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第4講 東地中海世界・オリエントの統一
基礎からわかる世界史 第4講 東地中海世界・オリエントの統一 1.東地中海世界 前 13 世紀末頃から地中海東岸のシリア・パレスチナ地方に「海の民」が侵入 → エジプト新王国・ヒッタイトの勢力がシリア・パレスチナから後退 → セム語系3民族(アラム人・フェニキア人・ヘブライ人)の活動が活発化 ①アラム人(セム語系) ・ダマスクスを拠点に内陸中継貿易で活躍 ・アラム語 … 西アジアの国際商業語 ・アラム文字 … 西アジア・中央アジアの諸文字の源流 整理しよう!! アムル人 … セム語系。バビロン第1王朝(古バビロニア王国)を建国 アラム人 … セム語系。ダマスクスを中心に内陸中継貿易で活躍 ②フェニキア人(セム語系) ・シドン・ティルスを拠点に地中海貿易で活躍 ・フェニキア文字 … ギリシア人に伝わりアルファベットに発展 ③ヘブライ人(セム語系) ・パレスチナに定住(前 1500 年頃) → 一部はエジプトに移住するも、モーセに率いられ新王国時代のエジプトからパレスチナに脱出 = 「出エジプト」 (前13 世紀頃) ・ヘブライ統一王国建設(前 1000 年頃) 都:イェルサレム ダヴィデ王・ソロモン王の時代に全盛期 → ソロモンの死後、王国は分裂(前 922 年頃) ―→ 北:イスラエル王国 → アッシリアにより征服(前 722 年) → 南:ユダ王国 → 新バビロニアにより征服(前 586 年) → ユダ王国の住民は新バビロニアの都バビロンに強制移住 = バビロン捕囚(前 586~前 538 年) → 新バビロニアを滅ぼしたアケメネス朝によって捕囚から解放(前 538 年) → 帰国後、ユダヤ教の確立 23 第4講 東地中海世界・オリエントの統一 ■ ユダヤ教の特徴 ・唯一神ヤハウェ(ヤーヴェ)を信仰する一神教 ・ 「出エジプト」 ・バビロン捕囚など民族的苦難 → 選民思想・メシア(救世主)信仰の形成 ・教典は『旧約聖書』 ※ バビロン捕囚後のヘブライ人をユダヤ人と呼ぶことが多い 24 基礎からわかる世界史 2.オリエントの統一 ①アッシリア(前2千年紀初~前 612 年) 都:ニネヴェ(前8世紀末~) ・セム語系 ・オリエントを初めて統一(前7世紀前半) ・アッシュル=バニパル王のとき最大領土、ニネヴェに大図書館建設 ・重税や圧政などの過酷な支配によって服属民の反発 → 滅亡(前 612 年) ②4王国分立時代 ・エジプト ・リディア(前7世紀~前 546 年) 都:サルデス ・インド=ヨーロッパ語系 ・小アジアに建国 ・世界最古の鋳造貨幣の使用(前7世紀後半) → ギリシア世界に貨幣経済をもたらす ・新バビロニア(カルデア) (前 625~前 538) 都:バビロン ・セム語系カルデア人が建国 ・メソポタミア・シリア・パレスチナを支配 ・ネブカドネザル2世が、ユダ王国を滅ぼしバビロン捕囚(前 586~前 538 年)を行う ・メディア(前8世紀末~前 550) ・インド=ヨーロッパ語系 ・イランに建国 整理しよう!! 古バビロニア王国 = バビロン第1王朝 セム語系アムル人が建国。ハンムラビ法典。ヒッタイトにより滅亡 新バビロニア王国 = カルデア王国 セム語系カルデア人が建国。バビロン捕囚。アケメネス朝により滅亡 25 第4講 東地中海世界・オリエントの統一 ③アケメネス朝(前 550~前 330) 都:スサ → ペルセポリス ・インド=ヨーロッパ語系ペルシア(イラン)人が建国 ・キュロス2世(位前 559~前 530) ・アケメネス朝の建国者。