...

目 次

by user

on
Category: Documents
22

views

Report

Comments

Description

Transcript

目 次
ISSN 0388-4252
JOURNAL OF MECHANICAL ENGINEERING LABORATORY
Vol. 53
July 1999
目 研 No. 4
次
究
視野内の目標点を追跡するビジョンを用いた車両のラテラル制御アルゴリズム
............................................. 森 博昭・加藤 晋・津川 定之 ....(131)
1
ビジョンをもつ自律車両におけるラテラル制御に対する視野の影響
......................................... 柳谷 正章・富田 康治・津川 定之 ....(139)
9
位相シフトロンキー干渉計による波面位相計測
............................日比野 謙一・D.I.FARRANT・B.W.WARD・B.F. OREB ....(145)15
黄信号時におけるドライバ挙動のばらつきの定量化:速さのばらつきと通過停止のばらつき
.................................................... 重田 清子・津川 定之 ....(152)22
機 械 技 術 研 究 所
茨 城 県 つ く ば 市 並 木
Published by
Mechanical Engineering Laboratory
Namiki Tsukuba-shi
Ibaraki Japan
JOURNAL OF MECHANICAL ENGINEERING LABORATORY
July 1999
Vol.53, No.4
Technical Papers
A Lateral Control Algorithm for a Vision-Based Vehicle
with a Moving Target in the Field of View
............................. Hiroaki MORI, Shin KATO & Sadayuki TSUGAWA ..............(131) 1
Effects of a Field of View on Lateral Control Performance
in a Vision-Based autonomous Vehicle
................... Masaaki YANAGIYA, Kohji TOMITA & Sadayuki TSUGAWA..............(139) 9
Quantitative Wavefront Measurement with a phase shifting Ronchi interferometer
..................... Kenichi HIBINO, D.I.FARRANT, B.W.WARD & B.F.OREB ..............(145)15
Quantitation of Dispersion of Driver Behavior during Yellow Traffic Signals :
Dispersion on Vehicle Speeds and Passing/Stopping
....................................................Kiyoko SHIGETA & Sadayuki TSUGAWA ...............(152)22
Published by
Mechanical Engineering Laboratory
The Agency of Industrial Science and Technology
NamikiTsukuba-shi
Ibaraki Japan
−視野内の目標点を追跡するビジョンを用いた車両のラテラル制御アルゴリズム−
研
131
究
視野内の目標点を追跡するビジョンを用いた
車両のラテラル制御アルゴリズム
森 博昭 1・加藤 晋 2・津川 定之 2
A Lateral Control Algorithm for a Vision-Based Vehicle with a Moving Target in the Field of View
by Hiroaki MORI, Shin KATO & Sadayuki TSUGAWA
Abstract
This paper presents a new lateral control algorithm for a vision-based, autonomous vehicle in the Automated Highway
Systems, and it describes the introduction and the characteristics of the algorithm, and the simulation of vehicle driving and
experiments with a mobile robot when the algorithm is applied to.
The algorithm provides steering control to drive an autonomous vehicle towards a target point that the onboard controller defines in a field view of the onboard machine vision system. The target point is put at an appropriate location with an
appropriate heading of the vehicle taking account of a future path of the vehicle. The steering control is found as a function
of the location and the heading. The procedure is repeated in every control period or in every several control periods, which
enables the vehicle to drive along a supposed path. The algorithm is an extension of an algorithm that supposes an onboard
locating system, and has a closed loop structure although the original algorithm has an open loop structure.
Following the derivation of the algorithm, the characteristics of the algorithm is considered with respect to the steady
state and the transient state ones. The results show that the location of a target point must be found regarding the vehicle lateral acceleration, the tracking error, and the driving distance after that the oscillation in the trajectory disappears, and that
an appropriate location is about 10 to 15 [m] in front of a vehicle. The simulation studies of the vehicle driving and the
experiments with a small, vision-based mobile robot when the algorithm is applied to lane following, lane changing and
garaging were conducted to show the feasibility of the algorithm. The algorithm is applicable to various maneuvers.
Key Words: Vision-based vehicle, Lateral control, ITS, AVCSS, AHS, Automated driving.
舵量を決定する方法である.自律的方法には,インフラ
ストラクチャに特別の参照物が不要で走行経路が自由
1.まえがき
自動車の自動運転の目的は,オートメーションの導
入による事故の防止と渋滞の解消にある 1).自動運転シ
ステムを構成する車両の制御には,ラテラル制御とロン
ジチュージナル制御があり,前者は操舵制御を,後者は
速度・車間距離制御を意味する 2).ロンジチュージナル
制御が重要な役割を果たすのはプラトゥーン走行時で
あるが,ラテラル制御は,プラトゥーン走行時だけでな
く単独車両の自動運転においても必須である.
ラテラル制御は,操舵量の決定に使用する路上の参
照物の性質によって二つの方法に分けられる.一つは車
に設計できるという利点があるが,反面,車両のセンサ
の信頼性が問題となる.一方,車両とインフラストラク
チャの協調による方法には,インフラストラクチャに特
別に参照物が必要という欠点があるが,参照物検出の信
頼性が自律的方法に比較して高い点が利点となる.
この研究では,マシンビジョンに基づく新しいラテ
ラル制御アルゴリズムを提案し,シミュレーションに
よってその特性を明らかにし,さらにこのアルゴリズム
を用いた小型移動ロボットの走行実験について述べる.
ここで提案するラテラル制御アルゴリズムでは,マシン
両のマシンビジョンで路上の既存の参照物を検出して
操舵量を決定する,道路側すなわちインフラストラク
ビジョンで得た車両前方の道路シーン内に設定した,目
標とする点(目標点)とその点において車両がとるべき
チャに特別の設備を必要としない自律的方法であり,他
方は,車両のセンサで道路側に用意した特別の参照物を
方位(目標方位)から操舵角を求める.このアルゴリズ
ムの特長は,走行経路が柔軟に設定できることにある.
目標点を適宜設定することによって,車線追従や車線変
検出し,車両とインフラストラクチャの協調によって操
1
2
筑波大学連携大学院,現在,日産自動車(株)
物理情報部知識工学研究室
更だけでなく,障害物回避,車庫入れ,縦列駐車時のラ
テラル制御が可能となる.
−1−
132
−機械技術研究所所報 Vol.53(1999)
,No.4 −
2.ラテラル制御アルゴリズムの設計
著者の一人が提案した地点追従法 3) と呼ばれるラテ
ラル制御アルゴリズムは,デッドレコニングを前提とし
ているためにオープンループ構造をもち,制御システム
このとき,三次曲線(1)と車両モデル(2)から,車
両が目標点を与えられた方位で通過するために,現在と
るべき操舵量 δ は,車両の現在の目標点の位置(x1,y1)
とそこにおける車両の目標方位 θ1 の関数として表され,
δ = arc tan 2lb
としては好ましくない.この研究で提案するアルゴリズ
ムは,地点追従法にマシンビジョンによる道路シーンの
検出を追加してクローズドループ構造化を図ったアル
ゴリズムである.
2.1
地点追従法
地点追従法は,車両の予定経路を,点列と各点にお
ける車両のとるべき方位で与え,順次,与えられた方位
でその点を通過するように車両を操舵するアルゴリズ
ムである.地点追従法によるラテラル制御アルゴリズム
を図1を用いて説明する.現在の車両の位置と方位,お
よび,車両が現在目標としている目標点とそこでの目標
方位を,それぞれ,固定座標系の X-Y 系で(X0,Y0),Θ0,
,Θ1 とする.新たに移動座標系の x-y 系を,車
(X1,Y1)
両の代表点が原点に,車両の方位が0,すなわち x 軸と
一致するように定義する.このとき目標点の位置とそこ
での目標方位は,x-y 系で(X1,Y1)
,θ1 と表されるもの
とする.このとき,移動座標系内で,原点と目標点を通
り,それぞれの点で車両方位を接線方向とする三次曲線
3
y = ax + bx
2
(1)
a = ( x 1 tan θ 1 – 2y 1 ) ⁄ x 1
3
b = ( 3y 1 – x 1 tan θ 1 ) ⁄ x 1
2
となる.車両の制御周期ごとに,車両の現在の位置と方
位を用いて移動座標系の x-y 系を生成し,式(3)から
求めた操舵量を用いると,車両は,与えられた目標点を
与えられた目標方位で通過することができる.
車両の現在位置と方位を用いて制御周期ごとに移動
座標系を生成するために,車両はデッドレコニング機能
をもつことが必要となる.したがってこのアルゴリズム
を用いる制御系はオープンループ系である.
2.2 移動目標点追従法の導出
車両の現在の目標点の位置(x1,y1)とそこにおける車
両の目標方位 θ1 をデッドレコニングに基づいて求める
のではなく,マシンビジョンで検出した道路シーンに基
づいて道路シーン内に目標点と目標方位を設定すれば,
地点追従法をクローズドループ構造をもつラテラル制
御アルゴリズムに拡張することができる.この研究で提
案するのはこの拡張を行ったアルゴリズムで,マシンビ
追従法において目標点は,マシンビジョンで検出した道
路シーンに含まれる,レーンマーカ,路肩,ガードレー
ル,ランドマークなどに基づいて設定する.
である.この三次曲線は車両の予定経路を表している.
一方,車両のキネマティックモデルは
v cos θ
v sin θ
(3)
ジョンの視野内に設定した目標点に追従するように操
舵を行うことから移動目標点追従法とよぶ.移動目標点
を一意に定めることができる.ここで
・
x =

