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アイルランド・英国訪問について

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アイルランド・英国訪問について
アイルランド・英国訪問について
(平成20年8月18日~8月23日)
このたび、
わが国初めてとなるアイルランド国の都市と出雲市との友好交流都市
協定の締結を受けて、協定の相手であるアイルランド国ダブリン県ダンレアリー・
ラスダウン市を訪問し、少年サッカー交流で始まったこの両市の関係につき、広く
文化・芸術、観光等の交流を通しての両市の協力関係の発展について、調査・協議
をおこなってきました。
他方、アイルランド国訪問に先立ち、英国における観光振興、芸術文化の発展を
通しての「21世紀のまちづくり」に向けた活動の著しいマンチェスター、バーミ
ンガム、ニューカッスル・ゲーツヘッド、更には、シェークスピア生誕の地である
ストラトフォード・アポン・エイボンを視察・調査をしてきました。
以上の実施調査・協議の概要は、以下のとおりです。
Ⅰ。アイルランド訪問の状況【8月20日~23日】
わが国の都市としては初めてとなる、出雲市とアイルランドの都市との友好交
流都市協定を締結した、アイルランド国ダブリン県ダンレアリー・ラスダウン市
を訪問しました。
訪問の目的は、2002年「FIFAワールドカップ」以来交流をしている少
年サッカー国際大会(ハイバーニア杯国際招待大会)の応援と、ダンレアリー・
ラスダウン市当局との友好交流親善及び今後の協力関係の情報交換・協議・調査・
視察を行うことでした。
この少年サッカーの国際大会は、アイルランド・イギリス・オランダ・スゥエ
ーデン及び日本の5カ国から招待された8チームによる対抗戦で、わが出雲選抜
チームは年々場なれもし、技術・
チームワークも向上してきてお
り、アイルランドの代表であるF
AIに勝利するなどヨーロッパを
代表する強豪の中で、8チーム中
6位と健闘しました。
さて、ダンレアリー・ラスダウン市への今回の訪問は、去る6月5日出雲市
を訪れた先方の前市長訪問団への答礼ということもあり、本市からは西尾出雲市
長、今岡出雲市議会議長、板倉文化企画部長、高橋議会事務局次長の4名の代表
が訪問し、先方の市長(トム・ジョイス)
・議会代表の数名の議員・職員幹部らと
懇談・協議を行い、調査・視察を重ねることができました。
また、市民代表団として出雲選抜少年サッ
カーチームの選手18人と監督コーチ等5
人、吉田国際交流課長、アイルランドフレン
ドシップクラブのメンバー4人、及び市民ツ
アーの参加者6人を合わせ、総勢38人の代
表団の訪問となりました。
当方が予想する以上の歓待を受け、ダンレアリー・ラスダウン市の市長、議員、
行政関係者の温かい友情につつまれ、両市における今後の協力、交流関係の可能
性についても率直な意見交換を行うことができました。
先方のまちづくりの状況として、現在の人口は19万4千人ですが、郊外にお
ける画期的な住宅政策を行い、1996 年~2002 年の間に道路・路面電車等の交通
機関整備にあわせ平均年間860戸の住宅を整備し、2002 年~2007 年の5年間
では、2200戸の住宅の整備促進をしています。
しかし、2002 年~2006 年における人口の増加率は1,2%(2,200人)
であり、国全体の8.2%より低い数値になっています。これは、この地域にお
ける人口の高齢化やこれまでの住宅の供給が低かったことに起因していますが、
近年はこの状況もかわりつつあります。
他方、商業スペースの拡大が急速に進んでいます。2001 年~2007 年にかけて、
12万6千㎡が26万㎡へと倍増し、ヨーロッパでも流通商業活動の拡大の勢い
は最も大きい市のひとつとなっています。
この、ダンレアリー・ラスダウン市における商業集積は、大ショッピングセン
ターを中心に近隣におけるショッピングセンターや従来の商店等が、バランスよ
く比較的良好な関係で機能しており、一般市民や消費者からも理解されています。