メディア・リディア・新バビロニアを滅ぼす ・カンビュセス2世(位前 530~前 522) ・エジプトを征服し、オリエントを再統一(前 525 年) ・ダレイオス(ダリウス)1世(位前 522~前 486) ・エーゲ海北岸からインダス川にいたる大帝国を建設 ・新都ペルセポリスの造営 ・中央集権体制の確立 ・全国を約 20 の州に分け、王が任命したサトラップ(知事)に統治させる → 王直属の「王の目」 「王の耳」が監察 ・中央(スサ)と地方(小アジアのサルデス)を結ぶ「王の道」を建設し、駅伝制を整備 ・服属した異民族に寛容な統治 ・ギリシアのポリスとの間にペルシア戦争(前 500~前 449)勃発(→ 最終的に敗北) ・ダレイオス3世(位前 336~前 330) 26 基礎からわかる世界史 ・マケドニアのアレクサンドロス大王に敗北 → アケメネス朝滅亡(前 330) 整理しよう!! アッシリア … セム語系。オリエントを初めて統一。服属民族に過酷な統治 アケメネス朝 … インド=ヨーロッパ語系。オリエントを再統一。服属民族に寛容な統治 <アケメネス朝> 27 第4講 東地中海世界・オリエントの統一 28 基礎からわかる世界史 紀元前のオリエントに関する次の文章を読んで、空欄 ア ~ エ に入る語句を、あとの語群 の①~④の中からそれぞれ一つずつ選べ。また、以下の問いに答えよ。 〔佛教大学〕 オリエントとは、古くから高度な文明が発達したメソポタミアやエジプト、そして両地域を結ぶ(1) シリア・パレスチナ地方を指す言葉である。 オリエントをはじめて統一したのは、アッシリアであった。前2千年紀におこったアッシリアは、 一時期、フルリ人とのかかわりの深い国家 つ鉄製武器などを用いて勢力を伸張し、 ウ ア に服属したこともあったが、 イ に起源を持 を都として、前7世紀前半には大帝国をうちたてた。 しかし、重税と圧政によって服属民の反発を招き、前7世紀末に滅ぼされた。 アッシリア滅亡後のオリエントでは、エジプト・(2)新バビロニア・メディア・リディアが分立し ていたが、ペルシア人がオリエントの地にふたたび統一をもたらした。 アケメネス朝ペルシアは、前6世紀半ばにメディア・リディア・新バビロニアを滅ぼして勢力を 伸張し、 エ た。 エ の時代には西はエーゲ海沿岸から東はインダス川流域までを支配する大帝国となっ は(3)中央集権化をはかったが、ペルシア戦争での敗北後、アケメネス朝は内乱などに悩 まされるようになり、前4世紀後半、アレクサンドロス大王の軍によって滅ぼされた。 〔語 群〕 ア ① イスラエル王国 ② バビロン第1王朝 ③ ミタンニ王国 ④ ユダ王国 イ ① カナーン ② ヒクソス ③ ヒッタイト ウ ① クテシフォン ② サルデス エ ① キュロス2世 ② シャープール1世 ③ スサ ④ フェニキア ④ ニネヴェ ③ ダレイオス1世 ④ ホスロー1世 問1.下線部(1)に関連して、シリアを中心に内陸交易を行ったアラム人が拠点とした都市を、次の① ~④の中から一つ選べ。 ① カルタゴ ② シドン ③ ダマスクス ④ ティルス 問2.下線部(2)に関連して、各国の次の地図上の位置a~cの組合せとして最も適当なものを、下の ①~⑥の中から一つ選べ。 