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施工事例集 - 兵庫県立農林水産技術総合センター

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施工事例集 - 兵庫県立農林水産技術総合センター
生物多様性に配慮した緑化工法
施工事例集
平成 20 年 3 月
兵庫県立農林水産技術総合センター
森林林業技術センター
兵庫県但馬高原林道建設事務所
目
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
1
次
法面緑化に使用する外来種を取り巻く状況
1.外来生物法がもたらした新たな問題・・・・・・・・・・・・・・・
2.緑化植物の取り扱いに関する検討・・・・・・・・・・・・・・・・
3.環境条件別の工法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2
2
3
新種子配合による緑化
1.兵庫県営林道事業における種子配合方針・・・・・・・・・・・・・
2.新たな種子配合で選定した種子・・・・・・・・・・・・・・・・・
3.新配合による施工事例・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4
5
6
森林表土利用緑化工法
1.作業手順・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20
2.盛土面における森林表土利用緑化工法・・・・・・・・・・・・・・21
3.切土面における森林表土利用緑化工法・・・・・・・・・・・・・・25
4.埋土種子ポテンシャルの把握・・・・・・・・・・・・・・・・・・28
5.森林表土利用緑化工法のまとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・31
Ⅰ.法面緑化に使用する外来種を取り巻く状況
1.外来生物法がもたらした新たな問題
2005(平成 17)年 6 月 1 日、「特別外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法
律(外来生物法)」が施行され、特定外来生物に指定された種については、学術研究等その
目的が適合しており、かつ、基準に適合する施設を有するなど適正に管理できるとして主
務大臣の許可を受けた者以外は飼養、栽培、保管、運搬が禁止され(第 4 条、第 5 条 1 項、
3 項)、許可を受けているもの以外は輸入できず(第 7 条)、譲渡譲受は許可を受けた者同士
の間以外は禁止されており(第 8 条)、飼養等に係る施設の外に放ち、植え、まくことが禁
止されている(第 9 条)。特定外来生物の指定と同時に、今後早急に検討を要する「要注意
外来生物」が示されており、この要注意外来生物には、これまで自然回復を目的とした法面
緑化に多用されてきた外来種が多数含まれており、このことが緑化現場に新たな問題を引
き起こしている。
外来種の導入が生態系に及ぼす影響については、ウィーピングラブグラス(以下 WLG)
などの外来種が、施工後長期間が経過しても優占することで、自生種の阻害や、導入した
外来種が法面から逸出し、流域下流の植生を攪乱する場合が指摘されている。しかし、外
来種が要注意外来生物に多数含まれたことによって、自生種と称して外国産の移入系統に
よるヨモギ、イタチハギ、ススキ、ヤマハギ等が代替種として多用される結果を招いてお
り、遺伝子という目に見えないレベルでの攪乱を広げてしまう危険性が高くなっている。
これらのことから、生態系に影響を与える外来種や移入系統の自生種に依存しない緑化工
法の検討が急務となっている。
2.緑化植物の取り扱いに関する検討
そこで、環境省、農林水産省、林野庁、国土交通省による、「外来生物による被害の防止
等に配慮した緑化植物取扱方針検討調査(平成 17 年度)」、「生態系保全のための植生管理
方策検討委員会(平成 18 年度)」が組織され、緑化植物の取り扱い方について検討が、本
年度も引き続き行われている。これらの検討では牧草、外国産自生種に関する取扱方向(案)
が次のように示されている。
① 河原の植生を被圧し、砂を堆積し河川環境を改変する WLG の使用を控える。
② WLG 以外のイネ科植物も河川敷に多く定着しているが、定着する部位は元来裸地の部
位であり、侵入しているイネ科植物は草丈の高いものが多く在来の植物を被圧する可能
性がある。このため、河川への逸出を考慮して緑化目的を達成し得る範囲内において、
草丈の低い種類・品種、繁殖力の小さな種類・品種を使用することが望ましい。
③ 自生種については、国内産自生種を用いる緑化を行うことが好ましいが、現実には十分
な量を供給できる体勢は整っていない。このため、当面、生物多様性保全上重要な地域
(自然公園区域特別保護地区や特に保全が必要な希少種等の生育地等)において、外国
産自生種の使用を避け国内産自生種・地域系統に配慮した緑化植物の利用や埋土種子の
利用、自然侵入を待ち受ける手法などを用いることが望ましい。
④ クロバナエンジュ(イタチハギ)、ハリエンジュ(ニセアカシア)はリンゴ炭疽病の寄
宿源となるため、リンゴ栽培地周辺での使用を避ける。同様に生物多様性保全上重要な
地域(自然公園区域地域特別保護地域や特に保全が必要な希少種等の生育地等)におけ
る使用も避ける。
2
