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鐵 鋼 の 脱 炭 機 構.に .就 て*

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鐵 鋼 の 脱 炭 機 構.に .就 て*
第1號 鐡 鋼 の 腕 炭 機 構 に 就 て 鐵
鋼
の 脱 炭 機 構.に
25
.就 て*
内
藤.逸
』 策**
Itusaku Naito: On the Mechanism of Decarburization
of Iron and Steel.
The mechanism of
the decarburization of steel and cast iron was studied in the following three cases.
1. Steel of, the austenitic structure : The distribution of carbon concentration was observed for commercial pure steel decarburized at a temperature above 900°. The diffusion coefficient of carbon in gamma
iron was determined by the Fick's method, and the activation heat of diffusion independent of the decarburizing
temperature was obtained by Langmuir and Dushman's equation.
2. White cast iron of the mixed structure of austenite and cementite : An irregular carbon distribution in white cast iron after decarburization was clearly explained by the diffusion theory of carbon using
the above determined diffusion coefficient of carbon in gamma iron.
3. Steel gave alpha iron bands on its surface : When steel was decarburized at a temperature below
900°, alpha iron bands appeared clearly on its surface.
This phenomenon was explained by the diffusion
theory of carbon and the activation heat of diffusion was calculated for alpha iron in the same way as for gamma
iron and was found to be independent of decarburizing temperature and decarburizing method.
From thepresent study, it seems that the decarburization occurs by the following mechanism ; in the surface of steel or cast iron the carbon content decreases down to zero to take an equilibrium with surrounding gas;
if the composition of gas is in proper condition, the carbon diffuses in atomic state from interior to the surface,
not only in austenite but also in alpha iron, and then it reacts with oxidizing gas.
(Received
**
大 阪 帝 國大 學 産 業 科學 研究 所
October
12, 19401
.*本
研 究 は昭 和15年10月
京 都 で 開催 の本 倉 第8回 講 演
大 會 で 發 表 し た も ので あ る,
26 研
1・ 緒
第5卷
究
何れが脱炭 の主機構 と見 るべ きか 燗
言
今 日まで 鐵 鋼 の 脱 炭 に關 して は幾 多の 研 究 が行 はれ て
題 とな るので あ.
本 報告 の研 究 方 法 は 先 づ 實 験 的 に種'々の 鋼 並 に 日勤 鐵
居 るが,そ れ 等 は 主 と して雪 圍 氣 瓦 斯 の 性 質 と脱 炭 との
を脱 炭 しそ の脱 炭 部 の 炭 素 灘
關 係 に關 す る もの が 多 く,鐵鋼 内 の脱 炭 に 伴 ふ 内 部 の炭
の 變 化 に よつ て生 ず る相 の 變 化 等 を實 測 し,こ れ を礎 と
素 分 布 の變 化 か ら脱 炭 の機 構 に鯛 れ た もの は 少 く且 つ こ
して 計算 に よ り各 場 合 の炭 素 擴 散 牽 を求 め これ を 十分 吟
れ に關 して未 だ 定 説 と認む べ き もの は ない.著 者 は數 年
昧 して腕 炭 の 機 構 を設 明 した ので あ る.
前 可 鍛 鑄 鐵 製 造 の 際 の 白銑 鐵 の 脱炭 に就 て研 究 ω を行 つ
II.オ
た が,そ の 際 脱 炭機 構 に蘭 して は な ほ 読 明 不 十分 の點 を
残 して居 たの で その 後可 成不 純 物 の 少い 炭素 鋼 に就 て實
の 變 化 並 に 温 度 と炭 素 量
欄 ス テ ナ イ ト單 一 相 の 脱 炭
験 を行 ひ,且 つ その 結 果 を以 つ て 白 銑 鐵 の 脱 炭 の問 題 を
脱 炭 に よつ て 相 の 變 化 を 起 さS'る 場 合 と し て 鋼 を
900。 以上1100° まで の 温 度 範 圍で 脱 炭 しそ の炭 素 分 布
も毒 び論 じ,鼓 に鐵 炭 素 合 金 系 に就 て脆 炭 の機 構 を一 元
の變 化 を實 測 した.
的に 論 じ得 た ので これ 等 を一括 して本 研 究報 告 を綴 つ た
實 験 試 料 は水 素 還 元 に よつて 得 た不 純 物 の 少 い 鐵 と小
量 の低 燐 白銑 と を以 つ て次 の如 き二 種 の 鋼 を作 り,こ れ
の で あ る.
古 來 脆 炭 の 實 験 を見 るに その 多 くは水 素瓦 斯 に よる場
よ り直 径
C
合 が 取 扱 はれ て居 るが,茲 で は總 て 酸 化 鐵 を 用 ひ て脱 炭
を行 つ た.古
くは 水素 自身 強 力 な脱 炭劑 と考 へ られ て 居
だ の で あ るが,近 時 は純 水 素瓦 斯 は 盧 接 炭 素 又 は オ ー ス
Si
AO・98
Mn
S
P
090'080'O120つ12
BO・62dO
080つ70'0080・010
テ ナ イ トに接 觸 して炭 化 水 素 を作 る こ とは困 難で あつ て,
16mm長
水 素 瓦斯 に よつ て生 じ て居 た著 しい脆 炭 は 實 は その 内 に
細 い グ・
ラ イン ダ ー仕 上 を行 つ て使 用 した.脱 炭 剤 と して
含 まれ て居 る水 分 に よ る もので あ る こ とが(2)明か に な り,
は ス ケ 』ル を僅 に還 元 した もの を用 ひ た.こ れ に よる時
水 素 に よる脱 炭 の場 合 も結 局 は酸 素 又 は 二 酸化 炭 素 が 直
には 鋼 試 料 の 表 面 を酸 化 す る こ とな しに 表 面 の 炭 素 量 を
接 腕 炭 に與 る もの と信 ぜ られ るに到 つ た.た
常 に(7)◎に保 つ こ とが 出 來 る.試 料 一 本 に就 き こ の脱 炭
ゞ水素 が腕
さ50 mmの
圓〓 形試 料 を削 り出 し表 面 は總 て
炭 霧 圍 氣 中 に多 量 存 在 す る時 に は そ の鐵 鋼 との 平衡 關係
剤20gづ
が た ゞ一 酸 化 炭 素,二 酸 化 炭 素 の 混 合 瓦 斯 の み の場 合 と
鐵 製 の プ ラッグで 密 閉 し電 氣 爐 内で それ ぞ れ 處 定 温 度 處
は異 な るので 勿論 鐵鋼 の表 面 上 の 問題 と して は 網違 すべ
定 時 間 の 加熱 を行 つ た.加 熱 後 は鐵 圓 管 の ま 』加 熱 爐 か
きで あ り,これ が 鐵 鋼 の 内 部 脆 炭 状 態 に如 何 な る關 係 を
ら引 出 し空 冷 し,冷却 後 試 料 は 旋 盤 に か け 一 端 か らは
有 す るか ゞ一 つ の 問 題 とな る ので あ る.又Naumannta)
5mm他
が 發 表 して居 る如 き瓦 斯 に高 壓 力 を加 へ た場 合 は 別で あ
つ て,茲 で は 勿論 一 氣 壓 の場 合 のみ を取 扱 ふ こ とに した.