・
y =

・
θ =
2
= arc tan [ 2l ( 3y 1 – x 1 tan θ 1 ) ⁄ x 1 ]
(2)
v
-- tan δ
l
移動目標点追従法によるラテラル制御の原理を図2
に示す.制御周期 i において車両は,マシンビジョンの
視野内に設定した目標点 Ti を用いて操舵を行う.この
とき車両の操舵角 δi は,目標点の移動座標系での位置
(xi,yi)と方位 θi を用いて
と表される.ここで,(x,y)は車両の位置,θ は車両の
δi = arc tan 2l ( 3y i – x i tan θ i ) ⁄ x i
方位,v は車両の速度,δ は操舵角,l は車両のホイー
ルベースである.
図 2 目標点追従法の説明
図 1 地点追従法の導出
−2−
2
(4)
−視野内の目標点を追跡するビジョンを用いた車両のラテラル制御アルゴリズム−
133
で表される.制御周期 i+ 1では目標点 Ti+1 に基づいて
操舵量を決定する.
目標点の位置の更新方法には,1制御周期ごとの更
である.
アルゴリズムの特性を明らかにするために行うシ
ミュレーションでは,使用する二輪車モデルの応答が,
新と,数制御周期ごとの更新の2通りの方法がある.前
者では車両の移動とともに目標点は絶対座標系内で移
アルゴリズムの導出に用いたキネマティックモデルの
応答とほぼ同じであることが必要である.Tsugawa ら 4)
動するが,移動座標系内では移動しないこともある.後
者では数制御周期の間は目標点は絶対座標系内で不動
は,車両の操舵角を正弦波状に変化させてオープンルー
プ応答を求め,二つのモデルの差は,実用上十分に小さ
で,通常は目標点が視野から外れた場合に新たな目標点
を設定することになる.1制御周期ごとに目標点を更新
いことを明らかにしている.したがってこの研究では,
二輪車モデルを用いたシミュレーションによって特性
する方法は,図2に例示した車線追従などに,数制御周
期ごとに更新する方法は,後述する車庫入れなどに適用
の解明を行う.シミュレーションで用いたパラメタは
m = 1590 [kg]
する.
アルゴリズムの導出から明らかなように,ここで提
Iθ = 2920 [kg m2]
lf = 1.22 [m]
案したアルゴリズムの特徴は,自律車両のための走行経
路が柔軟に設計できる点にある.
lr = 1.62 [m]
cf = cr = 2 × 60000 [N/rad]
で,文献 5) に拠っている.またシミュレーションのた
3.アルゴリズムの特性
めの制御周期は 0.05 [sec] で,ルンゲ・クッタ・ギル法
で積分を行った.ただし,シミュレーションでは道路
移動目標点追従法の特性を,定常特性と過渡特性の
両面からシミュレーションで明らかにする.
3.1
シーン画像処理などに起因する時間遅れは考慮してい
ない.この時間遅れは補償することが可能である 6).
シミュレーションのための車両モデル
3.2
定常特性
移 動目標 点追従 法の導 出に 用いた 車両モ デル は,
コーナリングフォースを考慮していないキネマティッ
クモデルである.しかし,走行制御のシミュレーション
車両を円に沿って一定速度で走行させることによっ
てここで提案したラテラル制御アルゴリズムの定常特
を行う場合,より現実に近い特性を得るためには,コー
ナリングフォースを考慮した車両モデルを用いる必要
性を求める.こうして求めた特性を定常特性とよぶの
は,道路状況や速度が一定という条件下での特性である
からである.目標点は,図3に示すように車両前方の距
がある.そのためにここではコーナリングフォースを考
慮した二輪車モデルをシミュレーションで用いる.二輪
車モデルの状態方程式は
車両は,移動目標点を制御周期ごとに更新すること
によって制御した.図4は,車両が円周から逸脱しない
2
d v
---- y =
dt θ
a1 –m v x + a2
– --------- --------------------------vy
mv x
mv x
a3
--------lθ vx
θ
a4
– --------lθ vx
+
b1
b2
離 L の円周上に設定し,その点における目標方位は円の
接線方向とする.
δ
で走行しうる最高速度と目標点までの距離Lの関係を円
の半径 R をパラメタとして表したものである.
(5)
制御周期ごとに目標点を更新すると,車両を円周に
沿って走行させる場合,設定経路である円周と車両の走
と表される.ここで
行軌跡が一致しないで追従誤差が生じる.図5は,追従
a1 = cf + cr
a 2 = c r lr – cf lf
a 3 = – l f cf + l r c r
2
2
a4 = lf cf + lr c r
b 1 = cf ⁄ m
b 2 = lf cf ⁄ m
である.またパラメタは,
,
v :速度ベクトル(vx,vy)
αf , αr:それぞれ前輪,後輪の横滑り角,
θ :絶対座標系における車両方位,
δ:前輪の操舵角,
m :車両の全質量,
Iθ :車両重心周りの全慣性モーメント,
l f ,lr:それぞれ車両重心から前輪軸,後輪軸までの距離,
l :ホイールベース,l=lf +lr,
cf,cr:それぞれ前輪,後輪のコーナリングスティフネス,
−3−
図 3 定常特性の評価
134
−機械技術研究所所報 Vol.53(1999)
,No.4 −
図 4 最大速度と目標点までの距離の関係
図 6 過渡特性の評価
図 5 追従誤差 0.3[m] 以内のときの最大速度と目標点ま
での距離の関係
誤差 0.3[m] 以内で走行可能な最高速度と目標点までの
距離 L の関係を円の半径 R をパラメタとして表したも
のである.
図4,図5から次のことがわかる.円周上に置いた
目標点に基づいて車両を円周に沿って走行させると,
50[m/s] 以下の速度で安定した走行が可能である.また,
図 7 最大横加速度と目標点までの距離の関係
遠方に目標点を置くと走行速度を大きくすることがで
きる.これは,人間が高速道路などで運転するときに見
3.3
過渡特性
られる,より遠方を見ることによってより安定した走行
が可能になるのと同じ現象である.円の半径が大きくな
このアルゴリズムの過渡特性を,図6に示すように
目標点を初期の車両進行方向と垂直な方向に移動させ
るとこの傾向はより強くなる.
遠方に目標点を置くと,車両の軌跡は目標の経路か
て求める.このときの目標方位は,常に初期の車両進行
方向とする.こうして求めた特性を過渡特性とよぶの
ら逸脱して追従誤差を生じる.最大誤差を 0.3[m] とい
う制約で走行可能な最大速度は,車両から目標点までの
は,車両のラテラル制御系にステップ入力を与えたとき
の応答を求めていることと等価であるからである. 図6に示されるように車両は,横方向へ移動した目
距離が大きくなれば,小さくなる.すなわち車両の近く
に目標点を置いたほうが,小さな追従誤差でより高速で
走行することができる.しかしながら,近くに目標点を
置くと横加速度が大きくなり,乗り心地が悪くなる.追
従誤差と横加速度のトレードオフから,目標点は車両の
標点に追従する.図6に示す走行軌跡は,目標点の横方
向への移動距離を 0.5[m],車両の速度を5 [m/s],目標
点までの距離 L を 10[m] として求めたものである.
図7は,目標点の横方向への移動を図6と同様に,
前方 10 ∼ 15[m] に置くのが適切である.乗り心地を重
視すれば車両から遠方に,経路追従性を重視すれば車両
0.5[m] として,最大横加速度と車両から目標点までの距
離Lの関係を車両の速度をパラメタとして表したもので
の近くに目標点を置くのがよい.
ある.この図から目標点までの距離 L が長くなれば横加
速度が減少することがわかる.
−4−
−視野内の目標点を追跡するビジョンを用いた車両のラテラル制御アルゴリズム−
135
図 8 収束距離と目標点までの距離の関係
目標点が移動することによって車両は車線変更を行
い,車両の走行軌跡は振動的になる.この振動は車両の
進行とともに減衰する.図8は,目標点の移動を 0.5[m]
図 9 移動目標点追従法による車線追従
とし,振動が目標点の移動量の1 % 以内,すなわち
0.005[m] 以内に減衰するまでの走行距離と目標点まで
の距離Lの関係を車両の速度をパラメタとして表したも
のである.この図から目標点までの距離 L を大きくする
と減衰距離が大きくなることがわかる.
なお,車速 10[m/
s] のときよりも 5[m/s] のときの方が収束時間が長い結
果となっているのは,二輪車モデルが低速域で不安定性
をもつためである.
車両に車線変更をさせる過渡状態では,車両から目
標点までの距離が 10[m] 以下になると,急激に横加速度
が増加する.一方,目標点までの距離が増加すると,車
図 10 収束距離と目標点までの距離の関係
線変更後の車両の挙動が振動的になり,新しい車線上に
収束しにくくなる.新しい車線上へ収束するまでの距離
の観点からは,車両から目標点までの距離が小さい方が
望ましい.したがって,過渡特性の観点からも,定常特
性の場合と同様に,目標点までの距離は,横加速度や振
動的挙動の減衰のトレードオフを考える必要があり,車
両の前方 10 ∼ 15[m] に設定するのが妥当である.
図 11 目標点をランプ状に変化させたときの車線変更
4.走行制御のコンピュータシュミレーション
移動目標点追従法では,目標点の設定によって車両
の経路を自由に設定できる.また,同一の走行経路に対
しても目標点の設定方法は一意ではなく,自由度があ
る.ここでは,提案したアルゴリズムを車線追従,車線
変更,車庫入れに適用したときの走行制御のコンピュー
タシミュレーション結果について述べる.
4.1 車線追従と車線変更
車線追従は,路肩やレーンマーカを利用して走路の
中央に仮想的に置いた参照線上に車両から距離Lの位置
に設定した目標点とそこでの目標方位を用いて操舵角
を求めて車両を走行させる.目標方位は,参照線が直線
のときには参照線方向とし,円に沿って走行するときは
参照円の接線方向とした.目標点は 1 制御周期ごとに更
新した.目標点の視野内での相対位置は不動である.車
線追従時の目標点列と軌跡を図9に示す.円に沿って走
る場合には,車両は設定した目標点上を走行せずオフ
セットが生じる.このオフセットは,既述したように車
両から目標点までの距離によって変化する.
車線変更は,図 10 のように直線走行時に,目標点を
車線幅だけ移動させることによって可能となる.目標点
の移動をステップ状ではなく,ランプ状に,あるいは曲
線状に変化させても車線変更を行うことが可能である.
図 11 は,ランプ状に目標点を移動して車線変更を行わ
せた結果である.障害物回避は,車線変更の繰り返しに
よって行うことができる.
−5−
136
−機械技術研究所所報 Vol.53(1999)
,No.4 −
4.2 車庫入れ
車庫入れは,車線追従や車線変更とは異なって,目
標点を絶対座標系に固定し,したがって数制御周期ごと
に更新することによって行う.道路から車庫内のあらか
じめ指定された位置に指定された方位で車両を駐車さ
せる場合について考える.
車両の初期位置を I,終点を T とする.終点 T は目標
点の一つであるが,図 12 に示すように,この他に途中
に目標点 M を設定する.この点 M は,車両が点 I にお
いて目標点 M を対象に操舵角を求めたときに 0 となり
(図 12 の直線 L1 上で 0 となる),かつ初期位置におけ
5.走行実験
ここで提案したアルゴリズムを小型屋内移動ロボッ
トに実装して車線追従,車線変更,車庫入れの走行実験
を行い,アルゴリズムの実行可能性と有用性を検証し
た.
5.1 移動ロボットの構成
図 14 に走行実験中の移動ロボットを示す.移動ロ
ボットは,差動操舵型で,カラー CCD カメラ(6.5[mm]
の広角レンズ装着)とノート型パーソナルコンピュータ
る車両の方位と終点における車両の方位の二等分線上
に置く.点 M での目標方位は,絶対座標系で終点にお
を装備しており自律移動が可能である.移動ロボットの
大きさは,およそ縦 50[cm],横 38[cm],高さ 70[cm] で,
トレッドは 34[cm] である.
ける目標方位の半分とする.目標点の更新は,車両が目
標点近傍を通過するときに行う.このときの走行軌跡と
目標点を図 13 に示す.
移動ロボットの構成を図 15 に示す.この移動ロボッ
トでは,カラー CCD カメラから得た走路画像をフレー
ムメモリに取り込み,画像処理を行い,目標点位置と方
位を算出し,操舵量を計算し,左右のモータを制御す
る.差動操舵型車両に対する操舵量は,式(1)と,差
動操舵型車両のキネマチックモデルの,式(2)の第 3
式に対応する式
・
θ = ( vr – v l ) ⁄ d
v = ( vr + v l ) ⁄ 2
(6)
から
 v r = v ( 1 + db )

