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93.薩摩 硫黄 島 Satsuma-Iojima
(93.薩摩硫黄島) さ つ ま い お う じ ま 93.薩摩 硫黄 島 Satsuma-Iojima 常時観測火山 北緯 30°47′35″ 東経 130°18′19″ 標高 704m (硫黄岳)(三角点・硫黄島) 薩摩硫黄島 奥の噴気の激しい山が硫黄岳,手前の緑の山が稲村岳 2009 年 8 月 25 日 気 象 庁 撮 影 概要 東西 6 km、 南北 3 km の火山 島、 竹島と とも に鬼界 カル デラ(東西 23 km、南 北 16 km)の 縁 をな す。 主 峰の 硫黄 岳 は流 紋岩 質 の急 峻な 成 層火 山で あ り、 山頂 火 口で は噴 気 活動 が活発で ある 。稲 村 岳は 玄武 岩 ~安 山岩 質 の小 型成 層 火山 であ る 。有 史以 降 の噴 火は 付 近海 底で起こ り、 新島(昭和 硫黄 島 )が形 成さ れた 。硫 黄 岳と 昭和 硫 黄島 の岩 石 は流 紋岩 で ある が、 稲 村岳 は玄武 岩・安山岩 から なる。構成 岩石 の SiO 2 量は 69.9~ 71.9 wt.% である 。別 名、鬼 界ヶ 島。 火山名 とし て「ト カラ 硫黄島 」の 名が用 いら れたこ とも ある。 1381 (93.薩摩硫黄島) 地形図 図 93-1 薩 摩 硫 黄 島 の 地 形 図 . 国 土 地 理 院 発 行 の 5 万 分 の 1 地 形 図 (薩 摩 硫 黄 島 )及 び 数 値 地 図 50m メ ッ シ ュ (標 高 ) 図 93-2 薩 摩 硫 黄 島 周 辺 の 海 底 地 形 図 (海 上 保 安 庁 海 洋 情 報 部 ). 1382 (93.薩摩硫黄島) 火口周辺図 図 93-3 図 93-4 1997 年 1 月 の 硫 黄 岳 山 頂 火 口 内 (地 質 調 査 所 , 1997). 硫 黄 岳 山 頂 火 口 地 形 図 (等 高 線 は 20m 間 隔 ) (地 質 調 査 所 ・ 京 都 大 学 , 1998). 1383 (93.薩摩硫黄島) 地質図 図 93-5 薩 摩 硫 黄 島 海 底 地 質 構 造 図 (海 上 保 安 庁 , 1982). 図 93-6 薩 摩 硫 黄 島 地 質 図 (川 辺 , 2006). 1384 (93.薩摩硫黄島) 噴火活動史 ・過去1万年間の噴火活動 鬼界カ ルデ ラで は 7,300 年前 に完 新世で は国 内最大 規模 の噴火(ア カホヤ 噴火 )が発 生 し たが、 薩摩 硫黄島 は、 鬼界カ ルデ ラの縁 に誕 生した 火山 島で、 約 6,000 年前 以 降に海 面 上 に 姿を現 した . 噴火年代 14→ 7.3ka 15,23,29 噴火場所 ? 7.3ka 19 鬼界カル デラ内海 底 16,20,21 7 .3ka> 16 鬼界カル デラ内海 底 16 硫黄岳付 近 ? 18 硫 黄 岳 18 5.2← → 3.9ka 17,18 5.2← → 3.9ka 17,18 3.9← → 3.7ka 17,18 3.9← → 2.2ka 17,18 3.9← → 2.2ka 18 3.9← → 2.2ka 18 稲 村 岳 17,18 稲 村 岳 17,18 稲村岳 17 稲村岳 18 硫黄岳 17,18 噴火様式 マグマ噴 火 16,23,29 マグマ噴 火 、マ グ マ 水蒸気噴 火 16,20,21 マグマ噴 火 16 マグマ噴 火 17,18 マグマ噴 火 17,18 水蒸気噴 火 17,18 マグマ噴 火 17,18 水蒸気噴 火 18 マグマ水 蒸気噴火 主な現象・マグマ噴出量 火砕物降下。 