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【三浦半島・横須賀臨海地区】
三浦半島 〈 横須賀臨海地区 〉 3 大津地区整備のあり方 ■導入する機能 1 首都圏における位置づけと地区の概況 都市的な公園・地区 観音崎 担を考慮し、大津地区港湾緑地の性格を ■首都圏における横須賀臨海地区の位置づけ ○三浦半島は、首都圏の南西端に位置し、大規模な緑地や農地、変化に富む岩礁や干潟等の自然海岸と多様な生態系、海とつ ながって広がりのある半島景観を有する、首都圏の中でも貴重な地域である。 三笠公園 以下のように位置づける。 ・都市的空間の近くで自然と ・立地条件を活かし、地域住 ○大津地区周辺等では、東京湾の大きな海水の流れや市街化の影響により水質は必ずしも良好とは言え 自然的要素の強い 公園・地区 民のみならず広域的にも利 ないが、猿島や観音崎まで視点を広げると、藻場が分布し、四季を通じて底生生物の種類数が多く豊 ▲首都圏における三浦半島 走水海岸 用される緑地 都市の近くで より自然に ふれあえる緑地 大津地区 港湾緑地 都市的機能 な楽しみ方のある緑地 において他に例を見ない海辺の親水空間が形成されている。 自然的機能 ・賑わいが感じられ、都市的 あえる可能性を有している。特に、プロムナード(うみかぜの路)の整備が進められており、首都圏 ヴェルニー公園 より都市的な楽しみ方や にぎわいのある緑地 ふれあえる緑地 ○その中で横須賀臨海地区は、既成市街地や住宅地の近くに海があり、日常的に海と親しみ、直接ふれ かな漁業環境であり、ノリ、コンブ、ワカメの養殖も盛んで、生物の重要拠点となっている。 広域的な利用 ○周辺地区、公園・緑地との連携・機能分 うみかぜ公園 立地を活かした より広域的に 利用される緑地 ローカルな利用の多い 緑地・地区 海辺つり公園 馬堀海岸 うみかぜの路(海と緑の 10,000 メートルプロムナード)とは:昭和 57 年に「文化の元年」を宣言した横須賀市の文化行 政のシンボルプロジェクト。JR横須賀駅から観音崎まで、5つの公園を含んだ約 10km を海沿いの楽しい遊歩道で結び、 海と緑を日常生活の中に取り入れようというもの。整備は昭和 59 年に開始、平成 18 年 3 月現在の進捗率は約 73%。 2 地区の将来像 ■うみかぜの路の再評価と今後に期待される役割 自然環境の現況と広域的な位置づけから、首都圏の都市環境インフラとして横須賀臨海地区(うみかぜの路)に期待される 役割は、以下の通りである。 ○海域の環境改善と多様な生物生息の維持拡大:東京湾全体の生物循環の上で重要な位置にあることから、海のエコトーン形 ローカルな利用 ▲うみかぜの路沿線各地区、公園・緑地と、大津地区港湾緑地のポジショニング ○整備の基本的方向性を踏まえ、大津地区港湾緑地に以下の6つの機能を導入する。 ・生物多様性保全機能:都市的空間の近くで自然ネットワーク形成に配慮した海のエコトーンを形成 ・親水機能:海辺を散策するだけでなく、直接水や海の生物に触れられる場を確保 ・まちづくり誘導機能:立地を活かしたうみかぜの路の利用拠点形成と、賑わい空間の形成により周辺の活性化やまちづくり を誘導 成によって多様な生物が生息可能な海辺の環境を整備し、東京湾や首都圏全域の広域的な自然循環ネットワークを考慮した ・海のレクリエーション機能:広域的な視点からうみかぜの路沿線に不足している機能を導入し、海の多様な楽しみ方を促進 自然再生を図っていく。 ・景観形成機能:緑地自体の景観形成と、海の景観を楽しむ環境づくり、ゾーンとしての景観形成 ○海とのふれあい:都市的空間と自然を結ぶ道として、都市生活者が海とふれあえる場所を整備、レベルの高い親水性を提供 ・防災機能:景観形成、親水性、安全性、自然環境と調和を図った、高潮対策の護岸整備 し、自然のネットワーク、人と自然のふれあい空間の連続性を確保し、首都圏の都市環境インフラとしての価値を高める。 広域的な(東京湾)ニーズに対応 ○海を基調とする多様な景観の保全と創出:海辺の景観を整備するとともに、横須賀を代表する海を基調とした多様性に富ん だ景観を楽しみ、東京湾の遠景を眺望できる環境を、保全・創出していく。 海辺のレクリエーション 生物多様性保全 ■今後の整備における大津地区の位置づけ ○うみかぜの路の未整備区間の一つで、横須賀市港湾環境計画において港湾緑地整備が計画されている。 ・ルートのほぼ中間地点にあたり、鉄道や道路交通のアクセスもよく、主要な玄関口の一つとして拠点的な位置づけにある。 ・両側を整備済区間に挟まれ、この地区の整備によりJR横須賀駅∼馬堀海岸までプロムナードが連続し、整備効果が高い。 ・東京湾における生態系ネットワークの形成上も、生物の拠点づくりが行われることが望まれる位置にある。 ■大津地区整備の基本的方向性 大津緑地整備の主たる目的は、「老朽化した護岸を改修し、高潮から背後の生活を守る」「生物多様性に配 慮した構造を利用し、海域環境へ貢献する」 「海にふれ遊び学べる親水空間を市民に提供する」の3つである。 これを踏まえ、広域的な首都圏の環境インフラの視点と、横須賀市及び大津地区としてのローカルな視点 ・海洋スポーツの拠点 (トレーラーボート等) ・釣りができる場所の整備 まちづくり誘導 景観形成 親水 防災 ・水や水辺の生き物と 直接ふれあえる場づくり (潮入りの池、タイドプール) ・水辺へのアクセシビリティの確保 ・緑地自体が持つ景観機能 ・ゾーンとしての景観形成 →護岸沿道の景観整備 →背後の街区の景観誘導 ・交流拠点づくり (うみかぜの路の サービス拠点) ・多様なニーズに応える サービスの提供 ・ユニバーサルデザイン ・緑地と周辺施設の 相乗効果 →マーケットストリート →イベント広場 人にやさしく︵都市的機能︶ ○一方で、以下のようなポテンシャルを有する地区であると言える。 環境にやさしく︵自然的機能︶ ○老朽化した直立護岸の改修、水辺に面していながら海側に背を向けた殺風景な通りの環境整備、といった課題を有している。 ・海のエコトーンの形成 →岩礁・浅場の造成、藻場 →魚類相の自然の営力による再生 ・くつろげる緑地(松林等の緑陰、地被類の植栽、砂地等) ・地域の植生を考慮(クロマツなど) ・陸上の自然のネットワークへの配慮(鳥や虫の生息等) ・高潮対策の 護岸整備 の両面からニーズを勘案し、都市的空間から自然的空間に至る中間点、東京湾の重要な自然の拠点という観 点から、海辺の自然の再生、陸域の緑のネットワーク形成、人と自然のふれあいに資する緑地として自然的 ローカルな(大津地区)ニーズに対応 な機能の導入を重視するとともに、新たな交流の拠点となり、周辺の景観形成やまちづくりに資する拠点と なるよう、まちづくり機能を導入した整備を行う。 平成18年3月 ▲大津地区港湾緑地に想定される導入機能の整理 4ページ/9ページ 4 実現化に向けた方向性 5 6つの導入機能(生物多様性保全、親水、防災、景観形成、海辺のレクリエーション、まちづくり誘導)を具体的に実現し ていく上で、以下のような整備イメージを想定する。 17 年度 ■大津地区港湾緑地に導入する機能の整備イメージ 項目 海域の自然再生 ゾーン ○WGによる方向づけ 設定の背景と方向性 整備イメージ 整備に際しての留意点 ○水質浄化などの自然再生、漁業資源の 保全・育成など東京湾全体に寄与する ○人工リーフを設けた面的な防護 タイプの護岸 ○極力自然の力に任せた順応的管理が 可能な計画 生物拠点となるポテンシャルを有す る。 ○周辺海域の自然環境を参考に生 き物が生息可能な水深2m未満 ○岩礁系の海岸として整備(砂浜 より高い生物多様性が期待され ○埋立前の海辺の景観の再生につなが る、市民に開かれた自然に親しめる海 る。観音崎や猿島をモデルに。 ) ○生物多様性を高める均質でない凸凹 のある空間 ゾーン 岸づくり ○水質浄化や生物生息機能が期待され ○順応的な管理の可能な計画 ○ユニヴァーサルデザインの水辺づく ○親子で安全に水遊びや 自然観察ができ、環境 潮入りゾーン 教育に役立つ場所を整 備、よりレベルの高い り ○水遊びや水辺の生き物と直接ふ ○安全性に配慮(ハード・ソフト両面) れあえる場を整備(潮入りの池、 ○ユニヴァーサルデザインの親水空間 人工タイドプール、タッチング プールなど) ○漂着ゴミが入りにくい工夫、清掃・ 管理の手法検討 親水性を実現 海のレジャー ゾーン 釣りゾーン ○海辺つり公園駐車場ボート置き場の 機能補償(緑地整備にともない使えな ○トレーラーボー ト、カヤック、デ ○漁業活動との兼ね合い、駐車場・利 用拠点施設との近接性等に配慮した くなる) ○大型船が通らず静穏で安全な海域を ィンギー等が海 におりられる斜 配置 ○ソフト面の充実(カヤック等のレン 積極的に活かし、海の多様な楽しみ方 を促進 路と、保管場所を 整備。 タルサービス、海洋スポーツのスク ール開催など) ゾーン 利用拠点施設 平成18年3月 ■管理運営・民活導入 ○民間活力導入にあたっては、緑地全体でなく、売店・飲食店などの利用拠点施設等に対象を限る方法も考えられる。 (公設民営方式は民間でもすでに同種の事業が行われ民間の経営ノウハウが蓄積されているか、また営利性の観点から住民個 人に相応の利用料負担を求めてよいようなサービス分野に適しているとされる) ■市民参加のあり方 ○横須賀市では、市民・市民公益活動団体・事 トセンターの整備、市役所内の市民協働推進 協働による計画検討 担当の設置、市民協働推進条例の制定を行っ (市民ワークショップ、専門家の参画等) ている。 ○また、港湾環境計画においても、市民との協 働による行動の推進が、基本理念として掲げ 動、緑地における他のアクティビテ ィへの影響を考慮) ねらいは、緑地を日常的に最もよく利用する ○間隔を狭くし、幹を保護する海浜植 物(ハマユウ等)を同時に植栽 ○最終的なイメージを持ちつつ成長の 再現し、横須賀らしい 海辺の景観を再生 ろげる緑地 ろげる空間を整備 の環境整備は必須 ○緑地の賑わいが背後のまちづくりに 対し活性化や景観誘導などの好影響 を与える効果を期待 ○樹木に囲まれ、海が見える景観 の中、弁当を広げ、バーベキュ ーや軽いスポーツなどを楽しめ る草地の広場的な空間を整備 ○イベント、暫定的な駐車、フリ ーマーケット、ワゴンの設置等、 多目的なスペースを確保 ○散策の楽しめるプロムナードと して整備 様子を見ながら段階的に整備 ○松林再生ゾーン、利用拠点施設、に ぎわい形成ゾーンとの関連性・連続 (より幅広い意見) 用し、管理・運営への意識を高めてもらうと 情報交換 計画の決定、設計 工事中の情報提供、見学等 いう点にある。 ○市民参加型の計画策定や管理・運営を行うに 整備 あたっては、市民協働推進条例に基づき、市 協働による管理運営組織化 内に数多い既存の市民活動団体との連携を (指定管理者制度の担い手となる NPO の育成) 図っていくことが重要である。 ▲市民参加の進め方イメージ 性についても考慮 ○歩行者や自転車の通 行に十分な幅員の確 保(うみかぜの路を 構成する一部として の機能を考慮) ○うみかぜの路の中間地点、中心部に位 置し、鉄道、道路交通のアクセスに恵 ○インフォメーション機能 ○レンタルサービス機能 ○隣接する海辺つり公園との利用拠点 施設、駐車場等の共同化、一体的利 まれた拠点的な位置づけ ○緑地の利用やルート全体の回遊の拠 ○レストラン・カフェ ○物販機能 用(既存管理施設等の活用も検討) ○整備・運営にあた 点となる施設を整備し、様々な情報や サービスを提供 組織継続 パブリックコメント募集 地域住民が計画段階から関わることで、地域 の誇り・財産として認識し、愛情を持って利 海芝の上で散歩、ピクニック、 昼寝等を楽しめる、市民がくつ 素案縦覧 られた大きな前提となっている。 で釣りが楽しめる場として整備 ○松林によって緑陰ができ、砂や 実際のまちづくり活動への参加につな がる、参加者を増やすかたちでの参画 まちづくり」を進めており、市民活動サポー 中、周辺海域は釣り場として優れ、多 くの釣り客が見られる。 た松林を、大津地区の シンボルとして緑地に (公募、関係セクターへの声かけ) をもってまちづくりに取り組む「市民協働型 ○大津地区港湾緑地における市民参加導入の ○埋立等によって失われ 多様なセクターからなる 広義の「市民」の参画 検討組織立ち上げ 業者・行政が役割を分担し、それぞれが責任 ○他のゾーンとの明確な分離(漁業活 ○緑地前面にあたる殺風景な通り沿い にぎわい形成 ○協働型・民活型の運営に向けた検討 ○海辺つり公園より自然的な環境 ○都市型の港湾緑地とし て市民が楽しみ、くつ ピクニックゾーン ○地域+幅広い市民の参加による検討 ○自由に釣りのできる場所が限られる ○緑地整備にともない規模が縮小され る海辺つり公園の機能補償 松林再生ゾーン 19 年度以降 ○埋立事業申請・実施設計・事業着工 導入が考えられる。 ○防災機能(高潮対策)を備えつつ親 水性や環境との親和性に配慮 海岸の自然再生・自 然とのふれあい る環境共生型の護岸形態整備 18 年度 ○緑地の基本計画・基本設計 ○緑地の管理・運営については、PFI(Private Finance Initiative)や指定管理者制度等による、市民との協働、民間活力の 程度の浅場を造成 ○うみかぜの路西側では直接海の水や 生物に触れられる場所が限られる。 事業の実現化のための方策 ■事業化のスケジュール ○スタッフルーム ○バリアフリーのトイレや授乳室 り、PFI、指定管 理者制度等の民 ○その他多目的スペース等 間活力導入を検 討 6 成果と課題 ワーキンググループの取り組みにより、うみかぜの路および大津緑地の整備について、首都圏の都市環境インフラのグラン ドデザインの観点から「海域の環境改善と多様な生物生息の維持・拡大」 「海とのふれあい」 「海を基調とする多様な景観の保 全と創出」という方向づけがなされた。 ■今後の展開における課題 ○東京湾における環境プロジェクトとの連携による東京湾の自然再生への貢献:東京湾環境計画、東京湾再生プロジェクト等、 東京湾における各種環境プロジェクトと連携を図り、東京湾全体としての自然再生を意識した整備を行う。 ○うみかぜの路を中心とした三浦半島全体のネットワーク形成:県が進める「三浦半島公園圏構想」や本 WG の「二子山地区」 と連携しつつ、首都圏自然歩道(関東ふれあいの道)との接続、 「浦賀道」の再生、のような具体的な展開を図る。 ○うみかぜの路の利用性向上による首都圏からの広域ふれあい利用の促進:港内遊覧船就航による「海の回廊」整備や、既存 のプロムナードにおける利便性を高め(共通利用券、年間パスポート導入等)、沿線各地区間の回遊性向上を図る。 5ページ/9ページ 平成18年3月 6ページ/9ページ