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Institute of Environment Rehabilitation and Conservation

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Institute of Environment Rehabilitation and Conservation
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2012-2
2013. 1
Non-Profit Organization <ERECON>
JAPAN
Institute of Environment Rehabilitation and Conservation
2012 年度 ERECON の草の根活動
フィリピン国でのモデル区画におけるマルチング
タイ国での農業技術研修における液肥づくり
アジアにおける開発と環境との調和を目指して!
カンボジア国における植林活動
カンボジア国における生物起源防虫液づくり
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1. 2012 年度プログラム活動報告
1. 実施事業の進捗状況
(1) 環境修復保全に関する事業
1) フィリピン国ボホールにおける持続的農業の普及推進(フェ
ーズ 3):フィリピン国ボホール県の現地農家は森林を伐採して開
墾した急傾斜の畑で、雨水に依存しつつ焼畑農業(移動農業)を
営んでいます。森林伐採により裸地化した傾斜畑では、スコール
に伴って有機物に富む表土が流出するなど、侵食による農地の
土壌劣化が著しく進行しています。そこで、現地農家とともに環
境保全型農業の普及・推進を図り、現地農家自らが主体となった
持続可能な農業生産環境の構築を目指しています。
2012 年度下半期には、木炭、木酢液づくりに関するワークショ
ップを開催するとともに、これまで未参加であった現地農家を対
象にモデル区画での様々な取り組みを紹介しつつ、土壌保全対
策と有機農業を軸とした持続的農業を普及しました。併せて、木
炭および木酢液の作り方を記載したポスターを作成してモデル
区画に掲示しました。
これまで、現地住民および日本人ボランティアと協働でトラムコ
ク郡内の荒廃地で植林活動を実施するとともに、育苗施設を設置
し、現地住民が中心となった植林活動の拠点づくりを進めました。
併せて、ワークショップの開催とともに、活着調査や補植活動を実
施しました。特に、ワークショップでは、種子繁殖について現地住
民の理解を深めました。
4) フィリピン国ボホールにおける持続可能な発展を目指した植
林活動の推進:フィリピン国ボホールでは、急速な人口増加に伴
い、森林伐採や焼畑農業を起因とする深刻な土壌侵食や生物多
様性の減少が生じています。この傾向はボホール県南西部で著
しく、持続可能な開発(Sustainable Development)における植林
活動への期待が高まっています。そこで本プログラムでは、アグロ
フォレストリーの普及を通して傾斜畑における土壌侵食を緩和さ
せるとともに、焼畑に依存する農業体系を改め、土壌修復や生物
多様性の保全を目指しています。
本年度下半期、植林に関するパンフレットを配布してワークショ
ップを開催するとともに、アグロフォレストリーづくりに向けた植林
活動に取り組みました。現在は 2 月に実施予定である活着調査
の準備を進めています。
木炭および木酢液づくりに関心を示す参加者
2) カンボジア国タケオ州における植林による緑化推進:国際森
林年(2011 年)の記念植樹地のあるタケオ州トラムコク郡の荒廃
地を対象に、現地住民と協働で植林を通した緑化推進に取り組
んでいます。また、この緑化推進を通して多くの現地住民が森林
保全の重要性について理解を深めることも目指しています。
フィリピン国の傾斜地における植林活動
(2) 自然資源の持続的利用に関する事業
1) カンボジア国における農村域の里山再生による自然資源の
持続的活用(フェーズ 3):カンボジア国中央部(コンポンチャム
州)、東部(モンドルキリ州)および西部(バッタンバン州)の違法
伐採による開墾などで自然資源が著しく損なわれた農村域を対
象に、土壌および水環境の保全とともに自然資源の持続的活用
を目指して、植林活動を推進しています。本プログラムは国連大
学高等研究所(UNU-IAS)、カンボジア国環境省との連携のもと、
IPSI (SATOYAMA イニシアティブ国際パートナーシップ)に認定
された活動となっています。
2012 年度は、地域住民および小学生を対象とした自然資源活