火砕物降下,火砕サージ,火砕流。 マ グ マ 噴 出 量 は 68 DREkm 3 。 (VEI7) 22 海底溶岩ドーム。 マ グ マ 噴 出 量 は 17 DREkm 3 。 (VEI6) 16 ※海底地形判読による最大値 火砕物降下,火砕サージ。 火砕物降下,火砕サージ。 火砕物降下,溶岩流。 火砕物降下,溶岩流。 火砕物降下,火砕サージ。 溶岩流。 18 2.2← → 0.9ka 17,18 2.2← → 0.9ka 17,18 水蒸気噴 火砕物降下。 火 17,18 硫 黄 岳 17,18 マ グ マ 噴 火砕物降下,溶岩流,溶岩ドーム,火砕サージ。 火 、マ グ マ 水蒸気噴 火 17,18 17,18 17,18 1← → 0.9ka 硫黄岳 水蒸気噴 火砕物降下,火砕流。 火 17,18,18 ※ 噴 火 イ ベ ン ト の 年 代 、 噴 火 場 所 、 噴 火 様 式 等 に つ い て は 、 (独 )産 業 技 術 総 合 研 究 所 の 活 火 山 デ ー タ ベ ー ス (工 藤・星 住 , 2006-)を 参 考 に 、文 献 の 追 記 を 行 っ た 。な お 、年 代 は 暦 年 代 で 示 す 。表 中 の「 ka」は「 1000 年 前 」 を 意 味 し 、 西 暦 2000 年 を 0 ka と し て 示 し た 。 A← → B: A 年 か ら B 年 ま で の 間 の ど こ か で 起 こ っ た 噴 火 イ ベ ン ト A→ B: A 年 か ら B 年 ま で の 間 , 継 続 し て 起 こ っ た 一 連 の 噴 火 イ ベ ン ト A< B: A 年 以 前 に 起 こ っ た 噴 火 イ ベ ン ト 1385 (93.薩摩硫黄島) ・有史以降の火山活動(▲は噴火年を示す) 硫黄岳 では 、歴 史時 代 に相当 す る 500~600 年 前にも 、火 砕流を 伴う マグマ 噴火 が発生 して いる 。1934 年には 薩摩 硫黄島 の東 近海で 溶岩 の流出 を伴 う海底 噴火 があり 、昭 和硫黄 島 が 誕 生した (前 野・谷 口,2005; Kawanabe and Saito, 2002; 奥 野,1996, 2002;小野・他, 1982)。 年代 ▲ 15~ 16 世 紀 17,18 現象 水蒸気噴火 活動経過・被害状況等 降下火砕物,火砕流。噴火場所は硫黄岳山頂火口 17,18 。 17,18 ▲ 1934~ 35(昭 和 9 ~ 10)年 大規模:マグ マ噴火 9,10,11,12,13,14,15,18 9,10,11,12,13,14,1 5,22,23 1936(昭 和 11)年 地震、噴煙 1988(昭 和 63)年 噴 煙 ? 26,27 25 25 26,27 1996(平 成 8)年 地形変化 27,28 27,28 1997(平 成 9)年 噴気孔生成 28 1934 年 9 月 ~ 35 年 3 月 。噴 火 場 所 は 昭 和 硫 黄 島 9,10,11,12,13,14,15,18 。9 月 6 日 か ら 地 震 群 発 。9 月 20 日 に 東 方 2km の 海 底 で 噴 火 。12 月 に 硫 黄 島 新 島 (昭 和 硫 黄 島 )生 成 し 現 存 。 マ グ マ 噴 出 量 は 0.276 DREkm 3 。 (VEI4) 22 10 月 26 日 ~ 。硫 黄 岳 の 噴 煙 増 加 、火 口 底 で 鳴 動 。こ の 活 動 に よ り 島 が 30cm 沈 下 。 1 月 18 日 。 4 回 に わ た っ て 噴 煙 を 上 げ た (火 口 内 崩 落 物 の 巻 き 上 げ か )。 