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歯科医院の拡大発展戦略 IT化による分院管理手法

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歯科医院の拡大発展戦略 IT化による分院管理手法
Available Information Report for Corporate Management
経 営 情 報 レ ポ ー ト
歯科医院の拡大発展戦略
IT化による分院管理手法
1 医院概要
2 平成18年度診療報酬改定を受けて
3 テナント別のメリット・デメリット
4 e−Japan戦略
5 当法人の今後の問題点
歯科医院の拡大発展戦略 IT化による分院管理手法
医院概要
歯科医療業界が今、厳しい不況に立たされています。このままでは個人経営の歯科医院は経営が破綻
していく状態になりかねません。それでは、どのように歯科医院の経営を改善していけば良いのか。本
レポートでは私の経験を基にその改善策を解説していきます。
1|開業から分院展開を視野に入れて
私は、平成7年2月に開業しました。それ以前は東京の分院展開を行っている大規模歯科医院で、勤
務医をしていました。勤務していた歯科医院では、責任者として、経営やスタッフの教育などを勉強さ
せてもらいました。したがって、自分の描く歯科医院には「組織化した歯科医院経営」というものが自
然とありました。
開業は神奈川県藤沢市で行いましたが、歯科医師会も出来れば開業してほしくないという無言の圧力
をかけてくるような競争の厳しい地域でした。加えて、勤務医が開業するということで銀行からの融資
が受けられず、居抜き物件を購入することにしました。
【当初購入時の状況】
●引き継げる患者が 30 件
●ユニット・内装ともにボロボロ
●スタッフも何とか1名が残ってくれるという状態
●ただし、立地としてはめぐまれた環境にあった
●2軒隣には歯科医師会館があったが、医師会には加入せず、独自路線で出発
開業後半年で患者が増えなければ閉鎖することも考えていましたが、6ヶ月目くらいから急速に患者
が増加、1年間で 300 件を超えることになりました。
【患者増の以前に行ったこと】
①タウンページに大枠で『日曜診療実施』を掲載した
→徐々に日曜診療が広まっていった
②受付スタッフを再教育し、電話のあった急患をすぐ受付するようにした
●この時点では当初のスタッフも交替してもらった
●東京では急患を当たり前のように受け入れていたが、この地区では予約優先で受け入れて
いない歯科医院が多かった
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歯科経営情報レポート
歯科医院の拡大発展戦略 IT化による分院管理手法
広告宣伝を実施し、スタッフの意識を変え、患者サービスの向上を図る歯科マーケティングの基本形
を当初より実施できたのは、勤務時代の経験が生かせたからだといえます。医師一人の医院運営ではな
く、組織で対応できる診療体制を構築する、本格的な歯科経営がスタートしました。
2|医療法人社団 湘南誠心会の歩み
【医療法人社団 湘南誠心会の沿革】
【本
院】
●藤沢パーク歯科(平成7年開業)
:当初の物件は現在、事務局として使用
(平成 19 年 10 月移転)藤沢駅より徒歩3分
・ユニット7台(診療4台、予防・矯正2台、オペ室1台)
【往診部】
●藤沢パーク歯科(平成9年設立)
往診部は、来院できなくなった患者の対応のために設立
介護保険開始以前から実施、有料老人ホーム3件、その他施設4件)
・往診車5台
【分
院】
●茅ヶ崎パーク歯科(平成 12 年開業):茅ヶ崎ジャスコ店内3階
・ユニット6台(診療5台、予防1台)
●大和パーク歯科(平成 13 年開業):オークシティイオン大和店内2階
・ユニット5台
●辻堂パーク歯科(平成 15 年開業):県道沿い小僧寿し2階
事情があって閉鎖する医院の継承を依頼された
・ユニット3台
●真岡パーク歯科(平成 17 年開業):イオンスーパーセンター真岡店内
栃木県(イオン側からの依頼で開業)
・ユニット3台
当医院は、本院・分院とも大型スーパーの中に入っているケースが多いです。大型スーパー内の医院
と一般テナントである辻堂パーク歯科を比較を行うと集客力の面が断然違うという実感があります。
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歯科医院の拡大発展戦略 IT化による分院管理手法
【イオングループテナント獲得の推移】
●東京の府中イトーヨーカ堂内で分院を作ったが、遠隔地(往複3時間)で管理の問題があり、
元の勤務先に売却した
●そのあと、茅ヶ崎の分院と同時に昭島でも分院を開設した
■昭島の物件開設の理由
イオングループの役員が所有しているテナントにまず入居し、本体のイオンテナントへ入るき
っかけを作ることが目的であった。したがって、開業希望の代診医を探し、2年後売却する条
件ではじめ、2年後に売却整理した。
●当方は、茅ケ崎のイオングループテナントが取れた
このように、イオングループに入るには競合が多く、イオングループ内での開業を考えている個人歯
科医からの問い合わせが多くあり、実際に家賃の吊り上げをしてくる事が多いです。当医院も茅ケ崎の
テナントを始めるにあたっては、通常開業の2件半分の投資が必要でした。しかし、今となって考えれ
ば、この取り組みは正解であったと思います。
3|過去の運営体制への疑問
このように、現在まで大きく分院を展開してきましたが、分院展開には多額のコストがかかり、今後
の運営体制においても、このままでよいのか疑問が生じてきました。歯科医院として、何かを変えてい
かなければいけないだろうという話が出てきたのです。
【運営体制上、再検討した項目】
●分院は本院のコピー?