0・3mmづ
前 述 の鐵 鋼 の表 面 に於 け る炭 素量 と瓦斯 の組 成 との 平
っ を用 ひ鐵 管で 作 つ た 小 圓 筒 内 に 両 者 を詰 め
端 か らは10mm切
捨 て 中 央部 か ら牛 徑 で0・5∼
つ 鰍 り取 りその 窮 り粉 に就 て炭 素 分 析 を行 つ
て 内部 の炭 素 分 布 を求 めた.
Fig.1∼5の
各 點 はか くして求 め た 實 測 値 で あh,曲
衡 關 係 は 既 に 明か に なつ て居 るが,鐵 鋼 の 脱 炭 機 構 と し
線 は これ 等 の實 測 點 を な るべ く連 らね る様 次 に學 げ る擴
て これ 等 瓦 斯 が 鐵 鋼 の 内部 に まで 侵 入 して脱 炭 を生 ず る
散 式か ら求 めた 計 算 曲 線で あ る.
もの か,ヌ は瓦 斯 との 作 用 は表 面 に の み限 られ 内 部 の 炭
炭 素 擴 散 論 に よれ ばFickの
計算法 に よる こ とに な
素 は擴 散 に よ り表 面 に 移 動 し表 面で 酸 化 され るか との 問
る.た
題 は 古 くWustn4)以 來 種 々學 者(5)に よつ て議論 され て居
界 の 計 算 法 に よるべ きで あ るが 、脆 炭 が あ ま り深 部 に 達
るが 今17な ほ 定 説 と認 む べ き もの が な い.勿 論 この 両
して居 な い場 合 は 簡 單 な平 面境 界 の 計算 法 に よ る こ とが
論 は 同時(6)に起 り得 べ き現 象 で は あ るが そ の 程 度 に於 て
ゞ'此
處 で は 圓 壕 形 試 料 を使 用 して居 る ので 圓 周 境
出当來 る.1,100° 以 外 の 場 合 は後 者 に よつ た が そ の差 は
極 く僅 で あつ た.
圓 周 境 界 の 場 合 牛 徑 をyと す れ ば 圓」
壽の 長 さの 方 向 の
(1}
: èc
19
(1934),
980,
20
(1935),
657,
22
(1937),
17.
(2)
J.
A.
Welber
(3)
F.
K.
Naumann
(4)
Wust,
D.
H.
C.
"Cast
u.
Soc.
Eisen,
iron
Metals,
12
in
(1938),
(1937),
the
515.
889.
light
of
recent
(1928),254.
Rowland,
Metals,
(6)
Amer.
: Stahl
Hatfield:
research"
(5)
: Trans.
Wagner:
(1936),
C.
Upthegrove:
Trans.
變 化 は な い もの と して,
Amer.
Soc.
な る 式 か ら 解 と し て 次 式 が 求 め ら れ る .但
t=oでc=Co,
γ=a.(試
料 の 牛 徑)でc=0
96.
Arch.
Eisenhiittenwes.,
11
(1938),
449.
(7)著
者:鐵
と鋼,19{1934),980.
し境 界 條 件 は
第1號 鐵
鋼 の 腕 炭 機 構
に 就 て Table
Fig.
1
below
Distribution
of Carbon
Surface,
Decarburized
1
27
Diffusion
Data,
Fig. 4 Distribution of Carbon
below Surface, Decarburized
at 950°.
Fig. 3
Distribution
of Carbon
below
Surface,
Decarburized
at 1,000°.
茲 に,tは 時 間Caは
るので あ るが,た Ψそ の 表 面 の問 題 が 頗 る 複 羅 で あつ て
腕 炭 前 の 炭 素 量,Dγ は
僅 か な 方法 の 相違 が 大 な る炭 素分 布 の 變 化 を起 して居 る
爲 で あ る.こ
below
at
Surface,
of
の滲 炭 法 に よ
つ て 求 め られ た 値 と して 最
易 に牧 數 す るのでc又
も正 しい もの と 信 ぜ られ て
はDyを
居 る の はBramley
計算 すること
が 出來 る.
Distribution
Iron.
内部 の 炭 素 の移 動 状 態 は この脱 炭 の場 合 と同 積 と 見 られ
炭 素 擴 散 恒數
この式 は今 の 場 合 容
5
in Gamma
Fig.
2
Distribution
of Carbon
below
Surface,
Decarburized
at 1,050°.
at 1,100°.
Fig.
Carbon
Carbon
Jinkingsの
and
平 面境 界の場合 に
and(8)
も の とPaschke
Hauttman(9}の
もの
Decarburized
は
900•‹.
で あ る.今
これ 等 の 値 に 對
し著 者 が 此 處 に 脱 表:に よつ
て 求 め た もの を 圏 に よつ て
な る式 に
t=oでc=Cax=0でc=0
な る條 件 を
比 較 す る にFig.6の
入 れ て 解 を 求 め れ ば 次 の 加 くな る。
で あ る.
Fig. 6
against
この 式 は表 に よ り容 易 に 計算 が 出來c又 はDyが
求め
散 恒 數 に 就 て はBradley(is),
and
られ る.
以 上 の 計 事 法 に よ り實 験 結 果 を結 ぶ 曲線 か らDyを
はTable
用 ひ てcを 計 算 した. Dyの
先
次 に な ほ これ 等 の擴 散恒
數 に 就 て そ の 正:否を見 る爲
Dushman(12)
Eyring(11)並
にLangmuir
等 の 式 が 墨 げ ら れ て 居 るが,今
く使 用 さ れ て 居 るLangmuir&Dushmanの
最 も廣
式 に よる
値
1に 示 し,cは 曲線 と して實 験 結 果 の 圖 に記 入
した.
γ鐵 の炭 素擴 散 恒 數 に 就 ては 既 に 研 究 され た 志の が幾
多 あ るが,何 れ も滲 墨 灘
Diffusion
Coefficient
Temperature.
一 般 の 原 子 擴 散 恒 數 の 式 に 當 嵌 め て 見 る こ と に す る .擴
、
数 に κ は表 面 か らの 距 離
づ求 め=Stoで そのDyを
如 く
よつ て 行 は れ て 居 る ので あつ
て そ の値 は 區 々で あ る,そ の理 由は鋼 の滲 炭 に あつ て は
(8) Bramley & Jinkings: J. Iron & Steel Inst. Carnegie
Scol. Mem., (1926), 30.
