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軟衝撃グラブによる航路の維持浚渫について 酒田港湾事務所 保 全 課
軟衝撃グラブによる航路の維持浚渫について 酒田港湾事務所 保 全 課 長 工事品質検査官 高橋 ○羽田 久雄 広希 1.はじめに 酒田港は,本港地区,北港地区,外港地区,の3地区から形成されてお り 本 港 地 区 は ,新 井 田 川 か ら の 流 下 土 砂 や 冬 期 風 浪 に よ る 漂 砂 な ど で 航 路 が埋 没 する こ とか ら,港 湾機 能 を確 保す る ため 毎 年- 10 m 以浅 の 航路 箇 所は埋没浚渫を行っている. 新井田川 耐震強化岸壁 国際ターミナル 北港地区 本港地区 土砂処分場 外港地区 埋没区域 南防波堤 北防波堤 第二北防波堤 写真-1 酒田港全景 第二次世界大戦終戦後の昭和20年9月3日に浚渫船が作業中に触雷 し 沈 没 し た 事 故 が 発 生 し て お り ,他 に も 浚 渫 作 業 中 や 探 査 中 に 機 雷 が 発 見 さ れ て い る ( 図 - 1 ). 機雷残存区域の浚渫を S52.6.18 潜水探査による機雷発見箇所 S20.9.3 阿賀丸沈没箇所 行う場合は,事前に磁気 S56.3.8 床掘中機雷発見箇所 探査を行い磁気異常物の S35.11.19 蔵王丸機雷引揚箇所 有無を確認しているが, 海底に密集していること 新井田川 から,それが機雷なのか 埋没区域 明確に判別することが困 S40.8.10 蔵王丸 250 ㎏爆弾引揚箇所 難な状況である. 図-1 機雷等の発見場所 2.機雷残存区域について 第 二 次 世 界 大 戦 末 期 に 爆 撃 を 受 け ,昭 和 2 0 年 6 月 3 0 日 に 米 軍 の B - 2 9 爆 撃 機 1 0 機 に よ る 機 雷 投 下( 昭 和 4 8 年 1 0 月 3 1 日 海 上 保 安 部 資 料 ) で 約 9 0 個 ( 内 処 分 3 0 個 , 残 存 6 0 個 )( 昭 和 4 0 年 1 2 月 8 日 付 防防1第399号で酒田港を含む酒田港近海の機雷残存海域において6 0 個 の 機 雷 が 残 存 す る .) が 投 下 さ れ た と 言 わ れ て い る . そ の 後 磁 気 探 査 等で2個が揚収されており,酒田港機雷残存区域内(図-2)の残存機雷 数は現在58個と推定されている. 本 港 地 区 お よ び 北 港 地 区 の 航 路 等 に つ い て ,冬 期 風 浪 等 に よ り 海 底 砂 の 移動 が 激し い 場所 で,一 度浚 渫 した 場所 に 機雷 の 流入 が予 想 され る 区域 と してその都度,磁気探査を実施し安全を確認してきた. さらに,昭和61年に行われた四者協議(酒田海上保安部,海上自衛隊 新潟基地分遣隊,山形県庄内総合支庁建設部港湾事務所,国土交通省東北 地方整備局酒田港湾事務所)において,南防波堤の延伸等の効果および埋 没 量 の 減 少 な ど を ふ ま え ,「 機 雷 の 流 入 が 予 想 さ れ る 」 区 域 の 見 直 し を 行 い,機雷の港内流入限界線の上流側は,過去の磁気探査および浚渫状況に より磁気探査を省略できることとした.このことにより,工期の短縮,事 業費の縮減が図られることとなった. しかし,磁気探査が省略できない区域については,磁気を帯びた基礎捨 石や 砂 鉄の 影 響で 磁気 異 常物 が 密集 して い る場 所 があ り,個 々に 撤 去す る に は 膨 大 な 費 用 と 期 間 を 要 す る .