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欧州特許庁における審査期間短縮手段 1.背景 欧州出願は、日本、米国

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欧州特許庁における審査期間短縮手段 1.背景 欧州出願は、日本、米国
欧州特許庁における審査期間短縮手段
1.背景
欧州出願は、日本、米国と比較して係属期間が長い。また、欧州出願では、登録まで出願
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維持年金を特許庁に支払う必要があり、係属期間が長くなると費用が高くなる。
そこで、早期権利化と、権利化にかかる費用の削減のために、欧州特許庁における審査期
間を短縮する手段について紹介する。
(1)欧州出願における特許査定までの平均係属期間
パリルート:66ヶ月(2012年)
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PCTルート:78ヶ月(2012年)
(2)欧州出願における出願維持年金(出願した年を第 1 年とする。第 3 年目から必要)
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第3年
465 EUR( 64,170 円)
第4年
580 EUR( 80,040 円)
第5年
810 EUR(111,780 円)
第6年
1,040 EUR(143,520 円)
第7年
1,155 EUR(159,390 円)
第8年
1,265 EUR(174,570 円)
第9年
1,385 EUR(190,440 円)
第 10 年以降
1,560 EUR(215,280 円)
*通貨換算率 1EUR:138 円(平成 26 年 8 月 20 日付「基準外国為替相場及び裁定外国
為替相場」(日本銀行ウェブサイト)による)
2.審査期間短縮手段
(1)Request for Early Processing(早期処理の請求)
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PCT ルート EPC 出願に適用
<効果>
・EPC国内段階に移行後、方式審査開始までの期間を短縮できる。
・Early Processing を申請すると、国際段階が終了し、方式審査が開始される。
*通常は、移行期限(優先日から31ヶ月)が経過するまで、審査を開始することが禁止さ
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れている(PCT23 条、40 条)
。仮に、欧州特許庁への移行と同時に PACE や PPH を申請
したとしてもこの禁止は解除されない。この禁止は唯一 Early Processing の申請によって
解除することができる。
1
(2)EPC 規則 161/162 の通知(補正の機会を与える旨の通知)を受ける権利の放棄
PCT ルート EPC 出願に適用
<効果>
・EPC国内段階に移行後、方式審査と欧州補充調査報告との間の期間を少なくとも6ヶ月
5
*
短縮できる。EPC国内段階に移行直後に欧州補充調査が開始される。
・EPC規則161条/162条の通知がなされると、通知から 6 ヶ月以内に補正をする
機会が与えられる。補充調査が開始されるのはEPC規則161条/162条の通知の6
ヶ月の期間の経過後。仮に通知後 1 ヶ月後に補正を提出したとしても、移行時に早期審査
(PACE、PPH)を申請していたとしても、補充調査が開始されるのはEPC規則16
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1条/162条の通知の6ヶ月の期間の経過後になる。
早期審査を申請してもEPC規則161条/162条の通知を受ける権利を放棄しなけ
れば、実質的に補充調査を促進させる効果はない。
*「少なくとも」6ヶ月としたのは、以下の理由による。補充調査が開始されるのはEPC
規則161条/162条の通知の6ヶ月の期間の経過後である。EPC規則161条/1
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62条の通知がされるのが、方式審査開始後どれくらいかかるか不明である。方式審査と規
則161条/162条の通知との間の期間+6ヶ月短縮できる。
<デメリット>
・欧州移行後、補充調査開始前の補正の機会が失われる。
補充調査開始前に補正をしたい場合は、移行時に補正クレームを提出するなど、前倒しの
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対応が必要。
2
(3)PACE(Program for Accelerated prosecution for European patent application:早期
審査)
パリルート EPC 出願、PCT ルート EPC 出願の双方に適用
PACE申請は、出願が特許庁に係属中はいつでもすることができる。
5
①早期調査(Accelerated Search):
<効果>
・優先権を主張した出願の場合には、出願をする時に早期調査を請求することができ、E
POはできるだけ早くサーチレポートを作成する。
・優先権を主張していない出願(最初の出願)の場合、出願人は出願日から約6ヶ月以内