(9) Paschke u. Hauttman:
Arch. Eisenhuttenwes.,
9
(1935), 305.
(10) Bradley : Trans. Faraday Soc., 33 (1937), 1185.
(11) Eyring : J. Chem. Phys., 4 (1936), 283.
(12) Langmuir & Dushman: Phys, Rev., 20(1922),113,
28研
第5卷
究
こ と に す る.
茲 で は その 際 な ほ不 粉
述 べ る こ とに す る的
の 多 い もの 鞭
茲 にDは
19分
擴 散 恒 數,Tは
子 の 分 子 數,hは
離 又Qは
絶 對 温 度Rは
瓦 斯 恒 數,Nは
プ ラ ン クの 常 數,dは
分 離 エ ネ ル ギ ー 〈Activation
先 づ この式 に よ り實 測 値Dyを
る こと にす る.N,h,Rは
heat
原 子 の 飛躍 距
of diffusion).
用 ひ γ鐵 のQを
一定 値 で あhdは
求め
オーステナ
イ トの 結 晶 構造 か ら見 て炭 素 原 子 の 一 つ の安 定 位 置 か ら
これ に最 も接近 した他 の 安定 位 置 まで の 距離 即 ち
不純物 の外
で あつ た機 構 に 關 して主 と して
研 究 で は可 鍛 鑄 鐵 材 の 如 き不純 物
用 して居 たの で此 處 で は卿
如 く割合 に
白銑 に就 て實 験 を行 つ た.こ
炭 中黒
鉛 化 は殆 ど 起 き なか つ た
鰍
成分 では脱
は950° の 興
就
き方法 は前 の鋼 の場 合 と同 様 に 行 ひ,約12時
間毎 の 内
部 の炭 素 分 布 を 測 定 した,Photo.1は34時
間 後 の 脱1
炭 部 の 顯 微 鏡 寫 眞 で あ り,Fig.8は
分析並 に 顯微鏡観測
に よつ て求 めた 炭 素 分 布 曲線 で あ る.
C
Si
Mn
2.42
0.14
0.25
P
0021
S
0.005
前 報 告 に 於 て 述 べ た 如 く白 銑 鐵 の脱 炭 に於 て は 脱 炭 に
を 取 れ ば よ い.各 温 度 に 就 て 圖 式 計 弊 に よ り求 め たQの
値 はTable
よ り生 じた オー ステ ナ イ トの み の部 分 が 急 に脱 炭 前 の 白
1に 揚 げ た.
次 に(5)式
か ら す れ ばlogDγ
と1/Tと
は 直線 關 係 に
あ る べ き で あ る.
今實験値に 就 き
銑 組 織 に變 つ て居 る事 が 脱 炭機 構 の 設 明 、
ヒ古 くよ り種 々
論 ぜ られ て 居 る主 要 問 題 で あ り,,今日 な ほ 十分 な読 明 が
行 はれ て居 な い.既 處 で は 前 節 で 確 信 を得 た オー ス テ ナ
イ トの炭 素擴 散説 に よ りこの 間 題 を論 明 す る事 に す る.
その 關 係 を 求 め
れ ばFig.7の
如 くな り よ く一
致 し居 る の で あ
る.又
この 直 線
の 勾 配 か ら もQ
かが計 算 出 來 る,
Fig. 7 Du (Logarithmic scale)
versus 1/T.
Atomと
そ の 値 はQ=
36,000
cal/g一
な り前 に 求 め た もの と僅 か な差 で 一致 して居 る
オ ー ステ ナ イ トの脱 炭 機 構 に就 て今 な ほ一 二 の 異 な つ
た論 が あ るが,以 上 炭素 擴 散 説 に よ り實 験 結 果 を吟 味 す
るに,:先づ 脆 炭 に よ る炭 素 分 布 の 變 化 が よ くFickの
計
算 式 に よつ て 求 め た もの と一 致 す る し,又 これ に よつ て
求 め られ た炭 素 の 擴 散 恒 數 か ら計 算 さ れ た9の
値が各
濃度 で 大體 隅 一値 を取 り且 つ擴 散 恒 數 と温 度 と の關 係 か
ら計 算 した もの と も大 體僅 な誤 差 で 一 致 す る こ と を知 り
得 た こ と,且 又Welbern13)が 脱 炭 性 瓦斯 の 性 質 と炭 素分
Fig. 8
Distribution
of Carbon below Surface;
Decarburized
White Cast Iron at 950°.
脱 炭 の 初期 に あ つ て は 勿論 表 面 に露 出 して居 る セ メシ
タ イ トが 直 接 酸化 され 炭 素 を失 つ て オ ー,ステ ナ イ トに 變.
化 す る で あ ら うが,次 に は 表 面 は オ ー ス テ ナ イrで 包 ま
れ る こ とに な るの で セ メ ン タ イ トの炭 素 は 一
一度 オ ー ス テ
ナ イ ト間 に 固溶 され そ の闇 を擴 散 して 表 面 で 酸 化 され る
こ とに な る.Fig・9は
脱 炭進 行 途 中 の炭 素 分 布 を鐵 一炭
素平 衡 圖 と對 照 した もの で あ つ て,今Tな
が行 はれ て 居 る とす れ ばAcm線
る溜 度 で 脱炭
上 のS點
に翼 應 する
布 との 關 係 を實 験 し鋼 の 腕 炭 に よる 内部 の 炭 素分 布 は 脱
炭 瓦 斯 の 性質 に影 響 され な い結 果 を求 め て居 る こ と等 の
事實 か ら脱炭 の機 構 を 考 へ れ ば,表 面 の 問 題 は別 と して
脱 炭 の進 行 は 内部 の炭 素 の 原子 擴 散 に よる もの な る こ と
が 明 か に 認 め られ る ので あ る.
II.
オ ー ス テ ナ イ トと セ メ ン タ イ ト
が共存する場合
漁
は白 銑 鐵 を900。 以上 の温 度 で 脱 炭 す る 場 合 に 相
當 す る もので あつ て,そ の 實 験 は 既 に 前 報 告 に あ るので
(13)」
。A.
We】ber:前
掲
i
Fig. 9 Relation between;Distribution of Carbon
and the Iron-Carbon Equilibrium Diagram .
M點 が 白銑 組 織 とか
ステナ 骨
の み の 部 分 との 境 界
とな り,オ 一 ス テナ イ ト内 の 炭 素 量 は 極 少 の0點
和點 のMに
達 しそれ 以 上 の 増 加 は ない.而
か ら飽
して 奥 部 の
第1號 鐵 鋼 の 脱 撰 機 構 に 就 て 29
過 剰 炭 素 は セ メン タ イ トと してMRの
如 く分 布 す る.
