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第2章 直接形メタノール燃料電池の基礎特性
直接形 メタノール燃料電池 の基礎特性 第 2章 神谷信行 1 * は じめに 燃 料電 池 の 発 見 は 1801年 の Humphrey Davyと い われ て い るが 電 池 の 構 成 図 を伴 った実験 の言 d述 は 1839 1l William Groveに よ ってな され た とい われ て い る。 グ ロー プrllは 希硫酸 中 で 本 の電 気分解 を行 い 発生 した水 素 と酸 素 が電極 反応 で起電 力 を発生 し 元 に戻 るこ とを確 かめ この 電 池 をい くつ か直列 に接続 し 一つ の電 解槽 で本 の電 気分解 を行 った。 この燃 料電 池 の 実験 ジェ ミニ宇宙 船 に燃 料電池 が搭載 され て あ らため て はそれ以来 それ ほ どの 発展 をみ なか ったが 宇宙船 では燃 料電 池 が なければ実験 や宇宙飛 行 燃 料電 池 の 価値 が 見出 され た感 じがす る。現 在 士 の 生 命 さえ危機 に接 す る こ とにな る。宇宙 船 では水 素 を燃料 に酸 素 を酸 化斉1と したア ル カ リ型 燃料電 池 が使 われ て お り 現在 これ ほ ど実 用的 に使 われ て いる例 は他 に ないが 使 われ る電 解 質 で分類 したア ル カ リ形 りん酸 形 高 分子 形 な ど多 くの燃 料電池 が開 発 され てい るが 解 質 を使 って どの よ うな燃 料 を供給 す るか 性 の あ る もの は直 接 メ タノール形 燃 料電 池 小型 溶融 炭酸塩 形 詳細 はわか らな い。 固体酸 化物 形 固体 超小 型 の燃 料電 池 と して どの よ うな電 可能性 はい ろい ろと残 され てはい るが 一番 可能 (DMFC)で あ ろ う.総 論 で も取 り扱 って は い るが こ こで は DMFCの 基礎 的 な事 項 につ いて述 べ る_ DMFCの 構成 は原理 的 には 水素 ‐酸 素 の PEFCと 同 じで あ り た 現 在 は団体高 分子 を電 解 質 に し いわ ゆ る電極 ―膜 一 体化構 造 の もの が広 く使 われ てい る (図 1 渡辺 ら)。 図 2は 1984年 に 日立評論 に掲 載 され た DMFCの 電 池 の 概 念 図 で あ る 電性 膜 を使 わず に こ こでは プ ロ トン導 メ タノール を硫 酸 溶液 に溶解 し燃 料極 に供給 して い る。 この DMFCを 使 っ た ゴル フカー トが運 転 され た 2000年 秋 には 1。 DMFCを 1). 搭 載 した ゴ ー カ ー トが ダ イム ラ ーか ら発表 され て 車 載 用 と して も に わ か に現 実味 を帯 び て きた 。 発電 効率 は メ タ ノール改 質 形 とか わ らな い 高効率 アし ロ スア ラモ ス研究 所 40%を クリ (LANL)の 250W 39%を 上 回 る性能 を示 した と報 道 され た.し か し その 後 の DMFC卓 開発 の 動 向 はない よ うで ある。 ‐ 方 携 帯電話 用燃 料電 池 が Power Holster prototypeTMと して発表 されて超小 型燃 料電 池 と * Nobuyuki Kamiya 横浜 国 立大学 大学院 工学 研究院 機 能 の11生 部門 教授 21 超 小型燃 料電池 の 開 発 と今後 の 展望 電 解 質 ネ ッ トワー ク アノー ド角 虫 媒層 高分子電解質膜 図l ガス拡散層 PEFCの 概念 図 ・ 気 気 ︱ ・ 水蒸 カツー ド角 虫 媒層 メ タノ 電解 質 ――― ― J 痢 ■ :Q+“ C・ OH+地 0 “ -3H20 _______[■ 1° 21lH・ +6e CH00H+:02-C02+2H20 図2 メタノール燃料電池の原理 図の左側が基本単立になるセルの断面図で 有,1が その 中央部の拡大図である メタノールと空気中の酸素が反応 して 水と二酸化炭素 を生成 し この時電力が発生 する して DMFC普 及 へ の 可能 性 が示 され て 帯電話 プ用 PDA VTRな 世 間 を驚 か せ た (図 3)り 。