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2011 年度 卒業論文 指導教員花川典子教授 視覚障害者が

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2011 年度 卒業論文 指導教員花川典子教授 視覚障害者が
2011 年度
卒業論文
指導教員花川典子教授
視覚障害者が安全に歩行するために
白杖「たずね人ステッキ」
阪南大学経営情報学部経営情報学科
5108251
松井
1
一紘
目次
第1章
はじめに……………………………………………………….…………….…..……..3
第2章
関連研究……………………………………………………….…………….…..……..5
2-1
資格障害者用白杖……………………………………………………….…….………5
2-2
「スマート電子白杖」…………………………………………………….….………5
2-3
GPS 搭載の杖……………………………………………………………………….….6
2-4 RFID 搭載「Smart Cane」……………………………………………………………7
第3章
たずね人ステッキ………………………………………………………………….….8
3-1
概要……………………………………………………………….…………..….……8
3-2
機能…………………………………………………………….…..…………….……8
3-3
システム内部……………………………………………………………..…….……11
第4章
たずね人ステッキのビジネスプラン……………………….………...……………12
4-1
市場性…………………………………………………………………………………12
4-2
事業活動・販売時方法………………………………………………………..…….13
4-3
事業採算・収支予測……………………………….………………………………..14
第5章
まとめ………………………………………………………………………………….16
参考文献………………………………………………………………………………….………17
謝辞……………………………………………………………………………………………….17
2
第1章
はじめに
現在、日本には身体障害者が約 3,483,000 人いると言われており、中で視覚障害者の数
は約 310,000 人に及ぶ[1](H18 年度)と言われている。それに伴い視覚障害者への環境整
備も整えられつつある。しかし、現実には視覚障害者が安全に歩行するための配慮がされ
ていない。例えば音声付信号機の設置は一部や、点字ブロック上に駐輪している等である。
図1を見てもらえばわかるが視覚障害者のために用意された点字ブロック上に駐輪してい
る写真である。駅前等には点字ブロックが多々存在するが、このように点字ブロック上に
駐輪している事をよく目にする。視覚障害者が安全に歩行するために用意された点字ブロ
ックにも関わらず視覚障害者が安全に歩行できない状態になっている。さらに、視覚障害
者への配慮すらされていない場所も多い。例えば、音声付の信号機等は都心部の中心街だ
けであり、全ての信号機が対応している訳ではない。実は信号機のある横断報道は視覚障
害者にとって最も危険な場所である。先ほど述べた音声付信号機は全信号機に取り付けら
れていない他に、取り付けられていても進行方向の信号が青なのかの判断がつきにくい問
題がある。つまり、スクランブル交差点のような、青になれば全ての方向に渡れるならば
問題ないが、一般的な横断歩道では青信号はどの方角なのかわかりにくいのである。
障害者への配慮が当たり前となった現在ではあるが、実際には障害者よりも高齢者への
配慮(バリアフリーの配備等)がメインとなっており、視覚障害者等への配慮はまだ少な
い。そのために視覚障害者は盲導犬を利用するが、盲導犬の育成には時間が掛かり、視覚
障害者数をカバーできない他に信号色を判断できない欠点も存在する。また、私自身の体
験であるが、交差点で視覚障害者が盲導犬を連れており、赤信号であるにも関わらず盲導
犬は車が来ていないと判断したため横断してしまい、そこに車が来て危うく事故になりそ
うになった。この原因として盲導犬(犬)は色を判断する事ができないため、周りの状況
