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本文ファイル - 長崎大学 学術研究成果リポジトリ
NAOSITE: Nagasaki University's Academic Output SITE Title 日韓看護学生の死生観の比較 Author(s) 田代, 隆良; 出田, 順子; 永田, 奏; 安藤, 悦子; 崔, 鎔赫; 白, 明和 Citation 保健学研究. 2006, 19(1), p. 49-54 Issue Date 2006 URL http://hdl.handle.net/10069/9777 Right This document is downloaded at: 2017-03-30T23:12:54Z http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp 保健学研 究 日韓看護学生の死生観 の比較 田代 安藤 要 旨 隆良 1 ・出田 順子 2 ・永 田 悦子 1・径 路 赫 3 ・白 奏2 明和 4 日本 の看護学生 1 27人,韓 国の看護学生 1 91人 を対象 に死生観 を調査 した.看護学生の死生観 は 日 本 ,韓国 とも 「 死後 の世界観」「 死- の恐怖 ・不安」「 人生 にお ける目的意識」が高 く,「 死 か らの回避 」「 寿 命観 」「 解放 としての死 」「 死- の関心」 は低 かった.両 国 を比較す る と,「 死への関心」は 日本が,「 死から の回避」「目的意識 」 は韓 国が有意 に高か った.「 死へ の恐怖 ・不安」 と 「 死か らの回避」 には強い相 関が認 め られた. '死 にゆ く患者 をケアす る看護者 は 「 死- の恐怖 ・不安」が少 ない ことが望 ま しく,子供時代 か ら 生 と死 について考 える機会 を持つ とともに,講義や実習 を通 した死 の準備教育が両国 において必要 と考 え ら れる. 9( 1):495 4,2006 保健学研究 1 Ke yWor ds 死生観 ,看護学生, 日本 ,韓国 は じめに 表 1.対象 現代 人の価値観 は多様化 し,生 と死 に対す る考 え方 も 人数 ( 女性/男性) 平均年齢 ( 範囲) 一様 ではない.その ような患者 をケアす る看護師 には, 自分 自身の死生観 を持つ とともに, 自分 とは異 なる様 々 長崎大学 な死生観があることを理解 し,共感 で きる柔軟性が求め 4年生 5 5人 ( 5 5 / 0) 7 2人 ( 7 1 / 1) 1 8. 7 歳 ( 1 8-2 1 ) 2 1 . 9 歳 ( 2 1-3 9) 1年生 9 7 人 ( 8 4 /1 3 ) 1 9. 8 歳 ( 1 8-2 8) 1年生 られてい る1) . さらに,地球規模 で人の交流が進 み, 冒 晋州大学 本 とは異 なる歴史,文化 ,宗教 ,習慣 をもつ人々 をケア す る機会 も増 えつつあ り, 日本人以外 の死生観 を理解す る必要 もある.看護学生の死生観 に関 し,学年 間,講義 あるいは臨地実習の前後 2, 3 ) ,看護学生 と看護 師4 ) ,看護 お ける家庭 での死 の話題 ,宗教 の役割 ,死生観 に影響 を 6 )な どにつ いて比較検討 されてい る 学生 と他 学部学生 5・ 与 えた要因な どに関 し,選択 回答形式 で質問 した.死生 が,外 国の看護学生 との比較 に関す る研究 は少 ない.そ 死生観尺度」 を使 観 については,平井 ら7)が開発 した 「 こで今 回,地理的,文化 的 に日本 に最 も近 い と言 われて 用 した ( 表 2).本尺度 は,( ∋死後 の世界観 ,② 死- の いる韓 国 と日本 の看護学生 の死生観 を比較検討 したので 恐怖 ・不安 ,( 参解放 としての死 ,( 夢死 か らの回避 ,⑤ 人 生 にお ける 日的意識 ,⑥死- の関心,( ∋寿命観 ,の 7因 報告す る. 子 27 項 目で構成 され, 7件法 (1.当てはまらない, 4. どち らともい えない, 7. 当ては まる) に よ り回答 を求 対象 と方法 1.対象 め る もので,死生観全体 の特徴 を網羅 している.