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曲名と歌詞の印象を用いた認知機能向上のための楽曲推薦システム

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曲名と歌詞の印象を用いた認知機能向上のための楽曲推薦システム
卒業論文要旨
曲名と歌詞の印象を用いた認知機能向上のための楽曲推薦システムに関する研究
(情報伝達システム学) 西村 光平
1. 緒言
高齢者を対象とした音楽療法では、対象者の好きな楽曲を用いる方がより効果的とされている。
このため、当研究室では、楽曲推薦システムの開発を進めてきた[1,2]。既報のシステム[1,2]で
は、
「協調フィルタリング」と「印象語対を利用した手法」をハイブリットに統合して楽曲推薦
を行っているが、10 名程度に事前に視聴してもらい、主観評価結果および印象語対を用いた楽
曲印象評価結果(以下、両者を「事前アンケート結果」と表記)を収集し、新規ユーザへの楽曲
推薦の際にその情報を利用している。楽曲ごとに、この事前アンケート結果を取得する必要があ
るため、楽曲のジャンルや曲数を増やすことが容易でない。
そこで、本研究では、楽曲印象評価結果を自動作成するシステムの構築を目指し、曲名と歌詞
という言語情報の印象だけを用いて楽曲推薦を行う方法を提案し、その有効性を検証した。
2. 楽曲推薦法
まず、楽曲推薦用に、「認知症高齢者と楽しむ懐かしの名曲 CD」[3]の中から 58 曲を選択した。そ
して、既報[1,2]で用いられた 10 項目の印象語対[4]を文献[5]に基づき 4 つの印象語対グループにわ
けた。さらに、4 つの印象語対グループに対する評価は、それぞれ 3 段階とした(表 1)
。そして、
それぞれのグループに属している印象語対の数(A:2,B:4,C:2,D:2)をそのグループの重みとした。
表 1. 4 つの印象語対グループと評点
評点
グループ
A
B
C
D
2.1
-1
静かな
and/or
気持ちが落ち着く
明るい
and/or
爽やかな
and/or
楽しい
and/or
軽々しい
落ち着いた
and/or
ゆったりとした
綺麗な
and/or
心が癒やされる
0
該当した-1と1の印象語数が同数
該当した-1と1の印象語数が同数
該当した-1と1の印象語数が同数
該当した-1と1の印象語数が同数
1
激しい
and/or
気持ちが高揚する
暗い
and/or
重苦しい
and/or
悲しい
and/or
荘厳な
忙しい
and/or
窮屈な
綺麗じゃない
and/or
心が傷つく
推薦候補曲の選定方法
処理の流れを以下に示す。
Step s1: 58 曲それぞれの歌詞から出現数の多い単語(以下、
「頻出単語」と表記)を上位 5 つま
で取得(5 位以内に同数の単語がある場合は、合計 5 つを超える場合あり)。
Step s2: 印象語推薦で用いられたアンケートの回答者 5 名に、Step s1 で取得したそれぞれの曲
の頻出単語と曲名を提示し、それらから連想される印象について、表 1 を基にした 3 段階評価
(-1,0,1)での回答を得る。
Step s3: ユーザ 5 名が評価した各曲の 3 段階評価の値の平均値の小数点以下を四捨五入して 3
段階の評価値(-1,0,1)とする。
Step s4: Step s3 記載の評価値において、表 1 記載の 4 グループのうち 3 個以上が 0 となっている
曲、および、B を含めて 2 個が 0 となっている曲を非推薦曲とし、それ以外の曲を推薦候補とする。
2.2 楽曲推薦法
処理の流れを以下に示す。下記 K の値は、予め設定する。
Step r1:, 1 曲推薦し、 i  1 ,
j  0 として、Step r2 へ。
Step r2: i  K であれば Step r7 へ。そうでなければ、Step r3 へ。
Step r3: 直近推薦された曲をユーザ u が「好き」であれば、
なければ、
j  0 として、Step r4 へ。そうで
j  j  1として、Step r5 へ。
Step r4: 推薦候補曲のうち、その時点で推薦していない曲の中で、それまで推薦された曲のう
ち「好き」とユーザ u が評価した楽曲と、第 2.1 章 Step s3 記載の評価値が一致する印象語対グ
ループの重みの総和が、最も高い曲を推薦し、 i  i  1 とし、Step r6 へ。
Step r5: i  1 であれば、推薦候補曲に対して予め行った評価で、
「好き」と回答したユーザが一
番多い曲を推薦し、 i  i  1 として、Step r6 へ。そうでなければ、Step r4 へ。
Step r6: (1)第 2.1 章 Step s3 記載の 4 つの各評価値が、直近推薦された 2 曲においてすべて一
致し、かつ、直近推薦された 2 曲に対するユーザ u の評価(「好き」、
「好きでない」
)が一致し
ない場合、または、(2)
j  2 の場合は、Step r7 へ。そうでなければ、Step r2 へ。
Step r7: 終了
3. 評価実験結果
58 曲すべての楽曲に評価を与えている 10 名のユーザを対象に、本法の有効性を、 K  10 と
して検証した。58 曲の中から第 2.2 章 Step r1 記載の曲として 30 曲を無作為に選択して楽曲推
薦を行った結果、平均推薦正答率は 51.1%となった。他方、ランダム推薦の正答率は 28.5%で
あった。この結果から、本法の有効性が実証されたと考えられる。
4. 結言
曲名と歌詞という言語情報の印象だけを用いて楽曲推薦を行う方法を提案し、その有効性を実
証した。今後は、本法の推薦精度向上策の検討を行う。
[参考文献]
[1] S.Yoshizaki, Y.Yoshitomi, C.Koro and T.Asada, “Music Recommendation Hybrid System for Improving
Recognition Ability Using Collaborative Filtering and Impression Words”, Journal of Artificial Life and
Robotics, vol.18, nos.1-2, pp.109-116, 2013.
[2] Y.Yoshitomi, T.Asada, R.Kato, Y.Yoshimitsu, M.Tabuse, N.Kuwahara, and J.Narumoto, “Music
Recommendation System through Internet for Improving Recognition Ability Using Collaborative
Filtering and Impression Words”, Proc. of Int. Conf. on Artificial Life and Robotics, pp.244-247, 2014.
[3] 赤星武彦,「認知症高齢者と楽しむ懐かしの名曲」, 雲母書房, 2009.
[4] 太 田 公 子 , 熊 本 忠 彦 , 「 言 語 知 識 に 基 づ く 印 象 尺 度 の 設 計 」 , 情 処 研 報 ( 音 楽 情 報 科 学 ) ,
vol.2002-MUS-45, no.17, pp.97-102, 2002.
[5] 市 川 裕 也 ,田 村 哲 嗣 ,速 水 悟 ,「 印 象 語 の グ ル ー プ 化 を 用 い た 楽 曲 推 薦 シ ス テ ム 」 ,人 工 知 能 学 会
全国大会論文集,20 回, pp1-3, 2006.
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