だけで判断した点にある。つまり盲導犬では信号機の色を判断することは困難であり、盲
導犬を利用しても交差点は非常に危険であ
る。
そこで視覚障害者が一人でも安全に歩行す
るための白杖「たずね人ステッキ」を提案す
る。たずね人ステッキは視覚障害者が利用す
る白杖に複数のセンサを組み込み、信号色や
白杖だけでは判断できない障害物の有無を
視覚障害者に伝える新しい白杖である。
また、視覚障害者数は今後も上昇すると推
測される。なぜならば、視覚障害者の 6 割以
上は糖尿病等による内部疾患が原因である
からだ[2]。このように、視覚障害者の数は
3
図 1 点字ブロック上と駐輪
年々増加しているが、視覚障害者のための対策等は不十分であり、また全ての信号機や障
害物に対応することは困難である。このような状況から本提案であるたずね人ステッキは
非常に有効でないかと考えた。
本章では第二章に本提案であるたずね人ステッキに搭載する複数のセンサの説明及び、
類似する視覚障害者専用の白杖について考察する。
4
第2章
関連研究
本章では私が提案するたずね人ステッキに類似した商品についてとりあげていく。最初
に一般的な白杖について説明する。
2-1 視覚障害者用白杖
白杖とは視覚障害者が歩行の際に前方の路面を触擦して使用する白い杖のことである[3]。
大きさは直径2㎝程度で長さは1mから1.4m程度のものが一般的である。白杖の主な
役割は、安全の確保(前方の障害物や危険の防御)
、歩行に必要な情報(段差や歩道の切れ
目等のランドマーク)の収集、ドライバーや他の歩行者・警察官などへの注意喚起の 3 つ
である。周囲の人が視覚障害者の存在に気づくことで人通りの多い場所でも衝突せずに歩
きやすくなり、迷ったときなどに援助が自然に受け入れられることに大きな意味がある。
また白杖には形式があり大きく分けて(図 2-1 参照)単独歩行を目的とした長めの杖(long
cane)と、視覚障害者であることを周囲に知らせるための杖(ID cane)がある。また、long
cane はつなぎ目のない直杖と携帯性に優れた折りたたみ杖がある。
図 2-1 白杖の種類
http://www.rehab.go.jp/College/japanese/yousei/rb/lnk_cane.html
2-2 「スマート電子白杖」
次に類似した白杖の商品について説明する「スマート電子白杖」
(図 2-2 参照)[4]は、秋
田県立大学准教授の岡安光博が開発した、超音波のセンサ付の白杖である。前方にある物
5
体をセンサで感知して、目の不自由な人の歩行を助ける。従来、目の不自由な人が持つ白
杖は地面付近の物体は判別することができるが、上方にあるものは把握しにくく、ぶつか
ることもある。新しく開発した電子白杖は長さ約 1.3 メートル、重さ約 300 グラムで、持
ち手部分のセンサから超音波を出して、正面と上方の 2 メートルの範囲を感知することが
できる。前方に障害物がある場合は持ち手が振動し、上方にあるとリストバンドが振動し
て持ち主に知らせる。電子白杖は、肘を曲げずに前方に腕を伸ばした状態で歩行中、前方
の障害物の有無や距離を親指で触れているグリップの振動の強弱で判断できる。課題は防
水加工が施されていないため、
雨天の外出時に使えない。
価格は、センサ1個タイプが 30000
円、同 2 個タイプが 43000 円である。岡安は、秋田県内の部品製造会社・秋田精工と共同
で商品化している。
図 2-2 「スマート電子白杖」
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20110530-2/index.html
2-3 GPS 搭載の杖
次に説明するのが松下電器産業から開発されたGPSを搭載した杖である(図 2-3 参照)
[5]。杖の持ち手部分には液晶ディスプレイが搭載されており現在地がわかるようになって
いる。現在地を遠隔地から携帯電話やパソコンで把握し、道順を記録しているSDカード
を差し込むことで液晶ディスプレイに道順が表示されナビゲーションされるようになって
いる。主に健常者、お年寄り向けの杖である。
6
図 2-3 持ち手部分に表示される地図
http://techon.nikkeibp.co.jp/members/01db/200209/1006683/