各 因子 長崎大学医学部保健学科看護学専攻 の 1年生 と 4年生 に 4つ ( 寿命観 のみ 3つ)の質問があ るため,各 因子 の お よび韓国晋州保健大学看護学部 の 1年生 と 3年生 ( 普 合計点 を質問数で割 り,平均 点が 4点以上 を高い, 4点 州保健大学 は 3年課程) にア ンケー ト調査 を行 った.戻 未満 を低 い と判定 した.質問票 には因子名 を記載せず, 崎大学 1 27人 (1年生 55人, 4年生 72人),晋州大学 1 91 各項 目をランダムに並 び替 えて使用 した. 人 (1年生 97人, 3年生 9 4人)か ら回答が得 られ,解析 授業終了後 の休 み時間に研 究の趣 旨,倫理的配慮等 に 対象 とした ( 表 1) . ついて説 明 した後 ,同意が得 られた学生 に質問票 を配布 2.調査 方法 ( 集合法).韓 国の学生 には, 日本語 の質問 を韓 国語 に翻 して無記 名 で記 載 して もらい,講 義室 出 口で 回収 した 死別経験 ・臨終 に立 ち会 った経験 の有無 ,子供時代 に 訳 し,同様 の方法 で実施 した. 1 長崎大学大学 院医歯薬学総合研 究科保健学専攻看護学講座 2 長崎大学医学部保健学科看護学専攻元学生 3 晋州保健大学国際観光学部 4 晋州保健大学看護学部 - 49- 保健学研 究 結 表 2. 死生観尺度 果 1.死別経験 と臨終 に立 ち会 った経験 第 1因子 死後の世界観 死 別経験 が あ る もの は,長 崎大 学 9 4. 5% , 晋 州大 学 %, ・死後 の世界 はあ る と思 う ・世 の中 には 「 霊」 や 「たた り」 があ る と思 う 80. 5% と長崎大 学 が有 意 に多 か った ( p<0. 001 ). 臨終 ・死 んで も魂 は残 る と思 う に立 ち会 った経験 がある もの は,長崎大学 1 6. 8%,晋州 ・人 は死後, また生 まれ変 わる と思 う 大学39. 80 / .と晋州大学が有意 に多か った ( p<0. 001). 第 2因子 死への恐怖 ・不安 2.子供時代 の家庭での死 の話題 ・死 ぬ こ とが 怖い ・自分が死 ぬ ことを考 える と不安 になる ・死 は恐 ろ しい ものだ と思 う 子供時代 の家庭 での死 の話題 に関 しては,両大学 とも 「 記憶が ない」と答 えた ものが半数近 くいたが,「 大 っぴ ・私 は死 を非常 に恐 れてい る 第 3因子 らに語 られた」と答 えた もの は長崎大学 が,「自分 はの 解放 と しての死 け者 にされた」 と答 えた ものは晋州大学が多 く,有意差 ・私 は死 とは この世 の苦 しみか ら解放 され る こ とだ と思 っ ている 表 3). が認 め られた ( p-0. 01 7) ( ・私 は死 を人生 の重荷 か らの解放 と思 っている ・死 は痛 み と苦 しみか らの解放 であ る 表 3.子供時代 の死の話題 ・死 は魂 の解放 を もた ら して くれ る 第 4国子 死 か らの回避 長崎大学 ( %) ・私 は死 につ いて考 える こ とを避 けてい る ・どんな ことを して も死 を考 える こ とを避 けたい 晋州大学 ( %) 大 つぴ らに語 られた 3 2 . 6 2 1 . 7 不快感 が あ った 2 0 . 6 1 6. 5 自分 はのけ者 に された 0 . 7 1 0. 6 タブーであ った 3. 2 1 . 6 ・私 は死 につ いての考 えが思 い浮 かんで くる と, いつ もそ れ をはねの け ようとす る ・死 は恐 ろ しいのであ ま り考 えない ように してい る 第 5因子 人生 にお ける 目的意識 ・私 は人生 にはっ き りと した使命 と目的 を見 出 してい る ・私 は人生 の意義 , 目的,使命 を見 出す能力が十分 にあ る ・私 の人生 について考 える と,今 こう して生 きている理 由 ( p-0. 01 7 ) が はっ き りとしてい る ・未来 は明 るい 第 6因子 3.死生観 に対す る宗教 の役割 死 への関心 死 生観 に対 す る宗教 の役割 に関 して は,晋 州大学 に 丁 死 とは何 だ ろ う」 とよ く考 える 」「やや重要」 と答 えた ものが,長崎大学 に 「 全 くない」 「ほ とん どない」 と答 えた ものが多 く,有意 ・自分 の死 について考 えるこ とが よ くある 「 非常 に重要 ・身近 な人の死 を よ く考 える ・家族 や友人 と死 につ いて よ く話 す 第 7因子 表 4). 