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第3章 立候補都市段階(PDF/5.24MB)

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第3章 立候補都市段階(PDF/5.24MB)
第一部 第3章
立候補都市段階
第3章
~ 立候補都市段階 ~
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第一部 第3章
立候補都市段階
本章では、平成 20(2008)年 6 月の IOC による立候補都市の選定以降、
平成 21(2009)年 10 月 2 日の IOC 総会での開催都市決定までの立候補
都市段階について述べる。
立候補都市段階では、国際プロモーションが解禁されたことから、各立候
補都市による熾烈な国際プロモーション合戦が繰り広げられた。
<要
約>
平成 20(2008)年 8 月から 9 月にかけ、北京オリンピック・パラリン
ピック競技大会が開催された。IOC 委員をはじめとする各国のオリンピック
関係者や世界中のメディアが集まる北京大会は、東京招致を広く世界に PR
する絶好の機会であり、東京も北京市内に設けられた JOC ジャパンハウス
においてプロモーション活動を積極的に展開した。計画面においては、競技
会場や選手村等の大会関連施設や大会運営の様子を視察し、得られた知見を
立候補ファイルへ反映した。また、IF 関係者が一堂に会する機会を利用し、
各 IF 関係者に精力的に接触し、東京の競技会場計画を説明し、理解を求めた。
平成 21(2009)年 2 月 12 日、東京は、日本らしさをアピールするた
めに和紙・和綴じによって製作された立候補ファイルを IOC に提出した。
立候補ファイルは、IOC からの質問状に答える形で作成され、ビジョン・
レガシー、財政、競技及び会場、選手村など全 17 テーマからなる。各テー
マにおいて IOC の求めに応じた詳細な計画が求められるとともに、関係機関
からの保証書についても合わせて提出することが求められた。東京は、既に
評価の高かった計画に加え、政府の財政保証をはじめとする関係機関からの
保証書を取得し IOC へ提出した。
立候補ファイルの提出以降、IOC 評価委員会訪問、テクニカル・プレゼン
テーション(ローザンヌ市)、そして平成 21(2009)年 10 月 2 日の IOC
総会(コペンハーゲン市)へと続いていくが、これらについては、それぞれ
4 章、5 章、6 章において詳述する。
国内の招致気運の盛り上げ事業については、招致活動に対する支援の輪を
日本全国に広げるため、全国自治体や大学、経済団体等にも協力を依頼し、
より一層の支持拡大へ務めた。これらの事業は、招致活動が終盤に近づくに
つれ、よりメディアへの情報発信を意識した「カウントダウンクロック除幕
式」、「開催都市決定応援大パレード」といった事業へと展開していった。
立候補都市段階では、国外における招致活動が最も重要な要素となった。
開催都市の決定は、IOC 委員による投票で決定されるため、各委員との人的
なつながりをどれだけ築けるかがポイントであった。東京は、招致委員会及
び JOC の主要メンバーを中心に世界各地で開催される IOC 主催会議や国際
スポーツイベントへ精力的に参加し、東京の魅力や開催計画を訴えた。東京
が参加した主要な国際イベントは北京オリンピックや大陸別オリンピック委
員会連合総会をはじめ多数に及んだ。
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第一部 第3章
立候補都市段階
第3章 立候補都市段階
第1節 北京オリンピック・パラリンピック競技大会【事業費 384 百万円】
1 北京大会の概要
第 29 回オリンピック競技大会は、平成 20(2008)年 8 月8日から
8 月 24 日までの 17 日間にわたって、中華人民共和国の北京市 ※ におい
て開催された。
大会には、日本選手団 576 名を含む、204 の国(地域)から約 19,000
名の選手・役員が参加し、28 競技・302 種目が実施された。
続いて、同年 9 月 6 日から 9 月 17 日まで開催された第 13 回パラリ
ンピック競技大会には、日本選手団 294 名を含む、146 の国(地域)か
ら、約 6,000 名の選手・役員が参加し、20 競技・472 種目が実施され
た。
両大会は、共に「One World, One Dream」をスローガンに、北京オ
リンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(BOCOG)によって運
営され、過去最大規模の大会となった。
IOC 委員を始めとする各国のオリンピック関係者や世界中のメディアが
集まる北京大会は、立候補都市選定後、初めて大規模に東京招致のPRを
行える絶好の国際イベントであり、次に述べる JOC ジャパンハウスにお
いてプロモーション活動を精力的に展開した。
また、日本各地で行われた海外選手団の事前合宿は、地元との活発な交
流が行われる等、日本のホスピタリティを理解してもらうよい機会となっ
た。
北京大会は、競技会場、IBC/MPC、選手村等のオリンピック関連施設、
大会会場における運営、大会に必要な空港、鉄道、道路などのインフラ基
盤等を、直接視察することができる絶好の機会でもあった。立候補ファイ
ルの作成に資する様々な調査を目的として、IOC・IPC 及び BOCOG が主
催するオブザーバープログラムへ参加するとともに、大会運営に関する視
察(競技会場、大会関連施設及び北京市内の状況)を実施した。
また、立候補ファイルの策定にあたり、IOC から求められている各 IF か
らの競技会場同意書の取得に向け、各 IF 関係者に対し東京の競技計画の説
明を行った。
2 北京大会 JOC ジャパンハウスにおける活動
(1) 活動概要
平成 20(2008)年 8 月 6 日から 24 日までの 19 日間、北京大会
期間中の JOC 現地本部施設として北京市内のホテルニューオータニ長
富宮に設置された JOC ジャパンハウス内において、招致PRブースを
※ 北京大会では、サッカーの予選を天津市等別の都市で開催したことに加え、馬術は香港特別行政
区、セーリングは青島市で実施された。
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第一部 第3章
立候補都市段階
展開した。JOC と協力して、IOC
委員や IF 役員、各国のメディアが集
まる機会を捉えて、2016 年東京大
会の開催計画を始め、東京の魅力を
広く世界に発信した。
ジャパンハウスでのレセプション
【招致 PR ブースの概要】
開設場所:ホテルニューオータニ長富宮(北京市内)
開設期間:平成 20(2008)年8月6日から24日まで
展示内容:
・ ベニューマップやタッチパネル等により開催計画を説明
・ パネル展示等により日本のポップカルチャー(マンガ)を紹介
・ パネル展示により食文化を紹介
さ わ
「触 れる地球」やパネル展示により環境への取り組みを紹介
二足歩行ロボットによるデモンストレーションやパネル展示により
最新テクノロジー(ロボット技術)を紹介
・ 大型映像装置により、東京の魅力を紹介する映像等を上映
・ 招致関係及び東京・日本の魅力をアピールする資料を配布
・
・
(2)
多言語に対応した体験型中心のプロモーション
最先端の技術による「触れる地
球」や、タッチパネルによる会場
配置計画の展示を行う等、体験型
の展示を中心とし、分かりやすく
印象に残る PR に努めた。その他、
最先端のロボット技術や最新のフ
ァッションの紹介など東京の新し
い面を中心に PR し、同じアジア
である北京との差別化を図れるよ
うアピールポイントを工夫した。
触 れる地球
また、展示は英語に統一しつつ、
日本語・英語・フランス語・中国語の 4 か国語で補助資料を作成し、さ
らに説明者として日英・日仏・日中の通訳を配置する等、世界各国から
の来場者に対応できるようにした。
さわ
(3)
東京の魅力や計画を広く内外に発信
IOC 委員、IF 関係者を始め、開催期間中約 23,000 人が来場した。そ
の際、招致関係の PR 冊子に加え、東京都作成の”TOKYO COLORS”
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第一部 第3章
立候補都市段階
や国際観光振興機構(JNTO)作成による”Your Guide to Japan”
といった英語等外国語による資料が好評を得た。また、国内外のメディ
ア延べ 101 社の取材を受ける等、東京の魅力や開催計画について広く
内外に発信することができた。
3 北京大会におけるプロモーション活動
(1) 北京オリンピック大会
北京オリンピック大会は、開会式前に IOC 総会及び IOC 理事会も開催
され、国際プロモーション活動解禁後に全 IOC 委員と接触できる初めて
の機会である。このため「TOKYO2016」イメージを確立する初戦と
して、綿密かつ統一性のあるコミュニケーション戦略を立てた。
招致委員会、招致本部、JOC 等、すべての参加者が「TOKYO2016」
であるというイメージを確立するために、IOC・IF 関係者との面会の機
会のあるスタッフは揃いのネクタイ、スカーフを着用した。
また競技視察時には招致オフ
ィシャルパートナーのアシック
ス社、デサント社による、オリ
ジナル・デザインのポロシャツ
を着用し、スポーツ観戦の場の
雰囲気に合致するようなチー
ム・アピールを心がけた。
ネクタイ、スカーフ、及び手
オリジナル・デザインのポロシャツ
土産の扇子は、デザイン・製作
をイッセイミヤケ事務所に依頼。モダンな日本らしさをスマートにアピ
ールするとともに、
「イッセイミヤケ」ブランドの人気の高さから、IOC
委員やその家族との会話のきっかけとなった。
大会に併せて、結びのコンセプト=Uniting Our Worlds を表現する映
像と小冊子(英語版・フランス語版・スペイン語版)を制作し、IOC 総
会の開会に合わせて8月4日に記者会見を開催した。期間中、IOC 委員
や海外プレスとの面会時にも、同じ小冊子を活用し、コミュニケーショ
ン・イメージの統一を図った。
また、開会式前日の 8 月 7 日には、現地唯一の英字新聞である「China
Daily」紙に 4 ページのカラー広告を出稿した。招致委員会事務総長を始
めとする関係者が多くの IOC 委員に声をかけられる等、国際広報活動の
緒戦を飾ることができた。
北京オリンピックはまた、全 26 競技の IF と面会ができる機会でもあ
るので、会場計画に対する各 IF からの同意を得るために、招致委員会 IF
チームと招致本部が連携し、各競技会場等にて連日会議を実施した。
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第一部 第3章
立候補都市段階
具体的な直接プロモーション
は、IOC 関係者の分刻みのスケ
ジュールに対応できるよう、
IOC 委員の宿泊する北京飯店に
おける朝食時のタイミング、日
本大使公邸や市内レストランを
利用した昼食、夜間は競技会場
のラウンジ等、多岐に渡った。
また、広範囲におよぶ競技会場
ジャパンハウスでのプロモーション活動
を移動しながら面会を行うため、
竹田 JOC 会長、河野招致委員会事務総長、水野 JOC 副会長、猪谷・岡
野両 IOC 委員が、北京飯店に集合し、前日の面会の内容を確認し、当日
の分担を行い、少しでも多くの IOC 委員と接触することに努めた。
また、ジャパンハウスも、IOC 委員を招待し、大会概要などを説明す
るために有効な拠点となった。
(2)
北京パラリンピック大会
直接プロモーションのターゲットとなる IOC 委員としては、フィル・
クレバン IPC 会長 1 名であるが、パラリンピック大会に対する充分な理
解とともに、IPC 関係者とも良
好な関係を築くことが重要であ
るため、河野事務総長、竹田
JOC 会長、水野 JOC 副会長が
参加した。
また、小冊子についても、競
技会場をパラリンピック会場に
変更して作成し、会場計画につ
いて IPC の同意を得るための会
議を実施した。
4 オブザーバープログラム、IOC 説明会及びデブリーフィング ※ への参加
(1) オリンピック・オブザーバープログラムへの参加
ア オブザーバープログラムの内容
北 京 オ リ ン ピ ッ ク ・ パ ラ リ ン ピ ッ ク 大 会 開 催 期 間 中 、 IOC と
BOCOG の共催で、次期夏季オリンピック開催都市、次期・次々期冬
季オリンピック開催都市並びに各立候補都市等を対象に、大会運営の
方法等について説明を受ける機会が設けられた。
※ デブリーフィング:得られた経験を次に生かすため、振り返って総括すること。世界最大のスポ
ーツイベントであるオリンピック・パラリンピック競技大会においては、ノウハウの円滑な継承
のため極めて大きな意味を持つ報告会とされている。
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第一部 第3章
立候補都市段階
各プログラムでは、北京大会の運営方法等について講義形式で説明、
質疑応答やツアー形式で実際に会場等を視察しながら説明を受けた。
【参加したプログラム】
人員管理とアクレディテーション(脚注参照)、宿泊施設、選手村、
環境、式典、シティー装飾、ブランド保護、会場管理と電力供給、セ
キュリティ、輸送、チケッティング、会場デザインと建設、会場の技
術、マーケティングパートナー、会場運営と観客サービス、医療サー
ビス、放送業務、プレス運営 等
イ オブザーバープログラムへの参加により得られたもの
オブザーバープログラムは、新しい情報を得ることができるととも
に、IOC や BOCOG 職員と直接意見交換できる貴重な機会であった。
また、オブザーバープログラムの参加者には、アクレディテーショ
ン・カード ※ (以下「AD カード」という。)が与えられ、プログラム
開催時以外にそれを利用して大会会場のバックヤード等普段入ること
ができないエリアにも行くことができ、現場の BOCOG 職員から様々
な情報を直接得ることができた。
本プログラムで得られた情報については、作成作業を進めていた立
候補ファイルへ反映し、計画の改良を図ることができた。
さらに、IOC や IPC、BOCOG 職員のみならず、次期開催都市や他
の立候補都市との人脈形成にも役立った。
ウ 付与された AD カード
4 立候補都市は、入場できるエリアや時間等に関して高いカテゴリ
ーの AD カードを 2 名分、オブザーバーとしての AD カード 4 名分
の合計6枚を提供された。
その結果、公式プログラム終了後の夜間に競技視察ができ、大変有
益であった。
同時に、プログラムの空き時間に IF との接触を計るにも、競技会場
のバックヤード等に入るために活用できた。
エ 留意点
オブザーバープログラムで得た内容を、立候補ファイル作成者等に
速やかにフィードバックして広く共有し、立候補ファイルの内容に反
映させていくことが重要である。
各プログラムの参加人数が限られているため、テーマごとに各担当
者がプログラムに参加できることが望ましい。
オブザーバープログラムでは、そのインストラクターとなる IOC 事
※ アクレディテーション・カード(AD カード):オリンピック・パラリンピック競技大会等に際し
て、選手・役員はじめ競技や運営、報道等に関わる様々な関係者に対して組織委員会が与える資
格認定をアクレディテーションと呼び、関係者はこの資格に基づいて、それぞれ定められた範囲
の会場に入場したり、輸送等のサービスを受けたりする。AD カードはこの資格を対外的に証明
するもので、通常事前の登録により、顔写真入りのカードが組織委員会から付与される。
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立候補都市段階
務局の各部門職員、当該事項の専門家、開催決定都市(2016 年の場
合、バンクーバー、ロンドン及びソチ)の組織委員会職員と交流の場
となる。そのため、一貫して招致活動に携わるものが参加することが
望ましい。
顔写真
オブザーバープログラム参加者に付与
された AD カード。
「∞」は、競技会場へのアクセスを意
味する。当該国入国ビザの役割をあわ
せもつため、極めて大きな意味を持つ。
(2)
パラリンピック・オブザーバープログラム
9月のパラリンピック大会時においても、IPC 及び BOCOG 主催によ
り、オブザーバープログラムが開催され、4立候補都市が参加した。
大会規模の増大により、IPC がこれまでになく拡充したプログラムと
しており、得る部分が非常に多いものであった。
なお、本プログラムは IPC 主催のため、IOC の立候補都市手数料の対
象には含まれておらず、参加は有料であった。
(3)
大会期間中の IOC 説明会
北京オリンピック大会開催中に、以下の 3 回の説明会が IOC より開
催され、4立候補都市が集まった。
・ 招致活動全体に関する説明会
・ マーケティングに関する説明会
・ 宿泊施設に関する説明会
(4)
北京オリンピック・デブリーフィングへの参加
ア デブリーフィングの内容
北京大会終了後、大会の総括を目的に次期夏季オリンピックの開催
都市であるロンドンにおいて、北京オリンピック・デブリーフィング
が平成 20(2008)年 11 月 24 日から 27 日にかけて IOC の主催
により開催された。
デブリーフィングでは、個別のテーマごとに分科会が開催され、次
期オリンピック開催都市等へのアドバイスを含め、北京オリンピック
の大会運営の総括が行われた。
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立候補都市段階
【分科会のテーマ】
オリンピック・ファミリーへのサービス、人員管理、NOC とアス
リートへのサービス、マーケティング、メディア、オリンピックが社
会等に与える影響(OGI)、IF へのサービス、パラリンピック、観客、
会場運営、セキュリティ、式典、選手村、競技、輸送、出入国、財政、
文化・ライブサイト、コミュニケーション、宿泊、ロジスティックス、
ブランド保護、アクレディテーション、環境、プロトコル 等
イ デブリーフィングへの参加により得たもの
デブリーフィングでは、IOC から北京オリンピックの大会運営に対
する評価が行われるとともに、BOCOG 職員から反省点や改善すべき
点についてのプレゼンテーションがあった。
特に、BOCOG 職員の大会開催経験に基づくプレゼンテーションは、
IOC のテクニカルマニュアル等では得がたい、現実面での課題といっ
た多くの知見が含まれており、大変参考になった。
また、オブザーバープログラム時点では結果の出ていなかった北京
大会での実績データが提示されたことも、計画策定の大きな助けとな
った。
5 大会運営に関する視察等
(1) 視察内容
北京オリンピック・パラリンピック競技大会は、招致活動中、唯一開
かれる夏季大会であり、東京の開催計画を策定するにあたり、大会関連
施設、会場運営、インフラ基盤及び大会開催中の都市の状況を視察する
ことは必要不可欠である。
具体的には、以下のような事項について各計画担当者が視察・調査を
実施した。
・ 競技会場、選手村、IBC/MPC、IOC ホテルや、空港、主要駅の施
設整備状況及び運営体制
・ 北京市内及び競技会場周辺の警備・輸送体制
・ 北京市内のアンブッシュ・マーケティング ※ 対策
・ 北京市内の医療体制
等
(2)
視察により得られたもの
日本における夏季オリンピック大会の開催は 40 年以上前であること
に加え、大阪市の 2008 年大会招致活動時等と比較して、IOC が求める
開催計画の基準は年々厳しくなっている。このように従前の招致ノウハ
ウをそのまま活かすことが困難な状況において、立候補ファイル原案作
成中に開催される北京大会は、計画策定担当者が実際に大会運営を視察
※ アンブッシュ・マーケティング:P104
第 1 部第 3 章第 2 節 2(8)参照
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第一部 第3章
立候補都市段階
し、実態を把握することのできる唯一の機会であり、東京の開催計画策
定に向けて非常に有益な視察となった。
具体的には、競技会場等の大会関連施設、大会運営のほか、市内や競
技会場周辺の警備・輸送体制、アンブッシュ・マーケティング対策、IOC
ホテルの運営、オリンピックの医療体制、環境対策等、現場視察で得た
貴重な知見を活かし、立候補ファイルへ反映させることができた。
また、立候補ファイル作成のみならず、IOC 評価委員会へのプレゼン
テーション及び質疑応答においても、大会視察の経験を活かし、実態に
即した適切な説明を行うことができた。
(3)
準備のための事前視察
北京大会前の 4 月、5 月、6 月、そして直前の 8 月と、テストイベン
ト等の機会をとらえ、招致本部及び招致委員会職員は、北京入りした。
これらの事前情報により、戦略的な準備を行うことができ、8 月・9
月の大会本番時には、効果的な活動ができた。
6 競技会場計画に関する IF との交渉経緯
(1) 関係する 26 の IF が集まる北京オリンピック
立候補ファイルに記載する競技会場については、その会場を使用する
ことに対する各 IF の同意書を取得して IOC に提出する必要がある。IF
の決定権者(会長、専務理事、事務局長、技術部長等 IF により異なる)
に計画を説明し、助言を受けるには、日本に招聘し現地視察を実施する、
IF 本部を訪問する等のほか、国内外で行われる国際大会等の機会を利用
して訪問、説明する方法があるが、こうした機会の中では、言うまでも
なく、すべての競技の IF が集まるオリンピック競技大会が最大のもので
ある。また、時期の面でもオリンピックの開催時期は立候補都市選定直
後であり、具体的な交渉を開始する良いタイミングと言える。
今回の招致活動中に開催された北京大会は、日本から近い開催都市で
あったこともあり、この機会を最大限に活用することとし、JOC 本部ホ
テル内に競技・施設計画チームの拠点を設けて、IF との交渉、競技計画
の即時改善と同意取得作業を進めた。
(2)
準備段階での検討事項
オリンピック競技大会は、立候補都市にとっては各 IF との協議を集中
的に進める好機であるが、一方で IF 側にとっては 4 年に一度の大イベン
トの最中であり、非常に多忙な期間である。また、今回であれば 4 立候
補都市が同様に打合せを希望するため、IF の決定権者との打合せの時間
を確保することが第一のステップとなる。
打合せに参加するメンバーの選定も重要である。まず計画の内容を熟
知し、充分に説明できる者、IF からの様々な要求、要望にどう対応する
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第一部 第3章
立候補都市段階
か判断の出来る立場の者、計画の説明に限らず、一貫して IF との窓口を
務める担当者が必要である。加えてこれらのメンバーがすべて充分な語
学力を備えていることが望ましいが、適任者がいない場合、次善の対応
が必要である。
メンバーの選定に関連して人数の設定も重要な課題となる。IF との打
合せ場所として競技会場内の IF 事務所を指定された場合等、ADカード
が必要となるが、オブザーバープログラムのメンバーが兼ねるにせよ、
IF から臨時のADカードの発行を受けるにせよ、多数への対応は困難だ
からである。
技術的な支援体制として、IF の要望に応じた計画図面の修正等を大会
期間中に行える体制の準備も必要である。
(3)
IF 交渉の実施体制
招致委員会では、IF との接触が本格化する申請ファイル提出後に、計
画説明、プロモーションを通じて東京の顔となるスポーツディレクター
を任命し、IF チームを発足させた(詳細は P129 第 1 部第 3 章第 2
節 5 参照)。北京オリンピックに向けては 3 名体制で IF との日程調整に
入り、立候補都市選定直後からオリンピック期間中を通じて同意の取得
作業を継続した。
打合せメンバーは招致委員会のスポーツディレクターとそのアシスタ
ント、招致本部の計画調整担当部長、競技計画課長を最小限のメンバー
とし、競技毎に担当の副参事又は主査が同行する体制とした。このため、
オブザーバープログラムとの兼務は困難であり、AD カードが必要な場
合は IF から臨時に発行を受けることとなった。実際には IF の宿泊する
ホテル内の会議室やロビー等、AD カードの不要な会場を設定すること
を基本とした。
また現地に競技会場設計の担当職員が常駐し、計画図面や資料の修正
等に即応した。
(4)
多数の IF と打合せを実施
北京オリンピック期間中に 17 競技の IF と接触し、計画の説明を行っ
た。IF から受けた助言については現地で対応の方向性を固めた上で、大
会終了後図面化と必要な調整を行い、それぞれの IF に同意を求めた。大
会中に計画の説明ができなかった IF に対しては大会後も継続的に働き
かけを行い、そのうちの多くは 9 月以降に東京に招聘して現地視察を実
施する等、円滑な調整を行うことができた。結果として平成 21(2009)
年 1 月初旬までに必要な全 26 競技の IF からの同意書を他の立候補都市
に先駆けて取得することができた。
85
第一部 第3章
立候補都市段階
(5)
さらに効果的に IF 交渉を行うには
IFとの接触は極力早い段階で開始することが望ましい。可能であれ
ばオリンピック前に一度計画の説明をして意見をもらい、オリンピック
ではそのフィードバックをするという手順が理想である。各 IF からは観
客席数の増加など様々な要求、要望が示されるが、その解決に充分な調
整期間の確保が必要なためである。但し、立候補都市選定以前の IF との
接触には行動規範による制限があるため、日頃からの NF と IF の良好で
緊密な関係構築が重要となる。
AD カードについては計画担当者の少なくとも 1 名は全会場に入場可
能なオブザーバープログラムの AD カードを保有すべきである。IF の要
望でどうしても競技会場で打合せを行う必要がある場合も想定できるう
え、観戦チケットでは立ち入ることのできない関係者エリアを確認する
機会も多い方が望ましいからである。前述のようにオブザーバープログ
ラム自体が非常に有益であるため、NOC 保有の AD カードの活用も含
め、オブザーバープログラムと IF 調整とでの割り振りを慎重に検討する
ことが重要である。
なお、北京を舞台にした IF との調整においては、北京オリンピックの
会場設計や規模を前提とした議論が IF 側から提起されることが自然の
流れであった。今後の招致活動においては、IF 調整の舞台となるオリン
ピック(例えば 2020 年大会招致を目指す場合には、2012 年ロンド
ン大会)の会場について十分に研究し、IF の要求への対応を検討してお
くことが必要となる。
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第一部 第3章
立候補都市段階
第2節 開催計画(立候補ファイル)
【事業費 1,142 百万円】
1 立候補都市マニュアルの概要
(1) 立候補都市マニュアルの構成
平成 20
(2008)年 6 月の IOC 理事会による4立候補都市の選定後、
IOC は「2016 年立候補都市マニュアル」を提示・公表した。
立候補都市マニュアルは、立候補都市に対し、IOC が規定する招致過
程の第2段階の手順を示す文書であり、平成 21(2009)年 10 月の
開催都市決定までの立候補段階における様々な手続きが記載されている。
立候補マニュアルは、次の3つのパートで構成されている。
<立候補手続き>
招致過程の第2段階で立候補都市がなすべきことがまとめられてい
る。立候補都市段階でのスケジュールに加え、立候補都市が遵守すべ
き手続き、規則、期限が記載されている。
<IOC からの質問>
IOC に提出する立候補ファイルの構成について、詳細な質問及びそ
の回答に関して同時に提出する保証書の内容が記載されている。
<指示>
立候補ファイル等の文書様式について、詳細な指示が記載されてい
る。
(2)
開催都市決定までのスケジュール
立候補都市マニュアルで示されたスケジュールは以下のとおりである。
目 的
期 限
平成 20(2008)年 6 月 4 日
IOC 理事会による立候補都市の選定
(アテネ市)
立候補手順書への署名
平成 20(2008)年 7 月 3 日
立 候 補 都 市 手 数 料 の 支 払 ( 50 万 米 ド ル ) 平成 20(2008)年 7 月 3 日
オリンピック競技大会オブザーバ
ー・プログラム及び立候補都市に対す 平成 20(2008)年 8 月
るブリーフィング
IOC に立候補ファイル、保証書、誓約
平成 21(2009)年 2 月 12 日
書の提出
IOC 評価委員会の立候補都市訪問
平成 21(2009)年 3 月~5 月
IOC 評価委員会報告書
開催都市決定の 1 ヵ月以上前
平成 21(2009)年 10 月 2 日
第 31 回オリンピック競技大会開催都
第 121 次 IOC 総会(コペンハ
市の決定
ーゲン市)
87
第一部 第3章
立候補都市段階
(3)
IOC からの質問の主な内容
立候補ファイルは、17 テーマ、217 項目にも及ぶ IOC からの質問に
対する立候補都市の回答をまとめたものである。
立候補ファイルは、IOC が立候補都市の資格を評価し、その技術的特
性を分析する際に、保証書と並ぶ重要なツールとなる。
各テーマにおける主な質問内容は、下記表のとおりである。
IOC からの質問の主な内容
テーマ
1
2
3
4
5
6
7
8
9
主な内容
○大会を開催する主な動機
ビジョン、レガシー及び
○大会のビジョン(理念)
コミュニケーション
○大会のレガシー(もたらすもの)
○コミュニケーション戦略
○会場計画コンセプト
大会の全体的なコンセプ
○文化プログラム、ライブサイト
ト
○スポーツ振興策、オリンピック教育
○都市・国の政治社会経済状況
政治・経済の状況及び構造 ○大会開催への安定度(世論調査を含
む)
○オリンピック関連マークの保護状況
法的側面
○新たな法律制定の必要性
○オリンピック憲章等の遵守
○大会関係者のビザ免除
○大会必需品の関税免除
通関及び入国手続き
○大会関係者の労働許可
○円滑な入国・通関手続の実施
○再生可能エネルギー等、大会で導入
する環境技術
環境及び気象
○自然環境・文化遺産の保護・強化
○環境の保護・向上のための戦略
○財政保証
財政
○OCOG予算
○オリンピック組織委員会以外の予算
○国内スポンサーからの収入予測
マーケティング
○チケットの販売計画
○大会スポンサーの保護
○会場配置
競技及び会場
○施設整備計画
○大会開催実績
88
第一部 第3章
立候補都市段階
テーマ
10 パラリンピック競技大会
11 選手村
12
医療サービス及び
ドーピングコントロール
13 セキュリティ
14 宿泊施設
15 輸送
16 技術(情報通信)
17 メディア
主な内容
○会場配置
○障害者への配慮
○大会開催実績
○選手村のコンセプト
○選手村の周辺環境、各会場との位置
関係
○村内の主要施設の配置及び特徴
○住宅の間取り及び特徴
○保健医療制度
○オリンピック競技大会における医療
サービス提供体制
○ドーピングコントロール
○開催都市のセキュリティリスク
○政府からの支援(安全確保に対する
保証)
○セキュリティ体制と人員等の資源
○セキュリティ機関の警備経験
○開催都市の宿泊施設総客室数
○大会関係者の配宿計画
○宿泊料金のコントロール
○客室提供保証書の提出
○大会関係者輸送、観客輸送等の輸送
目標と運営のあり方
○輸送インフラの概要と整備計画
○大会運営に必要な通信インフラを提
