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小豆島町立安田小学校

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小豆島町立安田小学校
Ⅰ
学校の概要
思考力,
思考力,判断力,
判断力,表現力等を
表現力等を育成する
育成する授業
する授業づくり
授業づくりモデル
づくりモデル校
モデル校
小豆島町立安田小学校
◆ 児童数及び教員数
○ 児童数
第1学年 第2学年 第3学年
1学級
1学級
1学級
31名
22名
18名
○ 教員数
17 名
第4学年 第5学年 第6学年 特別支援
1学級
1学級
1学級
3学級
30名
26名
28名
8名
全 校
9学級
163名
◆ 学校の特色
本校は,瀬戸内海に浮かぶ風光明媚な小豆島の東部に位置している。校区は,安田地区,橘
岩ヶ谷地区,福田地区からなり,南北に細長く広がっている。平成21年度からは,小豆島町
立福田小学校が統合し,約30%の児童がスクールバスで通学している。
安田地区は,内海湾に面する平地の中に,国道436号線が縦断し,公共施設や農業協同組
合,郵便局,スーパーマーケット等の官公庁,商業地域がある。また,その中に,小豆島の伝
統産業である醤油造りの工場や佃煮工場,それらの原材料や製品を運ぶ運送業,石材加工工場
等がある。一方,小豆島最高峰星ヶ城山を背に,水田や畑の広がる農業地域がある。
橘地区,岩谷地区,福田地区は,播磨灘に面した北部の海岸部にあり,漁業がさかんで,新
鮮な魚介類が水揚げされている。福田地区には関西を結ぶフェリーの港がある。
大学進学や仕事の上でも,昔から阪神方面との結び付きが深い。その上,島しょ部であり,
若者たちの働く職場が少ないという関係から,若年層の人口の島外流出が著しい。
保護者の教育への関心は高く,母校及び地域の学校として安田小学校に寄せる期待も大きい。
Ⅱ 研究主題等
論 理 的 に 考 え,表 現 す る 力 を 育 て る 授 業 の 創 造
― 考 え を 高 め 合 う 言 語 活 動 の 充 実 ―
◆ 研究主題設定
研究主題設定の
の理由
本校はこれまで,国語科を中心とし,本校児童の課題である論理的な読解力,表現力の向上
を目指し研究を進めてきた。その結果,学力テストにおいても読解力,ひいては国語力全体に
ついて伸びが見られた。また,22年度からは,言語活動の充実促進モデル校として,国語科
と算数科を中心に論理的読解力,表現力の育成を目指してきた。
新学習指導要領の全面実施にあたり,昨年度は,思考力,判断力,表現力等をはぐくむ観点
から国語科を中心に各教科等の指導において,伝え合う力を育成する言語活動の充実を図り,
論理的に考える力,表現する力を育成する授業改善を目指した。各教科等の授業では,教科の
ねらいを達成するためにノート指導や話し合い活動等を積極的に取り入れた授業改善を行い,
校内の言語環境も少しずつ整えていった。その結果,学習状況調査においては,学年の差はあ
るものの,ほぼ平均を上回るようになってきている。
しかし,交流活動は活発になったが思考の深まりや心情の変化が十分みられなかったり,国
語で身に付けた力を実生活や他教科等で十分に活用しきれていなかったりすることもあった。
そこで本年度は,研究テーマを『論理的に考え,表現する力を育てる授業の創造 ~考え
を高め合う言語活動の充実~』と設定し,昨年度までの実践をもとに研究を進めていきたいと
考える。
◆ 研究内容及び
研究内容及び方法
○ 研究内容
① 各教科等において言語活動を充実させた授業づくり
ア
国語科と他教科等との関連を図った効果的な取組
・ 他教科との関連を図る年間指導計画の作成
・ 指導案の中での位置づけ
・ 他教科との関連を図った授業
イ 考えを高め合う交流活動のための支援の在り方
(話型・交流の形・視点の明確化・発問助言の工夫 他)
ウ 考える力を育てるノート(ワークシート)指導・表現物
・ 交流活動などにより思考・判断・表現する力を高めるノート(ワークシート)指導