3.環境条件別の工法
生物多様性に配慮した緑化工法は、従来工法と比較して概してコスト高となり、すべて
の緑化施工地で、こうした工法を選択するのは現実的ではない。そこで、以下に示す環境
条件で緑化施工地の区分を行い、区分ごとに、緑化工法を選択する方法を提案する。
環境区分Ⅰ:
・自然公園の特別保護地区、第 1 種特別地域、あるいはそれに相当する地域
・極相植物群落、あるいはそれに近い植物群落の地域
・植生自然度が 9、10 相当の地域
環境区分Ⅱ:
・環境区分Ⅰ以外の地域
上記の 2 区分に区分のうえ、環境区分Ⅰでは、後述する森林表土利用緑化工法や移植緑
化工法、地域性種苗による植栽工法等の地域個体群の種苗を用いた緑化等、より環境に配
慮した緑化工法を選択することとする。また、環境区分Ⅱでは、後述する新種子配合によ
る緑化を行う。
3
Ⅱ.新種子配合による緑化
1.兵庫県営林道事業における種子配合方針(一部修正)
1)目的
本方針は、生態系及び地域遺伝子の保全のため、林道工事において使用可能な種子を指
定するとともに、生態系に悪影響を与えると考えられている外来種や、遺伝子攪乱の恐れ
がある自生種の使用を制限することを目的とし、平成 18 年 10 月 1 日以降の工事に適用し
ている。
2)目標群落の設定
初期の段落を草本群落とし、早期の緑被により法面保護を図りつつ、周辺からの自生種
の侵入等により、木本群落へのゆるやかな遷移を期待するものとする。
3)自生種の使用について
自生種については、地域系統以外のものを持ち込むことによって遺伝子攪乱の恐れがあ
り、外来種の使用よりも悪影響を与える可能性があるとされている(出典:兵庫県の外来
生物対策に向けた提案:平成 17 年 3 月)。また、既設林道の法面緑化施工地の観察の結果、
周辺からの自生種(木本・草本)の侵入が認められ、自生種を播種しなくても自生種を主
体とした群落への遷移が見込まれることから(H18 林道プロジェクト技術検討B)、自生種
を一切配合しないこととする。
4)外来種の使用について
強い侵略性を持つとされる外来種をはずし、生態系への影響が弱いと想定される外来種
を選択する。
種名
分類
特徴
クリーピングレッドフェスク(CRF) 冬草
高冷地でも好成績。
レッドトップ(RT)
冬草
高冷地でも好成績。2~3年で衰退する。
バミューダグラス(BG)
夏草
暑さ、乾燥に強い。
ホワイトクローバー(WC)
マメ科草本
窒素を固定する根粒植物。
5)発生期待本数及び配合計画について
(1)厚層基材吹付、客土吹付、種子吹付について
道路土工-のり面工・斜面安定工指針((社)日本道路協会)によれば、草本群落目標の
発生期待本数が 1,200~2,500 本/㎡(種構成種 1,000~2,000 本/㎡、補完種 200~500 本/
㎡より算出)であり、自生種の侵入が容易となるよう少なめの設定が必要であることから、
1,200 本/㎡を採用することとする。これは、県営林道千町・段ケ峰線、床尾線、前地・カ
ンカケ線等で H17 年度に施工した事例(1,100 あるいは 1,300 本)で特に問題がないことか
ら、妥当な数字である。なお、種ごとの発生期待本数は、各種とも 300 本/㎡とする。
(2)植生シート、植生マット、植生土のう等製品について
法面緑化・壁面緑化で使用する製品について、本方針に準拠するもののみ使用する。た
だし、メーカー各社の既製品の実績を尊重するものとし、発生期待本数についてはこれを
指定しないこととする。
6)種子の配合量補正について
実際の施工にあたっては、種子メーカーごとの種子の特性、並びに現場の施工条件に応
じて播種量を決定することとする。
4
2.新たな種子配合で選定した種子
(自然をつくる植物ガイド、林業土木コンサルタンツ発行より)
①レッドトップ(略称:RT、標準和名:コヌカグサ)Agrostis alba L.
ヨーロッパや北アメリカ原産の多年草。日本全土に広く帰化している。根茎は短く、茎
は高さ 40~60 ㎝、葉は長さ 10~20 ㎝、幅 4~7 ㎜で粉白色を帯びる。花期は 7~8 月ごろ。
花序は長さ 10~20 ㎝、淡緑色あるいは帯紅紫色の細かい小穂をやや密につける。生育地の
条件によって草丈が様々に変化する。
近似種には、紫褐色の小穂をつけるクロコヌカガサや、草丈の低いハイランドベントグ
ラスなどがある。
旺盛に成長し繁茂するが、2~3 年で急速な衰退がみられる。木本植物との混播には不適
である。導入は播種による。
②バミューダグラス(略称:BG、標準和名:ギョウギシバ)Cynodon dactylon Pers.
全国の海岸砂地や日当たりの良い荒れ地に生育する多年草。世界各地の温帯から熱帯に
かけて広く分布する。暖地の芝草として利用される。茎は長く地上を這い、各節から根を
出して繁殖する。葉は短い線形で長さ 5~8 ㎝、幅 1.5~4 ㎜、葉舌付近に長毛が散生する。
花期は 6~8 月ごろ。花序は掌状で 3~7 個で枝を出し、長さ 2~3 ㎜の小穂を片側に密につ
ける。
乾燥に極めて強く、関東以西の暖地の海岸砂地や埋め立て地の緑化に適している。高寒
冷地には適さない。アメリカで芝草として研究され数多くの品種がある。導入は播種、株
植栽(地下茎散布)による。種子は平均気温 15℃以上で発芽する。株植栽は根茎(地下茎)
を 5 ㎝位に切断して散布する。
③クリーピングレッドフェスク(略称:CRF、標準和名:オオウシノケグサ)Festuca rubra L.
