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シロイヌナズナ根端分裂組織における 放射パターン形成の分子基盤の解析

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シロイヌナズナ根端分裂組織における 放射パターン形成の分子基盤の解析
シロイヌナズナ根端分裂組織における
放射パターン形成の分子基盤の解析
宮島
俊介
奈良先端科学技術大学院大学
バイオサイエンス研究科
植物遺伝子機能学講座
平 成 21 年
1
1月
目次
第 1 章 シ ロ イ ヌ ナ ズ ナ の 根 に お い て 、 AGO1 は SHR/SCR 経 路 と 独 立 し て
放射パターン形成に機能する
1-1
序 論 ------------------------------------------------------------------------------3
1-2
結 果 ------------------------------------------------------------------------------6
1-2-1. AGO1 機 能 欠 損 は 根 に お け る 基 本 組 織 の 放 射 パ タ ー ン に 異 常 を 引
きおこす
1-2-2. AGO1 の 機 能 欠 損 は SHR/SCR 発 現 パ タ ー ン に 影 響 し な い
1-2-3. AGO1 と SHR/SCR と の 二 重 機 能 欠 損 は 、基 本 組 織 の 特 徴 の 著 し い
損失を引き起こす
1-2-4. 胚 発 生 お け る AGO1 機 能 欠 損 は scr 変 異 と 相 乗 的 効 果 を 示 さ な い
1-3
考 察 -----------------------------------------------------------------------------11
第 2 章 シロイヌナズナの根の放射パターン形成における中心柱と基本組織
間の双方向性組織間相互作用
2-1
序 論 -----------------------------------------------------------------------------14
2-2
結 果 -----------------------------------------------------------------------------16
2-2-1. PHABULOSA 遺 伝 子 の 発 現 制 御 は 正 常 な 放 射 パ タ ー ン 形 成 に 必 須
である
2-2-2. RM に お い て miRNA165/166 に よ っ て PHB の 発 現 領 域 は 維 管 束 組
織に限定化される
2-2-3. MIR165A は SCR 依 存 的 に RM の 内 皮 特 異 的 に 転 写 さ れ る
2-2-4. SCR は RM に お い て 正 常 な miR165/166 の 蓄 積 に 必 須 で あ る
2-2-5. SCR は PHB 発 現 領 域 の 限 定 化 に 機 能 す る
2-2-6. 内 皮 特 異 的 に 発 現 す る MIR165A は 、 中 心 柱 に お け る PHB の 発 現
を制御する能力をもちうる
2-2-7. 内 皮 で 発 現 す る SCR は PHB の 発 現 制 御 を 介 し て 細 胞 非 自 律 的 に
中心柱の機能発現に関与する
2-2-8. 胚 発 生 期 及 び 本 葉 の 発 生 段 階 に お い て MIR165A の 発 現 は SCR に
依存しない
2-2-9. PHB 発 現 制 御 に 対 す る AGO1 と SCR の 効 果 は 異 な る
2-3
考 察 -----------------------------------------------------------------------------23
第3章
今 後 の 展 望 ------------------------------------------------------------------26
第4章
図 表 ---------------------------------------------------------------------------27
第5章
材 料 と 方 法 ------------------------------------------------------------------52
第6章
参 考 文 献 ---------------------------------------------------------------------56
第7章
謝 辞 ---------------------------------------------------------------------------65
2
第 1 章 シ ロ イ ヌ ナ ズ ナ の 根 に お い て 、 AGO1 は SHR/SCR 経 路 と
独立して放射パターン形成に機能する
1-1 序 論
多 細 胞 生 物 は 一 定 の パ タ ー ン を も っ た 組 織 形 成 を 行 う こ と で 、固 有 の 形 態
を 構 築 し て い る 。こ の 組 織 形 成 の 事 を パ タ ー ン 形 成 と 呼 ぶ 。維 管 束 植 物 に 共
通 す る パ タ ー ン 形 成 と し て 、 茎 や 根 な ど の 軸 性 器 官 に お け る 中 央 -周 辺 軸 に
沿 っ た 放 射 パ タ ー ン 形 成 が 挙 げ ら れ る 。こ の 放 射 パ タ ー ン は 、表 皮 、基 本 組
織 、維 管 束 組 織 、と い う 3 種 類 の 組 織 系 か ら 構 成 さ れ る が 、そ れ ら 組 織 系 に
含 ま れ る 細 胞 層 の 数 や 、組 織 の 配 置 様 式 な ど は 、植 物 種 、ま た は 器 官 ご と に
多 様 性 を も つ (Gifford and Foster 1989)。
シ ロ イ ヌ ナ ズ ナ の 根 は 、非 常 に 単 純 な 組 織 構 成 を も ち 、放 射 パ タ ー ン 形 成
研 究 に お け る 有 用 な モ デ ル ケ ー ス で あ る 。シ ロ イ ヌ ナ ズ ナ の 根 で は 、中 央 部
に 維 管 束 組 織 (vascular tissue : VT) と 内 鞘 (pericycle : Pe) か ら な る 中 心 柱
(stele) が 存 在 し 、そ れ を 取 り 囲 む よ う に 、内 側 か ら 内 皮 (endodermis : En) と
皮 層 (cortex : Co) か ら な る 基 本 組 織 (ground tissue : GT) 、表 皮 (epidermis :
Ep) 、 側 部 根 冠 (lateral root cap) が 放 射 状 に 形 成 さ れ る (Fig. 1B) 。 ま た 、
内鞘、内皮、皮層、表皮は、それぞれ 1 層の細胞層から構成されている
(Fig.1B) 。 こ れ ら 各 々 の 組 織 は 、 根 端 分 裂 組 織
(Root Meristem: RM) 内 の
「 始 原 細 胞 」と 呼 ば れ る 幹 細 胞 に 由 来 す る 。ま た 、こ の よ う な 組 織 パ タ ー ン
の 基 盤 は 、胚 発 生 期 に 構 築 さ れ 、発 芽 後 の RM に お け る 継 続 的 な 細 胞 分 裂 と
細 胞 分 化 に よ っ て 維 持 さ れ て い る (Fig. 1A, C) (Dolan et al. 1993, Scheres et al.
1994) 。
こ れ ま で に 、シ ロ イ ヌ ナ ズ ナ の 放 射 パ タ ー ン 形 成 に 関 わ る い く つ か の 遺 伝
子やその作用機構が明らかになっている。基本組織は、1 層ずつの内皮と皮
層からなる 2 層構造をもつ。基本組織の形成過程においては、1 層の皮層/
内 皮 始 原 細 胞 (cortex/endodermis initial cell : CEI) の 娘 細 胞 (CEI daughter
cell : CED) が 非 対 称 分 裂 す る 事 で 、皮 層 と 内 皮 と い う 2 層 の 細 胞 層 が 産 出 さ
れ る (Fig. 1D) 。 short-root (shr) 変 異 体 と scarecrow (scr) 変 異 体 で は 、 CED
が 非 対 称 分 裂 せ ず 、基 本 組 織 が 1 層 の 細 胞 層 の み で 構 成 さ れ る (Scheres et al.
1995) 。 こ れ ま で に 、 こ れ ら の 変 異 体 の 原 因 遺 伝 子 で あ る SHR と SCR の 内
皮 形 成 (CED に お け る 不 等 分 裂 と 内 皮 細 胞 分 化 ) へ の 作 用 機 構 が 明 ら か に
さ れ て い る 。 SHR 遺 伝 子 と SCR 遺 伝 子 は 、 共 に 植 物 特 有 の GRAS 型 転 写 因
子 を コ ー ド し て い る (Di Laurenzio et al. 1996, Helariutta et al. 2000) 。 SHR 遺
伝 子 は 、中 心 柱 で 転 写・翻 訳 さ れ た 後 、隣 接 す る 基 本 組 織 の 細 胞 に 移 行 す る
(Nakajima et al. 2001) 。 そ の 後 、 基 本 組 織 に 移 行 し た SHR は SCR と 直 接 相
3
互 作 用 し 、 SHR-SCR 転 写 因 子 複 合 体 と し て SCR 遺 伝 子 を 含 む 様 々 な 遺 伝 子
群 の 転 写 制 御 を 行 う 。 こ の 転 写 制 御 が CED に お け る 非 対 称 分 裂 と 、 そ の 後
の 内 皮 細 胞 へ の 分 化 を 誘 導 す る (Levesque et al. 2006, Cui et al. 2007) 。
パ タ ー ン 形 成 に お い て は 、動 物 と 植 物 い ず れ に お い て も 、そ れ ぞ れ の 組 織
の 特 徴 を 規 定 す る 遺 伝 子 が 時 間・空 間 的 に 正 確 に 発 現 調 節 さ れ る こ と が 不 可
欠 で あ る 。 低 分 子 RNA (small RNA : sRNA) が 介 す る 遺 伝 子 発 現 制 御 は 、 広
く 生 物 界 に 保 存 さ れ て い る 。 sRNA の 一 種 で あ る microRNA (miRNA)は 、 内
生 の 20nt 程 度 か ら な る 一 本 鎖 RNA で あ る 。miRNA は 相 補 的 な 塩 基 配 列 を も
つ 標 的 mRNA の 切 断 や 翻 訳 抑 制 な ど の 転 写 後 制 御 を 介 し て 、 標 的 遺 伝 子 の
発 現 を 抑 制 す る (Bartel 2004)。 シ ロ イ ヌ ナ ズ ナ に お け る miRNA 研 究 の 草 創
期 に お い て は 、 15 フ ァ ミ リ ー に 分 類 さ れ る 19 種 類 の miRNA が 単 離 ・ 同 定
さ れ た (Llave et al. 2002, Mette et al. 2002, Park et al. 2002, Reinhart et al.
2002) 。 近 年 の 網 羅 的 な 解 析 に よ り 、 数 多 く の miRNA 候 補 が 単 離 ・ 同 定 さ
れ 、ゲ ノ ム 配 列 情 報 か ら そ れ ら の 標 的 遺 伝 子 が 推 定 さ れ て い る (Rajagopalan
et al. 2006, Fahlgren et al. 2007) 。 ま た 、 miRNA が 介 す る 発 現 制 御 を 担 う タ
ン パ ク 質 と し て ARGONAUTE (AGO) が 挙 げ ら れ る (Hutvagner and Simard
2008) 。AGO 様 タ ン パ ク 質 は 、古 細 菌 、真 正 細 菌 、真 核 生 物 に お い て 広 く 保
存 さ れ て お り 、 PAZ ド メ イ ン 、 MID ド メ イ ン 、 PIWI ド メ イ ン と い っ た 機 能
ド メ イ ン を も つ 。 PAZ ド メ イ ン は sRNA と 直 接 相 互 作 用 す る (Lingel et al.
2003, Song et al. 2003, Yan et al. 2003) 。 ま た 、 PIWI ド メ イ ン は RNase-H 様
の 立 体 構 造 を と り 、数 種 類 の AGO タ ン パ ク 質 に つ い て は 、RNA 切 断 活 性 を
有 す る 事 が 生 化 学 的 に 証 明 さ れ て い る (Parker et al. 2004, Song et al. 2004) 。
シ ロ イ ヌ ナ ズ ナ ゲ ノ ム に は 、10 種 類 の AGO タ ン パ ク 質 が コ ー ド さ れ て い る
(Vaucheret 2008) 。 生 化 学 的 な 解 析 か ら 、 各 々 の AGO タ ン パ ク 質 は 、 sRNA
の 5’ 端 の 塩 基 を 指 標 と し て 、 特 定 の sRNA 分 子 と 選 択 的 に 相 互 作 用 す る こ
と が 明 ら か に さ れ て い る (Mi et al. 2008) 。 ARGONAUTE1 (AGO1) は 、 5’
端 に ウ リ ジ ン 残 基 を も つ sRNA と 特 異 的 に 相 互 作 用 す る 。シ ロ イ ヌ ナ ズ ナ の
miRNA 分 子 の ほ と ん ど に お い て 、 5’ 端 が ウ リ ジ ン 残 基 で あ る こ と か ら 、
AGO1 は miRNA 分 子 と 選 択 的 に 相 互 作 用 し 、 そ の 標 的 mRNA の 切 断 も し く
は 翻 訳 を 抑 制 す る と 考 え ら れ る 。 ago1 機 能 欠 損 体 に お い て 、 miRNA 標 的 遺
伝 子 群 の 転 写 産 物 が 過 剰 蓄 積 す る と い う 過 去 の 研 究 結 果 は 、AGO1 が miRNA
の 機 能 発 現 に 関 与 す る こ と を 支 持 す る (Vaucheret et al. 2004) 。 ま た 、 ago1
機 能 欠 損 体 は 多 面 的 な 形 態 異 常 を 示 す (Bohmert et al. 1998, Lynn et al. 1999,
Sorin et al. 2005, Yang et al. 2006) 。 こ れ は 、 AGO1 の 下 流 因 子 群 、 つ ま り
miRNA に よ り 制 御 さ れ る 遺 伝 子 群 が 、 植 物 発 生 の 様 々 な 過 程 で 機 能 し て い
る た め で あ る (McConnell et al. 2001, Palatnik et al. 2003, Chen 2004, Laufs et
al. 2004, Arazi et al. 2005, Mallory et al. 2005, Millar and Gubler 2005) 。興 味 深
4
い こ と に 、 miRNA 分 子 種 と そ の 標 的 遺 伝 子 群 、 及 び そ れ ら が 関 わ る 発 生 現
象 の 組 合 せ は 、維 管 束 植 物 に お い て 広 く 保 存 さ れ て い る こ と が 示 さ れ て い る
(Floyd and Bowman 2004, Willmann and Poethig 2007) 。
本 論 文 の 第 1 章 に お い て は 、シ ロ イ ヌ ナ ズ ナ の 根 の 放 射 パ タ ー ン 形 成 に 対
す る AGO1 の 機 能 に つ い て 報 告 す る 。ago1 機 能 欠 損 体 に お い て は 、RM の 基
本 組 織 に お け る パ タ ー ン 形 成 に 異 常 が 観 察 さ れ た 。 さ ら に 、 SHR/SCR 経 路
と AGO1 機 能 を 分 子 遺 伝 学 的 に 解 析 し た 結 果 か ら 、シ ロ イ ヌ ナ ズ ナ RM に お
け る 放 射 パ タ ー ン 形 成 に お い て 、 AGO1 と SHR/SCR 経 路 が 独 立 し て 基 本 組
織形成に機能するというモデルを提唱する。
5
1-2 結 果
1-2-1. AGO1 機 能 欠 損 は 根 に お け る 基 本 組 織 の 放 射 パ タ ー ン に 異 常 を 引 き 起
こす
これまでに、根端放射パターンに異常をもついくつかの変異体が単離され
て き た (Scheres et al. 1995) 。 放 射 パ タ ー ン 形 成 に 関 わ る 新 た な 分 子 機 構 を
明 ら か に す る た め に 、 RM で の 放 射 パ タ ー ン に 異 常 を も つ 新 規 変 異 体 の 探 索
を 行 っ た 。 QC を GFP で マ ー ク す る 系 統 (pWOX5::mGFP5ER) (Sarkar et al.
2007) を EMS (ethyl methanesulofonate) で 変 異 原 処 理 し 、 そ の M2 世 代 植 物
の 根 を 1 個 体 ず つ 共 焦 点 レ ー ザ ー 顕 微 鏡 (Confocal laser-scanning microscope:
CLSM) で 観 察 す る こ と に よ り ス ク リ ー ニ ン グ を 行 っ た 。 そ の 結 果 、 単 離 さ
れ た 5gf32 系 統 で は 、野 生 型 植 物 に お い て 2 層 の 細 胞 層 か ら な る 基 本 組 織 が 、
3 層 の 細 胞 層 か ら 形 成 さ れ て い た (Fig. 2A, B) 。さ ら に 、基 本 組 織 の 細 胞 が 、
野 生 型 植 物 で は 同 心 円 状 に 配 置 す る の に 対 し (Fig. 2C) 、 5gf32 変 異 体 の 3
層 の 基 本 組 織 に お い て は 、細 胞 は 同 心 円 状 に 配 置 し て い な か っ た (Fig. 2D) 。
5gf32 変 異 体 の 子 葉 は 棒 状 で 野 生 型 植 物 の よ う に 展 開 し て い な か っ た (Fig.
