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台湾の国連加盟と活路外交
台湾の国連加盟と活路外交 林廷輝 政府は2008年5月20日に政権発足後、3年 言うまでもなく、台湾が「国際民間航空機関」や「国 連続して国連加入申請を見送り、国連の専 連気候変動枠組条約」に参加することは重要で 門的機関(Specialized Agencies)へ参加するのを ある。しかしながら、国連加盟国になることこそが 目標とすることに舵を切った。しかしながら、2009 外交工作の根本であり、中華民国憲法141条にあ 年と2010年はオブザーバーの資格で「世界保健 るとおり、中華民国の外交は独立自主の精神に基 総会」(WHA)に参加したものの、送られてきた招 づくべきものであって、その精神は敵の善意の上に 待状には「非国家」の身分で会議に出席できると 成り立つことは決してありえない。 馬 いう「光栄」に浴したのみであった。現時点ではオ 「国連への復帰」とは?このスローガンは、 2008 ブザーバー資格で「国際民間航空機関」(ICAO)と 年に馬英九と蕭萬長コンビが総統選挙活動の 「国連気候変動枠組条約」(UNFCCC)に参加す 際に表明した政権公約で、1993年に国民党が政 ることが主な外交目標となっている。馬政府は突 権を担当していた時期に始められた政策である。 然の「外交休兵」宣言以後、「活路外交」にその成 2008年に実施された「国連復帰公民投票」でもそ 果を見出そうとしているものの、各方面の機関への のスタンスは変わらなかったにもかかわらず、馬蕭 参加状況を見ると、民進党が政権の座にあったこ コンビは大差で勝利をおさめると、このスローガン ろから推進している「国際民間航空機関」や中国 は雲散霧消してしまった。というのも、友好国に対 が敬遠する「国連気候変動枠組条約」への参加 して台湾の国連加盟支援を推進すれば、中国の 努力を継続しているに過ぎない。2008年の総統 神経を逆なですることになるからだ。こうした敵の 選挙の際、馬蕭コンビが言及した公約である「国 善意の上に成り立つ外交はそうそう長く続けられ 連・世界銀行・国際通貨基金(IMF)への復帰」は るものではない。 恐らく2012年までにご破算になるであろう。これら 「国連への復帰」のほか、総統選挙期間中、馬 は、結果的に活路外交の失敗を間接的に証明す 蕭コンビは「世界銀行」への復帰にも言及していた。 ることにもなる。もし活路外交が成功するのであれ これは現在、台湾外交部(外務省に相当)が積極 ば、こうした国際組織への加入などいともたやすく 的に推進している政策で、もし「活路外交」が通用 実現出来るものだからである。 するのであれば、選挙公約を実現することにもなる だろうし、支持に応えたことになる。 そのほか、国際的な投資環境(特に中国)にい 国際組織への加入は中国からの恩 恵の上に成り立つものにあらず る台湾人企業家の権益を確保することにもなるた め、国連専門的機関への参加と同様に外交部に 4 Newsletter No. 7 よって積極的に推し進められるべきものである。に 加入を希望している「国際労働機関(ILO)」、金 もかかわらず、馬政府は遅々として手をこまねいて 融業界が希望する「世界銀 行」と「国際 通貨基 いるばかりである。その原因はどこにあるのか?そ 金」、農水産業界が希望する「国際連合 食糧農 れはやはり台湾が国連加盟国でないことがすべ 業機関(FAO)」、環境保護団体は国連環境計画 ての原因である。「世界銀行」、「世界銀行グループ (UNEP)の一員になることが目標だ。馬政府よ、こ (World Bank Group)」に所属する「国際開発協会 れらの目標は一朝一夕に実現出来るものと思って (IDA))、国際金融公社(IFC) 」、「国際投資紛争 いるのか。国連加盟こそが活路外交の根本であり、 解決センター(ICSID)」や「多数国間投資保証機 台湾外交は国連加盟を基軸にしながら、他の国 関(MIGA)」などの機関へ加盟申請をしさえすれば、 際組織への加盟も推進する二元外交であるべき 何の障害もなく会員国に迎えられるはずである。 である。 特に、中国でさえ加盟している「国際投資紛争解 決センター(ICSID)」は台湾企業家の投機を保護 するライフラインになりうる機関であり、台湾企業家 が中国投資の権利を侵害された場合、この機関に 対して訴えを起こすことが出来るのだ。ただ、「国際 民間航空機関」に加入は出来ても、より有用な国 際組織に加入するチャンスは確保されてないのが 現状である。 国連加盟を目標として二元外交を 馬政 府は現 在、むし ろ選 挙 公 約を放 棄 し、国 際組 織に加盟する多くのチャンスを逃している。 ECFA締結以降、台湾と中国は双方の機関を通 じて「投資保障協議」の発効に向けて協議を進め ている。もし中国側がこれを一方的に破棄すれば、 台湾企業の権益は完全な保障を得ることが出来 なくなる。台湾はもはや中国に絡めとられており、引 き返すチャンスはほとんど失われている。 現在、国連の組織体系やその付属機関は非 常に巨大なものとなっており、それぞれが唯一の 専門性を誇っている。台湾国内の労働者団体が 5