 v l = v ( 1 – db )
図 12 車庫入れ時の目標点の設定
図 14 移動ロボット
図 15 移動ロボットの構成
図 13 車庫入れ時の走行軌跡
−6−
(7)
−視野内の目標点を追跡するビジョンを用いた車両のラテラル制御アルゴリズム−
137
と求めることができる.ここで,vr,vl はそれぞれ右輪,
左輪の速度,d はトレッドである.この操舵量は,本質
的には式(3)と同一である.また,移動ロボットは,
モータ指令値を用いてデッドレコニングを行うことが
できる.
5.2
車線追従と車線変更
移動ロボットを用いて車線追従と車線変更の実験を
行った.その走行軌跡を図 16 に示す.走行速度は約
6 [cm/sec] であった.
車線追従は,目標点を車両前方 0.5[m] に置き,目標
方位はレーンマーカに沿う方向として行った.図 16 か
らこのアルゴリズムによって車線追従が可能であるこ
とがわかる.
車線変更は,目標点の位置を車両前方0.5[m],
0.75[m],
1.0[m] の三通りに選び,目標点を水平方向に 0.15[m] 移
図 17 車庫入れの道路環境
動することによって行わせた.図 16 で本来一致すべき
三本の軌跡が一致しないのは軌跡を記録するために用
いたデッドレコニングの精度が不十分であることに起
因し,車線変更開始時に車輪がスリップしたためであ
る.移動ロボットを用いた車線変更の走行実験でも,第
3章のシミュレーションで明らかにした,車両から目標
点までの距離が大きいほど収束距離が長くなるという
性質が明らかとなった.この実験における制御周期は
400[ms] であった.
図 18 車庫入れ時の目標点と走行軌跡
図 18 は,車両の初期値を
(X=0.60, Y=1.15, Θ =0.51)
(X=0.46, Y=1.29, Θ =0.76)
図 16 車線追従と車線変更時の移動ロボットの走行軌跡
5.3 車庫入れ
車庫入れは,図 17 に示すような走路環境で行った.
絶対座標系の原点は車庫の終点とした.車両の現在位置
の測定は,車両のマシンビジョンでとらえた,路上の 2
点のランドマークを用いて算出した.床面に対して明度
差の大きい黒色テープ(18 × 21[mm2])を床面に貼付
(X=0.33, Y=1.35, Θ =1.03)
の三通りに選んだときの車庫入れの軌跡である.最初
の目標点における目標方位は,それぞれ,30[ 度 ],45
[ 度 ],60[ 度 ] である.図 18 の走行軌跡からいずれの
初期位置に対しても最終目標位置に車両が誘導され,車
庫入れが行われていることがわかる.この実験における
制御周期は 70[ms] であった.
してランドマークとした.途中の目標点と目標方位は,
既述したように,車両初期位置と最終目標点から決定す
る.目標点の更新は,車両と目標点の距離が 0.1[m] 以
下になったときに行った.
6.あとがき
この研究では,マシンビジョンを用いた自動車の自
動運転のための新しいラテラル制御アルゴリズムを提
案し,コンピュータシミュレーションと小型移動ロボッ
−7−
138
−機械技術研究所所報 Vol.53(1999)
,No.4 −
トを用いた実験によってその実行可能性と有用性を示
した.
提案したアルゴリズムの特長は以下の三点にまとめ
また,このアルゴリズムの適用範囲と適用方法を明
らかにすることも必要である.実際に我々が自動車を運
転する場合の,たとえば右折,左折,幅寄せといった多
られる.
(1)このアルゴリズムは,マシンビジョンで検出し
種多様な操縦に対するこのアルゴリズムの適用可能性
を調べることも残された課題のひとつである.
た走路上に,車両の予定経路に基づいて設定した目標点
とそこにおいて車両がとるべき方位から操舵角を与え
発表年月日
る.したがって,このアルゴリズムの第一の特長は,マ
シンビジョンが検出した道路シーン内に大きな自由度
で目標点を設定することができ,走路環境に応じて柔軟
に車両の予定経路を設計することができる点にある.
(2)このアルゴリズムの第二の特長は,アルゴリズ
ムがフィードバック制御系を構成する点にある.このア
ルゴリズムは,デッドレコニングに基づくアルゴリズム
を拡張したものであるが,元のアルゴリズムがオープン
ループ系であるのに対し,マシンビジョンによって道路
シーンを検出することによって,制御系として好ましい
クローズドループ系(フィードバック系)を構成するこ
とを可能としている.
(3)第三の特長として,さらにこのアルゴリズムが
マシンビジョンや車両に依存しない点をあげることが
できる.マシンビジョンに要求される機能は,一般的な
道路シーンの検出であり,特殊な処理は要求されない.
またこのアルゴリズムは,自動車型,差動操舵型の両方
の車両に適用できる.
しかしながら,この研究にはいくつか残された問題
がある.まず,マシンビジョンが検出した道路シーン内
に設定する目標点の位置とそこにおける車両の方位の
最適化についてはここでは考察していない.実行可能な
操舵角を与える目標点の設定には自由度が大きいため
に目標点位置の最適化が必要である.経路追従特性,操
1 )機械技術研究所研究発表会 平成 10 年 5 月 21 日
2 )IEEE インテリジェントビークルズシンポジウム
'98 平成 10 年 10 月 29 日
原稿受付:1999 年 5 月 17 日
参考文献
“自動車の自動運転システム”,人工知能
1 )津川定之,
学会誌,14-4(1999)(掲載予定)
.
2 )津川定之,“自動車のシステムにおける制御アルゴ
リズム”,自動車技術,52-2(1998)pp.28-33.
3 )Tsugawa,S.et al.“Steering Control Algorithm for
Autonomous Vehicle”, Proceedings of 1990 JapanU.S.A.Symposium on Flexible Automation(1990)
pp.143-146.
4 )Tsugawa, S.et al.“Optimal Design of Vision System for
Laternal Control of Automation Vehicle”,Proceedings of
4th International Symposium on Advanced Vehicle
Control (1998)pp.369-374.
5 )Košecká,J.et al,“Vision-Based Lateral Control of
Vehicles”,Proceedings of IEEE Conference on ITS
(1997)pp.900-905
6 )富田康治,ほか:“マシンビジョンによるインテリ
ジェントビークルのプレビューラテラル制御”,シ
ステム制御情報学会論文誌,7-2(1994)pp.35-41.
縦性,安定性,乗り心地などの観点から最適な目標点の
最適化を考える必要がある.
−8−
−ビジョンをもつ自律車両におけるラテラル制御に対する視野の影響−
研
139
究
ビジョンをもつ自律車両におけるラテラル制御
に対する視野の影響
柳谷 正章 1・富田 康治 2・津川 定之 2
Effects of a Field of View on Lateral Control Performance in a Vision-Based autonomous Vehicle
by Masaaki YANAGIYA, Kohji TOMITA & Sadayuki TSUGAWA
Abstract
This paper addresses effects of a field of view on lateral control performance in a vision-based autonomous vehicle with
simulation studies. When a vehicle drives along a circle with a lateral control algorithm proposed here, the performance is
evaluated from a tracking error and ride quality for locations and sizes of the field of view. The results show that a field of
view covering from 10[m] to 30[m] in front of a vehicle is the optimal with respect to both the error and the ride quality,
and it is independent from the vehicle speed.
Key Words: Vision-based autonomous vehicle, Lateral control, Look-ahead distance, ITS, AVCSS, AHS, Automated driving
ルゴリズムの特徴は,参照線の検出のロバスト性と各種
挙動に対する適用可能性 7) にある.ラテラル制御成績
1.まえがき
自動運転車両が単独で走行しても車群で走行して
も,ラテラル制御は自動運転システムにおいて必要不可
欠な制御問題 1) であり,既に多くの研究がこの分野で
に対する視野の影響をコンピュータシミュレーション
で調べ,最適視野を求めている.
2.ラテラル制御アルゴリズム
なされてきている 2).ビジョンをもつ自律車両における
ラテラル制御は,レーンに対する予見特性が特徴であ
この研究を進めるためにはラテラル制御アルゴリズ
り,それによって車両の安定性と乗り心地をはじめとす
る制御成績が改善される可能性がある 3).
ムを特定する必要があるために,まず,この研究で用い
る,ビジョンをもつ車両のためのラテラル制御アルゴリ
しかしながら,ビジョンをもつ車両のラテラル制御
の予見特性が常に良い制御特性を示すとは限らない.例
えば、橘ら 4) は,固定前方注視距離において検出した
ズムを説明する.このアルゴリズムは,繰舵角を計算す
るために視野内の全参照線情報を用いる.Fig.1 は,xy 座標系において,ビジョンをもつ車両,その視野,参
路上の参照線に沿って繰舵されるビジョンをもつ車両
を用いて実験を行い,車両が 50[km/h] で走行するとき,
照線を示している.車両は参照線上を走行することに
なっており,この参照線をビジョンシステムで検出す
車両が安定に走行最適前方注視距離は,直線路に対して
は 25[m],
カーブに対しては 20[m] であることを示した.
る.新しい座標系である x-y 座標系を,Fig. 1 に示すよ
うに原点が車両の現在位置,x 軸が車両の方位となるよ
Košecká ら 5) は,ビジョンをもつ車両においてシステ
ムの安定性と成績にとって適切に前方注視距離を選ぶ
うに定める.ビジョンシステムによって捉えられる参照
線を三次曲線
ことが重要であることを示した.ビジョンをもつ車両に
おける適切な前方注視距離の選択の重要性にもかかわ
らず,ラテラル制御成績に対する視野の影響に関する問
題についてごく少数の研究がなされているだけである.
この研究では,この問題を,視野内の参照線情報を
最大限利用するラテラル制御アルゴリズム 6) を乗用車
に用いた場合について扱っている.このラテラル制御ア
y = Ax3+Bx2
(1)
で近似すると,参照線上に沿って車両を走行させる前輪
の繰舵角は
δ = arctan2lB
(2)
で与えられる.このアルゴリズムの導出に用いた車両モ
1
2
筑波大学連携大学院
物理情報部知識工学研究室
−9−
140
−機械技術研究所所報 Vol.53(1999)
,No.4 −
Fig.2 The notation of the two wheel vehicle model.
cf,cr:それぞれ前輪,後輪のタイヤのコーナリングス
ティフネス
Fig.1 The lateral control algorithm.
を用いて記述される.状態方程式は
デルは,
 x = vx cos θ