3A,B) 。 こ の 表 現 型 は 、 過 去 に 単 離 さ れ て い る argonaute1 (ago1) 機 能 欠 損
体 (Bohmert et al. 1998) に 非 常 に 類 似 し て い た た め 、 5gf32 変 異 体 に お け る
AGO1 コ ー ド 領 域 の 配 列 を 解 析 し た と こ ろ 、 保 存 さ れ た PIWI ド メ イ ン を コ
ー ド す る 領 域 に ナ ン セ ン ス 変 異 を 同 定 し た (Fig. 2F) 。 RT-PCR 解 析 の 結 果 、
5gf32 変 異 体 に お い て 、 AGO1 転 写 産 物 は 確 認 さ れ た が (Fig. 2G) 、 PIWI ド
メ イ ン は AGO1 の RNA 切 断 活 性 に 必 須 で あ る 事 か ら (Baumberger and
Baulcombe 2005)、5gf32 変 異 体 内 の AGO1 は 機 能 欠 損 し て い る と 推 定 さ れ る 。
さ ら に 、AGO1 遺 伝 子 内 に T-DNA が 挿 入 し た 独 立 し た 2 系 統 (SALK_035319
と SALK_096625、以 後 、そ れ ぞ れ ago1-101 と ago1-102 と 記 載 す る ) を 単 離
し た (Fig. 2F) 。 こ れ ら T-DNA 挿 入 系 統 に お い て 、 ago1-101 変 異 体 で は 、
AGO1 遺 伝 子 転 写 産 物 の 蓄 積 が 確 認 さ れ ず 、ま た 、ago1-102 変 異 体 で は 著 し
く 低 下 し て い た (Fig 2G) 。こ れ ら T-DNA 挿 入 変 異 体 の 表 現 型 を 確 認 し た と
こ ろ 、5gf32 変 異 体 と 同 様 の 放 射 細 胞 パ タ ー ン 異 常 が 観 察 さ れ た (Fig. 2B, 2D,
5C, 5H、一 部 未 掲 載 ) 。こ れ ら の 結 果 は 、シ ロ イ ヌ ナ ズ ナ の 根 の 基 本 組 織 に
お け る 正 常 な 放 射 パ タ ー ン 形 成 に 、AGO1 機 能 が 必 須 で あ る こ と を 意 味 し て
いる。
AGO1 の 機 能 欠 損 が RM に お け る 放 射 パ タ ー ン 形 成 に 異 常 を 引 き 起 こ し た
こ と か ら 、 次 に 、 miRNA の 産 出 に 関 わ る 因 子 群 の 機 能 欠 損 が 、 同 様 の 放 射
パ タ ー ン 異 常 を 引 き 起 こ す か を 確 か め た 。HYPONASTIC LEAVES 1 (HYL1) は
dsRNA 結 合 タ ン パ ク 質 を コ ー ド し 、そ の 機 能 は 正 常 な miRNA 量 の 蓄 積 に 必
須 で あ る (Han et al. 2004, Vazquez et al. 2004)。 hyl1-2 機 能 欠 損 型 変 異 体 の 根
6
の 細 胞 パ タ ー ン を 観 察 し た と こ ろ 、ago1 変 異 体 と 同 様 に 、基 本 組 織 に お け る
同 心 円 状 の 細 胞 配 置 に 異 常 が 確 認 さ れ た (Fig. 2E) 。ago1 変 異 体 と hyl1 変 異
体 に お い て 、 RM 放 射 パ タ ー ン に 類 似 し た 異 常 が 確 認 さ れ た 事 は 、 RM に お
け る 正 常 な 放 射 パ タ ー ン 形 成 に miRNA が 介 す る 遺 伝 子 発 現 制 御 系 が 必 須 で
あることを示す。
1-2-2. AGO1 の 機 能 欠 損 は SHR/SCR 発 現 パ タ ー ン に 影 響 し な い
根 の 基 本 組 織 形 成 に お い て は 、 こ れ ま で GRAS 型 転 写 因 子 で あ る
SHORT-ROOT (SHR) と SCARECROW (SCR) の 機 能 が 明 ら か に さ れ て い る 。
SHR と SCR は 直 接 相 互 作 用 す る こ と で 転 写 因 子 複 合 体 と し て 機 能 し 、内 皮 /
皮 層 始 原 細 胞 (CEI) の 娘 細 胞 (CED) の 非 対 称 分 裂 と 内 皮 細 胞 の 細 胞 分 化
を 制 御 す る (Di Laurenzio et al. 1996, Helariutta et al. 2000, Heidstra et al. 2004,
Sena et al. 2004)。ago1 機 能 欠 損 体 に お い て 基 本 組 織 パ タ ー ン 形 成 に 異 常 が 観
察 さ れ た 事 か ら 、ago1 機 能 欠 損 体 内 に お け る SHR/SCR の 発 現 様 式 を そ れ ぞ
れ の GFP 融 合 タ ン パ ク 質 (以 後 、そ れ ぞ れ SHR-GFP、GFP-SCR と 記 載 す る )
を 用 い て 解 析 し た (Nakajima et al. 2001, Gallagher et al. 2004)。 野 生 型 植 物 に
お い て 、 SHR-GFP の 蛍 光 は 、 中 心 柱 内 の 細 胞 に お い て は 細 胞 質 と 核 に 、 ま
た 内 皮 細 胞 と QC に お い て は 核 に 観 察 さ れ る (Fig. 4A)
(Nakajima et al.
2001)。こ の 発 現 様 式 は 、ago1-101 変 異 体 に お い て も 同 様 で あ っ た (Fig. 4B) 。
ま た 、GFP-SCR 蛍 光 は 野 生 型 植 物 の 内 皮 細 胞 と QC の 核 に お い て 特 異 的 に 観
察 さ れ る が (Fig. 4C) (Gallagher et al., 2004) 、 ago1-101 変 異 体 に お い て も そ
の 局 在 は 変 化 し て い な か っ (Fig. 4D) 。 こ れ ら 観 察 結 果 か ら 、 AGO1 の 機 能
欠 損 は 、 SHR と SCR の 発 現 に 影 響 し な い こ と を 示 さ れ た 。
1-2-3. AGO1 と SHR/SCR と の 二 重 機 能 欠 損 は 、 基 本 組 織 の 特 徴 の 著 し い 損
失を引き起こす
放 射 パ タ ー ン 形 成 に お け る AGO1 と SCR と の 相 互 関 係 を よ り 詳 細 に 明 ら
か に す る た め に 、 ago1 scr 二 重 変 異 体 を 作 成 し 、 発 芽 後 4 日 目 の 根 端 部 の 細
胞 パ タ ー ン を 観 察 し た 。野 生 型 植 物 で は 、基 本 組 織 は 1 層 ず つ の 皮 層 と 内 皮
か ら な り 、 縦 断 面 に お い て 、 そ れ ぞ れ 明 確 な 細 胞 列 と し て 観 察 さ れ る (Fig.
5A) 。 scr-3 変 異 体 の 基 本 組 織 は 1 層 の 細 胞 層 か ら 、 ま た ago1-101 変 異 体 で
は 三 層 の 細 胞 層 か ら 構 成 さ れ て い る が 、こ れ ら scr-3 変 異 体 と ago1-101 変 異
体 に お い て も 野 生 型 植 物 と 同 様 に 明 確 な 細 胞 列 と し て 認 識 さ れ た (Fig. 5B,
C) 。そ れ に 対 し 、ago1 scr-3 二 重 変 異 体 で は 、基 本 組 織 に 相 当 す る 領 域 の 細
胞 パ タ ー ン が 乱 れ 、 明 確 な 細 胞 列 は 確 認 さ れ な か っ た (Fig. 5D) 。
次 に 横 断 面 に お け る 細 胞 パ タ ー ン を 観 察 し た 。野 生 型 植 物 に お い て は 、楕
円 状 の 皮 層 細 胞 と 長 方 形 の 内 皮 細 胞 が 、そ れ ぞ れ 同 心 円 状 に 配 置 す る こ と で
7
基 本 組 織 が 構 成 さ れ て い る (Fig. 5E) 。 scr-3 変 異 体 と shr-2 変 異 体 の 基 本 組
織 は 、内 皮 細 胞 の 形 態 を も つ 細 胞 が 消 失 し 、皮 層 細 胞 様 の 形 態 を も つ 細 胞 か
ら 構 成 さ れ る (Fig. 5F, G) 。ま た 、ago1-101 変 異 体 基 本 組 織 に お い て は 、同
心 円 状 配 置 に 異 常 が 観 察 さ れ る が 、皮 層 細 胞 様 の 楕 円 状 細 胞 が 外 側 に 、内 皮
細 胞 様 の 長 方 形 細 胞 が 内 側 に 存 在 し て い る (Fig. 5H) 。こ れ ら の 結 果 に 対 し
て 、 ago1-101 scr-3 二 重 変 異 体 に お い て は 、 基 本 組 織 を 構 成 す る 特 徴 的 な 形
態 を も つ 細 胞 は 存 在 せ ず 、代 わ り に 球 形 の 細 胞 が 層 構 造 を な さ ず に 存 在 し て
い た (Fig. 5I) 。ま た ago1-101 shr-2 二 重 変 異 体 に お い て も 、同 様 の 細 胞 形 態
異 常 が 観 察 さ れ た (Fig. 5J) 。 こ れ ら の 結 果 を ま と め る と 、 AGO1 機 能 と
SHR/SCR 機 能 を 同 時 に 欠 損 す る と 、 そ れ ぞ れ の 単 一 変 異 体 で は 観 察 さ れ る
こ と の な い 表 現 型 、つ ま り 基 本 組 織 に 特 徴 的 な 形 態 を も つ 細 胞 の 消 失 と い う
新奇な表現型を引き起こした。
さ ら に 、 ago1-101 scr-3 二 重 変 異 体 の 根 端 組 織 に お け る 基 本 組 織 の 分 化 状
態を明らかにするために、基本組織マーカー遺伝子の発現様式を解析した。
MAGPIE (MGP) 遺 伝 子 と NUTCRACKER (NUC) 遺 伝 子 は 、共 に C2H2 型 zinc
finger タ ン パ ク 質 を コ ー ド し 、 そ れ ら 転 写 産 物 は RM の 基 本 組 織 と 維 管 束 組
織 の 一 部 に お い て 蓄 積 す る こ と が 報 告 さ れ て い る (Levesque et al. 2006) 。ま
た 、MGP 遺 伝 子 と NUC 遺 伝 子 は 、SHR-SCR 転 写 因 子 複 合 体 に よ っ て 直 接 転
写 誘 導 さ れ る (Cui et al. 2007)。 ま ず 、 野 生 型 植 物 、 ago1-101 変 異 体 、 scr-3
変 異 体 、 及 び ago1-101 scr-3 二 重 変 異 体 の 根 端 部 か ら RNA を 抽 出 し 、 定 量
的 real time-PCR 法 (qRT-PCR 法 ) を 用 い て 、MGP と NUC 転 写 産 物 の 蓄 積 を
比 較 し た 。ago1-101 変 異 体 と scr-3 変 異 体 に お け る MGP と NUC の 転 写 産 物
の 蓄 積 レ ベ ル は 、野 生 型 と 比 較 し て 、減 少 が 確 認 さ れ た (Fig. 6A, B) 。ま た 、
ago1-101 scr-3 二 重 変 異 体 に お け る MGP、NUC の 転 写 産 物 の 蓄 積 量 は 、そ れ
ぞ れ の 単 一 変 異 体 よ り も さ ら に 低 下 し て い た (Fig. 6A, B) 。 次 に 、 MGP プ
ロ モ ー タ ー /レ ポ ー タ ー (pMGP::mGFP5ER) 系 統 を 作 成 し 、各 遺 伝 子 型 背 景 に
お け る 発 現 様 式 を 解 析 し た 。ま ず 、野 生 型 背 景 に お い て は 、皮 層 、内 皮 及 び
内 鞘 に お い て 、 GFP 蛍 光 が 観 察 さ れ た (Fig. 6C) 。 こ の 結 果 は 、 in situ
hybridization 法 に よ る MGP の 発 現 解 析 の 結 果 (Levesque et al. 2006) と ほ ぼ
一 致 す る 。 scr-3 変 異 、 及 び ago1-101 変 異 体 に お い て は 、 そ れ ぞ れ の 基 本 組
織 と 内 鞘 に お い て GFP 蛍 光 が 観 察 さ れ た (Fig 6D, E) 。こ れ ら の 結 果 に 対 し
て 、 ago1-101 scr-3 二 重 変 異 体 で は 、 RM 基 部 側 領 域 に お い て は GFP 蛍 光 が
観 察 さ れ た も の の 、RM の 頂 端 領 域 に お い て は GFP 蛍 光 が 観 察 さ れ な か っ た
(Fig. 6F) 。さ ら に 、内 皮 特 異 的 発 現 マ ー カ ー で あ る En7 の 発 現 様 式 を 、各 遺
伝 子 型 に お い て 解 析 し た (Fig. 6G) (Heidstra et al. 2004) 。ago1-101 変 異 体 に
お い て は 、最 も 内 側 の 基 本 組 織 細 胞 層 で 、ま た 、scr-3 変 異 体 で は 、1 層 の 基
本 組 織 細 胞 層 に お い て En7 の 発 現 が 確 認 さ れ た (Fig. 6H, I) 。 こ れ ら の 結 果
8
に 対 し て 、 ago1-101 scr-3 二 重 変 異 体 に お い て は 、 En7 の 発 現 は 検 出 さ れ な
い
(75.8% n = 34) 、 も し く は そ の レ ベ ル が 著 し く 低 下 い て い た (Fig. 6J) 。
以 上 の 結 果 を ま と め る と 、 ago1-101 scr-3 二 重 変 異 体 に お い て は 、 野 生 型 植
物 や 単 独 変 異 体 と 比 較 し て 、基 本 組 織 マ ー カ ー の 発 現 が 著 し く 低 下 し て い た 。
ago1-101 scr-3 二 重 変 異 体 に お け る 細 胞 パ タ ー ン の 解 析 と 基 本 組 織 マ ー カ ー
の 発 現 解 析 の 結 果 は 、 shr/scr 変 異 と ago1 変 異 は 相 乗 的 効 果 を も ち 、 両 者 を
同 時 に 欠 損 さ せ る と 、 RM の 基 本 組 織 の 特 徴 の 著 し い 損 失 を 引 き 起 こ す 事 を
示している
1-2-4. 胚 発 生 お け る AGO1 機 能 欠 損 は scr 変 異 と 相 乗 的 効 果 を 示 さ な い
胚 発 生 に お い て 基 本 組 織 の 初 期 構 築 が 行 わ れ る (Scheres et al. 1994) 。
AGO1 と SCR の 二 重 機 能 欠 損 が 発 芽 後 の RM の み な ら ず 、胚 発 生 に お け る 基
本 組 織 の 構 築 過 程 に も 異 常 を 引 き 起 こ す か を 確 か め る た め に 、各 遺 伝 子 型 背
景の胚における細胞パターンと基本組織マーカー遺伝子の発現様式を解析
し た 。ago1-101 変 異 体 の 魚 雷 型 胚 を 観 察 し た と こ ろ 、通 常 、単 一 細 胞 層 か ら
構 成 さ れ る CEI に お い て (Fig.7A) 、余 剰 な 並 層 分 裂 が 観 察 さ れ た (81.3% n
=16) (Fig. 7B、 矢 印 ) 。 ま た 、 基 本 組 織 の 内 層 に お い も 、 散 発 的 な 並 層 分 裂
が 観 察 さ れ た (Fig. 7B、 三 角 印 ) 。 ま た 、 scr-3 変 異 体 で は 、 CED に お け る
並 層 分 裂 が 生 じ ず 、 基 本 組 織 は 1 層 の 細 胞 層 か ら 構 成 さ れ て い た (Fig. 7C)
(Wysocka-Diller et al. 2000) 。 ago1-101 scr-3 二 重 変 異 体 で は 、 ago1-101 変 異
体 で 観 察 さ れ た CEI に お け る 余 剰 並 層 分 裂 が 抑 制 さ れ 、 scr-3 変 異 体 と 同 様
に 基 本 組 織 が 1 層 細 胞 層 か ら 形 成 さ れ て い た (Fig. 7D) 。 次 に 、 各 遺 伝 子 型
背 景 の 胚 に お い て 、 pMGP::mGFP5ER の 発 現 様 式 を 確 認 し た 。 野 生 型 、
ago1-101 変 異 体 、 scr-3 変 異 体 に お い て は 、 発 芽 後 の RM と 同 様 に 、 基 本 組
織 と 内 鞘 に お い て GFP 蛍 光 が 検 出 さ れ た (Fig. 7E, F, G) 。 ago1-101 scr-3 二
重 変 異 体 に お い て も 、scr-3 変 異 体 様 の 発 現 様 式 が 観 察 さ れ た (Fig. 7H) 。以
上の細胞パターンとマーカー遺伝子の発現解析の結果は、胚発生における
scr 変 異 体 背 景 で の AGO1 機 能 欠 損 は 、 RM に み ら れ る よ う な 相 乗 的 な 効 果
を引き起こさないことを示めす。
本 章 で 得 ら れ た 結 果 を ま と め る 。CLSM を 用 い た 変 異 体 ス ク リ ー ニ ン グ か
ら 単 離 さ れ た 5gf32 変 異 体 で は 、基 本 組 織 が 3 層 の 細 胞 層 か ら 形 成 さ れ 、同
心 円 状 の 細 胞 配 置 に 異 常 が 生 じ て い た 。こ の 表 現 型 は AGO1 機 能 の 欠 損 か ら
引 き 起 こ さ れ る と 結 論 し た 。ま た 、内 皮 細 胞 層 形 成 に 機 能 す る SHR/SCR は 、
ago1 変 異 体 に お い て も 正 常 な 発 現 様 式 を 示 し た 。さ ら に 、ago1 scr 変 異 体 に
おける組織形態学的な解析と基本組織マーカー遺伝子の発現解析の結果か
ら 、 scr 変 異 体 背 景 に お け る AGO1 機 能 の 欠 損 は 、 基 本 組 織 の 特 徴 の 著 し い
損 失 を 引 き 起 こ す 事 が 示 さ れ た 。 ま た 、 こ の AGO1 機 能 欠 損 の 効 果 は 、 RM
9
に お い て 顕 著 で あ り 、胚 発 生 に お け る 放 射 パ タ ー ン 形 成 過 程 で は 観 察 さ れ な
か っ た 。以 下 に お い て 、「 RM で の 放 射 パ タ ー ン 形 成 に お け る AGO1 の 機 能 」
について考察する。
10
1-3. 考 察
根 の 放 射 パ タ ー ン 形 成 機 構 に つ い て 、 こ れ ま で に SHR/SCR に よ る 内 皮 形
成 の 分 子 機 構 が 詳 細 に 解 析 さ れ て い る 。 中 心 柱 で 翻 訳 さ れ た SHR タ ン パ ク
質 は 、 細 胞 間 を 移 動 し 、 基 本 組 織 に お い て SCR と 複 合 体 を 形 成 す る 。 こ の
転 写 因 子 複 合 体 は CED の 非 対 称 分 裂 に よ る 内 皮 細 胞 層 の 形 成 と 、 生 じ た 娘
細 胞 の 一 方 で の 内 皮 細 胞 分 化 を 担 う (Helariutta et al. 2000, Nakajima et al.