この、ダンレアリー・ラスダウン市は、古くローマ時代よりローマ帝国からの
多くの船舶の寄港地としての良港を備えており、英国側のホーリーヘッドとも友
好都市の関係にあります。
この港の景観、海岸のひろがりのなかで、周辺には多くの文化財等、古い建築
技術も残っており、多くの文豪・文学者の活動の拠点ともなってきました。例え
ば、ジェームス・ジョイスの有名な作品「ユリシーズ」の題材となった舞台も残
されており、文化・芸術交流の面からも貴重な財産が残されています。
ダンレアリー・ラスダウン市は、出雲市との今後の交流の方向と可能性として
文化・芸術、観光交流に非常に関心を示しています。ちょうど訪問中には、世界
50カ国を取り込む国際フェステバルが開催されていて、日本の武道・茶道や芸
者・舞妓によるパフォーマンスも行われ、多くの観光客を集めていました。
とりわけ、先方の市長からは、日本庭園の整備予定地にも案内され、出雲市か
ら技術協力を得て本格的な日本庭園の整備の希望表明がありました。さらには、
早い時期に、先方のデザインと造園業の2人の専門家を出雲市に派遣し、技術指
導を受けたいとの要望がありました。
Ⅱ 英国訪問の状況【8月18日~19日】
①マンチェスター市の状況【8月18日訪問】
メイビス・スミスマン市長ほか、関係官
と懇談・協議をしました。
マンチェスター市は、人口45万2千人
で、近年英国では最も早い急速な発展をみ
せています。18世紀英国産業革命の地で
あり、往年栄えた紡績業の衰退とともに
1950 年代の70万人の人口も、2005 年には43万7千人にまで減少し、住宅も
産業基盤も衰退の一途をたどってきました。しかしながら、今や国際的な産業貿
易のセンターとして、また多様な国の移民も含め、人材の育成と、文化・芸術や
技術教育の発展を期し、貧困や失業対策にも特段の力を入れています。
1996 年 6 月、市の中心部はテロリストによりその多くが破壊されましたが、
この苦境は市民の改造努力を倍増させ、強力なパートナーシップ、賢明なマスタ
ープラン、象徴的な建造物や文化芸術やスポーツイベントを通した創造性のある
都市の再生により成功してきました。1990 年代後半からはマンチェスター市内
の小売・レジャー部門が堅実に成長し、商業中心地全体が拡大しています。
高等教育の充実と、高度の技術力、芸術文化スポーツを通した活動的な市民の
養成・確保により世界的な競争力の高い企業の集積を図り、これによる人口増加
と世界市場での競争力を一層高めながらグローバルシティとしての発展を期し、
燃え上がっています。とりわけ、次に述べるバーミンガムとは、ロンドンに次ぐ
イングランド中央部の中心都市として競い合っています。
② バーミンガムの状況【8月19日訪問】
バーミンガムの開発局長他、関係官と協議・懇談しました。
英国中西部の一大産業としとして人口も100万人を有し、ロンドンに次ぐ大
都市として、都市基盤の整備や産業集積が活発に行われています。18世紀以来
19世紀の産業発展は著しいものがありましたが、1980年台の衰退は大きな
ものがありました。そして近年都市再生に力を注ぎ、注目されています。
市内の60地区の370haにおよぶ都市再
生計画が進められています。特に、人口構造に
おいて、全人口の37%が25歳以下の人材層
となっており、ヨーロッパの主要都市の中で
も、最も若々しい都市として、教育や職業訓練、
研究施設等への投資が行われ、多大な恩恵を受け発展しています。特に3つの大
学から、毎年2万人の卒業生があり、若々しい人材が躍動しています。
とりわけ、2013年を目途に、約2億ポンド(450億円)を投じた、ヨー
ロッパ最大の図書館の建設を進め、これと世界的水準の文化センターとがリンク
して市民の大きな活動拠点となり、その図書館は、世界で最も先進的な公共図書
館として発展することが期待されています。また、2010床を誇る、英国最大規
模の病院を、英国最初のPFI方式で建設しています。
バーミンガムは、2016 年までには10万人の人口増を目指し、同市の都市再生
開発の努力とともに、多くの多様な若い人材を引き付ける力となっています。
