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Twinkle:Tokyo Women`s Medical University

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Twinkle:Tokyo Women`s Medical University
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脳卒中の内科療法における最近の考え方と話題
内山, 真一郎
東京女子医科大学雑誌, 59(6):478-498, 1989
http://hdl.handle.net/10470/7039
Twinkle:Tokyo Women's Medical University - Information & Knowledge Database.
http://ir.twmu.ac.jp/dspace/
20
〔書整綾98第難元欝〕
総
説
脳卒中の内科療法における最近の考え方と話題
東京女子医科大学
脳神経センター神経内科(主任:丸山勝一教授)
ウチ ヤマ シン イチ
ロゥ
内 山 真 一 郎
(受付 平成元年3月6日)
Current Concepts and Topics in Medical Management of Stroke
Shinichiro UCHIYAMA
Department of Neurology(Director:Prof. Shoichi MARUYAMA), Neurological Institute,
Tokyo Women’s Medical College
成績を紹介しながら述べてみたい.
はじめに
急性期の治療2)∼5)
脳卒中は戦後,結核に代わり,30年間にわたっ
て我が国の死因の第1位を占めてきたが,昭和56
年に癌,昭和60年に心臓病に追い越され,第3位
1.Vital signのcheck
脳卒中患者が転送されてきたらまず最初に生命
に後退した(図1)1).これは食生活や生活環境の
維持に必要な脳心肺機能を把握するため,意識レ
変化などにより致死的な脳出血が急減したためで
ベル,血圧,脈拍,呼吸,瞳孔をcheckする.意
あり,死因としての脳梗塞の減少は窪くわずかで,
識レベルはJapan Coma Scale(3−3−9度)よ
高齢者人口の増加により脳梗塞の発生率はむしろ
りも国際的に通用するGlosgow Colna Scaleで
増加していると考えられる.したがって,今後の
表記することが望ましい.Vital signに何らかの
脳卒中対策は脳梗塞対策が主体となるべきであ
異常を認めた場合にはまず次のような治療を行な
る.また,近年,脳虚血の病態に関する生化学的,
う.
生理学的,病理学的,血液学的ならびに薬理学的
2.Primary careのABC
研究の進歩には目覚ましいものがある.このよう
1)Air way
な背景を踏まえ,虚血性脳血管障害の内科療法に
仰臥位で頚部伸展し,肩越をして,下顎を前上
おける最近の考え方と話題を中心に,本教室での
方に挙上する.舌根沈下,呼吸抑制のある患者で
は口腔内を清掃し,air wayを挿入する.嘔吐する
時は誤嚥を防ぐため麻痺側を上にした側臥位の
coma positionにする.
蕃50
2)Breathing
上記の処置で不充分と思われる場合には気管内
誓
1100
望・・
脳出血
脳梗塞
挿管を行なう.通常,意識障害のある患者では
PO2は70rnmHg以下に低下していることが多く,
脳浮腫を助長する要因となり,また脳組織の酸素
0
昭和3234363840424446485052545658
年
図1 脳卒中,脳出血,脳梗塞死亡率の年次推移(全
需要からも90mmHg以上に保つことが望ましい
のでこれを目安にまず2∼31/分の酸素吸入を行な
国男女計)
う.高齢者で気管支肺炎を合併したり,補助呼吸
資料:厚生省「人口動態総計」1)
が長期間に及ぶと考えられる場合には気管切開を
一478一
21
迂
意識障害患者では自発的経口摂取が不能であ
HDA*(十)一抗血栓療法は禁忌
り,脳圧充進による嘔気,日区吐が経口摂取を妨げ
《驚ll縷1
るため脱水状態に傾いているので輸液による是正
が必要となるが,過剰な輸液は脳浮腫を助長する
ので注意を要する.また,病変が視床下部に影響
を及ぼすと中枢性の水分・電解質異常を来しうる
*HDA=high derlsity area
図2 CTによる治療方針の決定
ことも念頭に入れておく.要は脳浮腫を助長する
ことなく,水分・電解質の必要量を補給すること
であり,1日輸液量は正常必要量よりやや少なめ
施行する.
にし,発作当日は電解質1号輸液(Na 65∼90
3) Circulation
mEq〃, K O∼2mEq/1, Cl 55∼77mEq/1,糖2.5%
意識障害患者では翼状針による点滴は不適当で
など)を開始液とし,1,000∼1,500mlを投与する.
あり,患者の体動による抜去や血管外への漏出を
2日目以降は維持輸液である3号輸液(Na 35
防ぐため静脈内留置針により確実に血管を確保
mEq〃, K 20mEq〃, C135mEq〃,糖4.3∼10%
し,三方括栓をつけて血腫可能な状態とする.
など)を1,500∼2,000ml投与するが,脳浮腫発生
3.緊急CT(図2)
の可能性のあるものでは2日目以降も1日
ここまでの救急処置を終了したら診断と治療方
1,000∼1,500m1に抑える.ただし,高浸透圧利尿
針決定のため頭部CTを施行する.頭蓋内に高吸
剤投与の際は脱水や電解質異常が生じうるので
収域を認めたら抗血栓療法は禁忌であり,梗塞に
1,500∼2,000mlは必要である.
水分の経口摂取不充分,発汗による不感蒸泄の
よる低吸収域は発症後早期には認め難いので,病
歴聴取により発症と経過(temporal pro負le)から
増加,高カロリー輸液(IVH)による脱水は高張
脳卒中と考えられたら,たとえ低吸収域が不明瞭
性脱水(高Na血症)を来し,浸透圧利尿薬や
SIADHによる脱水は低張性脱水(低Na血症)を
であっても高吸収域がなけれぽ虚血性脳卒中と考
え抗血栓療法の適応を考慮する.脳内に高吸収域
来す.意識障害を伴った脳卒中患者でしぼしぼ遭
を認めた場合外科的治療の適応を考慮するが,血
遇するSIADHではNa補給よりも水制限が必要
腫の部位と大きさ,意識レベル,神経症状,年齢,
である.この他,一般に輸液中には向神経性ビタ
他臓器合併症により決定される5)∼7).被殻出血,小
ミンであるビタミンB群(B1, B6, B12)とCDP
脳出血,皮質下出血は血腫量,意識障害,神経症
コリン(ニコリン⑪)やメクロフェノキサート(ル
状を勘案して脳外科医と協議の上適応を決定す
シドリール⑧)などの脳代謝賦活剤を入れて点滴
る.意識障害のない,小出血例は内科的保存療法
することが多いが,劇的な効果が期待できるもの
を行なう.視床出血や橋出血は解剖学的位置関係
ではない.
から手術侵襲が大きいため一般には開頭による血
6.栄養9)
腫除去術の適応はない.CTでクモ膜下出血が疑
意識障害患者では72時間後,腹部膨満なく,腸
われた場合には直ちに脳外科に転科させる.
管蠕動が良好なら経管栄養を開始する.製剤とし
4.経鼻胃管と尿道カテーテルの挿入
てはエレンタール⑪,クリニミール⑧,ベスビオソ
意識障害患者には入院時,経鼻胃管を挿入し,
⑧,ハイネックス⑪,サンエット⑧などがあるが,逆
吸引により胃内容物を排除し,口書気のある場合は
流を避けるため1回300mlまでとし,浸透圧利尿
メトクロバミド(プリンペラソ⑭)を静注する.ま
や下痢を避けるため低脂肪低蛋白のものがよく,
た,同時に尿道カテーテルを挿入し,陰部の汚染
1kca1/mlになるように調整し,開始にあたっては
を防止し,検尿や尿量モニターに備える.
1/4∼1/2濃度より,下痢・亟吐・高血糖のないこ
5.輸液4)8)
とを確かめながら1日毎に濃度を上げていく.
一479一
22
溶液400∼800ml/日で,1回200m1を1∼2時間
口区吐,下痢,消化管疾患のため経管栄養ができ
ない場合には高カロリー輸液(IVH)を行なう.
かけて点滴静注する.大量投与時には電解質の不
製剤としてはパレメγタールA,B⑭,ハイカリッ
均衡と脱水に注意する.
ク⑧などがある.糖濃度を10→15→20%と各濃度
脳浮腫が発生すると種々の脳ヘルニアを生じう
最低1日以上続け,高血糖,電解質異常のないこ
るが,このうちcingulate herniation lま生命には
とを確かめながら段階的に上げてゆく.成人の投
直接影…響せず,tonsilar herniationは致命的であ
与基準量は1日当たり水分40∼50m1/kg,カロ
り,critical careの対象として最も重要なものは
uncal herniationである. Plumら15)は意識がstu−
リー40∼50kca1/kg,アミノ酸1∼2g/kg, Na 3∼4
mEq/kg,α3∼4mEq/kg, K 1∼2mEq/kg, Ca,
porからsemicomaで,動眼神経圧迫による病側
Mg, P各々0.5∼1mEq/kg程度と考えられてい
の瞳孔散大はあるが対席反射と痛覚に対する反応
は残存しているearly uncal herniationと, coma
る.
で完全な瞳孔散大と対光反射消失があり,除脳硬
7.脳浮腫対策10)∼12).
脳血管障害に伴う病態で,予後に重大な影響を
直,中枢性過呼吸が出現するlate uncal hernia−
与えるものに脳浮腫があり,意識障害を伴う脳卒
tionを区別している.このうち1ate herniationは
中患者では必発であると考えた方がよい.