供できる能力
○メディア運営のコンセプト
○IBC/MPC の施設概要
○メディア関係者の宿泊・輸送の考え
方
89
第一部 第3章
立候補都市段階
2 立候補ファイルの作成
(1) テーマ1 ビジョン、レガシー及びコミュニケーション
大会理念
平和に貢献する 世界を結ぶオリンピック・パラリンピック
大会コンセプト
世界最高の環境 ヒーローたちの檜舞台
ア 計画の概要
<オリンピックの開催動機>
・ 大会開催を通じ、都市と人間を再生する
「オリンピック競技大会の開催を通じ、都市と人間を再生するこ
とによって、新しい連帯を生み、日本そして世界が直面する危機を
克服する。」
<2016 年東京大会のビジョン>
・ 都市の中心で多様な価値を統合 - Uniting Our Worlds -
最高水準のスポーツを軸に、国際平和、調和、持続可能性、社会
正義といったオリンピックが象徴する様々な価値を統合する。
・ 最高のスポーツ体験 - All in Athlete Focus -
・ 都市環境の再生 - Green Urbanism -
世界初のカーボンマイナスオリンピックに挑戦する。
・ 豊かな交流の舞台 - Meet the People -
豊かな交流の中心となるライブサイトにおける体験は、人々にと
って忘れ得ないものとなり、人々の相互理解、ひいては世界平和に
も貢献するものとなる。
<2016 東京大会のレガシー>
・ 世代を超えて人々が結び付き、互いに支え合う社会
スポーツとオリンピックの価値である、努力を通じた自己変革、
公正さ、他者への尊重、夢に向かうこと、国際平和への希求が浸透
し、世代を超えた結び付き、コミュニティの発展、自信と活力に満
ちた社会が再生される。
・ 環境と共生する持続可能な都市の模範
都内公立小中学校において、児童が家庭での節電行動を報告する
環境教育が開始される等、環境に対する人々の意識や行動の変革が
促進される。
<アピールポイント>
・ 2016 年東京大会のビジョンと東京都の長期的な都市戦略である
「10 年後の東京」計画が完全に一致
・ 1964 年大会からの 50 年レガシー、2016 年から 50 年の合計
100 年、スポーツへの熱い思いが続く
90
第一部 第3章
立候補都市段階
<大会の経済波及効果 ※ >
全
国:2 兆 9,400 億円
東京都内:1 兆 5,500 億円
オリンピックスタジアムや選手村など主要施設がある結びクラスター
イ
IOC の要求事項
本テーマで求められるビジョンとは、オリンピック競技大会の開催
を希望する動機や大会の基本理念、総合的な構想等を意味する。立候
補ファイルでは、この点を国民及び IOC に対して分かりやすく説明す
る必要がある。
ウ 大会理念の明確化
ビジョン、レガシーについては、2016 年東京大会をどのような大
会とするかを表明するものであり、大会の根幹をなすとともに、その
内容は社会的、経済的、環境的な幅広い視点を含んだものでなくては
ならない。
特に、東京にとっては、夏季オリンピック競技大会の開催は、1964
年以来の 2 回目となることから、「何故東京で 2 回目のオリンピック
を開くのか。」という点を分かりやすく示す必要があった。
また、ビジョンやレガシーは、それだけで完結するものではなく、
ここで表明された内容が立候補ファイルのテーマ3以降の具体的な大
会開催計画と整合していなくてはならない。
加えて、IOC は、大会のビジョンが開催都市の長期的な戦略計画と
合致していることを求めており、立候補ファイルでこの点を明らかに
※ 国内選考段階から、施設整備や大会運営の条件が変化したため再算定している。
91
第一部 第3章
立候補都市段階
する必要があった。
エ グランドデザインチームでの検討
立候補ファイルの策定にあたっては、グランドデザインチームでの
検討結果を計画に落とし込む形で作成した。
具体的には、グランドデザインチームの各メンバーに個別にアドバ
イスを求め、各メンバーの専門分野ごとに得られたアイデアや提案内
容を基に計画づくりを進めた。
各メンバーからの提案内容を文書化することで、立候補ファイルの
原案を作成し、海外コンサルタントからの意見も反映することで立候
補ファイルの最終案を固めた。
都市の長期的な戦略計画との整合性については、都市、環境、安全、
文化、観光、産業など様々な分野における東京の目指すべき方向を示
した「10 年後の東京」計画との整合を図ることとし、「10 年後の東
京」計画で示した取組みを開催計画に反映させた。
オ 都市の戦略計画と一致した大会理念
グランドデザインチームによる検討結果を受け、「Uniting Our
Worlds」、「All in Athlete Focus」等、大会理念の骨格をまとめた。
特に、課題であった「何故東京なのか。」という問いに対しては、
「オ
リンピック競技大会の開催を通じ、都市と人間を再生することで、日
本、そして世界が直面している危機を克服する。」とし、1964 年か
ら半世紀が過ぎた今、東京が2回目のオリンピックを開催する意義を
明らかにした。
都市の長期的な戦略計画との整合性については、
「 海の森」構想や「カ
ーボンマイナスプロジェクト」等、
「10 年後の東京」計画で示された
計画がオリンピックの大会計画に組織的に統合され、時期的及び内容
的にも完全に合致したものとすることができた。
レガシーについては、1964 年からの 50 年と 2016 年から 50
年の 100 年にわたる「持続可能な 100 年レガシー」計画を策定した。
さらに、平成 21(2009)年 6 月のローザンヌ市でのテクニカル・
プレゼンテーションに向け、スポーツ、社会、環境、経済に及ぶ幅広
いレガシー計画をとりまとめた。
(2)
テーマ2 大会の全体的なコンセプト
ア 計画の概要
<大会日程>
・ オリンピック
2016 年 7 月 29 日から 8 月 14 日まで
・ パラリンピック 2016 年 8 月 30 日から 9 月 11 日まで
日程については、以下の理由により上記期間とした。
・ 穏やかで晴れた日が多いこと。
・ 学校夏季休業期間であり、子供たちが参加しやすく、大会中のボ
92
第一部 第3章
立候補都市段階
ランティアの協力が得られやすいこと。
・ 他の大きな国際競技大会の日程との関係で最適であること。
<アピールポイント>
・ 都市の中心で開催する、かつてないコンパクトなオリンピック
オリンピックスタジアムを中心とする半径 8km 圏内に、ほぼす
べての会場が集約された極めてコンパクトな会場配置
・ 幅広い参画により、文化の多様性を発展
豊かな交流の舞台となる 8 箇所のライブサイト
内外の市民や若者が担う多彩な文化プログラム
・ スポーツの振興、オリンピック教育の推進
スポーツ・文化振興交流基金を活用した次世代アスリートや指導
者の育成支援
「オリンピック学習読本」を活用したオリンピック教育の推進
・ 広島、長崎との連携
大会ビジョンである- Uniting Our Worlds -を大会のあらゆ
る側面に浸透させ、世界平和の理念を実現するため、広島、長崎に
おける事前キャンプ誘致や、連携事業を実施する。
全体コンセプト地図
93
第一部 第3章
立候補都市段階
イ
IOC の要求事項
本テーマで求められるコンセプトとは、テーマ1で示したビジョン
を具体化するための全体的な会場・施設の配置計画等を指し、これら
について一つずつその具体的内容を説明することが求められている。
オリンピック競技大会期間中、競技大会に加えて実施される文化イ
ベントやオリンピック教育プログラムについても、テーマ2で説明す
ることが求められている。
ウ 求められるコンパクトな会場計画
テーマ2のコンセプトで求められている会場計画については、近年、
IOC はコンパクトな競技会場配置を強く求めていることから、東京と
いう世界有数の大都市の中心で、IOC の要求に見合うコンパクトな会
場配置計画をまとめることが課題となった。
オリンピック文化プログラムやオリンピック教育プログラムについ
ては、文化行政や教育行政の視点を計画に反映させる必要があった。
エ 関係機関からの協力
会場の配置計画については、申請ファイル時点の計画に IF との調整
結果及び海外コンサルタントからの意見も反映することで立候補ファ
イルの最終案を固めた。
オリンピック文化プログラムについては、平成 19(2007)年 3
月に東京芸術文化評議会(座長:福原義春 (株)資生堂名誉会長)に対
し、文化プログラムの検討を諮問した。
教育プログラムについては、東京都教育委員会の協力も得、
「オリン
ピック学習読本」を作成し、都内の小学校、中学校、高等学校へ配布
した。
オ 極めてコンパクトな会場計画
会場計画については、半径 8km圏内にほぼすべての会場を集約す
る等、極めてコンパクトな会場配置計画を策定した。この結果、選手
の 88%が 20 分以内で会場に移動が可能となる等、選手にとって極
めて利便性の高い計画を提案することができた。この点については、
平成 21(2009)年 9 月に公表された IOC 評価委員会報告書でも非
常に高い評価を得ることができた。
文化プログラムについては、東京芸術文化評議会での議論や計 18
回に及ぶ文化事業検討部会での具体的な文化事業の検討結果を踏まえ、
平成 20(2008)年 8 月の第4回東京芸術文化評議会においてオリ
ンピック文化プログラムについての答申を得た。
(3)
テーマ3 政治・経済の状況及び構造
ア 計画の概要
<大会開催を支える安定した政治社会状況>
・ 閣議了解に加え、全国知事会、特別区長会、市長会、町村会等の
94
第一部 第3章
立候補都市段階
決議など、国、関係自治体からの強力な支援
・ 東京商工会議所、商店街連合会、医師会、スポーツ・文化団体、
町会連合会など約 570 団体からの支援表明
<東京及び国の安定した経済状況>
・ 開催都市である東京都の強固な財政基盤
・ 4,000 億円の東京オリンピック・パラリンピック開催準備基金
<低いインフレ率と安定した為替レート>
・ 物価上昇率を 0%から 2%程度を目安にコントロール
・ 為替相場は過去 1 年間、概ね 1 米ドル 100 円から 110 円の間
で推移
<世論の支持(平成 21(2009)年 1 月実施の世論調査結果)>
・ 国民の 70%が招致を支持
・ 都民の 69%が招致を支持
イ IOC の要求事項
本テーマでは、都市及び国の政治・経済状況、大会招致に対する政
府や関係自治体・世論の支持など、大会を確実に開催できる政治・経
済及び社会状況にあるかが問われている。
ウ 必要な国を挙げての幅広い支援
日本の GDP は、世界第 2 位である。東京はその 18%を占め、大
会開催を支える安定した政治社会状況は整っている。こうした状況を
前提としつつ、政府や関係自治体・関係団体及び国民からいかに多く
の支援を得ていくかが課題となった。
エ 関係機関への支援要請
(ア) 政府への支援要請
オリンピック・パラリンピック競技大会の招致及び大会の成功に
は、政府の支援が不可欠であるため、政府に対しあらゆる機会を活
用した要請活動を行い、東京招致に対する閣議了解を得た。
(イ) その他関係自治体・民間団体等への協力依頼
全国知事会、特別区長会、東京都市長会・町村会等において開催
計画を説明し、協力を求めた。また、サッカー予選開催都市(札幌
市、さいたま市、横浜市、大阪市)や各種関係団体に対しては個別
に説明し、協力を求めた。
オ 東京招致支援の広まり
閣議了解に加え、全国知事会、特別区長会、市長会、町村会等の決
議など、国、関係自治体からの強力な支援を得た。また、東京商工会
議所、商店街連合会、医師会、スポーツ・文化団体、町会連合会など
約 570 団体から支援を得た。
平成 21
(2009)年 1 月に実施した世論調査によれば、国民の 70%、
都民の 69%が東京でのオリンピック・パラリンピック開催を希望し
ている。
95
第一部 第3章
立候補都市段階
カ
(4)
IOC による世論調査への対応
IOC が開催計画を評価するにあたっては、国・関係自治体・関係団
体から強力な支援を得ているか、また、幅広い世論の支持を得ている
かが、一つのポイントとなる。国の支援については、閣議了解に加え、
国会決議を早期に採択し、立候補ファイルに盛り込むことで、さらに
IOC の高い評価を得ることができる。
IOC は、世論の支持について独自調査を行うが、その時期は明確で
ない。このため、早い時期から招致気運の盛り上げを図っていくこと
が必要である。
テーマ4 法的側面
ア 計画の概要
<オリンピック・マーク等の適切な保護>
・ 日本国内においては、既に知的財産保護制度が確立
・ IOC の知的財産を商標法、不正競争防止法により厳格に保護
・ 「TOKYO2016」マークも法的に保護
<大会開催に万全の現行法制度>
・ オリンピック開催に適合した法体制が既に確立しており、新たな
法制定を必要としない
・ 長野冬季オリンピック大会の開催実績
<「オリンピック憲章」等を遵守>
・ 国、東京都、サッカー予選会場となる 4 都市が遵守を約束
イ IOC の要求事項
本テーマでは、オリンピック憲章等の遵守、新たな法律制定の必要
性、オリンピック関連マークの保護状況、大会開催にあたっての組織
体制などが問われている。
ウ 国内法制との整合
日本は過去 3 度、近くは 1998 年に長野冬季オリンピックを開催
しており、既に 2016 年のオリンピック開催に適した法制度が整備さ
れている。また、知的財産権に関する法制度も確立している。
組織体制については、1998 年長野大会でも採用された、すべての
分野を OCOG が担う我が国がこれまで培ってきた一般的な組織体制
に対し、IOC は、セキュリティや輸送などの専門分野を OCOG とは
別の組織が担うとともに、それぞれの組織が適正に事業推進及び連携
するヨーロッパ的と言われる体制を求めていた。
エ 海外コンサルタント、関係機関からの意見聴取
組織体制については、海外コンサルタントから IOC が高く評価する
ポイントのアドバイスを受けるとともに、各専門分野における関係機
関との意見調整を行い、両者のメリットを融合させた組織体制を検討
した。
96
第一部 第3章
立候補都市段階
オ
(5)
IOC の要求に適合する組織体制の構築
セキュリティ、輸送及び競技会場整備の各専門分野について、現行
の組織体制を維持し、それぞれが OCOG とは別の組織として責任を
持って事業を推進するとともに、それぞれの組織の責任者による調整
会議を設け、相互の連携や調整を可能にすることで、IOC の求める組
織体制を構築した。
テーマ5 通関及び入国手続
ア 計画の概要
<大会関係者の入国手続>
・ 大会期間中、AD カードを所持するすべての大会関係者に対し、
入国時のビザを免除
<大会必需品に対する関税>
・ IOC や各 IF、各国 NOC 及びその代表団、報道関係者、スポンサ
ーが輸入する大会必需品については、関税を免除
<大会関係者の労働許可>
・ 大会の準備・運営組織に必要な要員については、入国の際に国内
での就労が可能な「在留資格」が与えられ、入国と同時に国内での
労働が可能
<円滑な入国・通関手続>
・ 関係機関と大会組織委員会が協力・連携し、各国代表団の入国・
通関手続を支援(検疫、入国審査、通関、事前の輸入許可申請など)
イ IOC からの要求事項
本テーマにおいては、大会関係者の入国手続、大会関連物資の通関
手続を迅速かつ円滑に行うこと、及びこれらを確実に実行するため、
関係機関の保証を得ることが求められている。
ウ 入国通関手続に関する IOC の高い要求
前テーマで述べたとおり、大会を円滑に行うための法制度は基本的
に整備されている。したがって、計画の枠組みは当時のものから大き
く変更する必要はない。
しかし、当時と比べて、IOC の要求がより高度になっているもの(例
えば、スポンサーが輸入する消耗品の関税免除)や、国際情勢の変化
に伴い入国管理・貿易政策において規制強化(例えば、外国人に対す
る個人識別情報の提供化)が図られているものがある。
とりわけ入国通関手続は、テロ未然防止対策としてきわめて重要で
ある。立候補ファイルで問われていることはもとより、大会開催時に
は他にも様々な問題が生じることが懸念される。これら多岐にわたる
問題について、関係機関と協議し、それぞれ具体的な解決策を導き出
すことが、計画への了解及び政府保証を得るためには不可欠である。
97
第一部 第3章
立候補都市段階
エ 計画策定にあたっての対応方針
(ア) 過去の事例の調査・分析
1998 年長野冬季オリンピック、2002 年 FIFA ワールドカップ
で選手や物資の輸送を担当した企業を通じ、両大会の実施計画や実
施状況を調査・分析するとともに、2016 年大会に向けて予想され
る問題点の解決策を検討し、立候補ファイル等の計画案を作成した。
(イ) 関係機関との協議
法務省、外務省、財務省、厚生労働省、農林水産省等、すべての
関係機関と協議を重ね、計画への理解と支援を求めた。
オ 関係機関との合意形成
立候補ファイルへの回答はもとより、計画の枠組みから実施に向け
た具体案に至るまで関係機関との間で認識を共有することができた。
その結果、法務省、外務省、財務省から保証を取得することができた。
カ より円滑な関係機関調整へ向けて
入国通関手続の事務は、基本的に国の所管であり、関係機関は非常
に多い。そのため、関係機関と協議しながら入国通関計画を立案する
には、担当者自身が関係法令の知識のみならず、具体的な事務手順等
も含め制度全体についてしっかりと理解しておく必要がある。
(6)
テーマ6 環境及び気象
ア 計画の概要
<環境負荷の最小化(世界初のカーボンマイナスオリンピック)>
最先端の環境技術を駆使し、大会に伴って発生するカーボン(炭素)
以上の分量を削減
・ 太陽光や風など、自然エネルギ
ーを活かした施設
・ 高効率化・省エネ技術導入、再
生可能エネルギー活用
・ 公共交通機関活用、最新鋭の無
公害・低公害車など、環境にやさ
しい交通・輸送システム
・ 包括的な廃棄物ゼロ施策の推進、
汚水の高度処理による再生処理水
の活用
98
電気自動車
第一部 第3章
立候補都市段階
太陽光発電パネルが設置されるオリンピックスタジアム
<自然と共生する都市環境の再生>
・ 「海の森」をはじめ、1,000ha の緑を新たに創出
・ 水と緑の回廊に包まれた都市・東京を再生
・ 東京湾のさらなる水質改善、生物多様性の維持発展
緑の回廊に包まれた都市・東京
99
第一部 第3章
立候補都市段階
<スポーツを通じた持続可能な社会づくり>
・ オリンピアンやパラリンピアンによる環境キャンペーン、環境学
習
・ 環境にやさしい製品やサービスを優先的に使用
・ バックヤードツアー、環境展示等、大会そのものを環境技術のシ
ョーケースに
イ IOC からの要求事項
本テーマにおいては、大気質・水質の実績、大会における総合的な
環境対策や導入を予定する環境技術、エネルギーの効率的な利用等の
ほか、気温・湿度等の気象に関するデータが求められている。
ウ IOC から求められる総合的な環境対策
質問の中でも特に重要と考えられたのが、大会組織委員会が計画す
る総合的な環境対策に関する回答であった。
都市の長期的な環境戦略と合致するとともに、具体的かつ実効性あ
る環境対策を構築する必要がある。そのためには、様々な関係者との
連携と合意形成の下、積極的な協力を得ていくことが不可欠である。
また、国内選考の段階から提唱していたカーボンマイナスオリンピ
ックを実現するための、基本的な考え方や具体的手法等を検討する必
要があった。
エ 環境最優先のオリンピックの提案
東京都は、環境最優先のオリンピックを実現するマスタープランと
して環境ガイドラインを策定し、大会の準備段階から大会期間中、大
会後に至るまでの環境対策の指針や主な取組を取りまとめた。
環境ガイドラインの3つの柱として、①環境負荷の最小化(世界初
のカーボンマイナスオリンピックの実現)、②自然と共生する都市環境
の再生、③スポーツを通じた持続可能な社会、を掲げた。
環境ガイドラインに盛り込むべき内容については、学識経験者や環
境 NGO で構成する環境専門家会議を設置して検討するとともに、環
境 NGO を主体とする環境アドバイザリー会議を開催し幅広く助言や
提案を求めた。
また、カーボン(炭素)排出量の算定ルールや削減対策の具体的手
法を示す「カーボンマイナスガイドライン」を策定した。
さらに、環境分野の専門家の意見を踏まえ策定した「オリンピック
環境アセスメント指針」に基づき、すべての競技会場、IBC/MPC、
選手村を対象として、環境項目(主要環境質、生態系、温室効果ガス
等)及び社会・経済項目(土地利用、交通、経済)について、初期段
階の環境アセスメントを実施した。学識経験者で構成する評価委員会
で審査した結果、すべての会場でネガティブな影響は環境対策により、
回避または軽減が可能であり、積極的な環境対策によるポジティブな
影響が期待できることが確認された。
100
第一部 第3章
立候補都市段階
スポーツイベント等におけるカーボン排出量の算定については、世
界的に広く認知されたルールはない。このため、過去の大会等と比べ
て一層厳しい基準を採用し、厳格かつ広範な算定を行った。また、こ
れに基づき発生源ごとに先進的で徹底した削減対策を講じることによ
り、トータルでカーボンマイナスを実現する計画とした。
オ
オリンピックにふさわしい新たな環境ビジョンの構築
自然と都市活動が調和した環境先進都市モデルを提示し、スポーツ
を通じた持続可能な社会づくりというオリンピックにふさわしい環境
ビジョンを構築することができた。
中でも「カーボンマイナスガイドライン」は、今後の大きなスポー
ツ大会や国際イベント等における一つの評価指標ともなる。
カ 関係機関の協力体制の構築
環境最優先のオリンピックを実現するためには、環境局等庁内との
連携はもとより、早い段階から学識経験者や環境 NGO の参画を求め、
協働関係を構築していくことが重要である。
一方、IOC の考え方や志向性に詳しい海外コンサルタントのアドバ
イスによれば、IOC 委員が重視するのはアスリートがより良いパフォ
ーマンスを発揮できる大気質や気象条件である。そのため、あくまで
もスポーツを主軸として、競技に専念できる条件整備に資する環境計
画であること、NGO 等が計画づくりに参画し中心的な役割を果たし
ていること、を印象づけることが必要である。
(7)
テーマ7 財政
ア 計画の概要
<TOCOG 予算>
収入:3,100 億円
(内訳)
項 目
IOC 分配金
スポンサー収入
チケット収入
ライセンス関係
その他
金額
内 容
(億円)
1,090 テレビ放映権料や IOC スポンサ
ー収入を原資に IOC から分配
730 国内のスポンサーからの収入
780 チケットの売上げ収入
120 オリンピックグッズの販売手数
料
380 寄付金、手数料収入等
101
第一部 第3章
立候補都市段階
支出:3,100 億円
(内訳)
項 目
仮設整備費
大会運営費
その他
金額
内 容
(億円)
820 競技会場、選手村、IBC/MPC の
仮設整備費
1,810 開閉会式、輸送及びセキュリテ
ィ関係費用、人件費等
470 IOC へ支払うオリンピック・マ
ーク使用料等
<政府及び東京都の財政的支援>
・ TOCOG が資金不足に陥った場合の補填について、政府及び東京
都知事から保証書を取得
政府の財政保証
2009 年 2 月 3 日
国際オリンピック委員会会長
ジャック・ロゲ伯爵
拝啓
日本国政府は、東京オリンピック組織委員会に財政赤字が生じた
場合、関係国内法令に従って、最終的に赤字を補填します。(保証
7.1)
敬具
日本国内閣総理大臣
麻生 太郎
<東京オリンピック・パラリンピック開催準備基金>
・ 大会開催に必要となる競技施設やインフラの整備に充てるため、
4,000 億円の東京オリンピック・パラリンピック開催準備基金を確
保
イ
IOC の要求事項
本テーマでは、大会運営の財政収支に関わる見積り(OCOG 予算)
及び競技会場や道路等のインフラ整備に関わる設備投資予算見積り
102
第一部 第3章
立候補都市段階
(非 OCOG 予算)、さらに、運営予算を担保するため、OCOG が資
金不足に陥った場合の関係当局による財政保証を得ること等が求めら
れている。
ウ 財政計画策定に必要となる基本情報の不足
OCOG 予算、非 OCOG 予算とも、各予算項目の積算根拠となる包
括的なデータ(補足明細資料)も含めて IOC に提出することが必要で
あったため、どのような項目をどのように見積もるのか、基本的な情
報が不足していた。
また、IOC から評価される財政計画とするには、政府による財政保
証が極めて重要であることから、その取得へ向けた政府との協議が課
題となった。
エ IOC 事務局及び海外コンサルタント等からの意見聴取
OCOG 予算の作成にあたっては、海外コンサルタント等の専門家の
知見・情報を活用するとともに、過去に開催されたオリンピック等の
予算情報を収集した。非 OCOG 予算に関しては、新たに整備・改修
する必要のある競技会場の施設整備費を詳細に検討し、適切に見積も
った。また、北京オリンピックの際に、IOC から IOC 事務局と個別ミ
ー テ ィ ン グ を 行 う こ と も 可 能 で あ る と の 連 絡 が あ り 、 平 成 20
(2008)年 11 月にスイス連邦ローザンヌ市の IOC 本部を訪問し、
IOC の財務・運営担当部長と直接、意見交換を行い、予算見積りのブ
ラッシュアップを図った。
政府の財政保証に関しては、事務レベルの協議だけでなく、知事を
はじめ、招致委員会理事らから強力な働きかけを行い、政府の理解を
求めた。(財政保証の取得に関する政府との調整については、P131
本節 6 参照)
オ 実現性の高い予算計画の策定
OCOG 予算、非 OCOG 予算とも、収集情報を基に適切に見積もっ
た結果、詳細で実現性の高い予算計画を作成した。
さらに、過去には例のない、政府によるオリンピック競技大会運営
予算に対する財政保証を取得することもできた。競技会場等の整備に
要する資金について既に東京都が積み立てを行っている 4,000 億円
の基金と併せて、東京の財政計画に関する高い信頼と評価を得ること
ができた。
カ 今後に向けてのアドバイス
OCOG 予算、非 OCOG 予算及び各予算項目の積算根拠となる包括
的なデータ(補足明細資料)の作成には、専門的な情報はもとより、
関係部署すべてとの緊密な調整、膨大な作業が必要となるため、早期
に取組を開始する必要がある。
103
第一部 第3章
立候補都市段階
(8)
テーマ8 マーケティング
ア 計画の概要
<国内スポンサーシップ計画>
・ 幅広い企業を対象としたマーケティングによりスポンサー収入を
最大限に確保
<チケット販売戦略>
・ スタジアムを満員にするための様々な工夫
手頃なチケット価格設定や子供料金の設定により販売率を引き上
げ、IT を活用した空席情報提供等により競技直前までチケットを販
売
<屋外広告の徹底した管理>
・ 屋外広告物条例など既存制度を最大限に活用
・ 大会関係施設周辺、関係者アクセスルートに存在する広告スペー
スの管理
イ IOC からの要求事項
オリンピック・マーケティングの一元化を図るため、立候補都市と
JOC との間で JMPA※ を締結すること、アンブッシュ・マーケティン
グ ※ の防止に必要な法規制が整備され確実に実施されること、立候補
都市内の屋外広告を OCOG が管理できるよう保証書を取得すること、
加えて、チケット販売、記念硬貨発行など、オリンピックのマーケテ
ィング計画とそれに伴う収入計画の説明が求められている。
ウ オリンピック・マーケティングへ向けた準備
JMPA の締結に先立ち、OCOG と JOC との間で、スポンサーシ
ップ収入の配分割合を決定すること、IOC が求めるアンブッシュ・マ
ーケティング対策を担保すること、屋外広告スペースの各々の所有者
から保証書を取得することが求められたため、交渉に多大な労力と膨
大な作業が必要となった。
エ 関係機関との調整
JOC への配分割合は、毎年の JOC マーケティング収入額及び長野
大会等での実績を参考にしつつ、事務レベルの複数回の協議の後、
JOC との間で合意し、最終的に IOC の了承を得た。
アンブッシュ・マーケティング対策については、不正競争防止法、
屋外広告物条例等の既存の法令の枠内で取り組むこととし、その実効
性を担保するための保証書を経済産業省、関係自治体から取得した。
※ JMPA:Joint Marketing Program Agreement(ジョイント・マーケティング・プログラム・
アグリーメント)の略。大会期間中、JOC のマーケティングを大会組織委員会のマーケティング
へ統合するための協定を指す。JMPA において、OCOG から JOC へのマーケティング権利の対
価として支払われる配分額を定める。
※ アンブッシュ・マーケティング:オリンピックスポンサー以外の企業によるオリンピックスポン
サーのマーケティング活動に対する妨害行為のこと。これを防止するため、IOC は、競技会場周
辺における非オリンピックスポンサー企業による広告掲示を排除すること等を求めている。
104
第一部 第3章
立候補都市段階
加えて、個別広告の管理については、非常に広範な作業となることか
ら、広告代理店のノウハウを活用して作業を進めることとした。実施
にあたっては、業界団体からの協力も得つつ、会場周辺・会場最寄駅
周辺・関係者移動ルート等から視認できる主要な屋外広告、電車・バ
ス・タクシーの車内広告、空港内広告スペースの所有者と個別交渉を
行い、屋外広告所有者 37 社、公共交通関係 31 社から、大会期間中
の広告スペースを提供する旨の保証書を取得した。
収入計画については、堅実な見積りを行った結果、IOC 評価委員会
報告書では「東京のマーケティング計画の内容及び収入目標は、極め
て妥当で実現性が高い」という表現で、高い評価を得た。
オ より効率的なアンブッシュ・マーケティング対策の実施へ向けて
屋外広告管理については、対象範囲が広範なため、その絞り込みが
必要であり、保証書も事業者が受け入れることが困難な内容を含んで
いるため、業界団体の支援と所有者との早期の交渉開始が必要となる。
(9)
テーマ9 競技及び会場
ア 計画の概要
「世界一コンパクトな会場配置」をコンセプトに、オリンピックス
タジアムを中心に半径 8km 圏内に殆どの競技会場等を配置した計画
である。選手が競技に集中でき、すべての選手が最高の力を発揮でき
る「ヒーローたちの檜舞台」を東京の中心に実現する。
さらに、1964 年大会のレガシー(遺産)や都立施設を中心とした
既存会場を活用するとともに、新設及び仮設会場の建設予定地はすべ
て公有地で確実に実施可能な計画とした。
<アピールポイント>
(ア) 世界一コンパクトな配置
・ 半径 8km 圏内に 2 ゾーン、5 クラスターを設置し、射撃、サッ
カーを除くすべての会場、選手村などを配置
・ 約7割の選手が選手村から各競技会場に 10 分以内で到着
・ 殆どの選手が選手村から練習会場に 30 分以内で到着
・ 会場用地はすべて既に確保され、用地買収の必要なし
(イ) 環境を重視した会場計画
・ 競技会場の約 7 割は 1964 年大会のレガシー(遺産)など、既
存会場を利用
・ 各クラスターは公園等を活用し、緑豊かな会場づくりを進める
・ 最先端の環境技術を活用
(ウ) 豊富な大会経験
・ 多くのボランティアや豊富な競技運営の専門家に支えられ、毎年
多くの世界的なスポーツ大会を開催
105
第一部 第3章
立候補都市段階
<競技施設等整備に要する経費>
(ア) 競技施設
・ 恒久施設整備費
2,269 億円
・ 仮設整備費
649 億円
(イ) IBC/MPC
・ 恒久施設整備費
151 億円
・ 仮設整備費
49 億円
※既存会場を最大限活用し施設整備費を抑制した。また、新設施設は大
会後も国民の財産として活用することとし、国庫補助等を最大限活用。
会場配置図
106
第一部 第3章
立候補都市段階
競技会場
No.
