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LC/MS による土壌中有機汚染物質のスクリーニング法の開発 抽出方法

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LC/MS による土壌中有機汚染物質のスクリーニング法の開発 抽出方法
BUNSEKI KAGAKU Vol. 64, No. 7, pp. 533–541(2015)
© 2015 The Japan Society for Analytical Chemistry
533
技術論文
LC/MS による土壌中有機汚染物質のスクリーニング法の開発
─抽出方法及び条件の最適化に関する検討─
*1
宮 脇 崇 ,飛石
和大 ,竹中
1
重幸 ,門上希和夫
1
2
本研究では,液体クロマトグラフィー質量分析法(LC/MS)を測定系とする土壌中有機汚染物質のスク
リーニング法を開発するため,抽出方法及び条件の最適化に関する検討を行った.水溶解度が 1.2 ∼ 58000
mg L
−1
の農薬 23 物質を対象に添加回収試験を行った結果,土壌からの親水性物質の抽出には,非加熱式の
抽出法が有効であることが確認された.本研究では,振とう法を対象に,溶媒組成,溶媒量,抽出時間につ
いて抽出条件の最適化を行った.その結果,溶媒組成はアセトニトリル・水混液(50/50, v/v%),溶媒量は
試料 2 g に対して 4 mL 以上,抽出時間は 10 分間以上であることが分かった.これらの条件に基づく添加回
収試験では,Thiram を除く 22 物質において回収率が 86 ∼ 106 % の範囲であり,繰り返し分析の相対標準
偏差は 18 % 以下であった.また,本研究では,抽出溶媒の組成が対象物質の抽出挙動に影響を及ぼすこと
−1
が明らかになった.水溶解度が 200 mg L
程度以下の物質では,アセトニトリルの比率(0 ∼ 50 %)の増
加に伴い,抽出効率が顕著に向上することが確認された.
イクロウェーブ抽出を採用している.以下に,これまでに
1 緒 言
得られた抽出特性を示す.
東日本大震災では,津波によって居住地や農地に大量の
1)水・オクタノール分配係数(LogPow)が 0.78 ∼ 7.05
土砂・汚泥が打ち上げられ,広域に渡って津波堆積物が発
の物性値を持つ農薬類 64 種を対象に添加回収試験を行っ
生した.この中には,海底汚泥のほか,ガレキ,廃プラス
た結果,64 物質のうち 53 物質が目標回収率(50 ∼ 150 %)
ティック類,油類,生活用品等からもたらされた様々な化
を達成した.
学物質が混在していたことが報告されている .このよう
2)GC スクリーニングの適用範囲は,LogPow が 2 程度
な緊急時の土壌汚染調査では「どのような物質がどの程度
以上の物質であり,それ未満の親水性を示す物質では回収
存在するのか」を早期に把握することが,汚染の拡大防止
率が 50 % を下回り,分析が困難であることが示された.
や避難対策等の措置を行う上で重要となる.しかしなが
GC スクリーニングでは,二相系溶媒のうちヘキサン相
1)
ら,土壌汚染に係る現行の公定法
2)∼4)
には,化学物質によ
る事故や災害等を想定した詳細な調査マニュアルがない.
を分析対象とする.上述したとおり,この方法によって対
象物質の 8 割以上が目標回収率を満たしたが,そのほとん
そのため,現状では各法令で定められた個別の公定法を複
どは疎水性物質であった.これは抽出溶媒がヘキサンと水
数行うなど,労力と時間を伴う作業が必要となる.緊急性
であるため,対象物質の物性値(LogPow や水溶解度)が,
を要する調査活動では,常に迅速性が求められるため,適
そのまま分配に反映した結果であると考えられた.このこ
用する分析法は高精度・高感度なものよりも,操作性・効
とから,回収率が低かった親水性物質は,水相に抽出され
率性に優れたスクリーニングの方が適していると考えられ
た可能性があると推測された.そこで,本研究では GC ス
る.
クリーニングによる添加回収試験を再度行い,水相に抽出
著者らは,これまでにガスクロマトグラフィー質量分析
された農薬類について調べた.さらに,GC スクリーニン
法(GC/MS)を測定系とする土壌中有機汚染物質のスク
グでは分析が困難な物質を対象に,液体クロマトグラ
リーニング法(以下,GC スクリーニング)を開発した
.