まず救命不能であり,critical careの対象となる
虚血性脳卒中では初期に細胞障害性浮腫
のはearly herniationで,この場合,即効性があ
(cytotoxic edema)をきたし,やがて血管障害性
り,強力な抗浮腫作用を有するマンニトールの適
浮腫(vasogenic edema)に移行するといわれて
応となる16).投与法は20%液1回5∼15ml/kgを
いる13).脳室穿破を伴う脳出血やクモ膜下出血で
100ml/3∼10分で点滴静注し,1日1,000mlまで
は間質性浮腫(interstitial edema)も生じる.脳
とする.あるいは,同じく利尿作用があり,髄液
卒中ではこのような種々の脳浮腫が生じるので病
産生抑制作用も有するフロセミド(ラシックス⑧)
型に関係なく抗浮腫薬を用いることが脳ヘルニア
とのカクテル療法を試みる.これは,マンニトー
予防のため重要である.脳出血では発症直後より
ル60mlとうシックス40mlから成る!00ml混合液
脳圧が充進ずるが,脳梗塞では発症3∼5日後に
を5ml/時間(最高10ml/時間)で持続点滴するもの
脳圧が最:高となる.一般に脳卒中による高度の脳
である.マンニトールは,グリセロールに比し,
浮腫は2週間で消退するため脳浮腫治療は発症後
急速な利尿効果があり,神経症状も急速に変化し
2週間以内の急性例が対象となる.
うるので,経時的に尿量,意識,瞳孔,呼吸を観
1)浸透圧利尿薬(高張液療法)
察して適宜増減し,短時間のみ使用してtapering
現在,この目的に使用されている浸透圧利尿薬
するが,グリセロールと異なり脳組織に移行した
はグリセロールとマソニトールである.グリセ
ロールは我が国で5%フルクトースの混合により
後代謝されないためreboundが生じやすいこと
に注意し,taperingは徐々に行なうか,グリセ
溶血(ヘモグロビン尿)を防ぐなど改良され臨床
ロールに変更してゆく.マソニトールの使用にあ
的に広く用いられている.グリセロールは脳組織
たっては急激な利尿による脱水,電解質異常,心・
で代謝され,エネルギーとして利用されるので脳
腎機能障害に充分な注意を払う必要がある.
組織中と血中の浸透圧差の逆転による反跳現象が
2)副腎皮質ステロイド
生じにくい.また,血漿増量と.血液粘度改善によ
ステロイドは脳腫瘍に対する脳浮腫には極めて
る脳血流増加も期待できる.欧米ではこれまでグ
有効であるが,虚1血性脳浮腫に対しては効果が期
リセロールが予後を改善したという報告がなく,
待しにくく17),現在余り用いられていない.特に,
殆んど用いられていなかったが,最近,多施設共
消化管出血,感染症,糖尿病がある場合にはこれ
同研究が行なわれ,脳梗塞急性例で有意な救命効
らを悪化させる危険性があるので用いない方がよ
果を認めたとの報告がなされた瑚.投与法は10%
いエ8).用いるとすれぽデキサメサゾソかベータメ
一480一
23
臨床治験が開始されている.
サゾンを初回10∼12mg静注し,以後2∼8mgを3
8.血液希釈療法26)
∼6時間毎に筋注(または静注)し,1∼2日毎
に半量ずつに減量してtaperingする. Tapering
急性期脳梗塞患者ではヘマトクリット(Ht)が
に要する期間は重症度,臨床経過,合併症により
上昇しているため,血液粘度の上昇していること
考慮するが,10日間以上は漫然と使用するべきで
が多い27).血液粘度上昇は脳血流量を減少させ,脳
はない.
虚血を増悪させる.それを是正するための治療法
3)抗酸化薬free radical scavellger
が血液希釈療法で,これには潟血と血漿代用薬の
虚血性細胞障害の原因として活性酸素(free
投与がある28).我が国では三門療法は一般化して
radical)による膜障害が注目されている19).これ
いないが,血漿代用薬の投与はよく行なわれてい
に対し,各種の抗酸化薬がfree radicalを補足す
る.希釈には通常低分子デキストランを用いるが,
ることが知られている.グリセロール,マンニトー
ヒドロオキシエチル澱粉(ヘスパンダー⑧)も用い
ル,ステロイドにもこの作用があることが知られ
られる.いずれも1回500mlを点滴静注する.低分
ているが,その他にビタミンE20), barbiturate19),
子デキストランには赤血球や血小板の凝集抑制作
superoxide dismutaseL1), naloxone21)などが報告
用もあることが知られている.血液の希釈により
されている.Suzukiら20)はビタミンE,デキサメ
脳血流が増加しても動脈血酸素(ヘモグロビン)
サゾン,マンニトール(例えば各々800mg,16mg,
含量も減少すれぽ脳酸素供給量(=脳血流量×動
300ml×2/日)から成る仙台カクテルを推奨して
脈血酸素含量)は必ずしも増加しないので,これ
いる.
を最大にする最適のHtが問題となり,40∼45%
4)カルシウム拮抗薬22)
が推奨されている.しかしながら,血液希釈療法
フルナリジン,ニフェジピン,ニカルジピン,
の有効性については否定的な報告29)もあり,まだ
ニモジピソはCa23>の細胞内流入を阻止し,ミトコ
評価は定まっていない.
ンドリア呼吸障害を予防し,抗低酸素作用,細胞
9.抗血栓療法(図3)
膜保護作用,抗血管玉縮作用を有することが報告
Temporal pro丘leから脳卒中が疑われ,頭部
されている.このうちフルナリジンはベントバル
CTで頭蓋内に高吸収域を認めなかった場合には
ビタール,ニゾフェノン,ジアゼパム,フェニト
脳梗塞とみなし抗血栓療法の適応を考える.抗血
イン,グルタメート拮抗剤とともに脳血流再開後
栓療法には抗血小板療法,抗凝固療法,血栓溶解
の遅発性神経細胞壊死(delayed neuronal
療法があるが,抗血小板療法は慢性期に再発予防
death)24)を阻止することが報告されている25).し
のために行われる治療法であり,急性期に行なわ
かしながら,Ca拮抗薬には血圧降下作用があり,
steal現象を惹起するとの報告もあるので,急性期
損傷血管への血小板の粘着
}
に抗浮腫薬として使用するには今後更に検討が必
抗血小板療法
要であろう.
血小板の凝集(白色血栓)
5)アラキドン酸カスケード阻害薬23)
十
アラキドン酸カスケードから産生される
抗凝固療法
thromboxane A2(TXA2), leukotrien C4・D4は
フィブリン形成(赤色血栓)
強力な血管作動性物質であり,血管収縮,血管透
血栓溶解療法
過性西進を惹起し,脳微小循環や脳代謝を障害す
るとともに脳浮腫の進展,増悪をもたらす.これ
フィブリン溶解
を阻止するため各種TXA2合成酵素阻害薬,
cyclooxygenase阻害薬,5−lipoxygenase阻害薬
×阻止 ○促進
などの投与が考えられ,一部の薬剤は我が国でも
一481一
図3 抗血栓療法の種類
24
れるのは抗凝固療法と血栓溶解療法である.
Case 61F(88・2345)
1)抗凝固療法
臨agnosis:Cerebral embolism
Mitral StenOSiS a日d regUrgitatiOn
Atrial fibrillation
脳血栓症に特徴的とされる進行性脳卒中(pro−
gressing stroke)には抗凝固療法の適応がある30).
Therapy;Warfarin+Ticlopidine 100mg
抗凝血薬としてはheparinを用い,補液(例えば
Platelet lvsis:7.7%→3.6%
5%ぶどう糖液)500m1に混合し,持続注入装置を
Platelet survival:5.6 daVs→6.6daΨs
用いて1日1万単位前後から開始し,部分トロン
Platelet imagi胸g with l盲lln tropolone
ボプラスチン時間(APTT)で1.5∼2倍にコント
ロールするように投与量を増減する.出血合併症
が生じたら直ちに投与を中止する.大量出血時に
毒 ▲
は硫酸プロタミソで中和する.投与目標は,7∼10
日までとし,以後ワーファリン,抗血小板薬へと
切り換えていく.最近,ヘパリン誘発血小板減少
症を生じにくい低分子ヘパリンの皮下注療法が注
Post
Pre
目されている.また,抗トロンビン薬(MD・805)
CT with contrast e哺aocement
も開発され,臨床治験が行なわれている.
脳塞栓症では出血性梗塞を生じる危険性がある
、
ので抗血栓療法の適応から除外した方がよいとい
う考えが日本では根強いが,一方脳塞栓症は発症
直後程再発頻度が高い(発症後2週以内10∼20%)
ので,再発予防のためには発症早期より抗凝固療
Pre
法を開始すべきであるとする考えが米国にあ
図4 心源性脳塞栓症例における心腔内血栓の抽出と
抗血栓療法の効果
Ul In血小板標識法により左房にhot spotが描出さ
る31).しかし,早期治療を行なう場合でも,発症後
48時間にCTで出血性梗塞を生じていないことを
れ,胸部enhanced CTによりこれがcold spotとし
て左心耳にあることが確認されたが,ワーファリン
とチクロピジンの併用療法後血栓は消失し,血小板
融解率は減少し,血小板寿命も軽度延長した.
確認してから開始することや,大梗塞例や高血圧
合併例は避けるという条件を指摘しているものが
多い32)陶35).また,胸部enhanced CT,心エコー,
111
Post
Pn標識血小板シンチなどで心腔内血栓が確認
されたら,直ちに抗凝固療法を開始すべきである
ジレンマがある.しかしながら,発症後6時間以
(図4).また,TIAのうち発作が多発し(multiple
内のいわゆるgolden timeに10∼25万IUのウロ
TIA),発作間隔が短くなり,発作の持続時間が長
キナーゼかストレプトキナーゼを動脈カテーテル
くなる症例(increasing TIA, crescend TIA)は
から血栓閉塞部位に直接注入すれぽ有効であろう
切迫梗塞(impending stroke)として緊急入院さ
という37).