2001, Heidstra et al. 2004, Cui et al. 2007) 。shr/scr 機 能 欠 損 体 に お い て は 、内
皮と皮層の 2 層からなる基本組織は形成されないが、1 層の細胞層から成る
基 本 組 織 自 体 は 形 成 さ れ る (Scheres et al. 1995, Di Laurenzio et al. 1996,
Helariutta et al. 2000) 。 こ の 実 験 事 実 は 、 基 本 組 織 自 体 を 形 成 す る 分 子 機 構
は 、 SHR/SCR と は 独 立 し た 未 知 の 分 子 機 構 に よ っ て 正 に 制 御 さ れ て い る 事
を 意 味 す る 。 ま た 、 本 研 究 に お い て 、 scr 変 異 体 の 1 層 か ら 構 成 さ れ る 基 本
組 織 に お い て も 、 SHR-SCR 複 合 体 に よ っ て 直 接 転 写 制 御 さ れ る と 報 告 さ れ
て い る MGP 遺 伝 子 や 、 内 皮 マ ー カ ー で あ る En7 の 発 現 が 維 持 さ れ て い る 事
が 示 さ れ た 。 こ れ ら の 結 果 は 、 基 本 組 織 の 形 成 は 、 SHR/SCR の 仲 介 す る 転
写制御系のみに依存していない事を支持する。
本 研 究 で は 、 CLSM を 用 い た 変 異 体 ス ク リ ー ニ ン グ か ら 、 AGO1 が RM 放
射 パ タ ー ン 形 成 の 新 た な 制 御 因 子 で あ る こ と を 示 し た 。ago1 変 異 体 で は 、基
本 組 織 の 細 胞 層 数 が 増 加 し て い た 。 こ の よ う な 表 現 型 は SHR タ ン パ ク 質 の
局在が内皮よりも外側に拡張した場合に生じる事が知られている
(Helariutta et al. 2000, Nakajima et al. 2001, Cui et al. 2007) 。 し か し な が ら 、
ago1 変 異 体 に お い て も 、 SHR や SCR は 共 に 、 中 心 柱 に 接 す る 基 本 組 織 の 最
内 層 で 蓄 積 し 、そ の 発 現 領 域 は 拡 張 し て い な か っ た 。ま た 、En7 の 発 現 解 析
よ り 、ago1 変 異 体 の 最 内 層 の 基 本 組 織 が 内 皮 と し て 分 化 し て い る こ と が 示 さ
れ た 。こ れ は 、ago1 変 異 体 に お い て SHR と SCR の 発 現 領 域 が 拡 張 し て い な
い と い う 上 記 の 結 果 と 矛 盾 し な い 。さ ら に 、SHR と SCR を 標 的 と す る sRNA
は こ れ ま で に 報 告 さ れ て い な い (Gustafson et al. 2005) 。 こ れ ら の 結 果 は 、
AGO1 は 基 本 組 織 形 成 に 機 能 す る が 、 そ の 作 用 点 と し て は SHR/SCR に 対 す
る 上 流 制 御 で は な い 、 つ ま り AGO1 機 能 と SHR/SCR 機 能 の 独 立 性 を 示 唆 す
る。
ago1 scr 及 び ago1 shr 二 重 変 異 体 に お い て は 、そ れ ぞ れ の 単 一 変 異 体 で は
観 察 さ れ な い 細 胞 パ タ ー ン の 異 常 が 観 察 さ れ た 。こ れ ら 二 重 変 異 体 で は 、横
断片面において、内皮と皮層を構成する特徴的な形態をもつ細胞が消失し、
代 わ り に そ の 領 域 に は 球 形 な 細 胞 が 存 在 し て い た 。そ れ ぞ れ の 単 一 変 異 体 と
比 べ て 、ago1 scr 二 重 変 異 体 で は 、MGP、NUC 及 び En7 マ ー カ ー の 発 現 が 、
著 し く 低 下 し て い た 。 つ ま り 、 SHR/SCR 経 路 の 欠 損 と AGO1 機 能 の 喪 失 は
11
基 本 組 織 の 特 徴 を 相 乗 的 に 消 失 さ せ る こ と を 示 し て い る 。ago1 変 異 体 の 地 上
部 の 側 生 器 官 で は 、 本 来 miRNA に よ っ て 発 現 が 限 定 化 さ れ て い る 遺 伝 子 群
が 、異 所 的 に 発 現 す る こ と で 、向 背 軸 分 化 に 異 常 が 生 じ る こ と が 知 ら れ て お
り (Kidner and Martienssen 2004)、ago1 変 異 体 の RM に お い て も 、本 来 miRNA
制 御 に よ っ て 発 現 が 限 定 化 さ れ て い る 遺 伝 子 群 が 、異 所 的 ま た は 過 剰 に 発 現
し、基本組織形成に異常をひきおこしたという事が想定される。
ま と め る と 、 RM に お け る 放 射 パ タ ー ン 形 成 に 以 下 の よ う な モ デ ル を た て
る こ と が で き る (Fig. 8) 。 RM に お い て は 、 (1) SHR/SCR 依 存 的 な 経 路 と (2)
SHR/SCR と は 独 立 し た 経 路 が 、 基 本 組 織 形 成 を 正 に 制 御 す る 。 さ ら に 、 異
所 的 ま た は 過 剰 に 発 現 す る こ と で 基 本 組 織 形 成 を 抑 制 し 得 る miRNA 標 的 遺
伝 子 (群 )が 存 在 し 、 こ れ は 前 述 の 2 つ の 経 路 と 拮 抗 的 に 作 用 す る 。 (3)AGO1
は そ れ ら miRNA 標 的 遺 伝 子 (群 )の 発 現 を 抑 制 的 に 制 御 す る こ と で 、 結 果 的
に 基 本 組 織 形 成 を 促 進 す る (Fig. 8) 。 ago1 単 一 変 異 体 で は 、 miRNA 標 的 遺
伝 子 の 異 所 的 も し く は 過 剰 な 発 現 が 引 き 起 こ さ れ る が 、 SHR/SCR 経 路 に よ
っ て 、優 性 的 に 基 本 組 織 と し て の 性 質 が 維 持 さ れ る 。SHR を 表 皮 で 異 所 的 に
発現させると内皮細胞の特徴が付加されたという過去の研究結果は、
SHR/SCR 機 能 の 優 性 効 果 を 裏 付 け る も の で あ る (Sena et al. 2004) 。 AGO1
と SHR/SCR の 二 重 欠 損 体 で は 、AGO1 制 御 下 の miRNA 標 的 遺 伝 子 群 の 作 用
が 、 SHR/SCR 経 路 の 欠 失 に よ り 顕 在 化 し 、 基 本 組 織 の 特 徴 が 消 失 し た と 考
え ら れ る 。 こ の モ デ ル の 正 当 性 を 確 か め る た め に は 、 AGO1 と miRNA を 介
した発現抑制が基本組織形成に必須な遺伝子群を同定する事が必要である。
マ イ ク ロ ア レ イ 解 析 か ら 、既 知 の miRNA 標 的 遺 伝 子 う ち 、13 フ ァ ミ リ ー 属
す る 43 遺 伝 子 が ago1 変 異 体 の 根 に お い て 野 生 型 植 物 と 比 べ 1.8 倍 以 上 発 現
上昇している事を見出している
(Table 1) 。 そ れ ら の 内 、 Class III
homeodomain leucine zipper (HD-ZIP III) 遺 伝 子 に つ い て は 、 次 章 に お い て 、
その放射パターン形成における発現制御機構を解析した。
AGO1 は 胚 発 生 に お い て も 発 現 し て い る 事 が 知 ら れ て お り (Lynn et al.
1999)、 ま た 、 ago1 変 異 体 の 胚 で は 余 剰 な 並 層 分 裂 が 引 き 起 こ さ れ て い た 事
か ら 、AGO1 は 胚 発 生 で の 基 本 組 織 形 成 に も 機 能 し て い る と 考 え ら れ る 。し
か し な が ら 、 RM と は 異 な り 、 ago1 scr 魚 雷 型 胚 に お い て は 、 基 本 組 織 様 の
細 胞 列 は 確 認 さ れ 、 MGP 遺 伝 子 の 発 現 も 維 持 さ れ て い た 。 胚 発 生 と RM に
お け る AGO1 と SCR の 二 重 変 異 の 効 果 の 違 い は 、 現 段 階 で は 完 全 に 説 明 す
る 事 は で き な い 。 1 つ の 可 能 性 と し て 、 胚 発 生 に お い て は 、 AGO1 経 路 や
SHR/SCR 経 路 と は 独 立 し た 経 路 の (Fig.8 (2)の 経 路 ) 、 基 本 組 織 形 成 に 対 す
る 寄 与 が 、RM に 比 べ 高 い た め 、ago1 scr 二 重 変 異 の 効 果 が 表 れ に く く な り 、
結 果 と し て 基 本 組 織 の 特 徴 (細 胞 パ タ ー ン と マ ー カ ー 遺 伝 子 の 発 現 ) が 維 持
さ れ た 可 能 性 が 考 え ら れ る 。近 年 、冗 長 的 な 機 能 を も つ 2 つ の 受 容 体 型 キ ナ
12
ー ゼ で あ る RPK1 と TOAD2 の 二 重 変 異 体 が 、 胚 発 生 に お け る 基 本 組 織 と 原
表 皮 の 特 徴 化 に 機 能 し て い る 事 が 報 告 さ れ て い る (Nodine et al. 2007) 。
RPK1/TOAD2、SHR/SCR、AGO1、そ れ ぞ れ の 遺 伝 子 間 の 関 係 を 、細 胞 パ タ ー
ン や 下 流 マ ー カ ー 遺 伝 子 の 発 現 を 指 標 に 明 ら か に す る 事 で 、胚 発 生 に お け る
基本組織形成の理解が深まると考えられる。
13
第 2 章 シロイヌナズナの根の放射パターン形成における中心柱と
基本組織間の双方向性組織間相互作用
2-1 序 論
多 細 胞 生 物 で は 、様 々 な 組 織 間 相 互 作 用 を 介 し た 制 御 機 構 に よ り 、統 制 の
と れ た 「 形 作 り 」 を 行 っ て い る 。 20 世 紀 初 頭 の Spemann に よ る 眼 胞 除 去 手
術 は 、動 物 の 発 生 に お け る 組 織 間 相 互 作 用 の 存 在 を 示 し た 。現 在 で は 、組 織
間相互作用の分子レベルでの理解が進みつつある。 維管束植物においても、
そ の 発 生 過 程 で 、 様 々 な 組 織 間 相 互 作 用 の 存 在 が 示 さ れ て い る 。 Sussex は 、
茎頂分裂組織からのシグナルが葉の向背軸決定に機能していることを提唱
し (Sussex 1951)、ま た 、根 端 分 裂 組 織 (root meristem : RM) で は 、静 止 中 心
(quiescent center : QC) か ら の シ グ ナ ル が 、隣 接 す る 幹 細 胞 の 未 分 化 性 を 維 持
す る 事 が 提 唱 さ れ て き た (van den Berg et al. 1997)。
前 章 で 述 べ た よ う に 、放 射 パ タ ー ン 形 成 は 維 管 束 植 物 の 軸 性 器 官 に 共 通 す
る パ タ ー ン 形 成 で あ る 。こ れ ま で に 、維 管 束 植 物 の モ デ ル で あ る シ ロ イ ヌ ナ
ズ ナ を 用 い た 研 究 か ら 、放 射 パ タ ー ン の 形 成 過 程 に お い て も 、組 織 間 相 互 作
用 を 伴 う 制 御 機 構 の 存 在 が 示 さ れ て い る 。シ ロ イ ヌ ナ ズ ナ の 根 の 中 心 部 に は 、
維 管 束 組 織 と 内 鞘 か ら な る 中 心 柱 が 存 在 し 、そ れ を 取 り 囲 む よ う に 基 本 組 織
が あ る (Fig. 1A) (Scheres et al. 1994) 。 基 本 組 織 に お い て は 、 中 心 柱 に 接 す
る よ う に 正 確 に 1 層 の 内 皮 が 形 成 さ れ る (Fig. 1A) (Scheres et al. 1994) 。 こ
れ ま で の 研 究 か ら 、 (1) 中 心 柱 か ら 基 本 組 織 へ の SHR タ ン パ ク 質 の 細 胞 間
移 行 と (2) 基 本 組 織 内 で の SHR-SCR 転 写 因 子 複 合 体 の 形 成 が 、 内 皮 形 成
(内 皮 細 胞 層 の 形 成 と そ の 後 の 細 胞 分 化 ) を 担 う 分 子 機 構 の 端 緒 で あ る こ と
が 示 さ れ て き た 。 (Di Laurenzio et al. 1996, Helariutta et al. 2000, Nakajima et
al. 2001, Heidstra et al. 2004, Cui et al. 2007) 。
前 章 で 記 述 し た よ う に 、 miRNA が 介 す る 遺 伝 子 発 現 制 御 系 は 、 シ ロ イ ヌ
ナ ズ ナ を 含 む 様 々 な 陸 上 植 物 の 発 生 に 機 能 し て い る (Willmann and Poethig
2007) 。 シ ロ ヌ ナ ズ ナ を 含 め た 様 々 な 維 管 束 植 物 の 研 究 か ら 、 class III
homeodomain leucine zipper (HD-ZIP III) タ ン パ ク 質 は 、 分 裂 組 織 形 成 、 側 生
器 官 の 向 背 軸 形 成 、茎 の 維 管 束 の 発 達 な ど の 様 々 な 発 生 過 程 に 機 能 し て い る
事 が 明 ら か に さ れ て い る (Talbert et al. 1995, McConnell and Barton 1998,
Baima et al. 2001, McConnell et al. 2001, Emery et al. 2003, Juarez et al. 2004,
Zhong and Ye 2004, Green et al. 2005, Ohashi-Ito et al. 2005, Prigge et al. 2005) 。
ま た 、HD-ZIP III 遺 伝 子 の 転 写 産 物 は microRNA165/166 (miR165/166) と 相 補
的 な 配 列 を 含 み 、 葉 な ど の 側 生 器 官 の 向 背 軸 形 成 に お い て の miR165/166 に
よる発現制御は、双子葉と単子葉類に共通して重要な役割を果たしている
14
(Emery et al. 2003, Juarez et al. 2004) 。
本 章 で は 、 シ ロ イ ヌ ナ ズ ナ RM 放 射 パ タ ー ン 形 成 に お い て 、 miR165/166
を 介 し た 新 奇 な 組 織 間 相 互 作 用 が 機 能 し て い る 事 を 報 告 す る 。シ ロ イ ヌ ナ ズ
ナ RM に お い て 、HD-ZIP III 遺 伝 子 の 1 つ で あ る PHABULOSA (PHB) の 発 現
が 、miR165/166 機 能 に よ っ て 、維 管 束 組 織 に 限 定 化 さ れ て い る 。ま た 、こ の
よ う な miRNA に よ る 制 御 の 欠 損 は 、放 射 パ タ ー ン 形 成 に 異 常 を 引 き お こ す 。
さ ら に 、 SCR は 内 皮 に お い て MIR165A 遺 伝 子 の 転 写 を 促 進 す る こ と で 、
miR165/166 の 蓄 積 を 正 に 制 御 し 、 中 心 柱 に お い て 細 胞 非 自 律 的 に PHB の 発
現 領 域 を 限 定 化 す る 。SHR タ ン パ ク 質 の 細 胞 間 移 行 に よ る 中 心 柱 か ら 内 皮 へ
の 組 織 間 相 互 作 用 と 本 章 の 結 果 を 統 合 し 、シ ロ イ ヌ ナ ズ ナ RM の 放 射 パ タ ー
ン 形 成 に お け る 、中 心 柱 と 内 皮 の 間 の 双 方 向 性 の 組 織 間 相 互 作 用 モ デ ル を 提
唱する。
15
2-2 結 果
2-2-1. PHABULOSA 遺 伝 子 の 発 現 制 御 は 正 常 な 放 射 パ タ ー ン 形 成 に 必 須 で
ある
ago1 変 異 体 や hyl1 変 異 体 に お い て RM 放 射 パ タ ー ン 異 常 が 観 察 さ れ た 事
は 、 RM で の 放 射 パ タ ー ン 形 成 に miRNA に よ っ て 発 現 制 御 さ れ る 遺 伝 子 群
が存在することを意味する。マイクロアレイを用いた網羅的発現解析から、
ago1 変 異 体 の 根 に お い て 、 miR165/166 の 標 的 で あ る HD-ZIP III 遺 伝 子 群 の
発 現 上 昇 が 確 認 さ れ た (Table 1) 。シ ロ ヌ ナ ズ ナ ゲ ノ ム に は 、5 つ の HD-ZIP
III 遺 伝 子 (REVOLUTA、 PHBULOSA、 PHBOLUTA、 CORONA、 ATHB8) が コ
ー ド さ れ お り 、こ れ ら の 転 写 産 物 は mi165/166 と 相 補 的 な 配 列 を 含 む 。こ の
相 補 配 列 に 変 異 が 生 じ 、 miR165/166 と の 相 補 性 に ミ ス マ ッ チ が 生 じ る と 、
miR165/166 に よ る 発 現 抑 制 に 耐 性 を 示 す こ と が 、in vitro お よ び in vivo で 示
さ れ て い る (McConnell et al. 2001, Mallory et al. 2004) 。5 つ の HD-ZIP III 遺
伝 子 の う ち 4 つ の (REVOLUTA、PHBULOSA、CORONA、ATHB8) が RM の 中
心柱組織付近で発現している事が、過去の研究によって示されているが
(Baima et al. 1995, Hawker and Bowman 2004, Lee et al. 2006) 、そ れ ら HD-ZIP
III 遺 伝 子 の 詳 細 な 機 能 や miRNA に よ る 制 御 は 不 明 で あ る 。
ま ず 、 miR165/166 に よ る HD-ZIP III 遺 伝 子 へ の 発 現 制 御 が 、 正 常 な RM
放 射 パ タ ー ン 形 成 に 必 須 で あ る か を 確 か め る た め に 、 半 優 性 変 異 体 phb-1d
の RM 放 射 パ タ ー ン を 解 析 し た 。 phb-1d の 転 写 産 物 で は 、 miR165/166 と の
相 補 配 列 領 域 に 33nt の 塩 基 挿 入 が 生 じ て い る 事 か ら 、 そ の 発 現 は 完 全 に
miR165/166 耐 性 を 示 す と 考 え ら れ る (McConnell et al. 2001, Mallory et al.