差が認め られた ( p<0. 001 )( 寿命観 ・人 の寿命 はあ らか じめ 「 決 め られてい る」 と思 う 表 4. 宗教 の役割 ・寿命 は最初 か ら決 まってい る と思 う ・人の生死 は 目に見 えない力 ( 運命 ・神 な ど) に よって決 め られてい る 長崎大学 ( %) 0. 0 ll . 6 やや重 要 2 2 . 1 2 5. 2 さほ ど重要 ではない 2 2 . 4 3 0. 8 ほ とん どない 2 6. 9 1 8. 3 非常 に重要 3.調査期 間 平成 17年 8月 ∼1 0月 晋 州大学 ( %) 4,分析方法 OJを用 い,死生観 因子得 点の 統計 ソフ トはSPSS 1 0. 2群 間の比較 はt 検定 ,多群 間の比較 は一元配置分散分 ( p<0. 0 01 ) 析 ,比率 の検定 は x2検定 ,相 関関係 はPe as onの相 関係 数 によ り統計処理 し,有意水準0. 05未満 を有意差 あ りと 4.死生観 に影響 を与 えた因子 した. 自己の死生観 に影響 を与 えた因子 は,長崎大学,晋州 大学 とも 「 身近な人の死」が最 も多 く,次いで 「テレビ ・ 5.倫理的配慮 映画 本研 究 は,長崎大学医学部保健学科倫理委員会の承認 を受 けた. 」「葬儀へ の参列」 であ るが ,いず れ も長崎大学 の 方が有意 に多 か った.「自分 の病気」 は両大学 とも最 も 少 ないが, 「 家族 の病気」 は長崎大学 1 8. 9%,晋州大学 は長崎大学1 -5 0- 第1 1 9 巻第 第1 1号 号 2 2 0 0 6 年 第 9 巻 0 0 6 年 5 5. .死生観尺度 死生観尺度 8 . 4 % 宗教」 . 9 % 8 . 4 %と長崎大学が多 と長崎大学が多か かった.「 った.「 宗教」は長崎大学 は長崎大学3 3 . 9 %, , 1 2 . 0 %であ であ り,晋 り,晋州大学が多 州大学が多か かった. った.「 読書」 晋州大学1 晋州大学 2 . 0 % 「 読書」 両大学 死後の世界観 死へ の恐怖 ・ 不安 人 両大学とも とも 「 「 死後の世界観」 」「 「 死への恐怖 ・ 不安」 」「 「 人 は長崎大学 9 . 7 % . 8 % 1 9 . 7 %,晋州大学 ,晋州大学5 5 . 8 %であ であ り,長 り,長崎大学 崎大学が が は長崎大学1 死 生 ける 目的意識」の得点が高 「 死か からの回避」 らの回避」 生にお における目的意識」 の得点が高 く, く,「 多か かった.「 講義」 も長崎大学2 2 1 . 3 %,晋州大学 ,晋州大学4 4 . 7 %と と 」も長崎大学 1 . 3 % . 7 % 多 った.「 講義 解放 死「 寿命観 「 寿命観」 」「 「 解放 としての死 としての死」 」「 「 死への関心」 の関心」の得点 の得点は低 は低 長崎大学 実習」 8 . 1 % ,晋州大 「 実習」 は長崎大学 は長崎大学1 1 8 . 1 %,晋州大 長崎大学が多 が多いが, いが ,「 かった った ( ( 表 5) 5) .両大学 学を比較 を比較す ると, と,「 「 死への関心」 の関心」 か 表 .両大 する 死- 学1 1 3 . 6 %と,有意差 と,有意差はなかった はなかった ( ( 図1 1) ) . 学 3 . 6 % 図 . ( p-0 -0 . 0 2 3 )は長崎大学が は長崎大学が, ,「 「 死からの回避 らの回避」 」( ( p <0 . 0 0 1 ) , ( p . 0 2 3 ) 死か p <0 . 0 0 1 ) , % oo % oo 90 90 1 「 人生 ける 目的意識」 p <0 . 0 0 1 ) 「 人生にお における目的意識 」( ( p <0 . 0 0 1 )は晋州大学が有意 は晋州大学が有意 に高かった. った. に高か 80 70 80 70 60 60 「 死へ 不安 」と他 「 死への恐怖 の恐怖 ・ ・ 不安」 と他の因子 の因子 との相 との相関 関をみ をみる ると, と, 長崎大学では 死 か らの回避 」 と強 r -0 . 4 5 1 , 長崎大学では 「 「 死か らの回避」 と強 く く相 相関 関し し( ( r -0 . 