29 第4講 東地中海世界・オリエントの統一 ① a ― 新バビロニア b ― メディア c ― リディア ② a ― 新バビロニア b ― リディア c ― メディア ③ a ― リディア b ― 新バビロニア c ― メディア ④ a ― リディア b ― メディア c ― 新バビロニア ⑤ a ― メディア b ― 新バビロニア c ― リディア ⑥ a ― メディア b ― リディア c ― 新バビロニア 問3.下線部(3)に関連して、アケメネス朝の政策として誤っているものを、次の①~④の中から一つ 選べ。 ① 国内を州に分割した。 ② 各地にサトラップを置いた。 ③ 駅伝制を導入した。 ④ 異民族の宗教を弾圧した。 次の文を読んで、下の問い(問1~7)に答えよ。 〔近畿大学・一部改〕 前7世紀前半にオリエントを統一したのは a に都をおくアッシリア王国であった。アッシ リア王国は征服地を州に分け、それぞれを総督が統治した。しかし、強圧的な政策が各地で反抗を招 き、アッシリア王国は前 612 年に滅亡した。その後、オリエントにはエジプト・ b ・新バビロ ニア・ c の4王国が分立することとなった。このような分立状態の中、ペルシア人の が、前 550 年に c d 朝 を滅ぼして以降、次々と他の3王国を征服していった。そして、最盛期の1 ダレイオス1世の時代には、東はインダス川から西はエーゲ海北岸にいたる広大な帝国となった。こ のようなオリエント統一の動きの中で、パレスチナの2ヘブライ人は、苦難を経験しながら次第に3 ユダヤ教を発展させていった。 30 基礎からわかる世界史 問1. a に適する語を次の①~⓪から一つ選べん。 ① エクバタナ ⑥ テーベ ② クテシフォン ③ ジャルモ ⑦ テル=エル=アマルナ ④ スサ ⑧ ニネヴェ ⑤ ダマスクス ⑨ ペルセポリス ⓪ メンフィス 問2. b に適する語を次の①~⑧から一つ選べ。 ① バクトリア ⑤ メディア 問3. c ② アルメニア ⑥ トラキア ⑦ ダキア ④ マケドニア ⑧ ガラティア に適する語を次の①~⑧から一つ選べ。 ① バクトリア ⑤ メディア 問4. d ③ リディア ② アルメニア ⑥ トラキア ③ リディア ⑦ ダキア ④ マケドニア ⑧ ガラティア に適する語を次の①~⑥から一つ選べ。 ① アルサケス ⑤ プトレマイオス ② セレウコス ③ アケメネス ④ アンティゴノス ⑥ マウリヤ 問5.下線部1に関連して、ダレイオス1世に関する正しい記述はどれか、次の①~④から一つ選べ。 ① 血統ではなく財産額によって市民の参政権を定めた。 ② ギリシアとの間にペルシア戦争をはじめた。 ③ フェニキア人を弾圧して、海上交易の範囲を縮小させた。 ④ 新都サルデスの建設をはじめた。 問6.下線部2について、次の(1)、(2)に答えよ。 (1) ヘブライ人に関する正しい記述はどれか、次の①~④から一つ選べ。 ① 前 1000 年ころパレスチナに王国を建設した。 ② ソロモン王とその子ダヴィデ王の時代に王国が繁栄した。 ③ 自らをヘブライ人と呼んだが、他民族からはユダヤ人と呼ばれた。 ④ バビロン捕囚から解放されるまで 100 年以上かかった。 (2) 前 722 年にアッシリア王国が滅ぼしたヘブライ人の王国は何か、次の①~⑥から一つ選べ。 ① パルティア ⑥ ミタンニ 31 ② ユダ ③ ティルス ④ イスラエル ⑤ シドン 第4講 東地中海世界・オリエントの統一 問7.下線部3について、ユダヤ教に関する正しい記述はどれか、次の①~④から一つ選べ。 ① イェルサレムを聖地とする。 ② 神ヤハウェを中心とする多神教である。 ③ 『旧約聖書』と『新約聖書』を聖典としている。 ④ 民族を超えた神の絶対愛を説いた。 32