ヨーロッパや北アメリカなど北半球の大陸に広く分布する常緑の多年草。わが国では本州
中・北部や北海道の高山、ときに海岸などにみられる。根茎は短く、まれに匐枝を出す。
茎は高さ 40~70 ㎝、基部の葉鞘は淡紅色を帯びることが多い。葉は線形で幅 1~2 ㎜、強
く内巻きする。花期は 6~8 月ごろ。長さ 5~12 ㎝の花序を出し長さ 5~10 ㎜の小穂をまば
らにつける。近似種には、より小型のウシノケグサがある。
現在市販されている種子は輸入品が多い。耐寒性、耐酸性があり、高山や寒冷地の荒廃
地復旧に用いられる。導入は播種による。
④ホワイトクローバー(略称:WC、標準和名:シロツメクサ)Trifolium repens L.
ヨーロッパ原産の多年草。現在では帰化植物として広く分布している。全体ほとんど無
毛、茎は地上を這い節部より不定根を出す。葉は 6~20 ㎝の葉柄を有し互生する。小葉は
長さ 10~20 ㎜の円形、あるいは倒卵形で頭部が浅くくぼむことがある。花は白色、4~8
月に長い花枝の先に密集した花序をつける。
発芽率は高いが、発芽直後の乾燥、寒さに弱い。やや湿性を好む、耐痩地性、耐酸性が
ある。
牧草あるいは緑肥として広く用いられる。荒廃地の緑化工にも多用されているが、浅根
性であるため、急傾斜には不適である。導入は播種による。
5
3.新配合による施工事例
1)調査地および緑化工法
(1)三田市尼寺(全国育樹祭会場)
①Sanda・№1:厚層基材吹付工法、N10W、勾配 43°、2005(H17)年 4 月施工
②Sanda・№2:厚層基材吹付工法、S45W、勾配 44°、2005 年 4 月施工
③Sanda・№3:厚層基材吹付工法、S45W、勾配 43°、2005 年 4 月施工
④Sanda・№4:連続繊維高次団粒基材吹付工法、N30E、勾配 28°、2005 年 4 月施工
⑤Sanda・№5:連続繊維高次団粒基材吹付工法、N20E、勾配 28°、2005 年 4 月施工
⑥Sanda・№7:種子吹付工法、S20W、勾配 40°、2005 年 4 月施工
(2)西宮市山口町船坂(保安林改良事業)
①Nishinomiya・№1:法枠工+厚層基材吹付工法、S70W、勾配 40°、2005 年 4 月施工
②Nishinomiya・№2:法枠工+厚層基材吹付工法、S70W、勾配 60°、2005 年 4 月施工
(3)宍粟市一宮町黒原(森林基幹道 千町・段ヶ峰線)
①Ichinomiya・№3:厚層基材吹付工法、N10E、勾配 60°、2005 年 5 月施工
②Ichinomiya・№5:厚層基材吹付工法、N80E、勾配 30°、2005 年 5 月施工
③Ichinomiya・№11:厚層基材吹付工法、S20E、勾配 62°、2007 年 7 月施工
④Ichinomiya・№12:厚層基材吹付工法、S50W、勾配 60°、2007 年 7 月施工
⑤Ichinomiya・№13:張芝工法(肥料帯付植生マット)、S20E、勾配 52°、2007 年 7 月施工
⑥Ichinomiya・№14:張芝工法(肥料帯付植生マット)、S50W、勾配 52°、2007 年 7 月施工
(4)宍粟市波賀町斉木地内(森林管理道 前地・カンカケ線)
①Haga・№1:厚層基材吹付工法、S50W、勾配 51°、2007 年 5 月施工
②Haga・№2:厚層基材吹付工法、S40E、勾配 51°、2007 年 5 月施工
③Haga・№3:張芝工法(肥料帯付植生マット)、S30W、勾配 51°、2007 年 5 月施工
④Haga・№4:張芝工法(肥料帯付植生マット)、S40E、勾配 51°、2007 年 5 月施工
(5)美方郡香美町村岡区(森林基幹道 三川線)
①Muraoka・№1:張芝工法、N20E、勾配 52°、2007 年 9 月施工
②Muraoka・№2:張芝工法、N20W、勾配 51°、2007 年 9 月施工
2)施工結果
調査地別、施工方法別の施工結果を示したのが図 1~図 18 である。なお図中には、全体
の植被率と外来牧草種のみの被度を示している。新たな種子配合による緑化では、トール
フェスク(TF)を含む従来の種子配合が約 1 ヶ月で高い植被率が得られるのと比較して、
植被速度が 1~2 ヶ月程度遅くなる傾向がみられた。育樹祭行事の関係で刈り取りが行われ
た Sanda・№4(図 4)、Sanda・№5(図 5)や、ニホンジカの採食圧が著しい Ichinomiya・
№5(図 10)と、後に理由を述べる Ichinomiya・№11(図 15)、Ichinomiya・№12(図 16)
を除いて、工法の別に関わらず、施工 3~4 ヶ月後にはほぼ 100%の植被率が得られた。
配合種子別にみると、比較的寒冷で湿潤な条件下では、クリーピングレッドフェスク
(CRF)が優占する傾向がみられ(図 1 と図 2、図 3 との斜面の向きの違いによる比較)、
比較的乾燥しやすい条件下では、バミューダグラス(BG)の被度が高くなる傾向がみられ