●スタッフ教育
●簡単な日計管理
●出入り業者の選別
●技
●求人・雇用
●保険請求
●広告宣伝
工
ここまで分院が増えてくると管理面で不都合が起きるようになりました。
真岡パーク歯科を開設した際には、栃木という遠隔地であったこともあり、ひとつの技工所や材料屋
だけで処理を行うわけにはいかず、管理が煩雑になり、かつ、保険請求も地区が違うので手続きが多く
なりました。それまで自分一人で管理してきたものが、不可能になってきたのです。
そこで、事務局を立ち上げて一つ一つクリアすることにしました。
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4|本院に事務局を設置
事務局の要員も歯科医院の場合は医科とは異なり、局員を雇うだけの人件費が出ないのが実情です。
普通の歯科医院のように、受付の人がレセプトや事務を行い、レセプトの時期だけレセプト要員として
業者に委託を行う。レセプト代を支払って管理し、帳簿が出来たら税理士先生に渡すというように業務
を行っていました。
しかし、このような人件費を少なく済ませる体制にすると、スタッフも診療中に他の仕事をすること
になり、診療の体系に穴が開いてしまいます。1日の売上が下がるという事態も発生しました。また、
女性スタッフも、せっかく仕事を覚えたのに辞めてしまうことになってしまい、今までかけた人件費が
無駄になってしまうという事になりました。
そこで、専門の男性職員を採用して、当医院の事を考えてくれる社員を育てていこうという形に業務
処理の方法を変更しました。本院、分院間のやり取りもこの職員を通して行うことができるため、タイ
ムラグも減り、紙ベースで郵送したりファックスで送信するなどしてコストダウンにもつながっていま
す。
院
事務局による
タイムラグの
解消
本
4
分
院
分
院
分
院
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歯科医院の拡大発展戦略 IT化による分院管理手法
平成18年度診療報酬改定を受けて
1|問題点の発生
平成 18 年4月に診療報酬のマイナス改定の影響で、最初の保険請求が大幅に下がったかというと、
それほど下がりはしませんでした。しかし、本院自体の売上減少はないものの、じわじわと材料費や技
工料などの割合が高くなり、利益がかなり減ってきたのです。
そこで、どのような対応をとれば良いかという事を検討することになりました。
2|対応策
(1)経費節減
①各医院との連絡網の確立
保険外を今まで行ったことのないドクターが急に手をつけると、必ず医療トラブルが起こります。そ
の時、どこに連絡をすれば良いのか。例えば、分院長の患者が保険外を行っていた場合、勤務医しかい
ない時に患者からのトラブルが発生した時にはどうすれば良いのか。どこに電話をして、誰が対応する
のかという基本事項の確立を行う。
②材料の再確認
各分院で材料の再確認を行う。各分院がバラバラに材料を購入しているため、同じ材料のまとめ買い
や制限をするなどして、コストダウンを図る。
③広告宣伝の再確認
広告宣伝については、各医院がそれぞれバラバラに実施しているため、コストが多くかかっている医
院もあれば、全然かかっていない医院もある。各地域性も影響する可能性があるが、その部分を統合し
ていくことが大事。
④借入の再確認
返済部分の負担の軽減(借り換えなどによる利率の見直し)を図る。「借入れの確認」は、事務局が
出来てから初めにあがってきた言葉。
⑤福利厚生の再確認
雇用していくために必ず聞かれる事として「保障はどうなのか」、
「保険はどうなのか」といったもの
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がある。全員を加入させると利益がなくなるのでどうすれば良いか、ということの再確認を行う。
⑥事務の再確認・レセプトの再確認
当初、事務職にかかる業務について、日計表を本院にFAXで毎日送らせて、その金額を通帳に入金、
差額があった場合に追及していましたが、5件分の確認となると膨大な量になってしまう。その他、当