最近 は ノー トパ ソ コ ン 携 どの 電 源 用 と して 各社 開 発 が急 ビ ッチ で あ る (表 非常 用電 源 と して loowの 20Wの 出 力 DMFC(図 4)を DMFCを 1)。 YUASAは キ ャ ン 東芝 は ノー ト型 パ ソコ ン用 と して平 均 12W 最大 カ シオ計算機 は マ イ ク ロ改 質器 を使 った メ タ ノール燃 料電池 を 開発 して い る (図 5). 携 帯電 話 は待機 中 で 40mW程 度 ル ギ ーは得 られ ないが 22 通話 中 で lw程 度 で あ るの で 燃料電池 だ けでは [分 なエ ネ 電 源 の二 次電 池 の 充電 用 と して使 うこと を考 えれば 問題 はな い。燃 料電 第 2章 直接形 メ タ ノール燃 料電 池 の 基礎特性 図3 PowerHo ger"責 ″ ・ ■ 図4 の携帯電話 東 芝 ノー トパ ソ コ ン用 小 型 メ タ ノ ール 燃料 電 池 池 の 実用化 で ネ ックにな って い る主 な課題 の 一つ は コ ス トで これ は決 して避 け る こ とがで きな い 問題点 で あ る。現 在燃 料電 池 の 価 格 は数 千 USS/kW以 上 とい われ て い るが ガソ リンエ ンジ ンで は その 1/100の 数 十 US$程 度 で あ るか ら 車載 用 と して は1支 術面 だけで は解 決 で きそ うも な い。 それ に比 べ て 携帯電 話 の リチ ウム イオ ン電 池 の 価 格 が数 千US$弱 で あ るこ とを考 え る と 携 帯電 .ll■ lと しての 見通 しは明 るい それで も各社 発売 予告 が少 しず つ 後へ 延ば され てい る こと を考 える と 技 術面 で まだ まだ問題 が残 され て い る もの と思 われ る. 2002年 ドイツで行 われ た国際 電 気化学 会 の 燃 料電 池 の 発表 の 多 くが DMFC関 連 で あ った こ と も 地 域 差 は あ る と して も DMFCに 期待 す る と こ ろが大 きい よ うで あ る。 もち ろん これ は 車 載 用 と してで は な く 小型 を 目指 して開 発 が 進 め られ て い る .し か し DMFC実 用化 に 対 し て は い くつ もの 課題 が あ り 広 く普 及 させ るに は まだ まだ時 間 が かか りそ うで あ る `課 題 の 中 で は水素酸素 の燃 料電 池 PEFCで も取 り上げ られ て い る酸 素還 7Cの 問題 オ ーバの 問題 膜 中の メ タノール クロ ス メ タ ノール反応 生成物 に よる 被毒 の 問題 な ど 燃 料電池 に関 す るす べ ての 課題 が 未解 決 とい って も過言 ではない 2 DMFCの 仕 組 み ,熱 力学 21 電池の基本構成 燃 料電 池 は他 の どの 電 気化学 シ ステム とも共通 して あ る電 解 質 か らな って い る (図 の違 い 1)。 