2-4
RFID 搭載「Smart Cane」
次に説明するのはアメリカのミシガン中央大学の研究者が開発した RFID(非接触 IC タグ)
を使って視覚障害者を手助けするハイテク杖「Smart Cane」である(図 2-4
参照)[6]。
「Smart Cane」は、障害物を検知し、RFID(非接触 IC タグ)(図 2-5 参照)を使って視覚
障害者をナビゲーションできる。超音波センサを搭載した杖と、小型ナビゲーションシス
テムが入った肩掛け式のバッグを組み合わせて、地面に設置された RFID(非接触 IC タグ)
を検出する。杖が障害物を検出すると、バッグの肩ひもに取り付けられたスピーカーが音
声で警告を発し、ユーザーにどの方向に進めばいいのかを指示する。視覚と聴覚の両方に
障害がある人のために、振動で警告や方向指示を出す手袋も開発した。
図 2-4 「Smart Cane」
図 2-5
RFID
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0908/04/news051.html
7
第 3 章 たずね人ステッキ
第2章の関連研究で挙げたさまざまな白杖に対して、視覚障害者が使用する便利な白杖
たずね人ステッキを提案する。
3-1 概要
私の提案するたずね人ステッキはいくつかのセンサを取り組むことにより、視覚障害者
を支援するものである。視覚障害者ならではのトラブルに遭遇しても安全な生活を送るこ
とを実現する。
視覚障害者にとって最も危険な場所は大きく分けて、横断歩道と歩行中の障害物である。
視覚障害者は出かける時に普通は行き慣れた道を歩行するため電柱やガードレール、横断
歩道といった障害物の場所は記憶するものであるため問題ないのだが、工事のために取り
壊されたものや、新しく造られた障害物、横断歩道の開設など多くの問題点が生じている。
そこで視覚障害者が安全に歩行するための白杖「たずね人ステッキ」のアイデアを提案し
た。横断歩道を安全に歩行するための信号色判断と障害物を安全に回避するシステムを取
り入れた白杖である。3-1 に信号判断システム、3-3 に障害物回避システムを説明する。
3-2 機能 1 信号色判断システム
現在、信号機の色を視覚障害者が判断するには横断歩道付近に取り付けられた音声誘導
(鳥の鳴き声や音楽)だけである。そこで、視覚障害者でも信号機の色の判断が可能にす
るために COMS カメラ[7]とカラーセンサ[8]を用いたイメージセンサ等[9]で実現する信号
色判別システムを搭載する。信号色判別システムはシステム的に2段階から成り立つ。ひ
とつめは信号機がある位置の判断、ふたつ目が信号機の色の判別である。ひとつめの信号
機のある位置の判断は GPS を利用し、信号機の位置と視覚障害者の進行方向を把握する事
でより安全に信号機に近づくための配慮である。ふたつ目の信号機の色の判断は COMS カメ
ラとカラーセンサで判断する。CMOS カメラに判断画像解析装置を搭載しカラーセンサによ
って信号機の色を判断する。カラーセンサとは色を判断する電子部品であり、産業目的や
LED の色の判別によく用いられる。対して CMOS カメラ(CMOS センサ)は携帯電話等によく利
用されており、これを用いた画像処理の 2 点から実現する(図 3-2-1 参照)
。また判断す
る際には GPS を用いる事で現在地付近に信号機があるかを分析することで、信号色判断シ
ステムが作動するようにする。まず、現在地が信号機付近かを GPS を用いて判断する。こ
の時全国の信号機の位置を GPS データとして杖に組み込むことで現在地付近に信号機があ
るかを判断する。その後信号機があれば、カラーセンサを用いて信号機の色を判断、さら
8
に、CMOS カメラによる信号機の判断を行う。この2つの手法にて判断することにより、よ
り安全(誤認識対策)に信号機の色を判断する他に、イメージセンサは LED 信号には強い
のだが通常の信号に弱いという弱点を補うものである。また GPS は信号機の周りに赤色の
LED 等が存在した場合の誤認識を回避するためである。将来的には可視光通信対応信号機
(可視光通信とは通常の LED で赤外線通信のような通信を行う技術)[10]に対応した信号
色判断システムも考慮している。
図 3-2-1 信号色判断システムの概要