4 5 1 , p <0 . 0 0 1 ) ,「 死後の世界観」 の世界観」 とも弱 とも弱い相 い相関 関 ( ( r -0 . 1 7 7 , p <0 . 0 0 1 ) ,「 死後 r -0 . 1 7 7 , 50 30 20 20 10 0 50 40 40 30 10 0 p-0 -0 . 0 4 6 )が認 が認め められた.晋州大学で られた.晋州大学でも も「 「 死か からの回避 らの回避」 p . 0 4 6 ) 死 」 ( r -0 . 5 2 9 ,p p <0 . 0 0 1 )が があ あ り, り,「 「 死-の の関 と強い相 い相関 関 ( と強 r -0 . 5 2 9 , <0 . 0 0 1 ) 死関 心」 」( ( r -0 . 2 0 5 ,p-0 -0 . 0 0 4 ) ,「 死後の世界観 の世界観」 」( ( r -0 . 1 6 9 , r -0 . 2 0 5 ,p . 0 0 4 ) ,「 死後 r -0 . 1 6 9 , 心 p -0 . 0 1 9 ) とも相 とも相関が認 関が認め められた られた ( ( 表 6) 6) .また,「 また,「 死か か p -0 . 0 1 9 ) 表 . 死 実 実習 習 講 講義 義 テ テレ レビ ビ・ ・映 映画 画 読 読書 書 教 教 宗 宗 家 家族 族の の病 病気 気 自 自分 分の の病 病気 気 葬 葬儀 儀へ への の参 参列 列 身 身近 近な な人 人の の死 死 らの回避」 は長崎大学 ,晋州大学 とも とも 「 「 死への恐怖 ・ ・ 不 」 は長崎大学,晋州大学 死への恐怖 不 らの回避 r -0 . 4 5 1 , 安」 とのみ強 とのみ強い相 い相関が認 関が認め められ られた た ( ( それぞれr -0 . 4 5 1 , 安」 それぞれ p <0 . 0 0 1 とr r -0 . 5 2 9 ,p <0 . 0 0 1 ) . p <0 . 0 0 1 と -0 . 5 2 9 ,p <0 . 0 0 1 ) . 死別経験 別経験の有無 の有無で死生観 で死生観を比較す を比較する ると, と,死 死別経験 の 死 別経験 の * ある るもの ものは,長崎大学 では は 「 「 死か からの らの回避」 傾向が強 向が強 あ は, 長崎大学 で 死 回避 」傾 P 〈 O . 0 5 *p く 0 . 0 5 く( ( p-0 -0 . 0 4 0 ) ,晋州大学で では は 「 「 死-の関心 の関心」 が高か っ p . 0 4 0 ) ,晋州大学 死へ 」 が高 かっ く 図1 1.死生観 .死生観に影響 に影響を与 を与えた因子 えた因子 図 ( p-0 -0 . 0 1 0 ) .また,臨終 また,臨終に立 に立ち会 ち会った経験 った経験のあ のある るも も た ( た p . 0 1 0 ) . 表5 5. .死生観尺度 の因子得点 表 死 生観尺度 の因子得 点 平均値 長崎大学 ( SD) 平均値 長崎大学 ( SD) 平均値 晋州大学 ( SD) 平均値 晋州大学 ( SD) t 値 t 値 有意確率 有意確率 死後の世界観 死後 の世界観 4 . 5 0( ( 1 . 1 2 ) 4 . 5 0 1 . 1 2 ) 4 . 6 0( ( 1 . 2 2 ) 4 . 6 0 1 . 2 2 ) -0 . 7 4 9 -0 . 7 4 9 0 . 4 5 4 0 . 4 5 4 死-の恐怖 . 不安 死へ の恐怖 . 不安 4 . 4 2( ( 1 . 3 6 ) 4 . 4 2 1 . 3 6 ) 4 . 3 0( ( 1 . 6 1 ) 4 . 3 0 1 . 6 1 ) 0 . 6 7 3 0 . 6 7 3 0 . 5 0 1 0 . 5 0 1 解放としての死 としての死 解放 3 . 2 7( 1 . 1 8 ) 3 . 2 7( 1 . 1 8 ) 3 L . 4 0( ( i . 3 3 ) 3 .̀ 4 0 1 . 3 3 ) -0 . 9 0 8 -0 . 9 0 8 0 . 3 6 5 0 . 3 6 5 死から の回避 死か らの回避 2 . 7 3( ( 1 . 0 8 ) 2 . 7 3 1 . 0 8 ) 3 . 2 6( ( 1 . 2 5 ) 3 . 2 6 1 . 2 5 ) -3 . 9 2 9 -3 . 