2004) 。 phb-1d 変 異 体 を 、 Col-0 に 対 し て 2 度 戻 し 交 配 し 、 phb-1d/+ヘ テ ロ
個 体 を 作 出 し た 。こ の 植 物 の RM の 細 胞 パ タ ー ン を 縦 断 面 か ら 解 析 し た と こ
ろ 、 約 半 数 の 個 体 (55.6% n = 36)に お い て 、 皮 層 細 胞 に 余 剰 な 並 層 分 裂 が 観
察 さ れ た (Fig. 9A, B、 三 角 印 ) 。 ま た 、 横 断 切 片 で の 観 察 し た と こ ろ 、 QC
か ら 基 部 側 に 100μm 以 内 の 横 断 面 に お い て 、 ほ と ん ど の 個 体 で 皮 層 細 胞 で
の 余 剰 な 並 層 分 裂 が 観 察 さ れ た (11 個 体 中 9 個 体 ) (Fig. 9C, D、三 角 印 ) 。ま
た 、こ の 余 剰 な 並 層 分 裂 は 、全 て の 皮 層 細 胞 で 起 こ る わ け で な く 、散 発 的 で
あ る 事 が 確 認 さ れ た (Fig. 9C, D、 三 角 印 ) 。 こ の 結 果 は 、 miR165/166 に よ
る PHB 遺 伝 子 に 対 す る 発 現 制 御 は 、 正 常 な RM 放 射 パ タ ー ン 形 成 に 必 須 で
ある事を示す。
SHR タ ン パ ク 質 の 皮 層 細 胞 へ の 異 所 的 な 蓄 積 が 、余 剰 な 並 層 分 裂 を 引 き 起
こ す こ と が 報 告 さ れ て い る (Helariutta et al. 2000, Nakajima et al. 2001, Cui et
al. 2007) 。 phb-1d/+変 異 体 に お い て 、 SHR-GFP 融 合 タ ン パ ク 質 の 局 在 を 解
析 し た と こ ろ 、 余 剰 な 並 層 分 裂 が 観 察 さ れ る phb-1d/+変 異 体 の ほ と ん ど で 、
16
2 層 の 皮 層 の う ち 、内 側 の 細 胞 層 に お い て SHR-GFP の 蓄 積 が 観 察 さ れ た (Fig.
9E, F、 矢 印 ) (94.3% n = 35) 。 こ の 結 果 は 、 phb-1d/+変 異 体 で は SHR タ ン パ
ク 質 の 局 在 が 内 皮 よ り も 外 層 に 拡 張 し 、そ の 結 果 、皮 層 細 胞 が 多 層 化 し た 事
が強く示唆された。
2-2-2. RM に お い て miRNA165/166 に よ っ て PHB の 発 現 領 域 は 維 管 束 組 織 に
限定化される
地 上 部 の 側 生 器 官 形 成 に お い て 、 PHB 遺 伝 子 の 発 現 は miR165/166 を 介 し
て 、 器 官 原 器 の 向 軸 側 に 限 定 化 さ れ る (McConnell et al. 2001, Emery et al.
2003, Kidner and Martienssen 2004) 。 ま た 、 miR165/166 耐 性 型 phb 変 異 体 ア
リ ル に お い て は 、 側 生 器 官 原 器 全 体 に PHB 転 写 産 物 が 蓄 積 し 、 向 軸 側 化 し
た 棒 状 の 側 生 器 官 が 形 成 さ れ る (McConnell et al. 2001) 。 そ こ で 、 RM に お
け る PHB の 発 現 様 式 を 明 ら か に す る た め に 、 PHB プ ロ モ ー タ ー の 支 配 下 で
GFP 融 合 型 PHB を 発 現 す る 系 統 (PHB-GFP 系 統 ) を 用 い た 発 現 解 析 を お こ
な っ た (材 料 と 方 法 参 照 ) 。 PHB-GFP を 発 現 す る 野 生 型 背 景 の RM で は 、
内 鞘 を 含 ま な い 中 心 柱 、 つ ま り 維 管 束 組 織 で の み PHB-GFP 蛍 光 が 検 出 さ れ
た (Fig. 10A) 。こ の 結 果 は 、過 去 に 報 告 さ れ た GFP 融 合 型 PHB の 発 現 様 式
と 一 致 す る (Lee et al. 2006) 。ま た 、PHB-GFP 蛍 光 は 、維 管 束 中 央 部 で 最 も
強 く 、周 辺 部 に い く に 従 っ て 減 衰 し て い た (Fig. 10A) 。次 に 、RM に お け る
miR165/166 に よ る PHB 発 現 制 御 を 解 析 し た 。既 知 の miR165/166 耐 性 変 異 を
PHB-GFP に 導 入 し た コ ン ス ト ラ ク ト (PHBmu-GFP) を 植 物 体 に 導 入 し た
(Fig. 11B) (Emery et al. 2003, Mallory et al. 2004) 。 PHBmu-GFP 形 質 転 換 体 の
地 上 部 は 、 phb-1d/+変 異 体 と 同 様 に 棒 状 の 本 葉 を 形 成 し た (Fig. 12A, B) 。
ま た 、 そ の RM に お い て は 、phb-1d/+変 異 体 と 同 様 に 、皮 層 細 胞 に 余 剰 な 並
層 分 裂 が 確 認 さ れ た (Fig. 12C, D) (T1 世 代 、 独 立 21 系 統 中 14 系 統 ) 。 こ の
2 つ の 結 果 は 、導 入 し た PHBmu-GFP が phb-1d ア リ ル 様 の 効 果 を 有 し て い る
事 を 示 す 。そ こ で 、RM に お け る PHBmu-GFP の 発 現 様 式 を 解 析 し た と こ ろ 、
内 鞘 を 含 む 中 心 柱 全 体 と 、中 心 柱 よ り 外 層 の 内 皮 と QC に お い て 強 い GFP 蛍
光 が 検 出 さ れ た 。 ま た 、 皮 層 や 表 皮 /側 部 根 冠 の 一 部 に お い て も GFP 蛍 光 が
確 認 さ れ た (Fig. 10B) 。ま た 、PHB-GFP と 異 な り 、PHBmu-GFP で は 中 心 柱
内 に お い て GFP 蛍 光 強 度 の 勾 配 は み ら れ ず 、 ほ ぼ 均 一 な 発 現 強 度 を 示 し た
(Fig. 10A, B) 。こ の PHBmu-GFP の 発 現 様 式 は 、報 告 さ れ て い る PHB プ ロ モ
ー タ ー /レ ポ ー タ ー 系 統 の 発 現 様 式 と ほ ほ 一 致 す る (Lee et al. 2006) 。以 上 の
結 果 は 、 PHB の 発 現 領 域 が miR165/166 と の 相 補 性 に 依 存 し た 転 写 後 制 御 に
よって維管束組織に限定化されていることを強く示唆する。
2-2-3. MIR165A は SCR 依 存 的 に RM の 内 皮 特 異 的 に 転 写 さ れ る
17
シ ロ イ ヌ ナ ズ ナ ゲ ノ ム に は 、9 つ の MIR165/166 遺 伝 子 が 存 在 し (Xie et al.
2005)、そ の う ち の 4 つ は RM で の 発 現 が 示 唆 さ れ て い る (Jung and Park 2007)。
そ の れ ら の 1 つ で あ る MIR165A 遺 伝 子 に 対 し て 、 プ ロ モ ー タ ー /レ ポ ー タ ー
系 統 (pMIR165A::mGFP5ER)を 作 成 し 、そ の 転 写 領 域 を 解 析 し た 。そ の 結 果 、
pMIR165A::mGFP5ER 形 質 転 換 体 の RM に お い て 、内 皮 特 異 的 な GFP 蛍 光 が
検 出 さ れ た (Fig. 13A) 。次 に 、内 皮 形 成 に 関 わ る SHR/SCR 経 路 が MIR165A
の 転 写 に 関 与 し て い る か を 確 か め る た め に 、 scr 機 能 欠 損 体 (scr-3 変 異 体 )
と 、 SCR の 発 現 領 域 が 内 皮 よ り 外 層 に 拡 張 し て い る pSCR::SHR 形 質 転 換 体
に お い て 、pMIR165A::mGFP5ER の 発 現 を 解 析 し た 。そ の 結 果 、scr-3 変 異 体
の RM で は pMIR165A::mGFP5ER の 発 現 は 著 し く 低 下 し (Fig. 13A,B) 、ま た 、
pSCR::SHR 形 質 転 換 体 で は 、異 所 的 に 形 成 さ れ た 内 皮 細 胞 層 に お い て も GFP
蛍 光 が 観 察 さ れ た (Fig.13C、 括 弧 ) 。 以 上 の 結 果 か ら 、 MIR165A は SCR 機
能依存的に内皮特異的に転写されることが強く示唆される。
2-2-4. SCR は RM に お い て 正 常 な miR165/166 の 蓄 積 に 必 須 で あ る
次 に 、成 熟 型 miR165/166 の 蓄 積 に 対 す る SCR 機 能 を 確 か め る た め に 、野
生 型 植 物 、 scr-3 変 異 体 、 scr-5 変 異 体 の 根 端 部 か ら RNA を 抽 出 し 、 Pulsed
Reverse Transcription 法 (Tang et al. 2006) を 用 い て 、 cDNA を 作 成 し た 。 こ
れ を 鋳 型 と し 、qRT-PCR 法 に よ り 成 熟 型 miR165/166 の 蓄 積 量 を 比 較 し た (材
料 と 方 法 参 照 ) 。そ の 結 果 、scr-3 変 異 体 と scr-5 変 異 体 に お い て 、miR165/166
の 蓄 積 量 が 共 に 野 生 型 植 物 の 約 30% に ま で 減 少 し て い た (Fig. 14) 。こ の 結
果 は 、 SCR 機 能 が RM に お け る 正 常 な miR165/166 の 蓄 積 に 必 須 で あ る 事 を
示している。
2-2-5. SCR は PHB 発 現 領 域 の 限 定 化 に 機 能 す る
scr 変 異 体 の RM に お い て miR165/166 蓄 積 量 の 低 下 が 確 認 さ れ た 。こ の こ
と は 、SCR が miR165/166 の 蓄 積 を 介 し て PHB の 発 現 領 域 を 制 御 し て い る 可
能 性 を 示 唆 す る 。 そ こ で 、 scr 変 異 体 に お け る PHB の 発 現 を PHB-GFP を 用
い て 解 析 し た 。 野 生 型 背 景 に お い て は 、 PHB-GFP の 蛍 光 は 内 鞘 を 除 く 中 心
柱 で 観 察 さ る (Fig. 10A) の に 対 し 、 scr-3 変 異 体 で は 、 内 鞘 に お い て も
PHB-GFP の 蛍 光 が 検 出 さ れ た (Fig. 10C) 。こ の 結 果 は 、中 心 柱 で の PHB 遺
伝 子 の 発 現 領 域 の 限 定 化 に 、SCR 遺 伝 子 が 細 胞 非 自 律 的 に 機 能 し て い る 事 を
示 す 。scr-3 変 異 体 に お け る PHB-GFP 蛍 光 は 基 本 組 織 で は 検 出 さ れ ず 、野 生
型 背 景 に お け る PHBmu-GFP の 発 現 と は 異 な っ て い た (Fig. 10B, C) 。一 方 で 、
PHB の 発 現 が 周 辺 部 に む か っ て 拡 大 す る と い う 点 に つ い て は 、 scr-3 変 異 体
の PHB-GFP の 発 現 と 野 生 型 背 景 に お け る PHBmu-GFP の 発 現 は 共 通 し て い
た (Fig. 10B, C) 。こ の 事 は 、SCR 機 能 を 欠 損 す る 事 と miR165/166 耐 性 を 付
18
加 す る こ と は 、RM に お け る PHB の 発 現 に 対 し て 、相 似 な 効 果 を も た ら す 事
を示唆する。
2-2-6. 内 皮 特 異 的 に 発 現 す る MIR165A は 、中 心 柱 に お け る PHB の 発 現 を 制
御する能力をもちうる
scr 変 異 体 の 根 に お い て は 、成 熟 型 miR165/166 の 蓄 積 量 の 減 少 と 、内 皮 特
異 的 に 発 現 す る MIR165A 遺 伝 子 の 転 写 レ ベ ル の 著 し い 低 下 が 観 察 さ れ た 。
ま た 、中 心 柱 に お い て miR165/166 の 標 的 で あ る PHB の 発 現 が 内 鞘 細 胞 に ま
で 拡 大 し て い た 。 こ れ ら の 結 果 か ら 、 内 皮 細 胞 層 に お い て SCR 依 存 的 に 転
写 さ れ た MIR165A が 中 心 柱 に お け る PHB の 発 現 を 細 胞 非 自 律 的 に 制 限 す る
と い う 作 業 仮 説 が 設 定 で き る 。そ こ で 、内 皮 で 発 現 す る MIR165A が PHB の
発 現 領 域 の 限 定 化 に 機 能 し う る か を 確 か め る た め に 、 miR165/166 耐 性 型
PHBmu を 抑 制 す る 変 異 型 MIR165A 遺 伝 子 コ ン ス ト ラ ク ト ( 以 降 、
MIR165A-mu と 記 載 す る ) を 作 成 し た 。miR165/166 と PHBmu 転 写 産 物 で は 、
二 箇 所 ( Fig. 11B、position 2, position 5) に お い て 、ミ ス マ ッ チ が 生 じ て い る 。
PHBmu で は 、 PHB の 抑 制 に 必 須 で あ る と 報 告 さ れ て い る position 5 (Fig. 11)
(Mallory et al. 2004) に お い て 塩 基 対 形 成 を 回 復 さ せ 、 そ の 代 わ り に PHB 発
現 抑 制 へ の 寄 与 が に 低 い position 8 に お い て ミ ス マ ッ チ を 生 じ さ せ た (Fig.