E點 は最 初 の試 料 の 位 置 で あ る.こ の境 界 の 問題 は後 に
の オ ー ステ ナ イ ト
譲 り今 白 銑 組織 の 崩失 の機 構 を數 式 的 に 取 扱 へ ば次 の如
暦 と時 間 との 關係
くな る。,今微 少 時 ト δtのト にM點
を 示 した も の で あ
が δξだ けxの
は實 測 と計 算 雨 者
方
向 に脱 炭 に よ り移 動 した とす る とその 問 に セ メン タ イ ト
る.又
が 失 つ た炭 素 量 は(CwCS)δ
Dγ を(Ⅰ0)式 に 入
ξ
C"は 白 銑 鐵 の金 炭 素 量,C、 は か
炭 素 量.而
ステ ナ イ トの 飽 和
部分 の炭 素 分 布 曲
のみ の 側 に移 つた こ とに な るの で
線 を求 め た もの が
Fig.
10
Thickness
of Decarburized
Zone of White
Cast Iron, Decarburized
しDy,
cは 前 節 と 同 様 オ ー ス テ
に
れ オ ー ステ ナ イ ト
して とれ だ け の炭 素 量 は 結 局 オ ース テ ナ イ 卜
な る 式 が 作 られ る.但
こ のa:並
Fig.11で
at 950°.
あ っ て,
これ も よ,く實 測 點
の 近 く を通 る こ と に な る.
ナ イ トの 炭 素 擴 散 恒 數 並 に 炭 素 濃 度 で あ り,ξ は 表 面 よ
り この 境 界 ま で の 距 離 で あ る.又
オ ー ス テ ナ イ ト内 で は
前節の加 く
な る 關 係 に よつ て 蓑 面 に 向 つ て炭 素 が 擴 散 し て 居 る こ
と は 勿 論 で あ る.か ゝ る(6),〈7)の 式 の 解 はNeumann(14)
の 方 法 に よ つ て近 似 的 に 求 め る こ と が 出 來 る 。
先 づ(7)式 の 解 は 前節 と同様
Fig.
但 し φ は 誤 差 函 數 を示 し,A並 にBは 常數.こ
x=0に 於 てC=0な
る條 件 を犬 れ ゝばA=0
3ζx=ξ
に 於 て は 常 にc=CSな
れに
II
Distribution
Zone of White
of Carbon
Cast Iron.
in Decarburized
次 に セ メン タ イ トの 存 在 す る部 分 とオPス テ ナ イ トの
壷
み の部 分 との 境 界 の問 題 で ある が
,セ メン タイ トの 分布
る爲 に は
が 一様 で あ り且 つ これ か ら未 飽和 オ ー ステ ナ イ トへ の炭
なる關 係 が 必 要 で あ る.よ つ て
素 の溶 解 が 脱 炭 の 進行 に比 較 して 十分 造 で あれ ば,未 飽
和 オ ース テ ナ イ ト中 に は セ メン タ イ トは存 在 し得 ず 又 白
銑部 に は未 飽 和 オ ース テ ナ イ トは生 じ得 ざ る こ とに な る
の で この境 界 は前 述 の 計 算 に 取扱 つた 如 く非i連績 的 な も
の とな るべ きで あ る.然 る に實 際 の場 合 には これ 等 の條
な る 解 が 得 られ る.次
に 、(6)式 は 次 の 如 くな る,
件 は 完全 に は1さ れ な いの でFig上8に
見 る積 な結果が
あ らはれ るの で あ る.但 し實 際 の場 合 の 如 くFig..9の
LM線
が 多 少傾 斜 して も(6)式 の 成 立 に は 殆 ど支 障 はな
い の で上 の 計 算値 に對 して は影 響 は極 く僅 で あ る.
(9)並 に(10)式
の 値 を 入 れLば
前 報 告 に於 て十 分 詮 明 し得 な か つた 白銑 鐵 の 脱炭 機 構
を
に數 式 的 に よ く論 明 す る こ とが 出來 た.
IV,
以 上 の 式 に 實 験 結 果 を 入 れ て 見 る に,950。
cm2/sec並
を 用 ひ 圖 上 計 算 に よ りaを
得 られ る.次
に於け る
にC卿=2'42%C.s=)25%
求 めれ
に 費 測 値Fig.8と
平 吉 男:物 理 數 學 第2卷,640.
以 上 の 温 度 で 脱 炭 す る場
した もの を900。 以 下 で 脱 炭 す る 場 合 で あつ て,既 に 一
顯 徴 鏡 的 観 測 か ら この
両 者 よ く一 致 す る こ と が 認 め ら れ た の で あ る.Fig.10
これ は鋼 を900° 以 下A1點
合3Cは 前 節 の 如 く白銑 鐵 を一度900。 以 上 の 温 度 で 脱炭
a=0'55×10一3が
境 界 移 動 の 状 態 を 見 α を求 め れ ば α=0・53×10者3と
(14)小
ラ イ ト と オ ー ス テ ナ イ トと
共存す る場合
と な り こ の 關 係 か ら αが 定 ま る の で あ る.
Dy=12・4×10-8
7エ
な り
二 の實 験 に 就 て は前 報 告 で 蓮 べ た が,不 純 物 の 少 い 鋼 に
就 てそ の 後實 験 を行 つ た の で 先づ それ に就 て報 告 し次 い
で そ の理 論 に 就 き詳論 す る こと にす る.
オ ー ス テナ イ トの 脱炭 に對 して は 第 三 成分 の影 響 は あ
30 研
第5卷
究
a鐡
ま り大 で な い が この フエ ラ イ トを通 過 して の 脱 炭 には他
暦の厚
成 分 の 影 響 は頗 る鋭 敏 で あ る こ とは 既 に著 者 の 白 銑鐵 の
さ を測 定 し
脱 炭 實 験 の 際 明 か に な つ て居 る ので,茲 で は な るべ く異
た.結
成 分 を 少 くす る爲Flogin鐵
その 平 均 値
先 づ 厚 さ約6mmの
に 滲 炭 して試 料 を作 つ た.
果 は1
を取 りFig.
平 板 を固 形 滲 炭 劑 を用 ひ時 間,温 度
を異 に した 三種 の 滲炭 を行 ひ,次 いで 炭 素 量 を 均一 に す
12∼14に1
る 目的 で これ 等 を眞 空 加 熱 爐 内 に 入 れ 約2畫 夜920∼
示 した 様 な
930。 の 温 度 に 保 持 した.然
る に か ゝる方 法 で は炭 素 量
Fig. 14 Relation
of the Width
Iron Band to Time at 860°.
は 一 積 に な るが結 晶粒 子 の大 さが 内部 と外部 で異 な る の
で最 後 に輕 く熱 ト 鍛 錬 を行 ひ且 つ9200か
ら永 中 焼 入 を
變 化 を認 め1
of Alpha
る こ とか 出
來 た.
行 ひ再 び 焼鈍 して標 準 組 織 と した 、 な ほ試 料 の表 面 は約
0'5mm創
り取 り結 局 約4mmの
厚 さの試 料 を 正方形 に
又Fig.15は
α鐵
暦 の 厚 さ と温 度 との
切 つ て實 験 に供 した.