・ 言語活動を通して育てたい力を目指した表現物
② 学びを支える活動の工夫
ア 言葉とふれあう場(学びの交流・参加型掲示)
イ 表現の場の工夫(音読集会・学習成果の発表)
ウ 読書活動(朝の読書・読み聞かせ・体験型図
書購入)
エ 基礎学力の向上(自主学習の取組 等)
○ 方法
(1) 「授業研究部」「言語環境部」を設け,各部や低・中・高学年団での話し合いをもとに理論研究や
授業実践を中心とした研修を行う。
(2) 授業研究は,
「授業研究部」の提案のもと全教員が提案授業を行い,外部講師を招き指導助言
を受け,研修を深める。
(3) 全体研修会においては,実践に生かせる点や課題を明らかにするような視点を持って討議に臨
む。
(4) 各部や各学年団による事前の検討や準備を協力して行い,研修時間を効率よく使って全職員が
意欲的に取組めるよう工夫する。
(5) 各自が研修内容とかかわる個人テーマを設定し,実践研究を行う。中間報告会と実践発表会で
成果を報告し合い,それぞれの専門性を生かしながら,教師間で触発し合い,力を付けていける
ようにする。
(6) 先進校を視察し,参考になる実践を導入していく。
Ⅲ
研究実践
◆指標設定と達成に向けた取組
1(児童質問紙)学校の授業などで、自分の考えを他の人に説明したり、文章に書
いたりするのは、難しいと思いますか。
指標
「③あまり思わない+④全く思わない」の合計
5月調査
27.9%
目標値
30.0%
11月調査
33.3%
国語と他教科との関連を図った効果的な取組
(1) 年間指導計画
年間指導計画への
への位置
への位置づけ
位置づけ
国語科で身に付けた力を他教科の中で自分の考えを説明したり,文章に書いたりする等
の活動で生かすためには,教師が意図的に単元で学んだことをどの教科の学習で使うか,
見通しを持つことが必要だと考えた。そこで,国語科の各領域のそれぞれの学習内容がど
こで生かせるかを位置付けた「国語科との関連年間指導計画」を作成した。【資料1】
国語の教科書会社から出ている資料に,領域ごとに内容を分類しているものがあるので
それぞれに番号を付け,【資料2】計画の中に入れていった。
例えば,3年生の5月単元「観察したことを書こう」では,書くことの②記録・報告文
の書き方を学ぶ。そこで身に付いた力が,社会5月単元「学校のまわり」を調べる学習で
生きてくるというわけだ。同じ「学校のまわり」の単元でも,4月の段階では2年生で学ん
だ力を使うことになる。
この計画は,1学期に,単元の内容がまだ十分に分からないまま立てた
ものなので,授業実践後に見直しを行っている。【資料3】のように,授
業をしてみて関連が強いと分かった単元には赤でマークしたり矢印でつな
いだりしている。また,計画とずれがあったものには,色ペンで三角印を
つけたり書き直したりしている。こうして,毎年修正をくり返し,より確
かで使えるものにしていく予定である。
【 資料1↓ 】
【資料2↑】
【資料3↓】
実施後に
加筆・修正
(2) 指導案
指導案の
の中での位置
での位置づけ
位置づけ
年間指導計画の中に計画したことを,指導案の中でも具体的に位置づけていった。
【資料
4】〔左側〕には単元を計画する際,その教科・領域等で育てたい力を育成するための言語
活動を考えた。
〔右側〕にはその言語活動に,それまで国語科で身に付けた言葉の力をどう
生かすかを,その横に書いていった。言葉の力は,国語科の指導事項をもとに,単元に合
わせて具体的な表現にしていった。【資料4↓】
このように国語科と
他教科・領域等との関
連を計画することで,
国語の授業を行うとき
に,次に生かせるポイ
ントがより明らかにな
ってきた。また,他教
科・領域等の授業では
そこで設定する言語活
動として何が効果的か
が分かってきた。
1年
【資料5↓】
(3) 国語科と
国語科と他教科との
他教科との関連
との関連を
関連を図った授業
った授業
《1年生の
年生の実践より
実践より》
より》
9月に「はなしたいな ききたいな」と
「思い出して書こう」の単元を学習する。2
つの単元指導のポイントは非常に似通ってい