競技/種別/種目
競技会場
練習会場
練習会場
No.
練習会場
結びクラスター
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
陸上競技
1
オリンピックスタジアム
サッカー
2
東京ビッグサイト・ホールA
3
東京ビッグサイト・ホールB
4
有明テニスの森
5
お台場海浜公園
レスリング
フェンシング
6
潮風公園
代々木クラスター
7
代々木公園アリーナ
テコンドー
テニス
トライアスロン
オリンピックスタジアム投てき練習場
東京大学陸上競技場
代々木公園陸上競技場
江戸川区陸上競技場
都立つばさ総合高等学校
駒沢オリンピック公園総合運動場
秩父宮ラグビー場
辰巳の森海浜公園ラグビー場
港区スポーツセンター
東京武道館
亀戸スポーツセンター
東京ビッグサイト
品川区立戸越体育館
目黒区民センター体育館
目黒区立駒場体育館
有明テニスの森
お台場海浜公園
31
東京辰巳国際水泳場(辰巳の森海浜公園)
水泳(マラソン 10km)
ビーチバレーボール
31
18
東京辰巳国際水泳場(辰巳の森海浜公園)
潮風公園
バレーボール
19
駒沢オリンピック公園総合運動場(体育館)
20
21
22
23
24
6
7
8
文京スポーツセンター
荒川区総合スポーツセンター
江東区スポーツ会館
江戸川区スポーツセンター
有明スポーツセンター
駒沢オリンピック公園総合運動場
秩父宮ラグビー場
辰巳の森海浜公園ラグビー場
25
26
27
28
講道館
深川スポーツセンター
荒川河川敷
東京国際フォーラム
29
30
31
31
32
31
31
31
国立代々木競技場室内プール
巣鴨スポーツセンター
東京辰巳国際水泳場(辰巳の森海浜公園)
東京辰巳国際水泳場(辰巳の森海浜公園)
東京体育館プール
東京辰巳国際水泳場(辰巳の森海浜公園)
東京辰巳国際水泳場(辰巳の森海浜公園)
東京辰巳国際水泳場(辰巳の森海浜公園)
33
夢の島競技場
34
35
36
12
37
38
39
40
41
42
43
44
45
46
夢の島公園
千代田区立スポーツセンター
中央区総合スポーツセンター
東京ビッグサイト
品川区立総合体育館
大森スポーツセンター
(仮称)大田区総合体育館
青山学院記念館(兼大学体育館)
新宿コズミックスポーツセンター
新宿スポーツセンター
早稲田大学記念会堂
上智大学体育館
台東リバーサイドスポーツセンター
目黒区中央体育館
33
47
48
48
49
49
夢の島競技場
海の森クロスカントリーコース
海の森水上競技場
海の森水上競技場
海の森自転車コース
海の森自転車コース
8
国立代々木競技場
ハンドボール
9
東京体育館
卓球
10
国立霞ヶ丘競技場
サッカー
パレス・クラスター
11
日本武道館
12
皇居外苑
13
東京国際フォーラム
夢の島クラスター
柔道
自転車競技(ロード・レース)
ウエイトリフティング
水泳(競泳)
14
東京辰巳国際水泳場
(辰巳の森海浜公園)
15
夢の島競技場
16
夢の島公園
17
夢の島ユース・プラザ・アリーナA
18
夢の島ユース・プラザ・アリーナB
19
夢の島ユース・プラザ・アリーナC
水泳(飛込)
水泳(水球)
水泳(シンクロナイズドスイミング)
近代五種(水泳)
馬術(馬場馬術)
馬術(障害馬術)
アーチェリー
バドミントン
近代五種(フェンシング)
バスケットボール
体操(体操)
体操(新体操)
体操(トランポリン)
海の森クラスター
20
海の森クロスカントリーコース
21
海の森水上競技場
22
海の森自転車コース
その他の競技会場
23
国技館
24
葛西臨海公園
25
若洲オリンピックマリーナ
26
大井自転車競技場
27
大井ホッケー競技場
28
大井競馬場
29
陸上自衛隊朝霞訓練場
馬術(クロスカントリー)
ボート
カヌー(フラットウォーター)
自転車競技(マウンテンバイク)
自転車競技(BMX)
ボクシング
カヌー(スラローム)
セーリング
自転車競技(トラック・レース)
ホッケー
近代五種(馬術、ランニング、射撃)
射撃
30
東京スタジアム
サッカー
31
札幌ドーム
サッカー
32
埼玉スタジアム2○○2
サッカー
33
横浜国際総合競技場
サッカー
34
大阪長居スタジアム
サッカー
107
50
51
52
53
54
55
56
6
7
8
(57)
(58)
(59)
(60)
(61)
(62)
(63)
墨田区総合体育館
葛西臨海公園
若洲オリンピックマリーナ
大井自転車競技場
大井ホッケー競技場
大井競馬場
陸上自衛隊朝霞訓練場
駒沢オリンピック公園総合運動場
秩父宮ラグビー場
辰巳の森海浜公園ラグビー場
白旗山競技場
札幌サッカーアミューズメントパーク
埼玉スタジアム第2・第3グラウンド
横浜国際総合競技場小机フィールド
三ツ沢公園球技場
舞洲運動広場内球技場
大阪長居第2陸上競技場
第一部 第3章
立候補都市段階
イ
IOC の要求事項
本テーマでは、オリンピック競技のスケジュール、競技会場計画、
整備スケジュール等について策定するとともに、電力の供給体制、大
会要員の確保や育成、競技大会の開催実績について説明することが求
められた。
また、競技会場について、各関係者から様々な書類を取得して IOC
に提出することとされた。
競技会場に関する保証書等必要書類
発 行 主 体
内
容
IF
当該会場の使用に関する同意書
施設所有者
会場の使用と商業権に関する保証書
施設整備費の負担者 工事費用の資金調達に関する保証書
会場が公共機関所有 無償又は IOC により事前承諾された賃貸料で
の場合の所有者
OCOG が使用できるようにする旨の保証書
ウ
オリンピックならではの会場計画の特殊性
競技会場計画は開催計画の中心的要素であることから、施設所有者、
利用者等関係者の合意や、整備費等の諸条件を満たしながら、可能な
限り IOC へのアピールにつながるものとする必要があった。適切かつ
勝利につながる会場計画を策定するに当たって、次のような点が課題
となった。
(ア) オリンピックで必要とされる多数の大規模会場の確保と配置
オリンピックは世界最高の競技大会であり、そのための会場は全
26 競技の世界選手権を同時に開催するに匹敵する規模が必要とな
る。IOC の定める座席数の標準では、屋内会場(体育館等)で 4,000
席から 15,000 席、屋外会場で 4,000 席から 60,000 席(立見や
コース沿道での観戦など特殊なものを除く)の会場が複数求められ
ている。都内の既存会場の例を挙げると、都立の東京体育館が仮設
席を含めて最大 10,000 席、国立霞ヶ丘競技場が約 50,000 席で
ある。
また、円滑な選手輸送やセキュリティの確保のため、これらの会
場が極力選手村の近くに、複数会場が近接したクラスターを形成す
るように配置することが必要とされた。
(イ) 限られた期間での多数のIFとの調整
競技会場計画を立候補ファイルに記載するには、各競技の IF から
上記の同意書を取得する必要があるが、IOC の定める行動規範によ
り、IF の各都市への訪問が原則として立候補都市選定後(今回の招
致活動では平成 20(2008)年 6 月 4 日以降)とされており、立
108
第一部 第3章
立候補都市段階
候補ファイル提出までの期間が非常に短い。
また、会場計画の同意に関する決定権者である IF 会長、事務局長、
技術部長などは世界中で活動しており、複数の幹部に説明する必要
がある場合、その機会は非常に少ない。
(ウ) 国内関係者との調整
IOC、IF の要求水準は非常に高く、日本国内における通常の使用
形態を大きく越えたものである場合が多い。また、多数の会場が必
要となることから、会議場の利用や展示場、公園内への仮設など、
通常はスポーツ競技大会の会場とならない施設も使用しなければな
らない。
こうした条件の下、関係者との合意を形成し、さらに IOC の定め
る内容の保証書を取得することが必要とされた。
エ 既存施設等を活用した効率的な計画
(ア) 既存施設と都有地の活用
オリンピック競技大会にふさわしい会場計画とするため、出来る
限り選手村の近くに各競技会場・練習会場を設けるよう努めるとと
もに、クラスターを導入することで、輸送やセキュリティの面から
も、より運営しやすい計画を策定した。その中で、1964 年大会の
レガシーをはじめとする既存施設を現状のまま又は改修・建替えを
施して最大限活用するとともに、新設会場はもとより、仮設会場に
ついてもその予定地には公園等の公有地を活用することとして、整
備費の抑制と実現性の確保、環境との調和を図った。
また、新設会場についてはレガシーとしての価値についても十分
に調査・検討し、必要なもののみを恒久施設として整備することと
した。
(イ) 北京オリンピック等の機会を活用した効率的な IF 調整
立候補都市選定直後に開催された陸上競技、水泳の国際大会の場
で、それぞれの IF に対する計画説明を行ったほか、北京オリンピッ
クを IF との調整の最大の好機と捉え、この期間に集中して調整を行
った(P84 第 1 部第 3 章第 1 節 6 参照)。ここで 17 競技の IF
と接触することができたほか、北京オリンピックでの IF への働きか
けの方法を残りの IF に対してもその後も継続することで、円滑な調
整を実施した。
(ウ) 国内関係者との調整
都立をはじめとする公立施設を最大限活用し、商業権処理や利用
者調整の困難な民間施設の使用を極力抑制することで、施設所有者
等国内関係者との調整を円滑に進めることが出来た。また、各関係
者とは計画早期から緊密な情報共有を行うと共に、都の持つ人的な
ネットワークなどを活用して円滑な調整に努めた。
109
第一部 第3章
立候補都市段階
オ
他都市に先駆けて全 IF から同意書を取得
4立候補都市中、最も早く全 IF(任意で取得した IPC を含む)から
同意書を取得することができた(平成 21(2009)年 1 月プレス発
表)。また、各施設所有者等から、IOC から求められた保証書をすべ
て取得した。
アスリート本位でコンパクトな会場計画は IOC 評価委員会からも
高く評価され、東京の大きな強みとなった。
カ IOC 評価委員会の指摘と教訓
上述のように、改修や建替えを行うものも含めて既存施設を最大限
活用する計画を策定した。このうち、全面建替えとなる会場について、
①既存の敷地や交通インフラ等を利用できる、②後利用の観点で新設
会場とは異なる、といった利点があることから、海外コンサルタント
の意見も参考に、新設会場ではなく、
「既存会場(恒久施設工事が必要
なもの)」に分類し、IOC 評価委員会に対してもそのように説明した。
しかし、この分類は納得を得ることが出来ず、これらの施設は「新設」
と判断された。結果として評価報告書において「既存会場とされたも
ののいくつかで、新たに施設の建設が必要と判明した」との指摘を受
け、IOC から計画上の課題として挙げられることとなった。
こうした事態を招かぬよう、今後の計画策定においては、既存施設
であっても、全面建替えを伴うものについては、
「新設」に分類するこ
とが必要である。
110
第一部 第3章
立候補都市段階
(10)
ア
テーマ10 パラリンピック競技大会
計画の概要
真に選手のためのパラリンピック競技大会を実現することが計画の
根本にあり、オリンピック競技大会から連続した 60 日間の一つの祭
典として、パラリンピック独自の個性を持ちつつも、会場、選手村、
輸送等すべての面にわたってオリンピックと同等のサービスを提供す
る計画とした。
競技会場等はオリンピック競技大会で使用する際に、既にユニバー
サルデザインの観点から整備する計画であり、パラリンピック開催時
に増加が見込まれる車椅子対応のトイレ、観客席等の増設も円滑に実
施可能である。
また、パラリンピック開催を機に、東京のまち全体を、障害者や高
齢者をはじめとするすべての人々にとって、安全で快適に移動できる
ようにし、ユニバーサルデザイン都市・東京の実現を促進させること
もこの計画に含まれている。
パラリンピック競技大会の開催期間は、平成 28(2016)年 8 月
30 日の開会式から 9 月 11 日の閉会式までの 13 日間である。
<アピールポイント>
・ 半径 8km 圏内に射撃を除くすべての競技会場等を収めた世界一
コンパクトな配置
・ オリンピックと同じ競技会場、選手村、IBC/MPC、交通輸送を
使用
・ 会場、宿泊、輸送等、様々な点において、すべての人に優れたア
クセシビリティを提供
・ 1964 年東京大会以来、障害者スポーツに対する国民の高い関心
・ 障害者スポーツの十分な大会開催経験を有し、いずれも成功
イ IOC の要求事項
本テーマでは、パラリンピック競技大会のコンセプト、レガシー(遺
産)、競技日程、競技会場、交通輸送、宿泊、財政等、計画全体の詳細
説明が求められる。近年、パラリンピックはオリンピックと一体の大
会として、重要度・注目度が高まっている。そのため、オリンピック
と同様、十分に検討を加えた計画の策定が必要である。
また、計画・建設段階から一定水準以上のユニバーサルデザインの
基準を適用する旨の保証書及び国・地域政府・自治体その他の当局を
含むすべての財源負担者からの財政保証書の提出が求められている。
111
第一部 第3章
立候補都市段階
会場配置図(オリンピックと同じ競技会場、選手村等を使用したコンパクトな配置)
クラスター
会場名
クラスター
競技名
会場名
結びクラスター
1 オリンピックスタジアム
夢の島クラスター
陸上競技
14
2 東京ビッグサイト・ホールA パワーリフティング
ボッチャ
3 東京ビッグサイト・ホールB
車いすフェンシング
4 有明テニスの森
車いすテニス
5 お台場海浜公園
自転車競技(ロード・レース)
代々木クラスター
東京辰巳国際水泳場
(辰巳の森海浜公園)
水泳
15 夢の島競技場
馬術
16 夢の島公園
アーチェリー
夢の島ユース・プラザ・
17
アリーナA
夢の島ユース・プラザ・
18
アリーナB
夢の島ユース・プラザ・
19
アリーナC
車椅子バスケットボール
車椅子バスケットボール(決勝)
ゴールボール
海の森クラスター
7 代々木公園アリーナ
シッティングバレーボール
8 国立代々木競技場
ウィルチェアーラグビー
9 東京体育館
卓球
21 海の森水上競技場
ボート
単独会場
25
パレス・クラスター
11 日本武道館
競技名
若洲
オリンピックマリーナ
26 大井自転車競技場
柔道
セーリング
自転車競技(トラック・レース)
視覚障害者5人制サッカー
27 大井ホッケー競技場
※競技会場数:20
脳性麻痺者7人制サッカー
※オリンピックで使用する競技会場を使用するため、番号には欠番
がある
29 陸上自衛隊朝霞訓練場
112
射撃
第一部 第3章
立候補都市段階
ウ
立候補ファイルにおけるパラリンピックの位置付け
パラリンピック競技大会は IPC が主催する「もう一つのオリンピッ
ク」であり、オリンピック競技大会とは独立した大会である。現在で
は IOC と IPC との協定により、①オリンピック開催都市が引き続きパ
ラリンピックを開催すること、また②OCOG がパラリンピックの運営
も担当すること、が定められているため、立候補ファイルにもパラリ
ンピックに関する詳細な計画を記載する必要があるが、IPC 自体は直
接開催都市決定に関与するわけではない(IPC 会長は IOC 委員として
一票を投じる)。
したがって、計画策定に当たっては、パラリンピック競技大会と障
害者スポーツの歴史に関する正しい認識と、将来への展望を持つこと
が最も重要であった。特にオリンピック競技とパラリンピック競技を
どのように一体的に振興していくか、といった点については IPC の関
心が高く、オリンピック・パラリンピック招致の取組を超えた、障害
者スポーツへの取組そのものへの問いかけとなっている。
計画に関しては、オリンピックとパラリンピックの共通点と相違点
とを正しく盛り込み、IOC 及び IPC に対して訴えていく必要があった。
エ パラリンピアンと共に策定した計画
計画策定に向けては、障害者スポーツの知識・経験に富んでいる日
本障害者スポーツ協会、JPC 等関係団体との協力が不可欠であり、北
郷 JPC 委員長を招致委員会理事に迎えたほか、アスリート委員会に
もパラリンピアンの参加を得て、その意見を計画に反映させた。
また、都庁内でも障害者施策を行っている福祉保健局・生活文化ス
ポーツ局・教育庁によるワーキンググループにて原案の検討を行った。
さらに IPC に対しても直接助言を求め、平成 20(2008)年の北
京パラリンピック期間中と同年 12 月の 2 回にわたって計画に関する
打合せを持ち、結果を計画内容に反映させた。
オ IPC の高い評価
東京の計画は IPC からも高く評価され、IOC への提出義務のない会
場計画に関する IPC の同意書を任意で取得し提出することが出来た。
また計画策定や招致活動に対するパラリンピアンの積極的な参加も東
京のアピールポイントの一つとなり、IOC 評価委員会来日時のプレゼ
ンテーションや IOC 総会での最終プレゼンテーションでも重要な要
素となった。
カ パラリンピックを契機とした社会変革に向けて
パラリンピックについては競技性向上のための改革が進行中であり、
こうした中では、オリンピック以上に、パラリンピックが残す障害者
スポーツに対するレガシーや、障害者スポーツの振興を契機とした障
害者の社会参加の推進などを理解し、これに配慮した計画策定が求め
られる。
113
第一部 第3章
立候補都市段階
(11)
テーマ11 選手村
ア 計画の概要
安心・安全で、利便性に優れ、水と緑豊かな快適な環境の中で、美
味しく豊かな食事を提供する等、選手達が競技に向けた体調管理、楽
しい経験、活発な交流を行う生活の中心となる選手村を提供する。
選手村(手前)とオリンピックスタジアム
<基本項目>
・ 場
所:東京都江東区有明一丁目
・ 土地面積:約 31ha
・ 土地所有者:東京都
・ 開発事業者:民間事業者等
・ 部 屋 数:11,000 室
・ ベッド数:約 17,000 台
・ 1 人あたり床面積:16.1 ㎡
・ 寝室の面積:9.6-13.5 ㎡(シングル)、14.0-16.2 ㎡(ツイン)
<アピールポイント>
・ 各競技会場の中心に位置し、交通利便性に優れた立地
・ 都心の美しい景観を一望でき、水と緑あふれる快適な居住環境
・ すべての村内施設に徒歩で移動できるコンパクトで快適な施設配
置
・ 最先端の技術を活用し、安心・安全で快適な生活環境を創出
・ バラエティに富み、安全でヘルシーな食事の提供
・ メインダイニング以外にカジュアルダイニングを 5 箇所設置
・ 充実したレクリエーション施設やトレーニング施設
114
第一部 第3章
立候補都市段階
イ
IOC からの要求事項
本テーマでは、オリンピック・パラリンピック大会計画の要ともい
える選手村について、計画コンセプトの説明、建設用地の開発保証、
宿泊棟の平面図・断面図、全体配置図、工事費及び工期、政府補助金
保証、大会時使用保証、商業権保証、選手団への旅費補助の保証等が
求められていた。
ウ IOC の高い関心と求められる確実な計画
選手村は開催計画全体の中でも注目度が高く、IOC から高い評価を
得られる計画とすることが必要であった。そこで、IOC のテクニカル
マニュアルに記載されている選手村に必要な機能の最低要件を満たし
た上で、選手にとって利便性、安全性及び快適性の面で、さらなる高
水準のサービス提供を目指した。
一方で、民間事業者による開発の誘導を想定していることから、選
手村に必要な機能要件を満たした上で恒久施設整備費を抑え、事業性
のある開発計画を検討する必要があった。また、大会組織委員会が仮
設施設整備費を負担することから、可能な限り仮設施設を減らす必要
があった。
エ アスリートの声を最大限反映した選手村
晴海のオリンピックスタジアム予定地に至近の有明北に位置する都
有の埋立造成地、約 31ha の土地を選手村予定地とした。
開催概要計画書時点(国内選考時)では、後利用の事業性を重視し、
当該地域の分譲住宅市場で受け入れられやすいよう、高層棟が 5 棟あ
る計画であった。しかし、ソウルオリンピック選手村の高層棟が低層
高層のアクセス格差等から不評であり、その後の大会の選手村はすべ
て中低層であることを踏まえ、選手の各施設へのアクセスの公平性を
重視し、村内移動の容易性を高めるため、従前より低層の宿泊棟から
成る計画を検討した。その結果、11 階建てとなったが、すべての施
115
第一部 第3章
立候補都市段階
設の3階部分をデッキでつないで歩行専用とし、運営車両の通行を地
上レベルとすることで利便性と安全性を高め、なおかつ実質 9 階建て
として機能する計画とした。
計画作成にあたっては、アスリート委員会を通じ、選手の意見やア
イディアを盛り込んだ。アスリート委員にはパラリンピアンも参加し
ており、委員から提案のあった施設配置や動線計画などに対する意見
を反映することで、すべての選手にとって魅力ある計画づくりが可能
となった。
開発責任に関しては、土地所有者である東京都が、開発する民間事
業者に対し、土地売却にあたって選手村に必要な契約条件を定めるこ
とにより、選手村計画と整合した開発の実現を保証した。
工事費に関しては、後利用が可能と判断された部分を恒久施設とし、
大会時のみ必要となる部分を仮設施設として算出した。
食堂については、選手や海外コンサルタントの意見を取り入れ、メ
インダイニングは景観の良い水辺に配し、世界に誇れる日本の食文化
を活かし、選手に食の面で満足いくとともにバランスの良い食事を提
供することとした。さらに、選手同士の交流がより図られるよう、通
常のメインダイニング以外に5箇所のカジュアルダイニングを設ける
こととした。カジュアルダイニングは利用しやすいよう、すべてを居
住ゾーン内に分散して配置する計画とした。
選手団への旅費補助については、各国の首都空港及び NOC/NPC
が指定する主要空港から成田空港または羽田空港までのエコノミーク
ラスの往復運賃に貨物の運搬費を加えた金額を計上し、大会組織委員
会の助成を保証した。
オ 計画に対する評価
申請ファイルの評価では、東京の選手村計画について、立地、コン
セプト及びレガシーの 3 点が高く評価され、申請 7 都市中最高の評価
を得た。そこで、さらに計画の精度を高め、立候補ファイルに記載し
た。
立候補ファイル提出後の IOC 評価委員会訪問の際も、上記 3 点に
ついては高い評価を得たが、敷地面積など、いくつかの懸念も指摘さ
れた。
カ より良い選手村計画の策定に向けて
東京の選手村計画は、技術的には問題を解決した計画ではあったが、
諸機能の配置を複層的に配したため、配置図を一見しただけでは諸機
能が十分に配されているかどうか判断できない計画であった。十分な
広さの敷地を確保できるのであれば、諸機能は複層化せずに配置した
ほうがわかりやすい計画となる。
また、昨今の世界経済不況から、これまでよりも更に確実な開発保
証が求められている。
116
第一部 第3章
立候補都市段階
(12) テーマ12 医療サービス及びドーピングコントロール
ア 計画の概要
<世界最高水準の医療提供体制>
・ 充実した医療資源の存在(東京都内に 660 の病院、23,000 の
診療所、36,000 人の医師、15,000 人の歯科医師、39,000 人の
薬剤師)
・ 外国語による対応可能な医療機関の存在
<選手・大会関係者への迅速かつ適切な医療サービスの提供>
・ 6 箇所のオリンピック病院
・ 選手村に 24 時間対応の総合診療所を開設
・ 各競技会場に選手及び観客用の医務室を設置
<ドーピング防止活動への取組>
・ 世界アンチ・ドーピング機構(WADA)への積極的な貢献
・ 日本アンチ・ドーピング機構(JADA)を中心とした国内ドーピ
