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Page 1 京都大学 京都大学学術情報リポジトリ 紅

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Page 1 京都大学 京都大学学術情報リポジトリ 紅
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北欧諸国における教師教育の動向
杉本, 均; 隼瀬, 悠里
京都大学大学院教育学研究科紀要 (2008), 54: 1-23
2008-03-31
http://hdl.handle.net/2433/57042
Right
Type
Textversion
Departmental Bulletin Paper
publisher
Kyoto University
京都大学大学院教育学研究科紀要 第 5
4
号 2
0
0
8
北欧諸国 における教師教育 の動 向
杉 本
均 ・隼 瀬 悠 里
は じめに
経済協力開発機構 (
OECD)の教育委員会 は2
0
0
2
年より 「
有能 な教員 に とって魅力 ある、継続
で きる職場 と しての教職 (
以下魅力 あ る教職 〕」 とい うプロジェク トを展開 して きた。 これ は先
進諸国 において生 じた教員不足 と転職 の増加 とい う問題 を分析 す る過程で、各国において教員 に
ne
wp
r
o
f
e
s
s
i
o
na
l
i
s
m)
」とも呼ばれる新 しいにニー
求め られている機能が変化 し、「
新専門主義 (
質 の高 い教
ズに応 え る教 師教育 システムの開発 の必要 を提言 した もので あ った1。 そのなかで 「
師を惹 きっ け、発達 させ、保持 す る」活動 を分析す る取 り組 み と して、参加 2
5カ国の教師教育 シ
ステムの動 向 と課題 について、国別背景報告が出 されている。 具体的には、①給与、労働条件、
社会 的地位、②免許要件、研修 などの制度、③教員の募集 ・選抜 ・配置 の問題、④教員評価、 ス
トレス、高齢化 などの問題 につ いて検討が必要 とされて きている2。
本稿 で はこうした問題 に早 くか ら直面 して きた とともに、 ある程度 の問題解決の成果 をあげて
きた とされ る3北欧諸 国の教 師教育 の実態 と改革動 向、課題 につ いて比較分析 しよ うとす るもの
であ る。北欧諸国の教師教育 を取 り上 げ られ る理 由と して は、 まず高 い公財政支出が挙 げ られ る
4
。 こうした高税率
・高福祉 の国々がかかえ る少子化 と教師教育 の問題及 びそれ らへの対応策 は、
世界的な教育 の市場化や民営化 の流れへのオル タナテ ィブな対策 の要素 を提示す る可能性があ る
と考 え るか らである。
さ らに、先 のOECD 「
魅力 あ る教職」最終報告書 (
概要 2
0
0
5
)によれば、各国の全初等学校教
0
歳以上 の教員 の比率 はフ ィンラン ドで2
0%強であ ったが、 ス ウェーデ ン、 デ ンマー
員 に占め る5
0%を越 えてお り、 OECD諸国のなかで も教員 の高齢化 と近 い将来 の大量
クは ドイツとな らんで4
退職 の問題 が控 えてい る5。学齢児童 ・生徒数 の減少傾 向 は多 くの国で予測 されて いるが、北欧
4カ国で はいずれ も2
0
0
2
年か ら2
01
2
年 まで に後期 中等教育の生徒数 は増加傾 向にあるのに対 して、
初等 ・前期中等教育 の児童 ・生徒数 は減少傾 向を示 してお り、慎重 な教員の採用計画が必要 とさ
れ る6。他方、後期 中等学校教員 の専門職現職訓練 の参加率 (
校長回答) につ いて は、 ス ウェー
デ ンの8
0%超 を筆頭 に、 フィンラン ド、 デ ンマーク、 ノルウェーが並 び、北欧諸国が上位 を独 占
してお り、教員 の専門的資質 の向上 に対す る意識 は高 い といえ る7。
デ ンマークとフィンラン ドを ここで取 り上 げて比較 す る理 由は、 まず両国 とも社会 における教
5
年の
員 の地位 や教職 の階層構造 などが類似 していることであ る。 上記 の報告書 によれば、勤続 1
前期 中等学校 の教員 の対一人 当た りGDP相対的給与水準 は、 1
9
9
4
年 か ら2
0
0
2
年 までの 8年間 に
OECD各 国の多 くにお いて低下 して きて い るが、各国の平均給与水準 を1
.
0と して、北欧諸国 に
-1-
京都大学大学院教育学研究科紀要
第5
4号
2
0
0
8
つ いて は フ ィ ンラ ン ドとデ ンマ ー クが OECD諸 国 中 ほぼ中間 の 1
.
4と1
.
3にそれ ぞれ位 置 して い る
以外 は、 ス ェ-デ ンが 1
.
0
、 ノル ウェーが0
.
8と1
9カ国 中 の最下位 で教職 の経済 的魅 力 は決 して高
い とはいえ な い8。 (ドイ ツは1.
8
、 日本 の デ ー タな し) また教員給 与 の上昇率 につ いて、 初任給
に対 す る勤続 1
5
年 の教員 の平均給与 の伸 び率 はデ ンマークがOECD諸国 中最低 で、 ノル ウェーや
フ ィ ンラ ン ドも同 じく1
.
3
倍 に達 して お らず、北 欧諸 国 の低 さが 目立 って L
r
lた9。 (日本 は約 2
.
5
倍)
これ は教員組織 にお ける階層性 の低 さを示 す もので、一概 に教員 の待遇 の悪 さを示 す数字 で はな
いが、優秀 な教員 の長期 的雇用 への イ ンセ ンテ ィブや他業種 への流 出の防止 と言 う観点 か らは不
利 であ る と見 る こと もで きる。
一方、 デ ンマー クとフ ィ ンラ ン ドの両 国 を取 り上 げ る もうひ とっ の理 由は、両 国の教 師教育 シ
ス テム とそれ を支 え る自由 ・平等概念 が似 て非 な る対照性 を持っか らで あ る。 北欧諸国 は学校文
化 と して平等主義 的 な理念 が強 く、個 人 や機 関 の競争 をあお る近年 の新 自由主義 的 な教育改革 や
世 界 的 な教育機 関 の私事化 ・市場化 の流 れ には消極 的 な国が多か った10
。 フ ィ ンラ ン ドの競争 を
排 除 した平等主義 的 な学校文化 で の児童 ・生徒 の高 い教育 的パ フォーマ ンスや、 デ ンマー クの国
家 か ら独立 した 自由な教育理念 に基 づ く学校 づ くりの風土 とそれ を保障す る公費助成 システムな
どは、多 くの著作 ・翻訳 を通 じて 日本 に も紹 介 されて きた。本稿 は この よ うな両 国 のユ ニークな
教 育実践 を中心 に、 その実現 に果 た して い る教 師教育 の役割 とその問題点 につ いて比較考察 しよ
うとす る もので あ る。 両 国 の教 師教育 に着 冒 し、比較 を行 った論文 は管見 の限 り今 まで にない。
一方 、各 国別 の教 師教育 に関 す る報告書 は各種 あ るが 11
、教職 へ の魅力 とい う点 お よび人材養成
とい う側 面 に焦点 を当て、教員 の専門職性 とい う点 まで論及 して い る研究論文 は見 られない。
第一章
デ ンマークの教師教育
デ ンマークの教育 システム
1.初等 ・中等教育
第一節
4
6
万人
デ ンマ ー クは九 州 とほぼ同 じ面積 の国土 に5
(
2
0
0
7
年推計) の人 口を持 っ、 アイ ス ラ ン
ドを除 けば北 欧 で もっと も小 さな国 で あ る。 人 口増加率 は年 0
.
4
%で あ るが、 近 い将来学齢人 口
の減少 も予測 され てい る。 デ ンマー クの教育 システムは、子 ど もの 7歳 の誕生 日を迎 え る年 の 9
月 か ら始 ま る初 等 教 育 と前 期 中 等 教 育 が 、 9年 間 一 貫 の 国 民 学 校 (フ ォ ル ケ ス コ - レ
Fo
l
ke
s
ko
l
e
) と して統合 されて い る。 この 9年 間 が義務教育 で あ るが、原則 と してその間 ク ラス
編成 が変 わ らず、 ク ラス担任教員 が固定 され る とい う特色が あ る。
国民学校 の就学前 に 6歳 か ら 1年 間 の就学前 ク ラス と修了後 に は第 1
0
学年 の継続 ク ラスが附属
4
%
して い る。 両者 は義務 で はないが、 ほ とん どの子 ど もが就学前 ク ラスか ら入学 し、卒業後 は6
の子 ど もが第 1
0
学年 ク ラスに在籍 して い る
。
授業料 は国民学校 にお いて無償 で あ り、私立 やオル
タナテ ィブ学校 に対 して も、 国民学校 の子 ど も一人 当 た りの教育 コス トの7
5
%に相 当す る補助金
が支給 されて い るので、 さほど大 きな教育負担 で はないが、 これ は国民全体 によ る世界最高水準
の税負担 によ って支 え られ て い る12。
国民学 校 にお け る教員一 人 当 た りの児童 ・生徒数 は1
0
.
7
人 で、 日本 の2
0
.
3
人 の約半分、 フ ィ ン
ラ ン ドの 1
6
人 よ りも少 な く、 OECD諸 国 の中で最 も少人数 の クラス編成 を維持 して い る
-2-
(
2
0
0
2
年
杉本 ・隼瀬 :北欧諸国における教師教育の動向
ただ しデ ンマ- クは前期 中等学校 も含 むが他 は初等学校 のみ)o平均 クラスサイズにつ いで もデ
ンマークの国民学校 は1
9.
1
人で、 日本 の2
8.
8人 は もちろん、OECD平均 の21
.
8人 よ りも小 さい13.
1
6
歳 か らの後期中等教育 レベルは一般教育 コース と職業教育 コースに分 かれ るが、前者 に国民
学校卒業者 の5
4%、後者 に42%、 あわせて9
6%が後期中等教育 に進学 してい る14。(
2
0
0
0
)高等教
育 - の接 続 を想 定 す る一 般 教 育 コー ス に は伝 統 的 な 3年 間 の進 学 課 程 で あ る グ ム ナ シオ ム
(
Gymnas
l
'
u
m)で、 カ リキ ュラム毛
ま学術 的で課程修了後、後期 中等教育卒業試験 (
ST支) を受
ける。 グムナ シオムに進学 しなか った者 や成人 に高等教育機会 を開 くために高等教育準備試験 が
HF-HQj
e
r
e
あ り、 そ の 準 備 の た め の 2年 間 の 全 日制 課 程 が 高 等 教 育 準 備 試 験 コ ー ス (
Fo
Tb
e
r
de
l
s
e
ks
a
me
n) と して グムナ シオ ムな どに併設 されて いる。 高等教育 や教員養成 カ レッジ
に進学 す る もののおよそ2
5% はこのル- 卜を通 っている.
