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老子思想とマネジメント

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老子思想とマネジメント
老子マネジメント入門
目次
まえがき
30
..............................................
......................................................................................................................................
老子思想とマネジメント
第一章
1 老子の思想
(1)老子の唱える「道」とは
(1)まとまりがなければ組織は回らない
35
2「一」の原理からマネジメントを考える
(2)万物の根源である「一 」
30
32
(2)良い経営のキーワード「共 」
36
35
3
14
目 次
3 人を中心としたマネジメント
(1)
「道」の最高の担い手である「人 」
(2)マネジメントにおける人の重要性
(1)老子の説く「徳 」
(2)老子の説く「無為 」
①「無為」の概念
む い にしておさめる
②儒家と道家で異なる「無為 而 治 」
(3)老子の説く「徳」と「無為」の解釈
(4)老子の説く「倫理 」
─
..............................................................................
46
39
4 老子の「道徳観」と「倫理観」 ...........................................................................
40 39
①老子の倫理思想 「仁」「義」「礼」を捨てよ
15
②三宝の徳
52
51
48
42
44
44
③老子の三つの道徳観
59
56
42
5 組織と人材のマネジメント
(1)組織づくりの要諦
④強い絆をつくる
⑤言葉に頼らない指導をする
.......................................................................................................................
65
①リーダーは少数精鋭とする
②組織マネジメントにおける五つの注意点
(2)人材マネジメントの要諦
①使う人をよく知る
②「無為」を採用基準に置く
69
③長所を見出し、どんな人でも見棄てない
72
77
74
63
63
70
75
63
16
目 次
..............................................................................
老子思想とリーダーシップ
第二章
ごと
1 老子思想に基づくリーダー像
(1)リーダーの資質
(2)
「間接マネジメント力」の重要性
に
ベ ル研究所
87
(3)
「治人」を考える
①大国を治むるは、小鮮を烹るが若し
80
........................................................................................................................
②「治人」を行うリーダーの条件
2 リーダーの役割
(1)無為を為す
︱
17
86
84
82
80
84
(2)
「無為の経営」を実践した企業
89
87
3 リーダーが目標とすべき人物像
(1)
「水」のような人になる
①上善は水のごとし
②「水」は天の徳の象徴
(2)儒家と道家の修養論
①「修養」についての違い
②目指す境地の違い
(3)死んでもその精神が亡びない人になる
①人の生死について
②占いや鬼神の否定
③荘子の死生観
あらき
(4)飾り気がない実直な人になる
①削っていない「樸」の純朴さに学ぶ
....................................................................................................
②生き方の規範となる「朴、渓、真、嬰 」
③私欲と名利を求めない
112
109
104 101
101
107
92
93
92
95
98
95
107
105
91
18
目 次
④経営者は私利私欲を捨てる
⑤リーダーの五つの心得
(4)リーダーに必要な寛大さと度量
①谷のような寛容さと度量を身につける
②どんな人材でも見棄てず活用する
③寛容な人が最後に勝つ
.............................................................................................................
131
④広い度量と進歩的な考え方をもつ
124
130
120
113
120
116
126
4 リーダーが注意すべき振舞い
(1)
「怒り」を抑える
133
①謙虚になること
②平静さを保つこと
(2)
「驕り」を抑える
19
131
132
138
5 経営者が備えるべき資質
(1)慈愛と勇気
①慈愛と勇敢さの関係
.................................................................................................................................
─
従 業員、お客様、地域 146
②経営でも重視される「慈 」
─
③企業に必要な三つの「慈愛」
(2)倹約は心の余裕をもたらす
①「倹」とは
②「倹約」の効能
③「倹約」の美徳
④「倹約」と「勤勉さ 」
⑤勤勉さの注意点
(3)清廉潔白であること
①「廉」とは
153
②国家を維持する四つの大綱
③「廉」の重要性
147
158
152 149
155
156
159
144
141
141
147
156
141
20
目 次
老子思想と智略・戦略
第三章
166
1 老子の説く「知」 ...................................................................................................................................................................