月の請求書や支払いを行うと1∼2人の事務員ではこなせない業務量になってきた。レセプトも最初は
レセコンを使用していたが、オンラインでないため、月末に本院でフロッピーの状態でチェックを行い、
出力した紙ベースにて再度分院で修正を行っている。フロッピーが移動する間のタイムロスを解消する
方法を検討中。
(2)1ヶ月に来院する新患の増員もしくは減少させない(各分院に周知徹底させた)
大型テナント内の場合
大型テナント以外の医院
●医院自体が日々のサービスを徹底
●広告宣伝の増強
●会計の明瞭化
●主訴に対しての治療の徹底をしなければ
ならない
●日々のサービスの徹底
●広告宣伝はなくてよい
●必然的に来院患者は増加している
一番大きな違いは、広告宣伝など何もしなくとも人が集まってくる部分です。集客の部分と地域に定
着の部分で、大型テナントの家賃が高い点については、自然に集客ができる部分ですべて経費分が補え
るだろうと考え方が変わりました。
【参
考】
●新規患者数 ; 藤 沢 : 1 か月 200 件
茅ヶ崎 :
200 件
大 和 :
200 件
辻 堂 :
30 件
真 岡 :
170 件
(3)保険外診療の割合を増加させる方向に変えていく(各分院に周知徹底させた)
保険診療に頼っている状態では、一定の収入を確保できないため、保険外診療を積極的に行うことを
推奨しました。
ただし、勤務医は、勤務していれば良いという考えしかないため、開業している経営者サイドのドク
ターでも、保険外診療には取り組むが、勤務医である以上、給料は貰えるため、そんなに四苦八苦して
いないというのが実情です。
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テナント別のメリット・デメリット
1|大型店の場合
(1)利点としては
●広告宣伝費の削減、知名度がUP
●イベント開催は大型店主催により行われ来院患者数もUP
●駐車場の台数確保
テナント面積により駐車場代が計算、多額のコスト負担にはなるが、駐車場所は確保される
●チャイルドコーナーの利用
テナント側で子供の遊び場を作っているため、医院内での設置は必要ない
(2)欠点としては
●保証金が高い
●テナント料が高い
●最初の開業時に経費がかかる
・開業・運転資金というのは、普通2∼3ヶ月分は必要になる
・当医院の場合、開業当初から、患者の窓口入金で経費が回っている事を考えると欠点とは
言えないかもしれない
●診療時間・休診日の設定が難しい
・問題点は、従業員の出勤ローテーションの設定の難しさです。ドクターは、結婚し子供が
いると土日は遊びたいという気持ちがあるため、その部分を調整する難しさがある(店舗
は日祭日も開いている)
●急患が多く、継続して来院してくれる患者を見つけるのが難しい
・痛くなった時にきて、その後に消毒には通院してもらうが、実際に来院してくれるのは、
その中の半分で、消毒が終わると来院しなくなるのが更にその半分となる
2|大型店以外の場合
(1)利点としては
●テナント料の安さ
●保証金の安さ
●テナントの周囲の利用の便利さがある
・小さいテナントであれば周りの壁を広告に使える
●診療時間の設定、休診日の設定
・医院の都合に合わせた診療日にできる
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(2)欠点としては
●近隣に歯科医院が新規開業される危険性がある
・大型テナントだと周りにできにくい
●広告宣伝費の負担も個人だと大きい
●求人の負担や知名度、所在地の不明確さがある
●駐車場の確保や駐車場料金の負担が大きい(台数×月の負担)
・複数の媒体にチラシを出したり、看板を出したり手間がかかる
●交通の便が良くない
・大型テナントは、集客するために道路や交通面が整備されているが、それ以外の場合はこ
のような事はない
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e−Japan戦略
「e−Japan 戦略」というIT戦略を国が始めました。今まではレセコンを使用していたものが、こ
れからは電子カルテが主流になるというのが表面化しています。