一方職業教育 コ-スには、上級商業試験 コース (
HHX-HQ
j
e
r
eHa
nde
l
s
e
ks
a
me
n) と上級技
術試験 コース (
HTX-HQ
j
e
reTe
knl
'
s
kEks
a
me
n)が あ り、 いずれ も 3年 間 の コースを提供 し
ている。 その ほか、教員や他 の教科 の資格 を持っ者 がオープ ン大学 で教員養成科 目を取 る ことが
で きる。 費用 は学生負担 であ るが、 1科 目か ら通常 クラスや特別開設 コースな どで主要科 目を さ
らに追加 す る機会が得 られ る15。
2.高等教育
デ ンマークの高等教育 には大学、各種専門職 スク-ル、教員養成 カ レッジ、高等教育 セ ンター
(
CVU後述)、看護 ス ク-ルな どがあ り、 1
2
年間 の教育 を受 け、後期 中等教育修了試験 (
STX)
か前述 の高等教育準備試験 (
HF) に合格 した ものが進学す る。 これ らの教育機関 は就業年限 に
よ り短期 サイ クル (1- 3年 間の非大学型高等教育機関)、 中期 サ イ クル (3- 4年間 の非大学
型高等教育機 関)、長期 サイ クル (5年 間以上 の大学型高等教育機 関で大学 院修士課程 も含む)
の 3コースに分類 されている。 2
0
0
0
年現在で高等教育 プ ログラムを修了す るのは同世代 の4
4%で、
その うち 9%が短期 サイクル に、 2
3%が中期 サイ クルに、 そ して 1
2%が長期 サイクルを修了 して
いる16。
長期 サイ クルの第一段階 は大学 にお ける 3年間 の学士課程 (
Bac
j
e
l
or
■
S
)で1
80
ECTSs
相 当の単
位 を履修す る. デ ンマ-クには これ まで大学 が 1
2
校 あ ったが、 2
0
07
年 1月 に以下 の 8校 に統合 さ
れている。 す なわち、 コペ ン- -ゲ ン大学、 オーブス (
Aa
r
hu
s
)大学、南 デ ンマーク大学、 オー
ルボー (
Aa
l
b
o
r
Bj 大学、 ロスキ レ大学、 デ ンマーク工科大学、 コペ ンハ ーゲ ンビジネスス クー
ル 、 コ ペ ン- - ゲ ンI
T大 学 で あ る 。
デ ンマ ー ク教 育 大 学
(
Da
nma
r
ks Pae
d
a
go
g
7
'
s
ke
Unl
'
v
e
r
s
l
'
t
e
t
) は 2000年 1月 に 伝 統 的 な 王 立 教 育 研 究 学 院 (
Royal Dani
s
h Sc
hool of
Educ
at
i
onalSt
udi
e
s
) を中心 に 3校 の合併 によ り2
0
0
0
年 1月 に設立 され、 デ ンマー ク唯一 の教
育大学 と して高等教育研究 と大学 院 コース (
修士 と博士) の提供 を行 な って きたが、 2
0
07
年 1月
の合併でオー フス さビジネススク-ル とともにオ-フス大学 に統合 された17.
デ ンマー クの大学 院 の修士課程 はポ ロ-ニ ヤ ・プ ロセス (
EU域 内の大学学位標準化政策 を含
む高 等 教 育 にお け る欧 州 圏構 築 の過 程 ) の影 響 を受 け、 2
00
4年 に整 備 され、 博 士 候 補 課 程
(
c
andi
dat
e
sde
gr
e
e
) と呼 ばれ る 2年 間の課程 で 1
2
0
ECTS相 当の単位履修 を行 な う。 (医学課程
は 3年 間 1
8
0
ECTS,獣 医課 程 は 2年 半 1
5
0ECTSで あ る) そ の後 は 3年 間 の博士 課 程 (
Ph.
D.
-3-
京都大学大学院教育学研究科紀要 第 5
4号
d
e
g
r
e
e
)で 1
8
0
ECTS相 当の単位履修 の課程 であ る
.
2
0
0
8
ただ し一部大学 院課程 は博士候補課程 と博
士課程 5年間一貫 である18。
この ほか に1
1
校 の教員養成 カ レッジ (
Se
ml
'
nanu
m)が存在 してお り、
修了者 に教育学士号 を授与 して い る。
2
0
0
1
年 の改革
4年制 の教員養成課程
(
省令 2
0
0
0-4
8
2
)によ り一部 の教員養成 カ
レッジと社会教育学院、技術 ・保健 カ レッジ、 その他 の健康関連高等教育施設 な どを統合 し、 2
2
校 の高等教育 セ ンター
(
CVUCe
n
t
e
rf
o
rHi
ghe
rEd
u
c
a
t
i
o
n)が導入 され た (
2
0
0
4
年 ). C
VU
は国家 の財政補助 を受 ける独立 (
私立)機関で、 フォルケス コ- レの教員養成 を行 な うとともに、
次 の機能 を担 っている。 す なわ ち、 (
1
)異 な る職種 の養成機 関の協力強化 し、 (
2)専門的 ・職業 的
志 向を持っ高等教育機関で あ り、 (
3
)複数 の機関 を統合 す る ことによ って よ り広範 囲で強固 な教
育環境 を創造 し、 (
4)国内全域、大学都市以外 の地域 に も教育 を普及 し、 (
5〕基礎教育 と継続 ・補
完教育、専門的訓練 ・実習 を結合す ることによ り教育 的発達 を促進 し、 (
6)教育活動 と発達活動
における研究 を結合 させ る19、 ことを 目的 と している。
3.独立学校 と公費助成
デ ンマークで は就学義務制 を とっていないので、必ず しも子 ど もを公教育学校 に通 わせ な くて
もよ く、児童 ・生徒数 に して 1
2
% (学校数 で 2割) の子 ど もが約4
6
0
校 の独立 (オル タナテ ィブ)
1%程度 の子 ど もは家庭 などのホームスクールで教育 を受 けている。 デ ンマークに
は正規学校以外 に多様 な独立学校が あ り、国家 の教育規制 を受 けないのに、前述 のよ うな7
5
%ま
での校費助成 システムがあ るため、土地 ・建物 な ・理事会 などを持 ち、非営利組織 で2
8
人以上 の
学校 に通 い、
児童 ・生徒が いることなどの条件 を満 たせ ば、 自由な教育思想 や実践 に基づ く学校 を容易 に設立
す ることがで きる。
民衆教育 の父 N.
F.
S,
ゲル ン トゲィ
(
Gr
un
d
t
v
i
g)の思想 を くむ
「
生 のための学校」系が最 も多
く、独立学校児童 ・生徒 の3
6
%を 占めて い る。 初等学校 の フ リース コ- レ (
Fn'
s
ko
l
e
)が 2
2
0
校
とその中等教育版 エ フタス コ- レ (
Ef
t
e
r
s
ko
l
e
)
、成人 のための フォルケホイス コ- レ (
Fo
l
ke
h-
〆
j
s
ko
l
e
) など、 自由なカ リキ ュ ラムの もと試験 や単位制 を拒否 し、資格 を与 えず、全寮制 で教
師 と学生 が共同生活 を して学 ぶ学校 と して国外 に も広 が っている。 その ほか小規模教育実践 と し
て は革新 的な リレス コ- レ4
7
校、保守的 な レアルス コ- レ9
8
校が あ り、 シュタイナー学校、 モ ン
テ ッソー リ学校 な どの外来思想系学校 や外 国系学校 も多数 あ る. 現在 デ ンマー クはオル タナテ ィ
ブ教育 を受 ける生徒 の比率 は世界で最 も高 い と推測 されている20。
デ ンマークは以上 のよ うな独立学校 などへの公費助成 もあ り、 OE
CD諸国 のなかで最 も多 くの
児童 ・生徒一人 当た りの公財政支 出教育費 を負担 して い る国であ り、 2
0
0
2
年 で初等 ・中等教育 に
7
,
7
1
8
米
ドル、高等教育 に1
4
β6
4
米 ドルを支 出 していた。 これ はOE
CD諸 国の平均、初等 ・中等教
育 の5
,
6
4
3
米 ドル、高等教育 の8
,
3
2
2
米 ドルをはるかに上回 っている (日本 はそれぞれ6
,
0
1
6
米 ドル、
4
,
8
6
2
米 ドル) また公財政支 出に占め る教育費 の割合 も1
5
.
3
%(
2
0
0
2 初等 ・中等 ・高等教育) で
OECD諸 国の平均 1
2
.
9
%やよ りか な り多 くな ってお り、 (日本 は1
0
.
1
%)フ ィンラン ドの 1
2
.
7
%も
上 回 っている21。
-4-
杉本 ・隼瀬 :北欧諸国における教師教育の動向
第二節 デ ンマ-クの教師教育
1.教員養成
9
9
3
年以降、公務員 の身分 を維持す る
デ ンマークの公立学校教員 は従来 は公務員 であ ったが、 1
校長 を除 いて、 グループ契約 による自治体雇用 の身分 とされている. 教員資格 は規定のプ ログラ
L壷T
e
T
e
ks
a
me
n
)に基づいている
ムを履修 し、要件 を満 たす ことによって授与 され る免許制度 (
2
2
。
義務教育 レベルの教員養成 は高等教育 にお ける中期 サイ クル と分類 され る教員養成 カ レッジ
CVU) において養成 され、 その資格 は高等教育学位 との同時取得、 すな
や高等教育 セ ンター (
c
o
nc
ur
r
e
ntmo
de
l
) であ る。 一方、後期 中等教育 レベルの教員 の養成 は、高
わち学部並行型 (
等教育 における長期 サイクルに分類 され る大学型 の教育機関で専門学位 を取得後、大学院 におい
て給与支給 の もと教員養成 コースを履修 して教員資格 を取得 す る、 いわゆ る学位取得後付加型
(
c
ons
e
c
ut
i
v
emo
de
l
) である23。 近年、 この教育免許制度 の二重性 を解消 しよ うとす る改革が進
CVU) な どを中心 に統一 教員養成 システ ム 〔
Uni
f
i
e
dTr
a
i
ni
ng
行 中で、 高等教 育 セ ンター (
Sys
t
e
m)が計画 されている。
(1)就学前教育教員
9
9
2
年 に整備 され、教員養成 カ レッジにおける 3年半 の就学前幼
就学前教育教員 の養成制度 は1
稚園 ・保育所教員 コースの修了が必要 とされ る. 履修科 目は、教育学 ・心理学関係が3
0
% 社会
科 ・保健科 目が2
0
%、 メデ ィア ・音楽 ・体育 ・芸術 ・工芸 ・ドラマ ・環境教育などが4
0
%、 コ ミュ
0%とな っている。 採用 され るまで に教育実習 として予備実
ニケ- ション ・管理運営関係科 目が 1
2
週間 と 6ヶ月の本実習 を 2回行 わ なければな らない。修了 まで に卒業論文 かプ ロジェク ト
習1
0
週間程度) の提出が必要 とされ る24。
(
通常 1
(2)初等 ・前期中等教員
9
9
8
年 に改訂 され、教員養成
義務教育である初等 ・前期中等教育 レベルの教員養成 システムは1
4
週間の教育実習 を含んでいる.教員養成 デ ィプ ロマ ・
カ レッジにおける 4年間の コース と合計2
プ ログラムは 4年間の コースで 2
4
0
ECTSを履修 す る。 必修科 目は宗教教育 と哲学 (
0
.
2
単位,1
2
ECTS)
、主専攻 としてのデ ンマーク語 も しくは数学 (
0
.
7
単位 ,4
2
ECTS)
、 フォルケス コ- レで
0
.
5
5
単位 ,3
3
ECTS)
、主専攻 に関連 した学部
教 え られてい る主要教科 の中か ら 3科 目任意選択 (
論文 (
0.
1
5
単位 ,9ECTS
)
、教育学科 目と しては一般教授法、心理学、教育学、社会 にお ける学
0
.
7
単位 ,4
2
ECTS)
、教育実習 (
0
.
