中田陽造先生講演2012 11そのⅢ

るとそれぞれの州の警察権がその境界を一つ越えたら及ばないわけですから、アメリカ全体に亙って警
察権を行使できるＦＢＩが担当する事になる。皆さん方の古い方は、アンタッチャブルとか、ＦＢＩと
かのＴＶ番組をご存知でしょう？マフィアはその間に物凄い金を儲けたんですね。アメリカで力と言う
たら、パワーと言うたら金ですからねえ。金を持つという事はパワーが強くなる。そこでアメリカの市
民はですねえ、
「もう飲みたい奴は勝手に飲んだらええやないの。死にたい奴は勝手に死んだらええやな
いの。我々は知ったこっちゃない。
」と言うて１９３３年に、もう一度、国民投票して憲法を元に戻して、
禁酒法を撤廃。つまり、禁酒は出来ない！家族の方に繰り返し、繰り返し僕は申し上げるのが、この既
成事実。
「禁酒は出来ない」
。それが原点。だから私は外来でやってる。禁酒させるつもりはない！その
次の年、１９３４年にボストンの株式仲買人のビルという人がクリスチャンの信徒集会の中で宣言した。
「私は酒を止めました」と。向こうに居れば解るんだけれども、向こうの人達はプロテスタントだろう
と、カトリックであろうと、とにかく日曜日。クリスチャンは日曜日。ユダヤ人も沢山いましたからね。
ユダヤ人は土曜日です。おかしいですねえ、現在のキリスト教の暦の土曜日がユダヤの神の安息日です。
キリスト教徒の作った暦ですからね。もっとおかしいのはイスラム教徒の神の安息日は現在の世界で通
用するキリスト教暦の金曜日なんです。ＴＶ見てるとイスラム教の金曜礼拝の人が街中に出て来るけれ
ども、現在のキリスト教暦の金曜日がイスラム教徒にとっては神の安息日なんです。その日は神の安息
日ですから人間も働いたらいかんのです。第一次大戦の後、アメリカには、ナチスによって迫害された
ユダヤ人が沢山入って来てね。一杯入ってきたユダヤ人は土曜日には働かないんですよ。土曜日は絶対
に働かないですね。神の安息日。だから。そこで、アメリカでは古くから土曜日や日曜日は神の安息日
や言うて休日にした。日本のように福祉や何とか言うて休日にしたのではなく、向こうは宗教的な理由
によって土日は休日。もし、イスラム教徒がもっと入って来たら金、土、日と３日間、連休ですね。そ
れだけのイスラム教徒は入ってません。ユダヤ教徒は沢山入ってます。少なくともニューヨーク全体の
１割５分はユダヤ教徒です。ユダヤ教徒と言いましたけど、ユダヤ人というのはねえ、実はないんです。
何故かと言うたら今から２０００年前に古代ローマ帝国がパレスチナの方にドンドン侵攻してローマの
宗教を押し付けた。でも、その時もユダヤ人は絶対にユダヤの信仰を捨てない。そこでローマはパレス
チナのユダヤ人を追放した。嫌やったらローマの国から出て行ってくれ。バラバラにした。バラバラに
出て行ったんで、デアスポラと言いますが、中近東へ行った人もいる。ヨーロッパ行った人もいる。そ
れからアフリカに行った人もいる。そうしたらそこの土地の人と混血しますね。だから、ユダヤ人てい
うのはユダヤ教の信仰を捨てなかった人達です。黒いユダヤ人もいます。中国系のユダヤ人もいる。ユ
ダヤ教の信者がユダヤ人です。だから、僕が最初にアメリカのユダヤ系の大学病院に行った時に連中は
僕がジャパニーズ・ジューやと思ったらしいんですね。それにしてはユダヤの勉強が足らんと思うて、
一生懸命教えてくれた。面白い事にユダヤもイスラムもそうですけれども、文字ね、英語だったら“Ａ、
Ｉ、Ｕ、Ｅ、Ｏ”と母音が付いてるでしょ。ユダヤ語もアラビア語も“Ａ、Ｉ、Ｕ、Ｅ、Ｏ”の文字が
無いんです。ＴＮＫこれはユダヤの聖書ですねえ、ＴＮＫと書いて「タナック」と発音する。そういう
事ですから、あの人達の聖者を勉強しようとしたら、それを読める坊さんの話を聞かないかん。
・・・ま
た、脱線ばっかりして申し訳ない。そういう中でですね、アメリカでは１９３４年、クリスチャンは、
朝、教会へ出て坊さんの話を聞いて、午後は信者たちの集会がある。そこで色々バザーをしたり、茶会
をしたり、日曜日は宗教の行事があるんですね。その信者達の集会の中で、ボストンの株式仲買人のビ
ルという人が「私は酒を止めました」
。と宣言したんです。そしたらキリスト教会がそれをサポートする
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組織を立ち上げた。それがＡ.Ａという組織であります。アルコーリックス・アノニマス（Alcoholics