關 係 を示 した もの で
脱炭 の 方 法 は前 同 様 酸 化 鐵 を 用 ひた が,實 験 に先 立 ち
あつ て,前 報 告 に 蓮
脆 炭 雰 圍氣 中 の水 分 の 影 響 の有 無 を見 る爲乾 燥状 態 と水
べ た 白銑 鐵 の 脆 炭 の
分 飽 和状 態 とに就 て比 較 を行 つ た結 果 その 差 は殆 ど認 夢
場 合 と 同様800。 前 ・
られ なか つ た ので 爐 内 は乾 燥加 水共 に行 はず して實 験 を
後 に於 て α鐵 層 の 厚
進 め た.
さが 極 大 と な りそれ
試 料 の 炭 素 量 は 次 の 三 通 りで あ つ た.a,0'is%b,
0'33%c,0.49%又
脱 炭温 度 は760。,810。 並 に860。 の
三 種 と し時 ト は 最 長42時
間 前 後,而 して 間 一 試 料 を4
以上 の温度の上昇 に
Fig. 15 Effect of Temperature
on Width of Alpha Iron Band.
よ り再 び 著 し く減 少
して 居 る.尚
これ と
個 同 一状 態 に脱 炭 し置 きその 商4回 試 料 を順 次 爐 外 に取
同 積 な實 験 を不 純 物 の 多 い 普 通 工 業 用 鋼 材 に 就 てRow-
出 し空 冷 後 中央部 か ら切 斷 し顯 微 鏡 に よつ て両 面 か らの
land&_Upthegrove(15)が
水 分 を含 ん だ 水 素 を用 ひ て 行
つ て 居 る の で そ の 結 果 の 一 部 を 参 考 にFig.12並
15に
言己入 し て 置 い た.又Plloto.2は
にFig.
二三 の 脱 炭 部 の
組 織 を 示 した もの で あ る.
一 般 に金 屬 合 金 内 に 一成 分 の移 動 に よ り二 相 が 出顯 す
る場 合 に その 両 相 の 境 界 は 鮮 明 な もの とな る こ と は種k
の例 に就 て既 にW.D.
JOHesl16)に よつ て 説 明 され て居
る.今 の 場 合 オ ー ス テ ナ ィrが 表 面 か ら炭 素 を失 つ て α
Fig.
12
Band
Relataion
of the Width
to Time at 760'.
of Alpha
Iron
Fig. 16
Carbon
Relation between Distribution
and Initial Carbon Content.
of
鐵 の 暦 を生 ず る場 合 も當 然 その 一 例 で あ つ て,オ ー ステ
ナ朴
と このaと
は 明 か な境 界 を以 つ て境 され 炭 素 分
布 か ら,見れ ば 此 處に1急激 な 不 連 績 點 が 生 ず る こ とに な
る.今 そ の炭 素 分 布 を鐵 炭 素 平衡 圖 に 對 照 して見 るに
Fig・'.16の如 くで あ り鋼 の含 炭 量 と温 度 との 關 係 に よ り
Fig.
13
Band
Relation of the Width
to Time at 810°.
of Alpha Iron
(15) D. H. Rowland & C. Upthegrove : IN
(16) W. D. Jones : J. Iron & Steel Inst., 2 (1934), 42y
第1號 鐵 鋼 の 晩 炭 機 構 に 就 て Photo.
No.
2
Specimen
21
b.
Hours
st
1
Decarburized
Part
Decarburized
34
Decarburized
760•‹.
No.
3
of White
Hours
Specimen
at
Cast
Iron
950•‹. •~
50.
c.
Decarburized
Hours
No.
21
4
.
No.
Specimen
20 Hours
b. Decarburized
at 810°.
1
No.
Specimen
21
Hours
5
Specimen
7 Hours
a.
at
Decarburized
760•‹.
b. Decarburized
at 860°.
760•‹.
Photo.
X,Y,Zな
at
31
2
Alpha
る三 つ の場 合 を生 ず る こ とに な る.即 ちXは
最初 の炭 素 量 が その 脱 炭温 度 に於 け るA3點
Iron
Band. •~
50.
次 に 然 ら ば この α鐵 内 の 炭 素 の 輸 送 は 如 何 な る機 構 に
よ り遙 に 高
い場 合 で あつ て,こ の 際 に は 圖 の 如 くオ ー ステ ナ イ トの
よつ て 行 は れ る か と云 ふ こ と に な る.低
温脱炭 による α
鐵 暦 の 發 達 に 關 す る 實 験 的 事 實 は 相 當 古 くか ら認 め ら れ
部分 に も炭 素 濃 度 勾 配が あ る ので.オー ステ ナ イ ト内に も
て 居 るが そ の 成 因 に關 して は 今 日 ま だ 定 説 が な い.古
炭素 擴 散 は生 じ且 つ α鐵 内 に も炭 素 の輸 途 が 起 き る こ と
Stead(171, Austin(18)以
に な る.Yの
浩 失 面 が 表 面 か ら次 第 に 深 部 に 進 む もの と 漠 然 と考 へ ら
場 合 の如 く最 初 の 含 炭 量がA3點
の附近 に
く
來 脆 炭 性 瓦 斯 の 侵 入 に よ り炭 素 の
あ る場 合 に は オー ス テ ナ イ ト内 に は 炭素 の濃 度 勾 配 な く
れ て 來 て 居 た が,近 時Rowland(19)&Upthegroveは
瓦
從 つ てそ のト の 炭 素擴 散 も 考 へ る 必 要 が な い,脱 炭 はa
斯 侵 入 説 の 矛 盾 を認 め 酸 素 の 擴 散 説 を 述 べ て 居 る.然
る
鐵 内 の み の炭 素 の 輸 送 に よ つ て 進 行 す る.又Zの
炭 素 量がA3點
よ り低 い 場 合 は オー ステ ナ イ トとa
如く
と
にYensen(20),
Sims(21}等
は こ れ 等 の 詮 に 反 對 し炭 素 の
消 失 面 は 當 に鋼 の 表 面 で あつ て深 部 の 炭 素 は α
内 を擴
混在 す る もの が 脆 炭 され るの で あ る が,こ の 際 は 前 節 の
散 して 表 面 に輸 逸 され た もの と述 べ て居 る.な ほ そ の他
オー ス テ ナ イrと セ メン タイ トと混 在 す る場 合 と同様 な
に セ メン タ イ トの 分 子 の 移動 に よる と考 へ る者 もあ るが
ことに な り嚴 格 に は 二 相 が 一面 で 境 され る こ とに は な ら
著 者 は上 記 の實 験 結 果 を吟 味 しYensen等
な いが,A3點 上 の オ ー ステ ナ イ トが 炭 素 を失 つ て α鐵 に
内 の 炭 素擴 散 が 少 くと もこの機 構 の主 因 となつ て居 る こ
な る變 化 が速 で あれ ばa鐵
と を知 り得 た の で あ る.