た(Nishinomiya・№1(図 7)と Nishinomiya・№2(図 8))。
植被速度は、CRF が比較的早く発芽し、BG とレッドトップ(RT)は遅れる傾向がみら
6
れた。
厚層基材吹付工と張芝工の工法による比較をみると、いずれの施工地とも、張芝工法の
方が、厚層基材吹付工法よりも早く、高い植被率が得られる傾向がみられた(ほぼ同一条
件下で工法を比較した、図 11 と図 13、図 12 と図 14、図 15 と図 17、図 16 と図 18)。
前述の Ichinomiya・№11(図 15)、Ichinomiya・№12(図 16)で、今回特に緑化成績が
悪かったのは、①厚層基材吹付工法は、張芝工や連続繊維高次団粒基材吹付工法と比較し
て、植物生育基盤が流れやすい工法であること、②新たな配合種子の中で、植被速度が早
いと期待される CRF の被覆が十分でなかったこと、③CRF の被覆が十分でなかった原因と
して、夏場の暑い時期(7 月)の施工であったこと、④加えて、施工場所がニホンジカの採
食圧の大きい場所であり、ニホンジカの歩行によって根系が安定せず、乾燥しやすい条件
となったなったこと、⑤以上の要因が複合的にマイナスに働いたこと、が主な原因と考え
られる。
以上の結果から、張芝工法や連続繊維高次団粒基材吹付工法、極端な乾燥条件ではない
条件下での厚層基材吹付工法においては、今回の新たな種子配合での緑化が可能と考えら
れる。
7
○Sanda・№1(厚層基材吹付,N10W,slope43°,2005.4 施工)
Apr.2005
May.2005
Jun.2005
May.2006
Jul.2005
Aug.2005
Jul.2006
Sep.2005
Oct.2005
Nov.2005
Oct.2005
Nov.2005
Sep.2006
Jun.2007
Sep.2007
○Sanda・№2(厚層基材吹付,S45W,slope44°,2005.4 施工)
Apr.2005
May.2005
Jun.2005
May.2006
Jul.2005
Jul.2006
Jun.2007
Aug.2005
Sep.2005
Sep.2006
Sep.2007
8
○Sanda・№3(厚層基材吹付,N45W,slope43°,2005.4 施工)
Apr.2005
May.2005
Jun.2005
Jul.2005
May.2006
Aug.2005
Jul.2006
Sep.2005
Oct.2005
Nov.2005
Sep.2006
Jun.2007
Sep.2007
○Sanda・№4(連続繊維高次団粒基材吹付,N30E,slope28°,2005.4 施工)
Apr.2005
May.2005
Jun.2005
May.2006
Jul.2005
Jul.2006
Jun.2007
9
Cutting
Aug.2005
Sep.2005
Sep.2006
Sep.2007
Cutting
Oct.2005
Cutting
Nov.2005
○Sanda・№5(連続繊維高次団粒基材吹付,N20E,slope28°,2005.4 施工)
Apr.2005
May.2005
Jun.2005
Cutting
May.2006
Jul.2005
Aug.2005
Jul.2006
Sep.2005
Cutting
Oct.2005
Cutting
Nov.2005
Cutting
Oct.2005
Cutting
Nov.2005
Sep.2006
Jun.2007
Sep.2007
○Sanda・№7(種子吹き+ネット,S20W,slope40°,2005.4 施工)
Apr.2005
May.2005
Jun.2005
May.2006
Cutting
Jul.2005
Jul.2006
Jun.2007
Aug.2005
Sep.2005
Sep.2006
Sep.2007
10
○Nishinomiya・№1(厚層基材吹付,S70W,slope40°,2005.4 施工)
May.2005
Jun.2005
May.2006
Jul.2005
Aug.2005
Jul.2006
Sep.2005
Oct.2005
Nov.2005
Oct.2005
Nov.2005
Sep.2006
Jun.2007
Sep.2007
○Nishinomiya・№2(厚層基材吹付,S70W,slope60°,2005.4 施工)
May.2005
Jun.2005
May.2006
11
Jul.2005
Jul.2006
Jun.2007
Aug.2005
Sep.2005
Sep.2006
Sep.2007
○Ichinomiya・№3(厚層基材吹付,N10E,slope60°,2005.5 施工)
Jul.2005
May.2006
Aug.2005
Jul.2006
Sep.2005
Oct.2005
Nov.2005
Oct.2005
Nov.2005
Sep.2006
Jun.2007
Sep.2007
○Ichinomiya・№5(厚層基材吹付,N80E,slope30°,2005.5 施工)
Deer Impact