用セミナーの開催や里山再生植林、学校林造成活動を実施しま
す。現在は 1 月下旬に予定されているワークショップの準備に取
り組んでいます。
現地住民との協働による植林活動
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水環境の保全に関する講義と実習を実施しました。また 10 月 22
日から 28 日の 7 日間、現地農家 6 名と小学校教員 2 名をタイ国
に派遣して、タイ国での資源循環型農業技術研修を実施しまし
た。この研修では有機農産物の生産に取り組むタイ国の現地農
家を訪問するとともに、ERECON がこれまでに設置した 2 か所の
ペレット堆肥加工センターを訪問しました。センター運営につい
てタイ国の現地農家から指導を受けるとともに、農家間の交流を
深めました。現在は本年度末に設置完了を目指しているペレット
堆肥加工センターの建設とともに、3 月に予定されている事業評
価委員会に向けて準備を進めています。
生物多様性に関するワークショップの開催
2) 農村域におけるエリ蚕養蚕の普及を通した環境保全型農業
の推進(フェーズ 2):カンボジア国首都近郊の農村域を対象とし
て、里山再生の一環として、エリ蚕養蚕の普及を通した環境保全
型農業を推進しています。エリ蚕は化学農薬に対して非常に敏
感であるため、その飼育によって地域で散布する化学農薬量も
減少できるとともに、繭の販売で現地農家の現金収入の向上と、
蛹は現地農家の重要なタンパク源・ビタミン源となるため、環境保
全型農業の定着および持続的実施に向けた動機づけとなると期
待されています。
本年度事業対象に加わった新規 2 村において、エリ蚕養蚕お
よび生物起源防虫液に関するワークショップを実施しました。また、
小学校および孤児院を対象に、環境保全型農業の体験活動セミ
ナー、エリ蚕養蚕小屋でのエリ蚕の飼育等の準備を進めていま
す。
研修で水環境の測定に取り組む小学校教員
4) 農業・農民組織活性化支援事業(アジア):国際農林業協働
協会に協力して、カンボジア国コンポンチャム州ロンコール村を
対象に、農業生産性および農家の所得向上を目指しています。
具体的には、堆肥・生物起源防虫液づくり、化学農薬の適正利
用、改良品種米の導入、組織強化と流通販売の促進等に取り組
んでいます。また、2012 年 12 月には事業評価を実施しました。
生物起源防虫液づくり用タンクの配布
3) カンボジア国コンポンチャム州における持続可能な農業生産
環境の構築:カンボジア国では内戦が収まった 2000 年以降、化
学肥料や農薬に依存した単一作物栽培が急速に広まっており、
高騰する農業資材への支出が現地農家の経済的困窮に拍車を
かけています。そのため、コンポンチャム州サムロングコミューン
の 11 村および 10 小学校で構成される小学校クラスターを対象に、
環境に配慮した資源循環型農業を軸とした持続可能な農業生産
環境の構築を進めています。
2012 年 8 月にはスロングスクールクラスターに所属する 10 小
学校の小学校教員ら 21 名を対象として、食農環境教育指導者
研修が実施されました。東京農業大学から派遣された指導者が
ロンコール村の農産物販売を目指したアンテナショップの運営
(3) 環境教育啓蒙事業
1) アジア留学生のインターン受け入れ研修:カンボジア国にお
いて環境に配慮した持続可能な開発に取り組める人材の育成を
目指して、ERECON でインターンシップを実施しています。具体
的には、カンボジア人留学生の Kong Ban さんを 2012 年 8 月から
2013 年 3 月までインターンとして受け入れ、団体の試験圃場を活
用しつつ堆肥づくりやペレット堆肥づくりの習得とともに、本部事
務局での業務補助等を通して、国際環境協力の意義と重要性に
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ついて理解を深めてもらっています。さらにインターン期間中に
森林保全や里山再生に関する知識の習得を目指して、公益社
団法人国土緑化推進機構に共催する「緑の国際ボランティア研
修」の国内研修会等において、アドバイザーとして研修生の事前
指導にも当たってもらっています。
2) 緑の国際ボランティア研修:2013 年 1 月 14 日から 1 月 21 日
の 8 日間、将来国際緑化協力の場で活躍できる見識豊かな国際
協力ボランティアを養成することを目指して、緑の国際ボランティ
ア研修を実施しています。具体的には、「持続可能な開発」を目
指した里山再生事業や植林活動の現場を訪問するとともに、カン
ボジア王立農業大学森林学部等の学生と共同で森林保全に関
するワークショップを開催し、その成果を ICERD 国際会議にて