5)6)
この方法では,ヘキサンと水による二相系溶媒を用いたマ
フィー質量分析法(LC/MS)を測定系とする親水性物質の
網羅的分析法(以下,LC スクリーニング)の開発を行っ
た.本研究では,抽出方法及び条件の最適化ついて検討し
*
1
2
E-mail : [email protected]
福岡県保健環境研究所 : 818-0135 福岡県太宰府市向佐野 39
北九州市立大学国際環境工学部 : 808-0135 福岡県北九州市若
松区ひびきの 1-1
た.非加熱で多検体同時抽出が可能な超音波抽出(以下,
超音波法)と振とう抽出(以下,振とう法)を比較し,最
も高い回収率が得られた抽出方法について,各条件(溶媒
B U N S E K I K A G A K U
534
Table 1
Vol. 64 (2015)
Physical properties of targeted compounds
Compounds
LogPow a)
Water solubility a)/
mg L−1
Azoxystrobin
Bensulide
Carbofuran
Carpropamid
Dimethoate
Dymron
Fenthion
Fenthion oxon sulfone
Fenthion oxon sulfoxide
Fenthion-oxon
Fenthion-sulfoxide
Flazasulfuron
2.50
4.20
2.32
4.63
0.78
4.30
4.09
0.28
0.15
2.31
1.92
1.08
6.0
25
320
1.8
25000
1.2
7.5
7602
12200
214
3.7
2100
Compounds
LogPow a)
Water solubility a)/
mg L−1
Halosulfuron-methyl
Iprodione
Isoprocarb
Malathion
Metalaxyl
Methidathion
Methomyl
Pyroquilon
Siduron A
Simazine
Thiram
0.40
3.00
2.31
2.36
1.65
2.20
0.60
1.57
3.80
2.18
1.73
847
14
400
143
8400
187
58000
4000
18
6.2
30
a) Data were obtained from search site “ChemIDplus Lite” of reference 7).
組成・溶媒量・抽出時間)の最適化検討を行った.その結
2・3 試 薬
果,対象物質の物性値と抽出挙動に関して興味深い知見を
分析試験で使用した溶媒は,和光純薬工業製アセトン,
ヘキサン(ダイオキシン類分析用),アセトニトリル,メタ
得ることができた.その詳細を以下に報告する.
ノール,超純水(LC/MS 用)である.検討農薬の標準物質
2 試料と方法
は, 和 光 純 薬 工 業 製 の 28 種 農 薬 混 合 標 準 液 及 び Dr.
2・1 試験試料
Ehrenstorfer 製の 7 種の標準品(Dimethoate, Pyroquilon,
試験用の試料は,公園から採取した土壌を用いた.採取
Metalaxyl, Simazine, Methidathion, Isoprocarb, Malathion)
した試料はステンレス製バットに入れて,金属製のヘラ等
を用いた.前者はアセトニトリル溶液とし,後者はアセト
でかたまりを押しつぶして砕きほぐし,篩にかけて 2 mm
ンで希釈混合して 7 種混合溶液とした.各農薬の濃度は 10
以下に調製した.この試料は,添加回収試験に使用するた
ng μL
−1
に調製した.
め,あらかじめ,トルエン及びアセトンによるソックス
レー抽出をそれぞれ 20 時間ずつ行い,目的物質が含まれ
2・4 マイクロウェーブ抽出による添加回収試験
ていないことを確認した.その後,ドラフト内で重量変化
本研究で使用したマイクロウェーブ抽出装置は,マイル
がなくなるまで風乾させて溶媒を除去した.各試料の水分
ストーンゼネラル製の ETHOS TC である.抽出容器は約
含量は,調製した試料 5 g を 110 ℃ で約 2 時間乾燥させた
30 mL 容の石英ガラス容器(114×20 mm i.d.)を使用し
後,乾燥前の試料重量との差から算出した.試料中の水分
た.マイクロウェーブ抽出による添加回収試験は,次の手
含量は 1.8 % であった.
順で行った.
抽出容器に試料 2 g を入れ,その表層に農薬 23 種の標準
2・2 検討物質
物質 500 ng(アセトニトリル及びアセトン溶液)を添加し
本研究では,LC スクリーニングによる検出感度が高く,
た.なお,本研究ではスクリーニング分析を目的としてい
物性値情報が明らかになっている物質を対象とした.水道
ることから,想定する試料中の濃度を数 10 ∼ 100 ppb 程度
法の水質管理目標設定項目で規制された農薬類のうち,液
とし,その添加量を 500 ng に設定した.容器は開放系にし
体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC/MS/MS)に
た状態で,一晩室温にて静置させた.その後,溶媒が揮発
よる一斉分析法の対象 16 種と GC/MS による一斉分析法の
していることを確認してから容器ごと軽く振とうし,試料
対象 7 種,計 23 種を検討物質に選定した.後者は,以前
を均質化させた.次に,水 4 mL,ヘキサン 6 mL の順に溶
の研究で GC スクリーニングによって目標回収率が得られ
媒を加えて容器を密栓した後,マイクロウェーブ抽出を
なかった物質群である .Dichlorvos もこれに該当する物
行った.また,本試験では水にアセトニトリルを加えた抽
質であったが,本研究で使用した液体クロマトグラフィー
出試験も実施した.その溶媒組成は,アセトニトリル・水
飛行時間型質量分析計(LC-Tof-MS)では十分な検出感度
混液(50/50, v/v%)4 mL,ヘキサン 6 mL とした.温度
が得られなかったため,対象外とした.検討物質及びその
条件は既報 に従い,室温 ─(500 W, 5 分)─ 70 ℃ ─(500 W,
物性値を Table 1 に示す.物質の極性を表す LogPow や水
10 分)─ 120 ℃(300 W, 15 分)のプログラムで行った.抽出
−1
溶解度 の範囲はそれぞれ 0.15 ∼ 4.63,1.2 ∼ 58000 mg L
後,溶媒が二相に分離していること,また溶媒の量に変化
であり,親水性物質を主体とする幅広い化合物が含まれる.