6
単位,3
6
ECTS)であるo主要 4科 目にはデ ンマーク
校 など (
語、数学 のどち らか もしくは両方、 そ して以下 の科 目の中か ら 2- 3科 目を選択す る。 すなわち、
人文科 目と して は、外国語 と してのデ ンマーク語、英語、 フランス語、 キ リス ト教 ・宗教学、社
会科学、 ドイツ語 など、 自然科学科 目として は、生物学、物理 ・化学、地理、科学 など、 その ほ
か実技 ・芸術
美術、家政学、織物 デザイ ン、木工、体育 ・スポーツ、音楽 の選択科 目がある25。
理論的 にはすべての教員がすべての学年 (1年か ら1
0
年) のすべての科 目について教 え ること
がで きるが、実際 には選択 された 4つの専攻科 目につ いて教育資格 を持っ と考 え られてい る。 教
員 の採用 は学校理事会 と校長 を含 む地方 自治体 が最終決定 を行 な う。
教育実習 は通常 の小学校 や前期中等学校 でカ レッジとの個別的な合意 (
契約) に基づ いて行 な
-5-
京都大学大学院教育学研究科紀要
第5
4号
2
0
0
8
われ る。 生徒 はカ レッジでの教材費 は負担 す るが、授業料 は無償 で あ り、 さ らに毎月4
,
3
7
6クロー
ネ (
約9
2
,
5
0
0円)相 当の教育援助 が支給 され る。 国家予算 の枠 内で それぞれの カ レッジが相互 に
連絡 を取 りなが ら入学定員 を決定す る。 入学選考 は後期 中等教育終了試験 の成績 も しくは職業経
4
0
0
人 のおよそ1
0%は経歴 や学習能力評価 に基づ いて入
験記録 を総合 して行 な う。 毎年入学 す る4
試 が免除 され る26。
教育省 は教育経歴 の異 な る人材 を教職 プ ログ ラムに誘導 す る ことを希望 してお り、 カ レッジは
その入学選考 にお いて よ り柔軟 であ るよ うに指導 されてお り、外 国で教育 を受 けた生徒 のための
評価 セ ンター も設立 されて い る。 3つ の教員養成 カ レッジが通信課程 を提供 してお り、週末 の対
面授業 や ゲル-プ作業 を含 めて、 イ ンタ-ネ ッ トベ-スの通信 で授業や ガイダ ンスが提供 され る。
要求 内容 や修学期 間 は通常 の もの と同様 で あ る。在籍者 の うちの 5%の生徒 が通信課程 で学 んで
お り、教職 と学 習が組 み合 わ され た コ-ス もあ る。
教員養成 カ レッジの教員 の8
5%は大学 も しくはデ ンマ-ク教育大学 (およびその前身) にお い
5%は現職訓
て授与 され た修士号 を取得 して い るが研究経験 のあ る者 はほ とん どいない。残 りの1
練 を経 た国民学校 (
義務教育学校) の教員資格 で あ るが、 このケ-スの多 くは非学術 的科 目担 当
の場合 で あ る27。
(3) グムナ シオム (
一般後期 中等教育) と独立学校
グムナ シオ ムや一般後期 中等学校 の教員資格 (
終身) を得 るには、最期 サ イ クル に分類 され る
l
'
v
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l
'
f
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) にお いて 4年 間 (近年 は 3年半) の学士課程 を履修 し、 主
大学 (Un
ら
岳F
l
専 攻 2科 目
近年 は 1年半)大学 院 の短期 コ-ス にお いて教員免許
にお いて学士号 を取得 し、 さ らに 2年 間 (
コ-スに合格 し修了 しな くて はな らない。 その過程 で 2つのマイナ-専攻 、教 育理論 と現職教育
実習 を修了す る必要 があ る。 後半 の教員免許 コ-スへ の在籍 は、雇用 とみな され、在籍者 には給
与 が支給 され る。修了後の グムナ シオ ム等へ の配 置 は教育省 が行 う28。
独立学校 (
オル タナテ ィブ学校) の教員 にな るために教員資格 は必須 の要件 とはな ってお らず、
教員資格 を持 って いない教員 に対 して も公費助成 か ら給与 が 出せ るよ うにな って いる。 都市部 の
5%の教員
大規模校 には資格保持者 が比較 的多 いが、 中等教育 レベルの エ フタス コ- レで は、約 8
が資格 を持 ってお り、 もって いない場合 は芸術家 や職人 などの場合 が多 い29。
高等教育 レベルの独立学校 にはその内部 に 自前 の教員養成課程 を持っ もの もあ るが、 1
9
4
9
年に
これ らの独立学 校 の教育 を統一 して養成 す るため に 自由教育大学 (プ リ- 昏レ- ラ-ス コ- レ
FF
j
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J
壷Fe
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S
ko
l
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)が設立 されて い る. 20歳以上 で あれ ば ほ とん ど入学資格 は問 われず、試験 や選
位 はな く、 5年 の課程 を修了す ると独立学校 の教員 や国民学校 の教員資格 も取 ることがで きる30。
空曹敏鼻緒辱
デ ンマ -クの教員人事 は基本 的 に空 き定員 に対 して公募 が行 われ、正規採用教員 と期限付 臨時
教員 (3ヶ月以 内) があるが、正規採用教員 の場合、 2年間 の試補期間ののちに正規採周 され る。
人事異動 の制度 はな く、校長職 な どへ の任周 は特別 の免許制度 によ らず中央 の業績審査 を経 て決
定 され る。 副校長 や ガイ ダ ンス ◎カ ウ ンセ ラ-な どは教職 キ ャ リア と しての位 置づ け られて はい
7
歳 であ るが 7
0
歳 まで就労 が可能 で、正式採用 ののちは免許 の更新制 はない31。
な い。定年 は6
-6-
杉本 ・隼瀬 :北欧諸国における教師教育の動向
教員組織 にお ける給与階梯 や職 階 につ いての伝統的な意識 は基本的 に平等主義的 な ものであ っ
た.学校 にお ける校長 の地位 も同一職種 のなかの筆頭 (
apn'
m usl
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TPare
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) とい う認識 で、
教職 にお ける昇進 とい うもの は教員 の第一 の関心 で はなか った。一般的な昇進 ルー トは、教頭 ・
校長 への昇任
昏
地域教育局 な どへ の採用、 図書館 ・I
CT機関 の役員 であ り、 中 には地方教育局 や
教育省へ の コンサル タ ン ト、 カ レッジの講 師、教科書 の出版 や教育関連企業 の設立 などに関わ る
場合 もあ る32。
2
0
0
0
年 の新給与体系 の導入 によ り、機能 べ-ス手 当て と卓越 した教育賞 が設定 され、教員募集
や確保 な どの様 ざまな領域 で、教員 の給与 と雇用 の条件 を調整す る可能性 が生 まれた。給与 は地
域 の市場 に連動す るよ うにな り、教員 と しての訓練か ら就職 へ の移行 を容易 に した。 これ によ り
労働 時間 に も柔軟性 が もた らされ、初任者 の事情 を考慮す ることがで きるよ うにな り、教育付加
を減 らす ことによ り、就任直後 の シ ョックを緩和す ることも可能 にな った33。
同年 にデ ンマークの各職種 にお ける生涯所得 の比較調査が行 われたが、生涯 の可処分所得 は製
造業 の1
0
0に対 して国民学校 の教員 は97、幼稚園保育士 8
7
、看護士 は9
2
、実業家 は1
3
3であ った.
こう した給与面以外 に も教職 に関す る国民学校教員 の多 くは、労働時間 と自由時間 の区分 が不分
明で あることやス トレスが多 い ことなどが考慮 されていない と感 じている34。
3卓継続訓練 と近年 の動 向
継続教員訓練 は 2つの形態で行 なわれ る。第一 の形態 は職業志向の システムで近年全面 的 に改
定 きれつつあ るO 第二 の形態 は通常大学 や地方 自治体、私立 セクターで提供 されて いるよ り一般
的 な システムである0 2
0
0
0
年 の総括法制 の通過 によ り、 メイ ンス トリームと継続教育 の並行的 な
システムが作 られ、 3つの レベルそれぞれに短期 サイクル (
KVU)
、中期 サイ クル (
MVU)
、長
期 サ イクル (
LVU) が用意 され、教員 は特 定 の教育 デ ィプ ロマや修士号 プ ログラムを取 る こと
がで きるよ うにな った。
デ ィプ ロマ 申プ 日グラムは通常、高等教 育 セ ンター (
CVU) で提供 されて お り、教員 の機能
ベ-ス (ガイ ダ ンスや管理運営 な ど) や科 目専門 ベース (デ ンマー ク語、数学 など) で提供 され
てい るo 標準年限 は 1年間 〔
6
0
至
∃
CTS)で、 9ECTSごとのモ ジュールで提供 され る。
大学で は 1年 間の修士課程 〔
6
0
ECTS) と して提供 されてお り、 その上 の博士候補 プ ログラム
は 2年間で、 1
2
0
ECTSで提供 されている350 2
0
0
2
年 には教員 の不足 と他職種 の グループが教職へ
の ア クセスを容易 にす るため に教員資格 プ ログ ラム (
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e
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f
i
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ogr
a
mme
) が設
置 されて いる。 教員養成機関採用 2
5
%に対応 して 1
2
0
0
人 の生徒 が入学 したが、教員組合 は これが
二組 の教員養成 ル- 卜にな る危険性 を指摘 している36。
まとめ
デ ンマ-クは F
幸福度」世界一 といわれ る社会 37で もあ り、 平等主義 的教育理念 の強 い風土 で
も知 られてい るO このよ うな社会 で は教員 の職階や給与 が階層的 ・格差的 に設定 され ることに抵
抗 が あることは理解 で きる。 しか し、 その ことは社会 のなかでの教職 の経済的な魅力 と言 う点 で
は不利 に働 く可能性 もあることを指摘 した。
またデ ンマ-クは 「ゆ とり教育 の発祥 の地 」ともいわれ るよ うに38、家庭 の教育方針 を尊重 し、
-7-
京都大学大学院教育学研究科紀要 第 5
4号
2
0
0
8
保護者 の学校参加が積極的で、子 どもの 自由意志 を尊重す る教育風土があ り、比較的 カ リキ ュラ
ムの統一 された公立学校 において もかな り自由度 の高 い個別的な教育実践 を実現 してい る。 ま し
て保護者 など自 らが学校 を企画 し、国家の規制 を受 けない学校運営が行 われているフ リースコレなどの独立学校で は、教育内容や方法 はさ らに多様 な もの となる。
しか し学習者 にとっての 「ゆ とり」 は必ず しも教育者 にとっての 「ゆ とり」を意味 して いない。
自由で多様 な教育 は、放任 で無責任 とい うことで はないな らば、子 どもへの きめ細かな配慮 と個
別 のカ リキュラムメニューを用意す る必要 を伴 っているO さ らに筆記試験 についてあま り高 い価
値 を置かないとい う風土 は、成熟 した余裕 のある社会 の指標で もあるが、同時 に筆記試験 に代 わ
る質的な教育評価が求 め られ るとい うことを意味 してい る。 筆記試験 はある意味、文字社会 にお
ける省 エネルギーの試験 (
評価)で もあるのであ って、 これ に代 わ る質的評価 の実施 は教育負担
と してははるかに大 きな負担 を教員 に課 して いるといえ る。
したが って デ ンマークのよ うな理想的な教育環境 に近 い学校 において、教員 は必ず しも理想的
な職務環境 にいるとい うわ けで はな く、 またすべての教員が理想的 に気高 い教育意欲 を持 った教
員で はないとい う現実 において、教職 の経済的魅力の低下や、労働負担 やス トレスの多 い職務環
境 は、教員の転職 ・離職、採用難 などの問題 を引 き起 こす要素 を抱 えている。 教師教育 システム
自体 に も、 日本で は戟後消滅 した、教員養成 カ レッジ (
師範学校) と大学 の二重 の養成体系や、
並行型資格 と大学院付加型資格 の並存 による教育資格 の複雑化 と競合状況 も見 られ、近年 よ うや
く統一養成 システムへの統合 の試みが始 ま ったばか りで もある。
このようなデ ンマークにおいて も2
0
01
年の中道保守政権の誕生以来、新 自由主義のイデオ ロギー
や私事化 ・市場化 の動 きも見 られ るが、教師教育 の場面 において も、 その専門職的養成 をよ り学
校現場 に責任 を置 いた形 で教員養成機関 とのパ ー トナー シップを形成 しよ うとい う動 きもあ る。