ング防止活動の推進
・ 最新鋭の設備や機器を設置した分析機関の整備
イ IOC からの要求事項
本テーマでは、開催都市の医療資源の整備状況、選手やオリンピッ
クファミリーに対する大会時の医療提供体制(専用病院の指定など)、
ドーピング規程や検査・分析体制の整備等が求められている。
ウ 豊富な医療資源、充実したドーピング防止体制
東京は、病院等の医療機関や医師・看護師などの医療人材が豊富で
あり、救急医療体制も制度的に整備されているため、大会に必要な医
療資源は既に確保されている。また、ドーピングコントロールに関し
ても、WADA の規程に基づく国内規程が整備されていることに加え、
WADA の認定分析機関も存在している。
一方、大会開催時には、すべての競技会場に医務室を設置して医療
救護体制を整える必要があることから、医師会や歯科医師会等の関係
団体からの協力確保、ドーピング検査・分析体制の充実が課題となっ
た。
エ 関係機関との連携
(社)東京都医師会、
(社)東京都歯科医師会及び(社)東京都薬剤
師会等の医療関係団体に対し、大会医療計画を詳細に説明し助言を受
けるとともに、大会時の医療人材の派遣・あっせんについて協力を得
ることとした。
ドーピングの分析機関については、文部科学省と協議し、現在の認
定分析機関が持つノウハウを活用しつつ、新たな分析機関として拡充
する計画を立候補ファイルで明らかにした。
オ 今後に向けての提言
IOC は、各国のチームドクターによる自国選手団への医療サービス
117
第一部 第3章
立候補都市段階
提供を法的に認めることをテクニカルマニュアル等で求めている。こ
れは、立候補ファイルでは求められていないものの、実際の大会開催
にあたっては、具体的な実施方策を検討しておく必要がある。
(13)テーマ13 セキュリティ
ア 計画の概要
<世界で最も治安の良い安全な大都市>
・ 極めて低い犯罪発生率
<安全確保に対する政府の全面的な支援>
・ 大会を安全で平和な祭典とするために政府が必要な措置を実施
<世界最大規模の人員と装備を持つ警視庁を中心とする警備体制を確立>
・ 東京の治安維持を担う警視庁の警視総監が警備活動を指揮統制
・ 警視庁総人員 46,000 人のうち、オリンピック警備に 21,000
人の警察官を投入予定
・ 警視庁と東京消防庁・海上保安庁・自衛隊が緊密な連携
<日本のセキュリティ機関の豊富な警備経験とノウハウ>
・ 東京マラソン、世界陸上大阪大会、FIFA ワールドカップ、洞爺
湖サミット、愛知万博等の実績
イ IOC からの要求事項
本テーマでは、開催都市のセキュリティリスクの分析、大会時のセ
キュリティ管理体制及び大会に投入するセキュリティ要員の見積り、
政府からの支援(大会の安全確保に対する最終的な責任に関する保証)
などが求められている。
ウ IOC から求められる一元的なセキュリティ管理構造
日本・東京は、安定した治安基盤を持っており、大会に訪れるすべ
ての人々に対し、安全で安心な環境を提供することができる。また、
東京には、警視庁や東京消防庁等、経験豊富で十分な人員と装備を有
する優れたセキュリティ機関が存在するため、大会に必要とされるレ
ベルのセキュリティを提供することが可能である。こうした状況を踏
まえた上で、大会セキュリティに関わる多くの関係機関を調整し、IOC
が求める一元的なセキュリティ管理構造をいかに構築するかというこ
とが課題となった。
エ 関係機関との協議
・ 海外コンサルタントの活用
過去のオリンピックにセキュリティ担当として関与した海外コン
サルタントの知見を活用し、IOC の考え方や警備体制について詳細
な分析を行った。
・ 警視庁との緊密な協議
東京の治安対策に責任を有し、大会セキュリティでも中心的な役
割を果たす警視庁と緊密に協議を重ね、立候補ファイル等の計画案
118
第一部 第3章
立候補都市段階
を作成した。
・ 政府との協議
IOC は、政府に対し、大会の安全確保に対する最終的な責任に関
する保証を求めていること、また、大会セキュリティには、警察庁、
海上保安庁、防衛省・自衛隊等の政府機関も関与することから、こ
れらすべてのセキュリティ機関と計画案について協議するとともに、
これらの機関の調整を行う内閣官房に対しても詳細な説明を行った。
オ セキュリティの一元的な管理構造
政府から、セキュリティ対策をはじめ、大会のすべての準備・運営
支援を一元的に統括する「東京オリンピック競技大会準備対策協議会」
(TOGC)の設置について理解を得た。また、一元的な管理構造のも
と、警視庁に設置する「セキュリティ・コマンドセンター」(OSCC)
を中心とした大会セキュリティを実現することで、IOC が求めるセキ
ュリティモデルの要求に応えることができた。
カ 今後に向けてのアドバイス
IOC は、オリンピックに相応しいと考える独自のセキュリティモデ
ルを持っており、このモデルを実現できるかどうかが、重要なカギと
なる。また、公的セキュリティ機関と、主催者としての自主・民間警
備を担う OCOG との連携確保も重要な論点の一つである。
(14)テーマ14 宿泊施設
ア 計画の概要
<高品質かつ豊富な東京のホテルインフラ>
・ 東京から 10km 圏内の客室数
80,000 室
50km 圏内の客室数 120,000 室
<IOC 委員をはじめ大会関係者の利便性とニーズに配慮した配宿計画>
・ IOC 委員等
:首都東京を象徴する場所に位置する高級ホテル
・ IF
:各競技会場から至近のホテル
・ スポンサー
:商談会も開催可能なバンケットを備えたホテル
※
・ 認定メディア :IBC/MPC から至近で手頃な料金のホテル
<2016 年大会時の客室提供と宿泊料金のコントロール>
・ 客室提供保証書の取得(約 280 ホテル 約 45,000 室)
・ 大会開催時に宿泊料金が暴騰しないよう宿泊料金の上限額を設定
<宿泊業界団体の全面的な支援と協力>
・ 宿泊業界団体の大会招致及び開催への全面的な支援と協力
イ IOC からの要求事項
本テーマでは、IOC、IF、スポンサー、認定メディア等大会関係者
※ 認定メディア:IOC が資格認定したメディア関係者のこと。認定メディアは、IBC/MPC の使用
や競技会場等への輸送サービス、宿泊施設のあっせんなど、様々な特典を受けることができる。
119
第一部 第3章
立候補都市段階
用の宿泊施設を確実に確保(合計 40,000 室)し、それぞれの配宿計
画を作成すること、大会期間中(その前後の期間を含む)の宿泊料金
をコントロールすることなどが求められている。
ウ IOC から求められる客室提供の保証書
東京には、大会関係者、観客を含めて、すべての訪問者を受け入れ
ることが可能なホテルインフラがあるため、大会実施に伴って新たに
メディア村 ※ 等の宿泊施設を建設する必要はない。したがって、時間
的な制約のなかで、大会関係者の配宿ホテルを決定し、いかにして、
約 280 のホテルから大会期間中の客室提供に関する保証を取得する
かということが最大の課題であった。
エ 宿泊施設状況の調査
配宿計画の策定にあたっては、IOC から対象となる宿泊施設につい
て、高級なシティホテルから手頃な料金で利用可能なビジネスホテル
というように分類することが求められていた。IOC の基準に沿う分類
を行うため、約 1,400 ホテルの協力を得て、客室数、客室の広さ、
宿泊料金及び付帯施設の有無などの情報を収集した。
オ 関係団体との連携
・ 業界団体への説明
(社)日本ホテル協会東京支部や東京都ホテル旅館生活衛生同業
組合等の宿泊業界団体に、大会宿泊計画について説明し、協力を得
た。
・ ホテル向け説明会の開催
配宿計画の原案を作成後、配宿予定ホテルを対象として、
「2016
年東京オリンピック招致に向けたオリンピック・ファミリー・ホテ
ル説明会」を開催した。説明会では、招致に向けたスケジュール、
大会関係者の客室確保、インフレ率に基づく宿泊料金の上限額設定
等、大会の宿泊計画について詳細に説明を行うとともに、IOC から
求められている保証書の提出に向けた協力を依頼した。
・ 各ホテルとの個別交渉
説明会開催後、対象ホテルを個別に訪問し、保証書の取得に向け
て交渉を重ね、理解を求めた。
カ 客室提供に関する保証書の取得
各ホテルとの交渉の結果、都内 251 ホテル及びサッカー予選会場
など東京以外の都市の28ホテルから、約 45,000 室の客室提供に関
する保証書を取得することができた。十分な客室ストックにより、各
大会関係者の利便性とニーズに応じて、立地・グレード(設備・サー
ビス)
・料金などの側面から、それぞれの職務を遂行する上で最適なホ
※ メディア村:開催都市に認定メディア向け必要宿泊客室数(約 18,000 室)を満たすだけのホテ
ル収容能力がない場合、建設が認められるメディア用宿泊棟のこと。
120
第一部 第3章
立候補都市段階
テルに配宿する計画を策定することが可能となった。
キ IOC ホテル
大会関係者ホテルの中でも、IOC ホテルは、IOC 委員やその家族、
IF 会長等が宿泊するため 1,800 室以上の客室数が求められており、
加えてオリンピック競技大会にあわせて IOC 総会や理事会が開催さ
れるなど IOC の本部機能を担う基幹ホテルとなる。そのため、IOC の
関心も高く、宿泊計画の評価ポイントのひとつになっていた。東京は、
歴史的・文化的にも首都東京を象徴し、加えて日本の伝統的な芸術文
化の発信拠点ともなっている赤坂地区を中心とする 3 つの最高級ホテ
ル(ホテルオークラ東京、ANA インターコンチネンタルホテル東京、
グランドプリンスホテル赤坂)を IOC ホテルとして選定した。このう
ちホテルオークラ東京は、IOC 評価委員会訪問に際して、その滞在ホ
テル及びプレゼンテーション会場としても活用した(詳細は、P186
第 1 部第 4 章第 2 節 1 参照)。
ク 今後に向けてのアドバイス
宿泊施設の確保は、円滑な大会運営の前提条件であるため、IOC も
立候補都市の宿泊計画を重視している。また、量の確保だけでなく、
料金コントロールの仕組みや、IOC ホテルの選定、各関係者別の配宿
計画等、論点も多い。さらに保証書の取得には、多大な労力と膨大な
作業が必要となるため、可能な限り早期に取組を開始する必要がある。
(15)テーマ15 輸送
ア 計画の概要
<迅速な大会関係者輸送>
・ コンパクトな会場配置と 490km のオリンピックルートネットワ
ークの利用により、選手の約 7 割が選手村から各会場に 10 分以内
で到着
<円滑な観客輸送>
・ 観客のほぼ 100%が安全で確実な輸送手段である公共交通機関
(鉄道、バス等)により会場へアクセス
<充実した輸送インフラ>
・ 毎日 2,400 万人が利用する高密度な鉄道網
・ 首都高速道路をはじめとする充実した道路網
<徹底した環境負荷の低減>
・ コンパクトな会場配置、公共交通機関の活用、低公害車の導入に
より実現
イ IOC からの要求事項
本テーマでは、大会成功の重要な要素である輸送サービスについて、
通常の都市活動における一般交通と共存した、効率的かつ安全で信頼
できる輸送計画を求めている。
121
第一部 第3章
立候補都市段階
ウ
安全かつ確実な輸送が求められる
全世界にリアルタイムで放送されるオリンピック大会において、選
手をはじめとする大会関係者を安全かつ確実に輸送することは、大会
運営における最重要事項の一つとなる。一方、全 26 競技の世界選手
権を同時に開催するオリンピック大会は、数千から数万人規模の観客
の輸送(移動)が各会場で同時に発生するという状況となる。
これらの輸送を、日常の都市活動が行われている都市の中心部で円
滑に行うことは、これまでに経験したことのない高レベルな輸送計画
が求められる。
さらに、その輸送計画の実現性を確保するため、インフラの整備計
画、輸送運営体制や運営手法等に関する保証書を IOC に提出しなけれ
ばならない。
インフラ整備計画については、東京の場合、大会開催のための追加
的なインフラ整備はなく、すべて既存のインフラか、
「10 年後の東京」
計画等に基づいて整備されるものであり、その旨、開催計画に記載し
て IOC に提出した。
なお、開催計画策定の過程において、国道 357 号(東京港トンネ
ル)の整備や都営大江戸線勝どき駅の拡張については、それぞれ
2015 年、2016 年に完了することが明確になるなど、事業自体の促
進にも寄与した。
エ 交通関係者と一体となって作成した輸送計画
大会の主役である選手をはじめとした大会関係者の輸送は、組織委
員会が運営するシャトルバスを中心とした道路交通となる。さらに、
安全かつ確実な輸送を行うために、近年のオリンピック大会では、大
会関係車両専用車線となる「オリンピックレーン」の設置が標準とな
っている。オリンピックレーンの設置計画は、国土交通省及び各高速
道路会社等の道路管理者、警察庁及び警視庁等の交通管理者と協議を
重ね、設置路線の検討を行った。
一方、観客と大会スタッフの輸送は、規模、利便性、確実性ともに
世界最高水準である日本の鉄道システムを中心とした公共交通機関と
シャトルバスにより 100%輸送する計画とし、道路交通による大会関
係者のための輸送サービスへの影響を回避する輸送戦略とした。
さらに、交通シミュレーションにより、日常の都市活動における一
般交通への影響を確認するとともに、円滑な大会輸送を実現するため
の最先端の IT 技術等を活用した輸送施策、輸送組織体制についての検
討を行った。
オ 選手にとって理想的な輸送計画
選手等の大会関係者の輸送に欠かせないオリンピックレーンの設置
に関しては、関係車両の需要や周辺の交通状況を踏まえて、3種類の
優先レベルを設定した「オリンピックルートネットワーク」を計画し、
122
第一部 第3章
立候補都市段階
選手村、競技会場、空港等を結ぶ、首都高速道路を中心とした路線に
ネットワークを設定した。
このオリンピックルートネットワークにより、選手の 67%が 10
分以内、88%が 20 分以内に、選手村から各競技会場にアクセスでき
る輸送サービスを計画、その他の大会関係者に対しても、各宿泊施設
から各競技会場まで迅速かつ確実にアクセスできる輸送サービスを計
画した。
観客と大会スタッフの輸送については、高密度・高容量の公共交通
網を最大限活用することで、ほとんどの競技会場へ最寄り駅から徒歩
10 分以内でアクセス可能であり、1日当たり最大約 78 万人と予測
される観客数は、公共交通機関の輸送能力(2,400 万人/日)のわず
か 3%に過ぎないことをアピールした。
また、既に公共交通機関に導入されている非接触型 IC 乗車カードと
観戦チケットを統合し、観戦当日の無料化や、IC カードを活用したユ
ビキタス技術による情報提供により、外国人にも使いやすい輸送シス
テムをアピールした。
カ 効率的な輸送計画を目指すために
選手にとっては、競技会場よりも練習会場へアクセスする回数の方
が多くなる。今回の練習会場計画は、公共の体育館や大学施設を中心
に競技毎に分散配置する計画となったが、選手のための大会計画とす
るならば、アテネ大会の様に複数競技の選手が使用できる体育館やプ
ールがある総合運動施設を練習会場として、選手村から比較的近い場
所に計画することが望ましい。練習会場を集約することで、効率的な
シャトルバスの運用も可能となるので、今後の検討が必要となる。
同様に、その他の大会関係者の輸送システムの効率化のためには、
ホテルの配宿計画と連携し、各競技会場へオリンピックルートネット
ワークによる移動距離を意識した各 IF 用ホテルの配宿や、17,500
室が必要なメディア用ホテルの集約化等が必要である。
(16)テーマ16 技術(情報通信)
ア 計画の概要
<最先端技術による円滑な大会の実現>
・ 多機能 IC カード、ユビキタス技術、ITS(高度道路交通システム)、
超高精細映像機器など最先端技術を活用し、円滑な大会を実現する。
<大会開催に十分な通信インフラ>
・ 日本の電気通信事業は完全自由化されており、大会開催に必要な
通信インフラは、既に整備済みである。また、国内外への通信網に
は何重ものバックアップがある。
<無線サービスの運用>
・ 大会関係者の使用する無線周波数の割当は確保され、無料で使用
123
第一部 第3章
立候補都市段階
可能となる。また、この無線サービスは、大会関係施設が存在する
エリアすべてで使用可能となる。
イ IOC からの要求事項
本テーマでは、特に通信要件に注目しながら、オリンピック競技大
会・パラリンピック競技大会において技術をサポートするのに必要な
インフラを提供するため、候補都市の能力の確立を求めている。具体
的には、情報システム、電気通信及びその他の技術、インターネット
についての能力である。
また、無線通信に関する「大会関係者の使用する無線周波数の割当
ての確保」「大会関係者による無線周波数の使用の無料化」に関して、
IOC が納得する内容の保証書の提出が求められていた。
ウ 大会実施に必要な技術力の確認
日本の通信技術の優位性をアピールするため、海外の通信事情を調
査し、世界における日本の優位性を確認した。
また、オリンピック競技大会が求めている情報通信の技術機能は、
IOC が、平成 19(2007)年 10 月に開催した申請都市セミナーに
て、詳細な情報が提供されたため、これを参考に立候補ファイルを作
成した。
保証書については、2008 年大会の大阪市の招致活動を参考に、総
務省と調整を行った。
エ 最先端を誇る日本の技術をアピール
立候補ファイルの質問が通信技術に関する内容にかたよっていたた
め、テーマの冒頭に前文を追加し、最先端を誇る日本の技術を積極的
にアピールした。
また、情報通信技術(ICT)の分野において、日本は世界のリーダ
ーであり、オリンピック大会開催に関する技術能力に問題が無いこと
をアピールした。
オ オリンピック大会の実施に向けて
オリンピック関係者への電波使用料の無料化の保証については電波
法改正もしくは時限立法により措置することが望ましい。
携帯電話については海外からの持込に対応するため、通信方式の国
際標準化に努めるよう総務省との調整が必要になる。
また、専門用語等の海外との統一化を図ることが重要となる。
(17)テーマ17 メディア
ア 計画の概要
<信頼性の高い世界最高水準の報道環境の提供>
・ 大容量光ファイバー等、最新の情報通信システムの提供
・ 非常に高い信頼性を確保した電力供給システムの提供
・ 快適な業務環境の提供
124
第一部 第3章
立候補都市段階
・
・
快適な宿泊、輸送の提供
多言語で対応可能なボランティアの充実
イ IOC からの要求事項
本テーマでは、大会の成功に大きな役割を果たすメディア関係者へ
のサービスについて、最高の状態で大会報道が可能な体制の確立を求
められている。具体的には、メディア関係者向けの施設、宿泊、輸送
及び法的措置についての計画である。
ウ 全世界から集まるメディア関係者のための IBC/MPC
必要な設備を備え、活動に適した立地に、IBC/MPC とを選定する
必要があった。それぞれ、巨大なスペースと特別な設備の要求があり、
また、長期間にわたる使用の保証が求められている。
また、メディア関係者向けに、便利な位置に手頃な価格の宿泊施設
を確保する必要があった。
一方、全世界から集まり、各国の時間に合わせ 24 時間活動を行う
メディア関係者に対し、空港、宿泊施設、会場施設及び IBC/MPC の
それぞれの間を円滑に移動する輸送サービスの提供が求められていた。
さらに、法的規制や特別な課税を受けることなく、専門的な業務を
果たせるための措置が求められていた。
エ 東京ビッグサイトを利用した計画の策定
IBC/MPC は、開催概要計画書及び申請ファイルでは築地市場移転
後の跡地を利用する予定であったが、低層の大空間を広く使用するこ
と等から、既存展示場施設を活用できる東京ビッグサイトに変更した
(平成 20(2008)年 11 月 14 日招致委員会理事会決定)。不足す
る面積は増築で対応し、後利用は展示場として活用することとした。
IBC は約 10 万㎡(MPC 共有含む)の床面積を1・2階中心に配
置し、外部に 800 台以上の駐車場と、サテライトファーム ※ 約1万㎡
を確保した。
MPC は2層で床面積約 4.5 万㎡と、1,000 席のプレスカンファレ
ンスルーム、外部に 300 台以上の駐車場を確保した。
東京ビッグサイトは、フェンシング、テコンドー及びレスリングの
会場でもあり、施設内をどう区分して使用するかを綿密に検討した。
また、年間を通じてさまざまな催しに使用されている施設であり、東
京ビッグサイト側と使用箇所と使用期間に関して協議を重ねた。
宿泊施設については、東京には多くの既存ホテルがあるため、メデ
ィア村は建設せず、すべてホテルへ配宿することとした。各ホテルと
交渉を重ね、大会開催時の客室提供に関する保証書を取得した。カテ
ゴリー別にテクニカルマニュアルで定められた要件を分析し、それぞ
れ合致するように配宿した。
※ サテライトファーム:IBC 用の衛星通信用機材機器の設置場所
125
第一部 第3章
立候補都市段階
輸送については、オリンピックルートネットワークを使い、認定メ
ディア関係者専用のバスを運行することとした。
業務に対する労働関連法規制については、メディア関係者に対して
の労働関連法令の適用はなく、放送業務に対する固有の課税はなかっ
た。
オ 利便性の高いメディア関係施設の計画
既存施設を最大限に活用でき、また、主要競技施設や選手村に近く、
空港へのアクセスもよい場所に IBC/MPC を計画した。使用、商業権
及び建設は施設所有者の東京都が保証した。
メディア向けの宿泊施設は、IBC/MPC から至近の距離にあり、各
競技会場へ短時間に移動できる地域に手頃な料金での宿泊を担保され
たホテル 19,000 室を確保した。
輸送は、オリンピックルートネットワークを使った輸送システムに
より、いつでも迅速、快適かつ確実に移動できる環境を用意した。
カ 関連する計画との連携
築地市場移転後の跡地から東京ビッグサイトへの配置変更により、
IBC/MPC と競技会場とが競合し、施設内の配置計画は困難であった
が、全体としては、主要施設へのアクセスが改善される等、より良い
会場配置計画となった。会場配置は輸送や宿泊等の複数分野に多大な
影響を与えるので、その変更にあたっては総合的な判断が必要である。
IBC/MPC は必要なスペースや設備に特別な要素が多く、反面、そ
のままでの後利用が難しい施設である。展示場や物流倉庫等の既存大
空間施設の活用が適している。
IBC/MPC の至近(徒歩圏内)に低廉で便利な宿泊施設が相当量求
められるので、この点は、IBC/MPC の位置決定の重要な要素となる。
輸送に関しては、東京は既存ホテルの客室数が十分であることから
メディア村を設置する必要がなかったため、多数の宿泊施設と会場施
設間の移動のルートを設定することとした。認定メディア関係者用宿
泊施設の集約化と立地(IBC/MPC へのアクセス)が重要である。
また、日本のメディア業界の総合的な支援・協力体制の確立が不可
欠である。
3
経済波及効果及び施設整備費の公表
平成 21(2009)年 2 月 13 日、IOC から立候補ファイルの公表が解
禁されたことに伴い、2016 年大会の経済波及効果及び競技施設等の整備
費を公表した。
(1) 経済波及効果
オリンピック・パラリンピック競技大会の開催に伴い、施設整備費、
大会運営費、消費支出の増などの需要増加が見込まれる。この需要増加
額を基に、産業連関表を用いて 2016 年大会の経済波及効果を推計し、
126
第一部 第3章
立候補都市段階
以下のとおり公表した。
2016 年大会開催にかかる経済波及効果
経済波及効果
全国
東京都内
2 兆 9,400 億円
1 兆 5,500 億円
(備考)
