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社会起業家とそのリスク構造
21 世紀社会デザイン研究 2006 No.5 社会起業家とそのリスク構造 石川 正宏 ISHIKAWA Masahiro 1.はじめに 本稿においては、「社会起業家」と呼ばれる起業者、及びその人物によって構築された組 織の活動と運営におけるリスクについて考察する。 社会起業家とは、町田洋次によれば、「医療、福祉、教育、環境、文化などの社会サービ スを事業として行う人たち」として定義される。社会起業家は、収益の追求のみを目的とせ ず、社会にある課題の解決を使命として個人の責任に基づいて事業を起業する、または、非 営利組織をプロとして運営するなど、その活動スタイルは様々である。 しかしながら、時代の変化を強調して提唱される起業家に関する議論は、一面的、情緒的 に起業を煽るようなものになりやすい場合も多い。それ自体の副作用や、問題点を軽視して いるようにも見える。組織行動には試行錯誤がつきもので、事前の想定通りに物事が動くこ とは希である。本研究の特徴は、こうした問題点を認識し、問題解決の方向性を検討・確認 するところにある。 2.社会起業家とは何か (1)概念の提唱 「社会起業家(social entrepreneur)」とは、1997 年にロンドンにあるシンクタンク、デ モス(DEMOS)が提唱した概念である。デモスとは、英国の独立系のシンクタンクである。 こ の デ モ ス の 社 会 起 業 家 に 関 す る 報 告 書 “ The Raise of Social Entrepreneur ” (Leadbeater,1997)には、イギリスにおける五人の人物の起業家活動におけるケーススタ ディが示され、それらを通してデモスは社会起業家の概念を提唱した。まず、この報告書で 扱われた五人の社会起業家について簡潔に確認しておこう。 一人目は、牧師、アンドリュー・モーソン(Andrew Mawson) 。彼は、1984 年にロンドン のイーストエンド、ブロムリー・バイ・ボウ地区(Bromley − by − Bow area)の教会に牧 ― 49 ― 師に赴任して以来10 年にわたり、教会を地域に開放し、地域の再生を成し遂げた。教会の施 設を利用したブロムリー・バイ・ボウ・センターは、現在、平日の昼間は託児所や保育園と して利用され、週末や夜だけ、教会として使用されている。 二人目のヘレン・テイラー・トンプソン(Helen Taylor −Thompson)は、1984 年にサッ チャー首相の福祉カット政策による NHS(National Health Service :国民医療保険サービ ス)の支払い対象の縮小にともない閉鎖の危機にさらされたミルドメイミッション病院(The Mildmay Mission Hospital)をエイズ治療の世界的な治療施設の 1 つに再生させる原動力と なった。 三人目、エリック・ブラックボロー(Eric Blakebrough)は、キングストンで、革新的な ドラッグ治療のプログラム、ケイルドスコープ(Kaleidoscope)を運営している。ブラック ボローがドラッグ治療のプログラムを始めたのは、1968 年で、ケイルドスコープは設立から およそ 30 年になる。 四人目のジェフ・トンプソン(Geoff Thompson)は、有名スポーツ選手や大企業の協力 を取り付け、スポーツによって若者をドラッグと犯罪から遠ざけるという計画(YCS =Youth Charter for Sport)を実行している。トンプソンが YCS を作ったのは 1993 年、デモスで扱 われているケースの中では最も新しい。この YCS のアイデアは単純である。トンプソンは、 スポーツの魅力や有名なアスリートを若者や恵まれない人々のロールモデル(規範モデル) として使う。スポーツは、若い人々と社会との橋渡しになる。トンプソンは、国中のスポー ツ・オフィスのための YCS のネットワークを作成することを望み、その中でブローカーの役 割をする。 五人目のトニー・マクガン(Tony McGann)の例は、荒廃した地域を再開発した話であ る。英国の産業は、1970 年代の後半に不況と国際競争のために壊滅的な打撃を受けた。その あおりを受けて、リバプールでも工場が閉鎖され、失業者が増大した。