「日柬青年共同宣言」として発表していきます。
特定非営利活動法人環境修復保全機構の国際環境協力は、
NGO アリーナ寄付サイト、NGO サポート募金(JANIC)、イーココ
ロ・クリック募金、エコポイント、株式会社キューセン、株式会社河
辺商会等を通してご寄付頂いた方々をはじめ、多くの市民の
方々からのご支援に支えられています。
またこれまで公益財団法人日本国際協力財団、公益社団法人
国土緑化推進機構、三井物産環境基金、独立行政法人環境再
生保全機構、独立行政法人国際協力機構、公益社団法人国際
農林業協働協会、公益信託アジア・コミュニティ・トラスト等より、活
動支援を頂いております。ここに記して深謝申し上げます。
(理事長/PD 三原真智人)
本部事務局でインターンにあたる Kong Ban さん(左)
2. 国際環境協力専門家登録の案内
現在、ERECON 正会員の皆様から広く国際環境協力専門家
を募っています。一定の専門性を有し、かつ国際環境協力ワーク
キャンプ等のコースを修了されている正会員の中から希望される
方を「国際環境協力専門家」として登録しています。専門家として
登録しますと現地派遣以外にも、これまでは事務局職員に限定さ
れていた外務省や JICA 等の企画する様々な研修会に無料で参
加できる特典があります。現在、本部事務局スタッフの他、多くの
正会員および国際正会員の方々が、国際環境協力専門家として
登録しています。募集要項は以下の通りとなっていますので、是
非ご応募下さい。
1. 目的
農業的および都市的開発と自然環境との調和を目指した環境
修復保全に取り組み、環境教育啓蒙の活動を通して、自然資源
の持続的利用に寄与できる人材を特定非営利活動法人環境修
復保全機構の国際環境協力専門家として登録します。登録した
ERECON の国際環境協力専門家には、アジアの国々で各種の
ERECON プログラムを実行して頂きます。
2. 資格
(1) 環境修復保全機構の正会員であること
(2) 環境修復保全機構における国際環境協力ワークキャンプ等
のコースを修了していること
(3) 大学卒業(学士)以上で現地活動に必要な専門知識を有す
ること。院生も可。特定分野の実務経験を有する方は、学歴
は問わない
(4) 事前に日程を協議した上で、1 週間程度以上の海外渡航が
可能であること
3. 募集時期
随時
4. 登録方法
本部事務局から規定の登録票を入手して、記入の上一部郵
送下さい。審査の上、専門家登録の採否を郵送にてお知らせし
ます。審査結果の通知には 1~2 ヶ月程度かかる場合があります
ので、ご了承下さい。
(本部事務局 管理センター)
3. 書評
に対し、生物多様性の経済価値を明らかにする TEEB(生態系と
生物多様性の経済学)、ラムサール条約・ワシントン条約・生物多
様性条約・世界遺産条約などの国際環境条約、生態系サービス
の恵みを受けている人々にその利用に応じた対価の支払いを求
める仕組み PES(生態系サービスへの支払い)、生物多様性オフ
セットなど、さまざまな取り組みが行われています。
本書は、生物多様性と人間の活動との関係を経済と結びつけ
て、わかりやすく解説しています。第 1 章では生物多様性が減少
していること、第 2 章では生物多様性劣化の理由について、第 3
章では生物多様性の経済価値の評価方法について、第 4 章で
は国際的におこなわれている生物多様性と経済に関わるさまざ
まな取り組みについて、第 5 章及び第 6 章では生物多様性と企
業や市民との関わりについて説明しています。
生物多様性についての入門書としてお勧めの一冊です。
(国際環境協力専門家 笹部秀美)
はじめて学ぶ生物多様性と
暮らし・経済
中央法規出版株式会社 発行
林 喜一郎 著
ISBN-10: 4805833637
私たち人間は自然からの恵みを受けて生活しています。しかし、
人間の経済・社会活動のために年間 4 万もの種が絶滅していると
いわれています。特に開発途上国では深刻です。このような問題
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4. カンボジア国の自然と農業 -ノロドム・シアヌーク前国王カンボジア国民から広く「国父」と愛されていたカンボジア国
のノロドム・シアヌーク前国王が 2012 年 10 月 15 日の午前 2
時、滞在されていた北京で病気のために 89 歳でお亡くなりに
なりました。前国王は以前より癌や糖尿病、高血圧、心臓病な
どの治療のために、しばしば中国を訪れておりました。昨年 1
月以降も北京にご滞在されておりましたが、大変悲しい結果と
なってしまいました。今回は自然と農業とは少し異なりますが、
シアヌーク前国王について書かせて頂きます。
1941 年にノロドム・シアヌーク国王は 18 歳の若さで国王に即