従来の血栓溶解薬に対し,tissue plasminogen
せ,heparinの持続注入療法を行なった方がよい.
activator(t−PA)やprourokinase(pro−UK)は
2)血栓溶解療法(図5)36)37)
古典的な血栓溶解薬としてはストレプトキナー
フィブリン親和性が高く,血栓形成部位に直接作
ゼ,ウロキナーゼ,プラスミンがあり,それぞれ
用し,全身線溶に影響を及ぼしにくいので,強力
米国,日本,欧州でよく用いられてきたが,これ
な血栓溶解作用を有し,出血合併症を生じにくい
らの経静脈投与による有効性には特に欧米におい
といわれ,現在種々の製剤の臨床治験が盛んに行
て否定的意見が多く,少量では血栓溶解作用が発
なわれている.
血栓溶解療法を行なう場合にはCTで出血がな
揮されず,多量では出血合併症が増大するという
一482一
25
極度の高血圧も血管の過剰伸展による脳血流の異
(循環血液中)
P19
β(血栓上)
常増加(break−through現象)41)をもたらし,脳圧
畦講論
を充進させ,脳浮腫を助長する42).一般的には,収
撫職
縮期圧200mlnHg,拡張期圧110mmHg以上の場
A:UKの血栓溶解メカニズム
0.1∼0.5mg筋注,ヒドララジン(アプレゾリン⑪)
循環血液中
合にのみ降圧療法を行なうべきであるとする意見
が多い42).
降圧薬としては,レセルピン(アポプロン⑧)
20mg静注,ニフェジピン(アダラート⑧)10mgカ
聯
匹血栓上
プセルのchewing(かみくだき舌下)か,中味の
{
t−PA
コ
浜:2
r
胃管からの内服,ニトログリセリン(ミリスロー
』i
ル⑪)0.5∼5mg/kg/分の微量点滴を高血圧の程度
遷
話 こ曳遍.
Pro−UK
に応じて施行する.
2)感染症
{
意識障害を伴った脳卒中患者に呼吸器,尿路感
FDP
染症は必発なので,予め予防的に広域スペクトラ
ムのペニシリン系,セフェム系抗生物質を2g前後
B:しPAあるいはP−UKによる血栓溶解メカニズム
経静脈的に投与する.脳卒中患者では脳圧充進に
図5 血栓溶解薬の作用機序
松尾理36)より
よるロ区吐や球麻痺,仮性球麻痺による嚥下障害の
ため誤嚥を生じやすいが,嚥下性肺炎が疑われる
場合には嫌気性菌を念頭に置いて抗生剤を選択す
いことを確認することが大前提となる.また,脳
る.また,神経因性膀胱や尿道カテーテル,褥瘡
塞栓症は適応から除外される.脳血栓症の中でも
による汚染のためグラム陰性菌尿路感染症を併発
進行性脳卒中が最もよい適応と考えられる,
しやすい.滋雨,咽頭,中間尿培養の感受性テス
10.合併症対策
トの結果により抗生物質は適宜変更する.膀胱洗
意識障害を伴う脳卒中患者では種々の合併症を
浄は頻回に施行し,尿道カテーテルは定期的に交
生じて状態が悪化するので,これらに対する治療
換する.
3)消化管潰瘍
の成否が患者の予後を大きく左右する.「
意識障害のある脳卒中患者では大多数で胃十二
1)高血圧
指腸にストレス潰瘍(Cushing潰瘍)43)を生じると
脳出血5)6)や特にクモ膜下出血38)では急性期の
血圧管理は厳密に行なう必要があるが,脳梗塞で
いわれているので最初から予防的に抗潰瘍薬を投
は発症後2週以内では特に血圧に対する脳の自動
与する.治療法は日米共通で,マーロックス⑪(水
調節能(autoregulation)が障害されていることが
酸化アルミニウムゲル,水酸化マグネシウム配合)
多いので,過度の降圧は脳の潅流圧を低下せしめ,
を胃管より1回4∼8ml,1日4∼6回投与すると
脳血流を減少させるので避けるべきである39).虚
ともにヒスタミンH2拮抗薬(タガメヅト⑪,ザン
血周辺部では可逆的脳障害部位が存在し,虚血半
タック⑭,ガスター③)の常用量を経管的または経
影(ischemic penumbra)40)と呼ばれるが,降圧薬
静脈的に投与する.便潜血は毎回必ずチェックし,
によるこの部の潅流圧の低下は梗塞巣の拡大を招
血色素の低下や尿素窒素の上昇に注意を払う.
来する.脳梗塞急性期の血圧上昇は生体の代償機
4)痙李
転という面もあり,脳血流を増加させるため昇圧
脳卒中における痒変の合併頻度は病型によって
療法が試みられることさえある.しかしながら,
差があり,脳梗塞では10%前後との報告が多く,
一483一
26
意識障害を伴った脳卒中患者では一般に血糖値
それほど頻度の高い合併症ではないが,合併した
場合には脳虚血や脳浮腫を増悪させ,予後に重大
が上昇しやすいが,これは生体のcrisisに対する
な悪影響を及ぼすので,その治療は臨床上重要で
一種の代償機転であり,グルコースは脳組織に
ある44).脳梗塞の中でも前頭葉をはじめとする大
とって殆んど唯一のエネルギー源であることを考
脳皮質を巻き込む脳塞栓症では頻度が高く,40%
えれば安易に血糖降下をはかるべきではない.し
以上に合併するとの報告もある44).
かしながら,本来,顕在性,潜在性の糖尿病のあ
る患老では脳卒中発症後著しい高血糖を呈し,こ
脳卒中に合併する1茎李には脳卒中発症後2週以
内に生じるinitial seizureとそれ以後に生じる
れが血管内凝固を促進し,感染症を増悪させる危
1ate seizureとがある. Initial seizureには通常の
険性があるのでインシュリン療法の適応がある.
抗痙李薬が効きにくく,その代わりジアゼパム(セ
ただし,低血糖は脳卒中の予後を極めて悪くする
ルシン⑪)が有効である.まず,ジアゼパム5∼10
ので血糖値の降下は200mg/dlまでを目安にす
mgを呼吸抑制に注意しながら,ゆっくり静注し,
る.
不充分なら1時間後に更に10mgを追加する.痙
重症脳卒中患者では高浸透圧性高血糖性非ケト
変重積状態にはジアゼパム40∼601ngの原液を微
ン性糖尿病性昏睡(hyperosmolar hyperglycemic
量点滴する.これが無効ならリドカイン(キシロ
nonketotic diabetic coma)が発生しうることに
カイン⑭)50mgを血圧低下に注意しながら2分以
注意する.この病態ではしぼしぼ局所的な神経症
上かけて静注し,有効なら4mg/kg/時で持続点滴
状を呈するので脳卒中発作と問違えられ,診断を
する45).これでも無効な症例は極めて予後不良で
誤まると予後に重大な影響を及ぼす46).治療はま
あるが,完全呼吸管理下にチオペンタール(ラボ
ず脱水に対して低張輸液を投与し,血清Naを130
ナール⑪)やベントバルビタール(ネンブタール⑪)
mEq/1以下に下げ,高血糖に対して速効性インス
などの全身麻酔薬を投与する.
リンを投与し血糖値を300mg以下にする8).
これに対し,late seizureには通常の抗痙奪薬
慢性期の治療
が有効であり,大発作や部分てんかんにはフェニ
1.基本的考え方
トイン(アレビアチン⑧)が且rst choiceであり,
脳血管障害患者では血管支配領域の脳組織が損
125∼250mgを血圧低下に注意しながら静注し,
傷するため急性期を脱しても種々の後遺症を残
予防には胃管より0.2∼0.3gを分3で投与する。
す.これらの後遺症による自,他覚症状の治療に
肝障害でフェニトイソが投与できない時はフェノ
は基礎にある脳循環・代謝の低下に対して脳循環
バルビタール(フェノバール⑧)50∼200mgを1日
代謝改善薬を投与し,それでコントロールできな
1∼2回皮下または筋注し,予防には胃管より
い症状に対しては更に対症療法的薬剤を必要に応
0.1∼0.2gを分3で投与する.また,長期投与には
じて追加するのが原則となる.また,再発予防の
副作用の少ないバルプロ酸(デパケン⑧)
400∼1,200mgを分2または分3で経管または経
ためには危険因子のコントロールとともに血栓の
発生を阻止する抗血栓療法も行なう必要がある.
口投与する.側頭葉てんかんにはカルバマゼピン
このような考え方に基づき,著者はまず原則と
(チグレトール⑭)300∼600mg/日,分3の内服,
して3種類の薬剤を基本薬として投与することに
ミオクローヌスにはクロナゼパム(リボトリール
している.すなわち,脳1血管拡張薬と脳代謝賦活
⑧)1∼2mg/日,分2または分3で静注または内服
薬を1種類ずつ選択して投与し,これらに再発予
する.これらの薬剤は再発の有無,脳波,血中濃
防のため抗血小板薬または抗凝血薬を1種類併用
度をみながら至適量を決め,発作が消失してから
する.これらは単独で効果が不充分なときは,も
3年経過したら,再発の有無と脳波をみながら慎
う1種類他心を併用するか,他剤に切り換える,
重にtaperingしていく.
5)糖尿病
これらの基本的投与薬でコントロールがでぎない
症候に対しては対症療法として個々の症状に対す
一484一
27
み拡張させ,脳内盗血現象(intracerebral steaI
る薬剤を併用する.
phenomenon)を惹起して虚血巣は一層虚血に陥
2.脳循環代謝改善薬
脳循環改善薬は以前は脳血管拡張薬と呼ばれた
る可能性があるので好ましくないとの意見が多
が,最近開発された薬剤には脳血管拡張作用の他
い47).一方,これらの現象は塞栓症や中∼大血管の
に血小板凝集抑制作用,赤血球変形能改善作用,
粥状硬化に基づく皮質枝型の中等大∼大梗塞例に
赤血球凝集抑制作用,血液粘度低下作用,脳虚血
みられるが,穿通頭型の小梗塞には生じないので,
保護作用,赤血球酸素解離増加作用などを併せも
lacunar infarctによるminor strokeには発症直
つとされている薬剤が多く,これらの総合作用に
後より用いてよいとする意見もある51).