10 月 の 観 測 で 、山 頂 火 口 南 東 部 の 道 路 上 に 北 東 -南 西 方 向 開 口 性 割 れ 目を確認。 火 口 底 部 に 直 径 約 20m の 急 傾 斜 の 火 孔 を 確 認 。 28 ▲ 1998(平 成 10)年 水蒸気噴火? 1,2,3,4,5,6,7,8 1,2 ▲ 1999(平 成 11)年 噴火 3 噴火 4 噴火 5 噴火 6 噴火 7 噴火 8 3 ▲ 2000(平 成 12)年 4 ▲ 2001(平 成 13)年 5 ▲ 2002(平 成 14)年 6 ▲ 2003(平 成 15)年 7 ▲ 2004(平 成 16)年 8 噴 火 場 所 は 硫 黄 岳 1,2 。 島 内 に 設 置 し て い る 地 震 計 で は 、4 月 に 入 っ て か ら 人 体 に 感 じ な い 微小な火山性地震が急増し、それまで 1 日あたり数回だった地震回 数 が 60~ 80 回 に な り 、 100 回 を 超 え る 日 も あ っ た 。 6 月 に 入 る と 次 第 に 減 少 し 、 6 月 下 旬 以 降 は 日 に 20 回 以 下 で 推 移 し た 。 9 月 か ら は 再 び 増 加 し 、10 月 下 旬 に は 日 に 80~ 110 回 と な っ た 。一 時 、11 月 上 旬 に は 日 に 数 回 ま で 減 少 し た が 、 11 月 中 旬 以 降 、 60~ 100 回 程 度 に 増加した。 5 月 初 旬 の 現 地 調 査 で は 火 口 周 辺 に 厚 さ 5mm 程 度 の 火 山 灰 が 堆 積 し て い た 。4 月 下 旬 か ら 5 月 初 め に か け て 火 山 灰 噴 出 が あ っ た と 推 察 さ れ る 。 地 質 調 査 所 (現 、 独 立 行 政 法 人 産 業 総 合 技 術 研 究 所 )の 火 山 灰分析によると、火山灰の主な成分は珪化変質した硫黄岳溶岩の破 片であり、新鮮なマグマ物質は大量には含まれていなかった。 三 島 村 役 場 に よ る と 、 5 月 14 日 に 灰 混 じ り の 雨 が 降 っ た ほ か 、 8 月 に 入 っ て か ら 島 内 で 時 々 弱 い 降 灰 が あ り 、 8 月 11 日 に は 竹 島 で も 降 灰 が あ っ た 。 鹿 児 島 中 央 警 察 署 硫 黄 島 駐 在 所 に よ る と 、 10 月 に は 少量の降灰が数回あった。 地 質 調 査 所 が 11 月 に 行 っ た 現 地 調 査 で は 、火 口 か ら 時 々 火 山 灰 が 放 出 さ れ 、展 望 台 付 近 (硫 黄 岳 南 東 側 中 腹 )ま で 降 灰 を 確 認 し て い る 。 噴 火 場 所 は 硫 黄 岳 山 頂 3。 三 島 村 役 場 に よ る と 、1、2、5~ 8、11 月 に 島 内 で 少 量 の 降 灰 が あ り 、 有色噴煙が時折観測された。 噴 火 場 所 は 硫 黄 岳 山 頂 4。 三 島 村 役 場 に よ る と 、 1、 5、 6、 7、 9~ 12 月 に 島 内 で 降 灰 が あ っ た 。 噴 火 場 所 は 硫 黄 岳 山 頂 5。 三 島 村 役 場 に よ る と 、 2、 4~ 12 月 に 島 内 で 降 灰 が あ っ た 。 噴 火 場 所 は 硫 黄 岳 山 頂 6。 5~ 7 月 に か け て 火 山 活 動 が や や 活 発 化 し 、 集 落 (硫 黄 岳 の 西 約 3km) では降灰が度々確認された。 噴 火 場 所 は 硫 黄 岳 山 頂 7。 6~ 10 月 に か け て 火 山 活 動 が や や 活 発 化 し 、時 々 噴 火 が 発 生 し た 。