また教員の給与階梯 を年功序列 か ら脱 して、役職手 当、優秀者への褒章 や業績連動手 当てを導入
す る試みが検討 されている39. しか しこのよ うな改革が従来 のデ ンマークの教育 の長所 を もか き
消す よ うな結果 にな らない ことを期待 したい。
第二章
フ ィンラ ン ドの教師教育
第一節 フィンラン ドの教育
フィ ンラ ン ドは、 1
5
歳 を対象 に した 「経済協力開発機構 (
OECD)生徒 の学力到達度調査」
(
PI
SA)において、 2
0
0
0
年、2
0
0
3
年共 に好成績 を収 め、 その教育が世界 の注 目の的 とな っている
。
また、 フィンラン ドは 「
世界経済 フォー ラム」 で行 った国別 の 「国別競争力比較」で もこの 4年
間で 3度 も 1位 に ランキ ングされ る40な ど、高 い経済競争力 を保持 してお り、 それ には教育が果
2
0
万人 と少 ない この国で は、優 れた人材 を
た している役割が大 きい。 資源 が少 な く、人 口 も約 5
育成す ること、つ ま り、教育が何 よ りも重要 な課題である。
フィンラン ドがPI
SAで成功 を収 めた理 由 と して、 フィンラン ド教育省 は、教育 の平等性、無
償性、地方 の裁量 の大 きさ、社会構成主義的 な学習理念 に基づいていることなどと共 に、教員 の
質 の高 さを挙 げていた。 また、 フィンラン ドで は、職業 と しての教師の人気 も高 く、社会的地位
も高 い41。 昔 か ら、教 師 は、人 々に知識 を与 え導 く存在 であ ることか ら、暗闇の中 に明か りを照
-8-
杉本 ・隼瀬 :北欧諸国における教師教育の動向
SAでの成功 の一
らす ロウソクに例 え られ、 「国民 の ロウソク」 と称 されて きた42。 本章 で は、 PI
要因 に挙 げ られている、教員の質 の高 さに着 目 し、質が高 い とされ る背景 は何であるのか、 また
その整合性 を明 らか にす ることを目的 とす る。 同時 に、 フィンラン ドで、教師の社会的地位が高
い背景 を探 ることも目的 とす る。
フ ィンラン ドの教育 システムは、就学前教育 (
pr
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hoole
duc
at
i
on)、義務教育段階で あ る
bas
i
ce
duc
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i
on)、一般後期 中等教育 (
ge
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ye
duc
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on) と職
基礎教育 (
業後期 中等教育 〔
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ondar
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duc
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i
o
n) か ら成 る後期 中等教育 と高等教育
で構成 されている。
就学前教育 は、翌年か ら基礎学校 (ベルス コウル Pe
ru
s
ko
u
l
u
)に入学す る 6歳児 を対象 に し
た教育であ り、就学 のための準備 に重点 を置 いている。就学前教育 はデイケアセ ンター (
幼稚園)
や基礎学校 に附設 されてい る就学前 クラスで提供 されて いる。 子 どもに就学前教育 を受 けさせ る
か否 かは、保護者 の任意 であるが、地方 自治体 には希望す るすべての 6歳児 に就学前教育 を提供
す る義務 がある。 2
0
01
年 の 8月 1日か ら全ての就学前教育が無償で提供 され るよ うにな り、全て
の 6歳児 の9
3%以上が就学前教育を受 けている43。
基礎教育 は、基礎学校で行われている普通教育で あ り、 フィンラン ドに住む全ての子 どもは、
7歳 になると義務教育 を受 けなければな らない。他 の方法で同等 の教育 を受 けることも可能で あ
るのだが、実際 にはほとん ど全 ての フィンラン ドの子 どもが基礎学校 を修了す る。 義務教育 は従
来 の 9年間の基礎教育課程 を修了す るか、義務教育 を受 け始 めて1
0
年間で修了す る。 フィンラン
ドで は、 9年間の義務教育 を終 え、本人が もう少 し勉強 したい と思 った場合や、内申書 の評価 を
上 げたい と思 った場合 に もう 1年基礎教育 を延長す ることがで きる。 授業料、給食共 に無償であ
m以上離 れた場所 に住んで いる生徒 の交通費 は支給 され る。 1
9
9
9
年か ら初等教育
り、学校 か ら 5k
と前期中等教育 の区分 が廃止 され、 9年一貫 の基礎教育 とな ったのだが、初等教育 と中等教育 に
分 けていた今 までのや り方 は根強 く残 ってお り、実際 には 6 ・3制 とい って も過言 で はない、 と
されている44. 公用語 の フ ィンラン ド語 とス ウェーデ ン語 の教育 は分 けて提供 されてお り、全体
の約 6%が スウェーデ ン語系の学校であ る。 私立学校 は 1%強 しかな く、 ほとん どの学校が公立
であ る45。
一般後期 中等教育 は、基礎学校 か らの教育 に基礎 を置 く一般教育課程であ り、単位制で無学年
制 の形態を とってい る。 カ リキュラムは 3年 を目安 に作成 されているが、生徒 は自分 の進度 に合
わせて早期卒業 もしくは、延長 (
最大 4年間) して卒業す ることも可能 である。一般後期 中等教
育 は、中央機関で実施 し、 そ こで採点 され る大学人学資格試験 を受 けて修了す る。 一般後期中等
教育 の修了 と大学人学資格試験 の合格 は、高等教育 と職業教育 の特定 の研究 プログラムを受 ける
資格 となる。
高等教育 は、大学 (Yl
l
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) とポ リテ クニ ク (
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)
で構成 されている。 フィンラン ドでは、 1
6
歳 で義務教育 を終 え ると高等学校 と職業学校 にわかれ
て 3年間勉強 し、 さ らに高等教育機関へ と進学す る。
高等教育機関 は、総合大学 が 1
0
校、単科大学が 1
0
校 (うち工科大学 :3校、経済 ・商業大学 :
3校、芸術大学 :4校)、職業教育 に重点 を置 くポ リテクニ ク2
8
校 46、夏季大学 が 2
1
校、 防衛大
2
月中旬、春学期 は 1- 5月中旬
学が 1校 あ る47。大学 は 2学期制 を とってお り、秋学期 は 9-1
-9-
京都大学大学院教育学研究科紀要 第 5
4号
2
008
で ある。 学士課程 で は少 な くとも 3年 か けて 1
2
0
単位 を取 り、学士号 を取得 し、修士課程 で は少
6
0
-1
8
0
単位 を取 り、修士号 を取得 し、博士課程 は 4年以上か け
な くとも 2年 か ら 5年か けて、 1
て博 士 号 を取 得 す る。 専 攻 に よ って は博 士 号 を取 得 す る前 に修 士 号 と博 士 号 の 中 間学 位
(
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e:2年) の取得 も可能 で あ る。 医学、歯学、 獣 医学 で は特別 な職業修
士課程 と して 6年以上か けて、 それぞれ専門の学位 を取得す る。 ポ リテクニクで も教育省か ら認
可 を受 けた学位 プログラムを提供 してお り、 3年半か ら 4年 か けて、専 門学位 を取得す る。
フィンラン ドでは、 2
0
世紀後半か ら、初等学校 の教員養成 の場 が大学 に移 り始 めた。 この こと
9
6
8
年 に国会 で、 6年間の初等教育 と 3年間の前期 中等教育 を提供す
が起 こった背景 として は、 1
ベルスコウル)法案が可決 された ことがある48。 基礎学校 の設立 を機 に、
る、 9年間の基礎学校 (
ヘル シンキ大学 のマステ ィ 。 コスケ ンニエ ミィ
教授 を会長 とす る 「
教員養成審議会」 の答 申を受
9
7
1
年 に教 師教育改革法が成立 した。「
教員養成審議会 」で は、以下 に挙 げ る 5つ の原則
けて、 1
を定式化 した49。
第 1に、初等教育及 び中等教育の教師教育を大学 に移す ことが挙 げ られた。 それによ り、教師
教育 の学問的水準、初等教員 の教科指導力、中等教員 の教育学的水準 の向上 を図 ることと した。
第 2に、教師教育を標準化す ることが挙 げ られた。基礎 的な教育 を通 じて、 また後 の継続 的な学
習 によって補完す ることが可能 な、総合的で統一的な免許 を付与す る制度 に改め、すべての種類
の教師の教育 を対等 な もの と して組織 し、他の学問の諸領域 に、 よ り接近 した もの とす る ことと
した。第 3に、教育学 の学習を改めて重視す ることが挙 げ られた。具体 的 には、教 師の教育学的
な専門性 を高 め ること、理論的学習 と実践的学習 の統合 を図 ること、 そ して、教育学 的学習 と教
科的学習 とのよ りよい統合 を図 ることとされた。第
4に、教師教育 は、社会的 ・教育的課題 を広
くカバ ーすべ きであ ることが挙 げ られた。第 5に、教師教育が継続的 に行 われ るべ きであ ること
が挙 げ られた。将来、 さ らな る教師教育 の質的 ・量的需要が増大す るので、すべての教 師 に 5-
7年 ごとに教育 のための研究休暇を与 え ることが必要 であ るとされた。
9
7
4
年 にはすべての初等教員の養成が大学で行 われ るよ うにな った。従 って、義
これによ り、 1
務教育段階の全 ての教員が、総合大学教育学部で養成 され るよ うにな り、教員養成 の完全一元化
がなされた。 そ して、 1
9
7
9
年 には初等教員 の教員資格が修士 レベル (
教育修士) にまで引 き上 げ
られた。 とい うの も、 ち ょうどこの時期 に学士号 が廃止 され、大学 の基本学位が修士号 にな った
か らであ る (しか し、 1
9
9
0
年代半 ばか ら学士号 は復活 し出 した50)。 これ によ り、教師教育 にお
ける教育学的研究 の役割 と広が りが増 した。 また、 この ことが、初等教 師教育が高等教育 で最 も
人気 のあ る学問分野 となることに大 きく貢献 した51。
フィンラン ドで就学 の義務化 が行われたのは1
9
2
1
年 と遅 く、 それ まで中等教育以上 の教育 は、
農民 ・下層市民 に対 して はほとん ど浸透 していなか ったに も関わ らず、 1
9
世紀前半か ら中等教員
の養成 は大学 で行 われてお り、初等教員 も中等教育であ る師範学校で行 われていた。従 って、教
員 を志願で さる者 は限 られた階層であ ったであろ うことが推測で き、 このよ うな歴史的背景 も、
フィンラン ドで伝統的 に教員 の地位が高 い と言われている所以であることが窺 え る。
-
10 -
杉本 ・隼瀬 :北欧諸国における教師教育の動向
第二節 フ ィンラン ドの教師教育
1.大学 における教員養成
1
校52で教師教育が提供 されている。 この うち一つの大学で は、 スウェー
フィンラン ドで は、 1
デ ン語で教育が提供 されている。 教師教育 は、教育学部や教師教育学科だけでな く、他の学部 で
も受 けることがで き、大学 は教育実習 を行 うための教師訓練校53を運営 している。 大学で は、以
下 に挙 げる 5つのゲル-プを対象 とした教師教育を提供 してお り、その資格 は学部並行型である。
第
1に、主 にデイケアセ ンターでの早期幼児教育 に従事 し、就学前教育 を担当す る場合 もある
幼稚園教師である。 第 2に、主 に基礎教育課程 の 1-6年 (
初等教育 レベル) での全ての教科 を
教 え、就学前教育 を担当す る場合 のある、 クラス担当教師である。 第 3に、基礎教育課程 の 7-
9年 (
前期中等教育 レベル) または一般後期 中等教育で、単教科 もしくは、複教科 を教え る、教
科担当教師である。第 4に、特別教育 を必要 とす る生徒 を教 える、特別教育教師である。 第 5に、
基礎教育課程 や一般後期中等教育で、教育的指導や進路相談を受 け持っ生徒 カウンセラーである。
ちなみに、職業教育 に関わ る教員養成 は、 ポ リテクニクと連携 している、職業教育教師大学で行
われている。本章で は、一般基礎教育、一般後期中等教育 の教育 を担 っている、 クラス担当教師
及 び教科担当教師 に焦点 を当てて、その選抜過程か ら大学での教育 内容、 そ して採用 され るまで
の流れを概観 し、 その特色 を抽出す る。
(1)選抜過程
0
倍 の志願者が