●IT基本法、IT戦略本部設置(本部長内閣総理大臣)
●2003 年7月 e−JapanⅡ IT利活用重視
●2004 年2月 戦略Ⅱ加速化パッケージ
●IT政策パッケージ 2005
電子政府・電子自治体・医療の情報化・教育の情報化・債務セキュリティ 等
1|電子カルテ(個人情報)とオンラインシステム
平成 17 年4月に個人情報保護法が施行されました。以前は、守秘義務として医療担当者(歯科医師)
から患者側にカルテが提示されることはないに等しいことでしたが、現在は、「カルテ情報は患者のも
の」と規定されたために患者側から開示・提示を求められれば、即対応しなくてはならなくなりました。
●開示要求に対してレセコンから打ち出したカルテをそのまま患者へ渡した場合
【事例1】
●保険請求をする場合、レセコンではそのまま規格通りに打ち出される
●例えば、診療で麻酔をしていないのにレセコン上のセットで、麻酔が記載されているものが
打ち出されることがある
●これが返戻されてきた場合、正しく打ち直しをして再請求を行うが、このときの処理によっ
て、前回請求の麻酔を消去(削除)すると手直し前のデータが消えてしまう。つまり、証拠
が残らない。そして、それを打ち出してカルテとし、再請求することを歯科医院はやってい
るのである
【事例2】
●患者に診療終了時に領収書を渡す
●このレセプトに対して、保険が請求できず、保険者から戻ってきた
例えば、下の歯全部の歯石除去のレセプトを打ち出し、組合に提出して点数を請求したとす
る。2ヶ月して「この請求の仕方は通りません」と組合から戻ってくる。保険請求が出来な
いのでは、コンピューターで打ち直さないと新しいレセプトを出せない。そこで訂正のため
消してしまうと、次に印字する時にそれは出てこない。かつ、いつ消したという証拠も出て
こない
●もし、この返戻があった時に患者がカルテ開示を要求してきた場合、診療当日には、領収書
が発行されているため点数が載っている領収金額を患者は知っている。患者が来て、カルテ
を見せてくれと要求した場合、開示したカルテの点数と領収書は違うことになる
●患者は、組合からの通知報告書で、自分が持っている領収書の請求点数より安い点数になっ
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ていることを知り、自分が払っている一部負担金が多くなっていることに気が付く。これは、
本来は返還しないといけない
●そういった疑問からカルテを見せてくれと来た時に、レセコンからカルテを印字したら、そ
の項目をいつ消したかという証拠は残っていない。いつのまにか消えてしまっている。普通
はそのまま渡す。もしくは、ドクターによっては返戻のあった部分のレセコンの行数を消さ
ないで、自分でそのままやった事を書いている場合もある。しかし、そのまま出してしまえ
ば、患者には「私の請求書の内容と組合からきたものとで内容が違うではないか」という疑
問が生じる。この場合、
「詐欺罪」になる。歯科医師法の「カルテに記載する義務」に抵触す
るため、歯科医師が「詐欺罪」になるのだ
●カルテは公文書に近いものとして取り扱われるため、公文書偽造になる。すると「保険医取
り消し」、「医師免許取り消し」にまで至るドクターが今度の審判で出る可能性がある。平成
20 年になって、既に過去1年間の保険医取り消しの人数を超えている。個別指導などで歯科
医師と医師の保険医取り消しのドクターが急増している。歯科医師会などは大丈夫だと思っ
ているようだが、表に出ないところで指導や監査など「いじめ」のような形でどんどん始ま
っている。
2|電子カルテの3原則
では、国が決めた電子カルテというのはどういうものなのか。保存義務が規定されている文書等は記
録情報を電子媒体に保存する場合、「真正性」、「見読性」、「保存性」を満たさなければならないとなっ
ています。
【電子カルテの3原則】
(1)保存義務のある情報の真正性が確保されていること
●故意または過失による虚偽入力、書換え、消去及び混同を防止すること
●作成の責任の所在を明確にすること