同時期に、リバプー ルでは、市街地の老朽化したアパートに住んでいる人々に対する郊外のニュータウンへの住 み替え政策が採られるようになった。マクガンは、こうした中で、1980 年代の初めに住宅 協同組合、ザ・エルドニアンズ(The Eldonians)を創設し、リバプールの中心地に300 戸近 い住宅を建設し、地域を再生させた。 これらのケーススタディが記されているデモスの報告書において、著者のリードベーター (Leadbeater)は、社会起業家とは以下のようなものであると述べている。 社会起業家は、低くしか活用されていない資源 ── 人々、建物、設備 ── に目をつ ける。そして、満たされていない社会的要求を満たすためにそれらを用いる方法を見つけ る。彼らは、既存のサービスを変える新しい福祉サービスおよび新しい方法を導入する。 社会末端の事業家としての技術を展開させる社会起業家は、従来の公共部門、民間の企業 部門、そしてボランタリーのセクターにまたがる領域で活動する。そして、柔軟かつフ ラットであることに加えて、創造的でオープンな組織をつくり出す(Leadbeater, 1997 : 2-3) 。 また、デモス(DEMOS)という言葉自体が“市民”を意味する言葉でもあるのだが、社 (1) 」と称されることもある。 会起業家は「市民起業家(Civic Entrepreneur) ― 50 ― 21 世紀社会デザイン研究 2006 No.5 また、EMES ネットワーク(2)がEU15 カ国を対象として行った『社会的企業の登場』( “The Emergence of Social Enterprise”)という研究がある(Borzaga, Defourny, 2001)。この研究 の中では、社会的企業の登場という現象を、現代経済におけるサードセクターの範囲内で説 明出来ると同時に、その伝統的な範囲内から部分的にはみ出す特徴を持った新しい企業家活 動として把握している。 (2)日本における議論と実例 ここまでは、イギリスを中心とした海外の事例について論じたが、日本における議論と実 例についても目を向けてみたい。 前掲のデモスの報告書を引用した町田洋次は、 『社会起業家 ─ 「よい社会」を作る人たち』 (2000)という著作の内容紹介において、端的に「医療、福祉、教育、環境、文化などの社 会サービスを事業として行う人たち」として社会起業家を定義している。町田によれば、社 会起業家は、収益の追求のみを目的とせず、社会にある課題の解決を使命として個人の責任 に基づいて事業を起業する、または非営利組織をプロとして運営するなど、その活動スタイ ルは様々である。また、町田は、社会起業家と普通の企業の創業者と比較して、第一に医療、 福祉、教育、環境、文化などの社会消費を対象にしていること。第二に、ステイクホルダー が地域の人々であり、企業のように株主第一では無いこと。第三に、社会企業家の場合、オー プンな関係性を持つのでその関係者が圧倒的に多いことを、その違いとして論じている。 谷本寛治・田尾雅夫は、社会起業家を本業としては社会的サービスの供給や社会における さまざまな問題(地域の再生、環境保全、教育の再生、社会変革)への取り組みをビジネス と一致させるイノベーティブな活動を行い、基本的に社会に貢献を目的とした民間企業(NPO を含む)と定義する。 彼らは、社会起業家の役割を以下の 4 つの視点から定義している。 ① 今まで地方自治体が独占的に非市場の領域で供給していた社会的財・サービスの供給 ② 今まで顕在化していない需要を掘り起こし、財・サービスとして提供すること ③ 社会的問題の解決のためのアドボカシー機能 ④ 社会的なミッションを付与する事によって、経済的なインセンティブだけでは発揮でき なかった人的資源の有効活用や社会的ミッションに基づき、例えば環境や人権に配慮し た行動を起こし、物的・人的にも資源の浪費を防ぐこと また、立教大学の 21 世紀社会デザイン研究科が行った公開セミナー「21 世紀社会デザイ ンとソーシャルビジネス−市民起業入門」では、その実例として株式会社アットマークラー ニング社長、日野公三氏(教育テーマ)、株式会社ミチ・コーポレーション代表取締役、植 田紘栄志氏(環境テーマ)、株式会社商店街ネットワーク代表取締役、木下斉氏(まちづく りテーマ) 、特定非営利活動法人ケア・センターやわらぎ理事、石川治江氏(シニアテーマ) の 5 名が講師として招かれていた。 