脳梗塞も発症後3週間を過ぎるとluxury per−
よって脳循環を改善するという意味で,脳循環改
fusionも消失し,脳組織も安定してくる.この時
善薬と呼ばれるようになった47)48).
脳代謝改善薬は脳代謝賦活薬とも呼ばれる.脳
期における脳血管拡張薬投与の目的は,梗塞巣周
循環と脳代謝との間には密接な関係があり,脳循
辺の脳血流は減少しているが脳代謝は保たれてい
環の減少は脳代謝を低下させ,脳代謝の低下は脳
る可逆的部位(ischemic penumbra)40),側副血行
楯環を減少させる.したがって,脳循環改善薬は
路,慢性低潅流状態(chronic low perfusion
二次的に脳代謝を改善し,脳代謝賦活薬も二次的
state), misery perfusion(血液供給量が組織代謝
に脳循環を改善するので,これらを一括して脳循
量に比べ異常に低下した状態)52),diaschisis(梗塞
環代謝改善薬と呼ばれるようになった.しかし,
部から遠隔部位における血流代謝異常)53)におけ
一次的な脳.血管拡張作用と脳代謝賦活作用により
る脳循環の改善にある.
分類して投与時期や適応を考えた方が合理的であ
脳循環改善薬の脳血管障害後遺症に対する効果
る49).これらの薬剤は重篤な副作用が少なく長期
は自覚症状の改善率が特に高いのが特徴といわれ
連用が可能であるが,効果発現には4週間以上要
することが少なくなく,これ以上投与しても効果
ており,自覚症状70%前後,精神症状40∼60%,
がみられない場合には重縫を併用するか,他剤に
の改善率を示すことが多い54)。ただし,偽薬でも自
変更する.
覚症状51%,精神症状41%,神経症状32%の改善
日常生活動作(ADL)30∼40%,神経症状20∼30%
1)脳循環改善薬
率を示すとの報告もあり55),有意ではあるにせよ,
脳血管拡張薬は脳血管障害発症後3週間以上経
placebo効果と自然経過がかなり含まれているこ
過してから投与した方がよいとする意見が多い.
とを念頭に置く必要がある.これらの薬剤の有効
脳梗塞急性期には病巣部の血流が増加し,反応性
性については臨床評価だけでなく今後positron
充血(reactive hyperemia)の状態を示す場合が
emission tomography(PET), single photon
あり,これは虚1血による代謝障害に起因した血管
emission computerized tomography(SPECT),
運動神経麻痺(vasomotor paralysis)が生じ,血
Xe CTなどを用いた脳循環代謝の客観的な評価
管の自動調節能(autoregulation)が失われるた
が必要であろう.
め,血管の再開通や側副血行を介した血液流入が
脳血管拡張薬は大別して平滑筋を直接弛緩する
生じた際に組織の需要を越えて血流が増加するも
薬剤と交感神経α,β受容体に作用する薬剤に分
ので,ぜいたく潅流症候群(luxury perfusion
類される(表1)47)48)51)56).平滑筋弛緩薬の代表は
syndrome)と呼ばれる50).過剰に供給された酸素
パパペリンであり,この他にニコチン酸製剤やキ
は活性酸素となり,強力な酸化作用を発揮して過
サンチン誘導体などがあるが,最近頻用されてい
酸化脂質やfree radicalを発生し,組織障害を引
るものにカルシウム拮抗薬がある.カルシウム拮
ぎ起こす47).したがって,急性期に脳血管拡張薬を
抗薬は降圧作用もあり,特にニフェジピン(アダ
投与すると,このような現象を助長する危険性が
ラート⑪)はこの作用が強いので高血圧を伴った
ある.また,逆に脳血管拡張薬は健常部の血管の
患者によく使われるが,急速に血圧を下げすぎて
一485一
28
脳代謝賦活薬の作用機序は多岐にわたってい
表1 脳血管拡張薬の種類
る.生化学的には脳酸素消費量の増加,脳内ぶど
1.血管平滑筋弛緩薬
1)ニコチン酸誘導体
う糖利用の増加,ミトコンドリア機能促進とエネ
αトコフェロール(ユベラニコチネート)
ルギー産生系の賦活,神経伝達物質(ドーパミン,
酒石酸ニコチニックアルコール(ロニコールタイムス
パン)
口曳トニン,ノルアドレナリソ,アセチルコリン,
2)パパベリソ用作用薬
グルタミン酸など)の増加などであり,生理学的・
塩酸パパペリン
行動学的には脳幹網様体の賦活,脳波,各種誘発
シクランデレート(カピラン)
フマル酸ペンシクラソ(ハリドール)
マレイン酸シネパジド(プレンディール)
電位や学習能の改善などが挙げられる47)∼49).脳代
謝賦活薬の薬効の特徴は精神症状に対する改善率
壇:酸ジラゼブ(コメリアン)
の高いことであり,脳循環改善薬が40∼50%前後
3)キサンチン誘導体
であるのに対し,50∼70%の改善がみられる49)54).
ペントキシフィリン(トレソタール)
4)カルシウム拮抗薬
精神症状の中でも特に改善率の高いのは自発性低
塩酸ニカルジピソ(ペルジピン)
トラジロール(ロコルナール)
塩酸フルナリジソ(フルナール)
フマル酸プロビンカミン(サブロミン)
下と情緒障害であり,知的機能に対しては十分と
いえないのが現状である.すなわち,自発性低下
と情緒障害を主体とする精神症状のある患者は脳
5)キニン系製剤
カルジノゲナーービ(カルナクリン)
代謝賦活薬の最もよい適応であるといえる.これ
6)ビンカアルカロイド
に対し,高度知呆例には効果が期待できない.
ビソポセチソ(カラン)
ジヒドロヒルゴトキシン(ヒデルギソ⑭)は緩和
2,交感神経作用薬
1)α受容体抑制薬
な降圧作用があるので,軽症の高血圧を合併して
酒石酸イフェンプロジル(セロクラール)
メシル酸ジヒドロエルゴトキシン(ヒデルギン)
ニセルゴリン(サアミオン)
いる症例に適している.1日3mgよりも6mgの
方が明瞭な効果を期待できる49).ホパンテン酸(ホ
2)β受容体興奮薬
パテ⑪)は治験薬の二重盲検で標準薬として用い
塩酸イソクスプリン(ズファジラン)
られており,代表的な脳代謝賦活薬であるが,面
立のある患者ではそれを誘発する恐れがあるので
脳血流低下(めまい,ふらつき)や腎血流低下(尿
避けるべきであるし,食事摂取・栄養状態不良の
量減少,体重増加,浮腫)を来さないよう注意が
患者,衰弱している患者,食欲不振・悪心・嘔吐,
必要である.その点ニカルジピン(ペルジピン⑧)
肝・腎・肺機能障害,糖代謝異常のある患者では
は降圧作用が穏やかで,脳血流増加作用のあるこ
代謝性脳症や低血糖を生じたという報告があるの
とが証明されており,使用しやすい.フルナリジ
で適応から除外した方がよい49)56).アマンタジン
ン(フルナール⑭)は1日1回の投与で済む利点が
は従来抗パーキンソン薬として用いられてきた
あり,特に頭痛に有効である57)が,振戦などの錐体
が,時に自発性低下に著効を示す症例があり,即
外路症状の出現に注意する必要がある.交感神経
効性に特徴がある49)56>.ただし易興奮性や幻覚な
作用薬にはα受容体抑制薬とβ受容体刺激薬と
どの精神症状を呈することがあるので,漫然と投
があるが,前芸に属するイフェンプロジール(セ
与するべきではな:く,無効なら2週間前後で中止
ロクラール⑪)は脳循環改善薬の新薬の治験に対
する.
照薬として用いられる標準的な薬剤である.最近
最近発売された主な脳代謝賦活薬および脳機能
発売されたニセルゴリソ(サアミオン⑪)もα受容
改善薬を表2に示す.このうちビソポセチン(ア
体抑制薬である.パパペリン様作用薬の中ではシ
バン⑭)は精神活動低下に著効例がある一方,興奮
ネパジド(ブレンディール⑪)はうつや不安に,ジ
性の精神症状を惹起する場合が稀にあり,チアプ
ラゼップ(コメリアン⑪)は痴呆に改善率が高い.
リド(グラマリール⑧)は逆に刺激性の精神症状や
2)脳代謝賦活薬
問題行動に改善率が高い.このような相違はそれ
一486一
29
表2 最近発売された脳代謝賦活薬・脳機能改善薬
一般名
イデベノン
商品名
アバソ
用 量
ビフェメラン
インデロキサジソ
リスリ ド
チアプリド
セレポート
エレン
オイナール
グラマリール
0.075mg,分3
75∼150mg,分3
Aルナート
mイソ
法
90mg,分3
150mg,分3
60mg,分3
主な作用
ミトコンドリアの
神経終末でのアセチル
Rリン,ノルアドレナ
潟唐フ合成促進と再取
闕桙ン阻害
シナプトゾームへのセ
鴻gニン,ノルアドレ
p
@
序
臨床効果の特徴
`TP産生促進
痴呆例,症状固定例に有効
副作用
iリン,ドパミンの取
闕桙ンを阻害し,脳内
ワ量を増加
ドパミンおよびセロト
jン受容体刺激
夜間せん妄,睡眠障害にも効果
無気力,無関心の改善
多動,痙享
不安,興奮,田田
不安,興奮,操状態
抗うつ作用
興奮夜間せん妄,
s眠
ドパミンD,受容体
j害
問題行動,昼夜逆転ジスキネジアの改善
錐体外路症状,悪性症
群
それの薬剤の薬理作用から推測できるところであ
2または分3,ウィンタミンは25∼100mgを分3
り,患者の病態に応じて使い分ける必要がある.