(2)保存義務のある情報の見読性が確保されていること
●情報の内容を必要に応じて肉眼で見読可能な状態に容易にできること
●情報の内容を必要に応じて直ちに書面に表示できること
(3)保存義務のある情報の保存性が確保されていること
●法令に定める保存期間内、復元可能な状態で保存すること
※厚生労働省「診療録等の電子媒体による保存について」より
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■「真正性」の確保について
●真正性とは、正当な人が記録し確認された情報に関して、第三者から見て作成の責任と所在が明確で
あり、かつ、故意又は過失による、虚偽入力、書き換え、消去、及び混同が防止されていることであ
る
●なお、混同とは、患者を取り違えた記録がなされたり、記録された情報間での関連性の記録内容を誤
ることをいう
■「見読性」の確保について
●見読性とは、電子媒体に保存された内容を必要に応じて肉眼で見読可能な状態に容易にできることで
ある
●なお「必要に応じて」とは『診療、患者への説明、監査、訴訟等に際して、その目的に応じて』とい
う意味である
●また「容易に」とは、
『目的にあった速度、操作で見読を可能にすること』を意味する
見読性を脅かす原因としては、例えば下記のものが考えられる。
①情報が分散されて情報の相互関係が不明になる
②システムや関連情報が更新されて旧情報の見読ができなくなる
③情報の所在がわからなくなったり、アクセス検討が不明になる
④システムの正常動作ができなくなる
■「保存性」の確保について
●保存性とは記録された情報が、法令等で定められた期間にわたって、真正性を保ち、見読可能にでき
る状態で保存されることをいう
【参考資料1●背景について】
現在、進行しているレセプト電算化は、政府方針として「平成 18 年度からオンライン化を進め、
平成 23 年度当初から原則としてすべてのレセプトがオンラインで提出されるものとする」にな
っています。すなわち、レセプトのデータは紙ベースではなく、電子媒体として保存されるこ
ととなります。従って、診療の根拠としてカルテの意義は、今後ますます重要なものとなって
まいります。
しかしながら、現在レセプト電算化のみが先行してしまい、カルテの電子化に対する認識は希
薄であり、今後起こりうるレセプト請求の根拠、また医療裁判・医療事故・行政指導等に対応
するための、カルテの真正性を担保する事の重要性を軽視しているのが現状です。また、平成
17 年4月から個人情報保護法が施行され、カルテ記載内容は患者自身の個人情報であるため
に、主治医は患者本人にカルテの提出を求められた場合、即、対応しなければならなくなりま
した。そして行政は電子カルテに関するガイドラインを示し、そこに真正性の確保、見読性の
確保、保存性の確保の三基準を満たすべき旨の通知を行っております。
中でも真正性の確保の条件として、カルテ記録者の個人認証・改ざん書き換えの不可能なシス
テム・タイム認証等々、様々な条件をクリアしなければ電子カルテではないことを明確に示し
ております。
【出典】電子カルテシステム:ADA-Simple K http://ada-co.com/top.html
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【参考資料2●電子カルテソフトとレセコンソフトの大きな違い】
従来のレセコンソフトで作成されたカルテを、そのままコンピューターに保存していても、三
原則を満たしていないので、“電子カルテ”とは認められません。
“電子カルテ”を導入しておられる医院様にお尋ねします。
それは本当に“電子カルテ”ですか?
レセコンソフトと電子カルテソフトを混同し、印刷をせずに保存していた場合、
「カルテのない
医院」となってしまいます。
個人情報保護法案によって、カルテの開示が法的義務となりました。もしも、患者からカルテ
を要求された場合、開示することができますか?レセコンソフトで作成されたカルテには、真
正性や証拠能力を保証するものは何もありません。各医院でお使いのカルテは、真正性や証拠
能力を持っていますか?