1
2
算定の基礎には、道路等のインフラ整備費を含まない。
算定の基礎には、オリンピック関係者や観客の移動、宿泊等に伴う支出や、一般家庭の
電気機器、その他の物品の購入費などが含まれる。
※
(2)
道路等のインフラ整備費を算入した場合は、これ以上の経済波及効果が見込まれる。
施設整備費
オリンピック・パラリンピック競技大会の開催に伴う、競技施設、選
手村、IBC/MPC の整備に関して、それぞれ恒久施設と仮設施設の整備
費を、以下のとおり公表した。(P534 資料 12 参照)
このうち、仮設整備費は大会運営費として OCOG が負担し、選手村
の恒久施設整備費は民間事業者が調達することとしている。
競技施設等整備に要する経費
項
目
競技施設
IBC/MPC
選手村
合
計
恒久施設整備費
仮設整備費(OCOG)
2,269 億円
151 億円
(899 億円)
649 億円
49 億円
126 億円
2,420 億円
824 億円
(
)内の金額を除く
(備考)
1
既存会場を最大限活用し、施設整備費を抑制
2
新設施設は大会後も国民の財産として活用
3
施設整備に対し、国庫補助等を最大限活用
4
(
)内は民間事業者の負担
4 アスリート委員会の活動
(1) アスリート委員会の設置
招致計画にアスリートの立場、視点からの意見やアイディアを反映さ
せるため招致委員会内に「アスリート委員会」を平成 20(2008)年
6 月 12 日に設置した。
同委員会では、以下を実施した。
・ 2016 年大会の選手村、オリンピックスタジアム、IBC/MPC、
競技会場等の視察の実施と意見交換
・ 過去の大会時の選手村施設(オリンピックプラザ、食堂、リラッ
クスゾーン、トレーニング場)等についてのヒアリング、及び 2016
年大会への意見やアイディア、アドバイス
127
第一部 第3章
立候補都市段階
・
過去の大会時のセキュリティ、輸送等の運営面やホスピタリティ
についてのヒアリング、及び 2016 年大会への意見、アイディア、
アドバイス
特に選手村については、過去大会において選手村での生活経験を持つ
アスリート委員からの意見やアイディアは大変重要であった。
メンバーは、以下のとおりである。
(敬称略)
役職
委員長
小谷
備考
実可子
荒木田
副委員長
鈴木
大地
オリンピアン(水泳・競泳)
副委員長
田辺
陽子
オリンピアン(柔道)
成田
裕子
オリンピアン(水泳・シンクロナイズドスイミング)
副委員長
副委員長
真由美
オリンピアン(バレーボール)
パラリンピアン(水泳・競泳)
委員
上村
知佳
パラリンピアン(車椅子バスケットボール)
委員
小川
睦彦
パラリンピアン(自転車競技)
委員
川瀬
知子
JOC アスリート専門委員(ボウリング)
委員
国枝
慎吾
パラリンピアン(車いすテニス)
委員
黒岩
敏幸
オリンピアン(スケート・スピードスケート)
委員
佐藤
寿治
オリンピアン(体操)
委員
谷川
聡
オリンピアン(陸上競技)
委員
塚原
直也
オリンピアン(体操)
委員
萩原
智子
オリンピアン(水泳・競泳)
委員
松本
義和
パラリンピアン(柔道)
委員
委員
(2)
氏名
山本
吉田
博
沙保里
オリンピアン(アーチェリー)
オリンピアン(レスリング)
アスリート本位の計画
立候補ファイルに記載された選手村は、これらアスリート委員の意見
やアイディアが盛込まれ、魅力的なものになった。また、アスリート委
員として海外でのプレゼンテーシ
ョンに出席し、東京の計画がアス
リート本位であることを大きくア
ピールした。
特記すべきは、2016 年の舞台
となる競技会場を視察したことに
より、アスリートならではの視点
からの質問(機材の搬出・搬入の
問題やウォーミングアップ会場と
アスリート委員会での検討
本番会場の動線等)が寄せられた
ことである。
128
第一部 第3章
立候補都市段階
特に視覚障害者の松本委員や車椅
子の成田副委員長からの選手村や競
技会場での様々な指摘(使い勝手の
悪さや改善への提案等)は、非常に
参考になった。
5 IF チームの活動
アスリート委員会の視察風景
(1) IF チームの設置
IF 対応はオリンピックの招致活動にとって非常に重要な要素の一つで
ある。立候補ファイルを提出する際には、各競技の会場計画について IF
の同意書を取得して添付することとされており、IF との良好な関係構築
なしには計画策定は不可能である。また、最終的な開催都市決定に関し
ても、IOC 委員には IF 代表者が数多く選出されているほか、それぞれの
IOC 委員と、各 IF 関係者との個人的な関係が投票行動に大きく影響する
ことが考えられるからである。
立候補都市と IF との関係においても個人と個人との関係が重要であ
るため、東京も平成 20(2008)年 4 月から招致委員会に専任のスポ
ーツディレクターと担当者を置き、計画策定と関係構築の両面で IF との
窓口を一元的に担う体制とした。
(2)
IF からの同意書の取得
IF から同意書を取得するためには、まず東京の計画を説明する場を設
定する必要がある。IF チームでは、NF の関係者と共に日本国内はもと
より、海外で行われる国際大会や会議等にも積極的に出向き、IF の幹部
との面会を重ねた。そのうえで、北京オリンピック・パラリンピック期
間中を中心に、計画策定チームを伴って IF との打合せを設定し、計画の
説明と同意書の取得作業を進めていった(北京大会での IF との交渉につ
いては、P84 第 1 部第3章第 1 節 6 参照)。
北京大会以外では、計画説明の機会は国内で開催される国際大会や、
IF を招聘しての現地視察等が多くなったが、こうした場にも IF チームが
同席し、計画の説明と共に、東京が信頼できるパートナーであることを
印象付けるよう努めた。
こうした活動の仕上げとして平成 20(2008)年 11 月にローザン
ヌ市で開催された IF スポーツフォーラムの機会に最終的な同意書取得
の確認を多数の IF と行った。この結果、平成 21(2009)年 1 月、東
京は 4 つの立候補都市の中で最初に全 IF からの同意書を取得すること
となった。
(3)
IF との関係構築
同意書取得作業と並行して、また同意書を取得し終わった後も継続し
129
第一部 第3章
立候補都市段階
て、IF との関係構築・強化のための活動を行った。各国で開催される競
技大会や会議、又は IF 本部に出向き、定期的に各 IF との情報交換・連
携を図るほか、
「各競技を学び・聞き・理解する姿勢」を実践することで、
2016 年大会に向けて信頼できるパートナーとなるため、協力的な関係
の強化を目指した。
こうした訪問は、立候補都市選定から IOC 総会までの 1 年半足らず
の期間に 30 回以上に及んだ。
参加した主な会議
時
期
会
議
名
開
催
国
2008 年6月
スポーツアコード
ギリシャ
2008 年 11 月
IOC 世界スポーツフォーオール会議
マレーシア
2008 年 11 月
IF スポーツフォーラム
スイス
2009 年 9 月
国際パラリンピック委員会 20 周年記念式典
ドイツ
訪問した主な大会
時
期
I
F
大
会
名
開 催 国
2008 年 7 月
国際テニス連盟
ウィンブルドン選手権
英国
2008 年 7 月
国際水泳連盟
世界ジュニア選手権
メキシコ
2008 年 7 月
国際陸上競技連盟
世界ジュニア選手権
ポーランド
2008 年 9 月
国際陸上競技連盟
ワールドアスレチックファイナル
ドイツ
2008 年 10 月
国際陸上競技連盟
世界ハーフマラソン選手権
ブラジル
2009 年 1 月
国際ハンドボール
男子ワールドカップ
クロアチア
世界インドア選手権
ポーランド
連盟
2009 年 3 月
国際アーチェリー
連盟
2009 年 3 月
国際陸上競技連盟
世界クロスカントリー選手権
ヨルダン
2009 年 4 月
国際卓球連盟
世界選手権
日本(横浜)
2009 年 5 月
国際フェンシング
高円宮杯ワールドカップ
日本(東京)
連盟
2009 年 6 月
国際ボート連盟
ワールドカップ
ドイツ
2009 年 7 月
国際陸上競技連盟
世界ユース選手権
イタリア
2009 年 7 月
国際パラリンピッ
国際パラリンピックデー
ドイツ
ク委員会
2009 年 8 月
国際陸上競技連盟
世界選手権
ドイツ
2009 年 8 月
国際ボクシング協
世界選手権
イタリア
世界選手権
韓国
ワールドアスレチックファイナル
ギリシャ
会
2009 年 9 月
国際アーチェリー
連盟
2009 年 9 月
国際陸上競技連盟
※この他にも、個別の IF の会議参加や本部訪問を実施
130
第一部 第3章
立候補都市段階
6 立候補ファイル作成に関する国との調整
(1) 立候補ファイル作成に関する全体調整
立候補ファイル作成の際の政府との調整にあたっては、申請ファイル
同様、関係省庁毎に個別協議を行う一方、政府全体として立候補ファイ
ルの承認を行う手続きを経る必要があった。さらに、申請ファイルにお
いては、政府保証書は、誓約書のみであったが、立候補ファイルにおい
ては、多くの政府保証書の発行が求められていることから、主務官庁で
ある文部科学省からは、政府保証書についても政府全体としての協議手
続きを経ることを求められた。
<調整内容>
平成 20(2008)年 4 月以降、関係省庁毎の個別協議を開始して
いたが、同年 6 月 4 日の立候補都市マニュアルの公表を受け、同年 7
月 22 日、
「 第 31 回オリンピック競技大会東京招致に関する関係省庁
連絡会議(第 4 回)」において、立候補ファイル作成スケジュールや
立候補ファイルの内容、政府保証書について説明する場が設けられ、
協議が本格化した。
政府保証書の協議は、保証内容が立候補ファイル本文と相互に影響
を及ぼし合う関係であることから、立候補ファイル本文の協議と並行
して進めた。
同年 8 月 8 日には、初めてそれまでの協議内容を反映させた立候補
ファイル案(日本語のみ)を、文部科学省を通じて全省庁に送付した。
各省庁は、送付された立候補ファイル案を確認し、当該省庁の所管事
項に関し協議が漏れている項目を抽出、招致本部へ意見として提出し
た。当該意見の項目については、順次、関係省庁との協議を開始した。
英語を加えた立候補ファイル案は、同年 10 月 20 日に招致本部か
ら全省庁に送付した。
これらの送付と個別協議を重ねた上で、同年 12 月 8 日、立候補フ
ァイル本文と政府保証書について、文部科学省を通じて全省庁に文書
照会を行った。各省庁から出された回答(意見)に対しては、個別に
調整を行い、立候補ファイル本文については、政府全体としての了解
を得た。
照会先は、14 省庁(内閣官房、内閣府、警察庁、総務省、法務省、
外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、
国土交通省、環境省、防衛省)である。
政府保証書については、上述の文部科学省から全省庁への文書照会
の結果を踏まえた上、同年 11 月 26 日に招致本部から関係省庁に対
して行った正式の発行依頼に基づき各省庁で発行手続きを行い、同年
12 月 11 日から平成 21(2009)年 2 月 3 日にかけて、依頼した
すべての政府保証書の発行を受けた。
131
第一部 第3章
立候補都市段階
政府保証書一覧
省庁名
保証内容
・大会開催計画に対する国の支援状
・オリンピック憲章等を遵守する旨の誓約書
内閣官房
・重要な会議・イベントを開催しない保証
(内閣総理大臣) ・財政保証
・政府関連業務の保証及びその他の財政的保証
・安全確保のための措置
内閣府
・価格高騰の防止
総務省
・周波数の割当
・オリンピック ID 兼資格認定カード所持者の入国
法務省
・入国・労働許可
外務省
・オリンピック ID 兼資格認定カード所持者の入国
・関税の免除
財務省
・記念硬貨の発行
・政府関連業務の保証及びその他の財政的保証
文部科学省
・アンチドーピング
厚生労働省
・パラリンピック競技大会への公的支援
・オリンピック・マーク等の法的保護
経済産業省
・不正競争防止
・バリアフリーへの配慮
・選手村建設に支出される補助金
・空港の収容能力の改善
国土交通省
・輸送インフラ
・オリンピックレーンの実施可能性
・輸送運営センターの所管当局
・環境保護法規の遵守
環境省
・競技会場の使用許可
・競技会場の賃貸料
・競技会場の使用許可
防衛省
・競技会場の賃貸料
(2)
財政保証に係る調整
財政保証は、OCOG が万が一資金不足に陥った場合、その不足分の補
填を関係当局が保証することを求めたものである。政府保証の中でも特
に財政保証は、招致を勝ち取る上で必須と言われる一方、政府はこれま
で国際競技大会の招致において財政保証を発行したことがなく、今回の
招致において発行されるかどうか、招致関係者の高い関心を集めた。
132
第一部 第3章
立候補都市段階
<調整内容>
IOC が求めている財政保証は、関係当局の保証であるが、近年、招
致に成功した都市(2008 年北京、2010 年バンクーバー、2012
年ロンドン、2014 年ソチ)は、すべて中央政府による財政保証を行
っており、海外コンサルタント等の見解においても、IOC の高い評価
を得るには、政府による保証が必須であるとのことだった。
都議会は、財政保証の発行に向けて、平成 20(2008)年 3 月 28
日、財政保証をはじめ、政府保証を発行するよう要請する旨の意見書
を採択し、提出した。
また、知事自ら自民党スポーツ立国調査会や、超党派による国会の
2016 オリンピック日本招致議員連盟の発起人会に出席し、財政保証
の発行に向けた支援を訴えた。さらに、谷川副知事は、
「国の施策及び
予算に対する東京都の提案要求」や「首都東京の重要施策に係る国と
東京都の実務者協議会」等、様々な機会において財政保証の発行を要
請した。
こうした都の要請に対し、政府内では、招致活動上不利とならない
よう財政保証の発行について調整を進めた一方、大会運営主体となる
OCOG や、具体的な債務が発生していない時点において、いかに IOC
から評価を受ける保証内容とするかで調整が進められた。
引き続き、知事自らが先頭に立って様々な機会を捉えて政府に要請
を 行 っ た 結 果 、 国 会 招 致 議 員 連 盟 会 長 等 の 尽 力 も あ り 、 平 成 21
(2009)年 2 月 3 日、麻生総理大臣名の財政保証が発行された。
7
立候補ファイルの決定
これまで述べてきたように立候補ファイルの策定業務は、招致本部の各
競技及び会場、輸送や宿泊など運営事項ごとの担当者が原案を作成し、そ
れをもとに招致委員会事務総長を中心に、各専門分野の海外コンサルタン
ト、招致委員会に設置された計画専門委員会、アスリート委員会、さらに
は国の関係省庁等が、繰り返し検討、調整しながら成案をまとめていった。
この過程では、過去の開催都市や他の立候補都市、主要国際競技大会の
視察のほか、各テーマの専門的な事項に関する委託調査等も実施した。ま
た、競技会場の計画については、すべての IF から会場使用に関する同意書
を取得しなければならず、精力的に接触、意見聴取に努めた。国との調整
に関しては、前述のとおりである。
こうした調整の過程を経て立候補ファイルは、平成 20(2008)年 11
月 14 日と同年 12 月 18 日に開催された招致委員会理事会において、審
議、承認され、決定の運びとなった。
まず、11 月の理事会では、IBC/MPC の会場計画を築地市場移転後の
跡地から東京ビッグサイトに変更すること、室内競技の体操、バスケット
ボール、ハンドボール、レスリングについて、各国際競技団体との個別協
133
第一部 第3章
立候補都市段階
議も踏まえた上で会場場所を変更すること、マラソンコースに周回コース
を取り入れること、自転車競技(ロードレース)コースを多摩地域に延伸
すること等が、新たに決定された。
続いて 12 月の理事会では、立候補ファイルの全容、すなわち IOC から
の質問に沿って作成された 3 巻 17 章の構成とそれぞれの PR ポイントに
ついて、招致委員会事務総長から理事に説明が行われ、理事会として正式
な承認決定を行った。
なお、立候補都市マニュアルにより、立候補ファイルは英語及びフラン
ス語による記述とすることが、IOC から求められていた。これにより、日
本語で作成した原案を、IOC に訴える表現となる文章に英仏訳する作業を、
海外コンサルタントのアドバイスを受けながら、招致委員会を中心に行っ
た。
8
立候補ファイルの提出
平成 21(2009)年 2 月 12 日、スイス連邦ローザンヌ市にある IOC
本部を訪れ、現地時間 10 時(日本時間:同日 18 時)、立候補ファイルを
提出した。
(1) 提出物
立候補都市マニュアルに従い、IOC に提出したものは、次のとおりで
ある。
① 立候補ファイル
100 セット
② 保証書ファイル(13 冊)原本綴り×1 セット、複写×1 セット
③ 開催都市契約遵守誓約書(原本)
1枚
④ 財政包括データ(ファイル及び電子データ CD)
2 セット
⑤ 会場配置と輸送インフラ地図
3 セット
3 セット
⑥ クラスター別会場配置と 輸送インフラ地図 (5 枚)
⑦ 配宿ホテル地図(7 枚)
5 セット
⑧ 配宿ホテル詳細地図(11 枚)
3 セット
⑨ CD-ROM(立候補ファイル電子データ)
35 枚
⑩ CD-ROM(地図(JPG)のみ)
2 セット
なお、IOC より、立候補ファイルはテーマ分類毎に 3 分冊とし、箱に
収納して提出することが求められていた。
(2)
装丁・デザインの特徴
東京の立候補ファイルは、IOC に対して「日本らしさ」をアピールす
るため、日本の伝統工芸である和紙・和綴じにより製作し、風呂敷で包
み提出した。
今回、和紙の中でも、特に薄く、通気性や伸縮性に富み、かつ丈夫で、
長期間色褪せない徳島県の伝統工芸品である「阿波和紙」(あわがみ)
を図面等が鮮明に印刷されるよう、改良を加えて使用した。和紙は製造
134
第一部 第3章
立候補都市段階
過程において、化学薬品を殆ど使用しないため、環境にも優しい。
和綴じは、和紙の製本に最適の方法であるだけでなく、糸で和紙を縛
るため、金具を一切使用せず、また糊の使用も最小限に留めており、環
境にも配慮した製本法である。今回は、亀の甲羅のような模様の「亀甲
綴じ」という、見た目にも美しい綴じ方とした。製本に当たっては、和
綴じ職人が一冊ずつ手作業で仕上げた。
亀甲綴じによる製本
(3)
風呂敷に包み提出
提出
IOC へ立候補ファイルを提出するため、立候補ファイル 100 セット
をローザンヌ市へ空輸した。立候補ファイルの添付資料は、担当者がロ
ーザンヌ市へ直接持参した。特
に、保証書原本は、内閣総理大
臣が署名した財政保証はじめ唯
一無二のものであり、毀損・紛
失することは絶対に許されない
ため、機内持ち込みにより運ん
だ。
提出日当日の 2 月 12 日は、
あいにくの降雪模様であったが、
東京の立候補ファイルを手にし
雪の中運ばれる立候補ファイル
た IOC の招致都市担当責任者
は、「素晴らしい。」と感嘆の
声を漏らした。
立候補ファイルは、全 IOC 委
員、夏季・冬季の各 IF、各国の
NOC、NF 及び関係者に送付し
た。開催計画の内容のみならず、
体裁にまで工夫を凝らした東京
の立候補ファイルは、IOC 委員
始め関係者に好評であった。
IOC 本部へ立候補ファイルを提出
135
第一部 第3章
立候補都市段階
(4)
記者会見
東京では、IOC への立候補ファイル提出に伴い、翌 2 月 13 日午前、
都庁内で、東京の開催計画の全容に関する記者会見を実施した。
記者会見では、招致委員会会長の石原知事をはじめ、理事らが出席し、
新たに招致委員会理事に就任
した陸上競技ハンマー投げ現
役アスリートの室伏広治氏が
出席した。招致委員会アスリ
ート委員会委員長の小谷理事
が「強力な助っ人」と称した
室伏理事を得て、「これから
が正念場」と、一同気を引き
締めた。
<出席者のコメント>
石原招致委員会会長
「テーマは“平和に貢献する、世界を結ぶオリンピック”。日本が長年、
紛争に巻き込まれない平和の歴史を築いてきたことで、胸を張ってオリ
ンピックで世界に平和を呼びかけることができます」
竹田招致委員会副会長
「子どもたちに夢と希望を与えるオリンピックにするために、選手団の
国際競技力の向上は欠かせません。それを踏まえ、招致成功のために最
大限努力してまいります」
谷川招致委員会副会長
「支持率が他都市と比べて低いことを、しばしば指摘されてきましたが、
最近になってオリンピック招致へ向けた人々の熱気が高まっているよう
に感じます。皆さんのご協力をお願いいたします」
河野招致委員会事務総長
「財政面については問題なく、既に確保済みです。日本人と世界、都市
と自然等、さまざまな事柄を“結び”、今までにないオリンピックを実
現させます」
室伏招致委員会理事
「オリンピックは選手だけのものではないことを伝えたいと思います。
招致から開催まで、みんなで参加することが大事。また、長年問題にな
っているドーピングについて、日本は厳しい目を持っているので、すべ
ての選手が安心して自分の力を発揮できると思います」
小谷招致委員会理事
「選手にとって、選手村と競技場の近さや選手村の充実は大変重要で、
その点、東京オリンピックは高いレベルを誇ります。選手としてだけで
はなく、二児の母としても、オリンピックの素晴らしい感動を子どもた
ちに体験して欲しいと思います」
136
第一部 第3章
立候補都市段階
(5)
日本語版及び概要版の作成
IOC に提出する英語・フラン
ス語による立候補ファイルとは
別に、日本語版(全 451 ペー
ジ)、日本語概要版(全 58 ペー
ジ)及び英語概要版(全 56 ペ
ージ)を作成し、国内関係者向
け及び広報活動用に活用した。
137
第一部 第3章
立候補都市段階
第3節 国内招致活動
【事業費 1,642 百万円(再掲)】
1 招致気運の盛り上げ事業
(1) IOC 評価委員会訪問前(平成 20(2008)年 6 月~平成 21(2009)年 3 月)
この時期は支持層拡大期にあたり、東京から全国へ、1964 年東京大
会を知る中高年を中心とする壮年層から若年層への支持拡大と、各種団
体との連携を中心に事業を展開した。
ア 現状分析・目標
平成 20(2008)年 6 月 4 日の立候補都市選定において、東京が
申請ファイルに対する総合評価で1位通過したことにより、招致活動
は都内のみならず日本全国における関心事となった。この機を捉え、
より幅広い層からの支持を獲得することが、この時期の目標であった。
また、平成 21(2009)年 4 月には、IOC 評価委員会訪問が予定さ
れており、更にその前後には IOC による世論調査の実施が予測されて
いたため、これに向けて全国各地から盛り上げを図り、高い支持率を
獲得する必要があった。
イ 方針
初期段階で実施してきた、都内を中心とする広く一般を対象とした
イベントに加え、PR の対象者及び目的を明確にした上で、支持層を
拡大するための戦略的な事業展開を実施した。具体的には、全国祭り
プロモーション、ふるさと特使による各県知事・母校訪問等による、
日本各地での気運の盛り上げ、スポーツ愛好者以外にも支持拡大を狙
ったアニメフェア等を始めとする若者向けイベントへの出展等である。
さらに、
「結び」のロゴステッカーを車両に貼ってもらうメッセージタ
クシー発進式等、経済界等との連携や、大学との連携協定締結による
教育関係のネットワーク拡大も行った。また、全日本商店街連合会会
長の働きかけにより京都商店連盟・京都市の協力を得て実施した、京
都市内商店街での招致応援イベント、懸垂幕・小旗の掲出等、各地か
らの申し出により実現した PR 活動も、全国レベルに拡大していった。