がないことを確認して,下層の水 2 mL をマイクロピペッ
6)
7)
6)
技術論文 宮脇,
飛石,
竹中,
門上 : LC/MS による土壌中有機汚染物質のスクリーニング法の開発 ─抽出方法及び条件の最適化に関する検討─
535
ター(FINNPIPETTE, Thermo Scientific 製)で分取した.こ
25/75,50/50,75/25,100/0,v/v%)に設定した.各組
れを孔径 0.20 μm の PTFE 製シリンジフィルター(DISMIC-
成の条件について,標準物質の添加回収試験を行った.抽
25HP,アドバンテック製)で沪過し,測定用試料とした.
出時間は 15 分間とし,2・6 の操作と同様の手順で測定用試
なお,本試験では各試験の回収率を算出するため,別途,
料を作成した.なお,本試験の回収率算出用の標準液は,
標準液を調製した.各試験条件に合わせて,水 4 mL 及び
各試験条件に合わせ,5 段階の溶媒 8 mL に標準物質 500
アセトニトリル・水混液 4 mL に標準物質 500 ng をそれぞ
ng をそれぞれ添加して調製した.
れ添加して調製した溶液を標準液とした.
2・6・2 抽出溶媒量の最適化検討 振とう法につい
て,抽出溶媒量を変えた試験を行った.使用した溶媒はア
2・5 超音波法による添加回収試験
セトニトリル・水混液(50/50, v/v%)で,溶媒量を 4,8,
本研究で使用した超音波装置は,洗浄機として市販され
12,16,20 mL の 5 段階に設定した.各溶媒量の条件につ
ているアズワン製の USD-4R(300×240×150 mm)であ
いて,標準物質の添加回収試験を行った.抽出時間は 15 分
る.抽出容器は 50 mL 容の遠沈管(80×30 mm i.d.)を使
間とし,2・6 の操作と同様の手順で測定用試料を作成した.
用した.抽出を始める前に,音波計(HUS-3,本多電子製)
なお,本試験の回収率算出用の標準液は,各試験条件に合
を用いて超音波装置の水槽内の音波を実測し,音波が強
わせ,5 段階の溶媒量 4 ∼ 20 mL に標準物質 500 ng をそれ
く,ばらつきの少ない場所に抽出容器用のステンレススタ
ぞれ添加して調製した.
ンドを置いて固定した.超音波法による標準物質の添加回
収試験は,次の手順で行った.
抽出容器に試料 2 g を入れ,その表層に農薬 23 種の標準
2・6・3 抽出時間の最適化検討 振とう法について,
抽出時間を変えた試験を行った.使用した溶媒はアセトニ
トリル・水混液(50/50, v/v%)8 mL で,抽出時間を 5,
物質 500 ng を添加し,2・4 の操作と同様に溶媒の除去及び
10,15,20,30 分間の 5 段階に設定した.各時間の条件に
試料の均質化を行った.この試料にアセトニトリル・水混
ついて,標準物質の添加回収試験を行った.2・6 の操作と
液(50/50, v/v%)8 mL 又は水,メタノール混合液(50/50,
同様の手順で測定用試料を作成した.なお,本試験の回収
v/v%)8 mL を加えて,超音波抽出を 15 分間行った.抽出
率算出用の標準液は,アセトニトリル・水混液 8 mL に標
後,各試料は遠心分離(3000 rpm,テーブルトップ遠心機
準物質 500 ng をそれぞれ添加して調製した.
2420,KUBOTA 製)を 5 分間行い,上澄みの 2 mL をマイ
クロピペッターで分取した.これをシリンジフィルターで
2・7 LC/Tof-MS 測定
沪過して,測定用試料とした.なお,本試験の回収率算出
本研究で使用した LC-Tof-MS は,Waters 製の ACQUITY
用の標準液は,各試験条件に合わせ,アセトニトリル・水
UPLC/LCT Premier XE である.カラムは Waters 製の BEH
混液 8 mL 及び水・メタノール混合液 8 mL に標準物質 500
C18(100×2.1 mm i.d., 1.7 μm)を使用した.測定条件の
ng をそれぞれ添加して調製したものを使用した.
詳細を Table 2 に示す.イオン化法はエレクトロスプレー
イオン化法で行い,ポジティブ・ネガティブ同時モードで
2・6 振とう法
スキャン測定した.また,質量分解能(半値幅)は 10000
本研究で使用した振とう機は,タイテック製の SR-2DS
以上に設定した.
である.抽出容器は 50 mL 容の遠沈管を使用した.振とう
データ採取及び解析は,Waters 製の ChromaLynx を使用
法による標準物質の添加回収試験は,次の手順で行った.
した.このソフトウェアには,今回対象とした農薬 23 物質
抽出容器に試料 2 g を入れ,その表層に農薬 23 種の標準
のモノアイソトピック質量と保持時間情報を登録してい
物質 500 ng を添加し,2・4 の操作と同様に溶媒の除去及び
る.LC/Tof-MS 測定で得られた測定データは,この登録情
試料の均質化を行った.この試料にアセトニトリル・水混
報に基づき,質量誤差 10 mDa 以内及び保持時間±0.2 min
液(50/50, v/v%)8 mL 又は水メタノール混合液(50/50,
の条件で定性及び定量した.
v/v%)8 mL を加えて,振とう抽出(270 r/m)を 15 分間
3 結果と考察
行った.抽出後,遠心分離及びシリンジフィルターによる
沪過を行い,測定用試料とした.なお,本試験の回収率算
出用の標準液は,2・5 の操作と同様に調製したものを使用
した.