または分4で経口投与するが,症状が高度で緊急
3.対症療法
を要する時はセレネース1回1A(0.5%1ml)ま
1)精神症状
たはウィンタミン1回10∼50mg相当量を筋注ま
脳血管障害慢性期にみられる種々の精神症状は
たは静注する.これらの薬剤は攻撃性,俳徊,幻
脳血流,脳代謝の低下を基盤に発症する器質性精
覚などの問題行動にも有効であるが,長期連用す
神病(organic psychosis)なので,まず脳循環代
ると錐体外路症状が出現したり,パーキンソニズ
謝改善薬を投与し,しかるのちにコントロール不
ムを増悪させる可能性があるので,症状が軽快し
能の個々の症状に対して対症的に向精神薬を併用
たらなるべく早期に減量,中止する.
不安,緊張,焦燥などの情緒障害に対してはセ
する.
うつ状態に対しては従来三環系抗うつ薬が用い
レネースやウィンタミンよりもスルピリド(ドグ
られてきたが,抗コリン作用による口渇,便秘,
マテール⑪)やチアプリド(グラマリール⑬)の方
ふらつき,眠気などが出現しやすかった.最近,
が有効であり6。),しかもこれらの薬剤は慢性期脳
抗コリン作用の少ない第2世代の抗うつ薬が開発
卒中患者によくみられる各種のdyskinesiaに対
されたので,高齢の脳卒中患者に用いやすくなっ
しても効果がある.
た58).薬剤としてはアモキサピン(アモキサン⑭)
(25∼75mg),ドレスピン(プロチアデン⑭)
不眠に対してはminor tranquilizerや眠剤を投
与するが,慢性期脳卒中患者では持ち越し効果に
(50∼100mg),マプロチリン(ルジオミール⑪)
より昼間の精神活動低下が増悪しやすいので,な
(20∼75mg),ミアンセリン(テトラミド⑪)
るべくshort actingの眠剤を用いる61).半減期の
(10∼30mg)などがある.
短いトリアゾラム(ハルシオン⑯)(0.25∼0.5mg)
夜間ぜん妄は家族を悩ませる頻度の高い精神症
やエスタゾラム(ユーロジン⑪)(1∼4mg)が入眠
状であるが,ジアゼパム(セルシン⑪)などのべン
剤としてよく用いられ,熟睡障害にはこの他フル
ゾジァゼピン系薬剤やフェノバルビタール(フェ
ニトラゼパム(ロヒプノール⑧)(0.5∼2mg)も用
ノバール⑪)などのバルビタール系薬剤は無効な
いられる.高度の睡眠障害にはこれらは無効であ
ぽかりか,症状を増悪させる場合があり,むしろ
り,プロムワレリル尿素(プロバリン⑪)(0.5∼0.8
禁忌と考えた方がよい59).ハβペリドール(セレ
g)やアモノミルビタール(イソミタール⑧)
ネース⑭)やクロールプロマジン(ウィンタミン⑯)
(0.1∼0.3g)を用いざるをえないが,副作用も強
が有効である.セレネースは0.75∼2.25mgを分
く,夜間せん妄を誘発しうるので短期使用にとど
一487一
30
める.いずれにせよ,この種の薬剤は程度の差は
肩手症候群(shoulder−hand syndrome)は肩の
あれ,どれも習慣性ないし依存性が出現するので,
落痛,運動制限に伴って同側の手の癖痛,腫脹
長期連用はなるべく避けるべきである,また,脳
(puffy swelling),皮膚の潮紅,熱感を示すもので,
卒中患者の中には睡眠時無呼吸症候群(sleep
治療としては理学療法(ホットパックなど),星状
apnea syndrome)のため十七され,不眠を自覚す
神経節ブロック,ステロイド(プレドニソ⑧30mg
る例があり,著者ら62)は特にWalleberg症候群に
前後より漸減)などがある48).
3)痙性麻痺
高頻度に認められ,ジメブリン(レメブリン⑪)が
睡眠時無呼吸と不眠に有効であったことを報告し
脳血管障害による麻痺は通常痙性であり,この
ている.Sleep apneaに対してはこの他に三環系
痙性が強いとリハビリテーションの阻害因子にな
抗うつ薬,合成黄体ホルモン,acetazolamide(ダ
り,放置すると関節拘縮をきたす.運動障害を改
イアモヅクス⑪)63)などの効果が報告されている.
善し,リハビリの効率を高めるため種々の抗痙縮
ベンゾジアゼピン系睡眠薬はsleep apneaを増悪
薬を併用する(表3)67>68).最も強力な筋弛緩薬と
させる可能性があるので避けるべきである61).
してはダントロレン(ダントリウム⑧)とバクロ
強迫哺泣・失笑に対しては,髄液でドパミン代
フェン(リオレサール⑧,ギャバロン⑪)がある.
ダソトロレンは筋小胞体抑制薬で,バクロフェソ
謝産物であるホモバニリン酸が低下していること
を根拠にL−DOPAやアマンタジンが投与され,改
は脊髄多シナプス反射抑制薬であり,作用部位が
善したという報告がみられる64).
異なり,両者の併用で相乗効果が期待でぎる.副
2)中枢性心痛
作用として脱力,倦怠,ふらつきなどが出現しや
中枢性疹痛は脊髄,延髄,視床,大脳皮質,皮
すい.これらの薬剤より筋弛緩作用は弱いが,緩
質下などで痛覚伝導路が障害されて出現する自発
徐な作用を示し,副作用が少ない薬剤にアフロク
痛や痛覚過敏で,代表例は視床の障害によって生
アμソ(アロフト⑪), トルペリゾン(ムスカルム
じる視床痛であり,治療抵抗性の頑痛である65).
⑭),エペリゾン(ミオナール⑬)があり,これらは
ラェニトイン,カルバマゼピン,クロナゼパムな
いずれも脊髄多シナプス反射抑制薬である.
どの抗てんかん薬や三環系抗うつ薬のイミプラミ
4)神経因性膀胱
ン(トフラニール⑭),アミトリプチリン(トリブ
脳卒中患者に合併する神経因性膀胱は痒性膀胱
タノール⑪)が単独または併用で用いられてぎた
で,頻尿が特徴であり,抗コリン薬が適応となる.
が,治療抵抗性のことが多い.この他,フェノチ
従来,トリヘキシフェニジール(アーテン⑧)(3∼6
ァジン系のクロールプロマジソやフルフェナジ
mg),プロパンチリン(プロパンサイン⑧)(15∼45
ン,抗パーキンソン薬のブロモクリプチンやL−
mg),プリフィニウム(パドリソ⑧)(45∼120mg)
DOPAが有効との報告もある65).四環系抗うつ薬
などが用いられてきた.頻尿に適応が認められて
のマプロチリン(ルジオミール⑪)が有効な症例も
いる薬剤としてはフラボキサート(ブラダロン⑧)
ある66).
(600mg)が唯一の薬剤であったが,最近,神経因
表3 抗痙縮薬の種類
一般名
ダントロレン
バクロフェン
商品名
作 用 機 序
ダントリウム
筋彫胞体抑制
ギヤバロン
脊髄単,多シナプス反射抑制
潟Iレサール
アロフト
脊髄,脳幹多シナプス反射抑制、
エペリゾン
ミオナール
脊髄,上位中枢多シナプス反射抑制
トルペリゾソ
ムスカルム
脊髄多シナプス反射抑制
アフロクアロン
一488一
常用量
25∼150mg
5∼30mg
60∼120mg
150mg
50∼300mg
31
性膀胱の治療薬として,抗コリン作用とカルシウ
表4 当科で施行している血小板機能検査
ム拮抗作用を併せもったテロジリソ(ミクトロー
1.血小板凝集能
ル⑧)(24mg,分2,夕食後,就前または1回,就
1)比濁法:多血小板血漿
2)インピーダンス法:全血
前)とオキシブチニン(ポラキス⑪)(6∼9mg,分
2.血小板放出反応
1)βTG, PF4:ラジオイムノアッセイ
3)が発売された.前者は長時間作用型,後者は
短時間作用型であるという相違がある.
2)ATP, ADP:ルミ凝集計
3.血小板内カルシウム濃度lFura−2法
4.血小板sizing
4.再発の予防
脳卒中の臨床経過の特徴は発症直後に症状の
1)直径測定:Micrometer
2)容積測定:Coulter counter
ピークがあり,それ以後は徐々に軽快するか,後
5.出血時間
遺症として固定するかであり,脳卒中そのものに
1)Duke法
よって症状が悪化するのは発作をくり返す場合で
2)Simplate法
3)Filter bleeding time法(Uchiyama&Didisheim)
ある.したがって,慢性期脳卒中患者では再発の
6.1Uln標識血小板シンチ
1)血小板寿命
予防(secondary prevention)カミ極めて重要であ
り,このためには血栓の発生,進展を防ぐための
2)血小板融解率
3)Imaging (血栓の描出)
抗血栓療法と,脳血栓症の基盤となる脳動脈硬化
の危険因子のコントロールを行なう必要がある.
1)抗血栓療法
ると報告されているが,常用量の経口投与で明ら
①TIA(transient ischemic attacks)
かな血ノ」\板凝集抑制を認める薬剤はそれほど多く
TIAは脳梗塞の前段階であり,放置すると脳梗
なく,prospectiveな,二重盲検法による多施設共
塞へ移行するが,TIAの再発を予防できれば脳梗
同研究により脳梗塞の予防効果が証明された薬剤
塞への進展を阻止することができるので,TIAの
は現在までのところアスピリンとチクロピジン
治療は極めて重要である.TIAの病因は種々ある
(パナルジン⑪)のみである.