ウ 成果
立候補都市選定に続き、夏には北京でオリンピック・パラリンピッ
ク競技大会が開催され、オリンピックに対する関心が、日本全国でも
高まった。
しかし、平成 20(2008)年秋口からの未曾有の経済危機等、日
本を取り巻く社会経済環境は急激に変化し、東京招致への支持率が一
気に跳ね上がるというわけにはいかなかった。それでも翌年 1 月に行
われた第2回の調査は、前回より上昇し 70%の支持を得た。一方、IOC
が実施した調査においては、予測時期よりも早期に行われたこともあ
り、56%の支持率にとどまった。成熟社会における国民の志向は多様
化しており、一つの事柄に高い支持率を得ることの難しさを再確認す
る結果となった。
138
第一部 第3章
立候補都市段階
エ 主な事業
(ア) ライトアップ
実施時期:平成 20(2008)年 6 月 5 日から 30 日まで
実施場所:東京タワー、東京都庁舎
概
要:6 月 4 日に東京が立候補都市に選定されたことを祝し
「TOKYO」「2016」の文字を、タワーの大展望台
部分にライトアップした。また、都庁舎でも五色のラ
イトアップを行った。この後、平成 21(2009)年
4 月の IOC 評価委員訪問時、同年 10 月 2 日の開催都
市決定当日にも、日本を応援する意味を込めて、同様
のライトアップを行った。
Licensed by TOKYOTOWER
(イ)
五色にライトアップされる都庁舎
招致 PR グッズのデザイン刷新
実施時期:平成 20(2008)年 6 月 12 日から
平成 21(2009)年 10 月 2 日まで
概
要:立候補都市選定に伴い、五輪とロゴを組み合わせた招
致エンブレムの使用が認められ、掲出物やイベント等
で配布する PR グッズについて、新たなデザインでの
作成を行った。従前より人気の高いピンバッジ、応援
棒等に加え、再生素材を原料とするエコクリップ、子
ども向けの風船等、東京が目指す未来をメッセージと
して込めた新グッズで応援を呼びかけた。
139
第一部 第3章
立候補都市段階
(ウ)
全国祭りプロモーション
実施時期:平成 20(2008)年 5 月 3 日から
平成 21(2009)年 2 月 7 日まで
実施場所:全国 7 か所(春日部、秋田、青森、仙台、高知、長崎、札幌)
概
要:全国の有名な祭りにおいて、ふるさと特使を始め、オ
リンピアン・パラリンピアンによるイベント参加や、
招致をテーマにした大型造作物の掲出等を行った。自
治体や祭り関係者と連携し、地元メディアを通じた情
報発信を行うことにより、日本全国からの気運盛り上
げに寄与した。
ふるさと特使とカーリング チーム青森 in ねぶた祭り
(エ)
商店街フラッグの掲出
実施時期:平成 20(2008)年 7 月から 10 月まで
概
要:北京オリンピック・パラリンピックの開催時期に合わ
せ、東京都商店街連合会及び都内商店街の協力により、
東京招致を祈念するフラッグの掲出を行った。掲出は、
1,000 商店街、約 42,000 枚にのぼった。
商店街フラッグ
140
第一部 第3章
立候補都市段階
(オ)
ニッポン応援ストリート
実施時期:平成 20(2008)年 8 月 8 日から 9 月 15 日まで
実施場所:新宿 MOA4 番街通り
概
要:北京オリンピック・パラリンピックの開催時期に合わ
せて通りにモニターを設置し、観戦の場を提供した。
期間中は、開会式、競泳・野球観戦イベント、速報写
真展等を併せて実施し、期間中の来場者のべ約 150
万人に対してオリンピック・パラリンピックの素晴ら
しさを PR した。
(カ)
開催都市決定 1 年前スペシャルイベント
実施時期:平成 20(2008)年 10 月 2 日
実施場所:東京ミッドタウン
概
要:開催都市決定まで1年に迫ったことを広く周知するた
めのトークイベント。知事自ら、来場者 500 人に対
し招致への支援を熱く呼びかけた。また、日本での開
催を応援するオリンピアン、パラリンピアン 8 名がこ
れまでの出場経験を交えながら、日本で開催する意義
について訴えた。
141
第一部 第3章
立候補都市段階
(キ)
TOKYO●2016 ~日本でオリンピック・パラリンピックを~
実施時期:平成 20(2008)年 10 月 19 日から 21 日まで
実施場所:新宿駅西口広場イベントコーナー
概
要:楽しみながらオリンピック・パラリンピックについて
の理解を深められる、参加型イベント。期間中約
20,000 名 が 訪 れ た 。 体 力 チ ャ レ ン ジ ラ リ ー や
TOKYO 体操の実演等により、スポーツへの関心を高
めてもらうとともに、アスリートによるトークショー、
2016 年開催計画の紹介等により、東京での開催意義
の周知を行った。
(ク)
東京オリンピック・パラリンピック招致サポーター大集合
実施時期:平成 20(2008)年 12 月 12 日
実施場所:国立代々木第一体育館
概
要:招致活動を応援する都民・国民約 10,000 人が集結し
各界著名人からの応援トークに声援を送るとともに、
招致への決意を新たにした。また、この会で北島康介
氏が「招致応援党」の結成を宣言。翌年 1 月には渋谷、
新宿にて街頭演説を行った。
142
第一部 第3章
立候補都市段階
(ケ)
TOKYO MOVE UP トークスペシャル
実施時期:平成 21(2009)年 1 月 26 日
実施場所:東京ミッドタウン
概
要:「2016 年東京オリンピック・パラリンピックがこれ
からの TOKYO を変える」と題して、知事と人気ブロ
ガー等が白熱のトークを繰り広げた。イベントの最後
には、未来のオリンピアンを目指す子供たちから知事
に、応援メッセージの寄せ書きが贈呈された。
(コ)
東京国際アニメフェア 2009
実施時期:平成 21(2009)年 3 月 18 日から 21 日まで
実施場所:東京ビッグサイト
概
要:世界最大級のアニメーション見本市にブースを出展。
来場者は約 13 万人に上った。東京都各局のイメージ
キャラクターや各県の国体のマスコットとともに、若
年層を対象とした招致 PR を行った。
143
第一部 第3章
立候補都市段階
(サ)
東京マラソン EXPO2009
実施時期:平成 21(2009)年 3 月 19 日から 22 日まで
実施場所:東京ビッグサイト等
概
要:ブース出展、ステージ展開等により、招致に向けての
盛り上げを図った。ブースでは、IOC に提出した立候
補ファイルのほか、選手村予定地の模型、地図と点灯
ランプを組み合わせたベニューマップ等を展示し、
8km 圏内に競技会場を配置するコンパクトさや、既存
施設の利用による環境への配慮についてアピールし
た。
144
第一部 第3章
立候補都市段階
(2)
IOC 評価委員会訪問後(平成 21(2009)年 4 月~)
この時期はカウントダウン期にあたり、メディアを通しての国内外へ
の情報発信を重点に置いた事業展開を行うとともに、民間団体による自
主的活動への側面的支援を行い、盛り上げ事業の幅を広げた。
ア 現状分析・目標
招致気運の盛り上げ事業もいよいよ最終段階を迎え、
「○日前」をう
たった事業展開により、開催都市決定時に盛り上がりの更なるピーク
が来るような組み立てを行う必要があった。また、これまでの PR 手
法、他団体との連携を更に拡大し、自主的に協力を申し出る民間団体
との連携が課題とされた。
イ 方針
100 日前の「カウントダウンクロック除幕式」等、カウントダウン
を意識した事業を展開する一方、「夏休みバスツアー」「選手村に泊ま
ろう!」等、親子でオリンピック・パラリンピックについて語り合え
るような場の提供も行った。
また、「メッセージフラッグキャンペーン」「高橋尚子と東京を走ろ
う!プロジェクト」「KANPEI EARTH Marathon(カンペイ アー
スマラソン)」等、日本の熱い想いを開催都市決定の地であるコペンハ
ーゲンまでつなげるための、継続的事業も実施した。
なお、この時期は特にメディア戦略を意識し、国内メディアのみな
らず海外メディアを積極的に呼び込んで、IOC 委員にも日本の盛り上
がりが情報として届くような組み立てとした。
ウ 成果
「○日前」をうたったイベントは、事業の目的が明確なためメディ
アで取り上げられる機会も多く、PR 効果は高かったと言える。
また、民間団体による自主的協力の申し出は、文化関係・音楽関係
等、スポーツ関係以外からも多く寄せられ、これらの団体に対しては、
後援名義の付与、のぼり旗等の貸与、配布用招致グッズの提供により、
草の根的・自発的盛り上げ活動の側面的支援を行った。
さらに、招致気運の自発的な盛り上がりは都外自治体にも及び、埼
玉県本庄市からは招致の成功を祈願したダルマが贈呈されるなど、招
致活動の輪が広がっていった。
世論調査の支持率は、平成 21(2009)年 4 月時点で 80%を記
録した。招致委員会による支持率調査はこれが最後であったが、同年
9 月の「出陣式」「TOKYO●2016 開催都市決定応援大パレード」
を経て、10 月 2 日の開催都市決定日に向けて、招致気運は更なる盛
り上がりを見せていった。
145
第一部 第3章
立候補都市段階
エ
(イ)
主な事業
(ア) KANPEI EARTH Marathon(カンペイ アースマラソン)
実施時期:平成 20(2008)年 12 月から
実施場所:大阪府、東京都、アメリカ合衆国シカゴ市、デンマー
ク王国コペンハーゲン市等
概
要:招致大使でもある間寛平氏が、マラソンとヨットで数
年かけて地球を一周する企画との共同企画。12 月に
大阪府を出発し、東京、シカゴ等に立ち寄りながら、
10 月 2 日直前に、開催都市決定地であるコペンハー
ゲン市に到着した。現地では日本サポーター達ととも
に、最終盛り上げに大きく貢献した。
商店街フラッグの掲出
実施時期:平成 21(2009)年 3 月から 5 月まで
概
要:IOC 評価委員会の訪問に合わせ、競技会場予定地周辺
を中心にフラッグ等の装飾を行ったが、都内商店街に
ついても東京都商店街連合会等と連携してフラッグ
の掲出を行った。掲出は、前回よりさらに多い約
1,100 商店街、約 46,000 枚にのぼった。
146
第一部 第3章
立候補都市段階
(ウ)
忠犬ハチ公たすき掛け式
実施時期:平成 21(2009)年 4 月 9 日から 20 日まで
実施場所:渋谷区 忠犬ハチ公像前
概
要:招致ロゴ・スローガンと桜の花びらを組み合わせてデ
ザインしたたすきを作成し、忠犬ハチ公に掛ける式典
を行った。この事業は東京商工会議所、忠犬ハチ公銅
像維持会の協力申し出により実現したもので、IOC 評
価委員会の来日時期にあわせ、若者の街渋谷での招致
PR に貢献した。
(エ)
高橋尚子と東京を走ろう!プロジェクト
実施時期:平成 21(2009)年 6 月 21 日から 10 月 2 日まで
概
要:高橋尚子氏を「東京オリンピック・パラリンピック招
致応援ランナー」に任命するとともに、「高橋尚子と
東京を走ろう!」プロジェクトを立ち上げ、コペンハ
ーゲンにおける開催都市決定まで継続的にイベント
を行った。
・ 東京招致応援リレー
国立霞ヶ丘競技場から晴海オリンピックスタジ
アム建設予定地までを、公募したランナーと高橋
尚子氏が一緒にリレー方式で走破した。
・ 東京招致応援ラン
高橋尚子氏によるトークショーの後、一般参加
者約 1,300 名と駒沢オリンピック公園内をラン
ニングした。
・ 東京招致応援ヴァーチャル駅伝
招致を応援する人たちが実際に走った距離をウ
ェブに登録することにより、距離を足し上げてい
くヴァーチャル駅伝。参加者約 1,500 人が、東
京からコペンハーゲンまでの約 10,000km にた
すきを繋いだ。
147
第一部 第3章
立候補都市段階
(オ)
カウントダウンクロック除幕式
実施時期:平成 21(2009)年 6 月 24 日
実施場所:東京国際フォーラム
概
要:開催都市決定まで 100 日となったことを広く周知す
るため、メディア向けにカウントダウンクロックの除
幕式を行った。後日、更に都内 10 か所に同様のクロ
ックを設置し、イベントと組み合わせての露出を図る
等、招致気運の最終盛り上げ活動に活用した。
(カ)
GREEN TOKYO ガンダムプロジェクト
実施時期:平成 21(2009)年 7 月 11 日から 8 月 31 日まで
実施場所:都立潮風公園
概
要:緑あふれる都市再生と魅力あふれるまちづくりを目指
す GREEN TOKYO ガンダムプロジェクト実行委員
会が、オリンピック競技会場予定地である潮風公園に
高さ 18mの実物大ガンダムを設置した。ガンダムは、
その後左肩に招致ロゴをあしらった特別バージョン
に。そのロゴ除幕の権利がオークションにかけられ、
260 万1千円で落札、8月 1 日に実施された。これ
に合わせ、招致委員会ではガンダムのキャラクターを
デザインしたカウントダウンクロックを公園内に設
置し、ふるさと特使等が招致への応援を呼びかけた。
落札金は後日、招致委員会に寄付された。
© 創通・サンライズ
148
第一部 第3章
立候補都市段階
(キ)
メッセージフラッグキャンペーン
実施時期:平成 21(2009)年 8 月 13 日から 10 月 2 日まで
実施場所:東京タワーほか
概
要:開催都市決定の 50 日前にあたる 8 月 13 日から、ロ
ゴ入り巨大フラッグを都内数か所に設置し、来場者に
招致応援メッセージを書き込んでもらった。このフラ
ッグは、開催都市決定日前にコペンハーゲン市に持ち
込まれ、日本の熱い想いを現地に届けるとともに、最
終盛り上げ活動に活用した。
(ク)
夏休みバスツアー
実施時期:平成 21(2009)年 8 月 20 日
実施場所:競技会場予定地
概
要:公募の親子約 80 名を、国立霞ヶ丘競技場、お台場海
浜公園等の競技会場予定地に案内し、会場配置のコン
パクトさを実感してもらった。また、ツアーの最終地
点である東京ビッグサイトでは、オリンピアンによる
トークショーを実施し、選手にとっても東京での開催
実現は強い願いであることを訴えた。
149
第一部 第3章
立候補都市段階
(ケ)
選手村に泊まろう!
実施時期:平成 21(2009)年 8 月 22 日から 23 日まで
実施場所:選手村予定地
概
要:選手村予定地におけるキャンプイベント。公募による
参加家族約 80 名の出身国は 8 か国にわたり、招致活
動のスローガン“Uniting Our Worlds”のとおり国
際交流を行った。カヌー等の体験イベントのほか、限
られた水の有効活用、ごみの分別等をプログラムに加
え、東京の計画が環境に配慮したものであることを
PR した。
(コ)
トップアスリートとスポーツ体験
実施時期:平成 21(2009)年 9 月 23 日
実施場所:代々木公園等
概
要:開催都市決定直前期に、更なる招致気運の盛り上げを
図るため、参加型のイベントを開催。約 4,000 人が
訪れた。メイン会場ではオリンピアン等によるトーク
ショーやスポーツ教室、「2016 年招致」に因み五色
のたすきをバトン代わりに 200 名以上の参加者が
201.6 分間つないでいくリレー等を行った。幅広い年
齢層の方々に対し、東京招致への支援の輪を広げよう
とするメッセージを伝えることができた。
150
第一部 第3章
立候補都市段階
2 マーケティング活動
(1) 主な業務内容
① 招致オフィシャルパートナープログラムのセールス及び契約交渉
② 招致ライセンシングプログラムのセールス及び契約交渉
③ 招致ロゴマーク等の使用申請の承認作業及び報告書(成果物含む)
の提出
④ 招致オフィシャルパートナーリコグニション ※ に関する作業
⑤ 招致オフィシャルパートナーへのホスピタリティ機会の提供
⑥ 招致オフィシャルパートナーとのタイアップ事業の検討並びに実施
(2)
オフィシャルパートナーとの連携
招致オフィシャルパートナーは、平成 20(2008)年 6 月の立候補
都市選定から、同年開催の北京オリンピック期間までに、既存の 9 社に
加え、新たに 3 社が招致オフィシャルパートナーとなった(合計 12 社)。
また、招致委員会が主催する記者会見やイベントにおいて、招致オフ
ィシャルパートナーの企業ロゴを配したリコグニションボード等を掲出、
イベントへの招待やパートナー会議を開催して、招致活動への意見交換
等を行い、招致気運の盛り上げへの更なる協力を求めた。
その結果、招致オフィシャルパートナーとタイアップした招致活動や
招致パートナー独自の招致活動が展開され、招致気運盛り上げの後押し
となった。
一方、招致ロゴマーク等の使用に関する承認作業については、その一
部を招致委員会だけでなく、招致本部でも行うようになり、より迅速な
承認作業が行えるようになった。
リコグニションボード例
パートナーとのタイアップ例:特別塗装機
その後、新たなパートナーとして5社が加わり、最終的に招致オフィ
シャルパートナーは合計 17 社となった。平成 21(2009)年 9 月に
原宿表参道で行ったパレードにも複数のパートナーが参加し、招致活動
最終局面での盛り上げに大きく寄与した。
※ リコグニション:オフィシャルパートナーを広く一般に認知させるための活動・表示
151
第一部 第3章
立候補都市段階
<2016 東京招致オフィシャルパートナー(17 社)>(順不同)
株式会社アシックス、株式会社デ
サント、ヤフー株式会社、TBC グ
ループ株式会社、株式会社大塚商
会、株式会社日本航空インターナ
ショナル、全日本空輸株式会社、
東日本旅客鉄道株式会社、AIU 保
険会社、株式会社ジェイティビー、
近畿日本ツーリスト株式会社、株
式会社読売新聞東京本社、株式会
社バンダイ、丸大食品株式会社、
記者会見でのリコグニション
大和ハウス工業株式会社、ヤマト
運輸株式会社、アサヒビール株式
会社
(3)
TOKYO2016 招致公式応援グッズの販売
ア ライセンシーとの契約
招致ロゴを配した商品を販売するライセンシーについては、招致活
動期間を通じ 4 社と契約を締結し、各社の工夫を活かしたライセンス
商品を開発、販売することで、都民、国民からの招致活動への支援の
絆を広げた。
<ライセンシー(4 社)>(順不同)
株式会社ジェイエフエー、飯田水引協同組合、株式会社 JALUX、ロ
ゴアイス株式会社
イ ライセンシーグッズの開発
立候補都市となった、平成20
(2008)年の夏より、新「招致ロ
ゴ」をあしらったライセンス商品を
販売展開した(P511 資料 9 参照)。
売上げの一部は招致活動資金となっ
た。申請都市の期間から既に人気の
あったピンバッジ、T シャツ、タオ
ル、ストラップ等はデザインチェン
ジを行い、引き続き販売をした。新たに菓子類(クランチチョコ・メ
ープルクッキー)が追加され、記念品としてだけでなく、土産品とし
ての要素も盛り込んだ。また国内外で高い人気を誇るキャラクター「ハ
ローキティ」とコラボレーション ※ した3種のアイテム(根付・ボー
ルペン・シャーペン)を発表、IOC 評価委員会訪問時にはメディアに
※ コラボレーション:異なる分野の人や団体が商品を企画し、協力して制作すること。
152
第一部 第3章
立候補都市段階
取り上げられ、人気を呼んだ。平成 21(2009)年夏には、東京の
シティプロモーションのひとつである「東京水」を使用し、東京の職
人の手で制作した「ロゴ入りアイス」を発売した。
当初、主な販売場所は都庁内や岸記念体育館であったが、販売チャ
ネルを拡大し、より一般へ流通させるため「博物館、動物園、ホテル、
空港」といった土産売場、招致委員会主催イベントへの出店、コンビ
ニエンスストア(ローソン)での販売を実施した。また、同年 8 月に
新商品を追加した。
ウ グッズの効果
ライセンシーグッズの販売は招致を応援する最も身近な方法として、
また「東京土産」としても国内外で人気を得て、広く東京招致の PR
に繋がった。
来庁者や観光客で賑う都庁内は、アイテム数を揃えるスペースも確
保できたことにより売上げが高かった。年間を通し来場者数の多い東
京ビッグサイト、観光エリアの土産売場での売上げも多かった。ウェ
ブショップは遠方や多忙な人々の間で活用され、要望の多い販売方法
であった。ハローキティ商品は既存の人気に相乗する形で売上げを常
に伸ばし、新規層への PR に繋がった。商品の多くは、その品質の良
さで海外への土産品としても喜ばれた。
エ 限られた時間内で創意あるグッズを
グッズがより多くの人々の手にわたるには、購入しやすい販売場所
の確保、実用性の高いアイテムを取り揃えることが必要不可欠である。
また話題性の高い人気キャラクターを用いた限定商品等は、新たな層
へ応援の輪が広がっていくことが見込まれる。
招致という限られた時間のなか、例えば「結び」というコンセプト
にマッチした商品、再生素材やユニバーサルデザインの商品等、招致
活動が訴求する価値観やコンセプトを表現できるような独自の製品開
発が望まれる。
(4)
サポーターズクラブの発足
東京が立候補都市に選定され、オリンピック招致への関心も着実に広
がっていったことを踏まえ、平成20(2008)年8月、東京オリン
ピック・パラリンピック招致委員会の公式サポーター(寄附金、ボラン
ティア制度)組織として、
「TOKYO●2016サポーターズクラブ」を
発足した。招致委員会では招致の趣旨に賛同する法人・個人の協力を得
ることで資金確保にかかる活動の幅を広げ、支持層を増やしていくこと
を狙った。
ア サポーターズクラブの概要
・ 会長:山本寛斎氏(デザイナー/プロデューサー)
・ 期間:平成 20(2008)年 8 月 4 日から
153
第一部 第3章
立候補都市段階
平成 21(2009)年 10 月 2 日まで
・ 目的:招致活動資金の調達
招致気運の醸成
2016 年オリンピック・パラリンピックのボランティア希
望者募集
イ 主な活動内容
・ 資金調達を主眼に置いた寄附金額設定として、個人・法人それぞ
れで金額による会員種別(ゴールド、シルバー、ブロンズ、一般)
を設定
・ 紹介により各種団体へのアプローチ実施
・ ボランティア募集のノウハウを持ったメンバーによる協力を得て
募集スキーム構築(PC サイト、携帯サイト)
ウ 活動成果
(ア) 資金調達
区分
会員種別
会員数
法人会員: 92 件 225 百万円
個人会員:277 件
18 百万円
個人
ゴールド
9
総 合 計:369 件 243 百万円
シルバー
3
(イ) 招致気運の醸成
ブロンズ
28
・ ライオンズクラブ、ロータリー
一般
237
クラブ、青年会議所等の会合・行
小計
277
事にて招致 PR 実施
法人
ゴールド
8
・ サポーターズクラブメンバーの
シルバー
20
協力により、招致委員会公式携帯
ブロンズ
31
サイトを立上げる
一般
33
・ サポーターズクラブメンバーで
小計
92
世論醸成の有識者から、国内広報
戦略のアドバイスやサポートを受け、招致気運の盛り上げに寄与
(ウ) 2016 年大会のボランティア募集
平成 21(2009)年 3 月、「2016 年の大会でボランティアを
やりたい」という声が多く寄せられたことを受け、大会開催時のボ
ランティア希望者を事前の予備登録という形で募集した。
登録者数 6,584 名(全都道府県在住者からの登録あり)。
(エ) TOKYO●2016 サポーターズクラブイベント「勝つぞっ」
平成 21(2009)年 10 月2日、開催都市が決定されることに
伴い、決定の瞬間を見守り、東京招致の喜びを分かち合うためのイ
ベント「勝つぞっ」を東京タワー大展望室において開催した。
・ 主 催:TOKYO●2016 サポーターズクラブ Yes! Japan
・ 参加者:山本寛斎氏、古田敦也氏、CHAGE 氏、アニマル浜口
氏 、 浜 口 京 子 氏 、 サ ポ ー タ ー ズ ク ラ ブ 会 員 、 Yes!