 y = v x sin θ

vx

 θ = ----- tan δ
l

2
d
dt
(3)
で記述されるキネマティックモデルである.ここで,
(x,y)は車両の現在位置,θ は車両の現在方位,vx は車
両の現在速度,δ は前輪繰舵角,l は車両のホイール
ベースである.x-y 座標系を定義し参照線を三次曲線で
近似するという手続きを各制御周期ごとに繰り返し,車
両を参照線に沿って走行させる.制御周期は必ずしも一
定である必要はなく,現在の制御周期が終了し次第,す
ぐにつぎの制御周期を開始することができる.
このラテラル制御では,必ずしも常に参照線を忠実
に辿るように車両を繰舵するとは限らない.不連続な
線,または,ずれた線も参照線として使うことができ
る.このアルゴリズムは小さな曲率の道路での走行に適
用される.
νy
θ
=
a 1 – mv x + a 2
– ---------- ------------------------ ν y
m νx
m νx
a3
---------Iθ νx
a4
– ---------I θ νx
θ
+
b1
b2
δ
(4)
で表される.
ただし,a1 = cf + cr, a2 = cr lr - cf lf, a3 = - lf cf + lr cr, a4
= lf2cf + lr2cr, b1 = cf /m, b2 = lf cf /Iθ.
式(3)と式(4)の二つ車両モデルで記述される車
両の走行軌跡を,前輪にサイン波を入力して比較する.
このシミュレーションで用いた車両のパラメタは,m =
1590[kg], Iθ = 2920[kg・m2], lf = 1.22[m], lr = 1.62[m],
cf = cr = 2 × 60000[N/rad] で,これは実験車 5) から引
用した.
Fig.3 は,車両が 10[m/s],20[m/s],30[m/s] で走行し,
振幅 0.1[rad] の 0.1[Hz] と 0.2[Hz] のサイン波を前輪に入
3.シミュレーションの車両モデル
力したときの応答を示す.式(3)と(4)をルンゲ クッタアルゴリズムでステップ幅 0.05[s] で数値積分し
この研究で用いるラテラル制御アルゴリズムは,キ
ネマティックモデルを用いて導出されているが,車両の
た.Fig. 3(a)と 3(d)は,それぞれ 0.1[Hz] と 0.2[Hz]
の入力信号を示す.Fig. 3(b)と 3(e)は,それぞれ原
点付近の車両の軌跡を,Fig. 3(c)と 3(f)は,それぞ
精密な動きを調べなければならないので,制御成績に対
する視野の影響は,二輪車モデルを用いて調べる.した
れ車両の全軌跡を示す.
この結果は,二つの車両モデルでは応答の差が小さ
がって,二つのモデルの開ループ応答を比較し,この研
究では二輪車モデルを用いることの説明を行う.
いということを示している.開ループ制御においてさえ
この差が小さいので,フィードバック制御が用いられれ
Fig.2 に二輪車モデルは,前輪と後輪にかかる力を考
慮したもので,以下の変数とパラメータ
ば,この差はもっと小さくなる.したがって,この研究
では式(4)の二輪車モデルを用いる.
v:速度ベクトル(vx,vy),
αf,αr :それぞれ前輪,後輪の横すべり角,
4.視野が制御成績に与える影響
θ:固定座標系における車両ヨー角,
δ:前輪繰舵角,
この研究では,視野は Fig.4 に示すように,視野深
度 D と視野位置 L で定義し,横方向には充分広く,任
m :車両の全質量,
Iθ:車両重心(CG)周りの全慣性,
lf,lr:それぞれ CG から前輪軸,後輪軸までの距離,
l :ホイールベース,l = lf+lr
意の曲率の参照線を捉えることができるものとする.こ
の研究での制御成績は,平均追従誤差と,乗り心地に関
係する横加速度とで評価する.これらは,車両を円周に
沿って走行させて求める.ここで扱う問題は,視野の深
− 10 −
−ビジョンをもつ自律車両におけるラテラル制御に対する視野の影響−
141
度 D と位置 L,参照線としての円の半径 R,車両の速度
vx をパラメタとして制御成績を求めることである.制御
成績の評価のために,円周に沿った自動運転を,ルンゲ
20[m] の間にあるときに,横加速度がほとんど一定でか
つ最小となり,かつこの深度は車両の速度に依存しない
ことを示している.このとき,横加速度は,多くの場
- クッタアルゴリズムで制御周期 0.05[s] で数値積分を
行ってシミュレートする.
合,ほとんど 0.5[m/s2] 以内にあり,このときよい乗り
心地となる.
4.1
平均追従誤差に対する深度の影響を Fig.6 に示す.こ
の図は,深度が大きくなればなるほど,誤差が小さくな
深度の制御成績に対する影響
視野を構成する二つのパラメタのうちの一つ,深度
D についてまず考える.半径 300[m] の円を参照線とし
ることを示している.横加速度よりも誤差の方が視野の
位置や車両速度に大きく影響される.深度の影響は,参
て車両が走行する場合をとりあげる.式(4)で定義さ
れる横加速度に対する深度の影響が種々の視野位置と
車両速度について Fig.5 に示される.これらの結果は,
照線となる円の半径が異なっても同じ傾向が見られる.
より小さい横加速度とより小さい追従誤差を両立させ
位置と速度の少数の組み合わせを除いて深度が10[m]と
る深度は,ほぼ 20[m] であり,これは最適な深度とみな
すことができる.
Fig.3 Responses of the two vehicle models to sinusoidal inputs.Parameters for
definition of a field of view of a vehicle and a circle as the reference.
− 11 −
142
Fig.4
Fig.5
4.2
−機械技術研究所所報 Vol.53(1999)
,No.4 −
Fig.6
Effects of the location of the field of view on the lateral
acceleration and the mean tracking error when a reference is
a circle with a radius of 300[m].
Fig.7
Effects of the location of the field of view on the lateral
acceleration and the mean tracking error when a reference is
a circle with a radius of 500[m].
Fig.8
Effects of the location of the field of view on the lateral
acceleration and the mean tracking error when a reference is
a circle with a radius of 1,000[m].
Effects of the depth of the field of view on the lateral
acceleration; the parameters in the parentheses are the
location of the field of view and the vehicle speed and, for
example, (10,30)means L = 10[m] and v = 30[m/s].
Effects of the depth of the field of view on the mean
tracking error; the parameters in the parentheses are the
location of the field of view and the vehicle speed and, for
example, (10,30)means L = 10[m] and v = 30[m/s].
位置の制御成績に対する影響
視野深度を 20[m] とし,視野位置または前方注視距離
の制御成績に対する影響を考える.Fig.7 は,円の半径
が 300[m] のときの位置が横加速度と追従誤差に与える
影響を示す.位置が車両から遠方に移動すると,誤差は
増し,加速度は減る.これは,位置を,追従誤差と横加
速度の妥協によって求めなければならないことを意味
する.加速度を 0.5[m/s2] 以下となるように制限すると,
車両速度が 30[m/s] 以内のときには位置を 20[m] よりも
遠方にする必要がある.したがって,最適位置は 20[m]
で,これもまた車両速度から独立である.もっと大きな
半径の円では,Fig.8 と Fig.9 に示すように,横加速度
と誤差が十分に小さいので,視野位置を車両の前方任意
の場所におくことができる.
4.3
最適視野の適用
前述の最適視野は,特定の車両が特定のラテラル制
御アルゴリズムを用いて円周に沿って自動運転を行っ
たときのものであり,したがって必ずしも一般化された
− 12 −
−ビジョンをもつ自律車両におけるラテラル制御に対する視野の影響−
143
結果ではない.ここではこの視野を用いた車線変更につ
いてのケーススタディを示す.
車両が,現在のレーン上の参照線と隣の車線上の参
照線を結ぶサイン波状の参照線に沿って車線変更を行
うとき,視野位置を 20[m] とし,深度を 10[m],20[m],
40[m] と変化させて横加速度を求めた.Fig.10 に横加速
度を示す.深度が 10[m] または 40[m] のときよりも 20[m]
のとき横加速度と横ジャークが小さい.この結果が示す
限りでは,上述の視野は,車線変更に適用したときも最
適であるとみなせる.
5.結論
ビジョンをもつ自律車両の視野がラテラル制御成績
Fig.9
The lateral acceleration on lane changing when the location
of the field of view is 20[m] and the depth is 10[m], 20[m],
and 40[m].
に与える影響をシミュレーションで考察した.参照線を
三次曲線で近似しその係数を用いてラテラル制御を与
えるラテラル制御アルゴリズムを乗用車に適用したと
き,ここで求めた最適視野は車両の前方10[m]から30[m]
にある.この最適視野は車両速度から独立である.
シミュレーションの結果は,視野の位置と深度が,追
従誤差と横加速度に関して以下の特性をもつことを示
している.
1 ) 視野深度が 20[m] 付近のとき,横加速度は,ほとん
どすべての場合の視野位置と車両速度に対してほとん
ど一定で最小となる.視野深度が 20[m] よりも大きくな
ると,横加速度は急激に増加する.
2 ) 横加速度は,視野位置,車両速度,参照線となる円
の半径の変化に敏感である.しかしながら,視野位置を
20[m] 以上にすれば,ほとんどの場合,よい乗り心地を
得ることができる.
3 ) 視野深度が大きくなり,また視野位置が小さくなる
と,追従誤差が増加する.
4 ) 視 野 位 置 ま た は 前 方 注 視 距 離 に 関 す る 結 果は,
ヒューマンドライバによる運転との類似性を示す.前方
注視距離が小さいと,参照線追従時に追従誤差を小さく
するためには車両が振動的となり,大きいと,車両はス
ムーズに走行する.
視野がラテラル制御成績に与える影響をシミュレー
ションで考察した.残された問題には,ここで求めた視
野の種々の道路シーンへの適用可能性のほかに,最適前
方注視距離の解析的設計がある.
原稿受付:1999 年5月 17 日
References
Fig.10 The lateral acceleration on lane changing when the location
of the field of view is 20[m] and the depth is 10[m], 20[m],
and 40[m].
1 )Hedrick, J. K. et al.,"Control Issues on Automated
Highway Systems,"IEEE Control Systems Magazine,
Vol.14, No.6, 1994, pp.21-32.
2 )Shladover,S.E."Review of the State of Development of
Advanced Vehicle Control Systems (AVCS)," Vehicle
System Dynamics, Vol.24, 1995, pp.551-595.
3 )Guldner, J. et al., "Analysis of Automatic Steering
Control for Highway Vehicles with Look-down Lateral
− 13 −
144
−機械技術研究所所報 Vol.53(1999)
,No.4 −
Reference System," Vehicle System Dynamics,Vol.26,
1996, pp.243-269.
4 )Tachibana, A. et al., "An Automated Highway Vehicle
System using Computer Vision -A vehicle Control
Method using a Lane Line Detection System-," 1992
JSAE Autumn Convention Proceedings, 924, 1992,
pp.157-160 (in Japanese).
5 )Košecká, J. et al, "Vision-Based Lateral Control of
Vehicles," Proceedings of IEEE Conference on ITS,
1997, pp.900-905.
6 )Tsugawa, S. et al.: "Steering Control Algorithm for
Autonomous Vehicle," Proceedings of 1990 Japan-U.S.A.
Symposium on Flexible Automation, 1990, pp.143-146.