3・1 マイクロウェーブ抽出による添加回収試験
GC スクリーニングは,抽出溶媒に水とヘキサンを使用
するため,物質の物性に応じた抽出ができると考えられ
2・6・1 抽出溶媒組成の最適化検討 振とう法につい
る.前報 では,LogPow が 2 程度以上の疎水性物質がヘキ
て,抽出溶媒の組成を変えた試験を行った.使用した溶媒
サン相に抽出されることを確認したが,水相の方について
は,アセトニトリルと水の 2 種である.溶媒の総量は 8 mL
は詳細な評価を行っていなかった.そこで本研究では,GC
とし,アセトニトリル・水混液の組成を 5 段階(0/100,
スクリーニングによる添加回収試験を再度行い,水相に抽
6)
B U N S E K I K A G A K U
536
Table 2
Vol. 64 (2015)
Operating conditions for LC/Tof-MS
Waters ACQUITY UPLC®/LCT-Premier XE
Instrument
LC conditions
Column: Waters ACQUITY UPLC BEH C18, 2.1 mm×100 mm, 1.7 μm, Column temp.: 45 ℃
Flow rate: 0.45 mL min−1
Mobile phase A: 10 mM CH3COONH4/H2O, B: 5 mM CH3COONH4/CH3OH
Gradient conditions: 0.00 ̶ 0.25 min A : B=98.0 : 2.0, 0.25 ̶ 12.25 min A: 98.0 %→ 1.0 %, B: 2.0 %→ 99.0 % linear
gradient, 12.25 ̶ 13.00 min A : B=1.0 : 99.0, 13.00 ̶ 13.01 min A: 1.0 %→ 98.0 %, B: 99.0 %
→ 2.0 % linear gradient, 13.01 ̶ 17.00 min A : B=98.0 : 2.0
Injection volum: 5 μL
MS conditions
Ionization mode: Positive/Negative-ESI
Scan range: 100 ̶ 1000 m /z
Capillary voltages: 2800 V (Positive), 2500 V (Negative)
Sample cone voltage: 20 V
Desolvation temp.: 450 ℃, Source temp.: 120 ℃
Desolvation gas flow: 800 L hr−1, Cone gas flow: 50 L hr−1
100
Recovery, %
80
60
40
Water
20
ACN/Water (1:1)
0
Fig. 1 Recoveries obtained by microwave-assisted extraction using a solvent of water or acetonitrile/water
(50/50, v/v%) (average±measured value, n =3)
出された物質について調べた.目標回収率は 50 ∼ 150 %
リル を水に加えて同様の試験を行い,抽出効率の改善を
とした.本試験では 3 回の繰り返し分析を行い,それらの
試みた.
回収率から平均値を求めて比較用のデータとした.なお,
対象物質の回収率は,次式から算出した.
8)
水にアセトニトリルを加えた混液(50/50, v/v%)4 mL
とヘキサン 6 mL を抽出溶媒として,マイクロウェーブ抽
出による添加回収試験を行った(Fig. 1)
.水・アセトニト
回収率(%)=(抽出液におけるピーク面積値/標準液に
リル抽出液からは対象 23 物質のうち 20 物質が検出され,
おけるピーク面積値)
×100
水抽出時に比べ,すべての物質で回収率が向上した.この
結果から,アセトニトリルは対象物質の抽出促進に効果が
抽出液と標準液において,標準物質の濃度及び添加量,
あることが示された.しかしながら,目標回収率を達成し
使用した溶媒量及び組成がすべて同一であることから,そ
た物質はわずか 4 物質であり,半数以上の物質は 20 % 未
れぞれのピーク面積値の比率から回収率を求めた.試験の
満のままであった.この結果から,GC スクリーニングで
結果を Fig. 1 に示す.水相からは,対象 23 物質のうち 15
は対象物質を高回収率で分析することが困難であることが
物質が検出されたが,いずれも低い回収率であった.最も
示された.この原因として,マイクロウェーブ抽出過程に
高い回収率が得られた Metalaxyl でも 25 %,それ以外はす
おいて熱分解が起きた可能性が考えられた.前報 では,
べて 20 % 未満であった.また,回収率と物性値の間には
抽出温度の上昇(120 ∼ 140 ℃)に伴う回収率の低下が一
関連がみられなかった.以上の結果から,農薬の一部が水
部の物質で確認されており,本研究で対象とした親水性物
に抽出されることは確認されたが,その回収率は全体的に
質においても,抽出温度 120 ℃ の条件で熱による分解が起
低く,水だけでは十分な抽出効率が得られないことが分
きた可能性が考えられた.そこで,著者らは非加熱式の抽
かった.そこで,農薬の抽出によく使用されるアセトニト
出法を用いて,対象物質を高効率で抽出するための検討を
6)
技術論文 宮脇,
飛石,
竹中,
門上 : LC/MS による土壌中有機汚染物質のスクリーニング法の開発 ─抽出方法及び条件の最適化に関する検討─
537
では,音波計を用いてあらかじめ測定を行い,音波が安定
行った.