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にサーチレポートを入手することができる。
②早期審査(Accelerated Examination):
<効果>
・早期審査の請求がされた場合、審査部が出願書類の受領、又は早期審査請求の受理のい
ずれか遅い日から、3ヶ月以内に最初の審査報告書が発行される。
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・2回目以降の拒絶理由通知も前拒絶理由通知の応答が提出されてから3ヶ月以内に発行
する。
*PACEは訓示規定であり、必ずしも審査の迅速化を約束するものではない。
(4)PPH(特許審査ハイウェイ)
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パリルート EPC 出願、PCT ルート EPC 出願の双方に適用
<効果>
・PPH の申請が認められると、PACE に従って処理される。
・最初の審査通知が出るまでの期間は、PACE と大差はない。
・他国で特許可能と判断されていることが前提であり、他国の審査結果に関する資料が提出
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されるため、審査手続の迅速化の効果が期待できる。
<デメリット>
・種々の資料の提出が必要となり、代理人手数料が高くなる。
・他国で認められた補正が欧州で認められない場合がある。
・EPO において、他国の審査経過があまり参照されない可能性が高い。
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・許可クレームと同一にしなければならない。
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(5)EPC 規則 70 条(2)の通知(審査継続の確認をする通知)を受ける権利の放棄
EPC 規則 70 条(2)の通知:調査報告書が出願人に発送される前に審査請求が提出された
場合に、審査継続の確認をする通知。調査報告書に対する補正書の提出は、規則70条(2)
の通知に対する応答期間内にすることができる。
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パリルート EPC 出願、PCT ルート EPC 出願の双方に適用
<メリット>
・EPC規則70条(2)の通知を受ける権利を放棄すると、見解書が添付されない調査報
告書(引用文献だけが列挙される)が送付され、その約1ヶ月後に1stOA が発行される。
・パリルートの場合は、優先日から EPC 出願までの期間が短いほど、審査期間を短縮する
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ことができる(約2~9ヶ月程度)PCT ルートの場合は、審査期間の短縮にあまり寄与し
ない。
[パリルート]
・規則70条(2)の通知が、出願公開(優先日から18ヶ月)のタイミングで通知される
ため、規則70条(2)を放棄していないと、優先日から18ヶ月以降にしか、調査報告に
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基づく補正を行うことができない。規則70条(2)を放棄していると、調査報告書の約1
ヶ月後に1stOA が発行されるため、EPC 出願が早い場合には、優先日から18ヶ月が経過
する前に補正の機会が得られる。規則70条(2)を放棄していない場合と比較して、約2
~9ヶ月程度審査期間を短縮できる。
[PCT ルート]
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・規則70条(2)の通知が、調査報告から約1ヶ月程度で通知される。そのため、規則7
0条(2)を放棄しても、審査期間の短縮にはあまり寄与しない。
<デメリット>
・EPC規則70条(2)の権利を放棄すると調査報告書を受け取った時点で出願を取り下
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げた場合であっても、審査料が返還されない。
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3.お勧め
(1)PACE と PPH の比較
ファースト OA までの平均日数:
PPH:156 日
5
PACE:188 日
EPO が新たな X,Y 文献を引用する可能性:
PPH:65%
PACE:74%
PPH の方がファースト OA が 1 ヶ月ほど早く発行され、新たな文献が引用される可能性
10
が 10%ほど低い(2008 年 EPO 発表)
。
期間的には、どちらもあまり変らない。PPH の申請には、種々の資料の提出が必要とな
るため、費用面では PACE がお勧め。PACE の方が、新たな X,Y 文献を引用する可能性が
高いため、権利の安定性の面からも PACE がお勧め。
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(2)Request for Early Processing
国内移行期間の満了前に、審査を開始することができるため、お勧め。