と考えられるが,2大要因は微小塞栓
アスピリンは米国79),カナダ80》,フランス81)にお
(microembolism)69>と血管不全(vascular
ける偽薬を用いた二重盲検による多施設共同研究
insufHciency, hemodynamic crisis)70)であるとい
で脳梗塞発症を有意に減少させることが示され
われている.中でも大部分は微小塞栓によって生
た.しかし,アスピリンはcyclooxygenase阻害薬
じると信じられており,これは,内頚動脈起始部
なので,血小板において血小板凝集作用を有する
などの頭蓋外頚部動脈壁に粥腫(artheromatous
thromboxane A2(TXA2)産生を阻害するが,血
plaque)や粥腫性潰瘍(atheromatous ulcer)ヵミ
管内皮においては血小板凝集抑制作用を有する
形成され,血管内皮が破壊されて膠原線維が露出
prostaglandine I2(PGI2)の産生をも抑制してし
する,PGI2産生が行なわれなくなる,血流異常が
まうという,いおゆるアスピリンジレンマが問題
生じて高いずり応力(shear stress)が発生する,
にされ,アスピリンを少量にするとTXA2の産生
などにより血小板の粘着,凝集が起こり,それに
のみを抑制することからアスピリンの投与量は
より形成された壁面血栓(血小板血栓)が剥離し
徐々に少量となる風潮にある(図6).
て脳内血管を閉塞させるものである71).実際,TIA
どのくらいまで減らせばPGI2産生を阻害しな
患者では種々の血小板機能検査法において血小板
くなり,どのくらい減らしてもTXA2産生を阻害
活性化,集積,消費,破壊などを示唆する所見が
しうるかが問題となるが,著者ら82)83)の成績では
認められる(表4)72)∼78).このような病態に対して
300mgではまだPGI2産生を阻害する傾向があ
は抗血小板療法が最もよい適応になると考えられ
り,81mg(小児用バファリン⑧)ではPGI2産生を
る.
極めて多数の薬剤が血小板凝集抑制作用を有す
阻害しなくなり,しかもTXA2産生を阻害しえた
(表5).現在更に40mgを検討中である.アスピリ
一489一
32
表5 アスピリン,チクロピジンの単独,併用療法による抗血小板効果
300mg ASA
Platelet function test
200mg
TC
Control
81mg ASA/100mg TC
N
Pre
Post
N
Pre
Post
N
Value
N
Pre
PA to ADP(%)
14
54±25
34±19皐
21
67±20
27±22寧寧
27
58±27
20±14*艸
43
43±29
PA to AA(%)
14
54±26
9±7**
21
60±28
49±33
27
54±31
8±5*林
43
35±38
PA to PAF(%)
14
40±33
29±28
21
49±34
26±26零事
27
39±31
15±13廓**
43
34±40
β一thromboglobulin.(ng/ml)
14
87±80
70±65
21
109±78
69±50*
27
90±63
32±19榊
25
27±23
Plateiet factor 4(ng/ml)
14
49±43
38±40
21
61±52
32±27幽
27
48±32
13±17寧*
25
11±14
82±78虚
15
233±183
218±145
17
21ら±149
78±65*
16
125±22
25±15
15
30±16
32±14
17
32±15
28±15
16
20±10
399±12寧
16
278±100
459±92*
18
260±101
14
283±105
Post
Thromboxane B、(P9/ml)
8
246±143
6keto PGF、α(P9/ml)
8
35±13
Bleeding time(sec,)
9
*p<0.05
247±60
615±27P庫
串*p<0.Ol ***p〈0.001
ASA:アスピリン, TC:チクロピジン, PA:血小板凝集能, ADP:アデノシン2燐酸, AA:アラキドン酸, PAF:血小板活
性化因子
効果のあることが示された.最近,米国とカナダ
Phospholipid
↓
Phospholipase
A2
011azep
Arachido自ate
↓
CyclooxygenaSe
TXA2 synthetδse
ASplrln
ン1,300mgより有意に高い,3年間の脳卒中・心
↓・・…ydase
筋梗塞・血管死発生予防率を認め(Ticlopidine−
PBH2
漁
P612 synthetase
TXA2 sy口thetase
TXA2 recepto「
τXA2
antagonlS匙
τlcl
dlne
⇒
Dlpyrl amole
Phosphodi巳sterase
↓
↓
AMP
− Cyc「ic
↓
Activation
←
Inhib}tion
(Canadian−American Stroke Study)87).
一AMP
Ca什
←
においてチクロピジン500mgは偽薬に対し,平均
2年の観察期間に約30%の発症予防率を示した
↓
Adenylate cyclase
A丁P
Aspirin Stroke Study)86),完成型脳梗塞1,000例
囮
P602
↓ ↓
る臨床治験の結果が発表され,3,000例のTIA,
RINDにおいてチクロピジン500mgはアスピリ
PO62
mhl頃tor
で極めて大規模な,チク白ピジンの二重盲検によ
↓
Platelet aggregation
図6 アラキドン酸カスケードと抗血小板薬の作用部
位
しかしながら,これらの抗血小板薬の脳梗塞
心筋梗塞予防効果は,世界中で行なわれたran−
damized trialの結果を合計すると有意ではある
が,平均22%(SD 5%)にすぎない88).逆に言え
ば78%の患者では予防できなかったことになる.
これは,アスピリンやチクロピジンは単独では多
数ある血小板凝集経路の一部しか阻害しないこと
ンもこれほどの少量になると特に日本人に多い消
化器症状も殆んどみられなくなる.
著者ら84)は世界で最初にTIAに対するチクロ
が一因であると考えられる73)74)82)83).血小板凝集
にはADP,アラキドン酸(AA), PAFを介する,
少なくとも3つの異なった経路のあることが知ら
ピジンの再発予防効果と抗血小板効果を検討し
れており89),アスピリンはADP, AA刺激による
た.チクロピジン200mg(パナルジン⑪2錠)は3
血小板凝集は阻害するが,PAF刺激による血小板
カ.月間に2回以上の発作のあったTIAまたは
RIND患者において有意に再発とADP刺激によ
凝集は阻害せず,チクロピジンはADP, PAF凝集
る血小板凝集能を抑制した.このpilot studyに引
は阻害するが,AA凝集は阻害しない(表
5)74)79)80).
これらに対し,アスピリンとチクロピジンを併
き続いてアスピリンとの二重盲検による多施設共
同研究85)が行なわれ,チクロピジンはTIAにおい
用するとADP, AA, PAF凝集は全て著明に抑制
てアスピリンと同等またはそれ以上の脳梗塞予防
され,強力な抗血小板療法であると考えられた(表
一490一
33
5)82)83).ただし,出血合併症の危険性も高まるの
胃十二指腸潰瘍のある患者は原則として抗血小板
で併用療法の場合にはアスピリンを81∼100mg,
薬の投与は禁忌である.少なくともアスピリンや
チクロピジンを100mgに減量したが,それでも
バナルジンなどの強力な抗血小板薬は使うべきで
各々の単独療法に比し,出血合併症は多く出現し,
ない.抗血小板薬による抗血小板効果のモニター
出血時間は著明に延長した82)83).現在,アスピリン
には血小板凝集能と出血時間の測定が有用であ
40mgとチクロピジン100mgの併用療法を検討中
る.血小板凝集能(特にADPによる)の過剰な抑
である.
制と出血時間の著明な延長を認めた場合,抗血小
実際のTIA患者の治療に際しては必ずしも最
板薬は減量すべきである.逆に,抗血小板薬投与
初から併用療法を行なう必要はないと考える.ま
にも拘らず血ノ」・板凝集能や出血時間が投与前から
ず,アスピリンかチクロピジンの単独療法を行な
変化しない場合には,服薬の有無(コンプライア
い,それでも再発を起こした場合併用療法を試み
ンス)をまず確かめ,問題なけれぽ増量すべきで
る.しかし,危険因子を多く有し,脳血管撮影で
ある93).ただし,出血時間は,耳朶を穿刺して測定
高度の血管病変を認める症例には最初から併用療
するDuke法は感受性が低いので,前腕を40
法を行なってもよいであろう.
その他の抗血小板薬ではジラゼップ(コメリア
mmHgに加圧して,disposableの器具を用いて測
定するSimplate法,または,著者がMayo Clinic
ン⑪)がかなり明瞭な1血小板凝集抑制作用があり,
において開発した勿読70の出血時間測定法であ
アスピリンとの併用により相乗効果が認められ,
る創ter bleeding time法76)∼78)によって評価し,こ
現在,臨床治験が進行中である.かつては期待さ
れによる出血時間が前値の1.5∼2倍で,15分以内
れたジピリダモール(ペルサンチン⑧)には脳梗塞
を目安にする94).
予防効果はないようである81).単独で血小板凝集
脳血管造影で主幹脳動脈(内頚動脈,中大脳動
のmultipathwayを阻害するE−5510は強力な抗
脈基幹部など)に高度の狭窄あるいは閉塞を合併
血小板薬として期待され,現在,TIA患者におい
する場合は脳血管不全型の可能性が高い95).この
て抗血小板効果が検討されているgo). TXA,合成
場合,微小塞栓型と異なり,脳外科手術の適応も
酵素阻害薬はアスピリンジレンマを根本的に解決
一応考慮する.手術としては浅側頭動脈・中大脳
する薬剤として期待されたが,実際にはTXA2の
動脈吻合術(EC−ICバイパス)と血栓内膜除去術
前駆物質で,血小板凝集促進作用を有するPGG2,
(endoarterectomy)があるが,白老は国際共同研
H、が蓄積増加する例では反応しない(non−
究96)により脳梗塞予防効果のないことが示され,
responder)ことがわかり,期待が裏切られたが,
本学脳外科では行なわれなくなった.後者は特に
TXA2受容体阻害薬はこのような現象がないので
米国で多数例に施行されてきたが,これについて
より期待される91).また,CV・4151はTXA、合成酵
もneurologistの間には懐疑的な意見が多く,厳
素阻害作用と受容体阻害作用を併せもつ薬剤とし
密なrandimized trialを行なって再評価すべきで
て注目される.ただし,これらの薬剤はADP,
PAF凝集に対する阻害作用がないか弱いのが欠
点である.TRK−100はPGI2誘導体としては極め
あるとの意見が湧き上がっている97>.