電 子伝 導体 であ る電極 と イオ ン伝導 体 で どの燃 料 電 池 につ いて も基本 的 には 同 じで あ るが 電 解質 作動温 度 の 違 いで電 池構 造 は異 な る. [, 電極 :電 極では活物質 (燃 料 酸化剤)と 電解質が電極と接する部分 すなわち二相界面 超小型燃 料電池 の 開 発 と今後 の 展望 表 1 小型燃料電池の開発動向 ノー トハ ソ コ ン 多目的 メー カ ー 名 取υ Fraunhofer カシオ計,機 A勁 ヽ Smart Fuel Cell lnstltute (独 ) 日標実 用 化時 期 2003年 2004年 未定 2004年 こ ろ 使 用燃 料 メ タ ノー ル メ タ ノー ル 水素 ガス メ タ ノー ル 発電 方 式 DMFC 出 力密 度 100ヽ V t, 燃沐│タ ンク :2′ :W350× L380× H420 寸法 (mln)25kg 徴 主な用 途 :キ ャ ン フ 用電 源 災害 時 非 常 用電 源 - )rwvilij{. 100mヽミ 作動時間 :8時 間 特 ./ 遠隔 観 測機 器 用 電 源 ロボ ッ ト用電源 携帯用 MTI Micro Fuel 不明 ) 不明 FCハ ックの 大き さ 水素 吸 蔵 合金 に 水 は Liイ オ ン電 池 ハ 素 を吸 蔵 14Vで コ ス トは Liイ オ ン ッ クと ・lじ で キ ー 50Wの 出力 駆動 ボ ー ドと液 品 ハ ネ 時 間 3時 間 スヘ ル を つ な ぐ ヒ ン ジ ー ス を余計 に取 る じ 部 に 収 納 重 さは Liイ オ ンニ 次 電 池 の 半 分 20時 間駆 150mlの ー トリッジを使 い 8 r7ス PDA(Personal Digital Assistant) (',t) Motorola Labs 東芝 オ ーバ 対策済 カ メラ 体型 VTR Fraunhofer Institute (8.) 2004年 ころ 2004【 F 2004年 こ ろ 未 公表 未定 メ タ ノー ル メ タ ノー ル メ タ ノー ル メ タ ノー ル 水素 ガス Dヽ lFC max 50mW cm ' DMFC DMFC DMFC 純水素方式 不明 30mW cm 2 未 公表 80mW cm 2 出力 は 100mW 外 形 サ イズ は 5cm× FCだ けで駆 動・T能 FCIま ク レジ ッ トカ PDA付 き携 帯電 話 10mlの ー ド大 に 外 flけ して 駆 動 デ ー タ採取 中 待 ち受 け 時 50n遠 で 26時 間 通 話 時 500mAで 26時 ∞ mWcm 間 カセ ッ トテ ー フ 大 の カ 純 メ タ ノー ル を使 用 出 力 25W ク 動 可能 Cell(米 ) 1次 電 池 とほ ぼ 同 -10時 間駆 動 可能 必要はな い SarsllngAdけ anced institute (韓 国 ) DMFC 純水素方式 2(20で max 2で 26W メタ ノール で約 4V40時 間駆 動 5cm× lcm 可能 40℃ で作動 95%メ タ ノー ル と 化 に成功 水 タンクを内臓 メ タノール を 3∼ 6% まで希釈 して使用 小型 直径 3cm× 高 さ5cnl の 金属製 タンク 121 の 水 素 ガ ス ガ ス圧 15気 IIlax10や 力は '[出 V8VLlm cm 2で 80mW cln 2 3'寺 間卿 上 で電 気化学 反応 が起 こるの で 電 極触媒 は量 の 問題 で はな く二相 界面 に いかに よ く分散 し てい るかが重要 で ある.同 体 高 分 子を電解 質 に使 うと通 常 は膜 に接 す る部 分で しか反応 が起 こ らな いの が 図 6の よ うに電極 基 体上 に触媒 を分散 させ い電 解 質膜 オ ン交換体 )で 覆 って ある。 (イ さ らに触 媒 を取 りl■ む よ うに薄 燃料極 超小 型燃 料電 池の 燃料 と して必 ず しもメタ ノール に限 った こ とでは ない が 燃 料 とす ると して も 温度 が高 くなれ ば の構 造 2` 触媒 も メタ ノール を メ タ ノール蒸気 を供給 す る可能性 もある。燃 料極 それ ぞれ に対応 した もの が 必要 に な る。 