要約すれば、社会起業家、およびその活動とは、社会的目的と経済的目的との統合、ある いは、社会的目的を実現するための経済事業を担う起業家活動であると整理できる。ここで 注意する必要があるのは、「起業家活動」といえば、ともすれば営利活動と短絡する傾向が あることである。これは、 「経済」といえば貨殖経済と短絡するのと同質の問題でもある。 ― 51 ― 3. イノベーションと社会・組織 (1)起業家活動・イノベーション それでは、起業家活動とは一体どのようなものなのであろうか。それは、今日ではシュン ペーターが 20 世紀初頭の『経済発展の理論(1912) 』のなかで提示した概念規定が、支配的 概念をなし、共有財産となっている。ここでの起業家とは、新結合(recombination, innovation)の遂行をみずからの機能とし、その遂行にあたって能動的な要素となるような経済 主体を示す。要するに起業家(3)とは、新結合、すなわちイノベーション(innovation)の担 い手である。 では、イノベーションとは何か。イノベーションというと、まず革新的技術等が思い浮か ぶ言葉であるが、シュンペーターは、資本主義経済の動態的分析 ── 単に外的諸要因に依 存しないで、経済体系を一つの均衡からもう一つの均衡へ推進させる経済変化 ── に経済 の発展の本質を見る。そして、経済変化の新機軸をつくるエネルギーの源泉とは何かという 問いに、起業家による新結合(当初は re - combination(再結合) 、後にイノベーションと置 き換えられた)という答えを導き出したのである。 シュンペーターは、新結合とは経済から自発的に生まれた非連続的な変化であると強調し ている。その結合的行為の具体例として挙げられるものには、①新しい財貨の生産、②新し い生産方法の導入、③新しい販路の開拓、④原料あるいは半製品の新しい供給源の獲得、⑤ 新しい組織の実現、がある。 、、、、、 シュンペーター曰く、変化とは経済体系の内部から生ずるものであり、それはその体系の 、、、、、、、、、、、、、 、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、 均衡点を動かすものであって、しかも新しい均衡点は古い均衡点からの微分的な歩みによっ 、、、、、、、、、、、、、、、、 ては到達しえないようなものである。当時の言葉で言えば、“郵便馬車”をいくら連続的に 走らせても、それによって“鉄道”が出来上がる事はないということである。レールの上を 走るトロッコに蒸気機関を“結合”する、要するに組み合わせる行為が必要となる。 現代的に言い換えて例えれば、インターネットなどを利用して教育という“社会的な財” を創造しようとした場合、インターネット接続を繰り返しているだけでは学校にはならない (勉強にはなるかもしれないが、それだけでは何にもならない)。教えるという行為やイン ターネット技術などの経営資源を結合して、一つの社会機構を築くという行為を行う“主体” が必要になるということになる。 (2)社会・組織の規範と制度 さて、ここまでシュンペーターの言うイノベーションを中心に議論してきたが、経済学界 以外では、経営学のドラッカーが「起業家とは、その定義によれば、生産性が低く成果の乏 しい分野から、生産性が高く成果の大きな分野に資源を動かす者のことである」ということ を明らかにした上で、マネジメントの原理と方法を適用し、製品を標準化し、製造プロセス と設備を再設計し、作業の分析にもとづいて従業員を訓練し、仕事の標準を定めることに よって、資源が生み出すものの価値を高め、新しい顧客を創造することを起業家精神と呼ん でいる。 ミンツバーグによれば、ドラッカーは起業家精神とマネジメントを同一視しているという。 ― 52 ― 21 世紀社会デザイン研究 2006 No.5 そして、そのドラッカーはマネジメントを一種の社会的規範(4)と見なしていた。 イノベーション もし、起業家がイノベーション ── 新しい方式で新しい仕事を行う新結合 的活動 ── を 行い新しい組織の実現を行ったとするならば、その組織体を構成する人々によって実現され るべき価値・目標についての基準、その実現の際にとられるべき妥当な行動様式の指示、そ してそれへの同調または違背に対して適用されるサンクション(賞罰)と、その権力の正統 性を成立させなければならなくなる。