位し、フランスからの独立運動の先頭に立ちました。その結果、
カンボジア国は 1953 年にフランスからの完全独立を達成しまし
た。1955 年、彼は王位を父親に譲り、ご自身は首相となりまし
たが、父王が他界した 1960 年に国家元首へ就任しています。
しかしこの時期、米国の支援を受けたロン・ノルの起こしたクー
デターにより国家元首の地位を追放され、北京に亡命します。
この際、後に共産ゲリラとなるポル・ポト派と協調して反ロン・ノ
ル運動を展開しました。1975 年に協調して運動を展開してい
たクメール・ルージュ(ポル・ポト派)が政権をとった時、前国王
はカンボジア国に帰国したのですが、家族と共に王宮内に幽
閉されてしまいます。そしてベトナム国のカンボジア国侵攻でク
メール・ルージュ政権が倒れた 1978 年 12 月、シアヌーク前国
王は再び北京に亡命しました。その後 1991 年に帰国し、1993
年の「カンボジア王国」樹立の際に国王へ就任しました。それ
以降は国王として国民のために働いて国民から愛されてきまし
たが、高齢と健康問題のため 2004 年 10 月 7 日に王位の退位
を表明されました。その後はシアヌーク前国王の実子で現国王
のシハモニ殿下が王室会議で新国王に選出され、同月 29 日
に即位しました。
カンボジアでは、多くの公的機関や店舗、家庭にシアヌーク
前国王やシハモニ現国王の肖像画が掲げられています。また、
ニュースでも放送されていましたが、前国王がお亡くなりになっ
た後は市街地や大学、銀行等多くの場所で前国王の写真が
掲げられました。このことからも、如何にシアヌーク前国王が国
民から愛されていたかが窺えます。
また、環 境 省 のウェブサイトによると、シアヌーク前 国 王は
Royal Decree(国王により発行される規律)として 1996 年に自
然資源保全に関する規律を発行する等、自然資源の保全にも
積極的に取り組まれてきました。カンボジア国の歴史および発
展に大きく貢献された国父、シアヌーク前国王のご冥福をお祈
り申し上げます。
地方の店に掲げられている故シアヌーク前国王の肖像画
カンボジア王立農業大学に設置された遺影
(東南アジア事務局カンボジア支局 PC 藤平 純)
5. 会員からの一言
会員からの一言では ERECON 会員から送られてきた投稿文
を掲載しています。会員からの一言での様々な意見交換を通し
て、今後 ERECON が進むべき道を共に考えていきましょう。
今回送られてきた投稿文は以下の通りです。
【大学院で協力隊】
今、農学系大学院からアフリカの農業研究機関や JICA 研究
協力プロジェクトに院生を青年海外協力隊員として在学期間中
に派遣する制度の立ち上げ準備に関与しています。院生が現地
ニーズに対応した研究を行いつつ国際性を養い、教員の参画で
受け入れ機関も日本の大学との連携も狙う、というものです。この
活動が広がると、ERECON によるカンボジアのプロジェクトにも大
学院生を派遣できる日が来るかもしれないと考えています。
(幹事 福村一成)
【仕事としての国際協力】
2012 年秋にドイツのホーエンハイム大学大学院熱帯農業研
究科を修了しました。10 月に開発コンサルタント会社に就職が決
まり、遂に仕事として国際協力に携わる舞台を手にすることがで
きました。農業分野を担当する部署に配属され、現在はアジアの
ある国の農産物流通に関する調査を行っています。今まではボ
ランティアや学生という立場でやっていた活動や研究が、今は仕
事として取り組めていることに嬉しさを感じています。そしてこれ
からも専門性を深め、経験を積んでコンサルタントして国際社会
に貢献できるように頑張って行きたいです。
(国際環境協力専門家 田所朋子)
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【森林保全で私たちができること】
森林の保全、劣化の防止を目標とした REDD プラスでは、生
物多様性の維持、増進への配慮がうたわれています。しかし途
上国における実際の現場では、地域住民の木材採取等森林へ
の依存、森林を伐採したり生産性の高い農業への転換が図られ
るなど、森林を保全することへの理解が得難いケースが多々あり
ます。住民の生活を犠牲にすることなく森林の質・量を維持し、
再生を図ることの難しさにどのように向き合って行くのかが真に
問われるところです。
最近訪れたインドネシアのロンボク島で見聞きした Agarwood
(沈香)生産のための住民参加による森づくりは、モノカルチャー
に偏らず複層林の形成を誘導しつつ、経済的価値の高い沈香
の採取も可能とするため、地域住民のインセンティブを高め、か
つ多様な生態系にも配慮した森林の再生、保全につながる道筋