(1)老子の「知」と孫子の「知 」
①老子の兵法観
②老子と孫子の「智謀 」
(2)老子の「知」と孔子の「知 」
①「道」の認識の違い
②「徳」の認識の違い
③「柔」の認識の違い
④「反」の認識の違い
173 173 172 171
170
169
166
166
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21
2「智」を磨く
(1)
「智」の真意
175
175
(2)単なる知恵(智者)と深い洞察(明智 )
①他人を知ることも己を知ることも難しい
②自分を知るキーワード「虚心坦懐 」
...................................................................................................................................................................
183
②マネジメントに必要な「剛」と「柔 」
.....................................................................................................................................................
③「柔よく剛を制す」計略の七つの注意点
4 老子思想と経営戦略
(1)経営における攻守のバランス
195
195
①柔弱の徳
(2)
「柔弱が剛強に打ち勝つ」という知恵
②老子の「権謀術数」に学ぶ
①柔らかく弱々しいものが、堅く強いものに勝つ
183
3「柔」を重んじる
178
190
185
183
(1)老子の「柔」の思想
178
180
186
188
186
22
目 次
①「其の雄を知りて、其の雌を守れば」とは
②攻守をほどよく使い分ける
(2)取るためには、まず与える
①逆転の発想法から学ぶ
②ビジネスにおける「与える」と「取る」の関係
(3)
「正法」と「奇法 」
①「正」と「奇」とは何か
208
②兵法の要としての奇策
③ビジネスにおける「正」と「奇 」
..........................................................................................................................................
④「正法」と「奇策」を使用する際の注意点
5 老子思想と経営の要諦
(1)力を振りかざす経営をしない
208
210
①老子の兵法論
②むやみやたらに競争しない
23
195
205
203
198
196
197
197
200
201
200
208
③企業が守るべき五つの競争原則
(2)争わずして勝つ
①「 Win-Win
」の関係の実際
②争わない勝ち方
216
(1)
「無為」に学ぶ
(2)物事を相対的に見る
214
211
220
....................................................................................................................
(3)独創的な思考を大切にする
(4)逆転の思考を身につける
(5)全面的に物を見る力を養う
223
225
226
221
1「独創力」を磨く
老子思想と独創力
第四章
214
220
24
目 次
(6)事物の創造のプロセスを知る
(7)疑問をもつ
2 独創力を鍛える四つの指標
.....................................................................................
対 立するものを統一する
老子思想と経営
第五章
─
1「反 」
(1)
「反」とは何か
(2)対立するものを統一するという思想
(3)
「正言若反」という観点
.............................................................
25
228
243
242
(4)経営に広く存在している矛盾
241
240
232
240
228
245
2 対立・矛盾を調和するマネジメント
─
─
(1)
「守柔曰強」
対立・矛盾の調和
(2)
「道天地王」
矛 盾の調和
①企業と外部環境との矛盾
②企業と企業内部との矛盾
─
─
263
257
(3)
「知美之美」
相対の調和
(4)
「絶聖棄智」
真の智の醸成
①どのような人材を育成するか
②人間性を高める教育を重視する
─
(5)
「絶仁棄義」
倫理観の醸成
①老子の説く倫理観
②企業に必要な倫理
─
②変化に柔軟に対応する
(6)
「独立不改」
変化への対応
①自然の理法に沿ったマネジメント
258
257
256
253 252 248 248
265
263
261 258
...............................................................................