11C) 。 PHBmu-GFP と MIR165A-mu の 二 重 形 質 転 換 体 を 作 出 し 、 そ の
PHBmu-GFP 発 現 を 確 認 し た と こ ろ 、野 生 型 背 景 に お け る PHB-GFP の 発 現 と
同 様 に 、 中 心 柱 の 中 央 部 に 限 定 し た GFP 蛍 光 が 観 察 さ れ た (Fig. 10D) 。 こ
の 結 果 は 、 内 皮 で 特 異 的 に 発 現 す る MIR165A 遺 伝 子 が 、 中 心 柱 で の PHB の
発現制御に機能する事を示唆している。
2-2-7. 内 皮 で 発 現 す る SCR は PHB の 発 現 制 御 を 介 し て 細 胞 非 自 律 的 に 中 心
柱の機能発現に関与する
scr 変 異 体 に お い て は 、維 管 束 組 織 に 発 現 が 限 定 化 さ れ て い た PHB が 、内
鞘 に ま で そ の 発 現 が 拡 大 し て い た (Fig. 10A, C) 。こ の 結 果 か ら 、SCR が PHB
の 発 現 制 御 を 介 し 、中 心 柱 に お け る 発 生 過 程 に 機 能 し て い る 可 能 性 が 考 え ら
れ る 。 そ こ で 、 マ イ ク ロ ア レ イ を 用 い た 網 羅 的 転 写 解 析 を 行 い 、 scr 機 能 欠
損 に よ っ て 、そ の 発 現 量 が 25%以 下 に 低 下 す る 114 遺 伝 子 を 抽 出 し た (Table.
2) (具 体 的 な 手 法 は 、 材 料 と 方 法 を 参 照 ) 。 114 遺 伝 子 に は 、 scr 変 異 体 で 転
写 産 物 の 蓄 積 レ ベ ル の 低 下 が 実 証 さ れ て い る 遺 伝 子 群 (WOX5, At3g11260.1;
CLE4, At2g31081.1; CLE7, At2g31082.1; SCR, At3g54220.1)が 含 ま れ て い た
(Table. 2A-C, 赤 字 ) (Cui et al. 2007, Sarkar et al. 2007) (池 田 洋 一
修士論文,
2008) 。 そ の 他 の 遺 伝 子 と し て 、 中 心 柱 に お い て 維 管 束 形 成 に 機 能 す る
ARABIDOPSIS HISTIDINE PHOSPHOTRANSFER PROTEIN 6 (AHP6) の 転 写 産
19
物 の 蓄 積 量 が scr 変 異 に よ っ て 著 し く 減 少 す る 事 を 見 出 し た (Table. 2A, 三
角 印 )。 そ こ で 、 AHP6 プ ロ モ ー タ ー /レ ポ ー タ ー 系 統
(pAHP6::mGFP5ER)
(Mahonen et al. 2006) を 用 い て 、scr 機 能 欠 損 体 に お け る AHP6 の 発 現 を 確 か
め た 。j23-1 系 統 は 、SCR コ ー ド 領 域 に ナ ン セ ン ス 変 異 (W 142 Stop) が 生 じ
て い る こ と か ら 、SCR 機 能 が 完 全 に 欠 損 し て い る と 考 え ら れ る 。野 性 型 植 物
に お い て は 、pAHP6::mGFP5ER は 原 生 木 部 と そ れ に 接 す る 内 鞘 細 胞 で 発 現 が
確 認 さ れ る の に 対 し (Fig. 15A) (Bonke et al. 2003)、 j23-1 系 統 で は 、 原 生 木
部 に 接 す る 内 鞘 細 胞 で は GPF 蛍 光 が 検 出 さ れ ず 、 原 生 木 部 細 胞 に お い て 微
弱 な GFP 蛍 光 が 検 出 さ れ た (Fig. 15B) 。 ま た 、 qRT-PCR 解 析 の 結 果 、 scr-5
変 異 体 に お い て 、野 生 型 と 比 べ 、AHP6 転 写 産 物 が 著 し く 低 下 し て い た (Fig.
15D) 。 さ ら に 、 phb-1d/+変 異 体 に お い て も 、 pAHP6::mGFP5ER の 発 現 レ ベ
ル が 著 し く 低 下 し て い た (Fig. 15C) 。ま た 、横 断 面 に お い て は 、3 細 胞 群 (1
つ の 原 生 木 部 細 胞 と 2 つ の 内 鞘 細 胞 ) で GFP 蛍 光 が 検 出 さ れ る の に 対 し 、
phb-1d/+変 異 体 で は 、ほ と ん ど の 場 合 、原 生 木 部 細 胞 も し く は 内 鞘 細 胞 の う
ち 1 細 胞 の み で 微 弱 な GFP 蛍 光 が 観 察 さ れ た (65.4%) 、も し く は 、全 く 検 出
で き な か っ た (23.1%) (n = 26) (Fig. 15C) 。 scr 変 異 体 で は PHB が 内 鞘 細 胞
で 異 所 的 に 発 現 し て い る 事 を 考 慮 す る と 、 scr 変 異 体 と phb-1d/+変 異 体 の 内
鞘 細 胞 に お い て 、 共 に AHP6 の 発 現 低 下 し て い た 事 は 、 SCR が PHB の 発 現
抑 制 を 介 し て 、細 胞 非 自 律 的 に 内 鞘 細 胞 に お け る AHP6 の 発 現 の 維 持 に 機 能
している事を示唆する。
根 に お け る 内 鞘 細 胞 の 特 徴 と し て 、オ ー キ シ ン 処 理 に よ る 並 層 分 裂 が 挙 げ
ら れ る 。 更 に 、 scr 変 異 体 に お け る 内 鞘 の 機 能 変 化 を さ ら に 明 ら か に す る た
めに、オーキシン処理による内鞘細胞の分裂誘導を野生型植物と比較した。
あ ら か じ め NPA 処 理 を し た 植 物 体 を 10μM NAA で 処 理 し 、20 時 間 後 に 、基
部 側 分 裂 組 織 (basal meristem : BM) お け る 内 鞘 の 並 層 分 裂 を 観 察 し た 。そ の
結 果 、scr-3 変 異 体 で は 、BM に お け る 並 層 分 裂 が 著 し く 阻 害 さ れ て い た (Fig.
16A, B) 。こ の 結 果 は 、scr 変 異 体 の 内 鞘 細 胞 が 、AHP6 の 発 現 異 常 の み な ら
ず、オーキシンに応答した並層分裂にも異常をもつ事を示している。
2-2-8. 胚 発 生 期 及 び 本 葉 の 発 生 段 階 に お い て MIR165A の 発 現 は SCR に 依 存
しない
SHR/SCR 経 路 は 胚 発 生 期 に お い て も 内 皮 形 成 に 機 能 す る (Wysocka-Diller
et al. 2000) 。 MIR165A の 転 写 誘 導 が 胚 発 生 期 に お い て も SCR に 依 存 す る か
を 確 か め る た め に 、 野 生 型 植 物 、 scr-3 変 異 体 の 胚 に お け る
pMIR165A::mGFP5ER の 発 現 様 式 を 解 析 し た (Fig. 17) 。野 生 型 球 状 胚 で は 原
表 皮 の lower-tire (lt)領 域 に お い て 強 い GFP 蛍 光 が 確 認 さ れ た (Fig. 17A、 括
弧 lt-Pr) 。ま た 、初 期 心 臓 型 期 に お い て は 、原 表 皮 の lt 領 域 に 加 え 、子 葉 予
20
定 領 域 の 背 軸 側 原 表 皮 で 弱 い GFP 蛍 光 が 観 察 さ れ た (Fig. 17B、 矢 印 ) 。さ
ら に 、 魚 雷 型 胚 に お い て は 、 lt 領 域 の 原 表 皮 と 子 葉 の 背 軸 側 原 表 皮 に 加 え 、
基 本 組 織 に お い て GFP 蛍 光 が 観 察 さ れ た が 、 そ の 発 現 は 内 皮 限 定 的 で は な
く 、 基 本 組 織 全 体 で 同 等 な 強 度 の GFP 蛍 光 が 検 出 さ れ た (Fig. 17C、 GT) 。
こ れ ら 発 現 様 式 は 、 scr-3 変 異 体 に お い て も 、 同 様 で あ っ た (Fig. 17D-F) 。
成 熟 型 miR165/166 は 、 発 達 中 の 本 葉 で 蓄 積 し て い る こ と が 報 告 さ れ て い る
(Kidner and Martienssen 2004, Li et al. 2005) 。 そ こ で 、 発 達 中 の 本 葉 に お け
る MIR165A の 発 現 と 、 そ の 発 現 に 対 す る SCR 機 能 の 依 存 性 を 確 か め た 。 野
生 型 背 景 で は 、本 葉 の 背 軸 側 表 皮 で pMIR165A::mGFP5ER の 強 い 発 現 が 観 察
さ れ た (Fig. 17G) 。 ま た 、 こ の 発 現 は 、 scr-3 変 異 体 に お い て も 同 様 で あ っ
た (Fig. 17H) 。こ れ ら の 結 果 は 、胚 発 生 期 と 本 葉 発 達 過 程 に お け る MIR165A
の 転 写 は 、 RM と は 異 な り 、 SCR 機 能 に 依 存 し な い こ と を 示 す 。
2-2-9. PHB 発 現 制 御 に 対 す る AGO1 と SCR の 効 果 は 異 な る
第 1 章 に お い て 、RM 放 射 パ タ ー ン 形 成 に お け る AGO1 の 機 能 を 議 論 し た 。
そ こ で 、 PHB の 発 現 制 御 に 対 す る AGO1 の 機 能 を 解 析 し た 。 ago1-101 変 異
体 で は 、 基 本 組 織 、 表 皮 、 側 部 根 冠 に お い て 、 異 所 的 な PHB-GFP の 発 現 が
確 認 さ れ た が 、 こ の 異 所 的 な PHB-GFP 蛍 光 は 、 散 在 的 で あ っ た (Fig. 10E、
三 角 印 ) 。ま た 、野 生 型 植 物 と 同 様 に 、中 心 柱 に お い て は 中 心 部 か ら 周 辺 部
に 沿 っ た GPF 蛍 光 強 度 の 勾 配 が 観 察 さ れ 、内 鞘 に お い て は っ き り と し た GFP
蛍 光 が 検 出 さ れ る scr 変 異 体 と は 異 な っ て い た (Fig. 10C, E の Pe を 比 較 ) 。
さ ら に 、 ago1-101 変 異 体 で の PHB-GFP 発 現 様 式 は 、 野 生 型 背 景 に お け る
PHBmu-GFP の 発 現 と も 明 ら か に 異 な っ て い た (Fig .10B, E) 。ago1-101 scr-3
二 重 変 異 体 に お い て は 、RM 全 体 に PHB-GFP の 発 現 は 観 察 さ れ た (Fig. 10F) 。
こ の 結 果 は 、 ago1-101 scr-3 二 重 変 異 体 に お い て は 、 ago1 変 異 と scr 変 異 の
効果が相加的に現れることを示唆する。
以 上 、第 2 章 の 結 果 を ま と め る 。本 章 で は 、ま ず 、miR165/166 耐 性 変 異 体
を も つ phb-1d 変 異 体 ア リ ル と PHBmu-GFP 形 質 転 換 体 の 皮 層 細 胞 に 余 剰 な 並
層 分 裂 が み ら れ る 事 を 示 し た 。 こ の 結 果 か ら 、 miR165/166 に よ る PHB の 発
現 制 御 が RM 基 本 組 織 の パ タ ー ン 形 成 に 必 須 で あ る こ と を 示 し た 。
野 生 型 背 景 に お い て PHB-GFP は 維 管 束 組 織 で 特 異 的 に 発 現 し て い た の に
対 し 、miR165/166 耐 性 型 で あ る PHBmu-GFP は 、維 管 束 組 織 よ り 外 層 の 、内
鞘 、 内 皮 、 皮 層 に お い て も 発 現 が し て い た 。 こ の 結 果 は 、 PHB 発 現 領 域 は 、
miR165/166 の 機 能 に よ っ て 、維 管 束 組 織 に 限 定 化 さ れ て い る 事 を 強 く 示 唆 す
る。
さ ら に 、 SCR 機 能 欠 損 に よ り PHB 発 現 領 域 が 内 鞘 細 胞 層 ま で 拡 張 す る こ
21
と を 見 出 し た 。miR165 を コ ー ド す る MIR165A 遺 伝 子 は SCR 機 能 に 依 存 的 に
内 皮 で 転 写 さ れ 、scr 変 異 体 で は 成 熟 型 miR165/166 の 蓄 積 量 が 減 少 し て い た 。
さ ら に 、PHBmu-GFP と MIR165A-mu の 二 重 形 質 転 換 体 に お け る GFP 蛍 光 の
発 現 解 析 か ら 、 内 皮 で 発 現 す る MIR165A 遺 伝 子 が 、 中 心 柱 で の PHB 発 現 を
制御する可能性を示した。
さ ら に 、 scr 変 異 体 で は 中 心 柱 に お け る AHP6 遺 伝 子 の 発 現 が 著 し く 低 下
し て い た 。 scr 変 異 体 で PHB-GFP の 発 現 領 域 が 拡 張 す る 事 、 ま た 、 phb-1d
変 異 体 に お い て も AHP6 遺 伝 子 の 発 現 レ ベ ル が 低 下 す る こ と を 考 慮 す る と 、
内 皮 で 発 現 す る SCR は 、 PHB 発 現 制 御 を 介 し て 、 細 胞 非 自 律 的 に 中 心 柱 の
発生に機能している事が強く示唆された。
22
2-3. 考 察
シ ロ イ ヌ ナ ズ ナ の 根 で は 、中 心 柱 組 織 の 外 層 に 隣 接 し て 1 層 の 内 皮 が 形 成
さ れ る 。 こ の 過 程 に お い て は 、 中 心 柱 か ら 内 皮 へ の SHR の 細 胞 間 移 行 が 組
織 間 相 互 作 用 を 担 う 分 子 機 構 で あ り 、こ れ に よ っ て 1 層 の 内 皮 形 成 (内 皮 細
胞層の形成とその後の細胞分化) が正確に行われることが実証されている
(Helariutta et al. 2000, Nakajima et al. 2001, Cui et al. 2007) 。 ま た 、 基 本 組 織
内 で 形 成 さ れ る SHR-SCR 転 写 因 子 複 合 体 自 体 が 、 細 胞 自 律 的 に 内 皮 細 胞 層
分 化 を 誘 導 す る と 考 え ら れ て い る (Heidstra et al. 2004, Sena et al. 2004) 。
本 研 究 で は 、 内 皮 で 発 現 す る SCR が 中 心 柱 で の PHB 発 現 を 維 管 束 部 位 に
限 定 化 す る と い う 新 た な 細 胞 非 自 律 的 制 御 を 見 出 し た 。こ の 細 胞 非 自 律 的 な
SCR の 機 能 が miR165/166 に よ っ て 仲 介 さ れ て い る こ と が 以 下 の 4 つ の 実 験
結 果 か ら 支 持 さ れ る 。 ま ず 、 (1) SCR 機 能 欠 損 は 、 PHB の 発 現 領 域 を 中 心 柱
の 周 辺 部 に ま で 拡 張 さ せ た 。こ れ の 発 現 パ タ ー ン は 、miR165/166 耐 性 を も つ
PHB の 発 現 パ タ ー ン と 類 似 し て い た 。 さ ら に 、 (2) miR165 を コ ー ド す る
MIR165A 遺 伝 子 が 、SCR 機 能 に 依 存 的 に 内 皮 細 胞 層 で 転 写 さ れ 、(3) scr 機 能
欠 損 体 で は 成 熟 型 miR165/166 の 蓄 積 量 が 低 下 し て い た 。 加 え て 、 (4)
miR165/166 耐 性 型 PHB (PHBmu)と 、 そ れ に 対 し て 抑 制 機 能 を 持 つ と 考 え ら
れ る MIR165A-mu を 用 い た 解 析 か ら 、RM の 内 皮 で 発 現 す る MIR165A 遺 伝 子
が 、 中 心 柱 側 に お け る PHB の 発 現 を 制 御 す る こ と が 示 唆 さ れ た 。 こ れ ら の
結 果 か ら 、SCR が 、少 な く と も MIR165A 遺 伝 子 を 含 む MIR165/166 遺 伝 子 の
転 写 制 御 を 介 し て 、 中 心 柱 で の PHB 発 現 領 域 を 細 胞 非 自 律 的 に 限 定 化 に す
る と い う 、「 内 皮 か ら 中 心 柱 」 へ の 新 奇 な 組 織 間 相 互 作 用 の 存 在 が 強 く 示 唆
さ れ る (Fig. 18) 。 AHP6 の 発 現 解 析 か ら 、 scr 機 能 欠 損 体 で の 内 鞘 細 胞 が 正
常 な 細 胞 特 徴 を 獲 得 で き て い な い こ と が 示 さ れ た 。phb-1d 変 異 体 に お い て も
AHP6 遺 伝 子 の 発 現 レ ベ ル が 低 下 す る こ と を 考 慮 す る と 、 SCR に よ る AHP6
の 発 現 維 持 は 、 少 な く と も 一 部 は PHB の 発 現 抑 制 を 介 す る こ と で 制 御 さ れ
ていると考えられる。
内 皮 で 発 現 す る MIR165A 遺 伝 子 が 、 細 胞 非 自 律 的 に 中 心 柱 に お い て PHB
の 発 現 を 制 御 す る 分 子 機 構 は 、全 く 不 明 で あ る 。こ れ ま で の 研 究 か ら 、siRNA