るので,これらを関連づけて指導し,反復的
な学習を行うことで,学習内容の定着を図る
ことができた。一方で,領域や言語活動の違
いを生かして,「はなしたいな ききたい
な」で学んだことは,図工「感じたこと思ったこと」や朝の会のスピーチに生かし「思い
出して書こう」で学んだことは,生活科「楽しさいっぱい秋いっぱい」や日々の絵日記の
指導に生かした。その結果,自分の経験したことを伝える際は,したこと・その時の様子,
思ったことを必ず入れることができるようになり,話し方・聞き方のスキルも向上してきた。
《5年生の
【資料6↓】
年生の実践より
実践より》
より》
5年
9月に「パネル討論をしよう」の単元で,
パネル討論の進め方などを学んだ。そこで身
に付いた言葉の力を生かし,理科「流れる水
の働き」の単元で,「いろいろな川を比べ,
土地の様子と流れる水の働きについてまとめ
る 」ことを目標に,話し合いを行った。子
どもたちは,理由や具体例などを入れて自分
の意見を述べ,非常に積極的に話し合いを進
めることができたが,意見や質問があまり出
ず,考えを深めるまでには至らないという課題が残った。その後,総合的な学習の時間で
「学んだことを伝える適切な方法」を考えるために,再度パネル討論を行った。ここでは,
前回の反省を生かして効率的に話し合いが進められ,考えを深めることができた。
2(児童質問紙)普段の授業では、学級の友達との間で話し合う活動をよく行って
いると思いますか。
指標
「①できている+②だいたいできている」の合計
5月調査
81.4%
目標値
85.0%
11月調査
98.2%
考えを高め合う交流活動の支援の在り方
言語活動の充実が図られた授業では,まず学習意欲がわく学習課題が設定され,次に一人
一人が自分の考えや意見がもてることが大切だと考える。自分一人の考えが,交流活動を通
して様々な考えにふれることで再び個人の確かな考えになったり,考えが広まったり,より
高まったりしていくと考える。そこで各教科等の授業の交流活動で考えを高めるための支援
の在り方について研究を進めた。
本校が大切にする交流のねらい
① 思考力・判断力・表現力を育てる。
② 児童一人一人が考えを伝え合う機会を保障する。
③ 児童が自身の伸びや高まりを実感する場をつくる。
『考えを高め合う』とは,発達段階に応じて 次のようにとらえた。
低
自分の考えを伝え,友だちの考えの似ているところ・ちがうところが分かる。
中
友だちの考えと比べ・関係づけ,自分の考えを見つめ直す。
高
友だちの考えのよさを取り入れ,自分の考えを広げたり,高めたりできる。
各教科等における言語活動の充実を目指してきたため,国語科を中心に,様々な交流活動
を展開した。これらの実践を通して,それぞれの教科や交流場面は違っても,考えを高め合
うために,効果的な支援のポイントがみえてきた。
(1)発達段階に
発達段階に応じた話型
じた話型の
話型の活用
全体交流での「発表の仕方」は,学年の発達段階に応じて作成し,今までにも共通実践
を続けてきた。 【資料7↓】
低学年
中学年
発表の仕方
高学年
【資料8↓】
ペア①
話し合いのわざ
グループ④
ペア①~④
グループ①~④
昨年度は,国語での学習内容や発達段階を考え,自分の考えを伝え合う交流活動のため
に,ペア・グループでの基本の話型を作成した。どの教科等でも使えるようにできるだけ
シンプルに,話す人・聞く人の流れを,その学年で使いたい思考の高まりを支える話型を
入れ話し合いのパターンを示した。
【資料8】
児童の話し合いを話型として型に入れてしまうことには,いろいろなとらえ方がなされ
ているが,本校では,高学年での自主的な話し合いを目指すためには,低学年のうちから,
しっかりと基本の話型を指導していくことが大切であるととらえ実践している。
1年生では「発表の話型」の指導を徹底し,2学期の授業研究では,ペア交流がスムー
ズに行えるように,はじめにTTの教師同士がモデルになり「話し合いのわざ」の基本話
型を使って,交流の仕方を指導してから交流活動をした。
【写真1】