フィンラン ドで は教員 は大変人気 のある職業 であ り54、教育学部 には定員 の約 1
集 まるとい う55。 クラス担当教師 と教科担当教師の選抜過程 は異 な る。 クラス担 当教師への志願
者 は、後期中等教育 を終えて大学入学試験 に合格す るか、 3年間の基礎職業資格 を得ているか、
もしくは外国で同等 の教育 を受 けた と判断 され ることが必要 とされ る。 選抜過程 は二段階か ら成
る。 まず、第 1の選抜過程で は、大学入学試験 の成績、後期 中等教育修了証書、成績書、 そ して
テ ィ-テ ンゲ ・ア シスタン トなどの活動経験が考慮 され る.第 2の選抜過程で は、大学独 自の個
別試験が課 され る。 この試験 は、指定 テキス トか らの出題試験、筆記試験、適性試験、個別面接
と集団面接、 そ して大学 によっては模擬授業や集団討議などのグループ活動 などが課 され る。 適
性試験を行 な うことは、 フィンラン ドの教員養成 の選抜過程 において、重要 な特徴 と考え られ る。
9
6
7
-1
9
7
2
年 に開発 された
適性試験 で は、 1
「
DPAヘル シンキ」 と呼ばれ る 「教師適性診断法」
に基づいて、 「
(
授業 での)作業や責任 の分担、生徒 のグループ分 け」「
教師の柔軟性」「
生徒の参
加」「目標 に関連 した行動」 など、 8つの観点で適性 をチェ ックされ る
。
教科担当教師になるためには、教科 に開通 した学部 に入学 した後、別個 に在学 中、 もしくは修
士課程 を修了 してか ら、教員養成 に関す る学科で提供 され る、教科担当教師の教授 ・教育学課程
に志願 しなければな らない。選抜 は、適性試験 と指導教科の学習状況を基 に行われ る。 い くっか
の教科 (
特 に数学、 自然科学、言語学)で は、大学-入学 して、直接、教科担当教員養成 プ ログ
ラムへ申 し込 む、 という課程 もある。 これ らの教科では、教師への志願者が不足 しているか らで
あ る。
(2)教員養成段階の教育 内容 について
-印
1-
京都大学大学院教育学研究科紀要 第 5
4号
2
0
0
8
養成段 階の教育 内容 につ いて は、 フィンラン ドにお ける教員養成 の一般的 な特徴、主 な原理 に
つ いて概観 した後、 クラス担当教 師 と教科担 当教 師 につ いて、 それぞれ別 に説明す る。
教授学 (
pe
dagogy) の知識 内容 は、教 師が生徒 を可能 な限 り広 く発達 させ るため に、十分 皮
ものでなければな らない とされている.主 な学問分野 は、一般 の、 または教科 での問題 に関わ る、
教授法である。 教育心理学 や教育社会学 も重要 な分野 であ る。 また、教師教育 の意図 は、教師が
学校活動 内で 日々生起す る問題 を、理論 的な知識 に基づ いて解決で きるよ う、理論 と実践 を十分
に結 びっ ける ことであるとされている。 すべての教師教育 の根本 的 な 目標 は、能力 あ る教 師を養
成 し、生涯、教師がそのキ ャ リアを全 うす るために必要 な専門性 を発達 させ ることで あるとされ
てお り、 この 目標 の背景 には、養成段 階での教師教育 でのプ ログ ラムに欠 陥があ ると、実 際 に教
師 にな ってか らで は修正 す るのが難 しい とい う信念が あるとされて いる。 教師 と しての専 門性 の
基礎 は、教員養成段階 に養 われ ると考 え られてい る。
また、 フィンラン ドの教 師教育 は、人格 的 にバ ランスの取 れた教 師を養成す ることを狙 いと し
てお り、学生 が、教授学的思考 をカ リキ ュラムの中で行 うことも重視 して いる。 そ して、教育学
の課程 の中で は、教育学理論 ・教授学 的知識 内容 ・教科 の教授法 と実践 の大 き く 3分野 に分 け ら
れ る。 これ らは相補的 な相互作用 を してお り、教育学 的研究 の中で、常 に強調 され る姿勢 は、研
究志 向 (
r
e
s
e
ar
c
hbas
e
dappr
oac
h)
5
6 で あ る。 この課題 は、結果 的 に必修 とされ る修士論文 に
結 びっ く。 研究志向的教師教育 の狙 いは、毎 日、 または直観 的理性 的あ るいは 日常 的 な議論 に基
づ き、 教 育 学 的 判 断 を す る能 力 を与 え る こ とで あ る 。 研 究 志 向 的 思 考 (
r
e
s
e
ar
c
hbas
e
d
t
hi
nki
ng) は、教 師 は実践者 で あると同時 に研究者 であ るべ きとす る、 フィンラン ドの教 師の専
門職性 を高 め るために必要 な思考方法であ るとされて いる。 教 師 は教育実習 を通 して、 自 らの実
践 を改善 す るためにテーマを設定 し、調査 を し、実践 を行 う。 また この方法で は、 その実践か ら
課題 を見 出 し研究す るとい うサイクルを持 っので、教 師 は理論 と実践 を この中で統合 させ ること
が出来 る。
(i) クラス担当教 師の養成
クラス担 当教 師 は、 教育学 を専攻 と して、 3
0
0
単位 57の修士課程 を履修 し、修士号 を取 得す る
(1単位当た り、約 2
7
.
5
時間 の学習相 当であ る)o カ リキ ュラムは、語学 とコ ミュニケー シ ョン、
教育学、教授法 に関す る科 目、教科 に関す る科 目、副専攻科 目、 自由選択科 目、 そ して教育実習
で構成 されて いる。 これ らを修了す るには、約 5年 を要す る。 教職課程履修者 が留意すべ きとさ
れている事項 は、教育 に関す る科学 的理論 を修得 し、実際の教育活動への適用 を させ ること、 そ
して人 間の成長全般 と教 師 と学生 との相互 のや りとりに精通 す ることであ る。教育学 のカ リキ ュ
ラムは、基礎 レベル、 中級 レベル、上級 レベルの 3段階 に分 け られ る0
基礎 レベルでは、講義 ・グループ討論、文献講読 を通 じて、教育 と学校活動 についての理論的
・
概念的側面 を学ぶ。 また、教育 の社会学 的 ・文化 的基盤 や人格 の発達過程 につ いて も学 ぶ。 さ ら
に、教育研究調査 および、研究調査法入門 を履修 し、大学付属 の実習施設 においての参与観察 や
学級運営 に関す る予備 的な調査 をす る。
中級 レベルで は、教職 につ いての理解 を深 め る学習、 さ らに、教育 の理論 と実践 や教育方法、
生徒 の心理学 的 。社会学的 アセスメ ン トにつ いて も学ぶ。同時 に、統計方法や研究調査方法 につ
いての学習 も行われ る。 この レベルで は、 プ ロセ ミナー活動が、実習 と理論研究 をっ な ぐ重要 な
-
12 -
杉本 ・隼瀬 :北欧諸国における教師教育の動向
役割 を果 た して い る58。 学生 は、個人、 も しくはペ アで プ ロジェク トを準備 し、 研究計画 を立 て
る. プ ロセ ミナーの 目的 は、実践 的 な研究技術 を発達 させ る ことで あ る.学生 は、 セ ミナーにお
いて各 自で研究計画 を発表 し、 お互 い にその計画 の適合性 につ いて、議論 し、評価 す る。 プ ロセ
ミナー活動 は、教育実習 と密接 した関係 で あ る。
学生 は、基礎 レベルの始 めに、大学付属 の教 師訓練校 を訪 れ、総合学校 の低学年 の生徒 に慣 れ、
or
i
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i
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ac
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i
c
e
教 師活動 を体験 す る。 中級 レベルで、 学生 は入 門実践 イ ンター ンシ ップ (
i
nt
e
r
ns
hi
p) と呼 ばれ る もの に参加 す る。 学生 は一人、 も しくはペアで、約 2週間普通校で働 く。
彼 らは、 ア シス タン ト教 師 と して授業 を観察 した り、彼 ら自身 で授業 を した りす る。 彼 らは、参
加 した学校 の地域 の カ リキ ュラムやその学校 で の評価方法 を体験 して い く。 実習 の省察手段 と し
て、 ポー トフォ リオを作成 す る。学生 には、結果 を分析 す るために実習期 間の 目標 を立 て ること
と、実習 中の活動 を記録 す ることが求 め られ る。 ポー トフォ リオを書 く上 で重要 な要素 とな るの
は、生徒 の心理 的所見 で あ るが、見解 や洞察 な ど も含 む。最後 に実習 につ いての レポー トを作成
す る。 中級 レベルで は、指定 テキス トか らの出題試験 もあ る。 各学生 は、 3- 4冊 の専 門文献 を
読 み、答 えを査定す る試験官 の質 問 に答 え る。
上級 レベルは、 3つ の分野 で構成 され、研究 プ ロ ジェク ト、指定 され た上級専 門 テキス トか ら
の出題試験、 そ して教育実習 に分 かれて い る 研究 プ ロ ジェク トは、 プ ログラムの実践 的 な側面
。
と理論 的 な側面 を深 め、統合 させ るよ う意図 されて い る。 研究 プ ロ ジェク トの活動 は、調査 の前
後 に 2つ のセ ミナーで行 われ る。 最初 の セ ミナーで は、学生 は自分 が選 んだ研究課題 につ いて、
確認 され た理論 的背景 や参 考文献調査 の結果 を提示 し、 問題 関心 や デー タ収集方法 の要点 を書 い
た研究計 画 の レポ- トを発表 す る. そ して、参加者 はその レポー トに基 づ き、研究 の意義 や有効
性 につ いて議論 す る。 2つ めのセ ミナーで は、調査 によ って明 らか にな った ことを報告 し、 それ
につ いて再 び議論 す る. この段階 で は、学生 はすで にデ ー タ収集 を終 えて いるO そ して、議論 や
0
-1
2
0ペ ー ジ程度 の修士論 文 を準備 す る。修士論文 は もちろん各 自
デー タを踏 まえて、学生 は8
で書 くのだが、 デ- 夕収集 や文献調査、 デ・
-夕分析 な どはペアや グル ープで行 って もよい.学生
は論文 のテーマを 自由 に設定 す るのだが、 テ-マの多 くは、生徒 の学習 や教師 の仕事、学校独 自
の カ リキ ュラム設定 な どの学校 間題 を扱 った もので あ る。 学生 の一部 はすで に学科 で行 われて い
る研究 プ ロジェク トに参加 す ることがで きるが、 たいて いの学生 は独 自にテ-マを設 定 し、指導
教官 と接触 しなか ら、研究 を進 め る。 教育実習 の個人 の経験 か ら、 テーマを設定す ることも可能
であ る.研究方法 は、量 的方法 よ りも現象学 的技術 や ア ク シ ョン ・リサ ーチな どの質的方法 が採
用 され る傾 向が強 ま ってい る。 テキ ス ト出題試験 で は、学生 は リス トア ップされ た、国際的 に有
名 な文献 の中か ら現在関心 の あ る 4冊 を選 び、試験 の準備 をす る。 講義 によ って は、 その内の 2
冊 は講義 を受 ける ことによ って免 除 され る場合 もあ る。
3
0
0
単位取得 し、修士論 文 が受理 され、
試験 に合格 す る と、学生 に修士号 が授与 され る。
(i
i〕教科担 当教 師 の養成
0
0
単位 の修士課程 を (
学士
教科担 当教 師 は、 自分 が教 え る予定 で あ る教科 を主専攻 と し、約 3
5 6年 で修了 す るO学生 は、大学 2年生 の時 に教職 を取 るか否か を決 め る. 教職 を
5
8
単位 を
取 る ことを選択 した学生 は、 3年次 か ら教育学 を学習 す る 主専攻 で は、少 な くと も1
要す る学習 が行 われ る 付 け加 えて、副教科 の学 習が6
0
単位必要 とされ る 基本 的 な教授科 目に
を含 めて)
-
。
。
。
一一
13
-
京都大学大学院教育学研究科紀要
第5
4号
2
0
0
8
は、 「
母語 と文学」、 「
外 国語」、「宗教」、 「
歴史」、「社会学」、 「
生物」、「
地理」、「
心理学」、「哲学」、
「数学」、 「
物 理学」、 「科学」、 「コ ンビュ- タ-」、 「家政学」、 「
被服」、 「
技術」、 「
体育」、 「
音楽」、
そ して 「
美術」 が あ る。 そ して、単位 の山 部 と して、 あ るい は追加単位 と して教科担 当教 師向 け
s
ub
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go
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c
als
t
udi
e
s
)を教科 の学習 と平行 して、 学士過程 と
教授 ・教 育学 (
0単位履 修す る。教授 ・教育学 で は、教授法 を強調 し、 あ らゆ るタイプの学校
修士課程 を通 して6
で教 え るための、一般教 育学 的技能 を提供 す る。 もちろん、 ここには教育実習 も含 まれ る。 この
教 授 ・教 育 学 は、
1-1
.