電子カルテは原則の一つとして、真正性や証拠能力を保障していなければなりません。三原則
を満たした正しい電子カルテソフトを導入すれば、印刷する必要がなくなり、診療時に作成し
たカルテをそのまま保存でき、そのカルテを元にレセプトを作成することができます。電子カ
ルテの導入によって、カルテの開示を容易にするばかりではなく、インフォームドコンセント
の面においても大きな進展をとげることができます。
【出典】電子カルテシステム:ADA-Simple K http://ada-co.com/top.html
【参考資料3●電子カルテ導入のメリット】
−容易なカルテの管理−
電子カルテの利点の一つとして、容易なカルテの管理があげられます。電子カルテならば、膨
大な量の紙カルテを管理する必要がなくなり、紛失の恐れもなく長期にわたる大量の保存が行
えます。
患者が来院するたびに棚から紙カルテを探す必要はなくなり、コンピューターを使った検索に
よって、迅速にカルテを出すことができます。電子カルテの場合、通常の紙カルテとは違い書
き方が統一されますので、誤字や脱字、読むことが難解であるということがなくなります。
業務の効率化によって患者の待ち時間を減らすことにも繋がり、医院運営のさまざまな業務を
一元化することができます。
【出典】電子カルテシステム:ADA-Simple K http://ada-co.com/top.html
3|WEB型電子カルテシステムの導入
【WEB型電子カルテシステムの特徴】
①ソフトウエア、データがサーバのみのためメンテナンスが容易。リスク小
②1行ごとに入力者を記録保存、入力認証(フェリカ、スイカ等)の個体の個別認証の確保
③遠隔にてカルテが参照でき、セカンドオピニオン制度にも対応
④カルテの真正性は医院内で確保せず、外部認証制度に拡大された際に対応できる
⑤オンライン化のときWEB型のため即対応できる
4|WEB型電子カルテシステムの内容
数は少ないが、WEB型電子カルテシステムを取り扱っている会社もあります。
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【特
徴】
●ソフトウエアというのは、サーバ1台で子機にはデータが落ちていない
●サーバだけをカバーしていれば漏洩にも繋がらずにメンテナンスが楽である
●1行ごとに入力者を記録保存し、入力時はフェリカやスイカ等で個別認証できる。また、個
別の確定がされる事により、会計処理をしてしまうと、会計処理前の行数は削除できない状
態になり、2本線で訂正され記録が残る。訂正した後に間違えたのであれば、事務員のスイ
カ等の認証番号で入力間違いという事で保存される(ドクターがコメントを足す事も可能)
●遠隔地にてカルテが参照でき、セカンドオピニオン制度という部分で医科とも連携する場合
も対応できる。固定IDという部分を使用し、専属回線なので他からアクセスが出来ないた
めに遠隔操作が可能になる
【湘南誠心会の活用状況】
●当医院はこれを導入していないが、各分院の1日の日計表などは集計さえしてしまえば、事
務局はその場で全部確認する事が可能であり、予約状況も把握できる
●また、患者が何時に来院し、どういう事を行ったかも把握できる
●ドクターがどういう診療をしているかも事務局はパスワードを持っているので、どこの医院
でもすべて閲覧可能。したがって、タイムラグというのはほとんどなく管理している
●レセプトも事務局が全部一括管理で発行し、そこで内容もチェックし返戻もしている
●コンピューターには画像はすべて添付可能、保険証も、紙素材でもプラスティックでもスキ
ャナで読み取り可能、そのまま保険入力も出来る
スキャナで画像を読み込めるため、ドクターが手で描いた絵(歯の形など)を入力し貼り付
けることも可能。したがってカルテだけではなく、付随する書類も全部処理出来る。要は、
オンラインでの保険請求に対応しているということである
電子カルテはコストのかかるテーマです。じっくりと検討する必要がありますが、制度的に時間の余
裕はあまりないテーマともいえます。
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当法人の今後の問題点
1|人材面での問題
当医院の今後の問題点として人材面が挙げられます。人材というものをいかに教育して育てるか。歯
科医院の中での助手というのは3年サイクルで辞めていってしまうため、教育システムが構築できない
のが実情です。居づらいのか、飽きてしまうのか、それともドクターにいじめられているのか、何で辞
めていってしまうのかが定かでない状況です。
どこの会社でも同様に、良い人材には長い年数にわたって勤務してもらい、その人に人件費を払って、
売上を良くしてもらってやっていきたいというのが普通の考えです。その点で、ドクターやスタッフに
平等に、どのような形で教育費を出すかという点が課題になります。
教育に関しては、一人当たり年間でどの程度の教育費を負担すべきかが課題になっています。現状は、
スタッフ・衛生士・ドクターが勉強会に出席したい場合、理事長である私に問い合わせがあり、その都