Anonymous）
。そのレジメの２行目に書いてますねえ。１９３５年にアルコーリックス・アノニマスと
いうのを立ち上げました。アルコーリックスというのはアルコール依存症者という意味。アノニマス、
Ａは打消しですね。ノムは先程も言ったように古いラテン語で、英語ではネームになり、ドイツ語では
ナーメ、
「名前」という意味。名前の前のＡでノムを打ち消しているから「無名」
。NIH での私の上官の
ジョン・ポール・ベーダー（John Poul Bader）
。ジョンはギブン・ネーム(親の付けた名前)で、ベーダー
はファミリー・ネーム（家の名前）
。真ん中のポールこれがクリスチャン・ネーム。神の一族になるわけ
ですから、お互いがクリスチャン・ネームで付き合うというのがＡ．Ａのしきたりであります。ところ
が、そこの（Ｓｔｅｐ3）に書いている事は一番大事で。Made a decision to turn our will and our lives
我々の身も心も over to the care of God.神に、向こうは一神教ですからね。日本はやおよろず（八百万）
の神様ですから、捨てる神あれば神ありですので、日本の神はあまり怖くない。ですから、
「神かけて誓
う」というのは向こうでは有効だけれども。昭和２６年に東京の日本禁酒同盟がアメリカへ山室武甫（や
まむろぶほ）さんを送ってＡ．Ａの活動を調べて来たんです。それを持ち帰って２６年から２８年にか
けて禁酒同盟とキリスト教会と救世軍が協議して日本に合うようにしたものが断酒会。「東京断酒友の
会」であります。ですから、神に背く「罪」っていうものを抜いてしまったんですね。で、日本に合う
ように、これは初期の人がねえ教会の力を伸ばすとか何とかじゃなくて、因みにキリスト教では、神に
背く罪も、教会堂で「懺悔」すると許される、と言う信仰がありますので、AA ではキリスト教会堂で過
去の酒害を懺悔する集会を催します。これを日本に移入した時に「酒害体験談を語る」と言い換えたの
です。今思い出しましたが、初代全断連理事長の大野徹さんは、初めお目にかかった時、
「体験談を語る」
のを「酒害を懺悔する」とおっしゃっていました。そして、信者を増やすとかじゃなくて、とにかく酒
害者を一人でも多く救おうという熱意があったんですねえ。日本人に合うように、日本人には「恥」
「赤
信号皆で渡れば怖くない。
」という「恥」が大事だから、
「恥」で訴えたんですね！
私が患者さんを診察して酒害者の心理というものを調べますと、４９票の飲酒欲求と、４９票の断酒意
欲がある。身を置く環境次第の２票が浮動票。２０年止めても、３０年止めてもね、断酒会を離れると
絶対に飲んでしまいます！絶対に飲む！沢山の例があります！浮動票はたった２票なんです。その２票
がどっちの４９に行くかによって、５１対４９で断酒が継続できたり、最初の一杯に手を出したりする。
そういう恐ろしい事ですね！ですから、その２票の浮動票をですねえ、断酒の方に向けて貰うには断酒
会の例会の中の体験談で酒害を繰り返し、繰り返し語って貰って、間違っても最初の一杯に手を出さな
いようにする事が大事なんです。マイナスの体験も絶えず自覚して行動を変える反省で「教訓」となる。
反省というのはね、
「猿も反省する」とは違う。行動を変えないかん！前の行動を変えるという行動変容
によって、反省というものが実現されるわけですね。で、絶えず行動を変えるという事。それで、
「教訓」
になります。しかしながら、繰り返し、繰り返し再飲酒しておりますと、失敗の体験は災難に留まる。
ですから、教訓にするか、或いは災難にするか、それはその人の反省が有るか無いかに依存する。異見
もある。
「意見」では無く、出席者の「体験談」、体験談に始まり、体験談に終わる。この体験というの
は過去の事実です。その人しか知りません。ですから、自分にとっての体験っていうのは絶対的ですね
え。で絶対的やけど、他人の体験も自分の体験にすると断酒会は必ず宝の山です！
次に、Enabler ですねえ。酒害地獄の渦に巻き込まれた配偶者は社会学的位置を「親」に変えて家庭内
に留まる。配偶者がですよ。酒が配偶者になってしまうんですよ。それで配偶者は居る場が無いんです。
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それでどうするか言うたら離婚するか。親の席が空いてるんです。親になって家庭内に留まるか。酒害