ここで は水素 ―酸 素燃 料電 池 の 反 第2章 直接形 メタノール燃料電池 の J_t礎 特性 隼Sヽ との イ メー ジ 実用イ 上段 :ノ ー トPC用 モ ジ ュール F子 =デ ジ タル カ メラ用 モ ジ J― ル 超小型改質器 (イ メー ジ (マ 表 ) イクロ リアクター ) 裏 図 5 カシオ計算機の マ イクロ改質器 を使 った メタ ノール燃料 電池 応 を例 に取 る と 燃 料極 で は 月 1電 子反応 が 起 こ り 電 流 が 流 入 す るの で 負極 で あ る 。 H2=2H.+2e ・ 酸素極 酸 素 の 選 元 が起 こ リ カ ツー ドと して 働 く_正 極 で あ る _ 1/202+2H++2e =H20 (2) (' 電解質 :電 極 は物質 と電子のや りとりの場であるが その際 イオ ンが必ず関与 し この イ オ ンが もう一つの電極へ移動 して電極反応 を進める.電 流 は イオンの動 きとイオンの 数で決 まるので 電解質 としてはで きるだけ イオ ンが動 きやす く 膜に含まれ るイオ ンの数 が 多い 25 超小型燃料電池の 開発 と今後の展望 白金担時 反応 ガ ス → ● :電 極反応 に有効 な白金融媒粒子 ○ :有 効に働いていない 白金触媒粒子 図6 触媒を取巻 く高イオン導電性電極構造 方 が よい.す なわ ち EW(イ オ ン交換容量 の逆 数 )が 小 さい ことが望 まれ る。 また を上げ る とイオ ンの動 きは活発にな リ イオ ンが動 きやす くな るの で液抵 抗 は下 が る. 電解 質 は どの場 合 もカチオ ンとアニ オ ンか らな り るこ とにな るが 温度 どち らの イオ ンが動 いて も電 気 を伝 え 団体 高分 子電解 質 で は ア ニ オ ンで あ る スル ホ ン基 が固定 され て い るの で カチオ ンで あ る水 素 イオ ンが伝導 に 関係 す る。従 って伝 導 だ け を考 えれ ば 水素 イオ ンの 数 が 多い膜 の 方 が よいはず で あ るが 膜 の 強度 EWが 小 さく ク ロスオ ーバ な ど も関係 して 一概 に EWの 問題 だけではない 。 0 燃 料電 池 には この他 に電 流 を取 り出す カ レン トコ レク タ 電 解質板 の重要 な部材 が あ るが さらに燃 料改 質器や 脱 硫器 セバ レ ー タなど 多 く 加湿 器 な ど本体 を支 える機 器 が必要 で ある. 22 燃 料電 池発電 の熱 力学 化学物 質 の持 つ エ ンタル ビー″ (enthalpy)と ギ ブズエ ネル ギ ー G(Gibbs energ)に は次 の 関係 が成 り 立つ 。 △G。 =AH。 一 TttSO (3) 蟹プ はエ ン トロ ビー変化 で あ り TASOの 熱 の 出 入 りが起 こる。 25℃ (298K)で は H2+1/202=H20(′ ) (4) の反応で生成する水を液体 として考えると 型プ =-285 83kJ/mol △G° =-237 13kJ/molと なる。水を水蒸気 (気 体)で 計算すると 型7° =-24182k」 /molに なり 液体 として扱う場合 よりも熱量は少なく出 る.液 体の場合 HHV(high heating valuc)気 体の場合 LHV(low heating value)と して熱量を計算する。 26 第 2章 直接 形 メタ ノール燃料電 池 の 基礎特性 水素 を燃焼 させ ると型プ に相 当 した熱 は出 るが 池 で 反応 させ る と△G° 仕事 は取 り出せ ない。 これ に対 して に11当 した電 気 エ ネル ギ ーが取 り出 され るが 熱 は 」り で な く けが放 出 され る.こ の電 気 エ ネル ギ ー は反 応 の電 子 数 と フ ァラデ ー定 数 燃 料電 ,s° だ Fで 割 って 123Vの 起 電 力 と して 取 り出 す こ とが で きる L/D=― △G° /11F=123V (5) 。 