7 )Tsugawa, S. et al, "A Lateral Control Algorithm for
Vision-Based Vehicles Applicable to Various
Maneuvers," Proceedings of 4th ITS World Congress
(CD-ROM), October, 1997.
− 14 −
−位相シフトロンキー干渉計による波面位相計測−
研
145
究
位相シフトロンキー干渉計による
波面位相計測
日比野 謙一 1・D.I.FARRANT2・B.W.WARD2・B.F. OREB2
Quantitative Wavefront Measurement with a phase shifting Ronchi interferometer
by Kenichi HIBINO, D.I.FARRANT, B.W.WARD & B.F.OREB
Abstract
The accuracy of a phase-shifting Ronchi test with a sinusoidal transmission grating is discussed. The sinusoidal transmission grating was produced by recording an interference fringe between two spherical waves from two monochromatic
point sources on a photographic plate. The exposure energy was chosen so as to minimize the second -order diffraction efficiencies from the grating. By suppressing higher order diffraction components, sheared interferograms with a signal to
noise ratio in excess of 60 to 1 have been achieved which is nine times better than that of the conventional Ronchi test with
a binary grating. The effect of non-sinusoidal characteristics of the grating and phase-shift errors were minimized by the use
of a seven-sample phase shifting algorithm. An aberrated wavefront from a triplet lens was measured with a relative accuracy of better than 0.3%.
Key Words: Ronchi test, Interferometry, Phase shift, Aberration
ていないサンプル点計測であること,測定時間がかかる
こと,測定分解能が針(プローブ)の機械走査系の精度
1.はじめに
近年,静圧空気軸受けスピンドルや静圧油軸受けス
テージを用いた切削加工機あるいは研削加工機の加工
精度の向上により,光学面として用いることのできる
アルミニウム,銅,ニッケル等を素材とした鏡面や金
型が加工されるようになった.製作可能な形状として
は,軸対称曲面(回転放物面,回転楕円面,回転双曲
面,CD ピックアップレンズ面等)や非軸対称曲面(ト
ロイダル面,軸はずし放物面,円柱面等)など様々なも
のが登場し,その形状・表面粗さ測定が必要 となった.
これらの加工面の形状の多くは,球面からの偏差量
が数十から数百波長と大きいため,球面測定に用いる
フィゾー干渉計では,測定感度が高過ぎたりダイナ
ミックレンジ不足といった理由から,測定が困難であ
り,その計測には形状に応じて工夫を施した干渉計を
別途に準備しなければならない.このため,偏差の大
きいこれらの非球面の評価には,触針式あるいは光プ
ローブ型の走査型3次元形状測定機を用いているのが
現状である 1).
しかしながら,現状の触針式計測法は,接触式であ
るため測定面を傷つける恐れのあること,全面を計測し
1
2
物理情報部光工学研究室
オーストラ リア,CSIRO 国立計測研究所
で制約されることなどの問題点を抱える.このため,光
学機器本来の仕様の規準である光の波長を基に した非
接触な光学干渉計の開発が必要である.
これらの非球面形状を,汎用的な光学干渉計を用い
て評価するためには,干渉計のダイナミックレンジを改
善する必要がある.例えば,x 軸方向と y 軸方向で 25mm
曲率半径の異なるトロイダル面では(R1 = 525mm,R2 =
500mm,50φ),球面からの偏差量が 1000 波長(1波長
は 633nm)にも及ぶが,こうした光学曲面の形状を
Rayleigh の規範である4分の1波長から波長の数十分
の1の確かさで計測するには,測定法のダイナミックレ
ンジ(ここで,測定対象の最大偏差量 / 測定の確かさの
比で定義する)として 104 から 105 以上が必要である.
代表的な干渉計であるフィゾー干渉計では,CCD 検出
器の観測できる縞数の上限は実用上 50 ∼ 100 本程度で
あり,ダイナミックレンジの最大値は 104 程度が限界 と
なり,十分であるとは言えない.
そこで,球面あるいは平面からの形状偏差量が数百
波長から数千波長に及ぶ非球面形状(あるいは相当の
光路差分布を持つ位相物体)を4分の1波長以上の分
解能で評価する方法として,縞走査ロンキー干 渉計の
開発をオーストラリア国立計測研究所(CSIRO Division
of Applied Physics, Lindfield, Sydney)との研究協力(日
− 15 −
146
−機械技術研究所所報 Vol.53(1999)
,No.4 −
豪科学技術協力協定)で進めて来た.今回,干渉計を製
作し,具体的な実験結果が 得られたので,本論文で理
論的背景と共に報告する.
ロンキー干渉計 2) は,大口径の光学反射鏡 3) や位
相 物体 4,5) など収差量が波長に比して大きい対象物の
表面形状や位相分布を簡便に評価する方法として,古く
から汎用的に用いられてきた.古典的なロンキー干渉計
の形状測定感度の最大値は,被測定光学鏡の F ナンバー
で決まる Airy ディスクの直径 8λF 程度(ここで λ は,
使用する光の波長)で与えられる.これは,被測定光学
鏡に映ったロンキー格子(1 mm あたり数本程度の密度
を持つ透過型格子)の歪みを肉眼視によって読みとると
きの精度の制約から限定された数値である.
近年,ロンキー干渉計に干渉縞画像解析法の手法を
取り入れて定量的な測定を行う試みがいくつか報告さ
れている 6,7).それらの方法は,1または0の透過率を
図 1 レンズ収差を測定するロンキー干渉計の光学系
スクリーン上の干渉縞の位相値及びその符号(凹 凸)
を測定するためには,この配置でロンキー格子をその
ピッチの数分の一ずつ機械ステージによって変位させ,
縞画像を逐次 CCD カメラからフレームメモリーに取り
込む.取り込んだ複数枚の干渉縞画像から,位相シフト
アルゴリズムを用いて,干渉縞の位相を計算する.
持つバイナリー回折格子を用いて,格子をその面内で格
子線に直角方向に変位させ,干渉縞画像に位相変調を導
次に物体 L1 を光軸回りに 90 度回転して,全く同様の
測定を行い,もうひとつの干渉縞位相を測定する.こう
入するもので,格子の変位に同期して逐次干渉縞図形を
CCD カメラから画像メモリーに記録する.こうしてサ
して測定された2方向の干渉縞位相を空間積分するこ
とで,レン ズ L1 を透過した物体光波面の位相を計算す
ンプルされた 20 枚程度の干渉縞画像を離散的 フーリエ
変換に類似するアルゴリズムによって処理して,物体光
る.さらに 物体光波面形状から球面波成分を引き算す
ることで,最終的にレンズ収差を決定する.
ロンキー干渉計のデカルト座標系 Oxyz をとり,z 軸
波の位相分布を決定するものである.しかしながらこの
方法では,回折格子から同時に発生する高次回折光の干
渉で生じるノイズ信号成分の低減に十分な考慮が払わ
れていないため,高次回折光により信号の対ノイズ比
を光 軸に,y 軸を回折格子 G の格子線にそれぞれ平行
にとる.回折格子 G の透過率分布 t(x,y)は,x 軸方向
に周期 d を持つフーリエ級数で表現される.
∞
(SN 比)が大きく制約されて,測定系のダイナミックレ
ンジを最大化するうえで問題があった.
そこで,高次回折光の小さい正弦波透過率格子を製
作し,干渉計に利用した.この場合の信号の SN 比を評
価し,従来法と比較検討した.また,系統誤差を最小化
するために高次回折光の影響,及び干渉縞位相変調誤差
を補償する位相シフト計測アルゴリズムを採用し た.
以下に,その方法と実験結果を述べる.
t ( x, y ) =
2πx
- – α  ,
∑ tn exp  in  -------d
n = –∞
(1)
ここで α は,回折格子 G の位置で決まる位相変調パラ
メータで,後に格子 G の x 軸方向への移動に伴い変化
する変数である.格子が周期 d だけ移動するとき,α
はゼロから 2π まで変化する.振幅 tn の絶対値自乗 tn2
は,格子 G からの n 次回折波の回折効率に比例する.透
過率 がゼロと T(0 < T < 1)をとる二値格子,あるいは
正弦波(透過率を持つ)格子では,tn は実数で tn = t-n
2.ロンキー干渉計の測定分解能
2.1 ロンキー干渉縞の SN 比
ここでは,正弦波格子を用いたロンキー干渉計の信
を満たす.以下では,これが成り立つとして議論する.
被測定レンズ L1 が,一様強度の光で照明された場合,
号の SN 比を理論的に評価する.このため,最初にロン
キー干渉計の信号を定式化する.
図1に,ロンキー干渉計を用いてレンズ透過波面位相
スクリーン上で観察される干渉縞強度信号 I は,レンズ
L1 の波面収差 ϕ(以下物体位相と呼ぶ)の関数として,
以下のように表される.
∞
を計測する光学系を示す.被測定レンズ L1 と焦点距離
f2 のコリメータレンズ(結像レンズ)L2 の共有焦点 面
I ( x, y, α ) =
∑
n = –∞
内に,周期 d の準正弦波格子 G(ロンキー格子と呼ばれ
る)が配置されている.レンズ L1 は,左方より波長 λ
∞
tn2 +
n–1
∑ ∑
n = –∞ m = –∞
2t m t n
cos [ ϕ ( x – m∆, y ) – ϕ ( x – n∆, y ) – ( n – m )α ]
(2)
の単色平面波で照明され,透過波は回折格子 G に集光
し,格子で回折される.回折格子 G からの各次数の回折
ここで Δ = λf2/d は,隣り合う次数の回折波の横ずれ
波は,レンズ L2 を透過後互いに平行光となり,光軸に
垂直な方向に互いにわずかな距離(シア距離と呼ぶ)Δ
量である.(2)式の各項は,ロンキー格子からの m 次
回折波と n 次回折波の干渉項を表わす.このうち,位相
だけ横ずれして重なり合い,レンズ L2 の後焦点面内に
あるくもりガラススクリーン D 上に干渉縞を形成する.
を測定すべき基本波信号は,±1次回折波と0次回折波
の干渉項を足し合わせた信号である.すなわち,
(m, n)
=(0, 1)及び(− 1, 0)の二つの項の重ね合わせから
− 16 −
−位相シフトロンキー干渉計による波面位相計測−
構成される.基本波信号とノイズ成分を見やすくする
ために,(2)式を以下のように,位相変調パラメータ
の次数について整理する.
∞
I ( x, y, α ) = s o + s o C cos ( ϕ o – α ) +
t0t1 / t1t2 = t0 / t2 となり,ゼロ次と2次の回折効率の比
の平方根で与えられることが結論される.
ゼロ次回折効率 t02 は,格子の種類でほぼ決まり変化
が少ないことから,SN 比を向上させるためには,2次
回折光効率 t22 を減少させればよいことが判る.3章で
∑ sn cos ( ϕn – nα ),
n=1
(3)
ここで, 実際に製作された準正弦波透過率格子について,SN 比
を議論する.
∞
so =
∑
n = –∞
t n2 ,
1
ϕ o = --- [ ϕ ( x + ∆, y ) – ϕ ( x – ∆, y ) ] ,
2
(4)
(5)
2.2
高次回折光による測定分解能の低下
ロンキー干渉計では,物体光波面形状である物体位
相は測定された干渉縞位相を積分して得られるため,
フィゾー干渉計などを用いた測定の場合に比べて,系
統誤差は計測精度に大きな影響を与える.干渉縞位相に
含まれるランダム誤差成分は,積分時に統計処理を
ϕ ( x + ∆, y ) + ϕ ( x – ∆, y )
C ( x, y ) = Co cos ------------------------------------------------------------ – ϕ ( x, y ) ,
2
(6)
4t o t 1
C o = ------------ ,
so
147
行った場合,x 軸方向のデータ数 p の対数に比例して増
加するが,系統誤差成分は,データ数 p に単純比例して
増加する.
干渉縞中の系統及びランダム誤差が同程度の大きさ
(7)
振幅 sn 及び位相 ϕn(n ≧ 1)は,振幅 tn 及び物体位相
(3)式で,基本波信号は右辺第
ϕ(x,y)の関数である.
2項であり,ϕo が検出すべき位相分布,C は基本信号の
コントラスト(あるいは変調度)である.
(2)式と(3)
式の間で,位相変調 α に関する2次以上の高調波成分
を比較することにより,位相 ϕn は,物体位相 ϕ 自身を
互いに nΔ だけ x 軸方向に横ずらししてできる二つの位
相項の差分に比例することが判る.距離 Δ 内での物体
位相の変化が小さく,差分が微分で近似できるとき,ϕn
は ϕ の x に関する一階偏微分に比例し,近似的に ϕo の
n 倍で与えられる.
(6)式より基本波信号のコントラストは,物体位相 ϕ の