暦 は順 次 そ の 境 界 面 の オ ー
ステ ナ イrを 消 失 す るに あ らざれ ば それ よ り深 部 の炭 素
を奪 ふ こ とは 出 來 ぬ の で 大 體 前 のYの
と同 様 僕鐵
Welber(22)の 如 くオ ー ステ ナ イ トの 炭 素 原子 擴 散 説 に
場 合 と同 様 最 初
同意 して 居 る人 で も α鐵 析 出 の 場 合 に は これ に 同意 し
の状 態 の ま ゝ表 面 の方 か ら順 次 α鐵 に變 りその 境 界 は明
兼 ね て居 るの はた ゞ α鐵 の炭 素 固 溶 量 が 甚 だ 少い こと
か に 示 され る ことarcなる.こ の こ とは實 測 上 明 か に見 ら
に原 因 して居 るの で あ る.然
しa
内の炭 素 輸 送量の
れ る こ とTあ つ て,今 α鐵 とオ ー ス テ ナ イ トの 混 在 部 を
a鐡 の み の部 分 に勤 し他 の 一 相 の 如 く考 へ る こ とが 出來
る.
(17) (18) Austin : J. Iron & Steel, 1 (1922), 93.
(19) D. H. RowlanA C. Upthegrove: JR#4.
(20) (21) T. D. Yensen C. E. Sims. (19) Discussion.
a
32 研
究 少 い こ とに就 て は他 論 の 方 が遙 に甚 しい の で あ る.古 い
に 就 て 述 べ る.
水 素 瓦斯 侵 入論 に就 ては 既 に茲 に述 べ る必 要 は な いが,
今CO2の
今 一般 の場 合 と して 最初 の炭 素 量Coな
侵 入説 に就 て 見 るは,平 衡 關 係 か ら見 てcot
單 猫 で は鐵 鋼 と平 衡 して存 在 し得 ず 必 ずCOと
を有 ナ る こ とに な る.然
幾 何a鐵
れ る場 合 に就 き そ のa鐵
一定 の 比
脱 炭 部 の炭 素 濃度 の變 化 を鐵 炭 素 平 衡 圖 に對 比 した もの
で あ る.今 微 小 時 トStの
内 に固溶 し得 るか を岩 瀬 教 授(23)の研究 に就 て
就 き0。1氣 壓 で24ccと
瓦斯 が 鐵1009に
.
トを脱炭 した とすれ ばCO/CO十CO2・
ト に δξだ け α 鐵 居 が 發 蓮 し
た とすれ ば,こ の境 界 に於 け る炭 素 の 出 入 は
云 ふ こ とが 求 めち れ て居 る.
而 して か ㌧る瓦斯 を以 つ て0.4%炭
る 鋼 が 脱炭 さ
とオーステナ イ トとの 境界 の
移 動 状 態 を數 式 に よつ て取 扱 ふ、こ とに す る.Fig・17は
らば こ の平 衡比 を有 す る瓦 斯 が
見 るに830。 でCO/CO十CO264%の
第5卷
オ ー ス テ ナ イ ト側 よ りの 流 入
素 の オ ー ス テナ イ
比 が約82%と
な
α鐵 側 へ の流 出
つ て 脱 出 す る とと に な る… これ 等 の關 係 を重 量 に換 算 す
れ ば そ の 表 面 と内部 の 作 用 面 と のCO2瓦
僅 に0つ068%と
斯の濃度差は
な る 。然 も商 橋 博 士(24,の滲 炭 の研 究
と な り,α 鐵 側 の 流 出 の 方 が 大 な る 爲(Cm上C。)δ
ξだ 、
け の 炭 素 が 失 は れ る こ と に な る の で,'
よ り見 るに これ 等 瓦斯 が鐵 鋼 内 を炭 素 原 子 よ り速 に擴 散
す る こと は困 難 で あ るの で,そ の 瓦 斯 に よる輸 送 量 た る
や極 く僅 少な もの と信 ぜ られ る ので あ る,
又 酸 素 の 擴 散 読 に 於 て もRowland&Upthegrove自
即ち
身 の 實 験 に 見 る に735。 に て 脱 炭 せ る 試 料 の α鐵 暦 の 酸
素 含 有 量 が0.0027%
、
と報 告 一 て あ う こ と並 に 酸 素 の 鐵
鋼 内 の 擴 散 恒 數(25)の 甚 だ ノ11なる こ と よ り 見 て こ の 論 の
論 據 も頗 る淺 薄 な こ と が 認 め ら れ る の で あ る.
次 に セ メン タイ トが 分 子 と して擴 散 す る と云 ふ読 で あ
るが,セ メン タ イ トが 分 子・
と して擴 散 す る に は α鐵 粒 子
の境 界 を適 る と云 ふ こ とに なる.又 前 述 の 瓦斯 侵 入読 も
この粒 子 の境 界 を通 つ て侵 入脱 炭 す るに あ らず や との疑
問 も生 ず るので あ る.然 るに これ に關 して はRhines&
Wells(26)の 研 究 が あ り,a鐵 暦 の炭 素通 過 に 對 し不純 物
な る境 界 式 が 作 ら れ る.但
に オ ー ス テ ナ イrの
しC。,6。 は そ れ ぞ れ α 鐵 並
炭 素 濃 度Da,
Dγ は そ れ ぞ れ α 鐵
並 に オ ー ス テ ナ イ トの 炭 素 擴 散 恒 數 で あ り,又C切
點 に 於 け る オ ー ス デ ナ イ トの 炭 素 量,Cnは
はAガ
同 温 度 のa鐵
の 炭 素 飽 和 量 を 示 した もの で あ る.
a鐵 並 に オ ース テ ナ イ トそれ ぞれ の 内部 に は 次 の如 き
關 係 式 に よ り炭 素 の 擴 散 が 行 は れ て 居 る 庵の と見 られ る.
の 少 い場 合 に は結 晶粒 子 の大 さ即 ち境 界 の 多 少 は殆 ど影
響 しない と云 ふ箪 験 が 行 はれ て ゐ る.こ れ に よつ て 境 界
移 動 に基 く考 へ 方 は總 て否 定 され た こ とに な るの で あ る,
然 らば その炭 素 固溶 量 は 僅 少 で は あ るが α鐵 腎内 の
又他 の境 界條件 は
炭 素 原子 擴 散 を考 へ れ ば 如何 な る こと ゝな るか以 下 これ
こ れ 等 の 式 も前 述 のNeumannめ:方
法 に よつ て近 似
的 に 解 く こ と が 出 來 る.
(15),(16)の
Fig. 17 Relation between Distribution
of Carbon
and the Iron-Carbon
Equilibrium
Diagram.