を示すものではないかと思います。NPO 活動もこのような地域住
民に何らかの利益をもたらす持続的農林業のあり方をいろいろ
な角度から模索していくことが常に必要であると改めて感じた次
第です。
(国際環境協力専門家 森 尚)
6. 会員の動向
2012 年 7 月以降、高橋優希さんが海外留学に伴い国内準会
員から国際正会員に登録変更されました。現在、正会員 120 名、
国際正会員 23 名、国内準会員 16 名を含めた全会員数は 159
名です。法人賛助会員も募集しておりますので、会員の皆様の
関係者の方でご興味がある方がいらっしゃいましたら、ご紹介頂
けますようよろしくお願いいたします。
(本部事務局 管理センター)
7. 事務局だより
1. インターンシップの実施
ERECON では国際環境協力分野での活躍を希望している学
生を対象にインターンシップを行っています。
2012 年 9 月 1 日から 9 月 12 日にかけて、帯広畜産大学国際
協力ユニット 3 年生の佐野真緒さんをインターンとして受け入れ
ました。組織運営を理解するための事務局業務の補助のみなら
ず、NGO サポート募金インタビューへのオブザーバー参加およ
び原稿づくりの補助、国際環境協力実習(堆肥づくり等)、住民
参加度に基づいた国際環境協力の評価に関する講義と演習等
を行いました。最終日には、大学の海外実習プログラムにインタ
ーンシップの成果をどのように反映させるかについてプレゼンテ
ーションを行い、「専門性を含めた国際協力で活躍できる自分の
在り方についてより深く考えるきっかけとなった」という意見を頂き
ました。佐野さんの今後のご活躍を期待しています。
また、公益信託アジア・コミュニティ・トラスト「アジア留学生等
支援基金」の支援を得て、Kong BAN さんのアジア留学生インタ
ーン受け入れ研修を 2012 年 8 月より継続中です。
具体的には、ERECON がコンポンチャム州で実施している
JICA 草の根技術協力事業とタケオ州での植林・緑化推進事業
の活動に参加頂きました。特に、コンポンチャム州では配布資
材の管理者らへのインタビュー調査や配布資材の確認作業を
5 日間実施しました。
配布資材(堆肥槽)の確認作業
3. COP 11(生物多様性条約第11回締約国会議)への参加
2012 年 10 月 7 日から 11 日の 5 日間、「自然が守られれば、
自然が守ってくれる」というスローガンのもと、インド南部ハイデラ
バードで国連「生物多様性条約第11回締約国会議」(COP 11)
が開催されました。この COP 11 では、名古屋議定書の作業計
画、資源動員戦略、海洋と沿岸の生物多様性など広範な分野に
ついて議論されました。ERECON からは、東南アジア事務局事
務局長の Dr. Lalita SIRIWATTANANON およびカンボジア支局
の Ms. Saruom RAN が出席しました。
特に、サイドイベントでは RCES AND BIODIVERSITY が 10 月
8 日に開催され、広域プノンペン(RCE GPP)を代表して、東南ア
ジア事務局事務局長の Dr. Lalita SIRIWATTANANON が RCEGPP の取り組みを発表しました。
4. カンボジア国シムリアップでの The 4th ICERD の開催案内
1992 年の地球サミット以来、持続可能な開発(SD)は主要な国
際的課題として位置付けられています。持続可能な開発のため
インターンシップ中の佐野さん(左)と Ban さん(右)
2. 宇都宮大学訪問受け入れ(カンボジア国)
2012 年 9 月 2 日から 9 日までの 8 日間、宇都宮大学の福村
一成先生と海外調査・研修生の 5 人、合計 6 名がカンボジア国
を訪問し、ERECON カンボジア支局で訪問受け入れをしました。
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の教育に向けて地球規模の学習の場を作ることを目的に、2005
年から 2014 年にかけて持続可能な開発のための教育の 10 年
(DESD)が推進されています。ここで言う‘教育’には学校教育の
みならず、一般住民を対象とした普及啓蒙なども含まれます。
第一回国際会議(International Conference on Environmental
and Rural Development)は、文部科学省国際協力イニシアティ
ブ事業の一環として、農村域を対象とした持続可能な開発のた
めの教育(ESD)の推進を目指して 2010 年 3 月に開催されました。
その結果、継続して農村域を対象とした持続可能な開発につい
て論議することを目的に、‘環境に配慮した持続可能な農村開