者の家族は大抵、親になるわけです。親になれない７割の人は出て行ってしまう。残っているのは大体
３割でして、残っている人は皆、親になっている。親というものは、私も親ですからよう分かるんです
が、出来の悪い子ほど、可衷いので、困らない様にする過保護を生き甲斐にして親切な配偶者であると
自己満足する。英語で Enabler という。Enable というのは不可能を可能にするという事ですねえ。それ
をする人を Enabler というわけです。例えばどういう事をするか言うたら、飲んでいる時に泥酔者を引
き取って汚した衣服を取り換えたり、壊したものを片付けて、目が覚めた時にはこざっぱりして何も問
題が無いような状態。或いは出勤せないかんのに「風邪をひきました。」「お腹を壊しました。」
「田舎で
ちょっと不幸がありました。
」いうように嘘の欠勤の電話や。借金したところに行って平身低頭、謝った
り、肩代わりして弁済したり。事件の後始末をしたり。色々と尻拭いをする。病気や怪我をすると死な
ないように救急車呼んでやって、病院へ担ぎ込んだり、又、家族の人が一生懸命働いて家計を維持した
り。
「至上善」の飲酒にアフターサービスまで付けて安心して酒害者に酒を飲ませるわけです。そういう
事を Enabling という。反面、その妻なり夫なりの座を奪った酒を姑嫁的に憎悪するわけですねえ。何と
かして別れさせようとする。別れさせることを「禁酒」と言います。アメリカの歴史を振り返ってみる
必要があります。アメリカでは国民投票で憲法を変え、禁酒法を作ってＦＢＩの銃の力で禁酒しようと
したけど失敗したんです。アメリカで法律を変えて銃の力でも失敗した事を一介の家族が成功する筈が
ない。
「禁酒」は無理なんです。
「禁酒」は無理だという事を私は勉強して初めからやらない。だから、
外来だけなんですねえ。
「断酒会へ行きなさい」。
「断酒会へ行きなさい」。それを言っているだけです。
「僕
は全然力が無いよ。何もしてあげる事は無いよ。でも、あなたは断酒会に行って、皆と断酒仲間になっ
たら救われる」と教えてあげている。依存者の方は、酔いが覚めると、強烈な二日酔い。そういう身体
的泥沼と「又、失敗した」
「又、やっちゃった」という精神的な地獄で「どん底」に陥る。家族はここで、
「どん底」に陥って飲んでいない時に言うとかんと、素面の時に言うとかんと、
「ガンガンガン」言いま
すね。体がしんどくて、精神的にもまいっている時に、ギャンギャン言われると「一杯飲まんとやって
いけんわ」
。
「一杯飲まんとやっていけんわ」という状態になる。こういう事をひっくるめて飲酒に協力
する、不可能な事をを可能にすると言う。過保護というのは
自立心を奪って、無力で依存的な人間を作る事をサミュエ
ル・スマイルズという人が明治時代頃（１８９５年）に発表
した「自助論」という本に書いてます。逆に Enabler が反省
して、飲んだらもう一切過保護をしない。素面の時には、そ
この絵に描いてますように「
“口にチャック”して焦らないで
待つ」事が大切です。僕のある患者さんの家族が「先生」
「先
生」言うて、しょっちゅう来たんです。それで「そんなん言
うたらあかんやないの」
「そんなんしたらあかんで」と、繰り
返し、繰り返し家族に言うていた。丁度その時の診療介助に
ついていた看護助手の人がねえ、非常に絵の上手な人だった
ので、
「こんな風な絵を描いてえなあ。頼むわ。」言うたらこ
んな絵を描いてくれた。この絵は随分古いんですよ。コピー、
コピー、コピーして使っている絵です。
「口にチャック！焦ら
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ないで待つ」
。配偶者はしばしば子供を味方につけるんですねえ。子供を味方につけて、子供を盾にしま
す。そこまで行くと子供が両親に囚われてしまって、何とか家庭の崩壊を防ごうとする「大人のような
子供」
、それを「Adult Children：AC」と言います。Adult というのは大人という意味ですねえ。ここで
は形容詞にして、Children の形容詞です。略して AC になるんです。そういう子供は心理的に非常に無
理をしますから、無理をして親孝行する。無理をして優等生。私の患者さんの子供さんなど中学校の男
の子でしたが、もう学校始まって以来の優等生！超優秀な優等生と言われた子供がいました。そんなん
に誰もなりたくないんです。けど、家庭を守る為にそういう事をせざるを得ない状況になっていた。
Superkid（スーパーキッド）