度、彼らの人格や勤務状態などを見て判断しています。
勉強会へ参加するドクターは今でも在職していますが、それに対して途中で辞めていくドクターや開
業していくドクターは、講習会などへの参加に迷ったり、自分から参加したいと言ってくるケースは少
ない傾向があります。
理事長である自分の判断がなくても、法人として教育費を「このドクターにはどのくらいまで負担し
ていくか」という判断ができるシステムを構築することが現状で課題としているうちのひとつです。
2|ドクターのレベルの違い
社会保険料と税金をこれからどのようにしていくべきか、診療点数のアップが見込めないドクターの
レベル低迷や開業の多さといったところが問題です。
一番分かりやすいのは、1ヶ月の売上を見て、同じ時間・同じ患者の量を見ても歩合にしているドク
ターと固定給にしているドクターでは、両極端の結果となる点です。保険外診療のあるドクターは、
「疲
れた」などとぼやくようなことは、あまりありません。
一方、保険診療しか出来ないドクターは、疲れたら点数がそのまま診療に影響してしまうため、経営
面への影響も大きく出ます。保険外診療をやっているドクターは、「疲れた」と言っても必ず自分で休
む所を考えて、保険外診療の売上を上げてきます。したがって、平均としての収入はほとんど変わりま
せん。
保険外診療を行っているドクターは、自分自身で1ヶ月の収入というのを把握した上で診療していま
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歯科経営情報レポート
歯科医院の拡大発展戦略 IT化による分院管理手法
す。そういうドクターは安心して見ていけます。保険外診療を行っているドクターは、保険診療が少な
ければ保険外診療である程度、補っています。
3|社員旅行
どこの職場でも一緒だと思いますが、何か楽しみがないと仕事はやっていく意味がありませんので、
社員旅行を毎年行っています。病院というのはどちらかというと女性社会であり、旅行が好きな人が多
いという事もあるため実施しています。
新入社員の入社時やスタッフの入れ替わりの激しい時期には、社員の名前が把握できなくなってしま
うことがあるため、交流の場として、必ず夏に飲み会を開催しています。
各分院で毎月飲み会を開き、コミュニケーションを図りなさいとも言っています。それと同時に月1
回はミーティングを実施するように伝えています。ミーティングがないと団結力がなく、派閥ができ、
いじめが起きてしまいます。ミーティングを実施しても、やり方が分からない医院というのは意味があ
りませんが、ミーティングに出席する人達は必ず残っていきます。
4|オンラインと電子カルテは別のもの
オンラインと電子カルテとを歯科医院のドクターは皆同じとして考えがちですが、オンラインと電子
カルテとは別ものと考えるべきです。
病院を守るものとしては、電子カルテの方が大切だと思います。オンラインは、国が主導して行って
いる政策であるため、国がその仕組みも含めて、対応すると考えられます。
患者から責められてつぶれてしまうのは病院の方です。どのように維持管理をしていくか。要はレセ
コンで処理を行っているドクターが、打ち出したカルテに毎日訂正線を引き印鑑を押していれば、カル
テとして認められます。しかし、ただレセコンの中にしまって打ち出していないドクターのデータはカ
ルテとして認められないため、アウトです。
現在、神奈川県だけで見ても年間 3,200 件位、患者からの問い合わせで開示の請求があります。東京
都では 8,000 件と年々増えてく傾向にあります。電子カルテをレセコンだと思っているドクターは要注
意です。
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歯科経営情報レポート
歯科医院の拡大発展戦略 IT化による分院管理手法
最後に、患者を集めるという事に関しては、1つ1つ勉強してやっていけば、必ず患者はついて来ま
す。今後の改正でこれまでのマイナス改定の部分も常態まで戻ってくると考えられます。プラス4%位
と言われていますが、金属の点数も戻り、指導の要項の書類も5∼6種類から2種類に変更となりまし
た。診療時間の削減というのも元に戻ってきています。
ただし、点数の部分で算定のしずらい部分も出てきています。国の考え方もかなり変わってきている
ため、歯周病でしっかりやっているドクターに関してはプラスとなり、かなり収益が上がると考えられ
ます。
(注:患者に提示する書類がなくなったり、点数が上がった場合、その内に取締りが行われることがあ
りますので、国の動向も注意深く見ていくことが必要です)
(注意書き)
※本稿は、平成 20 年4月 18 日に開催された『BMC医業コンサルティング研究会』
(講師:医療法人社団 湘南
誠心会 理事長 大塚喜彦氏)の講義録を基に編集・作成しております。
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歯科経営情報レポート
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