発に関する国際学会 (International Society of Environmental
and Rural Development)’が設立され、特定非営利活動法人環
境修復保全機構が学会事務局を担うこととなりました。
第二回国際会議は 2011 年 1 月 8 日から 9 日にかけてカンボ
ジア王立農業大学で、第三回国際会議は 2012 年 1 月 21 日か
ら 22 日にかけてタイ国コンケンで開催されました。
今年も 2013 年 1 月 19 日から 20 日にかけて、第四回国際会
議 (The 4th ICERD, International Conference on Environmental
and Rural Development) がカンボジア国シムリアップで開催され
ます。今年は昨年の発表数を大幅に超えて、世界各地より約
170 課題の研究発表が予定されています。
詳しくは www.int-erd.org をご参照下さい。
(本部事務局 普及・研究センター)
第三回国際会議(The 3rd ICERD)開会式後の記念撮影
8. 国際環境協力に取り組む顔
カンボジアで武力紛争が完全に終結し、治安の回復が顕著
となった 2000 年代以降、対カンボジア支援を行う日本の NGO
の数は急増しました。現在では、150 以上もの団体(法人格をも
たない任意団体や学生団体を含む)が、現地で、または日本国
内から、カンボジアに対する支援活動を行っています。
これだけ多くの日本の団体がカンボジアに集中する背景とし
て、同国では非政治分野で活動する NGO への規制が非常に
弱い、という点が挙げられます。たとえ国際協力の現場での経
験がほとんどなく、カンボジアに関する理解が十分とはいえない
団体であっても、とりあえず活動をスタートできる、そのことの良
し悪しは別として、これがカンボジアの現状です。
こうした状況のなか、筆者が 2001 年から参加するネットワーク
型 NGO「カンボジア市民フォーラム」(1993 年設立)では、カン
ボジアにかかわる NGO や個人のネットワークを構築することで、
カンボジアに関する理解と情報を共有し、同国の復興と発展に
協力する日本の NGO 活動の質的な向上を目指しています(現
在の加盟団体は 16 団体)。主な活動は、シンポジウムやセミナ
ーなどを通じた普及啓発、日本政府の対カンボジア援助政策
に対する提言、カンボジア NGO との協働による人権状況に関
する調査や選挙監視活動などです。
昨年 4 月、外務省が策定した対カンボジア国別援助方針に
カンボジア市民フォーラムが提言活動を行った際、ERECON も
外務省との意見交換会に参加して下さいました。対カンボジア
最大援助国である日本政府の援助方針に、カンボジアの NGO
や一般の人々の視点や声を反映させるには、私たち日本の
NGO が、それぞれが専門とする活動分野に立脚しつつ、カン
ボジア全体の状況に関心と視野を広げて協働することが重要
であると考えます。こうしたネットワークに、ERECON がカンボジ
ア市民フォーラムの会員として加わってくださり、とても心強く感
じています。
筆者は、ERECON がカンボジアでの活動を開始した 2008 年
以来、カンボジアに関する情報提供やカンボジア人職員採用
に関する助言、カンボジア研修への随行と通訳(2008 年と 2011
年)など、ERECON の活動を微力ながらお手伝いしてきました。
他の国際環境協力専門家の方々とは異なり、筆者には環境や
農業に関する専門知識はありませんが、カンボジアの政治や歴
史、文化、そして言語を学ぶとともに、カンボジアでの NGO 活
動に携わってきた者として、今後もカンボジアの人々のために
ERECON と協働していきたいと思います。
山田 裕史《略歴》
1977年 新潟県生まれ
2000年 関西外国語大学外国語学部英米語学科 卒業
2002年 財団法人松下国際財団「松下アジアスカラシップ」
奨学生として、カンボジア王立学士院留学
(2004年10月まで)
2005年 上智大学大学院外国語学研究科国際関係論専攻
博士前期課程 修了
2008年 カンボジア市民フォーラム 事務局長 現在に至る
上智大学大学院外国語学研究科地域研究専攻
博士後期課程 満期退学
上智大学アジア文化研究所特別研究員
特定非営利活動法人環境修復保全機構
国際環境協力専門家 現在に至る
2011年 博士(地域研究) 取得
日本学術振興会特別研究員(PD) 現在に至る
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農業と環境
連載コラム 「環境保全と国際協力」 -第 4 回~ABS に関する名古屋議定書について~