的に強く照射する場所を選択して試験を実施したが,振と
3・2 超音波法と振とう法の比較
う法に比べて回収率値の RSD が大きかった.一方,アセト
本試験では,非加熱式の抽出法として,土壌中の農薬の
と振とう法
ニトリル・水混液を抽出溶媒とする振とう法では,RSD が
を採用し,添加
18 % 以下であり,Thiram を除く 22 物質において回収率
回収試験を行った.前節の試験において,アセトニトリル
が 86 ∼ 106 % であった.以上の結果から,この抽出方法
に抽出促進の効果が確認されたことから,抽出溶媒にはア
が,対象物質の抽出に最も適していることが示された.
抽出に使われる超音波法
9)10)
4)11)
セトニトリル・水混液(50/50, v/v%)を使用した.また,
−1
本研究の対象物質の水溶解度は 1.2 ∼ 58000 mg L
であ
比較対照として水・メタノール混合液(50/50, v/v%)を
り,親水性物質を主体とする農薬である.本試験では,対
用いた試験も行った.
象物質の熱安定性に関する検証はできていないが,加熱式
超音波法及び振とう法による添加回収試験では,各 3 回
から非加熱式の抽出法に変更したことで対象物質の抽出効
の繰り返し分析を行い,それらの回収率から平均値を求め
率が大幅に向上した.また,本法は LC/Tof-MS を測定系
た.その結果を Table 3 に示す.各試験において,すべて
とすることから,GC/MS では測定が困難な物質(水溶
の対象物質が検出された.超音波法において目標回収率を
性・不揮発性・熱不安定性)を測定できる.以上のことか
達成した物質数は,アセトニトリル・水混液で 23 物質中
ら,これらを組み合わせた分析法によって,土壌中の親水
22 物質,水・メタノール混合液で 23 物質中 21 物質であっ
性物質を網羅的に分析する LC スクリーニングの開発が可
た.一方,振とう法では,アセトニトリル・水混液で 23 物
能であると考えた.そこで,その抽出方法を確立するため,
質中 22 物質,水・メタノール混合液で 23 物質中 22 物質
振とう法を対象に抽出条件の最適化に関する検討を行っ
であった.全体を通じて対象物質の回収率は,一部の物質
た.
を除き,おおむね 70 % 以上の良好な値が得られた.以上
の結果から,非加熱による抽出法の有効性が確認された.
3・3 溶媒組成の最適化
次に,回収率が 50 % 未満であった物質について考察す
アセトニトリル・水混液を抽出溶媒とする振とう法につ
る.すべての試験において Thiram の回収率は 3 ∼ 14 %
いて,溶媒組成の最適化に関する検討を行った.溶媒の総
で,ほかの物質と比べて低い値であった.Thiram は加水分
量は 8 mL,抽出時間は 15 分間とし,アセトニトリル・水
解半減期が 82 日(pH=7)で熱にも安定な物質である
混液の組成を 5 段階に設定して,添加回収試験を実施し
,その分解性に関する研究例は比較的多く ,pH が
た.本試験では 3 回の繰り返し分析を行い,それらの回収
中性域の水溶液中でも数時間で消失するという報告があ
率から平均値を求めて比較用のデータとした.その結果を
る .また,Thiram は,共存する金属類と錯体を形成する
Table 4 に示す.目標回収率を達成した物質数は,各溶媒
という報告例もある .これらの知見から,本試験におい
条件(アセトニトリル含量 0,25,50,75,100 %)にお
が
12)
13)
14)
15)
ても土壌又は抽出液中で,Thiram の分解や吸着,あるいは
い て, そ れ ぞ れ 14,20,22,22 及 び 22 物 質 で あ っ た.
試料に含まれる金属類との錯体形成等が起きた可能性が考
Thiram はどの条件においても回収率が低く,10 % 未満で
えられた.また,水・メタノール混合液による超音波法の
あった.これらの結果から,アセトニトリル含量が 50 %
条件において,Flazasulfuron の回収率が低下していた.
以上の条件において高い回収率が得られ,高効率な抽出が
Flazasulfuron は水溶液中において加水分解することが報告
できることが分かった.ところで,土壌からの有機汚染物
されている .しかし,本試験では,抽出溶媒や抽出法を
質の抽出では,有機溶媒の比率が少ないほど,マトリクス
変えた条件において 80 % 以上の回収率が得られていたこ
成分の少ない選択的な抽出ができることが知られてい
とから,Flazasulfuron の抽出にはこれらの組み合わせが重
る .本法は LC/Tof-MS によるスキャン測定を行うため,
要であることが示唆された.
