Comments
Description
Transcript
大谷石塀の被害に対する声明
2011 年 4月 5日 大谷石塀の被害に対する声明 NPO 法 人 大 谷 石 研 究 会 理事長 小野口順久 専門部会長 小西 敏正 担当 和田 昇三 大 谷 石 石 材 協 同 組 合 で は 1981 年 建 設 省 ( 現 ・ 国 土 交 通 相 ) 指 導 の も と 激 震 7 に も 耐 え う る 大 谷 石 塀 を 開 発 し 、「 ト ー タ ル カ ッ ト 大 谷 石 べ い 」 の 認 定 注 1 を 受 け て お り ま す 。当 工 法 は 目 地 に モ ル タ ル を 充 填 し 鉄 筋 で 補 強 す る も の で 、こ れ に よ り 耐 震 性 の 強 化 を 図 っ て お り ま す 。東 日 本 大 震 災 に よ り 被 害 を 受 け た 大 谷 石 塀 を 調 査 し た 結 果 、被 害 の 多 く は 当 認 定 工 法 で は な く 、無 筋 で 施 工 さ れ て い る 大 谷 石 塀 で あ る こ と が 判 明 し ま し た 。 現 在 、大 谷 石 塀 は 地 震 に 弱 い と の 風 評 が 起 こ り 始 め て お り ま す 。本 研 究 会 で は 、 こ れ 以 上 大 谷 石 の 風 評 が 広 が ら ぬ よ う 、「 ト ー タ ル カ ッ ト 大 谷 石 べ い 」は 激 震 7 に も 耐 え う る 認 定 工 法 で あ る こ と を 、あ ら た め て こ こに表明いたします。 注1 建 設 省 住 指 発 第 247 号 昭 和 56 年 な お 、大 谷 石 石 材 協 同 組 合 に 対 し て は 、正 し い 施 工 方 法 の 教 育・ 指 導 を お 願 い す る と 共 に 、 高 さ 1.2m を 越 え る 場 合 は 上 記 認 定 工 法 に よ る 施 工の徹底をお願い申し上げます。 1978 年 の 宮 城 沖 地 震 で は ブ ロ ッ ク 塀 の 倒 壊 で 多 く の 犠 牲 者 が で て お り ま す 。こ の よ う な こ と を 2 度 と 起 こ さ ぬ よ う「 塀 」に つ い て は 諸 官 庁 の行政指導及び監督を宜しくお願い申し上げます。 「 ト ー タ ル カ ッ ト 大 谷 石 べ い 」は 約 30 年 前 の 研 究 成 果 で す 。こ の 間 、 構 造 物 の 耐 震 設 計 の 分 野 で は 多 く の 研 究 開 発 が 行 わ れ 、そ の 進 歩 に は 著 し い も の が あ り ま す 。大 谷 石 塀 に つ い て も さ ら に 研 究 を 重 ね 、よ り 耐 震 性のある大谷石塀の施工法が開発されることを期待しております。 大谷石塀について 1.建築基準法施行令について 第 61 条(組石造の塀) (a)1950 年の制定 ①塀の高さは 3.0m以下とする。 ②塀の厚さは塀の高さの1/10 以上とする。 ③塀の長さは 4m 以下ごとに塀の厚さの 1.5 倍以上突出した控壁を設ける。 (b)1970 年の改正 ①塀の高さは 2.0m以下とする。 ②および③は変更なし。 ④基礎の根入れ長さは 20cm とする。 (c)1980 年の改正 ①塀の高さは 1.2m以下とする。 ②~④は変更なし。 1 2 大谷石塀被害調査結果・まとめ 今 回 大 谷 石 塀 被 害 調 査 は 、栃 木 県 内 の 宇 都 宮 市 東 部( 5 件 )、真 岡 市( 17 件 、 芳 賀 町 ( 3 件 )、 高 根 沢 町 ( 2 件 ) で 、 合 わ せ て 27 件 行 っ た 。 無 被 害 4 件 、 被 害 有 り 23 件 で 詳 細 は 大 谷 石 塀 被 害 調 査 一 覧 ( 9, 10 頁 ) に 示した。調査により明らかになった主な項目を以下に示す。 ① 4 段 積 み の 石 塀 が 多 く 、 石 の 高 さ が 120cm あ り 、 基 礎 と 笠 木 を 加 え る と 塀 の 高 さ は 145cm~ 180cm と な る 。 法 規 上 は 鉄 筋 に よ る 補 強 が 必 要 と な る が 、無 筋 で 施 工 さ れ て お り 、建 築 法 規 に 違 反 し て い る こ と が判明した。 ② 高 さ 3.3m で 無 筋 で あ っ て も 被 害 は み ら れ ず 、耐 震 性 は 適 切 な 設 計 と 施工に拠るところが大きいことがわかった。 ③ 無 筋 で 被 害 に あ っ た 23 例 の う ち 目 地 に モ ル タ ル が 充 填 さ れ て い な い の が 1 例 、 充 填 さ れ て い る の が 22 例 で あ っ た 。 充 填 さ れ て い て も モ ルタルが十分に付着していない箇所が多くみられた。 ④ 無筋の 4 段積みで無被害は一例あった。同一敷地、同一方向(東西) の 同 じ 4 段 積 み の 大 谷 石 塀 が 全 倒 壊 し て い る こ と を 考 え る と 、施 工 の 良否が耐震性に大きく影響することがわかった。 ⑤ 4 段 積 み 高 さ 、同 一 地 域 、同 一 方 向( 南 北 )で 、無 筋 で 転 倒 し て い る のに対し、鉄筋で補強の場合は無被害の事例が見られた。 ⑥ 鉄筋で補強された 4 段積み大谷石塀で倒壊したケースが 1 例見られ た。基礎部の縦筋が見られないことから、鉄筋の定着長さ不十分ま たは施工不良がその一因として考えられる。 以 上 よ り 、今 回 調 査 し た 大 谷 石 塀 は 27 例 と 限 ら れ て い る が 、倒 壊 した大谷石塀は適切に施工されていないことが分かった。 な お 、一 部 被 害 を 受 け た 大 谷 石 塀 が 、現 在 誤 っ た 方 法 で 改 修 さ れ て い る が 、高 さ が 1.2m を 超 え る 場 合 に は 、目 地 に モ ル タ ル を 充 填 し 鉄 筋 で 補 強 す る「 ト ー タ ル カ ッ ト 大 谷 石 べ い 」工 法 に よ り 正 し く 施 工 す る よ う 、関 連 業 者 お よ び 所 有 者 に 早 急 に 周 知 さ せ る こ と が 必 要 と 思 わ れる。 3 大谷石塀被害調査結果・まとめ① ① 4 段積みの石塀が多く、石の高さが 120cm あり、基礎と笠木を加えると塀 の高さは 145cm~180cm となる。法規上は鉄筋による補強が必要となるが、 無筋で施工されており、建築法規に違反していることが判明した。 4 段積み大谷石塀被害状況 高さ約 1.5m・鉄筋なし No. No. U-4(宇都宮市清原町) M-14(真岡市原町) No. U-3(宇都宮市清原町) No. U-5(宇都宮市清原町) No. M-17(真岡市原町) 4 大谷石塀被害調査結果・まとめ②・③ ② 高さ 3.3m で無筋であっても被害はみられず、耐震性は適切な設計と施工に 拠るところが大きいことがわかった。 No. U-1(宇都宮市石井町) 無被害 高さ 1.8 m・鉄筋あり 30 年前竣工 ③ No. U-2(宇都宮市石井町) 無被害 高さ 3.3 m・鉄筋なし 60~70 年前竣工 無筋で被害にあった 23 例のうち目地にモルタルが充填されていないのが 1 例、充填されているのが 22 例であった。充填されていてもモルタルが十分 に付着していない箇所が多くみられた。 No. U-3(宇都宮市清原町) モルタル充填不十分 No. M-16(真岡市原町) モルタル充填良好 (付着状態不良) 5 大谷石塀被害調査結果・まとめ④ ④ No. 4 段積みの場合、無被害は一例あり、同一敷地、同一方向(東西)の同じ 4 段積みの大谷石塀が全倒壊していることを考えると、施工の良否が耐震性 に大きく影響することがわかった。 M-17 神社 (真岡市原町) 神社側の大谷石塀・無被害 高さ 1.6 m・鉄筋なし 34.2m N 34 m 神社に隣接する敷地の 大谷石塀・全壊 高さ 1.6 m・鉄筋なし 神社側の大谷石塀(西側) 神社に隣接する敷地の大谷石塀(東側) 6 大谷石塀被害調査結果・まとめ⑤ ⑤ No. 4 段積み高さ、同一地域、同一方向(南北)で、無筋で転倒しているのに対 し、鉄筋で補強の場合は無被害の事例が見られた。 M-6 家屋 (真岡市下籠谷) 無被害(H=1.72 m、鉄筋あり) N 一部破損(H=1.72 m、鉄筋なし) M-6 全壊(H=1.75 m、鉄筋なし) M-7 全壊(H=1.52 m 鉄筋なし) M-8 No. M-6(真岡市下籠谷) 無被害 高さ 1.72 m・鉄筋入り No. M-7(真岡市下籠谷) 全倒壊 高さ 1.75 m・鉄筋なし 7 大谷石塀被害調査結果・まとめ⑥ ⑥ 鉄筋で補強された 4 段積み大谷石塀で倒壊したケースが 1 例見られた。基 礎部の縦筋が見られないことから、鉄筋の定着長さ不十分または施工不良 がその一因として考えられる。 