3-2 機能 2 障害物判断システム
次に歩行の際に邪魔となる障害物回避である。視覚障害者は白杖を左右に振ることで足
元の障害物を認識している。つまり白杖の長さである 1mから 1.4mの狭い範囲でしか障害
物を判断することができない。更に頭上にある障害物は杖だけでは判断しづらい。そこで、
白杖に超音波センサ[11]を白杖に組み込む事により超音波を全方位に発生させ、遠方にあ
る障害物や、頭上にある障害物を感知可能とする。従来の白杖では判断できなかった遠く
の障害物や頭上の障害物を白杖が感知する事が可能である。さらに搭載する超音波センサ
は長距離に対応したセンサを用いる事で最大 10m の範囲の障害物を判断可能であるため従
来の白杖の約 10 倍の範囲の障害物を確認することが可能である。この障害物判断システム
は超音波センサを用いる事で実現する。超音波センサは超音波を放つことで障害物に超音
波が当たり跳ね返った超音波をセンサがキャッチし、障害物の有無を判断する(図 3-2-2
参照)
。システムは非常にシンプルであり、超音波センサに反応があった場合、杖の所持者
に障害物があると通知するものである。さらに、超音波センサは杖に3~4個組み込むこ
9
とにより、障害物が頭上にあるか、真正面、足元にある等、具体的に障害物がある位置を
通知する。
図 3-2-2 障害物判断システム
3-2 機能 3 通知方法
障害物判断システムと障害物回避システムの機能を白杖に組み込み、各機能の警告を白
杖利用者に伝える。伝える際には現在無線型の骨伝導イヤホンを考えている。骨伝導イヤ
ホンは周りの音の影響を受けにくいという特徴がある。そのため、中心街等の雑音が多い
場所でも利用者に情報を伝えやすいと考えたからである。しかし、視覚障害者は聴力を最
大限利用するため、イヤホン等を利用することは非常に危険な場合がある。そこで、骨伝
道イヤホンだけではなく、振動等を利用した通知方法も考えている。ここは利用者が自由
に選択、設定できるようにする。
10
3-3 システム内部
これらのシステムをひとつの組み込み機器として白杖に組み込んだものが図 3-1 である。
図 3-1 システム内部
システム内部の機能について説明する。
最初に説明するのが 3-2-1 で挙げた、信号色判断システムに用いる機器について説明す
る。信号機の色を判断するための機器に CMOS カメラとカラーセンサを取り入れる。CMOS カ
メラとは携帯電話機によく利用されているカメラであり、カラーセンサとは色を判断する
電子部品である。信号機を CMOS カメラで判断画像解析を行い、カラーセンサによって信号
機の色を判断して信号機の色が赤、青、黄色を判断する信号色判断システムを行う。
信号機の位置を把握するためには GPS 受信機を取り入れる。全国の信号機の位置情報を
取り入れ、視覚障害者が信号機の近くに近づけば音声、または振動による通知方法で利用
者に通知する。
次に説明するのが 3-2-2 で挙げた、障害物判断システムに用いる機器について説明する。
障害物判断システムには超音波センサを取り入れることにより、前方に超音波を放つこと
で障害物に当たった超音波が跳ね返ってきて障害物を察知する機器である。超音波の種類
により通常の発する超音波よりも長距離用の超音波センサや、白杖に超音波センサを 3~4
個使用することにより、前方だけではなく上方にも超音波が届くようにするため、上方の
障害物にも対応することができる。
これらを通知する方法として、骨伝導イヤホンと振動モータを取り入れる。骨伝導イヤ
ホンとは周りの音の影響を受けにくい特徴があり、中心街や人の多い場所でも利用者に情
11
報を伝えやすいと考え骨伝導イヤホンを散りいれた。しかし、視覚障害者は聴力を最大限
に利用するためにイヤホンを利用することは危険な場合があるため、振動モータを利用す
る。
第4章 たずね人ステッキのビジネスプラン
本章ではたずね人ステッキの市場性、ビジネスとしての仮定収支について説明する。視
覚障害者は白杖に頼るのが現状であり、白杖の他に盲導犬の利用が義務づけられているが
盲導犬には時間とコストが多く必要とされる。盲導犬を希望し利用するまでの期間、白杖
を利用、購入するまでの期間を考察する。
4-1 市場性
本提案のターゲットは言うまでもなく視覚障害者である。現在、視覚障害者の数は約
