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IFRIC解釈指針案「法人所得税務処理に関する不
2016 年 1 月 19 日 IFRS 解釈指針委員会 御中 IFRIC 解釈指針案 DI/2015/1「法人所得税務処理に関する不確実性」 に対するコメント 1. 当委員会(以下「ASBJ」又は「我々」という。 )は、IFRS 解釈指針委員会(以下「解 釈指針委員会」という。)の「法人所得税務処理に関する不確実性」に関する解釈 指針案(以下「本解釈指針案」という。)に対するコメントの機会が与えられたこ とを歓迎する。 2. 法人所得税務処理に関する不確実性の影響の認識及び測定を行う方法について実 務に観察されている不統一を踏まえ、我々は、当該実務の不統一を削減するために IFRIC 解釈指針を公表するという解釈指針委員会の取組みを支持する。 3. しかし、我々は、主に以下の領域について本解釈指針案の改善が必要であると考え る。 (1) 本解釈指針案の範囲 (2) 不確実な税務処理を集合的に検討すべきか否かのガイダンス (3) 開示要求 (4) 経過措置 4. 本解釈指針案の個別質問に対する我々のコメントについては、本レターの別紙-1 を参照していただきたい。 5. 我々のコメントが IASB による今後の検討に役立つことを期待している。ご質問が あれば、ご連絡いただきたい。 関口 智和 企業会計基準委員会 委員 IFRS 適用課題対応専門委員会 専門委員長 1 別紙 質問 1――本解釈指針案の範囲 本解釈指針案は、法人所得税務処理に関する不確実性がある状況における当期及び繰延税 金負債・資産の会計処理に関するガイダンスを示している。こうした不確実な税務処理は、 IAS 第 12 号「法人所得税」に従って当期及び繰延税金負債・資産の認識及び測定を行うた めに使用される課税所得(税務上の欠損金)、税務基準額、税額控除又は税率に影響を与え る可能性がある。 本解釈指針案の範囲の提案に同意するか。同意しない場合、理由は何か、また、どのよう な代替案を提案するか。 6. 我々は、全体的には、本解釈指針案の BC5 項から BC8 項で述べている理由により本 解釈指針案の範囲の提案に同意する。 7. しかし、利息及び罰金の会計上の要求事項については、法人所得税に係わるキャッ シュ・フローとの関連性を踏まえ、同時に検討する必要があると考えている。また、 解釈指針委員会が実施したアウトリーチの結果(本解釈指針案の BC9 項参照)とは 異なり、我々は、不確実な税務処理に関連する利息及び罰金の会計処理に関して不 統一があるというフィードバックを我が国の関係者から得ている。したがって、解 釈指針委員会が、今回の取組みの範囲を広げて、利息及び罰金の会計処理を明確化 することが望まれる。 2 質問 2――法人所得税務処理に関する不確実性の影響を、どのような場合に、また、 どのように、課税所得(税務上の欠損金)、税務基準額、税務上の繰越欠損金、繰越税 額控除及び税率の算定に含めるべきか 本解釈指針案は、企業が法人所得税申告書において使用したか又は使用を計画している不 確実な税務処理(又は不確実な税務処理のグループ)を課税当局が認める可能性が高いか どうかを検討することを企業に要求している。 税務当局が不確実な税務処理を認める可能性が高いと企業が結論を下す場合には、本解釈 指針は、課税所得(税務上の欠損金)、税務基準額、税務上の繰越欠損金、繰越税額控除及 び税率を、法人所得税申告に記載した税務処理と整合的に決定することを企業に要求して いる。 税務当局が不確実な税務処理を認める可能性が高くはないと企業が結論を下す場合には、 本解釈指針は、課税所得(税務上の欠損金)、税務基準額、税務上の繰越欠損金、繰越税額 控除及び税率を算定する際に、最も可能性の高い金額又は期待値を使用することを企業に 要求している。使用する方法は、不確実性の解消についてのより適切な予測を提供すると 企業が判断する方法とすべきである。 不確実性の影響を、どのような場合に、また、どのように、課税所得(税務上の欠損金)、 税務基準額、税務上の繰越欠損金、繰越税額控除及び税率の算定に含めるべきかに関して の本解釈指針案の提案に同意するか。同意しない場合、理由は何か、また、どのような代 替案を提案するか。 提案されている認識規準 8. 我々の議論において異なる見解があったものの、我々は、IAS 第 12 号「法人所得税」 の文脈において、不確実性の影響をどのような場合に課税所得(税務上の欠損金) 、 税務基準額、税務上の繰越欠損金、繰越税額控除及び税率の算定に含めるべきかに 関する解釈指針案の提案に反対しない。 提案されている測定の要求事項 9. 我々は、課税所得(税務上の欠損金)、税務基準額、税務上の繰越欠損金、繰越税 額控除及び税率を算定する際に、最も可能性の高い金額又は期待値を、どちらの方 法が不確実性の解消についてのより適切な予測を提供するのかに基づいて使用す ることを企業に要求することを提案する本解釈指針案に同意する。