2011 年 8 月のコラムで、生物多様性条約は、厳しい交渉の末、遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分という第 3
の目的規定が最終的に追加され採択された、しかし、それをどう実施に移すかについてはなかなか合意を得られず、18 年後の CBD
COP 10 でやっと「遺伝資源へのアクセス及びその利用から生じる利益の公正かつ衡平な配分(Access and Benefit Sharing=ABS)
に関する名古屋議定書」として日の目を見ることになったと書いたが、今回はそれまでの経緯の前半部分を紹介する。
ABS が初めて締約国会議(COP)の議題となったのは、1998 年の COP 4 である。議論により、締約国間の意見の相違が明らかに
なった。多くの開発途上国は法的拘束力のある枠組の必要性を強調したのに対し、ヨーロッパ等の先進国は法的拘束力はないが、
ABS を確保するための最低限の行動原則又はガイドラインを主張した。また、CBD 発効以前に取得されたものに対し、途上国が対
象とするよう主張したのに対し、先進国は対象としないことを主張した。そのため ABS 専門家パネルの設置が決定した。
2000 年の COP 5 では多くの国が専門家パネルの報告を評価し、国際ガイドラインの草案を作成することが合意され、ABS 作業部
会が設置された。
2001 年に開催された作業部会では、先進国と途上国の意見の隔たりが大きく、COP 6でも議論が難航することが予想された。先
進国はガイドライン案を自発的指針として評価し、COP 6での採択を目指そうとしていたのに対し、途上国には利用国の遵守責任を
強化すべきとの意見が強かった。2002 年の COP 6 では激しい議論が展開されたが、コンタクト・グループ(関心を持つ国間の非公式
折衝)等で意見の集約が試みられ、最終的に双方が譲歩し、ガイドラインは採択された(通称ボン・ガイドライン)。
先進国の知的所有権に関する考え方と途上国側の先住民や地域社会が有する伝統的知識に対する考え方の差異、遺伝資源を
基にした派生物や製品を対象範囲に含めるかも論点となった。
地球サミット(1992 年)での合意事項の 10 年間の進捗状況と新たな課題を議論するため、2002 年に南アフリカのヨハネスブルグで
開催された「持続可能な開発に関する世界首脳会議」では、途上国側がボン・ガイドラインに法的拘束力がないことを理由に新たな
制度の策定を求めた。途上国・先進国の論争の末、「CBD の枠組みの中で、ボン・ガイドラインに留意しつつ、国際レジームの交渉
を始める」ことが決定された。ここでも、法的拘束力のある国際レジームについて交渉するかどうかが議論のポイントとなったが、交渉
をスタートさせることが大切との意向を有していた議長(南アフリカ)から、法的拘束力という表現を削除するとの提案が行われ合意に
至った(次号に続く)。
(公益財団法人長尾自然環境財団 名執 芳博)
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理事長 三原真智人:東京農業大学地域環境科学部 教授
理 事 安富 六郎: 東京農工大学 名誉教授
山路 永司: 東京大学大学院新領域創成科学研究科 教授
牧田 東一: 桜美林大学リベラルアーツ学群 教授
竹内
康: 東京農業大学地域環境科学部 教授
上野 貴司: Asian Network for Sustainable Development 事務局長
顧 問 Mario T. TABUCANON, Prof. Dr.: Asian Institute of Technology 名誉教授
Bunthan NGO, Prof. Dr.: Royal University of Agriculture 学長
ERECON NEWSLETTER 2012-2
2013 年 1 月 15 日
編集幹事 伊川 綾
発行 特定非営利活動法人 環境修復保全機構
[ERECON 本部事務局]
〒195-0064 東京都町田市小野路町 2987-1
Tel/ Fax: 042-736-8972
E-mail: [email protected]
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[ERECON 東南アジア事務局]
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93/64 Moo.3 Sinsab village, Bungyeetho sub-district,
Thanyaburi district, Pathum Thani 12130, Thailand
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