9 2 9 0 . 0 0 0 0 . 0 0 0 人生における日的意識 人生 における 目的意識 4 . l l( 0 . 9 8 ) 4 . l l( 0 . 9 8 ) 4 . 7 7( 0 . 9 8 ) 4 . 7 7( 0 . 9 8 ) -5 . 9 5 2 -5 . 9 5 2 0 . 0 0 0 0 . 0 0 0 死への関心 死へ の関心 3 . 7 5( ( 1 . 1 5 ) 3 . 7 5 1 . 1 5 ) 3 . 4 3( ( 1 . 2 5 ) 3 . 4 3 1 . 2 5 ) 2 . 2 9 2 2 . 2 9 2 0 . 0 2 3 0 . 0 2 3 因 因 子 子 表6 6.死へ の恐怖 ・ ・ 不安との相関 との相関 表 .死- の恐怖 不安 国 因 子 子 】 】 長崎大学 長崎大学 晋州大学 晋州大学 相関係数 有意確率 相 関係数 有意確率 相関係数 相 関係数 有意確率 有意確率 死後の世界観 死後 の世界観 0 . 1 7 7 0 . 1 7 7 0 . 0 4 6 0 . 0 4 6 0 . 1 6 9 0 . 1 6 9 0 . 0 1 9 0 . 0 1 9 解放としての死 としての死 解放 0 . 0 6 1 0 . 0 6 1 0 . 4 9 7 0 . 4 9 7 0 . 0 5 7 0 . 0 5 7 0 . 4 3 7 0 . 4 3 7 死から の回避 死か らの回避 0 . 4 5 1 0 . 4 5 1 0 . 0 0 0 0 . 0 0 0 0 . 5 2 9 0 . 5 2 9 0 . 0 0 0 0 . 0 0 0 人生における目的意識 人生 にお ける 目的意識 0 . 0 4 4 0 . 0 4 4 0 . 6 2 7 0 . 6 2 7 0 . 0 1 6 0 . 0 1 6 0 . 8 2 2 0 . 8 2 2 死への関心 死の関心 0 . 1 3 7 0 . 1 3 7 0 . 1 2 4 0 . 1 2 4 0 . 2 0 5 0 . 2 0 5 0 . 0 0 4 0 . 0 0 4 -5 5 11 保健学研究 の は,晋州大学 で はや は り 「 死- の関心 」 が高 か った て もっ と考 え,語 り合 うことによ り,「 死- の不安 ・恐 ( p-0. 01 4). 子倶時代の家庭での死の話題が 「 大っぴ らに語 られた」 怖」を軽 くすることが出来 るのでないか と思 われる. もの とそれ以外 に分 けて比較す ると,長崎大学では 「 死 た経験が少 ないのは, 日本の方が韓国 よ りも核家族化が 死別経験 は長崎大学の方が多いのに,臨終 に立ち会 っ か らの回避」が有意 ( p-0. 0 0 2) に低か ったが,晋州大 進んでお り,また,病院で亡 くなる人が多いため11) と思 学 では 「 死- の恐怖 ・不安 」 ( p-0. 0 2 3 ), 「 死 か らの回 われる.子供時代 に臨終 に立ち会 った経験 をもつ ものは, 避」 ( p-0. 0 40) は低 く, 「 死へ の関心 」 ( p-0. 02 1 )は 高かった. 死へ の関心が高か った. しか し,現代社会 においては, 宗教が死生観 に影響 を与 える と考 える ものは,長崎大 ち会 うことは少 ない.在宅医療が進み, 自宅や家族が付 多 くの人は医療施設で死 を迎 えてお り,子僕が臨終 に立 p-0. 0 3 9) と 「 死学では 「人生 にお ける目的意識 」 ( き添 えるホス ピスなどで死 を迎 える人が増 えれば,臨終 の関心 」 ( p-0. 02 2 ) が高 く,晋州大学で は 「 死後 の世 に立 ち会 う機会 も増 える と思われる.子僕時代 の家庭で 界観」 ( p-0. 01 4),「 死へ の関心」( p-0. 01 4),「 寿命観」 の死の話題 に関 して も両国で違いが見 られ, 日本の方が ( p-0. 0 3 2)が高か った. また,死生観 に影響 を与 えた 大 っぴ らに語 られていた.子供時代 に死 について大 っぴ 因子 として宗教 をあげた人は 「 死への恐怖」( p<0. 0 01 ), らに語 った記憶がある ものは,死 を恐 ろ しい もの として 回避せず,死 について深 く考 えていた.大人は子供 を死 「 死か らの回避」 ( p-0. 