Deer Impact
Jul.2005
May.2006
Deer Impact
Jul.2006
Jun.2007
Aug.2005
Sep.2005
Sep.2006
Sep.2007
12
○Haga・№1(厚層基材吹付①,S50W,slope51°,2007.5 施工)
Deer Impact
Jul.2007
Aug.2007
Deer Impact
Jul.2007
Aug.2007
Deer Impact
Jul.2007
Aug.2007
○Haga・№2(厚層基材吹付②,S40E,slope51°,2007.5 施工)
○Haga・№3(張芝①,S30W,slope51°,2007.5 施工)
¥
○Haga・№4(張芝②,S40E,slope51°,2007.5 施工)
Deer Impact
13
Jul.2007
Aug.2007
○Ichinomiya・№11(厚層基材吹付①,S20E,slope62°,2007.7 施工)
Deer Impact
Aug.2007
Sep.2007
Oct.2007
Deer Impact
Aug.2007
Sep.2007
Oct.2007
Deer Impact
Aug.2007
Sep.2007
Oct.2007
Deer Impact
Aug.2007
Sep.2007
Oct.2007
○Ichinomiya・№12(厚層基材吹付②,S50W,slope60°,2007.7 施工)
○Ichinomiya・№13(張芝①,S20E,slope52°,2007.7 施工)
○Ichinomiya・№14(張芝②,S50W,slope52°,2007.7 施工)
14
○Muraoka・№1(張芝①,N20E,slope52°,2007.9 施工)
Oct.2007
Dec.2007
Oct.2007
Dec.2007
○Muraoka・№2(張芝②,N20W,slope51°,2007.9 施工)
15
16
17
18
19
Ⅲ.森林表土利用緑化工法
ここでは、森林表土を利用した緑化工法の 1 つとして、植生基材に混ぜ込んで機械で吹
き付ける方法である表土吹付工法を取り上げる。
1.作業手順
森林表土を採取し、盛土法面に植生ネットを敷設した後(切土法面では金網を敷設)、2
㎜の篩で処理した表土を、吹き付け機を用いて吹き付けた。2 ㎜の篩で処理したのは、小型
の吹き付け機を用いることを考慮し、機械を小型化することで、森林地域でも施工するこ
とが容易となり、汎用性が高く、施工単価も下げることができると考えたからである。
吹き付けは、表土に、生育基盤材(有機堆肥、保水剤、有機肥料、接合剤等)
、ピートモ
スと、糸状菌の一種であるアーバシュキュラー菌根菌(arbuscular mycorrhizal fungi、
以下 AM 菌)を配合した。
有機肥料生育基盤材
(有機堆肥,保水剤,有機肥料,接合剤 等)
森林表土の採取
ピートモス,AM 菌,水
植生ネット敷設(盛土)
金網敷設(切土)
篩処理
混合
森林表土吹付
図 19. 森林表土利用緑化工法の作業手順
20
2.盛土面における森林表土利用緑化工法
1)実験 1:森林表土利用緑化工法と従来工法(種子吹付工法)との比較
施工場所:森林管理道前地・カンカケ線(盛土法面)
施工日
:平成 15 年 4 月 21 日
結果概要:盛土面における森林表土利用緑化工法と従来工法の種子吹付工法を比較した。
森林表土利用緑化工法では、当初の植被率は低いものの、出現種数は 1 ヶ月後から種子吹
付工法を上回る傾向がみられた。
40.0
100.0
80.0
30.0
植
被 60.0
率
・ 40.0
%
20.0
10.0
20.0
0.0
4
㎡
に
お
け
る
出
現
種
数
植被率 ⑮表土吹付(1㎝
厚・AM菌無)
植被率 ⑮種子吹付
4㎡における出現種数
⑮表土吹付(1㎝厚・AM
菌無)
4㎡における出現種数
⑮種子吹付
0.0
1ヶ月後 3ヶ月後 6ヶ月後
2年後
3年後
4年後
5年後
図20. 盛土面:森林表土利用緑化工法と従来工法(種子吹付工法)との比較
図 21.
順)
21
森林表土利用緑化工法(上段)と種子吹付工法(下段)(いずれも左から 3 ヶ月後、6 ヶ月後、3 年後の
2)実験 2:AM 菌の利用
施工場所:森林管理道前地・カンカケ線(盛土法面)
施工日
:平成 15 年 4 月 21 日
結果概要:AM 菌の利用によって植物の乾燥耐性が高まり、より早く植被率を高めることが
可能となった。
100.0
40.0
80.0
30.0
植
被 60.0
率
・ 40.0
%
20.0
10.0
20.0
0.0
0.0
1ヶ月後 3ヶ月後 6ヶ月後
2年後
3年後
4年後
4
㎡
に
お
け
る
出
現
種
数
植被率 ⑮表土吹付(1㎝
厚・AM菌有)
植被率 ⑮表土吹付(1㎝
厚・AM菌無)
4㎡における出現種数
⑮表土吹付(1㎝厚・AM
菌有)
4㎡における出現種数
⑮表土吹付(1㎝厚・AM
菌無)
5年後
図22. 盛土面:AM菌の利用
図 23.