PACE,PPH を、国内移行期間の満了迄に申請する場合には、併せて Early Processing
の申請をするのが必須と考えた方がよい。そうしないと、折角、PACE,PPH を申請して
も、審査の開始時期を早めることができない。PACE,PPH の申請を現地代理人に依頼し
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たら、通常、
「Early Processing 申請しますか。
」と聞かれるはず。聞かれなければ、依頼す
る。
(3)EPC 規則 70 条(2)の通知(審査継続の確認をする通知)を受ける権利の放棄
短縮される期間が短く、出願を取り下げても審査請求料(1,620EUR)が返還されないため、
あまりお勧めではない。但し、パリルート EPC 出願を早期に行った場合には、短縮される
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期間が6ヶ月以上になることもあるため、放棄する意味があると考えられる。
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他庁で
特許可能
との判断
Early Processing
申請可
PACE 申請可
EPC
出願が特許庁
161/162 条
に係属中はい
放棄可
つでも
PPH 申請可
実体審査開始
EPC 規則
70 条(2)
放棄可
前まで
Rule 70(2)
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Rule 70(2)
規 則
審査促進制度の違い(要件と効果)
(1)
Early Processing
の申請
移行期限(優先日から
31ヶ月)経過に先立っ
概要
て審査を開始させるた
めの手続
国内移行のための期
時期
間(優先日から31ヶ月)
申請するだけ
(出願費用、調査費用
等が支払われることが
前提)
要件
手続
費用 EPO手数料:不要
国内移行期間の満了
前に、審査を開始する
ことができる。
効果
注意事項
(2)
規則161/162
の放棄
(3)
(4)
PACE申請
PPH
(5)
規則70条(2)の放棄
他国の審査結果又はPCTの調査成
欧州移行後、補充調査
審査継続の確認の通知を受け
早期調査、早期審査を
果に基づいて審査促進(早期審査)
開始前の補正の機会
る権利を放棄する
受けるための手続
をするもの
を放棄する
欧州移行時
欧州移行時に提出す
るForm for entry into
the European phase
(EPO Form 1200)の
ボックス6.4にチェック
を入れるだけ
EPO係属中ならいつで
も可
申請するだけ(早期審
査を希望する理由の
説明等は不要)
EPO手数料:不要
EPO手数料:不要
欧州特許庁に移行後、
方式審査と補充調査
報告との間の期間を
6ヶ月短縮できる。
サーチ(調査)段階:
可及的速やかにサー
チレポートを発行する。
審査段階:審査開始、
PACE申請受領いずれ
か遅い日から、3ヶ月
以内に最初の審査報
告書を発行するよう努
める
・審査通知に対して延
長を行うと、通常審査
に戻される。
・PACE申請だけして
も、PCT23条、40条は
解除されない。
欧州移行後、補充調査
開始前の補正の機会
が失われる。
補充調査開始前に補
正をしたい場合は、移
行時に補正クレームを
提出するなど、前倒し
の対応が必要。
PACE:the program for acelerated prosecution of European patent applications
PPH:特許審査ハイウェイ
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実体審査開始前
欧州移行時/欧州出願時
PPH申請と同時に以下を提出
(JPO-EPO間の場合)
1)許可クレームと欧州出願のクレー
ムの対応関係に関する宣誓書
(Declaration)、
2)日本特許庁が発行した全ての審
査通知の写とその翻訳文(欧州特
許庁公用語である英語、フランス語
又はドイツ語のいずれか)、
3)許可クレーム及びその翻訳文
4)日本特許庁に引用された非特許
文献全ての写
EPO手数料:不要
<PCTルート>
欧州移行時に提出するForm for
entry into the European phase
(EPO Form 1200)のボックス4.
2にチェックを入れるだけ
(出願時または移行時に審査請
求がなされ、審査料が支払われ
ていること(EPC規則70条(2))
が前提)
<パリルート>
出願書類のチェックボックスに
チェックを入れる
EPO手数料:不要
審査手続が迅速化される。
調査報告書の送付とEPC規則
70条(2)の通知との間の時間
を短縮することができる。
・種々の資料の提出が必要となり、
代理人手数料が高くなる。
・他国で認められた補正が欧州で
認められない場合がある。
・EPOにおいて、他国の審査経過が
あまり参照されない可能性が高い。
・許可クレームと同一にしなければ
ならない。
・調査報告書に見解書が添付さ
れない。見解書は1stOAとして
発行される。
・EPC規則70条(2)の権利を放
棄すると調査報告書を受け取っ
た時点で出願を取り下げた場合
であっても、審査料が返還され
ない。
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