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東日本入国管理センターにおける被収容者2名の死亡
東日本入国管理センターにおける被収容者2名の死亡事件に関す る会長声明 2 0 1 4 年 ( 平成 2 6 年 ) 5 月 2 8 日 群 馬 弁 護 士 会 会長 1 足立 進 声明の趣旨 東 日 本 入 国管 理 セ ン タ ー に お いて 、本 年 3 月 2 9 日に イ ラ ン 国 籍 の 被 収容 者( 男 性 )が 、同 月 3 月 3 0 日 に カメ ル ー ン 国 籍 の 被 収容 者( 男 性 )が 相 次 い で 死 亡 す る 事件 が 発 生 し た 。そ こ で 、当 会 は 、法 務 省 入 国 管 理 局 及 び 東 日 本 入 国 管 理 セ ンタ ー に 対 し 、 下 記 のこ と を 求 め る 。 記 (1) 2 件 の 死 亡 事 件 に つ き 、そ の 真 相 を 解 明 す る ため に 、独 立 し た 第 三 者 機 関 を 直 ち に 設置 し 、同 機 関 に よ る 必 要 か つ 十 分 な 調 査 を 受 け 入 れ 、調 査 結 果 を 公 表 する こ と 。 ( 2 ) 再 発 防 止 の た め に 、具 体 的 か つ 実 効 的 な 医 療 体制 の 改 善 策 を 速 や かに 策 定 し て 実 行 する こ と 。 ( 3 ) 被 収 容 者 の 心 身 に 多 大 な 負担 を 強 い る 長 期 収 容を 直 ち に 停 止 す る こと 。 2 声明の理由 ( 1 ) 2 件 の 死亡 事 件 の 発 生 東 日 本 入国 管 理 セ ン タ ー に よれ ば 、① 平 成 2 6 年 3 月 2 8 日 午 後 7 時5 0分頃にイラン国籍の被収容者(男性)が夕食を喉に詰まらせて窒息し、 搬 送 先 の 病 院 で同 月 2 9 日 に 死 亡 した 、ま た 、② 同 月 3 0 日 午 前 7 時 頃 に カ メ ル ー ン 国 籍の 被 収 容 者( 男 性 )が 1 人 部 屋 で 意 識 を 喪 失 し て い た と こ ろ を 同 セ ン タ ーの 職 員 が 発 見 し た が、1 時 間 後 に 搬 送 先の 病 院 で 死 亡 し た と の こ と で あ る( 以 下 、2 件 の 死 亡 事 件 を あ わ せ て「 本 件 死 亡 事 件 」と い う。)。 1 そ し て 、同 セ ン タ ー に は 常 勤医 は お ら ず 、非 常 勤 医 が 来 る の は 平 日 の午 後 1 時 か ら 5 時の み で あ っ て、本 件 死 亡 事 件 発 生 時 に は 同 セ ン タ ー 内 に 医 師 は 不 在 で あ った 。 ( 2 ) 調 査 及 び調 査 結 果 公 表 の 必 要性 本 件 死 亡事 件 は 、被 収 容 者 が 相 次 い で 死 亡 す る とい う 極 め て 深 刻 か つ異 例 な 事 件 で あ ると こ ろ 、既 に 報 道 機 関 に よ る 報 道 も さ れて お り 、国 民 の 関 心 事 と な っ て いる 。そ の た め 、法 務 省 入 国 管 理 局 及 び 東日 本 入 国 管 理 セ ン タ ー ( 以 下 、 両 者 を あ わ せ て 「 入 国 管 理 局 等 」 と い う 。) は 、 国 民 に 対 し て 、 本 件 死 亡 事件 の 真 相 を 明 ら か にす べ き 責 務 が あ る 。 し か し 、入 国 管 理 局 等 に よ る 自 主 的な 調 査 に よ っ て は、本 件 死 亡 事 件 の 真 相 解 明 は 期 待で き ず 、他 方、本 件 死 亡 事 件 と 同 様 の 悲劇 を 繰 り 返 さ な い た め に は 、 本 件死 亡 事 件 の 徹 底 し た調 査 が 必 要 で あ る 。 そ の た め 、入 国 管 理 局 等 か ら の 影 響を 全 く 受 け な い、独 立 性 の あ る 第 三 者 機 関 を 直 ち に設 置 し て 調 査 に あ たら せ る 必 要 が あ り 、入 国 管 理 局 等 は 同 機 関 に よ る 調 査を 受 け 入 れ 、 積 極 的に 調 査 に 協 力 す べ きで あ る 。 そ し て、入 国 管 理 局 等 は、国 民 主 権・民 主 主 義 の 見 地 から 、国 民 に 対 し 、 同 機 関 に よ る 調査 結 果 を 直 ち に 明 らか に し な け れ ば な らな い 。 ( 3 ) 医 療 体 制の 改 善 の 必 要 性 被 収 容 者 処 遇 規則 第 3 0 条 1 項 が「 所 長 等( 入 国者 収 容 所 長 及 び 地 方 入 国 管 理 局 長 )は 、被 収 容 者 が り 病 し 、又 は 負 傷 し た と きは 、医 師 の 診 療 を 受 け さ せ 、 病 状 に よ り 適 当 な 措 置 を 講 じ な け れ ば な ら な い 。」 