そ れ 以 外 の 期 間 は 、噴 火 が 4 月 に 2 回 、5 月 に 1 回 発 生 し た が 比 較 的 穏 やかな状態で経過した 噴 火 場 所 は 硫 黄 岳 山 頂 8。 3、4、6、8~ 10 月 に 時 々 噴 火 が 発 生 。集 落 で 時 々 降 灰 が 確 認 さ れ た 。 ※ 噴 火 イ ベ ン ト の 年 代 、 噴 火 場 所 、 噴 火 様 式 等 に つ い て は 、 (独 )産 業 技 術 総 合 研 究 所 の 活 火 山 デ ー タ ベ ー ス (工 藤 ・ 星 住 , 2006-)を 参 考 に 、 文 献 の 追 記 を 行 っ た 。 1386 (93.薩摩硫黄島) 【引用文献】 1.気 象 庁 (2005) 日 本 活 火 山 総 覧 (第 3 版 ), 薩 摩 硫 黄 島 , 571-578. 2.気 象 庁 (1998) 平 成 10 年 12 月 地 震 ・ 火 山 月 報 ( 防 災 編 ) ,気 象 庁 , 44. 3.気 象 庁 (1999) 平 成 11 年 12 月 地 震 ・ 火 山 月 報 ( 防 災 編 ) ,気 象 庁 , 61. 4.気 象 庁 (2000) 平 成 12 年 12 月 地 震 ・ 火 山 月 報 ( 防 災 編 ) ,気 象 庁 , 68. 5.気 象 庁 (2001) 平 成 13 年 12 月 地 震 ・ 火 山 月 報 ( 防 災 編 ) ,気 象 庁 , 56. 6.気 象 庁 (2002) 平 成 14 年 12 月 地 震 ・ 火 山 月 報 ( 防 災 編 ) ,気 象 庁 , 79. 7.気 象 庁 (2003) 平 成 15 年 12 月 地 震 ・ 火 山 月 報 ( 防 災 編 ) ,気 象 庁 , 76. 8.気 象 庁 (2004) 平 成 15 年 12 月 地 震 ・ 火 山 月 報 ( 防 災 編 ) ,気 象 庁 , 28. 9.田 中 館 秀 三 (1935) 昭 和 9 年 鹿 児 島 県 硫 黄 島 付 近 噴 火 資 料 , 岩 鉱 , 13, 184-190. 10.田 中 館 秀 三 (1935) 硫 黄 島 新 島 噴 火 概 報 , 岩 鉱 , 13, 201-213. 11.田 中 館 秀 三 (1935) 昭 和 9 年 鹿 児 島 県 硫 黄 島 付 近 噴 火 資 料 ( 続 ) , 岩 鉱 , 13, 283-288. 12.田 中 館 秀 三 (1935) 鹿 児 島 県 下 硫 黄 島 噴 火 概 報 , 火 山 , 2, 188-209. 13.田 中 館 秀 三 (1935) 硫 黄 島 新 島 及 び 武 富 島 噴 火 岩 の 化 学 成 分 . 岩 鉱 , 14, 36-38. 14.田 中 館 秀 三 (1936) 薩 南 硫 黄 島 新 島 第 2 回 調 査 概 報 , 岩 鉱 , 16, 67-74. 15.田 中 館 秀 三 (1939) 薩 南 硫 黄 島 新 島 ( 昭 和 硫 黄 島 ) 発 達 の 過 程 ,地 質 学 雑 誌 , 46, 279-280. 16.小 野 晃 司 ・ 曽 屋 龍 典 ・ 細 野 武 男 (1982) 5 万 分 の 1 地 質 図 幅 「 薩 摩 硫 黄 島 」 及 び 同 説 明 書 ,地 質 調 査 所 , 80p. 17.Kawanabe, Y. and Saito, G. (2002) Volcanic activity of the Satsuma-Iwojima area during the past 6500 years., Earth, Planet and Space, 54, 295-301. 18.