5
年 で修 了 し、 目標 は、教職 の専 門性 を発達 させ る ことで あ る
。
教授 ・
教育学 の構造 は、大体 どの大学 で も似 て い るのだが、 それぞれの特徴 が あ る場合 もあ る。 ここで
は、 ヘル シ ンキ大学 での単位構成 を以下 にみて い く59。
ヘル シ ンキ大学 の教科担 当教 師向 けの教 授 。教育学 は、学士課程 にお いて2
5
単位 か ら成 る 2つ
の学習 ユニ ッ ト及 び、修士 課程 にお いて3
5
単位 か ら成 る 2つ の学 習 ユニ ッ トの計 4ユ ニ ッ トで構
成 されて い る。 学習 ユ ニ ッ ト 1 (
1
5
単位) で は、生徒 は発達 ・学 習心理学 (4単位)、特 殊教育
学 (4単 位)、教科 教授法 1 (7単位 ) を学 ぶ。教科教授法 は、応 用教育学科 に所属 してお り、
各教科教授 法 につ いて研究 してい る教授 陣 も しくは講 師 によ って提供 されて い る。 教科教授法 に
お いての専 門知識 につ いて は、各教科 の学部 で提供 され る場合 もあ る。 学習 ユニ ッ ト1の 目標 は、
対話 を通 じた相互作用 の技術 を学 ぶ こと、 教 え る 。学習す る ・習得 す るプ ロセスを よ く理解す る
1
0
単位) で は、教
こと、教 科 を教 え る際 の注意点 を学 ぶ こと60とされて い る。 学習 ユ ニ ッ ト 2 (
科 教授法 2に当 た る 「
教 育方法 と教育計画」 ゼ ミ (3単位) と基礎実習 (7単位) を行 う。 教科
教 授法 2の ゼ ミは、教授 プ ロセ ス及 び教育 内容 の計画 を作成 す るスキルを習得 す る ことを 目的 と
してお り、学 習 ユ ニ ッ ト 1での学習 内容 を実践 に移 す ための準備 を行 うとされて い る。 基礎実習
で は、延 べ で 7週 間、学生 は教 師訓練 校 や地域 の学校 で、教 え る ことや学校生活 や学校活動 に慣
れ る。 授業 だ けに留 ま らず、教育実習生 が行 うことは、授業 に関連 す る全 ての職務 の経験 であ る。
学習 ユニ ッ ト 3 (
1
7
単位) で は、教育 の社会 的 ・歴史 的 ・哲学 的基礎 (5単位) と教科教授法 3
に当 た る 「カ リキ ュ ラム作業 と学習 と教育評価」 ゼ ミ (7単位) と応用実習 (5単位) を行 う。
学 習 ユ ニ ッ ト3の 目的 は、学校教育 の社会 的 ・哲学 的意義 を理解 す ること、職業 モ ラル、平等、
寛容 ・忍耐 につ いて、 また教育評価 や学 習 障害 の予 防 と対処 につ いて学 ぶ ことで あ る61とされて
い る。教科教授法 3のゼ ミで は、様 々な レベルのカ リキ ュラムの作成方法 を学 び、 また、 ケース ・
ス タデ ィを通 して実践 的 な教授法 や教育
卓
学習 の評価方法 につ いて も学 ぶ。応用実習で は、 ヘル
0
0
の指
シ ンキ大 学 が運 営 す る教 師訓練校 や応用教 育学科 が指導教 員 と して認 めた教 師が い る約 1
定校 や各教育機関、企業、公的機 関な ど様 々な場 で行われ る。 これ らの取 り組 みの背景 には、 フィ
ンラ ン ドの教 員養成 は、 ただ教 師 を育成 す るだ けで な く、様 々な社会環境 で対応 で きる リーダー
1
4
単
シ ップに富 ん だ人材 育成 もね らい と して い るか らで あ る62とされて い る。学 習 ユニ ッ ト 4 (
位 ) で は、教科教授 法 4に当 た る 「
研 究者 と しての教 師」ゼ ミ (6単位) と教 師訓練校 での上級
実 習 (8単位) を行 う。 ゼ ミで は教授方法 に重点 が置 かれ ると共 に、専 門的 な教育学 の修得 を 目
指 して、教科教 育 の発展 に寄与 す る研究者 と しての教員 の育成 をね らい と して い る。教科研究 に
関 す る先行研究 を十分 に踏 まえ た上 で、研究論文 の作成 も行 う。 上級実習 で は、基礎実習 での内
容 を さ らに高度化 した もの とな り、 さ らに、 家庭 ・学校 ・地域社会 の協力関係 やその他 の学校 を
め ぐる協 力関係 の ネ ッ トワー クの理解 も目指 され る63。
--1
4-
杉本 ・隼瀬 :北欧諸国における教師教育の動向
以上か ら教科担当教師であ って も、教育学 を非常 に重視 し、 またゼ ミ活動 を通 して デ ィスカ ッ
ションを活発 に行 い、指導技術 を磨 き、実習 を頻繁 に行 っていることが分か った。 そ して、 その
教科教育 の研究者 た る教員 を育成 しよ うと している姿勢 も窺えた。 この ことが フィンラン ドでの
教職 の専門職性 に寄与 しているのであろ う。
2.採用 につ いて
フィンラ ン ドでは、教師のポス トに空 きが出 ると、後任の教師の公募が始 まる。 日本 と違 い、
卒業見込 みで は応募 は出来ず、大学 を卒業 していることが条件 とな っている。 公募 の情報 は、新
聞や学校 の ウェブサイ トや関連機関の ウェブサイ トな どを通 して、当該地域 のみな らず、全国規
模で公示 され る。 ちなみに公立学校の教師 は地方公務員 と して、地方公務員法 に基づいて採用 さ
れ る。 地方 自治体 によって採用方法 は異 な るのだが、 ここで は学校 レベルで採用が行 われ る場合
に行 われ る。 それに加 えて、
につ いて述べ る。 志願者 の選抜 は、志願者が書 いた応募書類 を中心、
校長 による面接等が行われ、最終面接 は教 師や父兄の代表者で構成 され る学校役員会 によ って行
われ、採用者 を決定す るとされている64。採用 は公正 に行 われねばな らず、差別 は禁止 されてい
る。 志願者 は求 め られ る資格 を有 していない といけないのだが、 3年以内で必要 とされ る教授学
を修了す るとい う条件で、求め られる資格 を満 た していない志願者 を採用す ることも可能である。
ただ し、修士号 を有 してい ることが条件 である65。雇用形態であるが、卒業 したばか りの志願者
は、各 自の受 けた教育や資格 に応 じて、終身雇用 か固定期間雇用かパ ー トタイム雇用 を選択 して
志願す る。
1
9
9
0
年代 に、国民 の内部での移動が弾みを得て、 フィンラ ン ドの北部や東部 か らヘル シンキな
どの中心部へ、多 くの人が移住 した。 この人 口の流れ は、教育現場 にも大 きく関わ り、地方で は、
子供 の数 や労働人 口が減少 してい る。 教師 は、 自分 の大学 の地域 や出身の地域で職 を求 め る場合
が多 いので、地方 に とって は、 その地域 の大学 の人気 を高 めることや、都心部 と変わ らない行政
サ- ビスやイ ンフラを整備す ることが求め られ る.
3.現職教師教育 と教師教育の抱える課題
(1)現職教師教育
多 くの現職教 師教育が、大学 や教育省 や国家教育委員会等 によ って提供 されている。 フィンラ
ン ドにおいて、現職教師教育 の 目的は、教 師が個人を発達 させなが ら、職務 を実行 させ ることで
ある。教職員 は、公務員 のための労働協約 に基づいて、勤務時間の他 に最低 2-3日間の現職 ト
レ-ニ ングに参加す る権利が与 え られている。 この タイプの継続教育 は、無償で提供 され、給与
主 に地方 自治体) にある。 この訓練 の実施 内容 や
も与 え られ る。 予算 の責任 は、教師の雇用主 (
方法 の決定権 は校長 にある。 労働協約 に基づ いた現職 トレーニ ングでの典型的なテーマは、教授
科 目の内容や カ リキ ュラムに関す る課題 も含 み、情報機器 の教育学 的利用やその時々の関心、
のあ
る特定 のテーマが設定 され る.地方 自治体 は各 自で訓練 を提供す るか、 もしくは大学 やポ リテク
ニクや民間の現職教育訓練校 などに訓練 を委託す る。 しか し、調査で は、約 3
.
5
%の教師が この
労働協約 に基 づ いた訓練 を受 けていない66。 このよ うに、統一的な現職教師教育 は存在 して いな
い ことが分か る。. また、教師が 自主的な現職 トレーニ ングに参加す る際 には、学校側か ら金銭 的
-1
5-
京都大学大学院教育学研究科紀要
第5
4号
2
0
0
8
な支援 を受 け る場合 もあ る。 勤務 時間内 に どの教 師 に研修 を受 け させ るのか、 また有給 で受 けさ
せ るのか、 そ して交通 費等 の補償 をすべ きか な どの判 断 は、校長 に任 され る。 現職教 育訓練 へ の
参加 が直接 的 に教師 の給与 や キ ャ リアに関 わ ることはない67。
1
9
9
6-9
8年 に行 われ た調査 6
8によ る と、教 師集 団別 をみ る と職業教育、初等 教育、 中等 教 育 の
8.