酸 素 の持 つ 化学 エ ネル ギ ー は △″ で 考 え るの が 普通 で あ るの で 水素 燃 料電 池 に よ るエ ネル ギ ー変換 効 率 は η=△ Gツ △″ とな り ° (6) 25Cで は HHVJ_t準 で 083と 25Cで は上 で述 べ た起電 力 関 数 で あ る.△ G° に比 べ て △″ 0 な る。△GOは 温度 とともに変 わ るの で効 率 も変化 す る。 効率 が計算 され るが それ らは (3)式 で表 され るよ うに温度 の △SOの 温度 依 存性 は小 さいの で おお ぎっばな計算 で は一 定 と 考 えて計算 す る こ とがで き 温度 の上 昇 に伴 い △GOは 減 少 し 理 論起電 力は低 下す る. 燃 料電 池 発電 の 効 率 は常 に火力発電 は エ ンジ ンの 効率 な ど と比較 され るが 変換効 率以 上 に メ リッ トの 多い使 われ 方 をす るの で 効 率 よ りも安 全面 超 小型燃 料電 池 で 機 動性 、エ ネル ギ ー密 度 が要 求 され る. 2 3 DMFCの 熱 力学 計算 メ タ ノール を燃 料 とす る燃 料電 池 の 起電 力 は (7)式 の よ うに 6電 子 の や りと りで反応 が完 全 に進 んだ と き生 ず る自由 エ ネル ギ ー変 化 を 6Fで 割 って (2)式 の よ うに 121Vと な る CH30H+3/202=C02+2H20(′ )△ GO=-702 4kJmol 1 (7) υO=― △OP/6F=121V 一方 . (8) (7)の 反応のエ ンタル ヒー変化は△♂ =-7265k」 mol lと な り これを化学 エ ネルギ ー と考 えると化学 エ ネルギ ーを電気エ ネル ギ ーに変換す る効率は ,t:LGolc'IIJ:O97 (9) とな る。理 論 的 に は メ タ ノールの 化学 エ ネル ギ ー (エ ン タル ピー変化 に相 当す る)の ほ とん ど 100%が 電 気 エ ネル ギ ーに変換 され る こ とにな る。 メ タ ノール lmol(約 り 32g)か ら得 られ る電 気 エ ネル ギ ーは ギ ブ ズエ ネル ギ ー変化 と同等 で あ 7024k」 の 値 は 702 4kWsあ るい は 195 1Whに 相 当す る。 lW消 費 の携 帯電話 で は約 200時 間 の 連続通 話 が 可能 で あ る。 1充 電 で連 続通 話 160分 の 充電式電 池 べれ ば (リ チ ウム イオ ン電 池 )と 比 同 じ通話 時 間 で もメ タ ノール で はわず か 044gで よい こ とにな る。 もち ろん これ は理 論 値 で あ り 反応 には メタ ノール と等 モ ルの 水 を加 えな くては な らな い し 燃 料電 池 の 効率 の低 さ 燃 料 利用率 等 を考 える と数倍 の メタ ノール水 が必要 に な る。 それ で も万年筆 の カー トリッジ程度 超 小型燃 料電 池 の 開 発 と今後の 展望 の もの を持 ち歩 けば充電 に要 す る煩 わ しさが な くな るわけ だか ら こんなに 便利 な もの はな い だ ろ う。 携 帯電 話 は待機 中で 40mW程 度 ルギ ーは得 られ な いが 燃 料電 池 だ │サ で は十 分 なエ ネ 通話 中で lW ttlFIで あ るの で 電 源の 二次 電 池 の 充電 用 と して使 うこ とを考 えれ ば 問題 はな い .