すなわち、それは一つの規範となるわけだ。 また、経営史に名を残している有名な創業者に見るように、起業家は単に個々の事業や企 業を起こしたというだけではなく、個々の企業(あるいは企業グループ)に見られる独特の 組織文化の創始者でもあり、同時に業界全体あるいは社会における人々の認識やビジネスパ ラダイムを大がかりに変革していった文化の変革者でもある。この例には、松下幸之助や小 倉昌男などが思い浮かぶだろう。佐藤郁也と山田真茂留は「文化の起業家、制度の起業家」 と呼んでいるが、起業家とイノベーションというものは新しい制度の成立にも関係している。 以上のような、組織の規範や制度面での「社会的なイノベーション」というものは、一般 的なイメージの技術革新などのイノベーションという意味合いからは掛け離れているかもし れない。しかし、ドラッカーの場合、社会的イノベーションの方が一般にビジネスなどで用 いられるハイテク・イノベーションよりも重要であると主張している。イノベーション、こ の言葉は、単に技術的な革新のみであるとは考えない方が良いであろう。 4. リスク構造 (1)起業家の役割 時代の変化を強調して提唱される起業家に関する議論は、一面的、情緒的に起業を煽るよ うなものになりやすい場合も多い。社会体系や制度にまつわるものであればなおさらである。 それ自体の副作用や、問題点を軽視しているようにも見える。組織行動には試行錯誤がつき もので、事前の想定通りに物事が動くことは希である。 組織理論を一つの分野(discipline)にまで高めたバーナードによれば、組織とは根本的 に脆いものであるという。バーナードは、「組織(5)における協働が成功するのは異例のこと であり、通常の事では無い。日常われわれの目につくのは、数多くの失敗者のなかでうまく 生き残ったものである。 」 、 「たいていの協働は途中で失敗したり、早い時期に死滅したり、短 命に終わったりするものである。協働の挫折や失敗、組織の失敗、組織の解体、崩壊、破壊 ── そして再組織 ── は人類の歴史の顕著な事実である。 」と述べている。 企業組織などの民間組織には官庁・行政組織と違い倒産がある。企業が廃業するのは、財 務的な理由によるとしても、組織が財務的に成功するためには、組織が有効な人間協働を実 現出来るという背景的な要因もかかわってくるだろう。組織は有効な人間協働をいつでも容 易につくりだし得るというものでは決してなくて、組織が成功的に協働をつくりだすために ― 53 ― は一定の条件が満たされねばならない、というのがバーナードにとっての中心問題である。 バーナードの『経営者の役割』というのは、そこにこそ経営者の引き受けるべき使命がある、 という問題設定を示している。 また、事業や経営の失敗として、事業の中止というものを捉えた場合、その失敗は事業の 意思決定する者の主観によって決定づけられる。すなわち、経営主体となる人間が「私は失 敗していない」と言い張れば、事業は一応継続されるため、「見切りをつける」という行為 がとられなければ根本的に言えば「事業の継続に失敗した」とはならない。従って、失敗は 自分で決めなければならなくなる。また、事業撤退をする際の決定は、トップにゆだねられ ねばならない。そうしないで従業員が各自、ボランタリー(自発的)に撤退していたら収拾 がつかなくなる。失敗の際の見切りをつけるという行為は経営者の役割となる。 (2)新規開業における課題 では、実際に新規開業後、その事業経営において起業家はどのような苦労に直面するのだ ろうか。国民生活金融公庫総合研究所が行っている新規開業実態調査アンケートの結果が次 の表 1 である。 苦労している点としては、 「顧客開拓」を挙げる割合が全体の56.7% と、突出して高い。そ の比率は医療福祉の分野では少し下がるが、教育・学習支援や対個人サービス業では 70 %近 い事業者が「苦労している」と答えている。他に苦労している点は「資金繰り」や「人材の 確保・育成・管理」に関するものが多い。 社会起業家とはいえども、個人の責任に基づく事業者であることにかわりは無い。「従来 の公共部門、民間の企業部門、そしてボランタリーのセクターにまたがる領域で活動する」 といっても行政セクターの様な強制力は無い。顧客の気に入らない商品を買わせる権限を 持っていないし、ライバル会社に競合商品の値下げを中止させる権限も持っていない。