但 し 護1,B1,A2,
x=0に
(22)
J.
(23)
-)
(24)
AM:
(25)
W.
(26)
A.
o
JA D
Seith:
F.
N.
27
(1939),
Ft,
3 (1926),
119.
3C, 6 (11929),
186..
"Diffusion
Rhines
& C.
625.
B2は
於て
in
Wells:
Metallen",
Trans.
α は常 數
(1939),
Amer.
38.
Soc.
Metals,
又
A2一十82=Co
常 數,φ は 誤 差 函 數
cαコ ◎な る 爲izは
κ篇 ξ に 於 てCa=C
Welber:‘OŒf.
:
解 は
n,ら=Cmな
44
1=0
る爲 には
第1號 鐡
鋼 の 醗:媛
機 縫
に 就 て 上 で 約0.035
よつ て
33
と云 ふ こ と ば 既 に 一 般 に 認 め られ て 居
るが,そ れ か ら上900。
附 近 で0と
な る ま で の 曲 線 於關
し て は な ほ 不 明 で あ る.Yensen(29),
Esser等
の純 鐵 の 研
究 者 に よつ て 推 定 さ れ て 居 る も の はFig・18のAの
如
き 曲 線 で あ る が,Whiteley(30)
故於
は 實 測 値 と し て,Bの
如 き曲
線 を 発 表 し て 居 る.著
者 は
最 近 発 表 さ れ たAwbery&
Griffiths(鋤
の 極 く精 密 な 純
鐵 の 比 熱 値 を使 用「
しKorber
これ 等 の 結 果 を(14}`式 於 入 れ ゝは
u.Oelsen(32)"行
的 方 法 に よ つ て この 値 を計
算(33)せ ん と した が,A3線
に於 て 生 ず る誤差 の 影 響 が 大
、で 正確 な 値 は 得 られ な か つ た.た
これ 等 の 式 は 勿論 計算 は 不可 能 で は ない が結實験
果の
Ψ曲 線 の弾 向 と して は
Aの
如 くで あ る べ き こ と だ け は 認 め 得 た の で あ る.今
Aの
如 き推 定 値 を 大 な る 誤 差 な き も の と し て 用 ひ(zr)
式 よ りDaを
と な り α は こ の 關 係 か ら髭 ま る.
つ た 熱 力學
Fig. 1S Solubility Curve
of Carbon in Alpha Iron.
値 並 にD。
導 出 す る こと に した.そ
の 價 はTable
Table 3
計算 に は そ の特 別 の 場 合 即 ち.Cm-COの
場 合 を取 り且
つ こ の條 件 に近 い 實 験結 果 を使 用 す る事 に すれ ば 簡單 に
は
の 計 算 に 絹 ひた 數
3の 如 くで あ る.此
虞 に αは
DiffusionData, Carbon in Alpha Iron.
(U.R. Rowland&Upthegrove's
Experiment.)
と な る.又 前 述 の如 くオ ー ス テナ イ トと α鐵 と"混 在
部 も一・
相 の如 く見れ ば この 式 は そ.のま ゝ當 嵌 る こ とに な
り.前
節 の 白銑 鐵 の脱 炭 の 場 合 と全 く同様 に な る.
次 於 以上 の式 を實 際 計算 す る に は 先 づCm並
にCnの
値 を.各試 料 と温 度 とに就 て知 ら ね ば な ら ない.Cm即
ち
A3點 の 位置 は既 に 佐蜘 専士{27>並に:Ylehl&Wells{28)等
に よっ て 正確 於 示 され て居 るが,鼓 では 實 際 實 験 に使 用
した 試料 に 就 い て 加 熱 冷 却 曲 線 か らA3鮎
Table
2は
は760。
そ 船 で あ る.從
で はa,b,c各
を求 めた.
つ て(21)'式 が 適 用.し 得 る の
試 料1810。
で はaの
み と な るが
bも 差 が 僅 で あ る.の で 計 算 を 行 つ た.860ーで
は何れ も
Fig・12∼14の
實 験 結 果 か ら求 め左 の で あ る.但 しFig.
12の 如 く低盗 の際 には 本研 究 の如 く酸 化 鐵 を 使 用 した
場 合 には 水素 瓦 斯 使 用 の場 合 と異 な り櫨 内 盗度 比 昇 と同
時 に 脱 炭が 進 まず 相 當時 間後 α鐵 暦が 出 現 し て 來 て 居
る.そ の理 由 は試 料 の周 圖 瓦 斯 の 状 態 が α鐵 暦析 出 に
(20)式 に よ ら ね ば な ら ず 且 つ か ゝ る 高 温 で はC。 の 價 が
推 定:困難 と な る の で 計 算 を 行 は な か つ た し
…
次にC.即
Table
2
Points
ちa鐵 の 炭 素 飽 和 固 溶 量 で ある が,こ れ ば
A3 Transformation
of Specimens.
今 日な ほ 正確 に
求 め られ て居 な
い し又直 接 試 料
に就 て求 め る こ
と も出來 な い の
で次 の 如.き推 定
値 を用 ひ ろ よ り
他 に労 法 が な か つ海.普 通 鐵炭 素 雫 衡 圖 に 見 る如 くA1線
(零7) 催 藤:金屬
(28)Mehl&Wells:本
の 研 究,6(1929),56.
誌1(五937),564磯
十分 な状 態 とな る の にそ れ だ け の時 間 を要 す ζ もの と見
られ るの で計 算 於 は 嵐、
鐵 発 達 の 始 點 を時 間 の0點 と取
る事 於 した.な ほ参考 の爲 にRowland&Upthegrove(34)
の 行つ た 水分 を含 ん だ 水素 於 よる732。 の試 料NO.
脱 炭 實 験結 果 を も探 つ た.
こ れ に よ つ て 見 る に760。
料 が 異 な つ て もD6の
の 場 合,810。
の場 合 共於試
値 於 は 大 差 な い 事 が 認 め られ た.
な ほ 進 ん で オ ー ス テ ナ イ トの 場 合 と 同 様Langmuir&
(29)Yensen:J. Iron&Steel Inst.,adv. copy,(1937),
(30)Whiteley:J.Iron&Stee!Inst.
Q(1936),339.
(31)Awbery&Griffiths:Proc.
Roy. Soc.,174(1940),1.
(32)Korber u.Oelsen:Arch,Eisenhuttenwes.,5(1932),569.
(33)
部 課 ・
1の
附 記 参 照.
(34) D. H. Rowland & C. Upthegrove
前 掲.
34 研
Dushmanの
究 式 に よ つ て α鐵 内 の 炭 素 原 子 の 分 離 エ ネ ル
,ギ ー を 各 場 合 に 就 て 計 算 を 行 ひ し に そ の 結 果 はTable
3
'12示 し た1如 き1が 求 め ら れ た
:.但 し こ の
d,即 ち α 鐵
に 於 け る 炭 素 の 固 溶 位 置"距
説 に よ りFig・19"如
離 は 本 多,西 山 両 博 士(35)の
第5総
とな る.よ つ てTと
行 つ た.