Japan 賛同者等、約 300 人
154
第一部 第3章
立候補都市段階
第4節 国際招致活動
【事業費 1,900 百万円】
1 招致プロモーション全般について
立候補都市に選定され、国際プロモーションが解禁されたことを受け、
東京の招致関係者は、世界各地で開催される国際スポーツイベントへ精力
的に参加し、計画の優位性や都市の魅力を IOC 委員はじめオリンピック
関係者に訴えた。各会場におけるプロモーション活動は、国内 IOC 委員
及び招致委員会幹部が中心になって実施し、これを招致委員会の国際部門
でサポートする体制を取った。
初期の段階では、IOC 委員と接する際には、極力その IOC 委員と懇意
にしている海外コンサルタントを同席させるようにして話題を広げ、関係
構築に役立てるようにした。
また、各海外コンサルタントは、担当の IOC 委員との日常の会話の中
から、時々の情勢と、東京に対する意見を取り続けるようにし、以後のプ
ロモーション活動やコミュニケーション戦略に役立てていった。
このプロモーション活動の過程及び計画策定の中から、「Uniting Our
Worlds」というメインコンセプトに加え、オリンピックは Venue (競技
会場)、City(都市)、そして支える People(人々)が揃うことによって実現
するという「ヒーローたちの檜舞台(Setting the Stage for Heroes)」
というキャッチフレーズが、また、1964 年大会の施設を改修して 2016
年以降も使用すること等、オリンピック・ムーブメントが 100 年にわた
り継続していく「100-Year-Legacy」というコピーが生まれ、活動の状
況に即して使用していくこととなった。
プロモーションを担当するメンバーについては、平成 21(2009)年
に入ると、国際スポーツ大会や関係会議の日程に応じて、招致委員会幹部
を満遍なく海外に派遣して、継続的な IOC 委員との面会を心がけた。
こうした国際招致チームのプロモーション活動は、例えば、IOC 主催国
際スポーツ会議では、世界スポーツ・フォー・オール会議や IOC スポー
ツと環境会議など計 6 件、その他の国際スポーツ会議では、スポーツ・
アコード会議、OCA 総会など計 16 件、大規模国際競技大会では、世界
陸上ベルリン大会や世界水泳ローマ大会など計 22 件に及んでいる。この
うち、国際スポーツ会議等で行ったプレゼンテーションの回数は 9 回、
ブース展開は 5 回に上る(詳細は P157 本節2以降参照)。
しかしながら、各メンバーとも国内での業務も多く、国内調整に時間を
取られた結果、充分な海外滞在時間が取れなかったことは否めない。
今後の課題としては、招致活動における国内調整の責任者と、海外プロ
モーション活動の顔となる人材を分けることが望ましく、対外的な「招致
委員会の顔」を個人又は複数人のチームとして固定すべきである。また委
員会の顔となる人物は、国際招致活動に専念できるよう、立候補都市段階
以降の約1年半は専任で働けること、パートナーとともに海外での活動が
できることが理想である。
155
第一部 第3章
立候補都市段階
東京が参加した海外のスポーツ関係国際会議や国際スポーツ大会一覧
件
名
開催年月
場
所
プレゼンテーションを行った会議・競技大会
パン・アメリカンスポーツ機構総会
2008 年 10 月
メキシコ アカプルコ
アジアオリンピック評議会総会
2008 年 10 月
インドネシア バリ
ヨーロッパオリンピック委員会総会
2008 年 11 月
トルコ イスタンブール
スポーツ・アコード会議
2009 年 3 月
アメリカ デンバー
オセアニア国内オリンピック委員会総会
2009 年 3 月
ニュージーランド
クイーンズタウン
国際スポーツ記者連盟総会
2009 年 4 月
イタリア ミラノ
テクニカル・プレゼンテーション
2009 年 6 月
スイス ローザンヌ
アフリカ国内オリンピック委員会連合総会
2009 年 7 月
ナイジェリア アブジャ
IOC 総会
2009 年 10 月
デンマーク コペンハーゲン
ブース展開を行った会議・競技大会
オリンピック競技大会
2008 年 8 月
中国 北京
パラリンピック競技大会
2008 年 9 月
スポーツ・アコード会議
2009 年 3 月
アメリカ デンバー
テクニカル・プレゼンテーション
2009 年 6 月
スイス ローザンヌ
国際パラリンピックデー
2009 年 7 月
ドイツ ベルリン
IAAF 世界陸上競技選手権大会
2009 年 8 月
ドイツ ベルリン
その他の会議・競技大会
スポーツ・アコード会議
2008 年 6 月
ギリシャ アテネ
ウィンブルドン選手権
2008 年 6 月
英国 ロンドン
IAAF 世界ジュニア陸上競技選手権大会
2008 年 7 月
ポーランド
ブィドゴシュチュ
世界ジュニア選手権水泳競技大会
2008 年 7 月
メキシコ モンテレー
IOC スポーツと文化、教育フォーラム
2008 年 9 月
韓国 釜山
IAAF ワールドアスレチックファイナル
2008 年 9 月
ドイツ シュトゥットガルト
IAAF 世界ハーフマラソン選手権大会
2008 年 10 月
ブラジル リオ
ローザンヌサミット会議
2008 年 10 月
スイス ローザンヌ
IOC 世界スポーツフォーオール会議
2008 年 11 月
マレーシア
ゲンティング・ハイランド
スポーテル・モナコ会議
2008 年 10 月
モナコ
IF スポーツフォーラム
2008 年 11 月
スイス ローザンヌ
平和とスポーツ国際フォーラム
2008 年 12 月
モナコ
世界男子ハンドボール選手権大会
2009 年 1 月
クロアチア ザグレブ
国際スポーツ用品・ファッション専門見本市
2009 年 2 月
ドイツ ミュンヘン
IOC スポーツと環境会議
2009 年 3 月
カナダ バンクーバー
アジアオリンピック評議会スポーツコングレス
2009 年 3 月
クウェート クウェートシティー
156
第一部 第3章
立候補都市段階
件
名
開 催年月
場
所
その他の会議・競技大会
世界室内選手権大会(アーチェリー)
2009 年 3 月
ポーランド ジェシュフ
IAAF 世界クロスカントリー選手権大会
2009 年 3 月
ヨルダン アンマン
WADA 会議
2009 年 5 月
カナダ モントリオール
地中海競技大会
2009 年 6 月
イタリア ペスカラ
ボート・ワールドカップ
2009 年 6 月
ドイツ ミュンヘン
アジアオリンピック評議会総会
2009 年 7 月
シンガポール
ワールドゲームズ
2009 年 7 月
台湾 高雄
ヨーロッパユースオリンピック夏季フェステ
2009 年 7 月
フィンランド タンペレ
IAAF 世界ユース陸上競技選手権大会
2009 年 7 月
イタリア ブレッサローネ
世界水泳選手権大会
2009 年 7 月
イタリア ローマ
世界柔道選手権大会
2009 年 8 月
オランダ ロッテルダム
国際パラリンピック委員会 20 周年記念式典
2009 年 9 月
ドイツ ボン
世界ボクシング選手権
2009 年 9 月
イタリア ミラノ
世界アーチェリー選手権大会
2009 年 9 月
韓国 蔚山
IAAF ワールドアスレチックファイナル
2009 年 9 月
ギリシャ テッサロニキ
仏語圏競技大会
2009 年 9 月
レバノン ベイルート
ィバル大会
2 パン・アメリカンスポーツ機構 ※ 総会
(1) イベント概要
・ 期間:平成 20(2008)年 10 月 9 日から 11 日まで
・ 場所:メキシコ合衆国 アカプルコ市
・ 参加者:河野招致委員会事務総長、荒木田招致委員会アスリート委
員会副委員長、槙招致委員会事務次長、岩瀬招致委員会デ
ィレクター、他 3 名
(2)
プレゼンテーションの主な内容
東京が選手村を中心とする
半径 8km のコンパクトな会
場計画であること、ホテルや
交通インフラだけでなく、ブ
ラジル料理店やメキシコ料理
店等も多数あり、親しみやす
い街であることを、スペイン
語を交えて説明した。
※ パン・アメリカンスポーツ機構(PASO):アメリカ地域の 42 の国と地域のオリンピック委員
会が加盟
157
第一部 第3章
立候補都市段階
「計画の優位性」「都市機能の充実」に加え、中南米大陸を中心とす
る IOC 委員に「親しみ」をアピールした。
(3)
成果
この時期は会場計画の詳細に加え、各都市の「個性」に関心がある時
期であった。東京は、「ベイゾーン」及び「ヘリテッジゾーン」を具体
的に説明することにより、都市の中心でのコンパクトなオリンピックの
開催実現をアピールし、更にインフラやホスピタリティーの精神など都
市の魅力も訴えることができた。
3 アジアオリンピック評議会 ※ 総会(バリ島)
(1) イベント概要
・ 期 間:平成 20(2008)年 10 月 18 日から
21 日まで(総会は 21 日)
・ 場 所:インドネシア共和国 バリ島
・ 参加者:竹田 JOC 会長、河野招致委員会事務総長、小谷招致委員
会理事、中村招致本部招致推進部長、猪谷 IOC 副会長、
岡野 IOC 委員、他 11 名
(2)
プレゼンテーションの主な内容
「コンパクトな計画の優位
性」「都市機能の充実」に加え、
麻生総理大臣がオリンピアンで
あること等も盛り込み、猪谷・
岡野両 IOC 委員も交えて、東京
チームの熱意をアピールした。
また、メンバーは揃ってバリの
民族衣装でプレゼンテーション
に臨み、
「アジアの一員」という
姿勢を明確に示した。
(3)
成果
政府の全面的支援等も含め、東京の開催の利点は十分に伝わった。さ
らに東京の招致活動の主要メンバー全員が顔を揃えた事により「アジア
重視」の姿勢と熱意をアピールできた。なお、第 1 回アジアビーチゲー
ムズ ※ が同時に開催され、第 1 回南米ビーチゲームズの責任者であるマ
ッグリオネ IOC 委員もバリ島を訪問していた。
※ アジアオリンピック評議会(OCA)
:アジア地域の 45 の国と地域のオリンピック委員会が加盟
※ 第1回アジアビーチゲームズ:17 競技 26 種目が実施され、約 3,000 名が参加。日本からは
選手・役員含め 120 名が参加した。
158
第一部 第3章
立候補都市段階
4 ヨーロッパオリンピック委員会 ※ 総会
(1) イベント概要
・ 期 間:平成 20(2008)年 11 月 21 日から 22 日まで
・ 場 所:トルコ共和国 イスタンブール市
・ 参加者:竹田 JOC 会長、河野招致委員会事務総長、小谷招致委員
会理事、猪谷 IOC 副会長、岡野 IOC 委員、他 13 名
(2)
プレゼンテーションの主な内容
「コンパクトな計画の優位性」「都市機能の充実」に加え、リーマン
ショック以降の世界同時不況が深刻化してきたため、4,000 億円のオ
リンピック開催準備基金等東京の強固な財政基盤について強いアピー
ルを開始した。また、招致活動のリーダーとしては竹田 JOC 会長、計
画面については河野招致委員会事務総長が中心となり、役割分担して説
明した。
(3)
成果
この時期より「財政面の安
定性」と「アスリート本位」
をアピールし続ける事によっ
て、確実に約束を守る東京、
選手の為の大会を強く印象づ
けることができた。
5 スポーツ・アコード会議 ※
(1) イベント概要
・ 期 間:平成 21(2009)年 3 月 23 日から 27 日まで
・ 場 所:アメリカ合衆国 デンバー市
・ 参加者:竹田 JOC 会長、河野招致委員会事務総長、荒木田招致委
員会アスリート委員会副委員長、橋本外務副大臣、猪谷
IOC 副会長、他 10 名
(2) 招致都市の活動
・ プレゼンテーション
・ ブース展開/オフィシャルプログラム・ホームページ等への掲載
※ ヨーロッパオリンピック委員会(EOC):ヨーロッパ地域の 49 の国と地域のオリンピック委員会が
加盟
※ スポーツ・アコード会議:国際スポーツ組織の理事会・総会や IOC 理事会を同じ会場で行うス
ポーツの総合的国際会議である。会期中には、各団体の理事会、総会、セッション、セミナー
等が行なわれる。
159
第一部 第3章
立候補都市段階
(3)
プレゼンテーションの主な内容
「ヒーローたちの檜舞台(Setting the Stage for Heroes)」という
ストーリーを中心に、
「東京の財政基盤」や「30 億人を超えるプライム
タイム TV 視聴者」等を打ち出し、デンバーにおいて、
「オバマ・ブーム
※
と TV 放映権 」で話題になるシカゴに対抗した。
また、オリンピック 7 回出場の橋本聖子外務副大臣にプレゼンターと
して登壇してもらうことにより、麻生総理大臣と並んで、「政治の中心
に沢山のオリンピアンがいること」「国を挙げてオリンピックを支援し
ていること」等をアピールした。
IOC 評価委員会の来日も間近となり、競技会場 CG も完成したので、
一部を利用し、壮大な音楽による「Setting the Stage For Heroes」
という PR ビデオを作成し、プレゼンテーションに活気を付加した。
(4)
プレゼンテーションの成果
CG 等を駆使してプレゼン
テーションのレベルが上がっ
たことに加え、麻生総理大臣、
橋本外務副大臣等、他都市に
比べてオリンピアンの参画人
数が圧倒的に多いという東京
チームの特徴が、非常に好意
的に受け入れられた。
(5) ブース展開概要
・ 期
間:平成 21(2009)年3月 21 日から 26 日まで
・ 場
所:アメリカ合衆国 デンバー市
ハイアット・リージェンシー・ホテル
・ 来場者数:1,404 名
・ 展 示 物:ズーミング ※ 、結びクラスター壁面パネル、
TOKYO2016 ロゴパネル
・ 配 布 物:セールスシート、スポーツビジネス、ニュースレター、
立候補ファイル概要版、環境リーフレット、招致バッジ、
4 色ボールペン、クリアファイル等
※ IOC は、オリンピック競技大会の映像を放映する権利を、世界各国のメディアに対して契約に
より割り当てている。この権利を TV 放映権と呼ぶ。TV 放映権による収入は IOC にとって最
大の収入源となっている。
※ ズーミング:8km 圏内の都市空間と各競技会場を 3D で表現する装置。東京の中心部にコンパ
クトに会場を配置した大会計画を、視覚的にアピール。選択した会場をズームアップしたり、
自由に回転させたりできる。
160
第一部 第3章
立候補都市段階
(6)
ブース展開の成果
主な来場者が、IFの関係者であ
るため、ズーミングを活用した大
会開催計画の詳細な説明が好評
で、東京の技術について高い評価
を得た。
6 オセアニア国内オリンピック委員会 ※ 総会
(1) イベント概要
・ 期 間:平成 21(2009)年 3 月 31 日
・ 場 所:ニュージーランド クイーンズタウン町
・ 参加者:河野招致委員会事務総長、山本招致委員会マネージャー、
他1名
(2)
プレゼンテーションの主な内容
「ヒーローたちの檜舞台」、「東京の財政基盤」や「30億人を超え
るプライムタイムTV視聴者」等、計画の優位性を訴えるとともに、「世
界中のユースにとってふさわしい若者文化の中心=東京」という新しい
局面のアピールを開始した。
(3)
成果
プレゼンテーションには河
野招致委員会事務総長と山本
招致委員会マネージャーの2名
が参加し、若い世代を代表して
山本が「ユース世代への取り組
み」を説明したことにより、明
るく快活なイメージを醸成す
ることができた。
※ オセアニア国内オリンピック委員会(ONOC)
:オセアニア地域の 17 の国と地域のオリンピッ
ク委員会が加盟
161
第一部 第3章
立候補都市段階
7 国際スポーツ記者連盟 ※ 総会
(1) イベント概要
・ 期 間:平成 21(2009)年 4 月 28 日から 29 日まで
・ 場 所:イタリア共和国 ミラノ市
・ 参加者:荒木田招致委員会理事、中森招致委員会事務次長、加治招
致委員会エグゼクティブディレクター、高谷招致委員会マ
ネージャー、他 1 名
(2)
プレゼンテーションの主な内容
国際スポーツに関係するプレス記者向けのプレゼンテーションとい
うことで、国際広報チーム、荒木田招致委員会理事、中森招致委員会事
務次長という布陣で、
「ヒーローたちの檜舞台」を中心に、
「東京の財政
基盤」や「30 億人を超えるプ
ライムタイム TV 視聴者」等
を打ち出した。また、直前に
終了した IOC 評価委員会訪問
についても触れ、オリンピア
ンである麻生総理大臣を始め、
日本が国を挙げて東京招致を
支援している様子を説明した。
(3)
成果
各国メディア向けのプレゼンテーションは初めてであったので、プレ
ゼンテーション終了後、各国のメディア及び各 IF の広報担当者から、
東京の資料やビデオ素材提供の要請を受けた。日ごろ、メールや電話で
やり取りしているメディアと直接顔を会わせる機会となり、その後の招
致活動を進めるうえで有意義なものであった。
8 アジアオリンピック評議会総会(シンガポール)
(1) イベント概要
・ 期
間:平成 21(2009)年7月3日
・ 場
所:シンガポール共和国
・ 参 加 者:石原知事、竹田 JOC 会長、荒木田招致委員会理事、
水野 JOC 副会長、市原 JOC 専務理事、岡野 IOC 委
員、他
・ 総会の内容:冬季アジア大会、アジアビーチゲームズ、ロンドン
2012、バンクーバー2010、シンガポールユースゲ
※ 国際スポーツ記者連盟(AIPS):152 カ国 9000 名の国際スポーツジャーナリストが所属し、
年次総会では以降に開かれるオリンピック等大きなスポーツイベントや招致都市も招かれ記者
向けにプレゼンテーションを行う。
162
第一部 第3章
立候補都市段階
ームズ等各大会からの報告、OCA 各常任委員会から
の報告が行われた。
(2)
プロモーション活動
アジアオリンピック評議会は、アジア 45 ヵ国・地域のオリンピック
委員会で構成され、総会には多くの IOC 委員が出席していた。その総
会に知事自ら参加し、東京招致への支持を求めた。
(3)
成果
アハマド OCA 会長から
「アジアの都市である東京
が 10 月の IOC コペンハー
ゲン総会で成功を収めるよ
う、私たちは希望している」
と東京招致の支持表明があ
った。なお、第1回アジア
ユースゲームズ※が同時に
開催され、アジアだけでな
く、他地域の IOC 委員も視
察に訪れていた。
アハマド OCA 会長と東京招致関係者
9 アフリカ国内オリンピック委員会連合 ※ 総会
(1) イベント概要
・ 期 間:平成 21(2009)年 7 月 5 日から 7 日まで
・ 場 所:ナイジェリア連邦共和国 アブジャ市
・ 参加者:竹田 JOC 会長、河野招致委員会事務総長、荒木田招致委
員会理事、望月招致委員会国際担当委員、他 5 名
(2)
プレゼンテーションの主な内容
「ヒーローたちの檜舞台」というテーマを中心に、
「東京の財政基盤」
や「30 億人を超えるプライムタイムTV視聴者」等を打ち出すほか、
アフリカ地域と日本とのスポーツ交流について、望月招致委員会国際担
当委員がフランス語でプレゼンテーションを行った。
※ 第1回アジアユースゲームズ:2010 年にシンガポールで開催予定の第 1 回ユースオリンピッ
ク競技大会のテストイベントとしての性格を有し、陸上競技、水泳、ボウリング等9種目の競
技が行われた。
※ アフリカ国内オリンピック委員会連合(ANOCA):アフリカ地域の53の国と地域のオリンピ
ック委員会が加盟
163
第一部 第3章
立候補都市段階
(3)
成果
基本的な開催計画がおさえら
れていたこと、またアフリカ開
発会議 ※ やスポーツ交流等に触
れ、好評であった。なお、アフ
リカの民族衣装で登壇した荒木
田招致委員会理事は、レセプシ
ョンでも多くの関係者に囲まれ
た。
10 国際パラリンピックデー ※
(1) ブース展開概要
・ 時
間:平成 21(2009)年 7 月 11 日
・ 場
所:ドイツ連邦共和国ベルリン市ブランデンブルク門前広場
・ 来場者数:550 人
・ 展 示 物:半径 8km圏マップ、ズーミング、パラリンピック紹介
パネル、オリンピックスタジアム模型、東京紹介の横断
幕等
・ 配 布 物:コンセプトブック、アジアユースゲームズチラシ、観光
ガイドブック「TOKYO COLORS」等
(2) 成果
本イベントの来場者は、オリンピック・パラリンピック招致の関係者
ではない一般市民であったため、どのように東京ブースに来場者を呼び
込むかが大きな課題であった。
このため、ブースを積極的に盛り上げるために、ゲームなど来場者参
加型のイベントを実施し、多くの集客を図ることに努めた。
また、印刷物の代わりに多言
語のパネルを作成し、東京の魅
力やパラリンピック計画につ
いてアピールした。
その結果、多くの一般来場者
も訪れて好評を博し、IPC関係
者からは高い評価を得た。また、
複数の現地・海外メディアに取
り上げられ、国内でもニュース
として配信された。
※ アフリカ開発会議(TICAD) : 日本が国連および世界銀行との共催で開催する、アフリカ開発
をテーマとする国際会議
※ 国際パラリンピックデー:社会における障害者への認識を高め、パラリンピックムーブメント
を推進する目的で、国際パラリンピック委員会(IPC)が平成 15(2003)年より 2 年おきに
実施しているイベント。代表的なパラリンピック競技を観戦・体験できるプログラムのほか、
写真展等の文化プログラムを実施しており、平成 21(2009)年は 58,000 人超が来場した。
164
第一部 第3章
立候補都市段階
11 IAAF世界陸上競技選手権ベルリン大会
(1) ブース展開概要
・ 期
間:平成 21(2009)年 8 月 15 日から 23 日まで
・ 場
所:ドイツ連邦共和国 ベルリン市 オリンピック競技場
・ 来場者数:11,150 人
・ 展 示 物:ズーミング、TOKYO2016 大会計画パネル、オリンピ
ックスタジアム模型、オリンピックスタジアムパネル、
8km 圏マップ、東京観光の紹介、ヨーヨー釣り 等
・ 配 布 物:コンセプトブック、アジアユースパラゲームズチラシ、
アニメフェアチラシ、アニメフェアステッカー、招致ピ
ンバッジ、4 色ボールペン 等
(2)
成果
大会関係者や一般観戦する一般客を集客するため、ゲームなど来場者
参加型のイベントを実施する等、賑わいの演出を企画するとともに、招
致関係の展示については、スタジアム模型やパネル等を使用し大会開催
計画の優位性とともに、東京の
都市の魅力を視覚的に訴えた。
このため、9日間で11,150
人もの来場者があり、複数の現
地・海外メディアに取り上げら
れ、日本国内でもニュースとし
て配信されたことから、東京の
大会開催計画及び東京の都市
の魅力を十分にアピールでき
た。
(3)
プロモーション活動
世界陸上ベルリン大会開催時に合わせ、ベルリン市に於いて IOC 理
事会、IAAF(国際陸上競技連盟)理事会・総会が行われた。2016 年
大会開催都市が決定される 10 月の IOC 総会前に行われる、IOC 委員
が多く参加する最後のイベントであるため、石原知事、竹田 JOC 会長、
河野招致委員会事務総長、猪谷 IOC 副会長らが IOC 委員との個別会談
を行った。
特に、ベルリン市長からの招待を受けた知事は、多くの IOC 委員が
参加した 8 月 14 日の「ベルリン市長主催レセプション」に出席し、こ
の機会に、河野招致委員会事務総長も随行する等、積極的にプロモーシ
ョン活動を展開することができた。
165
第一部 第3章
立候補都市段階
第5節 招致連携体制
1 国会決議
(1) 招致決議を得るまでの流れ
国権の最高機関である国会の招致決議は、国を挙げてオリンピック招
致を実現したいという強い意思表示を示すものであり、IOC の高い評価
を得るためにも招致決議は重要である。
東京都は、国を挙げての支援を IOC 及び国内外にアピールするため、
早期に衆・参両議院の招致決議を得て、立候補ファイルに記載したいと
考えていた。
平成 20(2008)年 6 月 5 日、超党派の国会議員による「2016 年
オリンピック日本招致議員連盟発起人会」には、知事自ら出席し、オリ
ンピックの開催意義や国会招致決議の必要性を訴えた。同年 12 月 19
日、招致議員連盟が正式に設立され、招致決議に向けて動き出した。
平成 21(2009)年 1 月、立候補ファイルの提出期限が迫る中、東
京都は、早期に招致決議を得るため、副知事をトップに、党首、幹事長、
国会対策委員長、議院運営委員長、各党の要職者等を中心に個別に 80
名の国会議員と面会する等、要請活動を開始した。
しかし、国会は、景気対策等の法案審議を優先せざるを得ない状況で
あり、立候補ファイル提出までに招致決議を得ることはできなかった。
その後も招致決議を得るため、引き続き要請活動を行った。
こうした個々の要請活動に加え、知事は自ら衆・参両議院議長や各党
を直接訪問し、党代表や幹事長等の要職者に対し早期の招致決議採択を
要請した。
また、招致議員連盟では招致決議実現に向けて緊急総会を開催し、総
会に出席した知事は、改めて招致決議の早期採択を要請した。
こうした関係者の懸命の努力が実り、同年 3 月 17 日に衆議院、同月
18 日に参議院で「第 31 回オリンピック競技大会及び第 15 回パラリ
ンピック競技大会東京招致に関する決議」が圧倒的多数で採択された。
招致決議は、立候補ファイル提出に間に合わなかったが、招致決議採
択について、知事は、直ちにロゲ IOC 会長に書簡で報告するとともに、
コメントを発表し、関係者へ感謝の意を表明した。
(2)
招致決議の評価
招致決議は、東京招致に対し、国を挙げて支援している姿勢を示すこ
ととなり、IOC 評価委員会へのプレゼンテーションにおいて、政府によ
る財政保証等とともに高い評価を得た。
国権の最高機関である国会から招致決議を得たことは、IOC 委員の投
票行動に影響を及ぼすと言われる IOC 評価委員会報告書にも記述され
た。
166
第一部 第3章
立候補都市段階
(3)
早期の国会決議の取得
招致決議は、国を挙げて招致を実現したいという強いメッセージであ
り、極めて重要である。そのため、招致決議を早期に得られるよう、招
致関係者が一体となって、計画的に取り組む必要がある。
(参考)
第 31 回オリンピック競技大会及び第 15 回パラリンピック競技大会
東京招致に関する決議(衆議院)
平成 21(2009)年 3 月 17 日
我が国において、1964 年の東京オリンピック以来となるオリンピッ
ク夏季競技大会を開催することは、国際親善とスポーツ振興にとって極
めて意義深いものである。
衆議院は、来る 2016 年の第 31 回オリンピック競技大会及び第 15
回パラリンピック競技大会を東京都に招致するため、その招致活動を強
力に推進するとともに、その準備態勢を整備すべきものと認める。
右決議する。
第 31 回オリンピック競技大会及び第 15 回パラリンピック競技大会
東京招致に関する決議(参議院)
平成 21(2009)年 3 月 18 日
我が国において、1964 年の東京オリンピック以来となるオリンピッ
ク夏季競技大会を開催することは、国際親善とスポーツ振興にとって極
めて意義深いものである。
参議院は、来る 2016 年の第 31 回オリンピック競技大会及び第 15
回パラリンピック競技大会を東京都に招致するため、一致協力して必要
な活動を強力に推進するとともに、準備態勢の整備に万全を期すべきも
のと認める。
右決議する。
2
国への要求活動
オリンピック・パラリンピック競技大会の招致及び大会の成功には、国
の支援が必要不可欠である。そのため、あらゆる機会を活用し、国会や政
府に対して要求活動を行った。
(1)
国の施策及び予算に対する東京都の提案要求
「国の施策及び予算に対する東京都の提案要求」は、立候補都市承認
167
第一部 第3章
立候補都市段階
以降も引き続き積極的に行い、平成 20(2008)年 6 月の提案要求を
含め、開催都市決定まで3回行った。(事業の概要は、P57 第 1 部第
2章第 4 節2を参照)
要求概要(平成 20(2008)年 6 月から平成 21(2009)年 6 月まで)
・ 国を挙げた招致活動
・ 政府保証の発行及びインフラの整備
・ IOC 評価委員会訪問時の全面的な支援
・ IOC 総会における強力な支援
・ 企業寄附に対する税制上の優遇措置
・ 国際的競技力の向上施設のさらなる設置推進
(2)
首都東京の重要施策に係る国と東京都の実務者協議会
立候補都市選定以降、
「 首都東京の重要施策に係る国と東京都の実務者
協議会」は第 2 回から第 4 回までの 3 回開催され、引き続き要求事項
の実現を強く求めるとともに、開催時期に応じて、IOC 評価委員会訪問
への国を挙げての支援や、IOC 総会への総理大臣出席等、国の全面的な
支援を求めた。
(事業の概要は、P57 第 1 部第 2 章第 4 節 2 を参照)
3 関係省庁連絡会議
(1) 議題内容
平成 20(2008)年 7 月 22 日開催の第 4 回会議では、招致スケジ
ュール、立候補ファイルの作成及び政府保証書の発行についての説明、
関係省庁によるオリンピック招致 PR 等が議題となった。
また、立候補ファイル提出後の平成 21(2009)年 2 月 23 日に開
催された第 5 回会議では、立候補ファイル作成協力及び政府保証書発行
への御礼と、IOC 評価委員会訪問に関する協力依頼及び今後の招致スケ
ジュールについて各省庁に説明を行った。(会議の設置目的等は、P59
第 1 部第 2 章第 4 節 3 を参照)
(2)
会議の成果
本会議での協力要請により、各省庁の入口等の目立つ場所にのぼり旗
が設置される等、関係省庁を挙げての招致気運が高まった。また、立候
補ファイルの作成及び政府保証書の発行並びに IOC 評価委員会訪問に
対する協力について、その後の円滑な協議・調整に繋がった。
168
第一部 第3章
立候補都市段階
4 超党派国会招致議員連盟の設立と活動
(1) 設立までの流れ
政府による支援に加え、立法府である国会の支援を得ることは、まさ
に国を挙げてオリンピック招致を実現したいという強い意思表示であり、
IOC の高い評価を得るためにも必要不可欠である。
平成 18(2006)年 6 月に国内立候補都市として選定されたことを
受け、平成 19(2007)年 1 月 25 日、自民党東京都連は「東京オリ
ンピック招致推進議員連盟」
(会長は石原伸晃衆議院議員、事務局長は萩
生田光一衆議院議員)を設立し、招致に向けて全面的な支援を約束した。
政府からは、同年 9 月にオリンピック招致の閣議了解を得ることがで
きたが、国会招致決議等、国会による全面的な支援を得るためには、党
派を超えた国会議員による招致議員連盟の設立が不可欠であることから、
その後も自民党東京都連の招致議連や超党派の国会議員で構成するスポ