310,000 人にも及ぶと言われており年々増加している。視覚障害者は道路交通法により、白
杖を利用、もしくは盲導犬を利用しなければいけない。しかし、日本全国の盲導犬の数は
約 1,000 頭と圧倒的に少なく、ほとんどの視覚障害者が白杖に頼るのが現状である。また
盲導犬は信号機の色を判断することができない。つまり、白状に頼らなければいけないに
も関わらず、従来の白杖には様々な問題点が存在するからこそ、本提案は非常に有益では
ないかと考える。
本提案は上記の問題点に着目し、視覚障害者がより快適に日常生活を送るためのビジネ
スである。例えば、視覚障害者が道を歩いており、赤信号に気付かずに横断歩道を渡って
しまう事故等を、本提案を用いる事で未然に防ぐことが可能となる。これは従来の白杖で
はできない。実際に視覚障害者センターから一般の健常者へのお願いのひとつとして「信
号機付近にて視覚障害者を見た場合、それを視覚障害者に伝え、一緒に渡るなどをしてほ
しい」と記載されている。また、超音波センサを組み込む事により、頭上の障害物も察知
することができ怪我等を事前に防ぐことが可能である。この点から見ても本提案には十分
なニーズがあると考えられる。
たずね人ステッキの需要については、視覚障害の原因のひとつである糖尿病等による内
臓疾患の患者も、年々増加の傾向にあるため、需要は今後伸びていくと考えられる。現に
日本国内においての糖尿病患者の数は、この 40 年間で、30,000 人から 7000,000 人まで膨
れ上がっている。つまり、糖尿病等による視覚障害者数も増加の傾向を辿ってしまう可能
性が高いにも関わらず、安全に視覚障害者が暮らせる環境は整っておらず、やはり白杖の
機能向上は不可欠であると推測される。
また、前章でも述べたが、様々な白杖が提案・販売されているが、どれも視覚障害者が
本当に困っている点を補うものでは無い。そのため、本提案はビジネスとしても、非常に
有利だと考えられる。現在考えられるビジネスの展開として挙げられるのが、障害者支援
12
施設などでの実演販売や低価格でのリースである。平成 19 年 10 月 1 日現在における障害
者支援施設数は 2,223 施設[12]であり、実際に視覚障害者本人に利用してもらうことに本
提案の成功の秘訣があると考える。最初は人口の多い都市部から提供していき、その後地
方へと徐々に事業を拡大していく方針で現在は考えている。
また、本提案のような杖に電子機器を搭載した製品は今後需要が高まると考えられる。
今回の本提案は視覚障害者をターゲットとしたが、日本は現在後期高齢者社会になりつつ
ある。高齢者の問題のひとつとして、高齢者はフラっとどこかに出かけたまま行方不明に
なるケースである。特に痴呆症患者で且つ体が健康な高齢者の迷子が多い。この問題を解
決する手法として高齢者を捜索する手段として需要が高いと考える。理由として高齢者は
なぜか携帯電話を持たないが杖は必ずと言っていいほど携帯する。このように、杖をター
ゲットとして捕らえるビジネスは今後需要が高いと推測できる。
4-2 事業活動・販売時方法
本提案の事業活動として視覚障害者支援センターでの実演・低価格リースを実施する。
初期段階に視覚障害者センターへ低価格でのリースを実施することがたずね人ステッキの
宣伝活動とし、ビジネス展開を行う。低価格でのリースにより、視覚障害者に実際にたず
ね人ステッキを利用してもらうことで利便性を実感してもらう。これにより、宣伝広告費
を削減する。またチラシ等の視覚的な宣伝活動は視覚障害者に閲覧できないため実施せず、
宣伝活動は積極的なリースの展開とする。これらにより、その利便性を体験してもらい視
覚障害者個人に購入を促し、それによる収入により収益を得る(図 4-2 参照)
。本提案の
ビジネスターゲットは非常に明確であり、ピンポイントな事業活動により宣伝広告費の削
減を目指す。具体的には全国の視覚障害者センターの一軒一軒を回り、本製品の販売活動
を行う。チラシ等による広告を行わず、一軒一軒回る点にも意味があり、視覚障害者であ
るため視覚を使う宣伝するのではなく、耳を使う宣伝をできるだけ尊重する。また、視覚
障害者支援センターにたずね人ステッキを置いてもらうことで、視覚障害者からの要望を
フィードバックし新機能開発や、機能改良を積極的に行い、たずね人ステッキをより良い