TIAは脳塞栓の早期再開通を考え,抗血小板療法
て安定で,経口投与により抗血小板作用が期待で
でなく,抗凝固療法を施行する.また,前述した
きる92).ただし,外因性のPGI2投与によるAAカ
ごとく,crescend TIAは緊急入院させ,ヘパリン
スケードに対するpostive feed−backに起因する
療法を行なう.以上,TIAの治療方針を表6にま
と思われるTXA2の増加傾向が認められ,今後の
とめた.
器質的心疾患や心房細動を有する例に生じた
検討課題である.
②完成型脳卒中(completed stroke)
抗血小板薬投与患者では出血合併症に準冠す
米国79)とカナダ80>のアスピリンに関する臨床効
る.最も多い出血合併症は上部消化管出血であり,
果にはTIAのみで脳梗塞は含まれていなかった
491
34
表7 ワーファリンに影響を与える薬剤と食品
表6 TIAの病型と治療の適応
1.作用を増強する薬剤
Mi・…mb・li・m・yp・一[藁論艦儘s漏日晒愕
1)消炎鎮痛薬:フェニルブタゾン,メフェナム酸,ブコ
・・m・d…m…yp・一豊離壽、畿認TC)and/o「
ローム,インドメタシン,アスピリン
Crescend TIA
2)抗生物質・化学療法薬:クロラムフェニコール,テト
Heparin infusion
ラサイクリン系,エリスロマイシン,セフェム系,サ
Cardiogenic TIA一一→Warfarin
ルフア剤
3)抗うつ薬・覚醒剤:MAO阻害薬,三環系抗うつ薬,メ
チルフェニデート
が,フランス81)の共同研究においてはTIAのみな
4)抗痙主薬:フェニトイソ
らず,脳梗塞にもアスピリンは再発予防効果のあ
5)経口糖尿病薬:トルブタミド,クロルプロパミド
6)痛風治療薬:アロプリノール,スルフィンピラゾソ
ることが示された.チクロピジンについても北米
7)その他:シメチジン,ヘパリン,ジピリダモール,エ
タクリン酸,キニジン,クロフィブレート,甲状腺薬・
の共同研究87)では前述したごとく,脳梗塞にも有
抗甲状腺薬,蛋白同化ステロイド
意な再発予防効果が示された.
2.作用を減弱する薬剤
一般に,外来の脳梗塞患者にはTIAと同様に再
1)抗真菌薬:グリセオフルビン
2)抗脂血症薬:コレスチラミン
発予防を目的として抗血小板薬を投与している.
3)抗結核薬:リファンピシン
ただし,1acune(ラキューソ,ラクネ),すなおち
4)副腎皮質ステロイド
深部小梗塞の治療には注意を要する.Lacuneで
5)ビタミンK含有薬
3.ビタミンKを多く含有する食品
は大部分の剖検例で大なり小なり出血を生じた所
1)野菜(100μg/100g fresh wt.以上)
見を伴っており,特に,高血圧のコントロールが
パセリ730,シソ650,クレソン390,ミツバ370,シュ
不良なlacuneに抗血小板薬を投与すると脳出血
ンギク350,カブ310,メキャベツ300,ホウレンソウ260,
を併発しやすいので,lacuneには高血圧のコント
コマツナ280,ニラ250,ブロッコリー230,サニーレタ
ス210,チンゲンサイ120,サラダナ100,キャベツ(外)
ロールが良好となってから抗血小板薬を投与すべ
140(内)80
きである.
2)その他の食品
納豆345,牛レバー92
③脳塞栓症
脳塞栓症には心腔内血栓が脳内の血管を閉塞さ
もよい.ただし,出血合併症や胃・十二指腸潰瘍
せる心心性塞栓症(cardiogenic embolism)と大
血管の転註.血栓が脳内遠位血管を閉塞させる
のある患者は禁忌であり,高血圧症合併例では良
artery to artery embolismがある98).後者は基本
的にTIAの微小塞栓型と機序は同一であり,抗血
好なコントロールがなされてから開始する.治療
中は定期的に尿,便潜血,血算,肝・腎機能を検
小板療法の適応となる.これに対し,前者に対す
査し,出血合併症を生じたら直ぐに連絡するよう
る抗血小板療法は有効性に乏しく,抗凝固療法が
ムンテうしておく.出血合併症に際してはビタミ
丘rst choiceとな:る35)99)∼101).
ンKを経口的または経静脈的に投与する.ワー
抗凝固療法はワーファリンを用いる102).ワー
ファリンは他の多くの薬剤と相互作用を起こし,
ファリンの投与法には急速飽和と緩速飽和がある
その効果が増強したり,減弱したりするので注意
が,外来では出血合併症を避けるための後者がよ
を要する(表7)103).また,食物の中でもビタミン
い.これにはいくつかの方法があるが,1例とし
Kを多く含むため効果を減弱させるものがあり,
ては10mg 1日1回経口3日間投与後トロンボテ
納豆は食べない方がよい103).緑色野菜については
スト(TT)を施行し,その結果により維持量を決
過量摂取に気をつけさせれば禁止しなくともよ
める.更に1週間後TTを測定し,10%台であれ
い.
ぽその量を維持し,9%以下なら減量,21%以上
2)危険因子の治療
なら増量し,以後2週毎にTTを測定して調節す
①高血圧
る.TTの安定した長期投与例では4週に1度で
高血圧は脳梗塞(脳血栓症)の最大の危険因子
一492一
35
脳血流量
表8 各種降圧薬の脳血流に及ぼす影響
(%)
降圧薬
脳血流量
脳血管抵抗
サイアザイド系
α 遮 断 薬
β 遮 断 薬
∼(↓)
↓
↑
↓
正常血圧 高血圧
N
100
H
SH脳卒中を伴う高血圧
↓
∼↓
↑
↓
ク ロ ニ ジ ン
↓
↑
セ
ノレ ヒ。 ン
0
0
100
ヒ ドラ ラジン
200 平均血圧
〔㎜Hg)
Ca 拮 抗 薬
変換酵素阻害薬
平均血圧=拡張期圧+脈圧/3
N.H. SH.安静時血圧レベル
∼
メ チ ル ド パ
レ
脳代謝
∼↑
↓
∼
∼
?
↓
∼
↑
↓
↑
↓
∼
∼
↓
∼
∼
脳血管抵抗=血圧/脳血流量
図7 正常血圧,高血圧,脳卒中を伴う高血圧例に
↑増加,∼不変,↓減少,(↓)血液濃縮により減少
おける脳の自動調節能(autoregulation)
(藤島正敏玉》より)
藤島正敏蜘より
であり1働,高血圧の治療は脳卒中の予防に有効で
た,外来での血圧値のみを目安にすると平常血圧
ある105).しかし,過剰な降圧は脳虚血を増悪させ
を下げすぎる危険があるので,家庭での血庄測定
る場合があるので充分注意する42).血圧の変動に
を勧め,外来での参考にする42》.
対して血流を一定に保つ脳の自動調節能(auto−
用いる降圧剤としては,血圧を下げても脳血流
regulation)は強力で,正常血圧者では平均血圧が
を低下させない,あるいはむしろ増加させる薬剤
50∼60mmHgまで下降しても脳血流は保たれる
が望ましい(表8)41)42).この条件に該当する薬剤
が,高血圧患者ではautoregulationの下限域が高
にカルシウム拮抗薬があるが,autoregulationの
い血圧レベルに偏位している(図7).脳卒中患者
下限域が逆に上昇するとの報告もあり4b,特にニ
では発症後2週以内はautoregulationが障害さ
フェジビン(アダラート⑧)では急激な血圧の下降
れやすいが,慢性期になると改善するとされてい
が起こりうるので注意する必要があり,また,作
る.しかし,脳主幹動脈閉塞患者では慢性期でも
用時間が短く,血圧変動が大きいこともよくない
autoregulationの下限値は高血圧患者より更に
ので長時問作用型(アダラートL⑧)の方が望まし
高く106),わずかの血圧低下により,第2前頭回,
い.その点,ニカルジピン(ペルジピン⑪)は繹や
側頭・頭頂・後頭三角(TPO triangle)領域の境
かな降圧作用を発揮するので使用しやすいが,高
界面梗塞(watershedまたはborder zone infarc・
度の高血圧には効果が弱い.ヒドララジソ(アプ
tion)や半卵円中心,尾状核頭部のterminal zone
レゾリン⑪)も脳血流を増加させるが,心素血量を
infarctionを生じうる107).また, Binswanger病
増加させるので心疾患合併例には使いにくい.サ
(progressive
イアザイド系降圧薬は利尿による脱水が血液粘度
subcortical vascular
encephalopathy)108)でをま白質動脈に著明な壁肥厚
上昇や脳血流低下をもたらす可能性があり,糖,
が存在するので血圧を下げすぎて扇流圧が低下す
脂質代謝にも悪影響を及ぼすこともあるので避け
ると虚血性病変が進行する危険性があり,特に,
た方がよい.カプトリルなどのアンギオテンシン
夜間の過剰な血圧下降によるびまん性白質病変の
変換酵素障害薬はautoregulationの上,下限域を
進行が指摘されている109).