中学年では,各教科等では教科で学習した用語や思考の仕方を意識してアレンジした話
型などを提示していった。このような指導を続けていくと高学年になると輪番制の司会者
によって自主的な話し合いができるようになってきた。
6年生の社会科の授業では,グループでコミュニケーション能力を使った自主的な話し
合いでができるようになっている。【写真2】
書いている所を順
番に言って下さい。
もう少し,は
っきりと話した
方がよいと思う
よ。
【写真1
1年 国語科 ペアでの話し合い】 【写真2
先生の言い方をまねて
6年 社会科 グループでの話し合い】
輪番の司会者で話が進む
3(教員)授業中、ペア学習や班学習など、子ども同士が協力して取り組む活動を取
り入れていますか。
指標
「①できている+②だいたいできている」の合計
5月調査
64.3%
目標値
100%
11月調査
100%
(2) ねらいを
ねらいを達成
達成するための
達成するための交流
するための交流の
交流の形,グループ編成
グループ編成の
編成の工夫
育てたい力(教科のねらい)を達成するために,発達段階やそれぞれの交流の形の特
徴を踏まえて,交流の形(全体・グループ・ペア)や,編成の工夫をした。
例えば考えを評価しあう交流活動では,低学年では,お互いが学びあえる友だちとの
ペア,中・高学年では,グループ間は等質に,グループ
内は習熟度を考慮した4人程度のグループ編成を,算数
で考えを練り上げていく交流では,グループ間は等質に
グループ内は多様な考えのものが混ざるようなグループ
編成とした。
研究討議でも,「その交流の形や編成でねらいにせまれ
たのか」等を大切に話し合った。自分の作った問題を,
お互いに解き合う交流活動では,課題別のペアで活動さ 【2年ペアで問題を解き合う】
せた。とても意欲的に交流することができたが,育てた
い力を目指すためには,さらに能力差も考慮しておくことで,考える場を増やせること
が分かった。
また,『完成した表現物を読み合う』交流では,小集団で交流することもできるが,全
体交流で一人一人に付箋をもたせて意見を交流させることで,さらに短時間でねらいに迫
れ,考えを広めたり,高めたりすることができることなどが分かった。
4(教員)授業の中で、話し合いの目的や視点を明確にして交流活動を行っています
か。
指標
「①できている+②だいたいできている」の合計
5月調査
50.0%
目標値
100%
11月調査
100%
(3) 交流の
交流の視点の
視点の明確化
【5年
交流活動に入る前には,自分の考えを伝
え合った後に,話し合いがとぎれてしまう
ことのないよう,「何のために何を話し合っ
てどうするのか」という交流の視点をはっ
きりと提示するようにした。
4年生算数の『比較検討しながら練り上
げていく』交流活動の際には,始めのグループ交流・その後の全
体交流の仕方を提示していくことで,自分の考えを伝えた後の話
し合いが活発になった。また5年生国語の『自分の考えのよさを
交 流 の 仕 方 】 確かめたり,意見(アドバイス)をもらう』交流活動では,左の
様な手順と,評価の視点を提示し意識づけて交流を行った。
(4) 発問
発問・
・助言の
助言の工夫
右は,4年生算数「面積の求
め方の工夫」の授業で『比較検
討しながら練り上げていく』グ
ループ交流から全体交流での発
問,助言の流れである。グルー
プ交流では,意図的に思考を促
す発問をしたり,全体交流では
思考を方向づける助言をしたりすることで,考えを練り上げていこうとした。
このように考えを広げたり,思考を方向づける発問や助言を工夫することで交流が活
発になった。
(5) 考えを高
えを高める手立
める手立ての
手立ての工夫
ての工夫
何かを話すときに
は相手と自分をつな
ぐ資料や教具があっ
たほうが話しやすく
なる。考えを高める
ためにノート,ワーク
シー トだけでなく付
箋紙やボードなどの
ツールを用い,考えを
【5年付箋紙を使って】
伝え合ったり,思考操
【1 年ボ ー ドに 考えを 書く】
作したりする手立て
を工夫した。
(6) 評価活動の
評価活動の充実