マトリクス影響によるイオンサプレッションやエンハンス
16)
18)
そこで,本試験で設定した四つの抽出条件について,対
メントを抑制することが重要になる.本試験結果から,ア
象物質の回収率とその相対標準偏差(RSD)について考察
セトニトリル含量が 50 % 以上の溶媒組成で十分な抽出効
した.低回収率であった一部の物質を除くと,回収率は全
率が得られていたことから,その中で有機溶媒の比率が最
抽出条件でほぼ同等であったが,水・メタノール混合液に
も少ないアセトニトリル・水混液(50/50, v/v%)を本試
よる超音波法において 60 ∼ 91 % であり,全体的にやや低
験の最適条件とした.
い値を示した.また,RSD は,振とう法の方が超音波法に
ところで,本試験では,対象物質の物性値(水溶解度)
比べて値が低く,安定した抽出ができていることが分かっ
と抽出効率に関する興味深い傾向がみられた.アセトニト
た.超音波法については,音波の強さやばらつきが抽出効
リルを含まない水 100 % を抽出溶媒とした試験において
率に影響を及ぼすことが報告されている .そこで本研究
目標回収率を満たさなかったのは,水溶解度が 200 mg L
17)
−1
89
92
80
83
87
83
81
91
96
86
83
96
75
14
88
79
76
92
84
87
86
88
80
Methomyl
Dimethoate
Fenthion oxon sulfoxide
Metalaxyl
Fenthion oxon sulfone
Pyroquilon
Flazasulfuron
Halosulfuron-methyl
Isoprocarb
Carbofuran
Fenthion-oxon
Methidathion
Malathion
Thiram
Bensulide
Siduron A
Iprodione
Fenthion
Simazine
Azoxystrobin
Fenthion-sulfoxide
Carpropamid
Dymron
11
10
8.2
8.1
12
8.6
13
6.1
12
7.9
8.6
8.7
5.9
1.3
17
8.2
15
11
6.8
9.2
6.5
7.9
7.3
S.D.
12
11
10
10
14
10
16
6.8
12
9.2
10
9.1
7.9
8.7
19
10
19
12
8.1
11
7.6
9.0
9.2
R.S.D./
%
79
82
75
74
79
76
46
85
91
86
75
80
85
3.1
76
75
65
60
80
78
81
87
77
Ultrasonic
MeOH/Water
a) Data were obtained from search site “ChemIDplus Lite” of reference 7).
Ultrasonic
ACN/Water
16
7.3
11
9.3
8.8
12
6.5
7.7
15
10
10
10
5.4
1.1
5.4
5.1
14
13
7.8
9.1
6.2
4.7
4.8
S.D.
20
8.9
15
13
11
16
14
9.1
16
12
13
13
6.4
35
7.1
6.9
21
22
10
12
7.7
5.4
6.3
R.S.D./
%
97
99
92
94
91
95
99
97
106
92
91
106
88
9.3
95
87
91
106
94
94
88
92
86
Shaking
ACN/Water
6.3
4.2
2.4
1.5
3.2
2.0
2.4
0.54
1.8
1.8
1.3
4.5
3.1
1.7
3.3
2.5
1.4
3.9
1.8
2.6
2.3
2.9
1.4
S.D.
6.4
4.3
2.6
1.6
3.5
2.1
2.4
0.56
1.7
2.0
1.4
4.3
3.5
18
3.5
2.9
1.5
3.7
1.9
2.8
2.6
3.1
1.6
R.S.D./
%
93
92
87
86
92
91
83
97
107
92
83
93
89
8.2
82
81
77
79
91
89
89
93
78
Shaking
MeOH/Water
5.8
2.8
1.0
1.7
3.1
3.8
2.3
2.2
1.8
2.1
1.5
3.3
1.0
0.43
1.0
0.52
5.8
1.2
3.1
3.4
1.1
3.6
11
S.D.
6.2
3.1
1.1
2.0
3.4
4.1
2.8
2.2
1.6
2.3
1.8
3.5
1.1
5.3
1.3
0.64
7.6
1.5
3.5
3.8
1.3
3.9
14
R.S.D./
%
0.60
0.78
0.15
1.65
0.28
1.57
1.08
0.40
2.31
2.32
2.31
2.20
2.36
1.73
4.20
3.80
3.00
4.09
2.18
2.50
1.92
4.63
4.30
LogPow a)
58000
25000
12200
8400
7602
4000
2100
847
400
320
214
187
143
30
25
18
14
7.5
6.2
6.0
3.7
1.8
1.2
Water solubility a)/
mg L−1
Comparison of recoveries obtained by the extraction between ultrasonic and shaking using a solvent of acetonitrile/water or methanol/water (n = 3)
Compound
Table 3
538
B U N S E K I K A G A K U
Vol. 64 (2015)
技術論文 宮脇,
飛石,
竹中,
門上 : LC/MS による土壌中有機汚染物質のスクリーニング法の開発 ─抽出方法及び条件の最適化に関する検討─
Table 4
539
Variation in recoveries obtained by shaking in different solvent compositions of acetonitrile (n = 3)
Compound
ACN/Water
0/100, v/v%
ACN/Water
25/75, v/v%
ACN/Water
50/50, v/v%
ACN/Water
75/25, v/v%
ACN/Water
100/0, v/v%
LogPow a)
Water solubility a)/
mg L−1
Methomyl
Dimethoate
Fenthion oxon sulfoxide
Metalaxyl
Fenthion oxon sulfone
Pyroquilon
Flazasulfuron
Halosulfuron-methyl
Isoprocarb
Carbofuran
Fenthion-oxon
Methidathion
Malathion
Thiram
Bensulide
Siduron A
Iprodione
Fenthion
Simazine
Azoxystrobin
Fenthion-sulfoxide
Carpropamid
Dymron
63
93
83
88
85
55
69
96
100
93
33
38
63
2.9
21
44
52
0
58
32
39
22
57
76
93
95
83
89
90
73
105
105
99
75
91
85
2.8
50
75
100
33
81
81
86
41
80
89
90
92
95
90
95
78
98
112
94
83
101
80
3.5
106
78
111
108
87
87
93
96
88
95
101
97
98
88
102
85
97
103
94
95
108
97
5.3
91
92
91
98
95
92
95
89
102
99
90
104
94
96
94
92
90
102
86
86
96
103
6.5
93
95
94
106
101
91
87
92
105
0.60
0.78
0.15
1.65
0.28
1.57
1.08
0.40
2.31
2.32
2.31
2.20
2.36
1.73
4.20
3.80
3.00
4.09
2.18
2.50
1.92
4.63
4.30
58000
25000
12200
8400
7602
4000
2100
847
400
320
214
187
143
30
25
18
14
7.5
6.2
6.0
3.7
1.8
1.2
a) Data were obtained from search site “ChemIDplus Lite” of reference 7).