燃 ll電 池 の 実用 化 で ネ ッ クに な って い る主 な課題 は以 ドに示 す が コ ス トは避 け られ ない問題点 で あ る 現在燃 料電 池 の 価 格 は数千 US$/kW tt Lと い われ て い るが ガ ソ リンエ ン ジンで はその 1/100 の 数十 US$程 度 で あ るか ら 技 llr面 だけでは解決 で きそ うもな い それ に比 べ て リチ ウ ム イオ ン電 池 の 価 格 が数 千 USS弱 で あ る こ とを考 え る と 見通 しは Fllる い ,そ れ で も 携 帯電 話 の Power Holster社 の 2001年 発売 予告 が 延期 に な って い る こ とか ら 少 しく らい高 くて もとか 燃 料利用率 が少 々悪 くて もいい とい うこ と以 外 に重要 な問題 が残 され てい る もの と思われ る . DMFCの 起電 力 は (8)式 の 計 算 で 水素‐ 酸 素燃 料電 池 とほぼ同 じとな る.酸 化 剤 と しての 酸 素の 反応 は どち らにお いて も同 じで あ るか ら メ タノー ルの酸 化反応 は本素 とほぼ同 じ電位 で起 こる と予想 す る こ とがで きる。 しか し 実際 には Ptを 使 った電 位走 査で の電 泣 で な い と反応電 流 が 見 られ な い こ とか ら 05V vs RHEく らい メ タ ノール酸 化 の 過電 圧 は 05V程 度 に もな る 同 じPtで も表 面粗度 の 大 きな白金黒電極 を使 えば過電 圧 は低 くな り ことがわか る。 もち ろん 電 極 触 媒 能 を向 上 させ るこ とで過電 圧 は 下 が るが メ タ ノール酸 化 に一 番効 果 的 な触 媒 と して Pt Ruを 使 って もや は り大 きな過電 圧 が必 要 とな る 24 DMFCの 特徴 と他 の燃料 電池 との比較 DMFCは 改 質 の 必要 が ない ため シ ステ ムが 簡 単 で 反応 さえ うま く進 めば 最適 の FCと 考 える こ とがで きる。 しか し rtF々 の 難点 が あ り 車載 用 と して も また まだ開発途上 に ある とい え る。 DMFCの 利点 tl)改 質器 を必要 と しない ため電 池 シ ステムが コ ンパ ク トで ある ● 車載 用 だ けで な く 携帯電 話 等超 小型 の電 源 とす る ことが可能 ● メタノール合成 メタノールスタン ドの インフラは比較的容易 DMFCの 難点 ■)電 極反応 で生 じるCO種 の ため Pt系 の触媒 が被毒 を起 こす 改質型 の H2に 含まれ る CO 種 の 被毒対策 と同 じ ② メタノールの電解質膜への浸透 による膜 の膨潤 3 メタノールの電解質膜透過による起電力の低 ド 改質 ガスの透過性 と1ヒ ベ るとメタノール の方 がはるかに大 きい 28 直接形 メタノール燃料電池の基礎特性 第2章 0 メタノールの毒性 メタノールによる腐食 2.5 燃料電池から得られる電気エネルギー,熱 エネルギーの取 り扱い 理論的に導かれる電池の標準起電力υOは (5)式 で示 したが 単位はV(ボ ル ト)で あリ エ ネルギーその もの を表 してはいない。起電力と電流 (A)の 積VAが 取 り出されるエ ネルギーで あるが VAは W(ワ ット)で あり 単位はJ/sで ある。従って 電池特性がきわめて重要にな る。どの電池で も 取 り出す電流を大きくすると電圧は低下するので取 り出される電気エ ネルギ ーも少な くなる. エ ンタルピー基準で考えると 化学エ ネルギーが実際にどれだけ電気エネルギーに変換 される かがわかるが 電圧降下の原因となる要素も含めた電流rと 電圧 υの関係の一例を図 7に 示す。 ■ S° による降 下は避けられないが その他の電圧降下の原因は大きく分けて ()電 極反応に関係 した活性化分極 2 種 々の抵抗による抵抗分極 ③ 燃料 酸化剤が反応によって減少し ネルンス ト式から計算される起電力の低下によるネ ル ンス トロ スな ど に よ る。 