2階の差分の cosine に比例する.これは,3光束以上
の干渉に見られる性質で,コントラストは口径内で変
化し,縞は口径内で局在化する.
(3)式右辺第三項で,振幅 s1 を含む項は,位相変調 α
に同期したノイズ項であり,位相変調によって基本波
信号と分離することが原理的に不可能である.この項
は,位相測定の際の主要な系統誤差のひとつであり,以
下では偽信号と呼ぶことにする.以下で見るように,回
折格子 G に(ゼロ次を除く)偶数次の回折効率が存在
すると,このノイズ項が出現する.
実験で製作される準正弦波格子では,ゼロ次及び±
1次の回折効率が支配的なので,このノイズ項の振幅と
位相は,近似的に次式で与えられる.
s 1 = 4t 1 t 2
1
cos --- [ ϕ ( x + 2∆ ) – ϕ ( x + ∆ ) – ϕ ( x – ∆ ) + ϕ ( x – 2∆ ) ] ,
2
(8)
(3)式,(7)式及び(8)式を比較することにより,基
本信号振幅は 4t0t1 に比例し,偽信号のノイズ項は 4t1t2
であれば,積分で得られる物体位相中の系統誤差は,ラ
ンダム誤差よりもはるかに大きくなってしまう.従っ
て,ロンキー干渉計では,干渉縞位相測定時の各画素
(ピクセル)で発生する系統誤差を,ランダム誤 差より
も小さく抑える必要がある.
2.1 節では,系統誤差である偽信号を評価した.以下
では,もう一つの主要な系統誤差である干渉縞歪みに
ついて,筆者らが開発した誤差補償縞解析法と呼ばれる
位相シフトアルゴリズム 8) を用いた場合の誤差の大き
さ について評価を行う.
干渉縞の正弦波強度波形からのずれである縞歪み
は,光検出器の非線形応答によっても生じるが,CCD カ
メラの非線形性は通常1∼2 % 程度であり,ロンキー
格子からの高次回折光間の多光束干渉による影響が支
配的である.干渉縞強度信号(3)式で,振幅 sn (n =
1 , 2 , .... )を含む右辺第3項が,縞歪みのノイズ成分
である.
振幅 s1 を含む項は,前節 2.1 で議論したように,回
折格子からの隣り合う次数:m 次と m +1次(m は0
以外のすべての整数)の回折波の干渉で形成される偽信
号成分で,格子に偶数次数の回折波が生じた時に発生す
る.この項は,位相変調に同期するため,原理的に位相
シフト法でその影響を取り除くことはできない.正弦波
格子の場合の SN 比を前節で導いた.
一方,振幅 sn(n ≧ 2)を含む縞歪みの成分は,位相
変調パラメータ α の n 次高調波なので,画像数を多く
取った位相シフト法によってその影響を除くことがで
きる.信号の表式(2)と(3)式を比較することで,振
幅 sn の大 きさを次式のように評価することができる.
∞
s1 ≤ 4 ∑ ti ti + 1
に比例することが判る.これより干渉縞信号の SN 比は,
− 17 −
i=1
,
(9)
148
−機械技術研究所所報 Vol.53(1999)
,No.4 −
及び
n–1
∞
i=1
i=0
s n ≤ 2 ∑ t i t n – i + 4 ∑ ti t i + n ⋅ ( n ≥ 2 ) ,
3 ( I2 + I 3 – I 5 – I 6 ) + ( I 7 – I 1 ) ⁄ 3
Ψ = arc tan --------------------------------------------------------------------------------------- ,
– I 1 – I2 + I 3 + 2I4 + I 5 – I 6 – I 7
(10)
ここで,tn = t-n を仮定している.
表 1 に,理論上の理想的正弦波格子,実験で製作さ
れた準正弦波格子,及び理論上の理想的二値格子の場合
について,振幅透過率 tn 及びノイズ振幅 sn を示す.完
全な正弦波あるいは二値格子では,振幅 s1 はゼロであ
る.従って偽信号は発生せず,その場合の SN 比は無限
大となる.
理想的な正弦波格子では,ノイズ項として第二高調
波成分 s2 が存在するのみなので,画像数4以上の位相
シフト法(アルゴリズム)でノイズを完全に除去する
ことができる.これに対して理想的な二値格子では,偶
数次の回折効率 t2n2 が高次まで大きい値で存在するた
め,ノイズ項 sn は高次までその振幅が大きい問題点が
(11)
ここで I r = I ( x, y, π ( r – 4 ) ⁄ 3 ), r = 1, 2, … ,7 である.
回折格子面の光軸方向に対する直交性,及び格子の
移動方向と格子線の直交性の誤差(角度誤差を Δβ と
すると,1 − cosΔβ で格子ピッチ等に寄与する)の影
響は,この縞解析法の利用により第一近似で補償され,
誤差は,角度誤差が例えば5度以内程度であれば,無視
できる程小さい.
位相シフトアルゴリズム(11)式に信号の表式(3)
を 代入すると,残存誤差の主要項は,
δΨ = Ψ – ϕ 0
s1
= --------- sin ( ϕ 1 – ϕ 0 )
s0 C
s5 1
– --------- ------- sin ϕ 5 cos ϕ 0 + cos ϕ 5 sin ϕ 0 +(s n / s 0 C
s0 C 3
ある.
n ≧ 7 を含む項 ),
(12)
となる.ここで Ψ は測定位相であり,位相 Ψ,ϕ0,ϕn で
は,変数 x , y の表記を省略した.
表 1 準正弦波格子,正弦波格子および二値格子の振幅 tn と
ノイズ振幅
次数 n
準正弦波格子
正弦波格子
tn(測定値) sn
tn
右辺第一項は,前節で述べた偽信号成分で,解析法
に関わらず除去することが不可能なノイズ成分である.
二値格子
sn
tn
sn
0
0.50
1
0.50
1
0.50
1
1
0.16
0.016
0.25
0
0.32
0
2
0.082
0.23
0
0.25
0
0.64
3
0.010
0.088
0
0
0.11
0.33
4
0.0036
0.046
0
0
0
0.42
5
0.0015
0.020
0
0
0.064
0.20
6
0.0015
0
0
0
0.32
高次回折光による縞歪みによる誤差の主要項は,
(12)式右辺第 2 項に現れる.この項は,位相 ϕ0 の5倍
の位相 ϕ5 を含むため,x 軸に沿って頻繁に符号が変化
する.口径内にN本の干渉縞が存在するとき,x軸に沿っ
て ϕ0 及び ϕ5 は,
それぞれ 2πN 及び 10πN rad 変化する.
今,関係式:
1
------- sin ϕ 5 cos ϕ 0 + cos ϕ 5 sin ϕ 0
3
=
製作上は,記録媒体の感度非線形性の影響を受けな
い二値格子が正弦波格子よりもはるかに容易であるた
め,これまで多くの実験で用いられている.しかしな
がら,二値格子では高次のノイズ項までを除去する必
要があるために,正弦波格子を用いる場合と比べて一
般にはるかに多くの画像数を必要とする.このため,例
ただし tan ϒ =
式で与えられる.
3 tan ϕ 0 ,
積分の過程で 12N 回の打ち消しが生じて,次の様に評
価される.
p
1
2R s 5 2
δϕ b ≅ ------- × --------- --- × ---------- × --p∆ s 0 C 3 12N 2
なる欠点があった.
以下では,次章で述べる正弦波透過率格子を用いた
法)を例として,高次回折光による誤差を評価する.7
サンプル解析法は,4 次までの縞歪み(3)式で振幅 s2,
s3, s4 を含む項)及び線形の位相変調誤差を補償し,次
(13)
に注意すると,第2項は,x 軸上で少なくとも 12N 回符
号が変化する.この項による物体波面誤差への寄与は,
えば20画像を用いた測定などが過去に行われているが,
観測時間が大きくなり,振動等の他の雑音が入りやすく
場合の測定分解能を考察し,誤差補償解析法である7サ
ンプル位相シフトアルゴリズム(7画像を用いた解析
1 2 2
--- + --- sin ϕ 0 sin ( ϕ 5 + ϒ )
3 3
Rs 5
1
≅ ---------- ------------------------- .
6 6 N∆s 0 C min
(14)
(14)式より,縞歪みによる誤差は干渉縞数 N に反比例
して減少する.従って,収差の大きい物体光波の場合,
観測する干渉縞数は一般に大きくN >> 1となるから,こ
の誤差の寄与は相対的に小さくなる.逆に偏差量 δmax
が有効波長と同程度の場合は,N ∼ 1 となるので寄与は
非常に大きくなる.
− 18 −
−位相シフトロンキー干渉計による波面位相計測−
次章の実験で設定したパラメータ値:データ点数 p =
64,縞位相の測定分解能 q = 200,収差波面の次数 m =
4,測定口径 R = 15.5mm,収差量の最大値 δmax =
9.9λ,コントラスト値 C0 ≅ 1 ,干渉縞数 N =4,高調
波信号成分の振幅 s1/s0 = 0.016, s5/s0 = 0.02(表 1 の準
正弦波格子参照),横ずれ量 Δ = 0.615mm を代入する
と,この実験の主要誤差として,表2の値を得る.今回
149
乾板に記録された格子線の形状は,厳密な直線格子
とはならないが,直線からの歪み量は,
口径2∼3mmφ
内 で透過波面収差に換算して1/100波長よりもはるかに
小さく,無視して差し支えない 10,11).格子の透過率の
フーリエ振幅 tn は,各次数の回折光強度を直接測定す
ることで,表1のように測定された.
の正弦波格子と誤差補償解析法の 組み合わせによる誤
差と,従来の二値格子とフーリエ解析法(7サンプル
法)を用いた場合の誤差を比較して示す.系統誤差の低
減により,測定精度が従来法に比べて大幅に向上してい
ることが判る.
表 2 異なるロンキー干渉計による波面測定誤差
誤差要因
今回の方法
(正弦波格子と誤差
補償解析法)
従来法
(二値格子とフ−リ
エ解析法)
縞歪み
0.0032λ(単位波
(高次回折光) 長)
0.051λ
位相変調誤差
(格子収差)
0.0008λ
0.0040λ
偽信号
0.0042λ
0.012λ
ランダム誤差
0.0065λ
0.0065λ
合計
0.015λ
0.073λ
図 2 正弦波ロンキー格子を記録する光学系
3.2 レンズ収差の測定
測定の光学系は,図1と同様である.製作された正
弦波格子を測定レンズ L(焦点距離
229mm 口径 40mm)
1
の後焦点面付近に配置し,機械ステージにより,その
ピッチ d = 183μm の 1/6 である 30.5μm ずつ6回変位
3.実験
位相シフトロンキー干渉計の測定例として,平凸色
消しレンズを平側から単色平面波で照明したときの透
過波面の測定を行った.平凸レンズは,平側から照明
すると球面収差を持つ透過波面を発生する.以下にこ
の実験を述べる.
3.1
させる.変位は,マグネスケールにより 0.5μm の分 解
能でキャリブレーションを行った.
回折光は,コリメータレンズ(焦点距離 f2 = 178mm)
L2 により平行光となり,L2 の後焦点面に配置したくも
りガラススクリーン上に干渉縞を形成する.干渉縞は,
後方から F ナンバー 5.6 の CCD カメラで強度測定され
た.回折格子を6回変位させ,その7つの位置について
縞画像を逐次メモリーへ記録した.物体光波の横ずれ量
回折格子の製作
空間周波数 5.46 本 /mm の正弦波格子を,干渉縞を記
録する方法で製作した.
図2に,光学系を示す.HeNe レーザー(波長 633nm)
のビームを二つに分割して,それぞれ対物レンズ(開口
数 0.40)で集光し,直径 10μm のピンホールを通過し
て発生した球面波を重ね合わせ,2 m 後方に配置した
写真乾板(アグファ社 8E75)に干渉縞を記録した.
写真乾板の露光エネルギーと現像後の透過率は比例
関係になく,一般に非線形の応答を示す.このため,干
渉光で形成された正弦波光強度分布は,忠実に写真乾板
の透過率分布として反映されない.この実験では露光量
は,Δ = 0.615mm である.また,CCD 上の画像には,
3μm 程度の大きさのスペックルが発生するので,スク
リーンを光軸のまわりに毎秒2∼3回転し,その強度の
不均一を平均化した.
図3に観測された干渉縞の一例を示す.縞歪みの影
響を減らすため,レンズ L2 を光軸に沿ってわずかに回
折格子側へ移動してデフォーカスし,干渉縞数を増加
させている.この測定系の有効波長は 7.97μm で,デ
フォーカスのない状態で約 1 本の縞が観察される.縞画
像のサンプル数は,メモリー容量の制約から7画像と
し,2.2 章で述べた7サンプル縞解析法で位相を決定し
は,透過率の2次振幅 t2 を抑え,1次振幅 t1 をそれほ
ど減少させない値として,80 mJ/m2 に設定した.二光束
た.測定の再現性は,くり返し測定の結果,0.010 π rad
(rms 値)であった.
でなく,三光束を用いた干渉縞によって,空間の光強度
を正弦波分布からわずかにずらし,写真乾板に記録され
被測定レンズ L1 を光軸のまわりに 90゜回転して,同
様の測定を行い,y 軸方向に物体光波を横ずれさせて発
生した干渉縞の位相を同様に決定した.測定した位相
る縞強度を変調し,二次の回折効率を減少させる試み
が,別に我々により行われている 9).
値を口径中心で0として,π rad の整数倍を追加しなが
− 19 −
150
−機械技術研究所所報 Vol.53(1999)
,No.4 −
4.結論
光の波長よりも大きい偏差量を持つ形状や光波面位
相を決定する方法として,位相シフトロンキー干渉計
を製作し,レンズ収差の測定実験を行った.正弦波透
過率を持つロンキー格子を製作し,高次回折光を抑制
することで,干渉縞信号の信号ノイズ比を大幅に改善
した.
また,筆者らが開発した誤差補償位相シフトア ルゴ
リズムを利用することにより,格子収差及びアラ イメ
ント誤差を補償した.最終的な測定分解能として 1/77
波長が得られ,従来法と比較して約4倍の分解能 向上
が実現した.
今回の方法により,系統誤差をランダム誤差とほほ
同じ大きさまで抑制することができた.この干渉計に
よる測定のダイナミックレンジの上限は,観測縞数 100
本のとき約 77,000 と推定される.目標値 105 達成 のた
めには,今後,高次回折光雑音の低下を主とした いっ