AM 菌無し(上段)と AM 菌有り(下段)(いずれも左から 3 ヶ月後、6 ヶ月後、3 年後の順)
22
3)実験 3:森林表土利用緑化工法と無処理との比較
施工場所:森林管理道前地・カンカケ線(盛土法面)
施工日
:平成 16 年 4 月 27 日
結果概要:森林表土利用緑化工法の施工によって、速やかに植被率が高まるものの、出現
種数については、表土利用区と無処理区とが近接していたこともあり、大差はみられなか
った。
100.0
40.0
80.0
30.0
植
被 60.0
率
・ 40.0
%
20.0
10.0
20.0
0.0
4
㎡
に
お
け
る
出
現
種
数
植被率 ⑯表土吹付(1㎝厚・AM
菌有)
植被率 ⑯無処理
4㎡における出現種数 ⑯表土
吹付(1㎝厚・AM菌有)
4㎡における出現種数 ⑯無処
理
0.0
1ヶ月後 3ヶ月後 6ヶ月後
2年後
3年後
4年後
図24. 盛土面:森林表土利用緑化工法と無処理との比較
図 25.
23
森林表土利用緑化工法(上段)と無処理(下段)(いずれも左から 3 ヶ月後、6 ヶ月後、3 年後の順)
4)実験 4:吹付厚の比較
施工場所:森林管理道前地・カンカケ線(盛土法面)
施工日
:平成 16 年 4 月 27 日
結果概要:森林表土吹付の厚さについて、3 ㎝厚と 1 ㎝厚を比較した結果、3 ㎝厚の方が植
被率はより早く高まるものの、出現種数は、両者の間で大差はみられなかった。
40.0
100.0
80.0
30.0
植
被 60.0
率
・ 40.0
%
20.0
10.0
20.0
4
㎡
に
お
け
る
出
現
種
数
植被率 ⑯表土吹付(3㎝厚・AM菌
有)
植被率 ⑯表土吹付(1㎝厚・AM菌
有)
4㎡における出現種数 ⑯表土吹
付(3㎝厚・AM菌有)
4㎡における出現種数 ⑯表土吹
付(1㎝厚・AM菌有)
0.0
0.0
1ヶ月後 3ヶ月後 6ヶ月後
2年後
3年後
4年後
図26. 盛土面:吹付厚の比較
図 27.
吹付厚 1 ㎝(上段)と吹付厚 3 ㎝(下段)(いずれも左から 3 ヶ月後、6 ヶ月後、3 年後の順)
24
3.盛土面における森林表土利用緑化工法
1)実験 5:森林表土利用緑化工法と従来工法(植生マット工法)および無処理との比較
施工場所:森林管理道前地・カンカケ線(切土法面)
施工日
:平成 16 年 4 月 26 日
結果概要:切土面における森林表土利用緑化工法と従来工法の植生マット工法、および無
処理との比較を行った。無処理の場合、植被率は 4 年後の時点でも 10%以下と低く、出現
種数も 2 年後までは森林表土利用緑化工法と比較して少なかった。また従来工法(植生マ
ット工法)の場合、植被率は 6 ヶ月後までは高いものの、2 年後は森林表土利用緑化工法の
植被率が高まったことによってほぼ同程度となり、3 年目以降は植生マットに含まれる牧草
種が衰退して、低くなる傾向がみられた。出現種数は、3 年後までは植生マット工法が森林
表土利用緑化工法を下回っていた。
100.0
40.0
80.0
30.0
植
被
60.0
率
・
% 40.0
20.0
10.0
20.0
0.0
植被率 ⑯表土吹付(3㎝厚・1割)
4
㎡
に
お
け
る
出
現
種
数
植被率 ⑯植生マット
植被率 ⑯無処理
4㎡における出現種数 ⑯表土吹
付(3㎝厚・1割)
4㎡における出現種数 ⑯植生
マット
4㎡における出現種数 ⑯無処理
0.0
1ヶ月後
3ヶ月後
6ヶ月後
2年後
3年後
4年後
図28. 切土面:森林表土利用緑化工法と従来工法(植生マット工法)および無処理との比較
25
図 29.