0 0 2 )が有意 に低かった. か ら遠 ざけるのではな く,身近 な人の死 を通 して,生 と 考 察 死 について話 しあ う機会 を持つ ことが,子供 の死生観形 死 に関す る研究 は,1 9 5 0 年代 か ら欧米の心理学者 を中 成 によい影響 を与 える と思われる. 心 に始 まった. 日本で も1 9 7 0年代後半 には死の臨床研究 死生観 に及ぼす宗教 の役割 について,重要 と考 える も 会が発足 し,死 をタブー視 していた時代 か ら,死 を見つ のは韓国が有意 に多か った.そ して重要 と考 えるものは め ようとい う時代 に変わって きている.また,各 国で死 「 死後の世界観」「 死-の関心」「 寿命観」の得点が高かっ 生観 に関す る研究がすすむにつれ,民族や文化 的背景 に た. さらに自己の死生観 は宗教 に影響 を受 けた と考 える よって,死生観 に も違いがあることが明 らかになって き ものは,「 死-の恐怖」「 死か らの回避」が有意 に低 かっ た8).本研究では, 日本 の長崎大学 と韓 国の晋州保健大 た.す なわち,宗教 を信 じる ものは,死 について深 く考 学の看護学生の死生観 について調査 を実施 した.看護草 えるようにな り,霊や死後の世界 を信 じ,死 を恐れた り, 生の死生観尺度の因子得点は, 日本 ,韓国 とも 「 死後 の 回避す ることが少 ない と言 える.金 9)は,死 の不安 と宗 世界観」「 人生 における目的意識」「 死- の恐怖 ・不安」 教 ・宗教観 は相 関 しないが,宗教 を人間の弱 さの現 れ と が高 く,「 死か らの回避」「 寿命観」「 解放 としての死 」 捉 える人ほ ど死 の不安が強 く, 自分の死 に直面する心の は低 か った.大 山 ら4) も看護学生 は 「 死後 の世界観」 準備がで きている, しっか りとした死生観 を持 っている 「 死へ の恐怖 ・不安」 が高い ことを報告 してお り,同様 ほど死の不安が少 ない と述べ,特定の宗教 を持 たない 日 の結果であった. また,麻野 ら6 )は,看護学生 は他学部 本の学生 よ りも韓国の学生のほ うが来世観 を持つ人が多 学生 よ り,「 死後 の世界観」「 解放 としての死 」「 死- の い と報告 している.本研 究 で も有意差 はない ものの, 関心」「 寿命観」が有意 に高 く,「 死か らの回避」 は有意 「 死後の世界観」 は韓国が,「 死-の不安 ・恐怖」 は 日本 に低い と報告 している.「 死後 の世界観」 は,死後の世 が高い傾向が認め られた. 韓国統計庁の調査 ( 2 0 0 5年) によると,韓国の宗教人 界あるいは魂や霊 の存在 を信 じる考 えであ り,死 にゆ く 患者のケア提供者 として望 ま しい死生観であ るが,「 死 口は総人口の5 3. 1%であ り,仏教が 2 2. 8%, キ リス ト教 への恐怖 ・不安」 が強い と,死 にゆ く患者 のケアを回避 が21 . 4%である. また,儒教 の教 え も日本 よ り強 く残 っ す る傾 向があ り2・ 4 ) ,望 ましくない死生観 と考 え られる. ている. 日本では宗教人口に関す る公式調査 はないが, 日本 と韓国の比較 では,「 人生 における目的意識」 と 一般 に日本人は信仰心が薄い と思 われている. しか し, 死-の関心」は日本が有意 「 死か らの回避」 は韓国が,「 多 くの人が正月には神社 に初詣 に行 き,お盆 には先祖. を に高かった. 日本 と韓国の看護学生の死生観 に関す る研 供養 している. また,お宮参 りや七五三は神社 に行 き, 究 は少 ないが,金 9) は, 日本 の看護学生 は韓国 よ り死 の 結婚式 は教会であげ,葬式 ・法事 は仏教 で行 うなど, 冒 不安尺度の得点が低 い と報告 し,道腐 ら10) は,韓 国学生 本人 は多神教かつ多重信仰である.私 たちが長崎大学の の生 きがいは,「目標 に向かって努力する」「 幸福の追求」 看護学生 を対象 に行 った研 究 1 2 )において, 自分 に とっ 「自己実現 」「自己成長」 な どであ り,死 については, て死 とはとい う質問に,生命 の終 わ りと答 えた ものは半 「 来世」「自然の流れ」「 恐怖」「回避」 などと考 えている 数以下 ( 4 3. 