前 野 深 ・ 谷 口 宏 充 (2005) 薩 摩 硫 黄 島 に お け る カ ル デ ラ 形 成 期 以 降 の 噴 火 史 , 火 山 , 50, 71-85. 19.福 沢 仁 之 (1995) 天 然 の 「 時 計 」・「 環 境 変 動 検 出 計 」 と し て の 湖 沼 の 年 縞 堆 積 物 , 第 四 紀 研 究 , 34, 135-149. 20. 町 田 洋 ・ 新 井 房 夫 (1978) 南 九 州 鬼 界 カ ル デ ラ か ら 噴 出 し た 広 域 テ フ ラ ― ア カ ホ ヤ 火 山 灰 , 第 四 紀 研 究 , 17, 143-163. 21.宇 井 忠 英 (1973) 幸 屋 火 砕 流 ― 極 め て 薄 く 広 が り 堆 積 し た 火 砕 流 の 発 見 , 火 山 , 18, 153-168. 22.Maeno, F. and Taniguchi, H. (2006) Silicic lava dome growth in the 1934-1935 Showa Iwo-jima eruption, Kikai caldera, south of Kyushu, Japan, Bulletin of Volcanology, 68, 673-688. 23.篠 原 宏 志 ・ 他 (2008) 火 山 研 究 解 説 集 : 薩 摩 硫 黄 島 , 産 業 技 術 総 合 研 究 所 . 24.Saito, G., et al. (2002) Mafic-felsic interaction at Satsuma-Iwojima volcano, Japan: Evidence from mafic inclusions in rhyolites. Earth, Planet and Space, 54, 303-325. 25.気 象 庁 観 測 部 地 震 課 火 山 係 (1959) 日 本 噴 火 誌 . 26.気 象 庁 (1988) 気 象 要 覧 , 1061, 52. 27.福 岡 管 区 気 象 台 (2002) 九 州 地 方 の 火 山 . 福 岡 管 区 気 象 台 要 報 , 57, 1-240. 28.地 質 調 査 所 (1997) 薩 摩 硫 黄 島 火 山 の 硫 黄 岳 の 活 動 状 況 . 火 山 噴 火 予 知 連 絡 会 会 報 , 67, 79-82. 29.奥 野 充 (1997) 南 九 州 の 第 四 紀 末 テ フ ラ の 加 速 器 14C 年 代( 予 報 ). 名 古 屋 大 学 タ ン デ ト ロ ン 加 速 器 質 量 計 シ ン ポ ジ ウ ム ( 1995 年 度 ) 講 演 予 稿 集 , 67, 89-109. 1387 (93.薩摩硫黄島) 全岩化学組成 図 93-7 全 岩 化 学 組 成 の ハ ー カ ー 図 (Saito et al., 2002). 小 野 ・ 他 (1982), 氏 家 ・ 他 (1986) のデータも含まれる. Ngm( エ ラ ー バ ー 付 シ ン ボ ル ) : 稲 村 岳 ス コ リ ア の 石 基 組 成 (Saito et al. , 2001). Nsc: 稲 村 岳 ス コ リ ア の 全 岩 組 成 . 過去の噴火における先駆現象等 1934 年海 底噴火 (昭 和硫黄 島形 成)に おい ては、 噴火 の 14 日 前 から周 辺の 島でも 有 感 と なる群 発地 震や井 戸水 の温度 上昇 がみら れた 。 1388 (93.薩摩硫黄島) 近年の火山活動 注4 注1 注2 注3 注4 図 93-8 1998 年 8 月 1 日 三島村役場硫黄島出張所から気象庁へ通報開始。 2002 年 11 月 16 日 気象庁が設置した監視カメラによる観測開始。 