気 理 科 ク ラ ブ 小中学校教員、理 依頼に応じ 「理科実験」 科支援員 122 http://www.jeita.or.jp/ji nzai/doc/summary.pdf http://www.ieice.org/jpn/ kagaku/aboutkaisai.htm http://www.kodomoss.jp/in dex6.html http://www.jsms.jp/index_ 21.html http://www.jema-net.or.jp /Japanese/rikakyoiku/semi nar/index.html http://members3.jcom.home .ne.jp/denkirikaclub/:8e: c0:8c:b1:20.html No. 事業内容分類 対象者 小中学校教員、理 講師(専門家)派 電気理科クラブ 8 電気学会 科支援員、教員志 遣 「学校理科支援」 望者 高校生、専門学校 学生公開アイデア 生、短大生、大学 9 コンテスト・表彰 日本造園学会 生、大学院生の個 コンペ 人またはグループ 日本造園建設業協 全国造園デザイン 一般・大学生・高校 10 コンテスト・表彰 会 コンクール 生 11 コンテスト・表彰 事業実施者 日本天文学会 人材育成事業名 ジュニアセッショ ン コンテスト・表彰、 夢・化学-21 委員 化学グランプリ 12 学会・国際大会へ 会、日本化学会 の参加推薦 コンテスト・表彰、 全国物理コンテス 学会・国際大会へ 物理オリンピック ト『物理チャレン 13 の 参 加 推 薦 、 講 日本委員会 ジ』 座・教室・セミ ナー・研修 14 教育プログラム・ 電気学会 教材の開発 教育プログラム・ 日本造船工業会 教材の開発 教育プログラム・ 16 日本電機工業会 教材の開発 15 電気理科クラブ 「理科実験」 海の仕事.com 社会とつながる理 科授業 JEMA プロ URL http://members3.jcom.home 依頼に応じ .ne.jp/denkirikaclub/:8e: c0:8c:b1:20.html http://www.landscapearchi 2012 年 4 月 30 tecture.or.jp/dd.aspx?ite 日応募〆切 mid=2149&efromid=0#module id1029 http://www.jalc.or.jp/des 2012 年 7 月頃 ign/designconoubo.html http://ursa.phys.kyushu-u 年 1 回(天文学 中学生、高校生 .ac.jp/jsession/2011haru/ 会の年会時) program_comment.html 2012 年 4 月 2 日 高校 3 年生・高専 ~6 月 8 日申込、 学校 3 年生以下の 一次選考:7 月 http://gp.csj.jp/ 生徒で、20 歳未満 16 日 、 二 次 選 考:8 月 9~10 の者 日 20 歳 未 満で 高 等 2012 年 4 月 30 教育機関に在学し 日申込〆切、6 http://www.jpho.jp/ ていない人(第2 月 24 日~2013 チャレンジ開催 年 3 月開催 時) 小中学校教員、理 http://members3.jcom.home 科支援員、教員志 常時 .ne.jp/denkirikaclub/:8e: 望者 c0:8c:b1:20.html 子ども、学校、家 http://www.uminoshigoto.c 常時 om/ 庭 小学校 理科専科 http://www.jema-net.or.jp 常時 /Japanese/rikakyoiku/prog 教員または 6 年生 123 実施日 No. 事業内容分類 17 実験環境の整備 18 講師認定制度 19 講師認定制度 事業実施者 人材育成事業名 グラム 対象者 担当教員 小学校、中学校、 日本地学教育学会 地層宅配便 高等学校 永年,電気学会の IEEJ プ ロ フ ェ ッ 会員であって,高 電気学会 ショナル制度 度な技術力・専門 性を有する会員 日本アロマセラ 学会員、セミナー 資格認定制度 ピー学会 受講者 124 実施日 常時 URL ram/index.html http://www12.ocn.ne.jp/~k yo2sci/profile1.html http://www2.iee.or.jp/ver 認定申請は随時 2/honbu/11-aboutus/index1 受付 60.html 年1回 http://www.aroma-jsa.jp/s ystem.html 平成23年度 産業技術調査事業 学会等による人材育成関連事業に関する実態調査 報 告 書 ――――――――――――――――――――――――――――――――――― 平成 24(2012)年 3 月発行 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 政策研究事業本部 〒105-8501 東京都港区虎ノ門五丁目 11 番 2 号 電話:03-6733-1021 FAX:03-6733-1028