図 3 レンズ透過波面の干渉縞
そうの系統誤差の抑制が必要である.
発 表: K. Hibino, D.I.Farrant, B.W.Ward and B.F.Oreb,
"Quantitative wavefront measurement using a
Ronchi test with a phase-shifted sinusoidal grating,"
Proceedings of the 13th Congress of the
International Commission for Optics, SPIE 1983,
960-961 (1993).
原稿受付:1999 年 5 月 20 日
参照文献
図 4 測定されたレンズ透過波面の位相分布
らなめらかに接続(アンラッピング操作)して,最終
的な縞位相を得る.
物体位相の x 軸及び y 軸方向への差分が与えられて
いるとき,物体位相を計算する積分法については,い
くつかのアルゴリズムが提案されている.ここでは,計
算量は多いものの,誤差評価の容易な最小自乗法 10)を
採用した.
図4に計算された物体波面の位相分布を示す.物体
波面の波高値は,32.6λ である.縞歪みの影響を低減す
る目的でデフォーカスを行っているので,物体波面に
は,球面波成分が含まれている.
ランダム誤差の総和は,測定の再現性から 0.012π rad
と見積もられる.縞位相における 0.012π rad の ランダ
ム誤差は,物体光波面上で,0.013π rad (rms 値)の誤
差となる.系統誤差は,2章で議論した値(表2)を合
計することにより得られる.最終的に系統及びランダム
誤差の合計として 0.026π rad が得られ,波長に換算し
て 0.026π/2π = 0.013λ(1/77 波 長)の分解能で測定
が行われた.
”全面走査型非球面形状測定機,
”光 学 ,
1 )関口,加藤,
16, 67-74 (1987).
2 )A. Cornejo-Rodriguez, Optical Shop Testing, Wiley,
Chap.4 (1978) p283-322.
3 )A. Cornejo and D. Malacara, "Ronchi Test of Aspherical
Surfaces, Analysis, and Accuracy," Appl. Opt. 9 (1970)
p1897-1901.
4 )R.S. Kasana S. Boseck and K-J. Rosenbruch, "Nondestructive collimation technique for measuring glass
constants using a Ronchi grating shearing interferometer," Opt. Laser Technol. 23 (1984) p101-105.
5 )L. Carretero, C. Gonzalez, A. Fimia and I. Pascual,
"Application of the Ronchi test to intraocular lenses: A
comparison of theoretical and measured results," Appl.
Opt. 32 (1993) p 4132-4137.
6 )T. Yatagai, "Fringe scanning Ronchi test for aspherical
surfaces," Appl. Opt. 23 (1984) p 3676-3679.
7 )K. Omura and T.Yatagai,"Phase measuring Ronchi test,"
Appl. Opt., 27 (1988) p 523- 528.
8 )K. Hibino, B.F. Oreb, D.I. Farrant and K.G. Larkin,
"Phase shiftings for nonsinusoidal waveforms with
phase-shift errors," J. Opt. Soc. Am. A, 12 (1995) p
761-768.
9 )藤本,日比野,「三光束干渉による正弦波格子の製
作 法」
機械技術研究所所報48巻5号(1994) p 228-236.
− 20 −
−位相シフトロンキー干渉計による波面位相計測−
10)D.L. Fried, "Least-square fitting a wave- front distortion
estimate to an array of phase-difference measurements,"
J.Opt.Soc.Am. 67 (1977) p 370-375.
11)K. Hibino and Z.S. Hegedus, "Hyperbolic holographic
gratings : analysis and interferometric tests," Appl. Opt.,
33 (1994)p 2553-2559.
151
12)日比野,Z.S. Hegedus,“双曲線回折格子の収差の 飽
和現象”,
機械技術研究所所報 52 巻 6 号 (1998)
p 202-207.
− 21 −
152
−黄信号時におけるドライバ挙動のばらつきの定量化: 速さのばらつきと通過停止のばらつき−
研
究
黄信号時におけるドライバ挙動のばらつきの定量化:
速さのばらつきと通過停止のばらつき
重田 清子・津川 定之
Quantitation of Dispersion of Driver Behavior during Yellow Traffic Signals :
Dispersion on Vehicle Speeds and Passing/Stopping
by Kiyoko SHIGETA & Sadayuki TSUGAWA
Abstract
This paper describes dispersion of driver behavior, which is a cause of traffic accidents, and proposes a method of quntitation of the dispersion with entropy. It analyzes dispersion of driver behavior on approaching a signalized intersection during a yellow signal period with data of positions and speeds of vehicles, as well as stopping at or passing through the
intersection, captured with a roadside vision-based instrument. The data show that there is a region of dispersion, where
vehicles of the same speeds at the same positions may stop at the intersection or may pass through it. The dispersion region
is identified as the intersection of two regions, each of which is defined with two dimensional Gaussian distribution of stopping vehicles versus passing vehicles. The dispersion in the region is quantified with entropy with respect to the speeds and
the passing/stopping. In order to calculate the entropy of the dispersion in speeds, speed data at each time during the analysis are quantized to 16 groups, the number of which is decided based on the influence of the number on the entropy. The
analysis with data captured in the Tokyo area suggests that there is a tendency that the dispersion in the decision making on
passing or stopping is more dangerous than that in the speeds if a value of the entropy corresponds to a degree of danger.
Key Words: signalized intersection, driver behavior, entropy, quantitation, yellow signal, signal control
域を抽出する.次にこの領域内に存在するドライバ挙動
1.まえがき
ドライバや車両の挙動のばらつきは,交通流全般に
わたって安全と円滑を阻害する要因になっている.信号
交差点において,直進車と対向する右折車は,互いに相
手が通過するかあるいは停止するかの意志を推察する
ことや相手の挙動を正確に予測することが困難なため,
この挙動のばらつきが事故要因のひとつになっている.
また,単路部を走行中の車群で車両間に速さのばらつき
のばらつきをエントロピで定量化する.ここでは既報 2)
で詳しくは言及しなかった速さの量子化の,エントロピ
に与える影響について詳細な考察を行う.ドライバの挙
動のばらつきをエントロピで定量化すると自動車走行
における安全性や円滑性を示す定量的指標が得られ,
ITS 関連システムの設計も有用である.
2.ドライバ挙動のばらつきの同定
があると,衝撃波が発生して渋滞を引き起こすことも知
られている 1).
まず,信号交差点の流入部を走行する車両挙動の計測
データから通過車両群と停止車両群がばらついている領
本研究の目的は,黄色信号に遭遇したドライバ挙動の
ばらつきのうち,車両の速さと信号交差点の通過停止の
域を x-v 平面上に数学的に同定することについて述べる.
2点についてエントロピの概念を用いて定量化するこ
とにある.まず,信号切替時における各車両の,交差点
2.1 ドライバの挙動の計測
マシンビジョンに基づくセンサ 3) を交差点に設置し
からの距離で示した位置 x と速さ v,および各車両の通
過または停止の区別に関する計測データから,通過車両
て,黄信号の時間帯に交差点に流入する個々の車両の挙
動,あるいはドライバの挙動を交通流の下流から上流に
むけて計測する.計測した項目は,交差点流入部約 100m
群,停止車両群それぞれの x,v に関する2次元分布関
数を求め,通過車両群と停止車両群がばらついている領
物理情報部知識工学研究室
の区間に存在するすべての車両の 1sec ごとの位置と速
さ,交差点の通過停止の区別,および信号表示である.
測定場所は東京近郊の交差点で,その黄信号長は 3sec
− 22 −
−黄信号時におけるドライバ挙動のばらつきの定量化: 速さのばらつきと通過停止のばらつき−
Fig.2
153
Two dimensional distribution of speeds and locations of
vehicles
または 4sec である.信号周期ごとに黄信号時間帯を中
心として車両の追跡を行うことによって,停止線までに
停止するか,あるいは交差点を通過するかの判定をして
いる.解析の対象とした時間帯は,各信号周期内の黄信
号の開始時刻を t=0(単位は sec)とすると,− 1 ≦ t ≦
2 である.
Fig.1 は測定結果の一例で,時刻 t(t=-1,0,1,2)にお
ける車両の位置を x(t)
(単位は m,車両の位置は停止
線からの距離で表す),車両の速さを v(t)
(単位は km/
h)として,各時刻ごとに交差点を通過する車両を白丸
で,停止線までに停止する車両を黒丸で x-v 平面上に示
したものである.この図から,黄信号時間帯に流入路上
の同じ位置を同じ速さで交差点に接近しても,交差点を
通過する車両(通過車両)と交差点手前までに停止する
車両(停止車両)の両方が存在することがわかる.この
ような通過車両と停止車両がばらついている領域をこ
こではばらつき領域と呼ぶことにする.
2.2
ばらつき領域の同定
通過車両群と停止車両群の混在領域を時刻 t(-1 ≦ t
≦ 2)において,x-v 平面上で同定するために,通過車
両群と停止車両群それぞれの位置 x と速さ v に関する2
次元分布関数を求める.二つの分布が重複した部分が通
過車両群と停止車両群のばらつき領域である.
2.2.1
車両の位置と速さの2次元分布
通過車両群,停止車両群それぞれの位置 x と速さ v の
2次元分布関数を求める.
Fig. 1に示した測定データから平均値と共分散,相関
係数を求め,それらのパラメタから2次元分布関数を求
めると Fig.2 のような2次元の正規分布が得られる.以
下では全車両群,通過車両群,停止車両群ともに2次元
正規分布に従うものとして論を進める.
2.2.2
Fig.1
Positions and speeds of each vehicle approaching
intersection and distinction of stopping and passing of each
vehicle at the intersection
ばらつき領域の抽出
通過車両群と停止車両群の位置 x と速さ v のそれぞれ
の2次元正規分布が重なる領域が,通過車両と停止車両
のばらついている領域である.ここではこのばらつき領
域を抽出することを試みる.
通過車両群の領域 P と停止車両群の領域 S を
− 23 −
154
−機械技術研究所所報 Vol.53(1999)
,No.4 −
P = { (x,v) p p (x,v) ≥ ε p }
S = { (x,v) p s (x,v) ≥ ε s }