それ どころか、顧客ニ−ズやライバル会社から景気、原材料価格、商品価格相場、為替相場、さ らにたった一人のクレ−マ−にまで振り回されることすらあるだろう。 バブソン大学のティモンズは、事業創造プロセスにおいて「失敗は法則」であり、例外で はない、むしろ、成功とは「失敗の法則の例外」であると述べている。ただし、“成功と失 敗”の識別は簡単ではなく、信頼できる統計やデータベースは存在しない。はっきりとした 調査結果が存在しておらず、事業の失敗という暗い部分を事実よりむしろ想像でとらえられ てしまうことにより、失敗率が実際よりも高いと信じている人が圧倒的に多く、起業活動に 水を差す結果となってしまっているという。 さらに廃業・倒産等の企業経営の失敗は、失業者の増大や債権者の利益喪失、連鎖倒産の 発生など社会に負の影響を及ぼすことはいうまでもない。また、倒産を経験した経営者に視 点を移せば、特に中小企業においては経営者やその家族、知人などが連帯保証人となってい るケースも多く、倒産後の生活水準は著しく低下してしまうことも否めない。ただ、失敗や ― 54 ― 21 世紀社会デザイン研究 2006 No.5 表 1 新規開業における苦労している点(単位:%) アンケート項目(注:当てはまるものについて3 つ以内で選択) 製 品 サ ー ビ ス の 企 画 ・ 開 発 17.8 56.7 業 界 の 低 迷 人 材 の 確 保 後 継 者 の 育 成 経 営 の 知 識 不 足 資 金 繰 り 家 族 の 協 力 が な い 相 談 相 手 が い な い そ の 他 特 に 苦 労 は し て い な い 有 効 回 答 数 29 29.2 24.2 7.1 15.5 36.3 1.3 4.8 7.2 4.2 2,872 建設業 9.1 49.8 48.2 34.4 18.2 5.1 18.6 53.4 1.6 5.5 2.8 1.6 253 製造業 30 50.6 31.9 25 20.6 13.8 16.9 39.4 1.9 5.6 8.1 3.8 160 全体 業 種 顧 客 開 拓 人 材 の 育 成 ・ 管 理 情報通信業 29.3 54.3 19.6 41.3 21.7 5.4 9.8 54.3 0 5.4 6.5 2.2 92 運輸業 2.7 47.3 65.5 21.8 15.5 1.8 7.3 25.5 0 7.3 9.1 3.6 110 卸売業 27.6 50.9 39.3 13.1 10.3 6.5 11.2 52.8 0.9 3.3 5.1 7.5 214 小売業 20.7 30 24.1 20.7 4.4 13.4 45.1 1.2 4.4 9.5 3.4 410 飲食店・宿 30.9 58.6 25.9 28.9 22.9 泊業 8 15.7 29.9 2 5.5 7.5 4.7 401 6.2 48.2 18.9 42.5 47.3 8.6 19.8 15.8 1.7 4.1 6.2 3.8 419 医療・福祉 58 教育・学習 11.1 66.7 支援業 4.4 28.9 17.8 13.3 11.1 48.9 2.2 11.1 4.4 2.2 45 対個人サー 15.1 68.6 ビス業 20 26.5 24.6 8.1 20.2 27.4 1.3 4.6 8.8 5.3 456 対事業所 13.5 63.1 25.2 32.4 20.7 サービス業 7.7 10.8 41.9 0.5 3.2 7.7 4.1 222 1.5 3 6.1 6.1 66 8.3 12.5 24 不動産業 13.6 56.1 34.8 28.8 21.2 1.5 その他 12.6 62.5 29.2 16.7 4.2 12.5 58.3 8.3 7.6 43.9 0 12.5 出所:新規開業白書,2005:305 ― 55 ― リスクというマイナスイメージがつきまとうものをいたずらに恐れるのではなく、失敗とい うものを意識し、何がリスクであるかを明らかにしていくことが必要である。 以上、社会起業家の社会的イノベーションやそのリスク・危機管理の詳細については、筆 者の修士論文「社会起業家のリスク構造─企業組織の危機管理を基にした一考察」を参照し ていただきたい。 ■註 (1) デモスによる Civic Entrepreneur のとらえ方は、 「公的機関の内部で企業家精神を発揮し、組 織内自己改革を行う人々」を指している(Charles Leadbeater and Sue Goss,1998 “ Civic 。 