ま た ,磁 気 異 常 物 が 機 雷 の 可 能 性 も あ り , 土砂と同時に磁気異常物を撤去することのできる軟衝撃グラブを用いた 浚渫を実施することとした. 図-2 機雷残存区域 3.軟衝撃グラブとは 浚渫方法については,グラブ浚渫とポンプ浚渫があり,ポンプ浚渫の大 きな 特 徴と し て大 規模 施 工に 適 して おり ,排砂 管 設備 によ り 土砂 処 分場 へ の直接投入が可能で効率が良い点がある.しかし,施工場所における作業 船の占有区域が広くなり,グラブ浚渫と比較すると高コストとなる.グラ ブ浚渫の場合,施工規模は小さくなるが,作業船の占有区域は狭く航路の ような狭い場所での作業に適しているため,グラブ浚渫で実施している. 表-1に施工方法の比較を示す. 写 真 -2 が 一般 的に 使 用さ れ てい るグ ラ ブで あ り,写真 - 3が 軟 衝撃 グ ラブ(1.4m3)である.機雷は過去の実験により缶体に4t以上の圧 力が加わると爆発の危険があるとされている.そのため軟衝撃グラブは, 浚 渫 中 に 大 き く 硬 い も の を 掴 ん だ 際 に 油 圧 セ ン サ ー が 作 動 し ,グ ラ ブ の 刃 先力と締付力が4tになると油圧が解放されグラブが自動で開く構造と なっ て おり ,自重 も機 雷 上に グ ラブ が載 っ ても 爆 発し ない よ う4 t 未満 に 抑えられている. ま た ,グ ラ ブ の 爪 先 が 機 雷 の 信 管 よ り も 大 き く な る よ う に 作 ら れ て お り , 機雷を掴んだ際に信管に爪先が刺さって作動することのないよう設計さ れている. 浚渫 区 域の 土 質は ,締ま った 砂 質土 に粘 土 が混 ざ った 状態 の ため か なり 硬く,油圧センサーの作動によりすぐには掴めず,一度ほぐしてから掴む こ と と な る .よ っ て ,浚 渫 能 力 は 1 .4 m 3 型 で の 揚 土 量 で 平 均 2 5 0 m 3 /日程度である. 表-1施工方法の比較 土 質 浚渫能力 浚渫深度 経済性 グラブ浚渫 ○ △ 制限なし 土 量 少 ・占有区域が狭いため港口部の浚渫に適している ○ ・異常物を揚収できる ポンプ浚渫 ○ ○ 制限あり 土 量 多 ・占有区域が広く港口部の浚渫に適さない ○ ・異常物を揚収できない 写真-2 一般的なグラブ 備 考 写真-3 軟衝撃グラブ 4.工事概要 施工 範 囲の 浚 渫を 行い ,土運 船 への 積込 み 時に 格 子状 の選 別 架台 を 設け, 磁 気 異 常 物 を 選 り 分 け る ( 写 真 - 4 , 5 ). 写真-4 浚渫状況 写真-5 土砂選別状況 土運 船 に土 砂 を積 込み ,満載 に なっ た時 点 で土 砂 処分 場ま で 運搬 し バッ ク ホ ウ で の 揚 土 に よ り , 土 砂 処 分 場 へ 投 棄 し て い る ( 写 真 - 6 , 7 ). 写真-6 土運船運搬状況 写真-7 揚土状況 以 上 の作 業 を繰 り返 し 行い 所 定の 土量 を 浚渫 し てい るが ,異常 な く工 事 を終えている. 5.おわりに 本港地区での事故以来,浚渫工事前の磁気探査・異常物撤去または軟衝 撃グ ラ ブを 活 用し 工事 を 実施 し てい るこ と から ,酒田 港で の 浚渫 工 事で は 機雷による事故は発生していない. 今後も本港地区および北港地区の航路浚渫工事を実施していく予定で ある た め,こ れま での 経 験を 生 かし 事故 の ない よ う万 全の 安 全対 策 を図 り 安全・安心な船舶の航行を維持するため事業を進める所存である.