。スーパーマンですね、スーパーマン。kid は英語で子供ですね。
ところがその子供が学校を卒業した頃にお父ちゃんがお酒を止めた。今度は極悪の劣等生になった。一
気に劣等生になった。もう服装は乱れるわ、学校に出て来やへんわ、学校では暴言暴力を振うわ、どう
しようもなかったですね。心身症、不登校、非行、学校暴力、薬物依存症等 Trouble-Maker になる。
Trouble-Maker もこっちの方に注意を引き付けてですね、問題の焦点をそらさせようとして、結局は全
員が自分を見失う。で、依存者の断酒で地獄の火が消えた後で大人になれない Childish Adult（チャイ
ルディシュアダルト）
。Childish は形容詞ですね。発達障碍者は社会性を欠如し自立困難。で、そういう
人は火が消えた後で不出勤、摂食障害、家庭内暴力、薬物依存、ギャンブル依存をやる。アルコールは
やらないですねえ。で、結局断酒の足を引っ張り、不全家庭を継代する。まあ、そういう事が、大ざっ
ぱなアルコール依存症の理解ですね。
山陰の断酒学校ではカレンダーを作っています。全部が全部良い文言とは言えません。でも、妥当な文
言を出したのが別紙ですね。まず「医者も家族も断酒会も酒害者を治すことはできない。」禁酒は出来な
いという事です。
「しかし、酒害者を治す唯一、一人の人がいる。それは酒害者その人である。
」断酒は
出来る。どうしたらいいかと言うと、カレンダーの５日のところ。「今日一日断酒に全力をつくそう。
」
１日断酒ですね。次に、２１日のカレンダー「酒を止めるだけなら断酒会はいらない。酒を止め続ける
ために断酒会が必要なのだ。
」止め続けな話にならんね。それでカレンダーの３日の「酒をやめることが
何故恥ずかしいのか。止められないことの方が本当は恥ずかしいのに」。日本人は“恥”がブレーキにな
りますね。
「赤信号皆で渡れば怖くない」
。
“恥”。皆と一緒にならなければ恥ずかしい。じゃあ周りが皆
飲んでると、飲む事が良くって、飲まないことが恥ずかしい。下に書いてあるように、
「酒席」には出な
い。どんな事があっても出ない。酒席では周りが飲んでいるのに私が飲まないのは恥ずかしい。しかし、
私は、
「僕は飲まないから」何かの祝賀会に行って乾杯する時も、
「僕飲まないから、水にしといてよ」
と言います。ウェイターもおかしな顔はしない。しかし、それが酒害者には出来へんのやねえ。飲まへ
んのは恥ずかしいと思っている。ですから、そういう所には行かんのが大事です！「酒をやめることが
何故恥ずかしいのか。止められないことの方が本当は恥ずかしいのに。」これが断酒会の価値観ですね。
例会出席、一日断酒、が唯一の価値です！紙を横に向けて下さい。左手に書いてある英文の文言の方は
アメリカのＡ．Ａの１２ステップのうちの大事な 1～３のステップ。Ａ．Ａは神に背くのが「罪」。日本
の八百万（やおよろず）の神々は皆、酒が好きですから、日本人にとっては断酒会しかない。後は一番
大事な体験談の時間です。いつもは最後までいるんですけど・・・。今日は先月から今月末まで、大阪
社会福祉研修所の「社会福祉指導主事」コースの非常勤講師として木曜日の１８：００～２１：００の
講義がありますのでＷｅｅｋ-ｄａｙは病院診療をしていますので、日曜日は講義の準備の為、これで失
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礼させて頂きます。どうも有難うございました。
（拍手）
自分を変える事（断酒）は可能
やる気を起こす／一日断酒
心を決める（心理学）
仲間と共に「喜び合う」／例会出席
酒害地獄（体験）のない「今」を
「身を置く環境」が
手を伸ばすと「届く目標」が
他人を変える事（禁酒は不可能
別紙
1. We adeitted we were powerless over alcoholThat our lives had become unmanageable.
2. Came to believe that a Power greater than ourSelves could restore us to sanity.
3. Made a decision to turn our will and our lives
Pver to the care of God as we understood Him.
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