Entrepreneur ” Demos:16-20) (2) EMES という名称は、欧州委員会へフランス語で提出された研究プロジェクトのタイトル「ヨー ロッパにおける社会的企業の登場」 (L’Emergence des Enterprises Sociales en Europe)に 由来する。 (3) 起業家(entrepreneur)は元々、 “企業家”と呼称されていた。企業家は、近年ベンチャー企業 の群生とともに起業者(家)と呼ばれるようになった。企業家と起業家という言葉は、根本的に は同義である。本稿での企業家の呼称は基本的に「起業家」というもので統一している。 (4) ドラッカーは原文では discipline という言葉を用いているが、これは社会学の用語でいう規範 (norm)と類似するものと考えて良いであろう(Druker、1974:17-21) 。 (5) バーナードは組織を「2 人以上の人々の協働的活動の体系(システム) 」と定義する。協働体系 とは、少なくとも一つの目的のために、二人以上の人々が協働することによって、特定の体系的 関係にある物体、生物的、個人的、社会的構成要素の複合体である(バーナード、1968:67) 。 ■参考文献 Carlo Borzaga and Jacques Defourny, 2001, “ The Emergence of Social Enterpris e”, Routledge, 内 山哲朗・石塚秀雄・柳沢敏勝、邦訳、2004『社会的企業─雇用・福祉の EU サードセクター』 、 日本経済評論社 pp.16-18 経営学史学会、2003、 『経営学史辞典』 、文眞堂 pp.186-187 佐藤郁也・山田真茂留、2004、 『制度と文化─組織を動かす見えない力』 、日本経済新聞社 p.312 シュンペーター、J.A., 1926;2nd printing, “The Theory of Economic Development ”、塩野谷祐一他訳、 1977、 『経済発展の理論(上・下) 』 、岩波文庫、pp.180-183 谷本寛治・田尾雅夫、2003、 『NPO と事業』 、ミネルヴァ書房 p.165 ティモンズ、J.A.、千本倖生・金井信次訳、1997『ベンチャー創造の理論と戦略』、ダイヤモンド pp.14-25 富永健一、1997、 『経済と社会の組織学理論』 、東京大学出版会 p.154 Druker, P.F., 1974, “ Management: Tasks, Responsibilities, Practices ”, A Harper Business Book, pp.17-21、野田一夫・村上恒夫監訳、1974、 『マネジメント─課題・責任・実践─(上下) 』 、ダ イヤモンド社 ドラッカー『マネジメント(上) 』p.25 − 32 Druker, P.F., 1985, “ Innovation and Entrepreneurship ”, A Harper Business Book, pp.21-22, pp.30-33, pp.185-187 根井雅弘、2001、 『シュンペーター─企業者精神・新結合・創造的破壊とは何か』 、講談社 p.33 バーナード、C. I., 山田安次朗他訳、1968、 『新訳 経営者の役割』 、ダイヤモンド社 pp.5-6 ヘンリー・ミンツバーグ他、斎藤嘉則監訳、1999、 『戦略サファリ』 、東洋経済 p.137 町田洋次、2000、 『社会起業家』 、PHP 新書 p.88 宮崎喬、2003、 『岩波小辞典 社会学』 、岩波書店 p.51 ― 56 ― p.67 21 世紀社会デザイン研究 2006 No.5 Leadbeater, C., 1997, “The Rise of Social Entrepreneur”, Demos, pp.27-53 Leadbeater, C. and Goss, S., 1998, “Civic Entrepreneur”, Demos 国民生活金融公庫総合研究所 √2005√「新規開業白書(2005 年度版) 」 、中小企業リサーチセンター p.305 立教大学 21 世紀社会デザイン研究科、2004.12、 「21 世紀社会デザインとソーシャルビジネス∼市民 起業入門報告書」 ― 57 ―