6日と最 も多 い.一方 、初等
中で は職業教育 に携 わ る教 師 の現職教 師教 育 へ の平 均参加 日数 が4
教育 に携 わ る教 師の平均 日数 は2
6日で あ り、 中等教育 に携 わ る教 師 の平均 日数 が2
5日と最 も少 な
い 。
また この調 査 によ ると、 ス ウェーデ ン語 を母語 とす る教 師 よ り もフ ィ ンラ ン ド語 を母語 とす
る教 師 の方 が、参加 日数 が多 く、地方 の教 師 よ り も都心部 の教師 の方 が、 参加 日数 が多 い こと も
分 か って い る。 現職教 師教育 への 出資 をす るのは、主 に地方 自治体 (
41%) で あ るが、教 師 と地
方 自治体 が共 同で出資 (
2
4%) す る こと もよ くあ る69。 先 の調 査 で は、大学 や ポ リテ クニ ク、 そ
Na
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i
onalCe
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of
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i
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して教 育 学 の専 門性 発 達 の た め の ナ シ ョナ ル eセ ンター (
De
ve
l
opme
nti
n Educ
at
i
on) で提供 され る コース は高 い参加 率 で、 人気 が あ り、各 コース は大
体 1- 5日間で修了 で き、短期 間 の コースが好 まれて い る。
フ ィンラン ドの現 状 と して、現職教 師教 育 につ いての情報 が乏 しい ことが挙 げ られて い る。 最
近 の労働協約 に基 づ いた地方 自治体 によ る現職 トレーニ ングの コス トや内容 や参加率 につ いて の
情報 は収集 されてお らず、 もちろん教 師が各 自で負担 して行 って い る現職 トレーニ ングに関 す る
デ ー タ もな い 。 国家教育委員会 は、 国 の予算 で賄 われて い る現職教育 につ いて、毎年 の コス トや
参加者 の反応及 びデー タにつ いて監視 して い るだ けで あ る。 この よ うに フ ィンラ ン ドで は、現職
教 師教育 につ いての研究 が手薄 で あ り、今後、現職教 師教育 につ いての有 効性 や内容、 そ して体
系 的 な評価法 につ いての研究 が十分 にな され ることが求 め られ る。
(2)教 師教育 の抱 え る課題
教 育省 が 2
001
年 に策 定 した教 師開発 計 画 (
Te
ac
he
rEduc
at
i
on De
ve
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opi
ng Pr
ogr
am) に よ
る と、教 師教育 にお いて、選抜過程、教授学 の学習、現職教 師教育 の 3つ の部 門 での発展 の必要
性 を示 唆 した。 具体 的 に述 べ る と、選抜過程 で は、学生 の教職 に対 して の適性 と動機付 け と責任
感 を向上 させ るために、 よ り発展 させ る必要 があ る と大学 や ポ リテクニ クに対 して勧告 して い る。
教授学 につ いて は、様 々な学 習者 に対応 す るため に、 よ り発展す べ きだ、 とされて い る。 また、
現職教 師教育 は教 師の 「
燃 え尽 き」 を妨 げ るため に も、教員各 自の専 門性 を向上 させ るため に も、
よ り様 々な コ-スを提供 し、拡充 され るべ きだ、 とされて い る。
量 的 な課題 と して は、 フ ィ ンラ ン ドにお いて も日本 と同様 に、教 員 の大量退職 70が挙 げ られ る
。
20
0
0年 か ら2
01
0年 の十年 間 に全部 で 2万 人以上 の教 員 が辞 め る とされ71
、 教員 の拡充 が求 め られ
て い る。 教 員 の質 の低下 を防 ぐため に も、優秀 な人材 を集 め る必要 が あ る。 しか し、最近、教員
にな った と して も、 す ぐに辞 めて転職 して しま う者 が多 い72ことや男子学生 を中心 と した教 員志
望離 れが問題 と して挙 げ られて い る。 その背景 と して は、教員 の給料 の低 さが挙 げ られ る73。 フィ
ンラ ン ドの教員 の給 与 は同様 の学歴 を持 っ国家公務員 よ りも低 く、 OECD諸国 の平均給与 よ りも
若干低 い。 フ ィ ンラ ン ド政府 は この課題 に対 し、能力 。実績 に基 づ く給与 の導入 を検討 して い る
7
4。
また、 移 民 問題 も課 題 と して挙 げ られ る。 PI
SAの好成 績 の背景 と して、 フ ィ ンラ ン ドが多
民族 国家 で はない こと も要 因 の 1つ と して存在 す るよ うに感 じる。 しか し、最 近 は フ ィ ンラ ン ド
-1
6-
杉本 ・隼瀬 :北欧諸国における教師教育の動向
において も移民 が増 えてお り、教員養成段階および現職教師教育 において も、移民 の児童 を指導
す るために、移民児童 を指導出来 る教員の拡充、及 び教員 に対 して多文化理解 を促進す ることや
学習困難 の排除 に努 め ることが求 め られ る。 以上 か ら、今後 の フィンラン ドにおいての教師教育
の課題 と して、教員 の質の低下 を防 ぎ、優秀 な人材の確保 のために、教員 の給与制度 の見直 しと
共 に福利厚生 も充実 させ ることと、移民児童への対応が挙 げ られ るだろ う。
まとめ
以上 のよ うな流れで、 フィンラン ドの教育、大学での教育 内容、 そ して抱え る課題 について述
べて きた。本稿 の目的 は、 なぜ フィンラン ドでは教師の質が高 い と言われているのか、 とい う疑
問 に答 え るべ く、 フィンラン ドの教師教育 の特徴 を見 出す ことであ った。
歴史的背景 か ら、以前 か ら教師の社会的地位が高か った ことが推測 され、 また、 中等教員のみ
な らず、早 い段階で初等教員 も修士号 の取得が義務づ け られた ことは、 さ らにフィンラン ドでの
教員 の社会的地位 を確固たるもの とし、 その職業 としての人気 に寄与 したであろ うことが窺 えた。
また、 フィンラン ドで は、大学 での教員養成 に大変力 を注 いでいることが分 か った。選抜過程
で フィンラン ドの特徴 と言 え るの は、教師志望者 に対 して志望動機 と適性 を重視 していることで
あ る。 本 当に教師 にな りたいのか、 そ して向いているのか とい う双方 を考慮す ることは、将来教
師 にな った時 にモチベ- シ ョンを維持で きるか、 そ して生徒 たちを管理 で きるか、 とい うことに
関わ る。途中で教職課程 を止 め る場合 の代替措置 もきちん と確立 されている。 そ して教育 内容 で
特徴 と言 え ることは、最初か ら最後 まで 「
研究志 向」が課題 とされていることである。 生涯教師
とい う仕事 を遂行す る上 で、専門性 を更新す る基礎 を築 くことが 目的 とされ る。 また、教育実習
も単 に教 え ることに慣 れ る、 とい う位置づ けで はな く、各 自の実践 を行 う上での研究対象 と位置
づ けている点 も 「
研究志向」が反映 されて いる。
フィンラン ドの教師教育で課題 として挙 げ られ るのは、現職教師教育が手薄であることと主 に
教員 の量 的拡大 の必要性 と給与 の低 さである。 今 までのフィンラン ドでの教員 の社会的地位 の高
さを維持す るために も、量的拡大 の際 には質 の低下 を招かぬよ う配慮 し、教員の給与 を見直す必
要があることが分か った。
フィンラン ドの教師の質が高 いとされ る要因 は、 その選抜過程 と養成課程 にあると推測で きる。
選抜段階で教師 としての適性 のあ る人材 を選 び、養成段階で研究者 としての基礎 を身 につ けさせ
る。 修士号 を有す ることが教師の必須条件 とされてい る点 も、 よ くフィンラン ドの教師の質が高
い とされ る要因 の一つ と して挙 げ られてい る。 大学卒業者 の 7割が修士号 を有 す る75ので、 フィ
ンラン ドで は一般 的であるのだが、修士論文 を書 くことが絶対条件 とな っていて、大学入学時か
ら修士号 を修了す るまで に、大体
5-6年 かか ることを考慮す ると、教師の質が高 いとされ る要
因 にこの ことも含 まれ るだ ろう。
その質 の高 さを維持す るためには、現職教 師教育 に も重点 を置 く必要があ るだろ う。 フィンラ
ン ドにおける教師教育 は、教員養成段階 よ りも現職教師教育 に課題が多 いよ うに感 じる。 先で述
べた、現職教 師教育 に参加す る ことがキ ャ リアや給与 に含 まれないとい う点が、現職教 師教育 の
研究 に重点が置かれていない要因の一つ とも考 え られ る。 現職教 師教育が教師のキ ャリアを積 む
上で果 たす役割 について再考す る必要があ るので はないだ ろ うか。 これか らの フィンラン ドの教
-
17 -
京都大学大学院教育学研究科紀要
第5
4号
2
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8
師教育 の課題 と して は、養成段 階のみ な らず、現 職教 師教育 につ いて の研究 を進 め、 また実施状
況 も把握 し、地方 に も中心部 と変 わ らぬサ ー ビスを提供 す るよ う努 め る ことで あろ う。
おわ りに (
比較考察)
以上 、北 欧諸 国 の教 師教 育 につ いて、 デ ンマ- クとフ ィ ンラ ン ドを中心 に、 その システムの特
徴、 カ リキ ュ ラム と修 了要件、採 用
を
キ ャ リアル ー ト 。給与 システ ム、就職後 の研修 な どの側面
か ら概 観 して きた。 両 国 にお ける教 師教育 の特徴 は、北 欧 に共通 す る社会風土 と教育環境 をベ ー
スに、各 国独 自の教員養成 システム とその成 り立 ち、 カ リキ ュ ラム、修 了要件 、採用 卓キ ャ リア
ル - 上 申給与 システ ム、 就職後 の研修 システ ムな どの相違点 が、独特 の ユ ニ- クな システムを形
成 して お り、 日本 の教 師教 育制度 な どか ら眺 め る と両 国 の制度 は類似 した側面 が見 られ るが、近
寄 って北 欧諸 国 のなか で眺 め ると、 か な りの相違 を持 っ、場合 によ って は対極 的 な側面 さえ もあ
る相互 にユニ - クな システ ム と して映 って くる。
両 国 の教育制度 の共通点 は、初等教育 と前期 中等教育 をあわせ た 9年 間 の義務教育期 間 が デ ン
マ- クで は国民 学校 (フォル ケス ヨ- レ)、 フ ィ ンラ ン ドで は基礎 学校 (ベル ス コウル) と L
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一貫 した教育 の核 をな し、 その就学前 の 6歳 か らの 1年 間が就学前 ク ラス と して付設 されて い る
こと、 また 9年 間の課程 の修 了後 に も、希望者 は学校 に付設 されて い る第 1
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学年 に課 程 を延長 し
て在学 で きる点 な ど も類似 して い る。 卒業後 の後期 中等学校 の 3年 間 の課程 と、大学 な ど高等教
1
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-3-3シス テ ム上 全教 育
育機 関 で の学 士課程 が通常 3年 間 とい うこ ともほぼ同 じで (9[
レベル を通 じて公立学校 の無償教育 が原則 とされ て い る。
デ ンマ - ク とフィ ンラ ン ドに共通 す る教 育風土 と して は、平等 主義 的 な理念 が強 く、個人 や機
関 の競 争 をあお る近年 の新 自由主 義 的 な教 育 改革 や世界 的 な教 育機 関 の私 事化 ・市場 化 の流 れ に
は一般 的 に消極 的 で あ り、教育 の場面 で も極 力競争 を排 除 した平 等主義 的 な学校運営、 カ リキ ュ
ラム、児 童 。生 徒評価 が導入 されて い るとい う点 が指摘 され た。 そのなかで デ ンマ- クで はよ り
自由が強調 され、 国家 か ら独立 した自由な教 育理 念 に基 づ く学校 づ くりの風土 とそれ を保 障す る
公費助成 システムな どは、世界一高 い とされ るオル タナテ ィブ教育 を受 け る児童 魯生徒 の比率 の
背景 とな って い る0 -万 フ ィ ンラ ン ドで はどち らか といえ ば平等性 が強調 され、 すべ ての教育段
階 の公教育 が無償 で あ るだ けで な く.