ーツ議員連盟が中心となって、各党の関係者に働きかけを行なった。
その結果、平成 20(2008)年 6 月 5 日、超党派の国会議員による
「2016 年オリンピック日本招致推進議員連盟発起人会」が開催され、
自民党、民主党、公明党、国民新党から約 20 名が出席し、知事から招
致議員連盟の早期設立を要請するとともに、発起人が一丸となって早期
設立に向けて行動することを確認した。
同年 12 月 19 日、2016 年オリンピック日本招致推進議員連盟設立
総会が開催され、総会には 130 名を超える国会議員が出席した。総会
に出席した知事は、招致議員連盟設立に感謝の意を表明するとともに、
今後の活動について協力を求めた。
総会において、招致議員連盟の会長に森喜朗衆議院議員(自民党)、会
長代理に羽田孜衆議院議員(民主党)、太田昭宏衆議院議員(公明党)、
幹事長に田名部匡省参議院議員(民主党)、事務局長に遠藤利明衆議院議
員(自民党)が就任した。
招致議員連盟に所属する国会
議員の数は、最大で約 250 名
(自民党、民主党、公明党、国
民新党、改革クラブ、新党大地、
無所属の議員が参加)となり、
すべての国会議員の約 3 分の 1
となった。
設立総会で挨拶する森会長
(2)
活動内容
・ 平成 21(2009)年 2 月 20 日 緊急総会の開催
・ 同年 4 月 16 日から 19 日まで IOC 評価委員会訪問時におけるプ
レゼンテーション及び公式歓迎夕食会への出席
・ 同年 9 月 17 日 出陣式への出席
169
第一部 第3章
立候補都市段階
・
同年 10 月 2 日
IOC 総会への出席
(3)
招致議員連盟の支援
前述のとおり、招致議員連盟設立を契機に、国会招致決議(平成 21
(2009)年 3 月)をはじめとした強力な支援を得た。これらは、東京
の招致活動の大きな推進力となった。
(4)
招致議連設立に向けて
国会の支援を得るためには、早期に超党派の国会議員による招致議員
連盟が設立されていることが肝要である。そのためには、主務官庁であ
る文部科学省をはじめとする政府関係者、都議会、スポーツ関係者等の
協力を得ながら、早い時期から各会派のみならず、議員一人ひとりに働
きかける等、きめ細かな対応が必要である。
5 在外公館等の協力
(1) 在外公館の協力
ア 国際プロモーション活動の協力依頼
平成 20(2008)年 6 月の立候補都市選定を受け、国際プロモー
ション活動が解禁となった。そこで、在外公館に対し、行動規範に基
づく具体的な国際プロモーション活動への協力を依頼した。
主な内容については以下のとおりである。
・ 東京開催計画及び東京の魅力 PR(シティーセールス)
・ IOC 委員、IF、NOC、NF、各国政府関係者に関する情報提供
・ 各国とのスポーツ協力の促進
・ 招致関係者の海外出張時の支援
等
イ 在外公館の協力の成果
在外公館の外交活動には、IOC 委員等オリンピック関係者と交流す
る機会もあり、国際プロモーション活動に対する在外公館の協力は必
要不可欠であった。これらの機会で得られた情報は、招致委員会の国
際プロモーション活動に反映させた。
(2)
大使会議
前年度に引き続き、平成 20(2008)年度に開催された 4 地域すべ
ての大使会議の場で、知事から計 131 名の駐在大使に対し国際プロモ
ーション活動への更なる協力を求めた。(会議の目的等は、P60 第 1
部第 2 章第 4 節 4(2)を参照)
(3)
国際協力機構(JICA)との連携
JICA については、青年海外協力隊の一環として「体育・スポーツ隊
員」を多数、発展途上国に派遣しており、赴任国のナショナルチームの
170
第一部 第3章
立候補都市段階
コーチを務める等、現地で高い評価を受けるとともに、各国スポーツ担
当省との関係も確立されている。
このように、JICA は発展途上国のスポーツ振興に協力していること
から、これら諸国の良好な対日感情を支えるベースとなっており、東京
招致活動の助けになった。
6
在京大使館との情報連絡会
都政に対する理解を深めてもらうため、昭和 50(1975)年以降毎年
実施している「在京大使館との情報連絡会」で、東京のオリンピック・パ
ラリンピック招致をテーマにし、在京大使へ招致の PR を行った。
(1) 平成 20 年度在京大使館との情報連絡会
実施日:平成 20(2008)年 11 月 27 日
テーマ:世界を結ぶオリンピック・レガシー
参加者:66 カ国・72 名
内 容:以下の視察、レセプション等を実施
○ 国立スポーツ科学センター、ナショナル・トレーニン
グ・センターの視察
・ オリンピック立候補都市東京の取組について説明
・ ボート・カヌー実験施設、シンクロナイズドスイミン
グ練習風景、柔道練習風景
○ 国立代々木競技場視察
・ 第一体育館 フィギュアスケートNHK杯練習風景
・ 第二体育館 学生バスケット大会練習風景
○ レセプション:小笠原伯爵邸
竹田 JOC 会長、板橋 JOC 常務理事、岡野 IOC 委員、
髙島都議会招致議員連盟会長、太田雄貴氏(オリンピア
ン・フェンシング)、招致委員会・招致本部幹部が参加し、
オリンピックの東京招致についてアピール
(2)
平成 21 年度在京大使館との情報連絡会
実施日:平成 21(2009)年 5 月 28 日
テーマ:オリンピック招致に向けて東京の魅力を世界にアピール
参加者:53 カ国・56 名
内 容:以下の視察、レセプション等を実施
○ 三園浄水場
・ 視察地へ向かうバス内でオリンピック関連の DVD を
上映
・ 東京水、東京の先進技術等の説明
○ 隅田川・東京港クルーズ
・ オリンピック競技会場予定地を水上バスより視察
171
第一部 第3章
立候補都市段階
国技館(ボクシング)、晴海オリンピックスタジアム予定
地、選手村予定地、東京ビッグサイト(IBC/MPC・レ
スリング・フェンシング・テコンドー)
○ レセプション:インターコンチネンタル東京ベイ
竹田 JOC 会長、水野 JOC 副会長、木村 JOC 常務理事、
猪谷 IOC 副会長、武田美保氏(オリンピアン・水泳・シン
クロナイズトスイミング)、招致委員会・招致本部幹部が
参加し、2016 年大会の東京招致についてアピール
(3)
在京アフリカ大使との懇親会
在京のアフリカ大使に東京のオリンピック招致を応援してもらい、自
国にいる IOC 委員に東京をアピールしてもらうことは、招致活動に有効
であるため、在京アフリカ大使との懇親会を開催した。
実施日:平成 21(2009)年 7 月 16 日
参加者:大使館 28 カ国・45 名
国 内 日本・アフリカ連合友好議員連盟会長・副会長、外
務省関係者、アフリカ協会関係者、JOC 理事、招致
委員会・招致本部幹部等
内 容:以下の視察等を実施
○東京湾クルーズ
・ クラブハウスで、オリンピック・パラリンピック競技
会場の模型やパネルの展示、ヘブンアーティスト※によ
る出迎え等
・ オリンピック競技会場予定地を船上から視察、説明す
るとともに、オリンピック東京招致をアピール
7 経済界との連携
(1) 活動内容(立候補都市段階)
ア 招致活動の本格展開に伴う連携拡大
招致活動の本格展開に伴い課題となっていた支持率の底上げ等を確
実に進めるため、経済界との連携を従来よりも密接に進めた。
(ア) 日本経済団体連合会との連携
・ 日本経済団体連合会副会長への招致委員会顧問就任要請
(イ) 日本商工会議所・東京商工会議所との連携
・ 日本商工会議所副会頭、東京商工会議所副会頭への招致委員会
顧問就任要請
・ 「第 31 回オリンピック競技大会の東京招致を支援する決議」
への働きかけ
※ヘブンアーティスト:東京都が実施する審査会に合格したパフォーマンスや音楽等のアーティスト
172
第一部 第3章
立候補都市段階
・
東京商工会議所に「東京オリンピック・パラリンピック招致推
進特別委員会」設置への働きかけ
・ 海外招致活動推進のための、東京商工会議所会員企業を通じた
海外人脈調査
・ 全国の主な商工会議所への協力要請
・ 東京商工会議所及び同支部主催の賀詞交歓会等各種イベントと
の共催(挨拶、招致グッズ配付等)、アスリート講演会の実施、機
関紙等での対談企画・広告掲載
(ウ) 東京青年会議所との連携
・ 東京青年会議所理事長への招致委員会顧問就任要請
・ 理事会における「2016 年東京オリンピック・パラリンピック
招致活動への支援決議」への働きかけ
・ 招致委員会幹部による講演会、イベントへのブース出展
・ 会員に対するサポーターズクラブの PR
(エ) 協力的な企業・団体との連携
・ アスリート及び招致委員会幹部による講演会の実施、社報等で
の対談企画
・ イベントへの協力要請
・ 立候補ファイル作成のための情報収集
イ 招致活動の発展
招致活動の幅が大きく広がり、各経済団体の会員企業から招致委員
会主催のイベント等に協力の申し出を受ける等東京招致が浸透すると
ともに、サポーターズクラブの認知度も高まった。
立候補ファイルの作成に当たっては、カーボンマイナスオリンピッ
ク等に民間からの知恵を反映しより優れたものとすることができた。
ウ 協力要請におけるポイント
IOC の支持率調査が 2 月に行われる等招致レースは極めて早いペー
スで行われるので、関係者には早めに協力要請を行うことが望ましい。
また、一般的な支援要請のみでは要請を受けた側も動けないので、
「い
つのイベントにどのような形で参加して欲しい」等個別具体的な依頼
を働きかけていかなければならない。
(2)
活動内容(IOC 評価委員会訪問後)
ア 招致活動最終局面を迎えての連携方策
招致活動が大詰めを迎え、招致気運をこれまで以上に盛り上げると
ともに活動を支えるための協力を確保していく必要が生じた。そのた
め、以下に掲げるような「各経済団体も総力をあげて招致を応援して
いる」ことを強く内外にアピールする方策を講じ、各傘下企業の招致
活動への理解確保と協力依頼を進めた。
173
第一部 第3章
立候補都市段階
(ア)
IOC 評価委員会による東京視察
御手洗冨士夫日本経済団体連合会会長、岡村正東京商工会議所会
頭が出席
(イ) 日本経済団体連合会
常任理事会に知事が講師として出席し、支援の呼びかけ
(ウ) 東京商工会議所
各支部とのイベント(アスリート・トークショー、写真展)、講演
会の共催
(エ) 東京青年会議所、日本青年会議所
イベント連携(ブース出展、募金)
(オ) 協力的な企業とのイベントの共催
支持層の拡大を目指し、招致に協力的な企業と招致イベントを共
催
(カ) 交通・運輸業界との連携
交通、運輸業界の協力を得て、都内のタクシー、バス、トラック
に招致ステッカーや幕(バスマスク)、鉄道の駅や車内にポスター等
を掲出
(キ) 東京商工会議所を通じて協力を得た各種団体との連携
社団法人日本ツーリズム産業団体連合会、社団法人日本民営鉄道
協会、社団法人日本フィットネス産業協会、社団法人東京都信用金
庫協会等の協力を得て、各会員企業に対しピンバッジ、ポスター、
リーフレット、卓上旗等を配付
イ 連携の成果と支持率
内外に経済界が招致を支援している旨のアピールに成功した。こう
した活動は IOC 評価委員会の訪問時に招致委員会が実施した世論調
査の高い支持率を得ることに寄与した。
ウ 連携を進める上でのポイント
経済団体等との連携を進める際には、連携の内容や目的等について
よく情報を提供しておくことが望ましい。また、招致関連グッズ等に
ついては、連携先が必要とするときに必要な量が行き渡る様、連絡を
密に取り合うとともに、適切な在庫管理から迅速な発送にいたるまで
の体制整備を進めなければならない。
174
第一部 第3章
立候補都市段階
東京商工会議所(本部・各支部)、日本商工会議所、他商工会議所、会合・会議・イベント、講演会等での招致PR活動一覧表
No.
開催日時
事業名
概要
開催場所
開始
終了
2008/6/20
2008/6/22
東商130周年記念事業
「共生(ともいき)のこころ」
2008/9/21
2008/9/21
訪ASEAN(マレーシア、タイ、ベ 資料配布
トナム)経済ミッション
マレーシア、タイ、ベ
トナム
2008/9/30
2008/9/30
2008/12/3
2008/12/3
2009/1/6
2009/1/6
在日欧州商工会議所交流
レセプション
関東商工会議所連合会
創立50周年パーティー
渋谷支部新年賀詞交歓会
2009/1/8
2009/1/8
東商新年賀詞交歓会
2009/1/9
2009/1/9
文京支部新年賀詞交歓会
ブース出展
ねぶた出展
ブース出展
2009/1/9
2009/1/9
江東支部新年賀詞交歓会
ブース出展
2009/1/13
2009/1/13
江戸川支部新年賀詞交歓会
ブース出展
東京商工
会議所
グランドプリンス
ホテル新高輪
セルリアンタワー
東急ホテル
グランドプリンス
ホテル新高輪
東京ドーム
ホテル
ホテルイースト21
東京
タワーホール船堀
2009/1/14
2009/1/14
品川支部新年賀詞交歓会
ブース出展
2009/1/14
2009/1/14
目黒支部新年賀詞交歓会
ブース出展
2009/1/14
2009/1/14
中野支部新年賀詞交歓会
ブース出展
2009/1/14
2009/1/14
豊島支部新年賀詞交歓会
ブース出展
2009/1/14
2009/1/14
練馬支部新年賀詞交歓会
ブース出展
2009/1/16
2009/1/16
新宿支部新年賀詞交歓会
ブース出展
2009/1/19
2009/1/19
東商女性会新年懇親会
2009/1/19
2009/1/19
港支部新年賀詞交歓会
ブース出展
羽子板出展
ブース出展
2009/1/19
2009/1/19
大田支部新年賀詞交歓会
ブース出展
2009/1/19
2009/1/19
葛飾支部新年賀詞交歓会
ブース出展
2009/1/20
2009/1/20
杉並支部新年賀詞交歓会
ブース出展
2009/1/21
2009/1/21
墨田支部新年賀詞交歓会
ブース出展
2009/1/22
2009/1/22
台東支部新年賀詞交歓会
ブース出展
2009/1/22
2009/1/22
荒川支部新年賀詞交歓会
ブース出展
2009/1/22
2009/1/22
板橋支部新年賀詞交歓会
ブース出展
2009/1/22
2009/1/22
足立支部新年賀詞交歓会
ブース出展
2009/1/23
2009/1/23
北支部新年賀詞交歓会
ブース出展
2009/1/28
2009/1/28
千代田支部新年賀詞交歓会
ブース出展
2009/1/30
2009/1/30
世田谷支部新年賀詞交歓会
ブース出展
2009/2/4
2009/2/4
2009/2/5
2009/2/5
2009/2/12
2009/2/12
劇団ふるさときゃらばん
ミュージカル「ホープランド」公演
日商岡村会頭・オリンピアン
座談会
葛飾支部役員・評議員会
2009/2/13
2009/2/13
荒川支部役員・評議員会
2009/2/13
2009/2/13
板橋支部役員・評議員会
ブース出展
無料広告出稿
オリンピアン
座談会
資料配布
雑賀事務次長挨拶
資料配布
遠藤チーフディレクター挨拶
資料配布
2009/2/13
2009/2/13
大田支部役員・評議員会
2009/2/16
2009/2/16
品川支部役員・評議員会
2009/2/16
2009/2/16
渋谷支部役員・評議員会
2009/2/16
2009/2/16
港支部役員・評議員会
資料配布
アスリート講演
資料配布
アスリート講演
資料配布
武市事務次長挨拶
資料配布
2009/2/16
2009/2/16
中央支部役員・評議員会
資料配布
2009/2/18
2009/2/18
目黒支部役員・評議員会
2009/2/18
2009/2/18
墨田支部役員・評議員会
資料配布
武市事務次長挨拶
資料配布
雑賀事務次長挨拶
1
2
3
4
ブース出展
クイズラリー
ブース出展
ブース出展
ブース出展
5
6
7
8
新宿駅西口
イベントコーナー
9
10
ホテルラフォーレ
東京
目黒雅叙園
11
12
13
14
15
16
WEST
53rd
ホテル
メトロポリタン
ホテルガデンツァ
光が丘
京王プラザ
ホテル
帝国ホテル
八芳園
17
18
19
20
21
大田区
産業プラザ
テクノプラザ
葛飾
吉祥寺
第一ホテル
第一ホテル
両国
東天紅上野店
22
23
24
25
ホテル
ラングウッド
ホテル
メトロポリタン
浅草ビュー
ホテル
北トピア
26
27
ホテル
グランドパレス
キャロットタワー
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
175
日本青年館
東京商工
会議所
テクノプラザ
葛飾
ホテル
ラングウッド
ハイライフプラザ
板橋
大田区
産業プラザ
品川区立
中小企業センター
渋谷区立
商工会館
浜松町
東京會舘
銀座ブロッサム
(中央会館)
目黒雅叙園
第一ホテル
両国
参加者数
(人)
参加者層
2,400 一般通行人
200 各国大臣、政府関
係者、商工会議所
会頭他
100 在日欧州商工
会議所、東商
300 各商工会議所
役員・会員
400 東商本部役員
支部役員・会員
900 東商役員・会員
国会、都議議員
150 東商本部役員
支部役員・会員
250 東商本部役員
支部役員・会員
250 東商本部役員
支部役員・会員
270 東商本部役員
支部役員・会員
130 東商本部役員
支部役員・会員
170 東商本部役員
支部役員・会員
200 東商本部役員
支部役員・会員
290 東商本部役員
支部役員・会員
400 東商本部役員
支部役員・会員
400 東商役員・会員
国会、都議議員
330 東商本部役員
支部役員・会員
300 東商本部役員
支部役員・会員
180 東商本部役員
支部役員・会員
200 東商本部役員
支部役員・会員
260 東商本部役員
支部役員・会員
160 東商本部役員
支部役員・会員
150 東商本部役員
支部役員・会員
200 東商本部役員
支部役員・会員
150 東商本部役員
支部役員・会員
170 東商本部役員
支部役員・会員
220 東商本部役員
支部役員・会員
220 東商本部役員
支部役員・会員
500 一般観客
4 日商会頭、
オリンピアン
100 支部役員・
評議員
100 支部役員・
評議員
100 支部役員・
評議員
100 支部役員・
評議員
70 支部役員・
評議員
100 支部役員・
評議員
150 支部役員・
評議員
150 支部役員・
評議員
130 支部役員・
評議員
100 支部役員・
評議員
第一部 第3章
立候補都市段階
東京商工会議所(本部・各支部)、日本商工会議所、他商工会議所、会合・会議・イベント、講演会等での招致PR活動一覧表
No.
開催日時
事業名
概要
開催場所
開始
終了
2009/2/18
2009/2/18
練馬支部役員・評議員会
2009/2/18
2009/2/18
台東支部役員・評議員会
資料配布
アスリート講演
資料配布
2009/2/18
2009/2/18
足立支部役員・評議員会
資料配布
浅草ビュー
ホテル
東京マリアージュ
2009/2/18
2009/2/18
中野支部役員・評議員会
資料配布
中野サンプラザ
2009/2/19
2009/2/19
2009/2/19
2009/2/19
日本商工会議所
昼食懇談会
文京支部役員・評議員会
東京商工
会議所
茗渓会館
2009/2/19
2009/2/19
世田谷支部役員・評議員会
河野総長
講演
資料配布
アスリート講演
資料配布
2009/2/19
2009/2/19
杉並支部役員・評議員会
資料配布
2009/2/20
2009/2/20
江東支部役員・評議員会
2009/2/20
2009/2/20
江戸川支部役員・評議員会
2009/2/20
2009/2/20
北支部役員・評議員会
2009/2/24
2009/2/24
豊島支部役員・評議員会
2009/2/24
2009/2/24
新宿支部役員・評議員会
資料配布
アスリート講演
資料配布
雑賀事務次長講演
資料配布
遠藤チーフディレクター挨拶
資料配布
アスリート講演
資料配布
2009/2/24
2009/2/24
千代田支部役員・評議員会
資料配布
2009/2/27
2009/2/27
東商議員総会
2009/3/9
2009/3/9
中央支部懇親大会
JOC竹田会長
講演
ブース出展
2009/4/18
2009/4/18
Jリーグ、FC東京戦
2009/4/22
2009/4/22
2009/4/23
2009/4/23
2009/5/31
2009/5/31
2009/7/27
2009/7/27
2009/8/23
2009/8/24
2009/9/14
2009/9/15
深川江戸
資料館
セルリアンタワー
渋谷支部
東急ホテル
オリンピアントークショー
アジア商工会議所連合会
横浜産業貿易
総会(横浜商工会議所)
センタービル
川崎商工会議所
雑賀事務次長講演
川崎商工
講演会
会議所
2016年東京オリンピック・パラリ 東京・長野・札幌オリンピック JR品川駅
写真展
ンピック招致写真展(品川駅)
2016年東京オリンピック・パラリ 東京・長野・札幌オリンピック 渋谷駅
ンピック招致写真展(渋谷駅)
写真展
41
42
練馬産業会館
43
44
45
46
47
48
49
50
51
52
53
世田谷産業
プラザ
杉並区
産業商工会館
アンフェリシオン
タワーホール船堀
北トピア
リビエラ東京
ハイアット
リージェンシー東京
如水会館
54
55
56
57
58
59
60
61
62
63
江東支部決起大会
ブース出展
聖火点灯
雑賀事務次長講演
アスリートトークショー
雑賀事務次長講演
アスリートトークショー
ブース出展
東京商工
会議所
ロイヤルパーク
ホテル
国立競技場
参加者数
(人)
430 東商本部役員
支部役員・会員
27,000 一般観客
300 支部役員・会員
一般市民
300 支部役員・会員
一般市民
200 アジア各国会員
横浜商工会議所
80 川崎商工会議所
役員、会員
340 一般通行人
1,250 一般通行人
42,684
計
交通・運輸業界との連携
No.
1
2
3
開催日時
内容
対象
規模
開始
終了
2009/3
2009/10/2
タクシーシール掲出
タクシー
約57,000台
2009/4
2009/4
2009/10/2
2009/10/2
バスマスク(幕)掲出
トラックステッカー掲出
バス
トラック
約3,000台
約80,000台
176
参加者層
120 支部役員・
評議員
100 支部役員・
評議員
100 支部役員・
評議員
130 支部役員・
評議員
150 日本商工
会議所役員
100 支部役員・
評議員
130 支部役員・
評議員
150 支部役員・
評議員
130 支部役員・
評議員
100 支部役員・
評議員
100 支部役員・
評議員
100 支部役員・
評議員
150 支部役員・
評議員
150 支部役員・
評議員
120 東商役員・議員
第一部 第3章
立候補都市段階
8
東京都議会との連携
(1) 東京都議会オリンピック・パラリンピック招致議員連盟
ア 主な活動
(ア) 北京オリンピック競技大会の視察
平成 20(2008)年 8 月 8 日から 8 月 10 日までに議連会員の
有志(13 名)によりオリンピックを視察し、東京招致をアピールする
とともに日本のオリンピック選手を激励した。
<視察日程>
日程
視察内容
8月 8日 北京オリンピック開会式
オリンピック関係施設
9日 オリンピックスポンサー企業主催パーティー
ジャパンハウス
10日 北京市内
(イ)
開催都市決定に向けての出陣式
平成 21(2009)年 9 月 17 日に都庁5階大会議場で開催
知事以下 IOC 総会でのプレゼンターへエールを送り、激励した。
(ウ) 開催都市応援パレード
同年 9 月 23 日に原宿表参道で開催
招致ロゴ入りのジャンパーを着て、横断幕を掲げ参加し、沿道の
多くの人たちに招致の最後の応援をお願いした。
(エ) 2016 年オリンピック・パラリンピック開催地決定を迎える会
同年 10 月2日に都庁5階大会議場で開催
開催地決定の瞬間を多くの関係者とともに見守った。
イ その他の活動内容
・ 平成 20(2008)年 6 月 5 日に国会議員によるオリンピック日本
招致推進議員連盟(超党派)発起人会に出席した。
・ 平成 21(2009)年 1 月 27 日に京都市中京区の寺町京極商店街
で京都市商店連合による招致応援イベントが開催され、事務局長が
出席した。
・ 同年 2 月 20 日に国会議員の招致議連に対し、国会招致決議につ
いての要請を行う。
・ 同年 3 月 11 日に横浜市会議長に国会招致決議の要請を行っても
らうため、招致の協力依頼を送付した。
・ 同年 4 月 14 日から 20 日の IOC 評価委員会訪問の際の公式レセ
プションに都議会招致議連会長及び名誉顧問が出席し、IOC 委員に
対し東京をアピールした。
177
第一部 第3章
立候補都市段階
9
東京都議会の活動
○ オリンピック・パラリンピック招致特別委員会北京パラリンピック視察
4 年に 1 度開催されるオリンピック・パラリンピックの状況等を実際
に調査するとともに、招致本部を始めとする、東京都が実施している招
致活動の最前線の現場を調査するため、平成 20(2008)年 6 月 18 日
に開催された特別委員会において、9 月 6 日から 9 月 8 日に「オリン
ピック・パラリンピック競技大会に係る実地調査」
「北京パラリンピック
の開催状況に係る調査」のため中国北京市への視察が提案された。
賛成多数で可決され、議長に報告し議会運営委員会で了解されること
となった。
当初参加議員は、自民党 5 名、民主党 3 名、公明党 2 名の計 10 名
の予定だったが、急遽、民主党2名、公明党1名が不参加となり7名が
視察に参加した。共産党、生活者ネットワークは反対のため不参加。
<派遣議員>
(敬称略)
役職(当時)
氏 名
所属政党
委員長
野村 有信
東京都議会自由民主党
理事
吉野 利明
東京都議会自由民主党
委員
西岡 真一郎 都議会民主党
委員
村上 英子
東京都議会自由民主党
委員
長橋 桂一
都議会公明党
委員
鈴木 隆道
東京都議会自由民主党
委員
髙橋 かずみ 東京都議会自由民主党
<視察日程>
日程
内 容
9月6日 成田空港発
東京招致ブース見学(ホテルニューオータニ長富宮内)
JPC 関係者・パラリンピック選手の激励
北京パラリンピック開会式
7日 パラリンピック競技視察
(車椅子バスケットボール・ボッチャ)
IOC 北京事務所首席代表 李紅氏の講演
8日 北京市人民代表大会常務委員会表敬訪問
(北京市人民代表大会常務委員会委員、教育科学文化衛
生体育委員会)
オリンピックグリーン外の主要施設視察
成田空港着
178
第一部 第3章
立候補都市段階
10
(1)
招致推進会議の活動
招致推進会議
平成 19(2007)年度に引き続き、招致に向けた課題の検討を全庁
的に行い、関係各局との連携を強化するため、会議を開催した。
開催実績
開催日
主な議題
平成 21(2009)年
・今後の招致活動
1 月 9 日 ・IOC 評価委員会の受け入れ
なお、平成 20(2008)年度は、平成 19(2007)年 11 月に設置
した、関係各局の課長級職員で構成する庁内各局連携会議を中心に実務
的な検討を進めた。
(2)
招致推進会議(都市づくり部会)
立候補ファイルの会場施設計画及び交通インフラ計画の作成に向けて、
これまでに引き続き、専門部会で課題の整理と調整を進めた。申請ファ
イル段階よりも具体的に、計画の実施にあたって必要な手続きを抽出し、
また、実施上の課題を整理した。
ア 会場施設計画に関連する課題の整理
会場施設計画とその予定地周辺のインフラとの整合を図ることや、
新規施設の建設にあたって、都市計画上の諸手続きを進め、開催に間
に合うように整備に取りかかること、また、大会輸送計画に合わせた
交通インフラの整備が課題であった。
イ 専門部会による検討
立候補ファイルの原案策定までの期間に、各専門部会をそれぞれ3
回開催した。オリンピックスタジアム周辺整備・オリンピックスタジ
アム施設建設・晴海のまちづくり合同専門部会では、予定地周辺のイ
ンフラ整備との整合の検討等を行った。選手村専門部会では、施設計
画と周辺インフラとの関係の整理等を行った。交通インフラ専門部会
では、会場周辺の交通インフラと観客及び関係者の輸送等に関して検
討した。
ウ 実施に即した会場施設計画を策定
申請ファイル時点の計画をブラッシュアップし、詳細で緻密な会場
施設計画を練り上げた。
さらに、招致決定後に向けて、計画実施上の課題を整理した。
エ 各分野と連携した会場施設計画
立候補ファイルでは、各会場の配置図が掲載されるため、会場と周
辺街区との関係が明らかになる。地元のまちづくりと整合した計画を
作成するには、各分野からのアドバイスが大切である。
179
第一部 第3章
立候補都市段階
11
(1)
庁内各局連携会議の活動
会議概要
平成 19(2007)年度に引き続き、招致気運の醸成等について実務
的に検討・調整するため、会議を開催した。
開催実績
開催日
主な議題
平成 20(2008)年度
1
4 月 25 日 今後の各局連携
2
5 月 21 日 立候補都市承認に伴う新ロゴ・エンブレムの掲出
3
6 月 11 日 新ロゴ・エンブレム発表後の各局配布グッズ等
北京オリンピック・パラリンピックにおける広報
4 9 月 11 日
活動
5 10 月 16 日 IOC 評価委員会対応準備に係る各種調査
6 11 月 28 日 招致エンブレム等の使用申請手続にかかる変更
7 12 月 25 日 IOC 評価委員会の受け入れ
8 2 月 16 日 立候補ファイルの概要
平成 21(2009)年度
1
6 月 22 日 開催都市決定までの PR 活動
2
9 月 11 日 開催都市決定直前盛り上げイベント
(2)
各局事業との連携
本会議を開催することで、各局への迅速な情報提供や実務的な意見交
換を行うことができ、各局と密に連携して PR 活動を行うことができた。
庁内各局連携会議を通じて各局との連携を強化した結果、各局がそれ
ぞれの事業目的に従って実施する多数の事業において、招致本部が提供
したリーフレットの配布、のぼり旗、ポスターの掲出等を行うことがで
きた。
<連携例>
平成 20(2008)年度
・ 第 9 回東京都障害者スポーツ大会(福祉保健局)
・ 人権啓発フェスティバル(総務局)
・ 第 61 回みなと祭(港湾局)
・ 「道の日」行事(建設局)
平成 21(2009)年度
・ 2009 東京国際ユース(U-14)サッカー大会(生活文化スポー
ツ局)
・ 環境教育フォーラム(教育庁)
・ 平成 21 年度防災展(総務局)
・ 「海の森」植樹イベント(港湾局)
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