伸びや高まりを実感できるように,交流活動の中で
相互評価を行ったり,授業の終わりにはカードやノー
トに本時で学んだことや友達の意見から学んだこと,
できるようになったこと等を学年の発達段階に応じて
【3年 ワークシートで示して】
記述させ学習を
振り返ることを続けている。
様々な交流活動の支援を工夫してきたことで,評
価活動が抵抗なく始められるようになっている。特
に高学年では,視点をしぼった話し合いが活発に行
われ、考えの高まりを実感できる児童が増えてきた。
←【算数
観点をもとに振り返る】
5(教員)授業の中で子どもが学習の見通しをもったり、振り返ったりする場を設
けていますか。
指標
「①できている+②だいたいできている」の合計
5月調査
86.7%
目標値
100%
11月調査
100%
考える力を育てるノート(ワークシート)指導・表現物
昨年度は,各教科等で考える力を育てる場としてのノートを大切にし,
「めあて」と「振り
返り」の記入をもとに,教科の特性にあったノートづくりを進めてきた。本年度は,子ども
たちが自らの学びを実感し,考えを高めるためには,ノートや表現物など思考の足跡を残し
ていくことが大切であり,教師は,適宜自分の学びを振り返る適切な評価の場を設定したり
支援をしたりすることが必要であると考えた。さらに,学ぶ意欲を高めるためには,学習後
の自分の学びの姿やできあがる表現物など,一時間ごとや単元全体の終末のイメージをもつ
ことも大切にした。
(1) 交流・
交流・評価を
評価を通して,
して,自分の
自分の学びを実感
びを実感し
実感し表現活動へとつなぐ
表現活動へとつなぐ
《5年生・
年生・国語科「
国語科「ふしぎな世界
ふしぎな世界へ
世界へ出かけよう」
かけよう」での実践
での実践より
実践より》
より》
ここでは,学ぶ意欲を高めるとともに「自分の考え
を明確に表現するため,文章全体の構成の効果を考え
る力」「表現の効果などについて確かめたり工夫したり
する力」を付けるため「物語を書く」という単元全体
を貫いた言語活動を設定した。そして,一人一人が一
つの物語をつくり,学級全体で物語集を作成するゴー
ルをめざした。
自分の考えを明確に表現し,読み手にも明確に理解
してもらうためには,物語の基本である「設定・展開
・山場・結末」などの構成を前単元で学習した教材文
「注文の多い料理店」と関連させて指導した。
また,注文の多い料理店での「風がどうとふいてき
て,草はザワザワ…」という文のもつ暗示性の高い表
現の工夫は,不思議な世界へ入るキーワードとして自分
の作品に合った表現を考えて生かした。
【あらすじ(要点メモ)】
この構成と表現の工夫という二点については,自己評価
や他者評価の観点ともなっている。相手が読んで理解しや
すいようにするためには,読み手の立場から文章を客観的
に評価してもらうことが必要である。そのため,相互評価
を積極的に取り入れた。また,推敲しやすいようにワーク
シートの罫線を利用したり,友だちからもらったアドバイ
スについては,自分の考えた物語に合わせて取捨選択しや
【アドバイスを基に再び表現する。
】
すいように付箋紙に書くようにした。
このように「物語を書く」という言語活動を行う上で必要な能力は,導入や展開さらに
単元終末に設定した書きまとめたものを読み合う交流の場面のそれぞれで育てることがで
きる。
また,そうした能力は,思考力・判断力・そして表現力を駆使することで高めることが
できると考える。できあがった子どもたちの表現物からは,不思議な世界へ入るキーワー
ドや文を効果的に表現し,構成を考えた筋道の通った物語を書くことができていることが
分かった。
活動後の子どもたちからの感想では,「自分が作家になった気分で物語を考えることがで
きてわくわくした」などの自分の学びを実感したり学習に対して意欲が高まったりしたこ
とが伺えた。
《
「得意なことのある
》
得意なことのある身近
なことのある身近な
身近な人を推薦しよう
推薦しよう」
しよう」
ここでは,「目的や意図に応じて,事柄が
明確に伝わるように話の構成を工夫しながら,