245
26
目 次
─
─
(7)
「重為軽根」
比較・相対化の実施
(8)
「禍福倚伏」
リスクマネジメントへの対応
①「禍福倚伏」とは
268
267
企 業のライフサイクルの検証
②リスクマネジメントの重要性
─
(9)
「死而不亡」
①老子の死生観
②企業の死生観
27
268
272
270
275
273 272
③死んでも滅びない企業を目指す
281
あとがき
『老子』全訳
277
【凡例】
本文内及び巻末『老子』全訳の現代語訳の訳出に際しては、以下を参考とした。
講談社学術文庫『老子』
(金谷治、講談社、一九九七年)
中公文庫『老子』
(小川環樹、中央公論社、一九九七年)
ま た、 巻 末『 老 子 』 全 訳 の 訓 読 文 は、 講 談 社 学 術 文 庫『 老 子 』( 金 谷 治、 講 談 社、
一九九七年)に従った。
28
1
老子の思想
(1)老子の唱える「道」とは
老子思想の根幹にあるのが「道」です。
「道」という言葉は、『老子』の中に七十数
回登場しており、全八十一章のすべてが「道」に関連した内容といってもいいくらい
です。ただその中でも、とくに第一章に、老子の「道」の思想が凝縮されています。
第一章で、老子は「道」について次のように言っています。
「道」とされるものであっても、これこれとはっきり説明できるようなものは
本当の道ではない。
「名」といっても、かくかくと規定されるようなものは、本当の名ではない。
30
第一章 老子思想とマネジメント
名のないものこそが天地の始まりであり、初めて名を得たものが、「万物の根
源」と呼べるものである。
したがって、常に無私無欲でいれば、「道」の微妙な働きを見ることができる。
逆に、常に欲望にかられていれば、万物の動きの結末を見るにとどまるだけであ
る。
この二つのもの(無と有)の根本は同じであり、ただ名称が違うだけである。
どちらも極めて深遠なものである。この非常に奥深いものから、あらゆる繊細な
ものが生まれてくる。
また、二十一章では次のように「道」を説明しています。
道というものは、ぼんやりとしていてとらえどころがないが、その中になにか
形があり、実体があり、なにか霊妙な精気がある。その精気は純粋で、その中に
確かな働きがある。
31
あした
つまり、老子のいう「道」は、儒家の説く人倫の道ではありません。儒家の「道」
は、
『論語』里仁篇の「朝に道を聞かば、夕べに死すとも可なり」に代表されるように、
人間が社会で生きていくための原理原則であり、非常に具体的であるのに対し、老子
の「道」は、天地運行の原理であり、まさに万物の根源なのです。
(2)万物の根源である「一」
「道」のほかに、老子思想の重要なキーワードとして挙げられるのが「一」です。
老子は、
「一」について次のように述べています。
無である道が有である一を生み出し、一が二つのものを生み出し、二つのもの
が三つのものを生み出し、三つのものが万物を生み出す。万物は内に陰の気と陽
の気という対立する力を含み、それらの気を交流させることによって調和を保っ
ている。(『老子』下篇四十二章)
32
第一章 老子思想とマネジメント
いにしえよりこのかた、
「一」
、すなわち万物の根源である道の原則にかなうも
のを挙げてみる。まず、天はこの原則にかない、よって清く澄んでいる。大地は
この原則にかない、よって安定している。神はこの原則にかない、よって霊妙で
ある。谷はこの原則にかない、よって水が満ちている。万物はこの原則を体得し、
よって命を生み育んでいる。侯王はこの原則を得て、よって天下の指導者となっ
た。(『老子』下篇三十九章)
この「一」も解釈が難しいですね。ただ、老子の言葉から、「一」には、陰と陽を
調和させ、統一させる働きがあり、「一」を得たものは、老子が理想とする「道」を
得たものであり、万物の最もあるべき姿だということがわかります。
天がきれいでなければ、太陽も星も見ることができませんし、大地がどっしりと落
ち着いていなければ、家屋も倒れてしまいます。谷には水がなければなりませんし、
神には霊知がなければならないでしょう。すなわち、老子のいう「一」とは、万物の
あるべき姿であり、根源であり、
「道」そのものだといえます。
「道」や「一」について、もう少し補足しましょう。
33
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