将来にわたるバーミンガムの繁栄と自信の裏付になっているものです。
③ ニューカッスル・ゲーツヘッド両市の状況【8月19日訪問】
英国東北部の海岸に面した都市であるニューカッ
スルと、隣接するゲーツヘッドの両市を訪問しまし
た。両市は、従来炭鉱、造船など重工業の都市とし
て知られ栄えていましたが、1980 年代の衰退は著し
いものがありました。しかしながら、1980 年代後半
には歴史的大転換を起こした都市として、今や高く評価されています。
この、両市は、ウォーターフロントの開発を中心に、華やかなショッピングセン
ターや、ナイトライフを中心に文化・芸術、レジャー等の活力で 2002 年のニュー
ズ・ウイーク誌では、世界で最も創造的な発展をしている8つの都市のひとつであ
るとの評価を受けています。
この二つの都市はタイン川の両岸に位置し、ミレニアムブリッジなど7つの橋で
結ばれ、ひとつのまとまった一大文化都市として、今や観光客の間において一大人
気スポットに掲げられています。これは、ドナウ川をはさんだハンガリーの首都、
ブタペストのような景観となっています。
とりわけゲーツヘッド市では、市長及び国際交流関係官からの熱情的な歓迎を受
け、現代芸術センターや巨大なモニュメント、ゲーツヘッドの象徴的な橋、さら
には総合文化センターなど多様な施設の案内を含め、躍動するゲーツヘッドのク
リエイティブシティ(創造発展する21世紀都市)の全貌を垣間見ることができ
ました。
キャンパスや、新しい複合用途型の都市区域としての発展が期待されます。
④ シェークスピア生誕の地
ストラトフォード・アポン・エイボンの状況【8月18日】
前述3つのクリエイティブシティ
の他に、シェークスピア生誕の地、ス
トラトフォード・アポン・エイボンを
訪問し、
シェークスピア劇場の広報担
当責任者に面会し、
劇場の経営状況と
施設整備の状況の説明を受け、
劇場施
設等の案内を受けました。
シェークスピア劇場は、遠く 1879 年にオープンし、1932 年に再生され、また
1980 年に更なる模様替えを行い、2010 年には、中心となるロイヤル・シェーク
スピア劇場の改築完成を目指して現在工事を進められています。このロイヤル・
シェークスピア劇場を中心として、全部で4つの劇場からなる総合的舞台芸術の
観を呈しています。
今回の4劇場の整備のための総予算は1億1千万ポンド(約250億円)にお
よぶ大事業です。R・シェークスピア劇場は1044席で、舞台は馬蹄型となり、
また4層のバルコニーで舞台を囲むように構想されています。
シェークスピア劇場は、ロンドンにも出店としての劇場を経営しています。運
営予算の総額は3500万ポンド(77億円)
、そのうち40パーセント相当が国
のアーツカウンスル(国の芸術文化基金)からの助成があり、43パーセント相
当がチケット販売収入であり、その他は、物品販売、スポンサー収入からなって
います。
ロイヤルシェークスピアカンパニーとしてのチケット販売は、2007 年度でみる
と、英国国内が93パーセント、米国が4パーセント、残りの3パーセントを、
オーストリア、カナダ、ドイツ、フランス、日本が占めています。
我々が訪れた日は月曜日にもかかわらず、コートヤード劇場では1000人の
劇場が満席で、賑わっていました。
その中で、舞台が客席に突き出した馬蹄形のため、役者と観客との一体感によ
り、臨場感に優れ、熱気溢れる雰囲気となっていました。また、休憩時間には、
ホワイエにほとんどの観客が出て、バーカウンターの周辺は飲食をする人々で雑
踏のごとく賑わい、記念品売り場も身動きができない状況でした。トイレは思っ
たほど長だの列も無く、整然としていました。
以上の、アイルランド国ダンレアリー・ラスダウン市の訪問、英国の各都市等
の訪問を通して各都市の発展にとって、芸術・文化、スポーツの交流が市民活動
を一層強化し、これにより、観光振興の増進を図り、まちづくりの新たなエネル
ギーを創り出すこと(クリエイティブシティ)の重要性を痛感したところです。
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