場に応じた適切なことばづかいで話す力」
「話
し手の意図をとらえながら聞き,自分の考え
と比べるなどをして考えをまとめる力」を付
けるため「人物を推薦する」言語活動を設定
した。
「人物を推薦する」言語活動を行う上で必
要な能力を「書くこと」(図中③④⑤)の領域
と関連させながら導入や展開そして終末の推
薦し合う活動の場面で育てることができると
考える。ここではさきほどの単元のように表
現物がないため,学びの姿が見えにくいこと
が考えられる。そこで,それぞれの学習の過
程をノート指導を通し,学びの足跡が残るよ
うにした。
【⑤でのノート】
【⑦でのノート】
【⑨での振り返り】
学習のめあてを明確にし,終末の学習に向かうために
この一時間はどのような学習をするのか,何ができるよ
うになればよいのかが分かるようにするため,何度も評
価を取り入れた。評価の観点については,目的に合った
推薦ができているか,推薦したい理由がよく分かるかな
ど内容的なことがらや,場に応じた言葉づかいができて
いるかなどについて,その時間に付けたい力に応じて明
確にした。
ここでも話し手聞き手である双方が相互評価をしたり 【他者評価カードを返しながらアドバイス】
自己評価を積み重ねたりすることで,学びの高まりを意
識できるようになった。さらに,推薦メモに付箋紙を付けたりサイドラインを引いたりす
るなどして思考を練り上げる場としても活用した。
このように,ノートやワークシートに思考の足跡を残したり,表現物ができあがるまで
の課程を大切にしたりする指導を繰り返すことで子どもたち
の考える力が育ってきたと考える。
4年 新聞
2年 クイズ集
6年 リーフレット
1年 のりものカード
3年 物語
5年 パンフレット
6(児童質問紙)校内の掲示板やふれあい広場などの作品や掲示物は、勉強にな
ると思いますか。
指標
「①できている+②だいたいできている」の合計
5月調査
92.2%
目標値
98.0%
11月調査
90.5%
3 学びを支
びを支える活動
える活動の
活動の工夫
言葉とふれあう場
(1) 学びの交流
びの交流
子どもたちがよく通る踊り場にいつでも
どこでも言葉にふれあえるように,くつろ
げるベンチやマット,本を置いた空間を作
った。
そこには,人権週間に心があたたまる本
を並べたり,また新しく本を購入した時に
は,科学的な読み物シリーズコーナーとし
て紹介したりし,その時期の学習とタイア
ップさせた本を並べたり,児童の表現物を
【言葉にひたる ふれあい広場】
展示したりしている。すると,自然と子ど
もたちは,休み時間等にくつろぎながら,本を手に取り読みふける姿が見られるように
なった。
雨の日の昼休みには,読み聞かせDVDを
見せ,同時に同じシリーズの本を展示するな
どの活動も行った。こうしたことで,自分か
らは手に取ることのない本にふれられるよい
機会になっている。
また,自主学習ノートを展示することで,
ノート交流の場(困った時の参考を求める場)
にもなっており,「〇〇くんのノートのまね
をしてみた。
」という声が聞かれることもあ
り,自然なノート交流の場ともなっている。
【雨の日の昼休みの様子】
4年生の作った新聞
授業で作った表現物の交流の場にもなり,は、分担して1つの新
聞に仕上げているよ。
付箋紙に感想を書き,お互いに評価し合う
図やグラフがあって分
姿が見られている。
かりやすいな。
こうした場の設定は,言葉や多様な表
現様式にふれる機会を増やしている。
友だちの表現のよさを取り入れたり,
自分の表現のよさに気づいたりと,言葉
の力を高め,深め合う姿につながってい
る。
(2) 参加体験型掲示
校内の数カ所に,楽しく言葉にふれられる言
葉遊びコーナーを作った。旧暦の月の呼び方を
階段を上るたびに唱え,いつの間にか覚えてい
るようにと,言葉遊びを掲示した。漢字の成り
立ちを組み合わせていくカード遊びや,組にな
る言葉を作る遊びなど,学年段階に応じて難易
度を変え,カード操作しながら,言葉遊びがで
きるようにした。
この取り組みは,「安田小学校言葉忍者学校」