これは、我々は、 影響が解消されると見込まれる方法を測定に反映することは企業への将来の正味 キャッシュ・インフローの見通しを利用者が評価するのに役立つ財務情報の提供に 貢献することになると考えているためである。 10. また、我々は、本解釈指針案の BC22 項から BC24 項に記載された理由により、 「累 積確率アプローチ」を本解釈指針で使用すべきでないと考えている。 3 質問 3――不確実な税務処理を集合的に考慮すべきかどうか 本解釈指針案は、課税所得(税務上の欠損金) 、税務基準額、税務上の繰越欠損金、繰越 税額控除及び税率を決定するために、不確実な税務処理のそれぞれを独立に考慮すべき なのか、それとも、いくつかの不確実な税務処理を一緒に考慮すべきなのかを、判断を 用いて決定することを企業に要求している。 不確実な税務処理を集合的に考慮すべきかどうかの決定に関しての本解釈指針案の提案 に同意するか。 同意しない場合、理由は何か、また、どのような代替案を提案するか。 11. 我々は、不確実な税務処理を個々に考慮すべきか、それとも、一緒に考慮すべきな のかを、不確実な税務処理の解消についてのより適切な予測を提供することとなる アプローチに基づいて決定することを企業に要求することを提案している本解釈 指針案の提案に概ね同意する。これは、不確実な税務処理に関する不確実性の解消 は、他の不確実な財務処理に影響を与える(又は影響を受ける)と見込まれる場合 があるからである。こうした状況において、我々は、企業への将来の正味キャッシ ュ・インフローの見通しを利用者が評価するのに役立つ目的適合性のある財務情報 を提供する際に、それらを一緒に考慮する方がそれらを個々に考慮するよりも適切 となるであろうと考えているためである。 12. しかし、我々は、本解釈指針案の第 11 項で述べている集合的な評価を行うのかど うかを決定する際に企業が参考にすべきベンチマーク(すなわち、企業は、集合的 なアプローチの方が不確実性の解消についてのより適切な予測を提供するのかど うか)が、本解釈指針案の第 12 項で述べている条件(すなわち、一緒に考慮した 方が、企業が税務処理を作成し裏付ける方法をより適切に反映する場合や、集合的 な評価が、税務当局が調査の間に採ると企業が見込んでいるアプローチと整合的で ある場合、あるいはその両方である場合)と十分に整合的でないと考えている。我々 は、解釈指針委員会がこの 2 つの項の原則をより適切に合わせる方法を審議するよ うに提案する。 13. この点、我々は、本解釈指針案の第 11 項に記載されているベンチマークは、概ね 適切と考えている。これは、本解釈指針案の文脈において、不確実性が解消される ことによって将来キャッシュ・フローが生じることから、当該ベンチマークが、概 念フレームワークの OB3 項における財務報告の目的(すなわち、財務諸表利用者は、 企業への将来の正味キャッシュ・インフローの見通しを評価するのに役立つ情報を 必要としている)と概ね整合していると考えられるためである。 4 14. 他方、本解釈指針案の第 12 項の記載は、財務報告の目的とは整合していないよう に思われる。したがって、本解釈指針案の第 11 項と財務報告の目的との整合性を 明確にするように第 12 項を修正することが有用と考えられる。 質問 4――税務当局の調査についての仮定並びに事実及び状況の変化の影響 本解釈指針案は、企業に、報告された金額を調査する権限を有する税務当局は当該金額を 調査するであろうと仮定し、当該調査を行う際にすべての関連性のある情報についての十 分な知識を有しているであろうと仮定するよう要求している。 本解釈指針案は、事実及び状況が変化した場合には判断及び見積りを見直すことも企業に 要求している。例えば、新たな情報により、税務当局が不確実な税務処理を認める可能性 がもはや高くなくなったことが示されていると企業が結論を下す場合には、企業はこの変 化を会計処理に反映すべきである。税務当局が報告された金額を調査できる期間の満了は、 状況の変化の一例となる。 税務当局の調査についての仮定並びに事実及び状況の変化についての本解釈指針案の提案 に同意するか。同意しない場合、理由は何か、また、どのような代替案を提案するか。 15. 我々は、報告された金額を調査する権限を有する税務当局は当該金額を調査するで あろうと仮定し、当該調査を行う際にすべての関連性のある情報について十分な知 識を有しているであろうと仮定するよう企業に要求することを提案している本解 釈指針案に同意する。我々は、さまざまな仮定の使用が要求又は許容される場合、 要求事項の整合的な適用を確保することが困難になるとともに、認識及び測定に関 する企業の決定が恣意的になるであろうと考えている。 16. 我々は、税務当局の調査についての仮定並びに事実及び状況の変化に関して事実及 び状況が変化した場合には判断及び見積りを見直すことを企業に要求する提案に ついても、IAS 第 8 号「会計方針、会計上の見積りの変更及び誤謬」の第 34 項と整 合的と考えられること等から、本解釈指針に同意する。 