森林表土利用緑化工法(上段)と植生マット工法(中段)、無処理(下段)(いずれも左から 3 ヶ月後、6
ヶ月後、3 年後の順)
2)実験 6:追加播種の検討
施工場所:森林管理道前地・カンカケ線(切土法面)
施工日
:平成 16 年 4 月 26 日
結果概要:播種したヌルデやアカメガシワの発芽と生育によって、播種した方が 1 年目の
植被率が高くなる傾向がみられたが、出現種数に大きな差はみられなかった。また、播種
量による違いは明らかでなかった。
100.0
植被率 ⑯表土吹付(3㎝厚・1割)
+種子(100粒・m-2)
40.0
80.0
30.0
植
被 60.0
率
・ 40.0
%
20.0
10.0
20.0
0.0
0.0
1ヶ月後 3ヶ月後 6ヶ月後
2年後
3年後
4年後
4
㎡
に
お
け
る
出
現
種
数
植被率 ⑯表土吹付(3㎝厚・1割)
+種子(50粒・m-2)
植被率 ⑯表土吹付(3㎝厚・1割)
4㎡における出現種数 ⑯表土吹
付(3㎝厚・1割)+種子(100粒・m2)
4㎡における出現種数 ⑯表土吹
付(3㎝厚・1割)+種子(50粒・m2)
4㎡における出現種数 ⑯表土吹
付(3㎝厚・1割)
図30. 切土面:追加播種の検討
図 31. 追加播種(100 粒・m-2)(上段)と追加播種(50 粒・m-2)(中段)、追加播種なし(下段)(いずれも左から 3
ヶ月後、6 ヶ月後、3 年後の順)
26
3)実験 7:表土割合の検討
施工場所:森林管理道前地・カンカケ線(切土法面)
施工日
:平成 17 年 5 月 10 日
結果概要:当初の植被率を高めるために表土割合を 2 割にした結果、6 ヶ月後の植被率は高
くなった。この効果は、表土 1 割に追加播種した場合と同様であった。一方、出現種数は、
表土 1 割と、表土 2 割および表土 1 割+追加播種の場合で、明らかな違いはみられなかっ
た。
100.0
80.0
植 60.0
被
率
・ 40.0
%
20.0
0.0
1ヶ月後
3ヶ月後
6ヶ月後
2年後
3年後
40.0
植被率 ⑰表土吹付(3㎝厚・1割)
+種子(30~60粒・m-2)
4
30.0 ㎡
に
お
け
20.0
る
出
現
10.0 種
数
植被率 ⑰表土吹付(3㎝厚・1割)
0.0
4㎡における出現種数 ⑰表土吹
付(3㎝厚・2割)
植被率 ⑰表土吹付(3㎝厚・2割)
4㎡における出現種数 ⑰表土吹
付(3㎝厚・1割)+種子(30~60粒・
m-2)
4㎡における出現種数 ⑰表土吹
付(3㎝厚・1割)
図32. 切土面:表土割合の検討
図 33. 表土 1 割+追加播種(30~60 粒・m-2)(上段)と表土 2 割(中段)、表土 1 割(下段)(いずれも左から 3
ヶ月後、6 ヶ月後、3 年後の順)
27
4.埋土種子ポテンシャルの把握
1)撒き出し発芽試験の方法
各地から採取した森林表土を、兵庫県宍粟市山崎町の森林林業技術センター内にあるガ
ラス室内に持ち帰り、採取したその日に撒き出した。43 ㎝×32 ㎝、深さ 12 ㎝のコンテナ
の底にバーミキュライトを 2 ㎝敷き詰め、その上に表土を 2 ㎝の厚さで撒き出し、1 採取地
点につき 5 回繰り返しで設定した。灌水は原則的に 1 日 1 回以上行った。
調査は、実生出現法により発芽個体の種名と個数を、採取地点ごとに記録した。発芽の
測定は 2 週間に 1 回程度とした。
森林表土の採取
篩(2 ㎜)処理
約150㎝×150㎝の範囲
採 取した表土を2㎜篩
実生出現法による調査
43㎝×32㎝のコンテナに
から深さ約5㎝の表土
いで処理後,十分に攪
2㎝厚で撒き出し
を採取
拌
5回繰り返し/1採取地点
図 34. 撒き出し発芽試験の方法
2)兵庫県下 3 地域における埋土種子相の比較
兵庫県内の北部地域(養父市関宮町の森林管理道八木谷・大谷線、以下、養父市)、中部
地域(宍粟市波賀町の森林管理道前地・カンカケ線、以下、宍粟市)
、南部地域(三木市大
谷の情報公園都市、以下、三木市)から森林表土を採取し、実生出現法によって埋土種子
相を調査した。出現した各植物の在・不在を基に、TWINSPAN により調査地点と出現種を
階層的に分別した結果、得られた調査地点グループは人為的影響と微地形によって区分さ
れ、これらの要因に特に影響を受けているものと考えられた。一方、気候にはあまり影響
を受けていない可能性が示唆された。
TWINSPAN による各グループの埋土種子からの出現種は、表 1 のとおりである。
①第 1 段階の分割(A,B,C,D/E)
前者では、カラムシ、タケニグサが存在し、後者ではジュウニヒトエ、セイタカアワダ
チソウ、ヨウシュヤマゴボウが存在することから、人為的影響の強さによる奥山および里
山地域の埋土種子相の相違によって分割されたものと考えられる。
②第 2 段階の分割(A,B/C,D)
前者ではウツギ、ドクダミが存在することから、谷部の埋土種子密度と出現種数が高い
のは、重力作用によって埋土種子が集中しているものと推察される。
③第 3 段階での分割(A/B and C/D)
グループ A ではミズキとタニウツギ、グループ B ではチヂミザサ、グループ D ではタニ
ウツギが存在し、タニウツギを除いて気候を反映した埋土種子相の違いはみられなかった。
28
表 1. TWINSPAN による各グループの埋土種子からの出現種(指標種のみ)
TWINSPAN分類グループ
中部(尾
南部
中部(尾 根)、北
(斜
中部
根・斜
部(尾
面・ (谷) 面)
根・斜
谷)
面)
(5)
(3)
(6)
(6)
Ⅳ
2
2