製品を目指すにする。そのため低価格のリースでは無く、無料貸し出し等によるβ期間を
設けることも視野に入れる。また、本製品が車椅子等のように国が定める障害者保険対象
製品として扱うよう国に申請を行う。これにより、より視覚障害者の方に手軽に本製品を
購入できる環境の整備も狙う。
13
図 4-2-1 事業展開
4-3 事業採算・収支予測
計画としては、初年度は開発に半年、宣伝活動に半年かける。宣伝活動は先述した視覚
障害者センターへの積極的なアプローチ等である。特に都心部においてたずね人ステッキ
は有効であるため、東京・名古屋・大阪を中心に初年度は活動する。また、たずね人ステ
ッキの販売価格は 30,000 円と設定し、原価は 10,000 円(表 1 参照)と推測し、利益は 1
本 20,000 円程度とする。ただし、原価は材料の大量仕入れによる価格調整により、変動す
るためこの原価は参照値とする。またリース金額は月額 100 円と設定し、初年度は全国身
体障害者施設 2,223 か所中の 10%である約 200 か所がリース目標として活動する。リース収
入は年間 24 万円(年間)であり大きく赤字であるが、この支出は宣伝活動費用であると考
える。また、必要経費の支出としては人件費、消耗品、旅費、機材費、光熱(通信)費、
材料費である(表2参照)
。ただし、支出経費のうちの旅費(出張費)は障害者センターの
場所等により費用が変更されるため変動する。また家賃等は大学を拠点とした活動を実施
するため。今回は発生しない。
引き続き2年目の計画を述べる。
2年目の販売目標本数は、視覚障害者 300,000 人の 0.1%
の 300 人が購入すると推測し、収入は 900 万円と推測する。これにより、収支は-386 万で
ある。翌年には前年の2倍の 600 人を目標とし、収入が 1248 万円を目標とする。また1名
人材を雇い、支出は人件費を2名分とすることで、障害者施設へ営業活動を積極的に増加
させる。4年目は 1000 本を販売目標とし、5年目は全視覚障害者の 1.5%である 2000 本の
売り上げ目標とし販売活動する。また4年目からの支出は人件費の増加や材料費の増加、
14
さらに旅費などの増加を年間 20%ずつ増加すると推測し、5ヵ年の収支を予測したのが図
4-2-2 である。これらによって3年目までの赤字は4年目にて返済可能となり、その後は黒
字になると予測する。
70000
(千円)
60000
収入
50000
支出
40000
収支
30000
累計収支
20000
10000
0
-10000
-20000
2011年度
2012年度
2013年度
2014年度
2015年度
(千円)
図 4-2-2 5ヵ年収支予測
表1
白杖1本の原価明細
項目
合計
CMOSカメラ
超音波センサ
カラーセンサ
GPS受信機
振動モータ
骨伝導イヤホン
杖
総計
1.3
0.3
0.9
3
0.1
2.4
2
10
表2 初年度支出表
(千円)
項目
合計
人件費 200*12か月
2400
消耗品
100
旅費
400
機材費 150
光熱費(通信費)
240
材料費
2000
総計
5290 (千円)
表3 5ヵ年収支予測表
収入
2011年度
2012年度
2013年度
2014年度
2015年度
240
6480
12480
30480
60480
支出
収支
累計収支
5290
-5050
-2996
10340
-3860
-6856
16440
-3960 -10816
20100
10380
-436
24858
35622
35186
15
(千円)
第5章 まとめ
現在、視覚障害者の数は平成 18 年の時点で 310,000 人に及ぶ。また、視覚障害の原因の
ひとつである糖尿病等による内臓疾患の患者も、年々増加の傾向にある。現に日本国内に
おいての糖尿病患者の数は、この 40 年間で、30,000 人から 7000,000 人まで膨れ上がって
いるため糖尿病等による視覚障害者数も増加の傾向を辿ってしまう可能性が高いにも関わ
らず、視覚障害者のために用意されている点字ブロックや信号機などが安全に機能されて
いない。そのため視覚障害者が安全に歩行するための白杖「たずね人ステッキ」を提案す
る。
本提案は視覚障害者が安全に歩行するために白杖に二つのシステムを搭載する。一つめ