No. M-2(真岡市下籠谷) 基礎に縦筋は見られない 基礎部の縦筋なし 全壊した塀(鉄筋有り) 壁部の鉄筋有り 基礎部の縦筋なし モルタル付着なし 8 9 名称 家屋 酒屋 家屋 家屋 家屋 家屋 家屋 家屋 家屋 家屋 家屋 家屋 家屋 家屋 家屋 № U-1 U-2 U-3 U-4 U-5 M-1 M-2 M-3 M-4 M-5 M-6 M-7 M-8 M-9 M-10 真岡市荒町 真岡市下籠谷 真岡市下籠谷 真岡市下籠谷 真岡市下籠谷 真岡市下籠谷 真岡市下籠谷 真岡市下籠谷 真岡市下籠谷 真岡市下籠谷 宇都宮市清原 宇都宮市清原 宇都宮市清原 宇都宮市石井町 宇都宮市石井町 所在地 一般事項 北 西 西 西 西 南 北 南 南 南 南 南 北 南 東 方向 塀の 9 4 4 4~5 4 5 3 4 4 4 4 4 4 不明 5 段数 2.7 1.65 1.52 1.75 1.72 1.76 1.53 1.8 1.6 1.6 1.7 1.54 1.6 3.3 1.8 高さ 塀の 30 15 15 15 15 15 15 15 15 15 15 15 15 21 15 厚さ 塀の なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし あり なし あり あり 控壁 なし なし なし なし なし あり 縦筋 なし なし なし なし あり なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし 横筋 鉄筋 あり* 規模・構造 不明 布基礎 布基礎 布基礎 布基礎 布基礎 布基礎 布基礎 布基礎 布基礎 布基礎 不明 布基礎 不明 布基礎 種類 基礎の 大谷石塀被害状況調査一覧 不明 不明 なし 不明 なし 不明 不明 不明 不明 不明 不明 不明 不明 なし なし 不明 不十分 不明 十分 十分 十分 十分 十分 十分 十分 十分 十分 十分 十分 の有無 はつり 不明 モルタルの充填 施工 大破 大破 中壊 大破 小壊 中壊 大破 全壊 全壊 大破 小壊 小壊 大破 無被害 無被害 判定 門には鉄筋なしのため 転倒 *壁部に鉄筋有り。ただ *壁部に鉄筋有り ただ し、 基礎部への鉄筋の定 着長さが不十分または施 工不良のため倒壊 鉄筋探知機で検査 鉄筋探知機で検査 備考 被害判定: 転倒 ・大破 ・中破 ・小破 ・軽微 ・無被害 北側のみ転倒 1段目から上は転倒 2段目以外は転倒 1~2段目から上は転倒 一部転倒 2段目から上は転倒 1段目から上は転倒 基礎を残し転倒 基礎を残し転倒 1段目から上は転倒 一部転倒 一部転倒 1段目から上は転倒 破損個所なし 破損個所なし 状況 被害 10 0 名称 家屋 家屋 家屋 家屋 家屋 家屋 家屋 神社 家屋 家屋 家屋 家屋 家屋 № M-11 M-12 M-13 M-14(東) M-14(北) M-15 M-16 M-17 H-1 H-2 H-3 T-1 T-2 高根沢町中柳 高根沢町廻谷町 芳賀町稲毛田町 芳賀町稲毛田町 芳賀町稲毛田町 真岡市原町 真岡市原町 真岡市原町 真岡市原町 真岡市原町 真岡市飯貝 真岡市飯貝 真岡市飯貝 所在地 一般事項 南北 南東 東 東 東 南 東 西 北 東 西 西 西 方向 塀の 5 4 4 4 4 4 4 4 4 3 4 不明 4 段数 1.7 1.45 1.45 1.45 1.55 1.6 1.5 1.6 1.6 1.4 1.6 1.2 1.65 高さ 塀の 15 15 15 不明 18 15 15 15 15 15 15 15 15~18 厚さ 塀の あり あり あり あり あり あり なし 1つ なし なし あり なし なし 控壁 規模・構造 なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし 縦筋 なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし 横筋 鉄筋 布基礎 布基礎 布基礎 不明 布基礎 布基礎 布基礎 布基礎 布基礎 布基礎 布基礎 布基礎 布基礎 種類 基礎の 大谷石塀被害状況調査一覧 なし なし 不明 不明 不明 なし なし 不明 不明 不明 不明 不明 不明 十分 不明 十分 十分 十分 十分 不明 十分 十分 不十分 十分 十分 の有無 はつり 十分 モルタルの充填 施工 大破 大破 大破 中壊 大破 被害判定: 転倒 ・大破 ・中破 ・小破 ・軽微 ・無被害 半分は全壊 不明 不明 2段目から上は転倒 1段目から上は転倒 鉄筋探知機で検査 隣の御影石塀は転倒 塀の厚さが下2段が18㎝ 上2段が15㎝ 備考 鉄筋探知機で検査 無被害 他の同一方向の塀は全 壊 大破 11~2段目から上は転倒 2段目から上は転倒 北側は全壊 破損個所なし 中壊 全壊 全壊 無被害 大破 半壊 判定 2段目から上は転倒 基礎を残し転倒 基礎を残し転倒 破損個所なし 1段目から上は転倒 東側のみ2段目から上は転倒 状況 被害 11 12