の修行として,【資料9】のようなカードを励み
に,オリエンテーリングのように巡れるように
した。そして,チャレンジした児童には,忍者
認定証や忍者言葉学校グッズを渡したり,掲示
板や放送で名前を伝たりして,賞賛している。こ
のような,動かすことのできる掲示は,自分の考
えた跡が見えるので,「やった!」というやる気
や,「できた!」という達成感につながり,自主的
に言葉と向き合う児童が増えた。
また,休み時間には,この掲示物を介して,ア
ドバイスし合いながら一緒に考える学年を超え
た交流も見られた。この活動は,語いを増やし,
表現を広げ,高めることを支えている。
【忍者学校
山コース】
【ちょっと難しい
【上級生と一緒に
【資料9
忍者学校チャレンジカード】
川コース】
挑戦】
【俳句づくりに夢中】
◆特徴的な
特徴的な取組
表現の場
(1
1) 音読集会
本校では年2回音読集会を行っている。ねら
いは,国語科授業での読み取り,想像を膨らま
せたことを表現につなげ,聞き手を意識した表
現力につなぐことである。本校では年2回実施
しており,5年目の取り組みとなった。
子どもたちは,めあてに沿った読み方の工夫
をして,表現する。参観してくださる保護者も
大変多く,本番にむかう児童の意欲にもつなが
っている。
【円形劇場型で】
めあてをのせたプログラム(当日配布)
保護者の方の評価が読みの改善につながるようにするため
に,短く分かりやすいキーワードで表した。
【アンケートによる保護者の評価】
・最初の「きりなし歌」のかけ合い
は,とても楽しくて良かったです。
・みんなでそろって読むところが,
きれいにそろっていて,しっかり練
習できていると思いました。毎回こ
の時期の音読集会を楽しみにしてい
ます。
・全校言葉遊びでは,最初の発音が
ぼけていたが,段々良くなっていっ
た。1回目より2回目の方が良かっ
た。
・間をとって読めていたと思いま
す。登場人物の気持ちが良く伝わり
ました。
・学年が大きくなると目標が難しい
【アンケート用紙】
ですが,上手に読めるようになって
今年度,さらに保護者理解をねらい,次の様に改善した。
いってほしいです。
当日配るプログラムや,保護者アンケートに,各学年のめあてを簡
単な文章でのせた。発表中は,スクリーンにもめあてを映し明確
に示した。また,担当者から,各学年の発達段階に応じて,め
あてがステップアップしていることを説明する時間を取った。
また,新しいプログラムとして, 全校ことば遊びを取り入れ
た。1回目は「さよなら三角の詩」を児童全員,学年ごとの掛
け合い,児童と教師の掛け合いという形式で群読した。2回目は,
「きりなしうた」を上学年と 【 学年 のめ あて を 提示】
下学年の掛け合い,教師
と児童の掛け合い,さらに保護者と児童の掛け
合いの形式で群読した。
アンケートでも「家で何度も練習を聞いてい
たが,全校で読むとこんなに楽しいものになる
んだと感じた。」など,ともに取り組み楽しみを
味わってくださっていることが分かる。保護者
の理解が,適切な賞賛の言葉となり,子どもた
ちの意欲や読み取りの深さにつながると考えて
いる。
【「全校ことば遊び」を楽しむ】
読書活動
(1) 朝の読書・
読書・読み聞かせ
始業前の10分間,児童と
教師が一緒に朝の読書活動を
行っている。児童は集中して
読書を行い,学校全体に静の
時間を作ることができる。
また月2回,小豆島町出身の
【小豆島民話読み聞かせ】
川崎徹先生に民話の読み聞か
【静かな空気の中集中して】 せをしていただいている。総合的な学習の時間や社会の学習
で小豆島について学習している学年もあり,児童は静かに民
話の世界に浸って聞いている。始業前に落ち着いた雰囲気を作り,集中して1時間目の学
習に臨むためにも効果的であった。
(2) 体験型図書購入
児童が実際に自分で読みたい本を1冊選び,本屋に
買いに行き,最終的にその本を図書室の本にすること
ができたら,意欲的に読書をするだろうと考え「体験
型図書購入」を行った。友だちと協力して読みたい本
のシリーズをそろえる高学年,お家の人と相談して本