2009 年 2 月 23 日 ~ 3 月 21 日 遠 望 カ メ ラ 障 害 の た め 噴 煙 は 不 明 。 地震計障害のため火山性地震及び火山性微動の回数が不明の期間がある。 火 山 活 動 経 過 (1998 年 1 月 ~ 2012 年 6 月 30 日 ). 注 1) 三 島 村 役 場 硫 黄 島 出 張 所 か ら 気 象 庁 へ 通 報 開 始 . 注 2) 気 象 庁 が 設 置 し た 監 視 カ メ ラ に よ る 観 測 開 始 . 注 3) 遠 望 カ メ ラ 障 害 の た め 噴 煙 は 不明. 図 93-9 A 型 地 震 及 び B 型 地 震 の 震 源 分 布 (井 口 ・ 他 , 2002). 黒丸: A 型地震, 白丸: B 型地震. 大きい黒丸は本文献による震源決定であり, 小さい黒丸は加茂 (1976, 1977, 1978) に よ る . 十 字 は 観 測 点 を 示 す . A 型 地 震 は 硫 黄 岳 の 北 西 お よ び 北 山 麓 の 深 さ 海 面 下 1km 付 近 に 震 源 決 定 さ れ た . B 型地震の震源は極めて浅く,火口内の狭い範囲に集中して分布している. 1389 (93.薩摩硫黄島) 震央分布図 時空間分布図(南北断面) 薩摩硫黄島▲ 東西断面図 図 93-10 地震活動経過図(規模別) 広 域 地 震 観 測 網 に よ る 浅 部 の 地 震 活 動 (青 )及 び 深 部 低 周 波 地 震 活 動 (赤 ) (1997 年 10 月 1 日 ~ 2012 年 6 月 30 日 ). 図 93-11 薩 摩 硫 黄 島 硫 黄 岳 に お け る 地 熱 異 常 域 分 布 と 赤 外 熱 映 像 (井 口 ・ 鍵 山 , 2002). 黄 色 は 地 表 面 温 度 100℃ 未 満 の 熱 異 常 域 , 赤 は 100℃ 以 上 の 異 常 域 を 示 す . 山 頂 に 比 べ れ ば 温 度 は 低 い も の の 山 腹 に も 多 数 の 熱 異 常 が 見 ら れ ,こ れ ら の 場 所 は 噴 気 地 帯 に 対 応 する. 1390 (93.薩摩硫黄島) 図 93-12 硫 黄 岳 山 頂 火 口 か ら の 熱 エ ネ ル ギ ー 放 出 率 の 変 化 (井 口 ・ 鍵 山 , 2002). 1996 年 に ピ ー ク に 達 し た 熱 エ ネ ル ギ ー の 放 出 率 は そ の 後 減 少 を 続 け , 1993 年 以 前 の 熱 的 レ ベ ル に 戻 っ た . 図 93-13 火 山 ガ ス の 最 高 温 度 及 び 二 酸 化 硫 黄 放 出 量 の 変 化 (篠 原 ・ 他 , 2002). 新 火 孔 の 生 成 に 伴 い , 二 酸 化 硫 黄 の 放 出 量 は 1990 年 半 ば に は や や 増 加 し , その後低下傾向にあるように見える. 1391 (93.薩摩硫黄島) 防災に関する情報 ①火山 防災 協議会 関係都道府県 火山防災協議会の名称 設置 最近の主な活動の内容 ・活動活発時に、活動状況、避難の必要性の有無などを村長に助言 鹿児島県 薩摩硫黄島噴火災害対策 連絡会議 1997.3 構 成 機 関 火山防災協議会のコアグループに相当する機関 (◎は事務局) ■県(防災部局) 鹿児島県危機管理局危機管理防災課◎ ■市町村 三島村 ■気象台 鹿児島地方気象台 ■砂防部局 ― ■火山専門家等 京都大学、鹿児島大学 左に挙げた以外の構成機関 ■関係機関 (国)第十管区海上保安本部、陸上自衛隊第12普通科連隊、海上自衛隊第1航空群、 鹿児島運輸支局、鹿児島農政事務所 (警察・消防)鹿児島県警察本部 (その他)日本赤十字社鹿児島県支部、NTT西日本鹿児島支店、九州電力鹿児島支店 ②火山 ハザ ードマ ップ 等 ・「薩 摩硫 黄島火 山災 害危険 区域 予測図 」 ・「薩 摩硫 黄島防 災情 報図」 ・いず れも 鹿児島 県 2010 年度 作 成 ・提 供 URL http://www.pref.kagoshima.jp/aj01/bosai/sonae/keikaku/h23/documents/24696_20120419 165518-1.pdf 1392 (93.