ともに低下させbreakthroughを生じやすくする
降圧治療の開始は発症後1ヵ月からとする意見
という動物実験の報告41)があるが,人についての
が多い4D.降圧に際してはあせりすぎは禁物であ
検討はまだ充分なされていない.降圧薬を用いる
り,2ヵ月はかけてゆっくり降圧を行なった方が
にしても,食事療法を同時に行なうことが重要で
よい.これによりautoregulationの下限域に
あり,食塩は1日7∼8g以下とする.
②高脂血症
resettingが起こり正常域に近づきうるという.ま
一493一
36
硬化,粥状硬化所見を認めることが多く,脳卒中
Framinghaln studyllo)や久山町の疫学調査111)
では血清総コレステロールと脳梗塞との間には有
患者には禁煙させるべきである.
意な相関がみられなかったが,リボ蛋白分画が詳
④飲酒
細に検討されるようになってからは,総コレステ
喫煙と異なり,飲酒は脳梗塞の危険因子になる
ロールに対するHDLの低比率, HDL2・HDL3の
ことは証明されていないが,逆に,脳出血やクモ
三値,リボ蛋白Aの低値,アポ蛋白Bの高値と脳
膜下出血の危険因子となるので,これら出血性脳
梗塞との間に相関がみられたとの報告があ
血管障害患者では禁酒させるべきである.また,
る112).我が国では皮質枝型梗塞と高しDL,低
アルコールは抗血小板薬や抗凝血薬の作用を増強
HDL,高しDL/HDL値(atherogenic index)113),
して出血合併症を生じやすくするので,これらを
脳梗塞とアポA−1,アポA−II低値,アポA−1/アポ
服用している患者では,できれぽ禁酒した方がよ
AII比の卜祀114)との相関があったとの報告がみ
い.少なくとも,日本酒1合,ビール1本,ウィ
られる.
スキー水割1杯程度までに節酒させる.更に,心
治療は食事療法が基本であるが,2∼3ヵ月の
源性脳塞栓患者では飲酒により不整脈が発生しや
食事療法で改善しない場合は薬物療法を併用す
すくなるので注意する.若年者脳梗塞の原因とし
る115)116).クロフェブレート系薬剤(クロフィブ
て最も重要なものの1つに僧帽弁逸脱(mitral
レート,シンフィブレート,クリノフィブレート)
valve prolapse, MVP)があるが, MVP患者では
は総コレステロール,LDLよりも中性脂肪,
VLDLの低下に著効を示す.ニセリトロール(ペ
飲酒後に脳血栓を発症する例が多い121)’22).
⑤心疾患
リシット⑧)などのニコチン酸製剤は中性脂肪を
心筋梗塞患者では脳梗塞も多く,特に皮質枝梗
よく低下させ,総コレステロールも下げるが,
塞が多い.これは両者とも粥状硬化を基盤とする
HDLは低下させない利点がある.プロゾコール
ものであり,両者に共通の危険因子,すなわち,
(シンレスタール⑧,ロレルコ⑪)はより強力な総コ
糖尿病,高脂血症,喫煙を多く有している症例が
レステロール低下作用があるが,HDLも同時に
多いことによる.急性心筋梗塞,不整脈(心房細・
低下させる難点がある.この他,植物性ステロー
粗動,頻発する心室性期外収縮,洞機能不全症候
ル(モリステロール⑭)なども用いられている.た
群,ペースメーカー),心不全,心室瘤,弁膜疾患,
だし,脳出血では低コレステロール血症が多く,
心内膜炎(感染症,非感染性血栓性),心筋症101)は
血管を強化するためむしろある程度の高蛋白高脂
心腔内血栓発生の原因となり,脳塞栓症を併発し
肪食が推奨されている117).
うるので,これらの治療が重要となる(表9)101).
③喫煙
これまで,喫煙は心筋梗塞の危険因子ではある
表9 脳塞栓症の原因となった心疾患の内訳
が,脳梗塞とは明らな相関が証明されていなかっ
Number of Admitted Patients(1979 to 1984)
Cerebrel infarct
た.しかし,最近,Framingham studyl18)におい
Cardiogenic embolism
て喫煙が脳梗塞の独立した危険因子であることが
300
32
Af alone
証明され,喫煙本数が多いほど脳梗塞のリスクは
Cardiomyopathy with/without Af
高まり,禁煙によりリスクが減少しうることが示
MS with Af
された.
Mitral valve prolapse
Sick sinus syndrome
喫煙はニコチンが血管を収縮させるだけでなく
Af and PVC
血中一酸化炭素ヘモグロビンを増加させ,動脈硬
化を進展させて血小板を活性化し119),一方,Htを
Myocardial infarct with Af
PVC alone
CRBBB
上昇させて血液粘度を高める120).Heavy smorker
Af:心房細動, MS:僧帽弁狭窄, PVC:心室性期外収縮
やchain smorkerでは脳血管撮影で高度の動脈
CRBBB:完全右脚プロッタ
ー494一
37
⑥糖尿病
的治療.神経内科治療 5:103−110,1988
7)遠藤英雄,金谷春之,斉木 巌ほか:重症脳出血
糖尿病は脳梗塞の明らかな危険因子であり,食
の治療.b,外科的治療.神経内科治療5:
事療法,経口血糖降下薬,インシュリンによる血
11/−!20, 1988
糖のコントロールは絶対必要である.ただし,過
8)広沢邦浩,小林国男:脳卒中患者に対する輸液お
よびその注意点.臨床看護 13:2142−2145,!987
剰な治療による,空腹時や早朝に生じる低血糖発
9)大橋山口:人工栄養法,「今日の治療指針」(日野
作を脳虚血発作と誤診し,治療方針を誤らないよ
原重明,阿部正和編),pp69−70,医学書院,東京
う注意する.
結
(1987)
語
10)荒木信夫,福内靖男:急性期の保存的治療,脳血
管障害,薬物療法.総合リハ 16:105−110,1988
急性期・慢性期脳卒中患者の治療について,最
11)植松大輔,福内靖男:虚血脳でどんな変化が起
こっているか・脳浮腫とその対策.Med Pract
近の考え方や話題をもとに,虚血性脳血管障害の
内科療法を中心に述べた.脳卒中の治療に関して
3:1723−1727, 1986
は依然として試行錯誤の面があり,絶対的なもの
12)Klatzo I: Neuropathological aspects of brain
は存在しないといってよいが,最近の,国内外に
edema. J Neuropathol Exp Neuro126:1−14,
1967
おける治療の動向を私見を混じえて概説した.日
13)赫 彰郎:脳浮腫.臨床医 13:606−607,1987
頃,脳卒中の診療に携わる,内科研修医をはじめ
14)Bayer AJ, Pathy JMS, Newcombe R=Dou−
ble blind randamized trial of intravenous
とする本学諸先生方の参考にと執筆した次第であ
るが,少しでも日常診療のお役に立てば幸いであ
る.
glycerol in acute stroke. Lancet i:405−407,
1987
15)Plum F, Posner JB=The Diagnosis of Stupor
and Coma. pp87−175, Davis, Philadelphia(1980)
16)澤田 徹:脳梗塞重症例の急性期における治療
一重篤な意識障害と生命徴候を呈するもの一.神
稿を終えるにあたり,多大な御指導と御校閲を賜り
ました丸山勝一主任教授,竹宮敏子教授,小林逸郎助
経内科治療 4:3−9,1987
教授に心から深謝致します,また,御協力頂いた脳血
17)Norris JW, Hachinski VC:High dose ster−
管障害研究班の長山 隆,柴垣泰郎,佐藤玲子,曽根
oid treatment in cerebral infarction. Br Med J
玲子,堤由紀子各先生および神経内科医局員の諸先生
292 :21−23, 1986
18)内山真一郎,小林逸郎:専門医へのコンサルテー
方に深謝致します.
文
ション.臨床医 13:671−672,1987
19)Welch KMA, Barkley GL Biochemistry and
献
1)小町喜男,嶋本 喬,土井光徳ほか:我が国の脳
卒中死亡率・発生率の年次推移。神経進歩 32:
pharmacology of cerebral ischemia.1ηStroke.
Pathology, Diagnosis, and Management. Vo11
337−347, 1988
(Barnett HJM, Stein BM, Mohr Jp et al eds),
2)Yatsu FM, Pettigrew LC Jr, Grotta JC:
pp75−90, Churchill Livingstone, New York
Medicai therapy of lschemic stroke.肋Stroke.
(1986)
Pathology, Diagnosis and Management, Vol 12
20)Suzuki J, Imaizumi S, Kayama T et a艮:
(Bamett HJM, Stein BM, Mohr JP et al eds),
Chemiluminescence in hypoxic brain−The seG
pp1069−!083, Churchi正l Livingstone, New York
ond report:Cerebral protective effect of man−
(1986)
nitol, vitamine E, and glucocorticoid. Stroke
3)福井俊哉:昏睡患者を診察したとき,まず何から
16:695−700, 1985
はじめればよいか.「脳卒中最:前線」(福井囲彦,
21)Fader AI: Neuropeptides and stroke:Cur
藤田 勉,宮坂之磨ほか編),pp6−10,医歯薬出版,
rent status and potential apPlication. Stroke
東京(1987)
14:169−171, 1983
4)澤田 徹:脳血管障害急性期.「神経内科治療ハン
22)Gelmars HJ: Effect of calcium arltagonists
ドブック」(:丸山勝一,平井俊策編),pp159−167,
on the cerebral circulation. Am J Cardio159:
南山堂,東京(1986)
173B−176B,1987
5)望月 廣,小暮久也:軽症・中等症脳出血の治療
神経内科治療 5:97−102,1988
23)Chen ST, Hsu CY, Hogan EL et al=Throm−
boxane, prostacyclin, and leukotrienes in cere−
6)山ロ武典,矢間正弘:重症脳出血の治療,a.内科
bral ischemia. Neurology 36:466−470,1986
一495一
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