と 規 定 し て い る こ と か ら も明 ら か な と お り、被 収 容 者 に 対 し て 適 切な 医 療 措 置 を 受 け さ せ 、被 収容 者 の 生 命 並 び に 身 体 及び 精 神 の 健 康 を 維 持す る こ と( 以 下「 生 命 等 の 維 持 」 と い う 。) は 、 東 日 本 入 国 管 理 セ ン タ ー を 含 む 入 国 者 収 容 所 及 び 地 方 入 国 管理 局 の 法 的 責 務 で ある 。 2 被 収 容 者 の 生 命等 の 維 持 の た め に は、収 容 施 設 内 に お いて 、必 要 か つ 十 分 な 医 療 体 制 が整 備 さ れ て い る 必 要が あ る が、同 セ ン タ ー に お け る 医 療 体 制 の 不 備 は、① 毎 年 、入 国 者収 容 所 等 視 察 委 員 会 が 同 セン タ ー の 医 療 体 制 の 改 善 を 求 め る意 見 を 表 明 し て い るこ と 、② 移 住 者 の 人 権 に 関 す る 国 連 特 別 報 告 者 ホ ル ヘ・ブ ス タ マ ン テ 氏 が、同 セ ン タ ー の 視 察に 係 る 報 告 書 に お い て 、「 収 容 所 で 移 住 者 に 与 え る 医 療 水 準 を 改 善 す る 緊 急 措 置 が 適 用 さ れ な け れ ば な ら ない 」と 勧 告 し て い るこ と( 国 連 文書 A/HRC/17/33/Add.3)、 ③ 国 連 拷 問 禁 止委 員 会 が「 適切 な 医 療 へ の ア ク セ ス 欠 如」に 懸 念 を 表 明 し て い る こ と (CAT/C/JPN/CO/1) な ど か ら も 明 ら か で ある 。 こ の よ う に 、国 内 外 か ら 再 三 に わた り 、同 セ ンタ ー の 医 療 体 制 の 不 備 を 指 摘 さ れ て い たに も か か わ ら ず、本 件 死 亡 事 件 が 発 生 して し ま っ た こ と は 極 め て 遺 憾 で ある 。 今 後 、本 件死 亡 事 件 と 同 様 の 事 件 の再 発 防 止 の た め に、ま た 、被 収 容 者 の 生 命・健 康 の 維 持 の た め に 、入 国 管 理 局 等 は 、第 三 者 機 関 の 提 言・助 言 を 受 け る な ど して 、再 発 防 止 の た めに 、具 体 的 か つ 実 効的 な 医 療 体 制 の 改 善 策 を 速 や か に策 定 し 実 行 す べ き であ る 。 ( 4 ) 長 期 収 容の 停 止 の 必 要 性 そ も そ も 、長 期 収 容 が 被 収 容者 の 心 身 に 過 度 の 負担 と な り 、心 身 の 健 康 を 害 す る こ と は明 ら か で あ る か ら 、長 期 収 容 自 体 を 直 ちに 停 止 す べ き で あ る。 こ の こ と は、① 日 弁 連 が「 退去 強 制 令 書 発 付 後 の 収 容 に期 間 の 制 限 を 設 け る べ き で あ る」と し て い る こ と( 2 0 1 3 年 2 月 2 5日 付 け 拷 問 等 禁 止 条 約 第 1 9 条 1項 に 基 づ く 第 2 回 日本 政 府 報 告 書 審 査 に関 す る 日 弁 連 報 告 書)、 ② 前 述 の ブ ス タ マ ン テ 氏 の 報 告 書 に お い て 、 非正 規 滞 在 の 移 住 者 に 対 す る 収 容 政策 、特 に 、非 正規 滞 在 者 の 全 体 収 容 主 義、長 期 収 容 に 懸 念 を 表 明 し て い るこ と 、③ 国 連拷 問 禁 止 委 員 会 が 、ⅰ 収 容 が 必 要 な 場 合 で も 3 収 容 期 間 を 可 能な 限 り 短 く す る よ うに し て、強 制 退 去 を 控 え た 収 容 の 期 間 に 上 限 を 導 入 する こ と ( 同 委 員 会 日 本 の 第 2 回 定 期 報告 に つ い て の 総 括 所 見 9 項 (b))、 ⅱ 出 入 国 管 理 及 び 難民 認 定 法 に 定 め ら れた 収 容 以 外 の 選 択 肢 を さ ら に 利 用す る よ う に す る こ と ( 同 総 括 所 見 9 項 (c))、 つ ま り 、 仮 放 免 等 の 収 容 に 代替 す る 措 置 を さ ら に広 く 活 用 す る こ と を勧 告 し て い る こ と か ら も 明 ら かで あ る 。 3 結語 よ っ て 、当 会 は 、本 件 死 亡 事 件 の 被 害 者 お よ び そ のご 遺 族 に 対 し て 深 い哀 悼 の 意 を 表 す とと も に 、法 務省 入 国 管 理 局 お よ び 東 日 本入 国 管 理 セ ン タ ー に 対 し 、本 件 死亡 事 件 に つ き 、① その 真 相 を 解 明 す る た めに 、独 立 し た 第 三 者 機 関 を 直 ち に 設置 し 、同 機 関 によ る 必 要 か つ 十 分 な 調 査を 受 け 入 れ 、調査 結 果 を 公 表 す る こと 、② 再 発 防 止 の ため に 、具 体 的 かつ 実 効 的 な 医 療 体 制 の 改 善 策 を 速 や か に策 定 し て 実 行 す る こと 、③ 被 収 容 者 の 心身 に 多 大 な 負 担 を 強 い る 長 期 収 容 を直 ち に 停 止 す る こ とを 求 め る 。 以上 4