薩摩硫黄島) ③噴火 警戒 レベル (2007(平 成 19)年 12 月 1 日運 用開 始) 1393 (93.薩摩硫黄島) 1394 (93.薩摩硫黄島) ④主な 火山 情報の 発表 状況 (1965 年 1 月 1 日 の情 報発表 業務 開始以 降 2007 年 11 月 30 日 まで ) , 情報の種類 65 火山情報(臨時) - , 66 - , 67 - , 68 - , 69 - , 70 - , 71 - , 72 - , 73 - , 74 - , 75 - , , , 79 - - , 80 - - , 81 - - , 82 - - , 83 - - , 84 - - , 85 - - , 86 - - , 87 - - , , , , 93 - - - , 94 - - - , , , , , , - - - , , , 情報の種類 火山活動情報 ※ 1 臨時火山情報 ※ 1 , - 78 - - 情報の種類 緊急火山情報 ※ 2 臨時火山情報 火山観測情報 ※ 2 , , 情報の種類 緊急火山情報 臨時火山情報 火山観測情報 , 77 89 - - 01 - - 4 90 - - , 02 - - 5 91 - - , 03 - - 6 92 - - , 04 - - 4 05 - - 1 06 - - - 95 - - - 96 - 97 - - 98 - - 8 99 - - 7 76 - 88 - 1 00 - - 10 07 - - - ※ 1 昭 和 53( 1978)年 12 月 20 日 、火 山 活 動 情 報 、臨 時 火 山 情 報 、定 期 火 山 情 報 の 3 種 類 の 火 山 情 報 の 発 表業務を開始。従来は火山情報(定期または臨時)を発表。 ※ 2 平 成 5( 1993) 年 5 月 11 日 、 火 山 活 動 情 報 を 緊 急 火 山 情 報 と 改 正 。 火 山 観 測 情 報 を 新 設 。 ※ 平 成 14( 2002) 年 3 月 、 常 時 観 測 火 山 だ け で 定 期 的 に 発 表 し て い た 定 期 火 山 情 報 は 廃 止 し 、 火 山 活 動 解説資料に発展解消。 ⑤ 噴 火警 報等の 発表 状況 (2007 年 12 月 1 日の 噴火警 報及 び噴火 予報 の運用 開始 以降 2012 年 12 月 31 日現在 まで ) ・噴火 警報 ・予報 年月日 2007( 平 成 19)年 12 月 1 日 10:04 警報・予報 噴 火 警 報 ※ 1※ 2 ( 噴 火 警 戒 レ ベ ル 2、火 口 周 辺規制) 2012( 平 成 24) 年 11 月 29 日 11:00 噴火予報:噴火警報解除 鹿児島県三島 ( 噴 火 警 戒 レ ベ ル 1 、平 常 ) 村 ※1 ※2 対象市町村等 鹿児島県三島 村 噴火警報及び噴火予報の発表開始に伴う発表 噴火警戒レベルの運用開始に伴う発表 ・火山 の状 況に関 する 解説情 報の 発表状 況 発表は なし 。 1395 内容 硫 黄 岳 山 頂 火 口 の 噴 煙 活 動 は 、や や 活 発 な 状 態 で 推 移 、火 山 性 地 震 お よ び 火 山 性 微 動はやや多い状態が継続。 