質問 5――その他の提案 開示 本解釈指針案は、新たな開示要求を導入していないが、IAS 第 1 号「財務諸表の表示」の 第 122 項及び第 125 項から第 129 項、IAS 第 12 号の第 88 項及び IAS 第 37 号「引当金、偶 発負債及び偶発資産」における現行の開示要求の目的適合性を強調している。 経過措置 本解釈指針案は、企業がその要求事項を最初に適用する報告期間の期首において、比較情 5 報は修正せずに、適用開始の累積的影響を利益剰余金又は他の適切な資本の内訳項目に認 識することによって要求事項を適用することを企業に要求している。完全遡及適用は、事 後的判断を使用しないで行うことができる場合には認められる。 開示及び経過措置についての本解釈指針案の提案に同意するか。同意しない場合、理由は 何か、また、どのような代替案を提案するか。 開 示 17. 我々は、主に、この提案はどのような情報を開示すべきなのかに関して十分な詳細 を提供していないと考えていることから、開示要求に関する本解釈指針案の提案に 同意しない。我々は、開示要求が実務で整合的に適用されるよう、より容易に理解 可能となるよう IASB が提案をより強固なものとすることを提案する。本解釈指針 案の関連する各項に関する具体的なコメントは以下のとおりである。 本解釈指針案の第 19 項(IAS 第 1 号の第 122 項の参照) 18. 本解釈指針案の第 19 項は、第 11 項、第 14 項及び第 16 項で要求される、影響を決 定する際の企業の判断を、企業が財務諸表において開示する可能性がある例示とし て参照しているに留まっている。当該判断の重要性に鑑み、我々は、本解釈指針案 において、例えば「IAS 第 1 号の第 122 項に従って、企業は、本解釈指針の第 11 項、第 14 項及び第 16 項で要求している重要な判断を開示しなければならない」と 記載することによって、こうした判断に重要と考えられる場合に開示を要求するこ とを提案する。 本解釈指針案の第 20 項(IAS 第 1 号の第 125 項から第 129 項の参照) 19. 本解釈指針案の第 20 項では、企業が、行う仮定及び使用した他の見積りに関する 情報を開示すべきかどうかを決定するように要求することを提案しており、「企業 はこの決定を IAS 第 1 号の第 125 項から第 129 項に従って行う」 と述べている。 我々 は、IAS 第 1 号の第 31 項では、IFRS で要求されている具体的な開示がもたらす情 報に重要性がない場合には、当該開示を提供する必要はないと述べていることを考 えると、なぜ本解釈指針案では、こうした情報を開示することを企業に要求するの ではなく、こうした情報を開示すべきかどうかを企業が決定することを要求してい るだけであるのか定かではないと考える。 20. 重要性に関する一般的な要求事項を踏まえると、我々は、例えば、 「IAS 第 1 号の第 125 項から第 129 項に従った決定に基づき、企業は、課税所得(税務上の欠損金) 、 税務基準額、税務上の繰越欠損金、繰越税額控除及び税率を決定する際に行う仮定 及び使用した他の見積りに関する情報に重要性があるとみなされる場合には、当該 6 情報を開示しなければならない」と記載するように、この要求事項を変更すること を IASB が検討することを提案する。 本解釈指針案の第 21 項(IAS 第 12 号の第 88 項の参照) 21. 本解釈指針案の第 21 項では、企業が税務処理に関する不確実性の潜在的な影響を IAS 第 12 号の第 88 項に従って開示すべきかどうかを決定することを要求しており、 企業はこれらの税務関連偶発事象に関してどのような開示を行うべきかを決定す る際に IAS 第 37 号を参照することになると述べている。 22. 我々は、 IAS 第 37 号が偶発事象に関する有用な開示要求を設けていることには同意 するが、提案されている要求事項は、どのような情報を開示すべきなのかに関して 不明確であると考えている。したがって、我々は、同項が、税務処理に関する不確 実性の文脈において、より具体的な開示要求を示すように修文することを提案す る。 経過措置(IFRS の初度適用企業に対する経過措置を含む) 23. 我々は、経過措置に関する本解釈指針案の提案に概ね同意する。しかし、我々は、 本解釈指針案の遡及適用を可能にすることができるように、事後的判断を使用せず に関連性のある情報が利用可能なケースが本当にあるかどうかを疑問視している。 このため、我々は、解釈指針委員会が本 IFRIC 解釈指針を最終確定する前に具体的 なケースを識別することを提案する。 24. また、解釈指針委員会が、本解釈指針案の B2 項及び B3 項の記載どおりに経過措置 に関する提案が維持される場合、我々は、この経過措置に関する便益は初度適用企 業にも等しく適用されるべきと考えている。しかし、結論の根拠においては、初度 適用企業への適用可能性に対する IASB の見解は明記されていない。このため、我々 は、本解釈指針が最終化される前に、初度適用企業に対しても同様(または、類似 の)経過措置が提供されるように検討を行うことを解釈指針委員会に提案する。 以 7 上