次 に x'即
ちA3線
験 値 を 取 りxを
は 佐 藤 博 士 並 にMeh1&Wensの
求 め た の で あ る.鷺
實
の 値 はFig・
衆0の
如 くな つ た.
く取 り
V.総
と し て 計 算 した.
括
本 計算 はa鐵 の炭 素 固 溶 章 に於 て
鐡 鋼 の 脱炭 は 單 に 内部 の 含 炭 量 が 減 少 す る だ け の 問 題
推 定 値 を 用 ひ た の で あ るが,そ れ よ
で な く,炭素 量 の減 少 は 脱 炭 温 度 との 關 係 に於 て 種 々相
り計算 され た9に
就 て 見 れ ば760。
の變 化 を生 ず る もの で あ り,又一 方 絹 の 變 化 は脆 炭 状 態
場合 と極 く近 似 な
を變 へ る こと於 な り,此虚 に複 雑 な 炭 素 分 布 を示 す こ と
値 が 得 られ な 底 且 つRowland&
Upthegroveの1735。
の 實 験値 か ら
に な る.特 に實 際 の鐵 鋼 熱 處 理 操 作 に見 られ る如 く一 度
の値 も よ く一致 す る ζとが 認 め られ
種 々の炭 素 量 を含 有 した もの が 種 々の 温 度 の 脱 炭 を繼 績
の 場 合 と810Qの
Fig. 19 Stable Position of Carbon
Atom in Alpha
Iron.
鐵 の 含 熱 量 との 關 係 圖 か ら積 分 を
た.
860.の 如 き温 度 で炭 鵜
高温 で脱 炭 され た もの を其 の まゝ徐 冷 す る如 き場 合 於 は,
的 於受 け る こ と於 な る の で,炭 素 分 布 は 釜 々複 雑 とな り
の 高 い 鋼 を 腕 炭 す ろ場 合 に
今 日 まで そ の機 構 に關 し明 確 な説 明 を行 ふ こ とが 困 難 で
は オ ー ステ ナ イ ト部分 の幾 素 濃 度 勾 配 は 大 い 於大 とな
あ つ た の で あ る。勿 論 今 日 まで 漢然 と信 ぜ られ て來 た脆
り,然 も α鐵 の 炭 素 飽 和 固溶 量 は 減 少 す るのでFig .15
於見 る如 く當 然 發 生 α鐡 暦 の厚 さは 減 少 すべ きで あ る.
.炭性 瓦斯 の侵 入 も多 少は 晩 炭 に關 與 す るで あ ら うが,之
以 上 の 如 くα鐵 析 出 の脱 炭 を α鐵 内の 炭 素 原 子 擴散
究 は γ鐵 内 の み な らず α鐵 内 於 て も炭 素 の 原子 撰 散 が
に よ る もの と見 て論 穿 る時 於 は何 等 矛 盾 な く數 値 的 の 詮
起 き之 が 脱 炭 の主 原 因 を な す もの との 見 地 か ら この 相 の
明 を行 ふ こ とが 出 來 且 つ本 實 験 の 如 く酸 化鐵 を 腕炭 劑 と
變 化 を伴 ふ 脱炭 現象 に一貫 した説 明 を與 へ ん と し,茲 に
して使1用した 場 合 も,Rowland&Upthegroveの
次 の如 き結 論 を得 この説 の最 も正 當 な こ と を主 張 し得 た
行 つた
如 く水 分 を含 ん だ 水 素 に よ り脱 炭 した場 合 も その炭 素 移
動 の速 さ胴
一 の 因子 に よつ て 同 一理 論 の 許 に決 定 され
の みで は到 底 實 際現 象 を説 明 す る こ とは 出 來 な い.本 研
の で あ る,
る こ とを認 め得 た こ とは この脱 炭 の機 構 と して 炭 素 原 子
1・ オ ー ステ ナ イ トの みの 場 合 の 脆 炭 實 験 を炭 素 擴 散
論 於 よ り説 明 し,よ く實 験 結 果 を説 明 し得 た の み な らず
擴 散説 が如 何 に要 當 な もの な る か を 示 す もの で あ る.
之 於 よ り7炭素 擴 散恒 數 を も定 量 的 於 求 め 且 つ 其 の 値 が 一
(附記)
般 の磯
熱 力學數式
と して この 炭 素 原 子擴 散 説 の 正 し きこ と を數 量 的 於立 證
に よつ て計 算 した1.鼓 レ
に
x'はA3線 の鐵 原子 濃 度 ,
κは α鐡 の 炭 素 飽 和 線
瓦期恒數 又
が 嘗 つて 行 つ た 白銑 鐵 の 脱 炭 鰍
3.脱 炭 嵐
現象 はそ鵜 身最 も糊
表敵
α鐡 の 駐
困難であ 短
發 達 せ しめる
つ極
の雛
に
り不可解 に して來たの である.本 研究で は この 問題 も
。
鐡 の炭素原子擴散 による もの として説明 を行 つた .たL
嫌
α鐵 の炭 素飽 棚 溶量 が今 日な ほ 一 般 於 認 め られ
變 態 熱 の み を取 つ た,而
礁 が無 爲瀧
して この 場 合9はTの
耀 矛勧 く説明 を行ふ こ とが 出 來 た。且 つ α 内 の
炭素原 子の分離 エネル ギー疎 め しに溜 度 並 に 脱炭瓦
Fig. 20 Solubility Curve of
Carbon in Alpha Iron
(Calculated by Thermodynamical Method).
由:金
り鋤
於て脱炭後 脚 の途 脱 の現象 を併発 し脱炭 の機 構 をよ
醜 數 とな るの で
多,西
の 結 果 の説 明 を 行 ひ 此
和 で あ る.計 算 に於 て は
て頗 る小 で あ るの で9は
屬 の 研 究,10(1933),1.
、
塵 に も數 量 的 一致 を見 る こ とが 出來 た .
9は 溶 解 熱 と變 態 熱 との
溶 解熱 は變 態 熱 に比 較 し
(35)本
炭 の械 構
し得 た.
2,鋼 の場 合 に求 め 得 た炭 素 の擴 散恒 數 を用 ぴ て著 寿
上 の 鐵 原 子 温度,:τ'は絶
封温 度,Rは
擴 散 の關 係式 於 よ く當 嵌 る事 を認 槻
的観
方 麓 ねば ならぬ點 は あつた が
斯 に無關係 な一定の値 を求 め得た .
終 りに臨 み種 々鰍 示 を賜 つ歓
ロ両教援並に西鋤 教授 に深 く艦
阪帝 國輝
,高橋 山
の意 を表 す
.
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