や trans acting siRNA (tasi-RNA)に 関 し て は 、 そ の 細 胞 非 自 律 的 な 作 用 が 報 告
さ れ て い る が (Dunoyer et al. 2007, Nogueira et al. 2007, Tretter et al. 2008) 、
miRNA に お い て は 現 在 ま で に 報 告 は な い 。 最 も 単 純 な モ デ ル と し て は 、 内
皮 で 産 出 さ れ た 成 熟 型 miR165/166 が 拡 散 も し く は 積 極 的 な 輸 送 を 介 し て 中
心 柱 組 織 に 移 動 す る 事 が 考 え ら れ る 。今 後 、miR165/166 の 組 織 内 で の 可 視 化
や 、 植 物 組 織 の 一 部 で MIR165/166 を 発 現 す る 植 物 を 利 用 し た miR165/166
の機能範囲の詳細な解析が必要である。
23
scr 変 異 体 で は PHB の 発 現 領 域 は 内 鞘 に と ど ま っ て い た が 、野 生 型 背 景 に
お け る miR165/166 耐 性 型 PHB の 発 現 は 、さ ら に 外 層 の 内 皮 /皮 層 ま で 拡 大 し
て い た 。ま た 、scr 変 異 体 内 に お い て も 、野 生 型 30%程 度 の miR165/166 の 蓄
積 し て い た 。 こ れ ら の 結 果 か ら 、 SCR と 独 立 し た 経 路 が miR165/166 の 蓄 積
を 促 進 し 、 PHB の 発 現 領 域 の 限 定 化 に 機 能 し て い る 可 能 性 が 考 え ら れ る 。
miR165/166 耐 性 型 phb-1d 変 異 体 や PHBmu-GFP 形 質 転 換 体 で は 、 皮 層 細 胞
に 余 剰 な 並 層 分 裂 が 観 察 さ れ 、 皮 層 に お け る 異 所 的 な SHR-GFP の 蓄 積 が 検
出 さ れ た 。 つ ま り 、 PHB に 対 す る miR165/166 制 御 を 完 全 に 消 失 さ せ る と 、
中 心 柱 組 織 だ け で な く 、基 本 組 織 に お い て も 放 射 パ タ ー ン 形 成 の 異 常 が 引 き
起 こ さ れ る こ と を 意 味 し て い る 。QC と CEI で 発 現 す る C2H2 型 zinc finger タ
ン パ ク 質 で あ る JACKDAW (JKD) は 、 SHR-SCR と の タ ン パ ク 質 相 互 作 用 を
介 し て 、 SHR の 機 能 範 囲 を 内 皮 に 限 定 化 す る 。 ま た 、 jkd 機 能 欠 損 体 の 、 皮
層 で は 余 剰 な 並 層 細 胞 分 裂 と 異 所 的 な SHR タ ン パ ク 質 の 蓄 積 が 生 じ る こ と
が 報 告 さ れ て い る (Welch et al. 2007) 。 つ ま り 、 miR165/166 耐 性 型 PHB 植
物 体 (phb-1d 変 異 体 や PHBmu-GFP 形 質 転 換 体 ) と jkd 機 能 欠 損 体 の 表 現 型
に 類 似 点 が 存 在 す る 。miR165/166 耐 性 型 PHB と JKD と の 相 互 関 係 を 明 ら か
に す る こ と で 、 中 心 柱 以 外 の 組 織 に お け る PHB の 発 現 抑 制 の 生 理 学 的 意 義
が明らかになると考えられる。
地 上 部 の 側 生 器 官 や 胚 珠 の 向 背 軸 形 成 に お い て も 、 miR165/166 を 介 し た
HD-ZIP III 遺 伝 子 群 の 発 現 制 御 が 必 須 で あ る (McConnell et al. 2001, Sieber
et al. 2004) 。興 味 深 い こ と に 、胚 発 生 や 本 葉 の 発 達 過 程 に お け る 、MIR165A
遺 伝 子 の 発 現 は 、RM と 異 な り 、SCR に 依 存 的 し て い な か っ た 。つ ま り 、各
発 生 現 象 に お い て 、 様 々 な 転 写 調 節 系 が MIR165A 遺 伝 子 の 発 現 制 御 を 介 し
て 、 HD-ZIP III 遺 伝 子 群 の 発 現 領 域 を 限 定 化 し て い る と 考 え ら れ る 。 今 後 、
MIR165A 遺 伝 子 の 発 現 を 指 標 と し た 変 異 体 ス ク リ ー ニ ン グ や 、MIR165A プ ロ
モーターのシス配列やそれに結合するトランス因子の同定などを通じて、
様 々 な 発 生 現 象 で 機 能 す る HD-ZIP III 遺 伝 子 群 の 上 流 制 御 系 が 明 ら か に な
ると考えられる。
第 1 章 に お い て 、RM で の 放 射 パ タ ー ン 形 成 に お け る AGO1 の 機 能 を 記 述
し た 。 本 章 に お い て 、 miR165/166 耐 性 型 PHB 植 物 体 に お い て 、 基 本 組 織 パ
タ ー ン 形 成 に 異 常 が 観 察 さ れ た 事 か ら 、PHB 遺 伝 子 は 第 1 章 で 提 唱 し た 基 本
組 織 形 成 に 異 常 を 引 き 起 こ す miRNA 標 的 遺 伝 子 の 1 つ と 考 え ら れ る 。 し か
し な が ら 、 以 下 の 3 点 に お い て 、 miR165/166 耐 性 型 phb 植 物 体 と ago1 変 異
体 の 表 現 型 に 大 き な 相 違 点 が あ る 。 ま ず 、 (1) miR165/166 耐 性 型 phb 植 物 体
で は 、皮 層 に 並 層 細 胞 分 裂 が 観 察 さ れ た の に 対 し 、ago1 で は 、内 皮 細 胞 に お
い て 並 層 分 裂 が 観 察 さ れ た 。ま た 、miR165/166 耐 性 型 phb 植 物 体 で は 、同 心
円 状 細 胞 パ タ ー ン は 正 常 で あ っ た 。ま た 、 (2) phb-1d 変 異 体 で は 、SHR の 異
24
所 的 な 蓄 積 が 観 察 さ れ た が 、 ago1 変 異 体 で は 、 SHR の 発 現 に 異 常 は 観 察 さ
れ な か っ た 。さ ら に 、(3) ago1 変 異 体 に お け る PHB の 発 現 様 式 は miR165/166
耐 性 型 PHB の 発 現 様 式 と 大 き く 異 な っ て い た 。こ の 事 は 、AGO1 に よ る PHB
の 発 現 抑 制 が miR165/166 を 介 し た 直 接 的 な 制 御 (mRNA の 切 断 や 翻 訳 阻 害 )
の み な ら ず 、 HD-ZIP III 遺 伝 子 を 含 む 他 の miRNA 標 的 遺 伝 子 の 発 現 を 介 し
た 間 接 的 な 機 構 に よ っ て も 調 節 さ れ て い る こ と を 示 唆 し て い る 。こ れ ら の 遺
伝 子 間 の 相 互 作 用 関 係 を 明 ら か に す る こ と で 、根 の 放 射 パ タ ー ン 形 成 に お け
る複雑なシグナルネットワークを解明することが出来るであろう。
25
第 3 章 -今 後 の 展 望 –
維管束植物に広く存在する放射パターンを理解するために、本研究では、
シ ロ イ ヌ ナ ズ ナ の 根 を モ デ ル ケ ー ス と し 、そ の 放 射 パ タ ー ン 形 成 の 分 子 基 盤
を 解 明 す る 事 を 目 標 と し た 。本 章 で は 、本 論 文 の 結 果 か ら 想 定 さ れ る 新 た な
研究題材について記述する。
こ れ ま で に 、 GRAS 型 転 写 因 子 SHR と SCR に よ る 内 皮 形 成 機 構 が 精 力 的
に 研 究 さ れ て き た 。 本 論 文 の 第 1 章 の 研 究 結 果 は 、 RM に お け る 基 本 組 織 形
成 に お い て 、 少 な く と も 1 つ の SHR/SCR と 独 立 す る 経 路 が 、 基 本 組 織 形 成
を 正 に 制 御 す る 事 を 示 唆 す る 。 し か し な が ら 、 SHR/SCR 経 路 が 機 能 し て い
る 状 態 で は 、た と え そ ち ら の 経 路 に 変 異 を 生 じ さ せ て も 、変 異 体 ス ク リ ー ニ
ン グ で 単 離 で き る ほ ど の 顕 著 な 表 現 型 を 示 な い 可 能 性 が あ る 。shr/scr 変 異 体
の エ ン ハ ン サ ー ス ク リ ー ニ ン グ が 、新 た な 基 本 組 織 形 成 の 分 子 機 構 を 解 く こ
とに有効な手段だと考えられる。
第 2 章 の 研 究 結 果 か ら 、基 本 組 織 と 中 心 柱 の 間 の 双 方 向 性 の 組 織 間 相 互 作
用 の 存 在 が 明 ら か に な っ た 。非 常 に 興 味 深 い こ と に 、こ の 双 方 向 性 の 組 織 間
相 互 作 用 に 機 能 し て い る 遺 伝 子 群 (SHR、 SCR、 MIR165/166、 PHB)は 、 シ ロ
イ ヌ ナ ズ ナ の み な ら ず 、様 々 な 維 管 束 植 物 で 共 通 し て 存 在 し 、シ ロ イ ヌ ナ ズ
ナ の 場 合 と 同 様 の 発 生 過 程 で 機 能 し て い る 例 も 報 告 さ れ て い る (Sassa et al.
2001, Tian et al. 2004, Lim et al. 2005, Prigge and Clark 2006, Cui et al. 2007,
Axtell and Bowman 2008, Itoh et al. 2008) 。本 論 文 で 提 唱 し た 双 方 向 性 の 組 織
間 相 互 作 用 が 、維 管 束 植 物 の 種 間 で ど の く ら い 保 存 さ れ た 分 子 機 構 で あ る か 、
ま た 、こ の 組 織 間 相 互 作 用 の 有 無 が ど の よ う な 進 化 発 生 学 的 な 意 味 を も た ら
す の か を 明 ら か に す る 事 は 、維 管 束 植 物 の 放 射 パ タ ー ン に お け る 一 般 性 と 特
殊性を理解するのに非常に有用な糸口となると思われる。
26
A
B
静止中心 (Quiescent Center : QC)
コルメラ (Columella)
側部根冠 (Lateral Root Cap)
表皮 (Epidermis : Ep)
C
皮層 (Cortex : Co)
内皮 (Endodermis : En)
基本組織
(Ground Tissue: GT)
皮層/内皮始原細胞
(Cortex/Endodermis Initial : CEI)
内鞘 (Pericycle: Pe)
維管束組織
(Vascular Tissue : VT)
中心柱 (Stele)
D
CED
CEI
Figure 1. シロイヌナズナの根端分裂組織 (root meristem : RM) の組織構造
(A) シロイヌナズナ根端部の細胞構造。三角印は静止中心 (quiescent center : QC) の位置を示す。
(B-C) RMの横断面 (B) と縦断面 (C) の組織パターンの模式図。それぞれの組織名と略称を記載した。
(D) CEIにおける一連の細胞分裂様式の模式図。
27
GT
En
Co
Epi
A
C
Epi
Co
En
*
*
*
F
Epi
*
*
*
Epi
D
*
ago1-102 ago1-101
*
*
*
*
*
*
*
*
*
E
Epi
*
* * *
*
*
*
*
*
G
5gf32
TGA
TGG
607W
GT
B
W
STOP
T
*
2
1
-10 -10
o1 o1 gf32
ag ag
5
AGO1
ACT8
PAZ domain
PIWI domain
Figure 2. miRNAの介する遺伝子発現制御系はシロイヌナズナRMにおける放射パターン形成
に必須である。
(A-B) 発芽4日後の野生型植物 (A) と5gf32変異体 (B) のRMの縦断面の共焦点画像。
(C-E) 発芽4日後の野生型植物 (C) 、5gf32変異体 (D) 、hyl1-2変異体 (E) のRMの横断切片。星印は皮層細胞を示
す。
(F) AGO1遺伝子模式図と、それぞれの系統における変異箇所。下線は保存されたPAZドメインとPIWIドメインをコー
ドしている領域を示す。三角印はAGO1の発現解析に用いたプライマーの設計箇所を示す。
(G) RT-PCR法を用いた各系統におけるAGO1転写産物の蓄積量の解析。ACTIN8 (ACT8) をコントロールとして用い
た。
GT,基本組織; Co,皮層; En,内皮; Epi,表皮,
Scale bars, 20μm
28
A
B
C
D
Figure 3. 5gf32変異体の地上部は、ago1機能欠損体と同様の表現型を示す。
(A-D) 発芽10日後の野生型植物 (A) 、5gf32変異体 (B)、ago1-101変異体 (C)、 ago1-102変異体 (D)。5gf32変異体
ago1-101変異体 ago1-102変異体は、既知のago1機能欠損体の表現型と類似する (Bohmert et al. 1998)。
Scale bars, 2mm
29
A
B
Col
SHR-GFP
ago1-101
SHR-GFP
C
D
Col
GFP-SCR
ago1-101
GFP-SCR
Figure 4. AGO1機能欠損は、SHR/SCRの発現様式を変化させない。
(A-B) 野生型 (A) とago1-101変異体 (B) におけるSHR-GFP融合タンパク質の発現
(C-D) 野生型 (C) とago1-101変異体 (D) におけるGFP-SCR融合タンパク質の発現
30
Scale bars, 50μm
GT
En
Co
Epi
Col
GT
scr-3
Epi
Co
Epi
Col
GT
Epi
Epi
En
ago1-101
scr-3
shr-2
ago1-101
scr-3
Epi
Epi
ago1-101
ago1-101 scr-3
ago1-101 shr-2
Figure 5. shr/scr変異体背景でAGO1機能を欠損すると、新奇な放射パターン異常を引き起こす。
(A-D) 発芽4日後の野生型植物 (A)、scr-3変異体 (B)、ago1-101変異体 (C)、ago1-101 scr-3二重変異体 (D)のRMに
おける縦断面の共焦点画像。
(E-J) 発芽4日後の野生型植物 (E)、scr-3変異体 (F)、shr-2変異体 (G)、ago1-101変異体 (H)、ago1-101 scr-3二重変
異体 (I)、ago1-101 shr-2二重変異体 (J)の横断切片。
GT,基本組織; Co,皮層; En,内皮; Epi,表皮,
Scale bars, 20μm
31
Relative expression levels
(normalized by ACT7 expression)
A
B
1.2
1.2
MGP
1
1.0
1.2
1.2
0.8
0.8
0.8
0.8
0.6
0.6
0.6
0.6
0.4
0.4
0.4
0.4
0.2
0.2
0.2
0.2
0
0
1
1
- 10
-10 cr-3 ago1
l-0
s
Co ago1
3
r
sc
C
NUC
1.01
00
1
- 10
-10 cr-3 ago1
l-0
s
Co ago1
-3
r
c
s
D
MGP
Col
G
E
MGP
ago1-101
H
En7
Col
1
F
MGP
scr-3
I
En7
ago1-101
MGP
ago1-101 scr-3
J
En7
scr-3
En7
ago1-101 scr-3
Figure 6. AGO1とSCR機能を同時に欠損すると、基本組織の特徴が著しく損失する。
(A,B) qRT-PCR法を用いたMGP遺伝子 (A) とNUC遺伝子 (B) の転写産物の蓄積量の解析。
(C-F) 野生型植物 (C)、ago1-101変異体 (D)、scr-3変異体 (E)、ago1-101 scr-3 二重変異体 (F) の各遺伝子型背景に
おける pMGP::mGFP5ERの発現様式。
(G-J) 野生型植物 (G)、ago1-101変異体 (H)、scr-3変異体 (I)、ago1-101 scr-3 二重変異体 (J) の各遺伝子型背景に
おける En7内皮マーカーの発現様式。
Scale bars, 50μm
32
A
B
C
D
CEI
Col
E
MGP
Col
GT Pe
En
Co
ago1-101
F
scr-3
GT Pe
G
MGP
ago1-101
GT Pe
MGP
scr-3
ago1-101 scr-3
H GT
Pe
MGP
ago1-101 scr-3
Figure 7. 胚発生期における scr変異体背景でのAGO1機能の欠損は、さらなる基本組織の
特徴の消失を引き起こさない。
(A-D) 野生型植物 (A)、ago1-101変異体 (B)、scr-3変異体 (C)、ago1-101 scr-3 二重変異体 (D) の魚雷型胚におけ
る細胞パターン。
(E-H) 野生型植物 (E)、ago1-101変異体 (F)、scr-3変異体 (G)、ago1-101 scr-3 二重変異体 (H) の魚雷型胚における
pMGP::mGFP5ERの発現。(B,F)における矢印は、CEIで生じた余剰な並層分裂を、また、三角印は基本組織の内層
側で起きる散発的な余剰並層分裂を示した。
GT,基本組織; Co,皮層; En,内皮; Pe,内鞘, CEI,皮層/内皮始原細胞
33
Scale bars, 50μm
A
皮層 (Cortex : Co)