、 基礎教 育学校 の教科書 ・給 食 。通学費 も無償 で あ り、所得
に応 じて様 々 な教育給付金 が用意 されて い る。両 国 と も生涯学 習社会 の推 進 に積極 的で あ り、成
人教育 や各種 の職業教育 も充実 して い る
。
一方、教 師教育 や教職 の側面 にお いで は、両 国 とも学校 にお け る教員 の職位 の差 が比較 的強調
されず、給与 にお いて も他 業種 に比 べ て格段 の優位 にあ るとは言 えず、職位 の上昇 によ る給与 の
格差 も国際的 には大 きな ほ うで はな い 。 その結果、労働 負担 や ス トレスな どを考慮 す る と教職 の
経済 的魅力 が他業種 との競争 のなかで相対 的 に劣勢 で、教員 の転職 ・離職
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一 部教科 で の採用難
な どの問題 が起 こって い る。
しか し教 師教 育、教 員養成 の システ ムにお いて、両 国 はか な り異 な った様相 を見 せ て い る。 デ
ンマ- クで は システムの統合 が遅 れて お り、教員養成 カ レッジと大学、近年 で きた高等教育 セ ン
ター (
CVU)
、 さ らに は私立 の 自由教育大学 な ど教 師教 育 を行 う機 関 が複数並 立 してお り、 それ
-1
8-
杉本 ・隼瀬 :北欧諸国 にお ける教師教育 の動 向
ぞ れ の発 行 す る免許 に就職 で き る学 校 の レベ ル に差 が あ るた め、 各 種免 許 の競 合 の問 題 や、 教 員
に対 す る免 許 に基 づ く階層 意 識 の存 在 を問 う声 もあ る。 また担 当教 科 は定 めず、初 等 教 育 課 程 で
も選 択 した主 要 4教 科 の重 点 的修 得 が求 め られ る。 教 職 科 目 との関 係 につ いて は、 い わ ゆ る学 部
並 行 型 免 許 (日本 や ア メ リカ型 ) と卒 業 後 付 加 型 免 許 (ヨー ロ ッパ 型 ) が並 立 して お り、 これ も
免許 制度 を複 雑 に して い るが、社 会 の様 々な層 か らの教職 へ の参 入 は比較 的 自由で あ る。 デ ンマ ー
クの国民 学 校 (
初等 ・前 期 中等 ) 教 員 は教 科 専 門教 員 で あ るが、 それ とは別 に ク ラス担 任 とな り、
この担 任 は
9年 間卒 業 まで変 わ らな い な ど、 児童
。生 徒 の全 人 的成 長 を観 察 で きるよ うに な って
い る。
フ ィ ンラ ン ドで は教 師教 育 シス テ ムが す べ て大学 に統 合 され、 す べ て の学 部 で教 職 課 程 が履 修
可能 で あ るが、 就学 前 教 育 以外 の教 員 に は修 士 号 を要 求 して お り、必 要 な履修 単 位 もか な り多 い。
フ ィ ンラ ン ドの教 員 採 用 時 に は教 師適 性 試 験 (
DPAヘ ル シ ンキ) が課 され る と と もに、 教 職 課
程 が研 究 志 向 的 で理 論 と実 践 を融 合 させ た修 士 論 文 の提 出が義 務 づ け られ て い るな ど、 教 員 の質
の高 さに定 評 が あ る。 フ ィ ンラ ン ドの教職 コー ス は、 大 学 に統 合 され て い るが、 入 学 後 の コー ス
選 択 にお いて基 礎 学 校 の
6年 まで を教 え る ク ラス担 当教 師 の養 成 コース と、 基 礎 学 校 の 7- 9年
お よ び一 般 後 期 中等 学 校 で単 教 科 また は複 教 科 を教 え る教科 担 当教 師 の養 成 コース に分 か れ て い
る。 標 準 履 修 年 限 も前 者 で約 5年 、 後 者 で 5- 6年 と長 く、 学 生 は大 学 2年 の時点 で教 職 を取 る
か否 か の決 断 を求 め られ る。 ま た基 礎 学 校 は 9年 間 で あ るの で、 ひ とっ の学 校 に ク ラス担 当教 員
と教 科 担 当教 員 が混 在 ず る こ とに な る。
両 国 と も近 い将来 の大 量 退 職 と少子 化 に よ る在 籍 児 童 ・生 徒 数 の現 状 が予 想 され て お り、慎 重
な教 員 採 周 計 画 が必 要 とされ て い るが、 そ の ことが教 育 の質 の低 下 を招 か な い よ うに、 そ の た め
に両 国 の教 育 の特 質 、 これ まで の成 果 が犠 牲 に な らな い よ うな教 師教 育 シス テ ムの改 革 が求 め ら
れて い る。
E引用 註 お よ び出典 】
1 二宮暗、 2
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5
、「
OECDの教員養成 に関す る政策提言」1
42-1
6
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貢、 日本教育大学協会編、『
世界の教
員養成 Ⅱ :欧米オセアニア編』学文社;新専門職性 とは① ェキスパー トであること、②知へのアクセス
方法の変革、③教科内容 に関す る専門性 とそれに見合 う教授学的ノウ- ウ、④ テクノロジーとそれを教
授学習過程 に取 り入れる能力を意味 している。 (
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、『図表でみる教育 OECDイ ンデ ィケータ(
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、前掲書、 1
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、『デ ンマークで生れたフ リースクール 「フォルケホイス
5-7
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責、新評論。
コ- レ」の世界 :ゲル ン トゲィと民衆 の大学』、 7
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、『
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幸福度」世界一 の社会か ら』生活人新書 1
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、『
競争 しな くて も世界一 フィンラン ドの教育』 ア ドバ ンテー ジサーバ ー、
2-5貢。
41 同上書、 1
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2 田中孝彦、 2
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、「
教 師教育 の改革 と教 師像 -2
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年 の調査 と研究交流 か ら -」庄井良信 ・中嶋博編
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著 『フ ィンラ ン ドに学ぶ教育 と学力』明石書店、 1
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5
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年1
1
月2
9日最
終 ア クセス)
4
7 日本学生支援機構、 2
0
0
6
、 「フィンラン ドの高等教育機関への留学」、
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年9
月6日最終 アクセス)
4
8第
2次世界大戟後、一般庶民 の中等教育 への要望 が強 ま り、 また、北欧諸 国間で福祉国家 の概念が確
9
6
2
年 に、北欧文化委員会 で、 同年 に、基礎学校 を導入 したス ウェーデ ンに倣 って、基礎学
立 された。 1
校 を導入す ることが申 し合 わ された。
4
9 田中孝彦、 2
0
0
5
、前掲書、 1
5
6-1
5
7
貢。
5
0 ポロ-ニ ャ 。 プ ロセスに基 づ く学位改革 によ り、全体 で学士 が復活 したの は2
0
0
5
年か らである0
年 には、す べての初等
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1
9
9
5
中等教員 に修士課程 の修了 が義務 づ け られ、 その時点 で修士号 を取得 していな
か った教員 に対 して は、 これを補 うための研修機会 が提供 され た。
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大学、
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大 学 、 ラ ップ ラ ン ド大 学 (
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大学 の1
1ヶ所 である。
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5
3 教 師訓練校 は全部 で 1
4
校 あ る。 h
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7
年9
月6日最終 アクセス)
5
42
0
0
4
年 にフィンラン ドの新 聞が高校生 を対象 に行 った調査 によると、教員 を志望 す る生徒 は約 2
6
%お
り、一番人気 のあ る職種 であ った。
5
5 岸本睦久、 2
0
0
5
、「
総合制学校、教育課程基準及 び優秀 な教員 によ る格差 の解消」『指導 と評価』 日本
教育評価研究会、 5
2
貢。
5
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0
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本稿 で は、 このよ うに訳 す。
5
7 フィンラン ドで は、2
0
0
5
年
8月 1日付 けで単位 の換算方法 が変更 され、 lo
v-約3
7
.5
時間か ら l
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約2
7
.5
時間 (1
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)とな った。 ちなみ に、
lo
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-1ECTSで ある
。
5
8 佐藤隆、 2
0
0
6
、「フィンラ ン ドの教 師教育 」『教育 』7
2
9
号、4
9
貢。
5
9 以下 で は、 OE
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0
0
3
C,o
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と鈴木誠 ・池 田文人 ・永井 かお り、 2
0
0
6
、「フ ィンラ ン ドの教員養
成 と研修
一化学教員養成 カ リキ ュラムを中心 に-」『化学 と教育 』5
4
巻、
4号、 2
3
5
-2
3
8
貢。
6
0 鈴木誠 ・池 田文人 ・永井 かお り、 2
0
0
6、前掲書、 2
3
6
貢。
6
1同上書、 2
3
7
貢。
6
2 同上書、 2
3
7
貢
。
6
3 同上書、 2
3
7
貢
。
6
4 永井かお り、 2
0
0
4
、「フィンラン ドの教育⑤教 師の養成 」『週刊教育資料 』8
4
7
号、 1
5
貢
6
5 OE
CD,2
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京都大学大学院教育学研究科紀要 第 5
4号 2
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42
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7
0 フィンラン ドで は、教員 の定年 は、 6
5
歳 であ る。
7
1 フィンラン ドの教員 は、 2
0
0
2
年時点 で約 6
6
0
0
0
人であ った。
7
2教員 にな った新卒学生 の 5人 に 1人が教員 を辞 めている。 また、 1
0
-1
5
%は教職課程 を履修 して も他
の職業 に就業す る。
7
3
フ ィンラ ン ドの現役教職員 の約 9
5
%が加入 す る教員組合 (
OAJ) も教員 の給与 の低 さを指摘 して い
る。
7
4 OECD,2
0
0
3
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,P.
5
4
.
7
5 篠原康正、 2
0
0
6
、「フィンラン ドの教員養成制度 」『プ ロシーデ ィンズ
学校教育研究所年報』財団法
2
頁。
人学校教育研究所、 7
(
杉本均 :比較教育学政策学講座
(
隼瀬悠里 :比較教育学政策学講座
教授)
博士前期課程 1
回生)
(
受稿 2
0
0
7
年9
月7日、改稿 2
0
0
7
年1
1
月3
0日、受理 2
0
0
7
年1
2
月1
2日)
-2
2-
Trends of Teacher Education
In
the Nordic Countries
SUGIMOTO Hitoshi & HAYASE Yuri
Widespread concern had been expressed over the roles of teacher education in
promoting the quality of national education in terms of students' academic performance,
and/or of their individual holistic development.
Education in Nordic countries with
traditional school culture dominated by an egalitarian philosophy, had attracted peoples'
attention by their unique but different approaches in their educational practices and
theories.
This article focuses mainly on Denmark and Finland and attempts to analyze
the features of teacher education systems underlying their educational atmosphere and
By juxtaposing the school curricula, deployment and
salary system, and career route of teachers, the paper draws similarities and differences
found in the two systems. Discussion then will be extended to the merits and shortfalls
of the systems and the direction of educational reforms undertaken by both the
countries from a comparative perspective.
structures of both the countries.
- 23-
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