Ⅴ
3
Ⅳ
Ⅰ
Ⅴ
2
Ⅰ
Ⅴ
1
Ⅰ
Ⅱ
Ⅴ
2
Ⅴ
Ⅲ
Ⅴ
1
Ⅳ
Ⅴ
Ⅰ
Ⅴ
植物種名
Deutzia crenata
Oplismenus undulatifolius
Boehmeria nipononivea
Houttuynia cordata
Cornus controversa
Macleaya cordata
Weigela hortensis
Clethra barvinervis
Ajuga nipponensis
Solidago altissima
Phytolacca americana
ウツギ
チヂミザサ
カラムシ
ドクダミ
ミズキ
タケニグサ
タニウツギ
リョウブ
ジュウニヒトエ
セイタカアワダチソウ
ヨウシュヤマゴボウ
南部
(4)
1
2
3
3
3
Ⅴ:各グループで80%以上の調査区で出現,Ⅳ:60~79%,Ⅲ:40~59%,Ⅱ:20~39%,Ⅰ:1~19%,空白:出現な
し。各グループの調査区数が5未満の場合には,調査区数を示す。
分類グループ名の下にある( )は,調査区数を示す。
3)森林表土採取地点の攪乱程度と外来種の占める割合
攪乱程度の指標として、採取地点から最も近い集落までの距離を用いた。近隣集落から
の距離が遠くなるほど外来種の占める割合が低かった(tukey 法、p<0.05)。
また、森林伐採が行われてから 3 年が経過した場所では、林縁からの距離が近いほど外
来種の占める割合が高く、林縁からの距離が遠いほど外来種の占める割合が低くなる傾向
がみられた。
以上のことから、緑化材料として利用するために森林表土を採取する場合、攪乱を受け
た場所の近くで採取すると、外来種が多く含まれ、埋土種子相が汚染されており、地域生
態系に影響を及ぼすものと推察される。
種数
個数
外 20
来
種 15
の
10
割
合
5
・
% 0
0
500
1,000
1,500
2,000
近接集落からの距離・m
図 35. 近隣集落からの距離と外来種の占める割合との関係
29
外
来
種
の
割
合
・
%
種数
個数
50
40
30
20
10
0
0
20
林縁からの距離・m
図 36. 林縁からの距離と外来種の占める割合との関係
40
4)連続斜面における埋土種子の分布
スギ林内で、尾根部から谷部にかけての連続斜面において、10m 間隔で森林表土を採取
し、実生出現法によって埋土種子相を調査するとともに、採取地点の斜面勾配と、土壌含
水率を測定した。その結果、谷部等の緩勾配の地点では、個体数や出現種数は多くなる傾
向がみられ、重力作用によって埋土種子が集中しているものと推察された。一方、同様の
緩勾配の地点でも、土壌含水率によって出現種組成は異なる傾向がみられた。
M1
M2
1.00
1.00
15
0.50
比
高
差
・
m
0.00
-0.50 -30
-20
-10
±0
+10
+20
+30
-1.00
標
高
+40 10 差
・
5 m
15
0.50
比
高
差
・
m
0.00
-0.50
-20
-10
-1.00
-1.50
0
0
-2.00
水平方向・m
図 37. 谷地形の形状
M1
120
45
40
90
35
60
30
30
25
0
M2
120
種
数
・
0
.
7
㎡
個
数
・
1
L
45
40
90
35
60
30
30
25
0
20
個数
種数
種
数
・
0
.
7
㎡
20
-20 -10 ±0 +10 +20
-30 -20 -10 ±0 +10 +20 +30 +40
水平方向・m
図 38. 森林表土採取地点の個数と種数
M1
M2
60.0
土
壌
含
水
率
・
%
±0
標
高
10
差
+10 +20
・
m
5
-1.50
-2.00
個
数
・
1
L
地点上部
地点下部
採取地点
20
1.50
20
1.50
土
壌
含
水
率
・
%
50.0
40.0
30.0
20.0
10.0
60.0
50.0
40.0
30.0
20.0
10.0
0.0
0.0
-30
-20
-10
±0
+10
+20
+30
図 39. 森林表土採取地点の土壌含水率
+40
-20
-10 ±0 +10
水平方向・m
+20
30
5.森林表土利用緑化工法のまとめ
森林表土利用緑化工法の一つ、表土吹付工法は、従来工法と比較して、初期緑化が遅れ
るものの、地域固有の植物種による多様性緑化が図れることが明らかになった。
初期緑化の遅れについては、切土のり面の場合、表土割合を増やすか、追加播種を行う
ことで、初期緑化の速度を高められることがわかった。
今回、試験施工した表土吹付工法(切土のり面の場合)は、森林表土を人力採取し、吹
付厚 3 ㎝、表土の配合割合を 2 割とした場合の試算結果は、
100 ㎡あたり¥4,738-であった。
また森林表土の採取場所によって、緑化成績にばらつきが生じたため、表土の採取場所
による埋土種子ポテンシャルの把握を行った。その概要は、以下のとおりである。
①埋土種子相は、気候にはあまり影響を受けない。
②人為的攪乱を受けた場所の近くで採取すると、外来種が多く含まれる。
③谷部等の緩勾配の地点では、埋土種子ポテンシャルが高い。ただし同様の緩勾配の
地点でも、その地点の土壌含水率によって出現種の種類は異なる傾向がみられる。
これらの調査結果を踏まえて、森林表土の採取場所を決定し、表土吹付工法に用いると、
より自然環境に配慮した、緑化成績のよい森林表土を利用した緑化が可能と考えられる。
31
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