内皮 (Endodermis : En)
基本組織
(Ground Tissue: GT)
内鞘 (Pericycle: Pe)
維管束組織
(Vascular Tissue : VT)
B
中心柱 (Stele)
unknown pathway(s)
(2)
Stele
GT
Co
En
Pe
VT
(1)
miRNA-targeted gene(s)
SCR
(3)
AGO1
SHR
SHR
Figure 8. シロイヌナズナRMの基本組織形成における制御系のモデル
(A) シロイヌナズナRMにおける中心柱とそれを取り囲む基本組織の、縦断面と横断面の模式図。それぞれ組織を色
分けし、名称と略称を記載した。
(B) シロイヌナズナRMの基本組織 (GT) の形成において想定される3種類の制御経路を記載した。
34
Table 1. ago1変異体の根において、発現量が上昇するmiRNA標的遺伝子群。
35
A
E
B
C
F
D
Figure 9. PHABULOSA遺伝子のmiR165/166を介する発現制御は、RMにおける正常な放射
パターン形成に必須である。
(A-D) 野生型植物 (A,C)と、phb-1d/+変異体 (B,D)のRMの細胞パターン。縦断面の共焦点像(A,B)と、横断面像
(C,D)。三角印は皮層細胞において生じた余剰な並層分裂を示す。
(E,F) 野生型植物 (E)と、phb-1d/+変異体 (F) におけるSHR-GFPの局在。矢印は、余剰細胞層における異所的な
SHR-GFPを示す。
Scale bars, (A,B) 50μm, (C-F) 20μm
36
A
Pe
PHB-GFP
B
GT
PHBmu-GFP
Pe
GT
Co En
C
PHB-GFP
scr-3
GT
En
Co
Pe
D
PHBmu-GFP
MIR165A-mu
Pe
GT
Co En
E
PHB-GFP
ago1-101
GT
Pe
F
PHB-GFP
ago1-101 scr-3
Figure 10. PHB-GFP融合タンパク質を用いた発現解析
(A) 野生型背景におけるPHB-GFPの発現。
(B) miR165/166耐性PHBmu-GFPの発現。
(C) scr-3変異体におけるPHB-GFPの発現。
(D) miR165/166耐性PHBmu-GFPとMIR165A-muの二重形質転換体におけるPHBmu-GFPの発現。
(E-F) ago1-101変異体 (E)、ago1-101 scr-3二重変異体 (F)におけるPHB-GFPの発現様式。(E)の三角印は、散発的
に発現する異所的なPHB-GFPの発現を示す。
GT,基本組織; Co,皮層; En,内皮; Pe,内鞘, CEI,皮層/内皮始原細胞
37
Scale bars, 50μm
PHABULOSA
A
PHB
miR165
position
5’- A U U G G G A U G A A G C C U G G U C C G G A U -3’
3’-5’
C C C C C U A C U U C G G A C C A G G C U
21 20 19 18 17 16 15 14 13 12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1
* *
B
PHBmu
miR165
position
C
5’- A U U G G G A U G A A G C C U G G A C C A G A U -3’
3’-5’
C C C C C U A C U U C G G A C C A G G C U
21 20 19 18 17 16 15 14 13 12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1
* *
PHBmu 5’- A U U G G G A U G A A G C C U G G A C C A G A U -3’
miR165mu 3’-5’
C C C C C U A C U U C G G U C C U G G C U
position
21 20 19 18 17 16 15 14 13 12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1
* *
Figure 11. PHB遺伝子のmiR165/166相補配列とmiR165配列の概要
PHB遺伝子のmiR165相補配列とmiR165の配列を記載した。miR165の5’端からのpositionを、配列の下に 青字で示
した。
過去の研究から、position 5, 6 (星印) におけるミスマッチが、in vitroにおいて、PHB転写産物の切断効率の著しい低
下を引き起こし、植物体において本葉の向軸化を誘導することが証明されている。また、position 8, 11 (三角印) のミス
マッチは、PHB転写産物の切断効率の著しい阻害や本葉の向軸化を引き起こさず、さらに、position 2 (矢印) に関し
ては、PHB転写産物の切断効率に全く影響しないことが報告されている (Mallory et al. 2004)。
38
A
C
B
phb-1d/+
D
PHBmu-GFP
Figure 12. phb-1d/+変異体とPHBmu-GFP形質転換体の比較。
(A,B) phb-1d/+変異体 (A)、PHBmu-GFP形質転換体 (B)地上部の表現型。ともに棒状の本葉を形成する。
(C,D) phb-1d/+変異体 (C)、PHBmu-GFP形質転換体 (D) は共に皮層細胞に余剰な並層分裂が観察される (三角印)。
Scale bars, (A,B) 2mm, (C,D) 20μm
39
A
B
C
Col-0
scr-3
pSCR::SHR
Figure 13. MI165AはSCR依存的に内皮で特異的に転写される。
(A-C) 各遺伝子型背景におけるpMIR165A::mGFP5ERの発現様式。野生型植物(A)、scr-3変異体(B)、pSCR::SHR
形質転換体(C)。(C)における括弧は拡張した内皮細胞層をしめす。
Scale bars, 50μm
40
Relative expression levels
(normalized by ACT7 expression)
1.2
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0
l-0
Co
-3
scr
-5
scr
Figure 14. scr機能欠損体の根では、成熟型miR165/166の蓄積量が著しく低下する。
根端部約1cm程度からRNAを抽出し、scr機能欠損成熟型miR165/166の蓄積量を定量した。
41
42
Table. 2A scr変異によって、発現量の減少する遺伝子群
43
Table. 2B scr変異によって、発現量の減少する遺伝子群
44
Table. 2C scr変異によって、発現量の減少する遺伝子群
A
Col-0
B
j23-1
C
phb-1d/+
Relative expression levels
(normalized by ACT7 expression)
D
1.2
AHP6
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0
l-0
Co
-5
sc r
Figure 15. SCRはPHBの発現制御を介して、細胞非自律的に中心柱の発生過程に機能する。
(A-C) 野生型植物 (A)、scr機能欠損体であるj23-1系統 (B)、phb1d/+変異体 (C)におけるpAHP6::mGFP5ERの発現
様式。 矢印は原生木部細胞を、また三角印は原生木部に接する内鞘細胞を示してる。
(D) qRT-PCR法を用いたAHP6転写産物の蓄積量の解析。
45
Scale bars, 20μm
A
B
Col-0
scr-3
Figure 16. scr変異体では、基部分裂組織における内鞘細胞のオーキシン誘導性の並層分裂が
阻害されている
(A,B) オーキシン処理した野生型植物 (A)、scr-3変異体(B)。野生型植物では、基部分裂組織 (四角で示した)の内
鞘細胞の並層分裂し多層化しているが (A、括弧)、scr-3変異体では、著しく分裂が阻害されている (B、括弧)。
Scale bars, 50μm
46
A
B
C
Pr
GT
F
Pr
GT
lt-Pr
lt-Pr
lt-Pr
lt-Pr
Col-0
D
E
lt-Pr
lt-Pr
lt-Pr
lt-Pr
scr-3
G
H
Leaf
SAM
ad
Col-0
ab
ad
scr-3
ab
adaxial
(ad)
abaxial
(ab)
Figure 17. 初期胚発生及び本葉発達段階でのMIR165Aの発現はSCR機能に依存しない
(A-F) 初期胚発生におけるpMIR165A::mGFP5ERの発現。野生型植物 (A-C) 、scr-3変異体 (D-F)の、胞胚期(A, D)、
初期心臓型胚期 (B, E)、魚雷型胚期 (C, F)。B,Eの矢印は、子葉予定領域の背軸側原表皮における発現を示す。
(G,H) 本葉の発達段階でのpMIR165A::mGFP5ERの発現様式。CLSMを用いて、焦点面の異なる連続画像を立体構
築することで作成した。右側に本葉と茎頂分裂組織 (SAM) の位置関係を模式的に示す。野生型植物 (G)、scr-3変
異体 (H)。野生型植物体、scr-3変異体ともに背軸側の一層の細胞層で、強いGFP蛍光が検出された。
GT,基本組織; lt-Pr, lower-tire領域の原表皮; Pr,原表皮; SAM, 茎頂分裂組織; ad, 向軸側; ab, 背軸側
Scale bars, 50μm
47
A
皮層 (Cortex : Co)
内皮 (Endodermis : En)
内鞘 (Pericycle: Pe)
基本組織
(Ground Tissue: GT)
維管束組織
(Vascular Tissue : VT)
中心柱 (Stele)
B
Stele
GT
Co
En
Pe
MIR165A
VT
AHP6
(4)
(3)
PHB
SCR
SCR
MGP
NUC (2)
etc...
SHR (1)
PHB
SHR
Endodermal
character
Figure 18. シロイヌナズナRMにおける、中心柱と基本組織間に存在する双方向性の組織間相
互作用のモデル。
(A) シロイヌナズナRMにおける中心柱とそれを取り囲む基本組織の、横断面の模式図。それぞれ組織を色分けし、
名称と略称を記載した。
(B) 中心柱と基本組織間での双方向性の組織間相互作用の模式図。中心柱で産出されたSHRタンパク質は、細胞
間移行により内皮細胞に蓄積する(1)。SHRとSCRは複合体転写因子として機能し、下流遺伝子群の転写制御を解し
て、内皮形成を促進し(2)、同時に、MIR165Aを含むMIR165/166遺伝子群の転写を、直接もしくは間接的に誘導する
(3)。内皮で発現したMIR165Aは、細胞非自律的に中心柱でのPHBの発現を制御する (4)。
48
Name
ago-101
ago-102
hyl1-2
scr-3
scr-5
shr-2
phb-1d
Mutation type
T-DNA
T-DNA
T-DNA
point mutation
point mutation
deletion
point mutation
ABRC stock name
SALK_035319
SALK_096625
CS859864
CS3997
Line name
pMGP::mGFP5ER
pMIR165A::mGFP5ER
PHB-GFP
PHBmu-GFP
pMIR165A-mu
Background
Col-0
Col-0
Col-0
Col-0
Col-0
Selection marker
Hygromicine
Hygromicine
Glufosinate, BASTA
Glufosinate, BASTA
Hygromicine
CS2972
CS3761
Background Reference
Col-0
本論文
Col-0
本論文
Col-0
Vazquez et al. 2004
Col-0
Helariutta et al. 2000
Col-0
Paquette et al. 2005
Col-0
Helariutta et al. 2000
Ler
McConnell et al. 1998
Table3. 本研究で用いたシロイヌナズナ変異体および形質転換系統
49
Primer name
AGO1f
AGO1r
ACT8f
ACT8r
MGPf
MGPr
NUCf
NUCr
ACT7f
ACT7r
AHP6-qRT-Rv2
AHP6-qRT-Fw2
miR165UPL primer
miR165/166-Fw for UPL-RT
UPL-RT Reverse
Xba-PHB-(-)3570
Kpn-PHB-(+)5015R
PHB (+)miR1445 F
PHB (+)miR1444 R
HpaI-PHB Cter F
PHB (+)4443 R
miR165a(+)722R
miR165a (-)3927
miR165a(+)93mu
miR165a(+)70R
miR165a ProEND
miR165a (-)3927
MGP ProEND R
MGP (-)3790
Sequence
ATTGTTGAAGGCCAGCGGTA
TCCATTGACCAACTTGTGGC
ATGAAGATTAAGGTCGTGGCATCCGAGTTTGAAGAGGCTAC
TCCAGAAGCTGAGGTCATAG
TGGACTGCATATCTCTTGGC
aaatctccctggaaatcctga
cctttgccacatacctcaca
cgctgcttctcgaatcttct
ccattccagttccattgtca
ATATCTGACTCCTGCAGCT
TTGAGAGGACTGGAGGTAGT
gttggctctggtgcagggtccgaggtattcgcaccagagccaacggggga
tcgcttcggaccaggcttca
GTGCAGGGTCCGAGGT
acTCTAGAcgtttgtagactctagtc
acGGTACCagctagctcattcatctatct
CCTGGaCCaGATTCTATTGGCA
ctacaccagcaatgaagg
gttaacTGAagaataataagaaataagaag
AACGAACGACCAATTCACGAACA
ggccacgtcattttctatcc
gtatcctagcgaagtagattcg
GAGAGTATCCTCGGtCCtGGCTT
TATGATCACTTGAATCATTAAC
tcaactgaaatagcttaaccctc
gtatcctagcgaagtagattcg
gtcttcttcttggacaaaagttttg
gtggaaaatggttggaaagc
Table 4. 本研究の発現解析で用いたプライマーとその配列
50
Hpa I
C
Stop
mu
A
ATG
Stop
Bgl II
8.5-kb PHABULOSA genome
Xba I
Bgl II
pAN19 PHB-Cter
Kpn I
ATG
mu
Hpa I
D
pAN19 PHB-ge
B
Stop
Stop
Bgl II
Bgl II
GFP
Kpn I
pAN19 PHBmu-ge
Stop
E
Bgl II
GFP
F
ATG
8.5-kb PHABULOSA genome
Bgl II
Kpn I
pAN19 PHB-GFP-Cter
Stop
Xba I
Kpn I
pAN19 PHB-Hap-Cter
8.5-kb PHABULOSA genome
Xba I
Kpn I
GFP
Kpn I
Stop
pAN19 PHB-GFP
Bgl II
GFP
ATG
G
mu
Kpn I
Stop
8.5-kb PHABULOSA genome
Xba I
Bgl II
Kpn I
pAN19 PHBmu-GFP
Figure. 19 PHB-GFPベクターの作成
(A) pAN19 PHB-geベクター。矢印はプライマー(PHB-(+)miR144F、PHB(+)-miR1443R)を示す。
(B) pAN19 PHB-mu-geベクター。
(C) pAN19 PHB-Cterベクター。矢印はプライマー(Hpa-PHB-CterF、PHB-(+)4443R)を示す。
(D) pAN19 PHB-Hpa-Cterベクター。
(E) pAN19 PHB-GFP-Cterベクター。
(F) pAN19 PHB-GFPベクター。
(G) pAN19 PHBmu-GFPベクター。
51
第 5 章 -材 料 と 方 法 5-1. シ ロ イ ヌ ナ ズ ナ 変 異 体 株 、 形 質 転 換 系 統 、 及 び そ れ ら 生 育 条 件
シ ロ イ ヌ ナ ズ ナ (Arabidopsis thaliana)の Columbia-0 (Col-0) 系 統 を 野 生 型
と し て 用 い た 。5gf32 変 異 体 は Col-0 に 対 し て 2 度 戻 し 交 配 を 行 っ た 。ま た 、
本 研 究 で 用 い た シ ロ イ ヌ ナ ズ ナ 変 異 体 は 、Table. 3 に 示 し た 。ま た 、ago1-101
変 異 体 、ago1-102 変 異 体 に お い て は 、そ れ ぞ れ 開 始 コ ド ン の 1.261-bp、及 び
597-bp 下 流 に T-DNA が 挿 入 し て い た 。 ago1-101 変 異 体 、 ago1-102 変 異 体 、
hyl1-2 変 異 体 、及 び phb-1d 変 異 体 に つ い て は 、Arabidopsis Biological Resource
Center (ABRC) か ら 取 得 し た 。 SHR-GFP 系 統 、 GFP-SCR 系 統 、 及 び En7 系
統 に 関 し て は 、以 下 の 論 文 に 記 述 し て あ る (Nakajima et al. 2001, Gallagher et
al.
2004,
Heidstra
et
al.