程度以下の物質であった.これらの物質は,抽出溶媒にア
溶媒量を 8 mL とし,抽出時間を 5,10,15,20,30 分間
セトニトリルを加えることで,抽出効率が顕著に向上する
の 5 段階に設定して,添加回収試験を実施した.その結果
ことが確認された(Table 4).一方で,水溶解度が 300
を Fig. 3 に 示 す. 抽 出 時 間 が 10 分 間 以 上 の 条 件 で は,
−1
以上の物質では,同様の抽出傾向はほとんどみら
Thiram を除く対象物質が目標回収率を満たしたが,抽出
れなかった.このことから,水溶解度の違いによって対象
時間が 5 分間では,Malathion の回収率が 29 % となり,ほ
物質の抽出挙動が大きく異なることが明らかになった.今
かの条件に比べて値が低かった.この原因として,抽出時
回対象とした物質は 23 種であり,詳細な評価を行うには
間が短いため,溶媒との接触効率が十分でなかった可能性
物質数を増やした検証が必要になるが,親水性物質につい
が考えられた.以上の結果から,本法による抽出時間は 10
て物性値と抽出挙動の関係を調べた研究例は少なく,本法
分間以上が妥当であると判断された.このように,短時間
の抽出特性を把握する上で重要な知見を得ることができ
で抽出できたのは,土壌吸着性が低い親水性物質を対象と
た.
したためだと考えられる.ただし,実試料を対象とする抽
mg L
出では,土壌の種類や粒径,炭素含量等によって抽出効率
3・4 溶媒量の最適化
が変わる可能性があるため,これらの性状を考慮した抽出
アセトニトリル・水混液(50/50, v/v%)を抽出溶媒と
時間の設定が必要になると考えられる.今後,種類の異な
する振とう法について,溶媒量の最適化試験を行った.抽
出時間は 15 分間とし,溶媒量を 4,8,12,16,20 mL の
5 段階に設定して,添加回収試験を実施した.その結果を
る様々な試料を対象に検証していく予定である.
4 結 言
Fig. 2 に示す.すべての試験において,Thiram を除く対象
LC-Tof-MS を測定系とする土壌中親水性物質の網羅的分
物質が目標回収率を満たした.この結果から,溶媒量が
析法の開発を目的に,抽出方法及び条件の最適化に関する
4 mL の条件でも高効率な抽出ができることが分かったが,
検討を行った.その結果,抽出方法は非加熱式の抽出,特
抽出液を分取する際の操作性を考慮して,以降の試験では
に振とう法が適していることが分かった.また,振とう法
溶媒量を 8 mL に設定した.
の最適抽出条件として,溶媒組成はアセトニトリル・水混
液(50/50, v/v%),溶媒量は試料 2 g に対して 4 mL 以上,
3・5 抽出時間の最適化
アセトニトリル・水混液(50/50, v/v%)を抽出溶媒と
する振とう法について,抽出時間の最適化試験を行った.
抽出時間は 10 分間以上であることが分かった.
本抽出法は短時間で多検体同時処理が可能であることか
ら,化学物質による事故や災害等の緊急時調査に適用する
B U N S E K I K A G A K U
540
ことが可能である.このようなケースでは,土壌に対して
吸着性を持つ疎水性物質だけなく,親水性を持つ有機汚染
物質によって汚染を受けている可能性も考えられる.本研
究のように親水性物質を対象とした土壌からの抽出例は少
なく,その抽出特性を明らかにしたことは,環境中の有機
汚染物質を網羅的に分析する上で有用な情報になると考え
られる.
謝 辞
本研究の一部は,公益財団法人鉄鋼環境基金の助成を受
けて実施した.