0%) であ り,永遠 の眠 り ・憩 い ( 2 9. 6%), と報告 している.韓国の学生の方が人生 における目的意 霊 魂 は生 き続 け る ( 1 2. 6%), 死 後 の 生 命 の始 ま り 識 は高 く,死 を考 えることを回避す る傾向がある と思わ ( 4. 8%) と答 えていた.山崎 1) が述べ ているように,盆 れ る. また,「 死 か らの回避」 は 「 死- の恐怖 ・不安 」 や正月などの行事の背景にある祖霊信仰やアニ ミズムが, と強 く相 関 していることか ら,死 を回避せず,死 につい 若者 に も息づいている と思われる. -5 2- 第1 9巻 第 1号 20 06年 自己の死生観 に影響 を与 えた要因は, 日本,韓 国 とも 3)菊 池和 子 :看 護 学 生 の死 生観 -Purpos e i nLi f e 「身近 な人の死」 が最 も多 く,次いで 「テ レビ ・映画」 Tes tの分析 よ り-.岩手県立大学看護学部紀 要 , 「 葬儀への参列」 であった. 「自分の病気」が両 国 とも最 2 :91 98,2000. も少ないのは,対象がまだ若い学生であ り,大 きな病気 を 4)大 山由紀子,神野良枝 :看護職 と看護学生の死生観 したものが少 ないためであろう. 「 家族の病気」 をあげた の傾向 に関す る比較研究. 日本看護学会論文集 ( 香 ものも多 く,家族や身近 な人の病気や死 は死生観 に大 き 護総合),3 4:7 577,2003. く影響することが示唆 された.「 読書」は 「テレビ ・映画」 5)糸 島陽子 :死生観形成 に関す る調査 一看護学生 と と同様 ,あるいはそれ以上に生 と死 について考 えるきっか 大学生の比較 -,京都市立看護短期大学紀要,30: けを与 えて くれる.最近の若者は本 を読 まな くなったと言 1 41 1 47,2 005. われているが,教員 は死生観形成 に役立つ ような本 を推 6)麻野幸子 ,尾崎 フサ子 :看護学生 の死生観 一他学 薦 した り,感想 を話 し合 う機会 を持つべ きであろう.「 講 部の学生 との相違 ∴ 日本看護学会論文集 ( 看護総 義」 と 「 実習」 に関 しては,「 実習」 は両国に差はないも 合),36:5025 04,2 005. のの 「 講義」は韓 国が有意 に低かった.韓 国は日本 より 7)平井啓,坂 口幸弘,安部幸志,森川優子,相木哲夫 : も高齢化率が低 く,老年看護 に関する科 目やホスピスケ 死生観 に関する研究 -死生観尺度の構成 と信頼性 ・ ア教育, ターミナルケア教育あるいは死の準備教育が少な い11) ことが原 因ではないかと思われる. しか し, 日本 もま 妥 当性 の検証 -.死の臨床 ,2 3( 1 ):71 7 6,2000. 8)垣 田秀治,大原昌樹 ,岡田誠治,佐藤純子,国井修, だ死の準備教育が十分 に行 われているとは言 えず,学生 大島美智子,平山正美,相木哲夫 :アジア各国の死 一人ひとりが生 と死の意味について考え,意見 を述べあう 生観の違い.死の臨床, 7 :1 441 45,1 984. 9)金伯姫 :死の不安 と死生観 に関する 日韓比較研究 . ことができるような教育 を行 うことが必要 と考 える. 大 阪大学大学 院 人 間科学研 究科 修士論 文 :1 996 謝 辞 ( ht t p: //r i nro5 hus. os akau. ac. j p/ronbun/1 996/ ki mu. ht m). 本研究 を行 うにあた り,アンケー ト調査 にご協力いた だ きました長崎大学医学部保健学科看護学専攻お よび晋 1 0)道贋睦子,岡須美恵,橋本和子 ,安東勝弘,安福真 弓,名越恵美 :日本 と韓国の看護大学生の生 と死 に 州保健大学看護学部の学生の皆様 に深 く感謝いた します. 対す る意識の比較.看護 ・保健科学研 究, 4( 1): 文 1 321 ,200 4. 献 1)山崎裕二 :看護 ・医療系短大等 における 「 死 の教育 l l )小林裕子,柳原清子,清水 み どり :韓国での ター ミ 学」 の実践 ( 1 ) -「 死 に関す る看護 ・医療系学生 の ナルケアの現状 と方向性 一在宅ケア,ホス ピスケア 意識調査」 の授業- の導入. 日本赤十字武蔵野短期 をふ まえて-.