(1)
と定義する.ここで,pp(x,v)と ps(x,v)は,それぞ
れ通過車両群と停止車両群の位置と速さがなす2次元
正規分布,ε p と ε s は
∫ ∫p pp(x,v)dxdv = r
∫ ∫s
(2)
ps(x,v)dxdv = r
で定まるパラメタである.ここで r は,全通過車両また
全停止車両のうち,通過車両群または停止車両群の領域
に含まれる車両の割合である.このとき
D=P∩S
(3)
で定まる領域 D が通過車両と停止車両のばらついてい
る領域である.割合 r を小さく設定すれば,混在が集中
している小さな領域を抽出することができる.逆に大き
く設定すれば,ばらつきが可能な大きな領域まで抽出す
ることができる.この研究では,r = 0.7 としたが,こ
れは1次元正規分布では標準偏差内の領域に相当する.
Fig.3 は,r = 0.7 として通過車両群と停止車両群を
抽出した結果である.Fig.3(a)は国道1号の北馬込交差
点における昼間4時間のデータを処理した黄信号開始
時の結果で,対象道路は片側3車線,規制速度は 50km/
h,黄信号時間は 4sec である.また同図(b),
(c)は横
浜市綱島街道の北綱島交差点における昼間4時間と未
明4時間の同じく黄信号開始時の結果である.対象道路
は片側1車線道路で,規制速度は 40km/h,黄信号時間
は昼夜とも 3sec である.このように測定時間が同じで
あっても測定時間帯や交差点の構造,交通条件によって
ばらつき領域の位置や大きさが異なることがわかる.
なお,通過車両群や停止車両群の分布の周辺に散在
する例外的な少数の車両の挙動は,他の多数の車両の挙
動と大きく異なるために危険な状況にある可能性があ
るが,通過車両群と停止車両群の重複した部分を対象と
Fig.3
Regions of stopping vehicles and passing vehicles defined by
2-dimensional Gaussian distribution
した本論旨からはかけ離れるためここでは扱わない.
3.1
3.ばらつきの定量化
車群を形成して走行している個々の車両の走行に関
するパラメタ(走行パラメタ)には,速さ,車間距離,
車線変更,右左折,黄信号表示に対する通過,停止など
がある.これらの特性のばらつきは,車両走行の安全と
円滑に密接な関係がある 1).ここではばらつき領域内の
車両の安全性と円滑性の定量的指標を得ることを目的
として,個々の車両の走行パラメタのばらつきをエント
ロピを用いて定量化することを試みる.
エントロピによる定量化 2)
一般にドライバまたは車両の挙動は,速さ,車間距
離などの数値的な挙動と,車線変更,右左折,黄信号表
示の通過,停止などの非数値的な挙動に分けられる.標
準偏差を用いると数値的な挙動のばらつきは定義する
ことができるが,非数値的な挙動のばらつきは定義する
ことができない.ここでは,ドライバの挙動のばらつき
をエントロピで定量化することを提案する 1).エントロ
ピを用いると,数値的な挙動と非数値的な挙動の両方の
ばらつきを定義することが可能となる.
エントロピによる定量化のもう一つの特長は,標準
偏差を用いたときとは異なって,ばらつきが正規化でき
ることである.このことは異なった母集団のパラメタの
− 24 −
−黄信号時におけるドライバ挙動のばらつきの定量化: 速さのばらつきと通過停止のばらつき−
155
ばらつきを比較するときに有用である.
E1,...,Ek が排反事象をなし,p(Ei)を事象 Ei の確率
とすると,事象系 E = {E1,...,Ek} のエントロピ H(E)は
k
H (E ) = – ∑ p (Ei) log k p (E i)
(4)
i=1
で定義される.ここで0≦ H(E)≦1である.H(E)
=0はばらつきが全くない状態を,H(E)=1はばら
つきが最大の状態を表す.ここではばらつき領域におけ
る速さのばらつきと通過停止のばらつきを考察する.
3.2 速さのばらつきの定量化
速さのばらつきを定量化するためには速さのデータ
を量子化する必要がある.この節では速さの量子化につ
いて2つの問題を扱う.ひとつは量子化の方法であり,
Fig.4 Comparison of quantization on methods
もう一つは量子化のレベル数である.
既報 2) では速さのばらつきを求めるために,スムー
ズに流れている速度分布をその道路固有の定常状態と
し,速さの分布が正規分布するものと仮定し,速さの平
均 m と標準偏差 σ をその道路固有の値とみなし,
m-3σ, m-2σ, m-σ, m , m+σ, m+2σ, m+3σ
を量子化のレベルとして8個のグループに量子化した.
これはエントロピすなわちばらつきが最大となる分布
の形を一様分布と仮定したことに相当する.しかしなが
ら実際の交通流では速さは一様には分布していない.つ
ぎに実際の交通流に合わせ,定常交通流における速さの
分布が正規分布をなしているときをエントロピ最大と
するため,速度分布を等確率で分割することを考える.
しかしながら,黄信号時における車両は通過するものも
停止するものもあるため,非定常的である.したがって
量子化レベルの設定は交通流の時変性を考える必要が
ある.ここでは交通流の時間変化を考慮して時刻ごとに
速さの正規分布を仮定し,その都度平均 m と標準偏差
σ を求め,等確率になるように量子化する.この量子
化法をここでは採用する.
Fig.4 はこのようにして求めた各量子化法による時
刻ごとのエントロピの変化を示し,Fig.5 は量子化のレ
ベル数(横軸)がエントロピの値(縦軸)に与える影響
を示す.Fig.4 はある特定の月データを対象に,従来の
方法で速度分布を等間隔に分割した場合,等確率に分割
した場合,さらに時間変動ごとに等確率分割した場合の
結果を示す.横軸は時間(-1 ≦ t ≦ 2)を,縦軸は速さ
のエントロピを示す.ここから,等間隔に分割するより
等確率に分割する方が速さのエントロピが高い傾向を
示すことがわかる.また,Fig.5 から量子化のレベル数
の値は 16 を選択する.
速さのばらつきを以下のように定量化する.事象 Gi
を,ばらつき領域内における量子化された速さの第 i グ
ループ,事象系を G = {G1,...,G16} とする.ばらつき領
域 D(t)における速さのばらつきを表す時刻 t のエント
ロピ H(G)は,
Fig.5
Relationship between the entropy of dispersion in speeds
and the number of quantization levels
N:時刻 t においてばらつき領域 D(t)内に存在する
全車両台数,
ni:時刻 t においてばらつき領域 D(t)内で速さが第
i グループの全車両台数,
および k = 16 として
ni
p (G i) = ---N
(5)
を(4)式に代入することによって求めることができる.
3.3 通過と停止のばらつきの定量化
事象 F1 をばらつき領域内にある車両の通過,事象 F2
を同じく停止,事象系を F = {F1,F2} とする.ばらつき
領域 D(t)における通過または停止のばらつきを表す
時刻 t のエントロピ H(F)は,
np:時刻 t においてばらつき領域 D(t)内に存在し,
その信号周期内に交差点を通過した車両の台数,
ns:時刻 t においてばらつき領域 D(t)内に存在し,
− 25 −
156
−機械技術研究所所報 Vol.53(1999)
,No.4 −
その信号周期内に交差点の手前までに停止した車両台
数,および k =2として
np
p (F 1) = ----------------np + ns
ns
p (F 2) = ----------------n p + ns
(6)
を(4)式に代入することによって求めることができる.
3.4
ばらつきの定量化例
抽出したばらつき領域について交差点通過の有無と
速さの2種類のエントロピを求めた.Fig.6 は− 1 ≦ t
≦ 2 におけるばらつき領域 D(t)内の通過または停止
のばらつきを表すエントロピ(横軸)と,各車両の速さ
のばらつきを表すエントロピ(縦軸)の 1sec 間隔の時
間変化を昼間と夜間に分けて示したものである.これら
のエントロピは横浜市の交差点(a)とつくば市の交差
点(b)において昼間(午前 7 時から午後 7 時まで)に
ついては約 660 件と 220 件,夜間(午前 0 時から午前 7
時まで)については約400件と60件のデータから求めた.
エントロピの大きさが危険度の大きさを示すと仮定
すれば,Fig. 6で示した結果は,昼夜にかかわらず通過
停止の判断差による危険は速さのばらつきによる危険よ
り大きく,通過停止のばらつきによる危険は昼より夜間
の方が小さい.これは夜間の方が通過停止の判断差が少
ないことを示している.なお,ここでは,ばらつき領域
内の速さと位置のデータは,ここで測定した例では相関
係数が 0.174 となり,また Fig. 3からもほぼ明らかなよ
うにデータはばらついており,強い相関はないとみなし,
速さのばらつきと通過停止のばらつきを独立に扱った.
4.あとがき
Fig.6
Two kind of entropy in dispersion of passing/stopping and
that of speeds
この研究では,交通流を実測したデータに基づいて
ばらつき領域を抽出し,さらにエントロピを用いてばら
つき領域内のドライバ挙動のばらつきの定量化手法の
提案を行った.まず実交通流の計測結果に基づいて,交
差点流入部には,黄信号時,通過車両群と停止車両群が
ドライバの挙動のばらつきと交通の危険に正の相関
があると仮定すれば,ここで定量化を試みた事例は,車
両の速さのばらつきによる危険よりも通過または停止
ばらついている領域があることを明らかにした.つぎ
に,交通の安全性と円滑性の定量的指標を得ることを目
のばらつきによる危険の方が大きいことを示している.
ばらつき領域は,黄信号時間におけるドライバ挙動のば
らつきに起因する危険な状態をミクロに表現したもの
的として,交通流内の個々の車両の走行パラメタのばら
つきをエントロピの概念を用いて定量化することを提
である.しかしこれらの結果だけでは黄信号時間におけ
るドライバ挙動のばらつきの危険性について充分な考
案し,ばらつき領域内の2種類(速さと通過停止)のば
らつきの定量化を試みた.
察を行うことはできない.多くの交差点の実測と解析お
よびエントロピのもつ交通工学的意味の解明は今後の
速さの量子化手法と量子化レベル数に関しては,従
来の等間隔分割の他に等確率分割,さらに時変性を考慮
課題である.
最後に本研究で用いた計測装置の開発,改造ならび
した等確率分割を検討し,それぞれの手法と量子化レベ
ル数の関連について検討を加え,エントロピの算出をは
かった.これにより速さのばらつきがより明確に表現さ
にデータ収集とその検討にあたって多くの貴重なご支
援を頂いた松下通信工業株式会社の交通事業総括部技
れることを確認にした.さらに2つの交差点の計測デー
タを対象に,ばらつきのエントロピによる定量化の結果
を示した.
術グループ第一設計室半場信宏室長と同室外山雅一主
任技師に衷心より感謝の意を表する.また,本論文をま
とめるにあたって懇切な御助言を頂いた機械技術研究
所小島俊雄物理情報部長に厚く感謝の意を表する.
− 26 −
−黄信号時におけるドライバ挙動のばらつきの定量化: 速さのばらつきと通過停止のばらつき−
原稿受付:1999 年8月 20 日
参考文献
[1] 津川ほか:車群内の車両走行特性のばらつきの定量化,
電気学会道路交通研究会,論文番号 RTA-95-29,1995 年
157
[2] 重田ほか:黄信号時のドライバ挙動のばらつきとその
定量化,計測制御学会論文集,Vol.34,No.8,pp.11121118,1998.
[3] 重田ほか:" マシン ビジョンを用いたジレンマ現象計
測システムの構築 ", 機械技術研究所所報
Vol.49.No.2,pp.63-72(1995)
12 月 4 日
− 27 −
組 織
企
画
室
国際研究協力官
首席研究官(2)
総括研究調査官
総
所
次
務
部
務
計
務
課
課
課
基礎技術部
材 料 物 性 研 究 室
材 料 設 計 研 究 室
トライボロジー研究室
バイオメカニクス研究室
バイオミメティクス研究室
物理情報部
光 工 学 研 究
計 測 制 御 研 究
シ ス テ ム 工 学 研 究
知 識 工 学 研 究
数 理 工 学 研 究
長
長
庶
会
業
極限技術部
微 小 機
精 密 機
量 子 技
振 動 制
主任研究官
エネルギー部
熱 工 学 研 究 室
流 体 工 学 研 究 室
燃 焼 工 学 研 究 室
エネルギー変換研究室
エネルギー利用技術研究室
環 境 技 術 研 究 室
主任研究官
生産システム部
ロボット工学部
複 合 加
変 形 工
界 面 制
生 産 機
生 産 情
主任研究官
構
構
術
御
工
学
御
械
報
研
研
研
研
研
研
研
研
研
究
究
究
究
室
室
室
室
室
究
究
究
究
究
室
室
室
室
室
室
室
室
室
運 動 機 構 研 究 室
感 覚 制 御 研 究 室
自 律 制 御 研 究 室
バイオロボティクス研究室
福 祉 応 用 研 究 室
産学官連携推進センター
出版物:
機械研ニュース ― 月刊
機械技術研究所年報 ― 年刊
機械技術研究所所報(日本語版・英語版)― 隔月刊
当所における完成された研究結果、あるいは研究の途上におけるまとまった結果を掲載したものである。
機械技術研究所報告(日本語版・英語版)― 不定期刊
集大成された研究論文を掲載したものである。
機械技術研究所資料(日本語版・英語版)― 不定期刊
試験,審査の報告,調査の結果および所員の発明にかかる国有特許の解説等を掲載したものである。
機械技術研究所所報 Vol.53,No.4(通巻 313 号)
編集・発行
印 刷
工業技術院機械技術研究所
〒 305-8564 茨城県つくば市並木一丁目 2 番地
TEL 0298-58-7036(業務課)
URL:http://www.mel.go.jp/
株式会社 コームラ
〒 501-2517 岐阜県岐阜市三輪プリントピア 3
TEL 058-229-5858
Fly UP