の機能は信号機の色を判断する信号色判断システムである。白杖に搭載した CMOS カメラと
カラーセンサによる識別判断を行うことで色を判断して安全に歩行すること提案した。二
つめの機能は全方位の障害物を判断する障害物判断システムである。白杖に超音波センサ
をいくつか搭載することで全方位に超音波を放ち、頭上の障害物も判断することを提案し
た。
仮定ではあるが事業として考察し、たずね人ステッキを作る部品ひとつひとつの金額を
調べ、市場性、事業活動、収支予測を踏まえて、5 年で黒字になる収支を立てた。
これらを花川先生、尾花氏、先輩方のご協力のもとビジネスプランとして日刊工業新聞
社主催の CVG(キャンパスベンチャーグランプリ)に応募し、奨励賞を受賞した。奨励賞を受
賞するにあたり、最初に書類審査が行われ、多くのご協力のもと書類審査を通過すること
ができた。日刊工業新聞社の訪れ、経験のないなかで審査員が 10 人以上という緊張と経験
のなさとはうらはらに予想以上の出来のプレゼンに一番下の賞ながら奨励賞を受賞するこ
とができた。授賞式がおこなわれ退屈な話もあったが他校の生徒と話す機会もあり、貴重
な体験ができた。
今後の課題として、まずは本提案どおりになるのか実証してみる。提案の白杖を作るに
あたり、部品の一つ一つの重量を考えて視覚障害者が持てる重量なのか、使用している際
のバッテリーの残量に問題はないか、信号色判断、障害物判断は提案どおりに可動するこ
とができるのか、低価格によるリースでの宣伝、販売も障害者支援センターや視覚障害者
が受け入れてくれるのか多くの課題がある。これらの問題を踏まえつつ失敗も重ねること
で提案したたずね人ステッキのような視覚障害者が安全に歩行かつ生活できるものを考え
ていきたい。
16
参考文献
[1] http://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/index-w.html
[2] http://www.bruchsalia.net/diabetes-post017.html
[3] http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%99%BD%E6%9D%96
[4] http://www.jst.go.jp/pr/announce/20110530-2/index.html
[5] http://techon.nikkeibp.co.jp/members/01db/200209/1006683/
[6] http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0908/04/news051.html
[7] http://xenonews.blog50.fc2.com/blog-entry-317.html
[8] http://techon.nikkeibp.co.jp/article/WORD/20080303/148339/
[9]http://ja.wikipedia.org/wiki/CMOS%E3%82%A4%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%82%B
B%E3%83%B3%E3%82%B5
[10] http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%AF%E8%A6%96%E5%85%89%E9%80%9A%E4%BF%A1
[11]http://www.weblio.jp/content/%E8%B6%85%E9%9F%B3%E6%B3%A2%E3%82%BB%E3%83%B3%E
3%82%B5
[12] http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/fukushi/07/kekka1-1.htm
謝辞
ゼミの活動だけではなく CVG や多くの事を学ばせていただいた花川典子先生に感謝致し
ます。CVG では大変お世話になりました尾花正輝氏に感謝致します。また、CVG で一晩中ご
協力頂きました先輩方に感謝致します。
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