今 後 も 、火 口 か ら 半 径 約 1km の 範 囲 に 噴 石を飛散させる程度の小規模な噴火が発 生すると予想される。 風下側では降灰等に注意が必要。 硫黄岳山頂火口周辺に影響を及ぼす噴 火の兆候は認められなくなった。しかし、 硫 黄 岳 火 口 で は 噴 煙 活 動 が 続 い て お り 、火 口内では火山灰等の噴出する可能性があ る。 ま た 、火 口 付 近 で は 火 山 ガ ス に 対 す る 注 意が必要。 (93.薩摩硫黄島) ⑥避難 実績 及び入 山規 制等の 実績 ・避難 状況 はなし ・登山 規制 の状況 規制の現状 硫黄岳火口から概ね 1km 以内立入規制。なお、地形より一部火口から約 1.6km 以内立入規制。 過去の規制履歴 2007 年 12 月以降、硫黄岳火口から 1km 以内立入規制。 規制実施機関 三島村 社会条件等 ①人口 三島村 377 人(薩摩硫黄島:121 人)(三島村役場:平成 23 年 11 月 1 日現在) ②国立 ・国 定公園 ・登 山者数 等 国立・国定公園:指定なし ③付近 の公 共機関 機関・部署名 三島村役場 硫黄島出張所 三島開発総合センター 所在地 鹿児島県鹿児島市名山町 12-18 鹿児島県鹿児島郡三島村硫黄島 鹿児島県鹿児島郡三島村硫黄島 電話番号 099-222-3141 09913-2-2104 09913-2-2262 ④主要 交通 網 船舶 (村営船フェリーみしま(200 名):鹿児島-各島-黒島) ⑤関連 施設 なし 関係する主な気象官署 機関・部署名 福岡火山監視・情報センター 鹿児島地方気象台 所在地 ( 福 岡 管 区 気 象 台 )福 岡 県 福 岡 市 中 央 区 大 濠 1-2-36 鹿 児 島 県 鹿 児 島 市 東 郡 元 町 4-1 1396 電話番号 092-725-3601 099-250-9911 (93.薩摩硫黄島) 気象庁および大学等関係機関の観測網 山頂付近 ※ 同一地点に複数の計器を設置している場合には、観測点の位置を●で示し、その周囲に設置している観測点の種 類を示している。 国 土 地 理 院 発 行 の 5 万 分 の 1 地 形 図 (薩 摩 硫 黄 島 ) (気象庁) 地震計 (短周期) GPS 空振計 遠望カメラ (国土地理院) GPS 凡 例 (京都大学防災研究所) (自治体) 地震計 (短周期) 震度計 空振計 図 93-14 観測点位置図. 1397 (93.薩摩硫黄島) 引用文献 地 質 調 査 所 (1997) 薩 摩 硫 黄 島 火 山 の 硫 黄 岳 の 活 動 状 況 . 火 山 噴 火 予 知 連 絡 会 会 報 , 67, 79-82. 地質調 査所 ・京都 大学 (1998) 1997 年 11 月 までの 薩摩 硫黄島 火山 の硫黄 岳の 活動状 況 . 火 山噴火 予知 連絡会 会報 , 70, 59-61. 井口 正人 ・ 他 (2002) 薩摩 硫黄 島 にお ける 火 山性 地震 の 特徴. 薩 摩 硫黄 島火 山 ・口 永良部島 火山の 集中 総合観 測(平成 12 年 8 月~ 平成 13 年 3 月), 13-23. 井口 正人 ・ 鍵山 恒臣 (2002) 薩 摩 硫黄 島火 山 にお ける 空 中赤 外熱 測 定. 薩摩 硫 黄島 火山・口 永良部 島火 山の集 中総 合観測 (平 成 12 年 8 月~平 成 13 年 3 月) , 43-50. 海上保 安庁 (1982) 薩 摩硫黄 島 日本・南西 諸島 : 海 底地質 構造 図. 沿 岸の 海の基 本図 (5 万 分の 1), 6351 4-S , 海 上 保安庁 . 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