Vol. 64 (2015)
文 献
1) 滝上英孝 : 廃棄物資源環境学会における津波堆積
物の性状調査と適正処理の検討,東北大学大学院環
境科学研究科フォーラム,(2012).
2) 環境省 : 土壌汚染対策法施行規則第五条第三項第
四号の規定に基づく環境大臣が定める土壌溶出量調
査に係る測定方法,環境省告示第 18 号,平成 15
年 3 月.
3) 環境省水・大気環境局土壌環境課 : ダイオキシン
類に係わる土壌調査測定マニュアル,平成 20 年 3
月.
4) 環境庁水質保全局土壌農薬課 : 農薬等の環境残留
実態調査分析法,平成 10 年 10 月.
120
Recovery, %
100
80
20 mL
16 mL
60
12 mL
8 mL
40
4 mL
20
0
Fig. 2
Variation in recoveries obtained by the shaking in different solvent volumes (n=1)
120
Recovery, %
100
5min
80
10min
60
15min
20min
40
30min
20
0
Fig. 3
Variation in recoveries obtained by the shaking in different extraction times (n =1)
技術論文 宮脇,
飛石,
竹中,
門上 : LC/MS による土壌中有機汚染物質のスクリーニング法の開発 ─抽出方法及び条件の最適化に関する検討─
5) 宮脇 崇,安武大輔,黒川陽一 : 分析化学 (Bunseki
Kagaku), 60, 21 (2011).
6) 宮脇 崇,飛石和大,竹中重幸,門上希和夫 : 分
析化学 (Bunseki Kagaku), 62, 971 (2013).
7) United States National Library of Medicine :
“ChemIDplus of TOXNET”, available from <http://
chem.sis.nlm.nih.gov/chemidplus/chemidlite.jsp>.
8) 厚生労働省 : 食品に残留する農薬,飼料添加物又
は動物用医薬品の成分である物質の試験法,厚生労
働省通知食安発第 0124001 号,平成 17 年 1 月.
9) U . S . E n v i r o n m e n t a l P r o t e c t i o n A g e n c y :
“Method3550C, rev. 3 ”, (2007), (Washington, D. C.).
10) S. Ozcan, A. Tor, M. E. Aydin : Analytica Chimica
Acta, 640, 52 (2009).
541
11) L. Spack, C. Alvarez, J. M. Martins, J. Tarradellas : J.
Contaminant Hydrol., 33, 171 (1998).
12) 社団法人日本植物防疫協会 : “農薬ハンドブック”,
2011 年版,p. 242 (2011).
13) 松井利夫 : 全国環境研究会誌,32, 51 (2007).
14) 大窪かおり,草場潤一,北島淳二,中山秀幸 : 佐
賀県衛生薬業センター所報,34, 18 (2013).
15) 山 田直 樹, 富田伴 一, 茶谷 邦 男 : 衛生 化 学,38,
566 (1992).
16) 中山将人,波多宣子,倉光英樹,田口 茂 : 全国
環境研究会誌,33, 80 (2008).
17) 上田佑子,本田克久 : 環境化学,22, 65 (2012).
18) S. B. Hawthorne, C. B. Grabanski, E. Martin, D. J.
Miller : J. Chromatogr. A, 892, 421 (2000).
Development of Rapid Screening Method of Organic Pollutants in Soil by LC/MS
― Study of Extraction Method and the Optimization of the Conditions ―
*1
1
1
2
Takashi MIYAWAKI , Kazuhiro TOBIISHI , Shigeyuki TAKENAKA and Kiwao KADOKAMI
*
1
2
E-mail : [email protected]
Fukuoka institute of health and environmental sciences, 39, Mukaizano, Dazaifu-shi, Fukuoka 818-0135
Faculty of environmental engineering, The University of Kitakyushu, 1-1, Hibikino, Wakamatsu-ku,
Kitakyushu-shi, Fukuoka 808-0135
(Received January 6, 2015; Accepted February 23, 2015)
An extraction procedure for a screening method has been developed for the determination
of hydrophilic organic pollutants in soil by liquid chromatography/mass spectrometry (LC/
MS). In this study, the optimal extraction conditions for a shaking method were studied by
recovery tests using soil samples spiked with mixed standards of 23 pesticides (water solubility;
1.2 ̶ 58000 mg L−1). The results showed that the optimal extraction conditions for 2 g of the
test soil were as follows: solvent composition, acetonitrile/water (50/50, v/v%); solvent volume,
> 4 mL; extraction time, > 10 min. Additionally, it was found that the solvent composition
played an important role in the extraction of hydrophilic organic pollutants from soil. A
sample (2 g) was extracted with a solvent composed of 8 mL of acetonitrile/water (1/1) for 15
min. After that, the target pesticides in extracts were measured directly by LC/Tof-MS. As a
result, the recoveries of compounds, except for Thiram, were between 86 % and 106 %, and
the relative standard deviations in the repeated experiments (n=3) were within 18 %. The
screening analysis by the optimized shaking method could rapidly analyze a number of
hydrophilic organic pollutants. Therefore, this proposed method is suitable for a screening
survey of soil pollution in an emergency, such as a chemical spill and a disaster.
Keywords: screening; extraction; shaking; organic pollutants; soil.
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