を選んだ低学年など,それぞれがわくわくしながら本
を購入することができた。
基礎学力の向上
(1) 自主学習
ぼくが選んだ
本,一番に読める
んだ。
今年度,めあてと振り返りが書き込める枠がつい
ている「秋田式ノート」にそろえ取り組んだ。普段か
らめあてとふりかえりを書くことは指導していても
なかなか定着しなかったが,このノートのように書
く場所が確保されていることで,ずいぶんと定着し
てきた。書くことで,学びを実感したり,達成感を
味わえている。始めにめあてを書いて,自分のした
い学習をはっきりさせ,学習後,それに対して振り
返ることは,主体的な家庭学習へとつながる。
カードでは自分のがんばりの積み重ねが実感しや
すいように,○や正の字で視
覚的に記録していくことも意
欲につながっている。また教
師も時間をかけて一筆書き込
むことも励み
となり,意欲
【めあてと振り返りを書く】
を継続するこ
とにつながっている。ノートが完成すると,シール
や賞状で賞賛したり,よいノートづくりを紹介した
りして意欲化を図っている。
【学習の積み重ね】
Ⅳ
研究の成果と課題
成 果
(1)各教科等において
各教科等において言語活動
において言語活動を
言語活動を充実させた
充実させた授業
させた授業づくり
授業づくり
① 国語科と
国語科と他教科等の
他教科等の関連を
関連を図った効果的
った効果的な
効果的な取組
○
国語科で培った言葉の力や表現様式を他教科と関連させるために,年間指導計画の中
に国語の領域ごとに関連を位置づけ,実践を通して修正を加えたり,指導案の中に位置
づけていったりする取り組みを通して,どのように他教科に生かしていけばよいか明確
になり,具体的実践に生かされてきている。
【指標1
指標1の数値の
数値の改善】
改善】
② 考えを高
えを高め合う交流活動の
交流活動の支援
○ 各教科のねらいに迫るために「交流活動」の目的を意識し,発達段階やねらいに応じ
て話型・交流の形・発問・助言・視点の明確化等の支援を効果的に行うことによって伝え
合うことから高め合う交流活動を目指すことができつつある。
【指標2
指標2,3,4の数値の
数値の改善】
改善】
③ 考える力
える力を育てるノート
てるノート(
ノート(ワークシート)
ワークシート)指導・
指導・表現物
○ 単元を通して,交流や評価を繰り返し,思考のあとが残るノートやワークシート・表
現物を効果的に指導していくことで自分の考えを表現する力が育ってきた。
【指標5
指標5の数値の
数値の改善】
改善】
(2) 学びを支
びを支える活動
える活動の
活動の工夫
① 言葉とふれあう
言葉とふれあう場
とふれあう場
○ 校内に学びの交流の場を作り,児童の学習成果や行事等の表現物を掲示するだけでな
く,楽しく言語にあふれ,言葉遊びに興味がもてる参加型の掲示を工夫することで児童
の言語に対する興味・関心を少しずつ高め,語彙の増加,表現様式の広がりを目指すこ
とができた。
【指標
指標6
指標6の数値の
数値の停滞】
停滞】・・・ 掲示物の入れ替えがアンケートの後であったため時間経
過による興味関心の低下が原因ではないかと考えられる。
② 表現の
表現の場
○ 音読集会では,保護者へのめあての明確な提示,「全校ことば遊び」の意欲化等により
毎年内容の充実を図り,学ぶ意欲化,読みの深まりにつながっている。
③ 読書活動
○ 読書活動の推進のために,昨年度から継続している朝の読書・民話の読み聞かせ・体
験型図書購入など地道な取組により,読書に対する興味をわかせ,読書の機会を増やす
ことができている。
④ 基礎学力の
基礎学力の向上
○ 自主学習にねらいと振り返りを書き込ませ,自己採点のやり方や学習し終わったノー
トの展示方法,相互評価の場の設定などで,さらに意欲的に取り組む児童が増えてきた。
課 題
●
●
●
各教科での言語活動の充実を図った指導の実践の充実
発達段階や習熟度に応じた交流活動の実践の積み上げ
次の学習につなげる適切な評価活動
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