新潟青陵大学紀要 , 6 :1 831 96, 2 006. 大学紀要,1 5:89 96,2002. 2)竹下美恵子,魚住郁子 ,渡辺弥生,伊藤豊美,近藤 1 2)田代隆良,永 田奏,出田順子,安藤悦子 :看護学生 里美,寺 田美恵子,潰 口高子,今井範子 :看護学生 の死生観 に関す る研究 第 3報 一領域別臨地実習前 後の比較 -.日本看護学会論文集 ( 看護総合),32: 7678,2 001 . - 53- の死生観の学年間比較.保健学研究,1 9( 1):4348, 2006. 保健学研究 Compar i s onofav i e w ofl i f eandde at hbe t we e nnur s i ngs t ude nt s i nJapanandKor e a Takayos hiTASHI ROl,J unkoI DETA2,KanadeNAGATA2, Et s ukoANDOl,でongHyukChoi 3, Bae kMyungWha4 1 De par t me nto fNur s i ng,Gr aduat eSc hoolofBi ome di c alSc i e nc e s ,Nagas akiUni ve r s i t y 2 Fo r me rSt ude ntofDe par t me ntofNur s i ng,Sc hoolofHe a l i e nc e s ,Nagas a kiUni ve r s i t y t hSc 3 Di v i s i o noHnt e r nat i onalTo ur i s m,Ji nj uHe al t hCo l l e ge 4 De par t me ntofNur s i ng,Ji nj uHe al t hCo l l e ge Abs t r ac t A que s t i onnai r es ur v e ya boutavi e wofl i f eandde at hwasc onduc t e di n1 27nur s i ngs t u- de nt si nJapanand1 91i nKor e a.' Vi e w oft hel i f eaf t e rt hede at h…f e aroft hede at h' ' and' ' pur pos ei n t hel i f e "wa shi gh,a nd' ' a voi da nc ef r om t hede at h…v i e woft hel i f e 日日 t hede at hasar e l e as e …i nt e r e s ti n t hede at h. -wasl ow i nJapanandKor e a." I nt e r e s ti nt hede at h"washi ghe ri nJapan,and" avo i danc e f r om t hede at h一 a nd" pur pos ei nt hel i f e "we r ehi ghe ri nKo r e a.I Fe aroft hede at h一 一 wass t r ongl yc o r r e l at e dwi t h. ' av oi danc ef r om t hede at h' ' .Thenu rs ewhoc ar e sf o rt hedyi ngpat i e nts houl dhaveal i t t l e 一 一 f e aroft hede at h一 一 .The r e f or e ,i ti sne c e s s ar yt ohav et heo ppor t uni t yt ot hi nkabo utal i f eandde at hi n c hi l dhood,andt oha veade a t he duc a t i onbyal e c t ur eandnur s i ngt r ai ni ngi nbot hc o unt r i e s , He al t hSc i e nc eRe s e ar c h1 9( 1 ) :4 9 5 4,2 0 0 6 Ke yWor ds v i e wofl i f eandde at h,nur s i ngs t ude nt s ,Japan,Kor e a -5 4-