2004)
。 ま た 、 pMGP::mGFP5ER
系 統 、
pMIR165A::mGFP5ER 系 統 、PHB-GFP 系 統 、及 び PHBmu-GFP 系 統 は 本 研 究
で作成した。
シ ロ イ ヌ ナ ズ ナ 種 子 は 20%次 亜 塩 素 酸 及 び 2% TritonX-100 の 溶 液 で 滅 菌
処 理 し 、 4℃ の 暗 所 に 3 日 間 放 置 し 、 春 日 処 理 を 行 っ た 。 そ の 後 、 1% シ ョ
糖 (w/v) と 1% Agar (w/v) を 含 む 0.5×Arabidopsis nutrient solution (Haughn
and Somerville 1986) の 寒 天 培 地 に 播 種 し 、 23℃ の 長 日 条 件 下 で (16 時 間 /8
時 間 ) 下 で 培 地 を 垂 直 に 立 て 発 芽 さ せ 、ア ッ セ イ を 行 っ た 。ま た 、交 配 や 種
子 の 回 収 の た め 、 発 芽 後 2-3 週 間 程 度 で 、 鉢 に う つ し 、 phb-1d/+変 異 体 以 外
は 23℃ の 長 日 条 件 下 で 、ま た 、phb-1d/+変 異 体 は 、17℃ の 長 日 条 件 下 で 生 育
させた。
5-2. RT-PCR 及 び qRT-PCR 法 を 用 い た 発 現 解 析
AGO1 転 写 産 物 に 対 す る 発 現 解 析 で は 、 発 芽 後 10 日 の 植 物 体 全 体 か ら 、
RNAesy Plant minikit (QIAGEN, Valencia, CA) を 用 い て total RNA を 抽 出 し た 。
逆 転 写 反 応 は 、 300ng total-RNA を 鋳 型 と し て 、 Superscript II reverse
transcriptase (Invitrogen, Carlasbad, CA) と oligo-dT primer を 用 い て 逆 転 写 反
応 を 行 い 、一 本 鎖 cDNA を 作 成 し た 。そ れ を 鋳 型 と し て 、[96℃ , 30sec; 50℃ ,
30sec; 72℃ , 1min]の PCR プ ロ グ ラ ム を 32cycle 行 っ た 。使 用 し た プ ラ イ マ ー
セ ッ ト は Table. 4 に 示 し た (AGO1, AGO1f-AGO1r;
ACT8, ACT8f-ACT8r) 。
MGP、NUC 及 び AHP6 転 写 産 物 に 対 す る qRT-PCR 法 に よ る 発 現 解 析 で は 、
発 芽 後 4 日 目 の 植 物 体 の 根 端 1cm か ら total RNA を 抽 出 し 、上 記 と 同 様 の 方
法 で 逆 転 写 を 行 っ た 。qRT-PCR 反 応 で は 、SYBER Premix Ex Taq (Takara bio co,
Shiga, Japan) を 用 い て 反 応 液 を 調 整 し 、LightCycler system (Roche Diagnostics,
Basel, Switzerlant) を 用 い て [95℃ , 10sec; 60℃ , 10sec; 72℃ , 10sec] の PCR プ
ロ グ ラ ム で 行 っ た 。 用 い た プ ラ イ マ ー セ ッ ト は Table. 4 に 示 し た 。 (MGP,
52
MGPf - MGPr; NUC, NUCf - NUCr; AHP6, AHP6-qRT-FW2 - AHP6-qRT-Rv2;
ACT7, ACT7f - ACT7 ) 。
成 熟 型 miR165/166 の 蓄 積 量 の 解 析 で は 、発 芽 後 4 日 目 の 植 物 体 の 根 端 1cm
か ら total RNA を 抽 出 し 、 200ng total RNA を 鋳 型 に 、 Superscript II reverse
transcriptase (Invitrogen, Carlasbad, CA)と 、 逆 転 写 プ ラ イ マ ー と し て oligo-dT
primer と miR165UPL primer を 用 い て 、pulsed reverse transcription (pulsed-RT)
法 に よ る 逆 転 写 反 応 を 行 い 、 一 本 鎖 cDNA を 作 成 し た (Tang et al. 2006)
(Table. 4) 。 成 熟 型 miR165/166 に 対 す る プ ラ イ マ ー セ ッ ト と し て
miR165/166-Fw と UPL-RT-Rev (Table. 4) を 使 い 、 上 記 と 同 様 の 方 法 で
qRT-PCR 反 応 を お こ な っ た 。
5-3. コ ン ス ト ラ ク シ ョ ン と 形 質 転 換 体 の 作 成
pMGP::mGFP5ER の 作 成 に お い て は 、 Table. 4 に 示 し た MGP(-)3790 と
MGPproEND を プ ラ イ マ ー と し 、 MGP 遺 伝 子 5’上 流 配 列 3,790-bp (pMGP と
す る ) を 増 幅 さ せ 、 そ れ を 、 改 変 型 pUC19 (pAN19) に ク ロ ー ニ ン グ し 、 そ
の 後 、 mGFP5EF コ ー デ ィ ン グ 配 列 と NOS Terminator の 配 列 を 結 合 さ せ た
(pMGP::mGFP5ER) 。 こ の 配 列 を 、 ハ イ グ ロ マ イ シ ン 耐 性 遺 伝 子 を も つ 改 変
型 pBIN19 バ イ ナ リ ー ベ ク タ ー
(pBIN40) に 挿 入 し た 。 ま た 、
pMIR165A::mGFP5ER の 作 成 に お い て は 、 Table. 4 に 示 す miR165a(-)3927 と
miR165aPorEND を プ ラ イ マ ー と し 、 MIR165A 遺 伝 子 5’上 流 配 列 3,9270-bp
(pMIR165A と す る ) を 増 幅 さ せ た 後 、 pMGP::mGFP5ER と 同 様 に pBIN40 に
挿入した。
PHB-GFP
の 作 成 で は 、 Table.
4
に 示 し た
Xba-PHB-(-)3570
と
Kpn-PHB-(+)5015R を プ ラ イ マ ー と し 、 8.5-kb PHB ゲ ノ ム 断 片 を 増 幅 し 、
pAN19 に 挿 入 し た (Fig. 19A, pAN19 PHB-ge) 。次 に 、pAN19 PHB-ge を 鋳 型
と し て 、 Table. 1 に 示 し た PHB-(+)miR1445F と PHB-(+)miR1444R の プ ラ イ
マ ー セ ッ ト を 用 い て 、PCR 反 応 を 行 い 、セ ル フ ラ イ ゲ ー シ ョ ン さ せ る こ と で 、
miR165/166 耐 性 型 PHB ゲ ノ ム を 作 成 し た (Fig. 19B, pAN19 PHBmu-ge) 。ま
た 、 PHB ゲ ノ ム 断 片 の C 端 部 位 を Bgl II と Kpn I の 制 限 酵 素 サ イ ト を 使 い 、
別 途 pAN19 に ク ロ ー ニ ン グ し た (Fig. 19C, pAN19 PHB-Cter) 。 pAN19
PHB-Cter を 鋳 型 に Table. 4 に 示 し た Hpa-PHB-CterF と PHB-(+)4443R の プ ラ
イ マ ー セ ッ ト を 用 い て PCR 反 応 と セ ル フ ラ イ ゲ ー シ ョ ン を 行 い 、 PHB 遺 伝
子 の Stop コ ド ン の 直 前 に Hpa I 制 限 酵 素 サ イ ト を 導 入 し た 。(Fig. 19D pAN19
PHB-Hpa-Cter) 。 pAN19 PHB-Hpa-Cter を Hpa I で 処 理 し 、 3×Gly-GFP(S65T)
(Morita et al. 2002) の コ ー デ ィ ン グ 配 列 を 挿 入 し た (Fig. 19E, pAN19
PHB-GFP-Cter) 。 Bgl II 及 び Kpn I を 用 い て 、 PHB-GFP-Cter 断 片 と pAN19
PHB-ge 及 び pAN19 PHBmu-ge の C 末 部 位 を 置 換 し 、 pAN19 PHB-GFP 及 び
53
pAN19 PHBmu-GFP を 作 成 し た (Fig. 19F, G) 。 そ の 後 、 PHB-GFP 及 び
PHBmu-GFP 断 片 を 、 BASTA 耐 性 遺 伝 子 を も つ 改 変 型 pBIN19 バ イ ナ リ ー ベ
ク タ ー (pBIN30) に 導 入 し た 。
MIR165A-mu の 作 成 に は 、 Table. 4 に 示 し た miR165a(-)3927 と
miR165a(+)722R の プ ラ イ マ ー セ ッ ト を 用 い て MIR165A プ ロ モ ー タ ー と
miR165A を コ ー ド す る 領 域 を 含 む 4.6-kb MIR165A ゲ ノ ム 断 片 を 増 幅 し 、
pAN19 ベ ク タ ー に 導 入 し た
(pAN19 MIR165A-ge) 。 そ の 後 pAN19
MIR165A-ge を 鋳 型 に し て 、 Table. 4 に 示 し た miR165a(+)93mu と
miR165a(+)70R の プ ラ イ マ ー セ ッ ト を 用 い て PCR 反 応 を 行 い 、セ ル フ ラ イ ゲ
ー シ ョ ン さ せ る こ と で 変 異 を 導 入 し 、 MIR165A ゲ ノ ム 断 片 (MIR165A-mu)
を 作 成 し た 。そ の 後 、こ の MIR165A-mu を pBIN40 に 導 入 し た 。植 物 体 へ の
形 質 転 換 は 、Agrobacterium tumefaciens MP90 株 を 用 い て 、floral dip 法 に よ り
行 っ た 。 ま た 、 PHBmu-GFP/MIR165A-mu 二 重 形 質 転 換 体 の 作 出 に は 、
PHBmu-GFP を も つ バ イ ナ リ ー ベ ク タ ー
MIR165A-mu ベ ク タ ー
(pBIN30-PHBmu-GFP) と
(pBIN40-MIR165A-mu) を 作 成 し 、 そ れ ぞ れ
Agrobacterium tumefaciens MP90 株 に 形 質 転 換 し た 。 こ れ ら の 2 種 類 の
Agrobacterium tumefaciens 系 統 を 、 野 生 型 植 物 体 (Col-0) に 、 floral dip 法 を
用 い て 、 同 時 に 形 質 転 換 し 、 T1 世 代 に お い て 、 こ れ ら 導 入 遺 伝 子 を 共 に 有
する二重形質転換体を選抜した。
5-4. 顕 微 鏡 観 察
CLSM 観 察 は C1-ECLIPSE E600 confocal laser-scanning microscope (Nikon,
Tokyo, Japan) を 使 用 し た 。 試 料 は 10μM propidium iodide で 染 色 し 、 細 胞 構
造 を 可 視 化 し た 。 ま た 、 胚 の 観 察 に は 、 7% (w/v) glucose を 染 色 溶 液 に 加 え
た 。根 の 横 断 切 片 は 、(Furutani et al. 2000) を 参 考 に サ ン プ ル を 調 整 し た 後 、
Astra Blue 0.25% (w/v) 染 色 液 を 用 い て プ レ パ ラ ー ト を 作 成 し た 。そ の 後 、微
分 干 渉 顕 微 鏡 ECLIPSE E1000 (Nikon, Tokyo, Japan) を 用 い て 観 察 し た 。
5-5. マ イ ク ロ ア レ イ 解 析
野 生 型 植 物 、ago1-101 変 異 体 、scr-3 変 異 体 お よ び ago1-101 scr-3 二 重 変 異
体 の 根 端 1cm 程 度 の 組 織 を サ ン プ リ ン グ し 、上 記 の 発 現 解 析 と 同 様 の 方 法 で
RNA を 抽 出 し た 。そ の 後 、44K Arabidopsis 3 microarray (Agilent Technologies,
Palo Alto, CA) を 使 用 し 、 そ れ ぞ れ の 変 異 体 と 野 生 型 と の 間 で 、 2 色 法 を 用
い て 発 現 解 析 を 行 っ た 。 scr 変 異 に よ っ て 発 現 が 低 下 す る 遺 伝 子 群 の 同 定 に
は 、野 生 型 植 物 と scr-3 変 異 体 を 比 較 し 、scr-3 変 異 体 に お い て 発 現 量 が 25%
以 下 に 低 下 し て い る 遺 伝 子 群 を 抽 出 し た 。 さ ら に 、 ago1-101 変 異 体 と
ago1-101 scr-3 二 重 変 異 体 の 発 現 量 を 、 野 生 型 植 物 の 発 現 量 を 基 準 と す る こ
54
と で 比 較 し 、 ago1-101 scr-3 変 異 体 に お い て 、 発 現 量 が 25%以 下 に 低 下 す る
遺 伝 子 群 を 抽 出 し た 。 こ の 2 つ の 遺 伝 子 群 の 両 方 に 含 ま れ る 遺 伝 子 群 を scr
変 異 に よ っ て 発 現 が 低 下 す る 遺 伝 子 群 と し た (Table. 2)。
5-6. オ ー キ シ ン 処 理
野 生 型 植 物 と scr-3 変 異 体 を 、 10μM NPA を 含 む 培 地 に 播 種 し 、 発 芽 後 3
日 目 の 段 階 で 、 10μM NAA を 含 む 培 地 に 移 し 替 え て 20 時 間 処 理 し た 。 サ ン
プ ル は 胞 水 ク ロ ラ ー ル 溶 液 [胞 水 ク ロ ラ ー ル , 8g; グ リ セ ロ ー ル , 1ml; DW,
1ml] を 用 い て 脱 色 し 、 微 分 干 渉 顕 微 鏡 を 用 い て 観 察 し た 。
5-7. 変 異 体 背 景 に お け る マ ー カ ー 系 統 を 用 い た 発 現 解 析
ago1-101 変 異 体 背 景 、scr-3 変 異 体 背 景 、及 び ago1-101 scr-3 二 重 変 異 体 背
景 で の 、pMGP::mGFP5ER、En7、PHB-GFP、及 び pMIR165A::mGFP5ER の 発
現 解 析 は 、 各 変 異 体 と マ ー カ ー 系 統 を 交 配 し 、 F3 世 代 ホ モ 系 統 を 用 い て 解
析 を 行 っ た 。pSCR::SHR 形 質 転 換 体 背 景 で の 解 析 で は 、pMIR165A::mGFP5ER
系 統 と pSCR::SHR 系 統 を 交 配 し 、 F1 世 代 の へ テ ロ 個 体 を 用 い て 解 析 し た 。
phb-1d 変 異 体 背 景 で の マ ー カ ー 発 現 解 析 は 、マ ー カ ー 系 統 と phb-1d/+変 異 体
を 交 配 し た F1 世 代 に お い て phb-1d 変 異 を も つ ヘ テ ロ 個 体 を 用 い た 。
55
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第 7章
謝辞
本 研 究 に つ き ま し て は 、様 々 な 方 々 の 多 大 な る 協 力 と ご 助 言 を い た だ き ま た 。
本 研 究 に お い て 行 っ た マ イ ク ロ ア レ イ 解 析 に 関 し ま し て は 、基 礎 生 物 学 研
究 所 の 西 村 幹 夫 先 生 、林 誠 先 生 、深 澤 美 津 江 氏 の ご 協 力 頂 き ま し た 。深 く 感
謝いたします。
ま た 、本 研 究 で 用 い た SHR-GFP 系 統 、GFP-SCR 系 統 に 関 し ま し て は 、Duke
大 学 の Philip Benfey 博 士 、ま た 、En7 系 統 に 関 し ま し て は Utrech 大 学 の Ben
Scheres 博 士 に 、 AHP6 マ ー カ ー 系 統 と j23-1 系 統 に 関 し て は Helsinki 大 学 の
Yka Helariutta 博 士 に 分 与 し て 頂 き ま し た 。 ご 協 力 に 感 謝 い た し ま す 。
本研究の全般にわたって多大なるご助言と熱心なご指導をしてくださっ
た植物遺伝子機能学講座の中島敬二先生に深く感謝いたします。
また、5 年間暖かい目で見守って頂き、研究に対する鋭いご助言だけでな
く 、ご 自 身 の 過 去 の 体 験 談 な ど お 話 し て く だ さ い ま し た 橋 本 隆 先 生 に 深 く 感
謝いたします。
ま た 、加 藤 壮 英 先 生 に は 本 研 究 に 対 す る ご 助 言 を だ け で な く 、決 し て 教 科
書には書いてない過去の経験に基づく研究活動における数々の興味深い事
項を教えていただきました。本当に深く感謝いたします。
西 田 真 子 氏 、吉 村 美 香 氏 に は 長 い 間 実 験 の サ ポ ー ト を し て 頂 き ま し た 。深
く感謝いたします。
ま た 、山 下 聡 美 氏 の ご 尽 力 の お か げ で 、日 々 の 研 究 室 生 活 を 快 適 に 過 ご す
ことが出来ました。本当に感謝いたします。
加 え て 、植 物 遺 伝 子 機 能 学 講 座 の そ の 他 の ス タ ッ フ の 方 、先 輩 方 、同 輩 や
後 輩 の 方 々 に は 、研 究 活 動 内 外 を 問 わ ず 、本 当 に お 世 話 に な り ま し た 。皆 様
のおかげで、現在の私が形づくられています。深く感謝いたします。
最 後 に な り ま し た が 、27 年 間 、暖 か く 見 守 っ て く れ た 、宮 島 厚 介 、裕 子 夫
妻に、深く感謝いたします。
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