EM=148V H2(g)+1/202(g) -49k」 /n■ ol L=123V(理 論電圧 ) > 出” ▲T II -286k」 /mol -237 kJ/mol │ l 得られるl電 気 エネルギー l 一 月 卜 電流 1 電池 の IV特 性 図 7 燃料電 池 の 電 流 ‐ 電圧 の 関係 29 超 小型燃 料電池 の 開発 と今後の展望 図 の 中で は 1の 部 分 を ア ノー ド カ ツー ドに分 け反応抵抗 と して また2の 部 分 は電極 や導 体 の よ うな電子 伝導 の 部 分 と電 解 質 の よ うな イオ ン伝導 の 部 分 に分 けて示 した.個 々の 問題 点 につ い ては後 に述 べ るが 電 池 反応 は化学 反応 の一つ で あ り 高温 にな るに従 って反応 は起 こ りやす くな り 低 温 ほ ど触 IIの 働 きが重要 に な る。低温 で働 く同体 高分 子形燃料電 池 では電流値 の 小 さ な部分で も大 きな電 l[降 下 が 見 られ るが これ は(1′ )部 分が 大 きい こ とを示峻 して い る. ネル ンス トロ スは燃 料 酸 化 剤の 利 用率 に よ って影響 を受 け 利用率 が低 い程 ロスは少な い しか し エ ネル ギ ー効率 は不1用 率 に大 き く左右 され るの で 多 くは燃 料利 用率 を 70∼ 85%に 保 つ よ うに して tヽ る 理 想 的 には どれ だけ電流 を取 り出 して も電 圧 は開回路電 │「 と同 じで あるべ きなの だが 実際 に は電 l■ 降下 に よ りllRり 出 され る電 気 エ ネル ギ ー は少 な くな り 低 下した分 が熱 エ ネル ギ ー と して 外 部 にlll出 され る. つ ぎに 燃 料電 池 に投 入 され たエ ネル ギ ーが どの よ うに使 われ るか考 える。 (1)平 衡 論 ,電 流 =0の ときのエ ネル ギ ー変換 電流値 が 0と い うこ とは 全 く反応 が進 んで い な い こ とにな るが ここでは非 常 にわず かの 反応 が起 こ ってい ると仮定 し 平 衡論 的 な 考 えに立 って議論 す る。電流値 ≒ 0故 電 │[降 下 もな いの で △0° がす べ て電 気 エ ネル ギ ーに変換 され る。HⅣ 基準 で効率 は 83%に もな る. (2)速 度論 ,電 流 を取 り出す ときの エ ネル ギ ー変換 IF想 的 な電 池 では抵抗 分が oで 電流 を取 り出 して も起電 力 は低 下 しない。従 って 給 され る化学物 質の 化 学 エ ネル ギ ー は 平衡論 で取 り扱 った よ うに て 利 用 され 電 [効 率 は 100%で あ るて しか し 起電 力 は低 Fし 電 池 に供 す べ てが電 気 エ ネルギ ー と し 一般 には種 々の抵抗 の ため 電流 を取 り出す と 低 下した 分の 電圧 は熱 に変 換 され て排 出 され る.電 流 効率 が 100%な らば エ ネ ル ギ ー変換効率 は (1//♂ )(ヾ ヽ 、c° )と な る。 電 r■ 降下 で電 気 と して取 り出 せ なか った残 りの エ ネル ギ ー は熱 と して排 出 され る.ど の種 の 燃 料電 池 で も冷却 しない と排 熱 が蓄 積 され て作動温度 以 上に加熱 され 電 池 が破壊 され る。 エ ネル ギ ー変換 効 率 には この他 に燃 料利 用率 も考慮 しな くて はな らない。 エ ネル ギ ー変換 効率 は燃 料 が 100%反 応 した と きの もの で あ り 燃 料利用率 が 80%な らば 電 池 の 効 率 に さらに 08 を掛 け ることが必要 にな る。 3 DMFCの 現状 と技術課題 31 他 の燃 料電 池 と比 べ た発電性 能 24で DMFCの 特徴 を述 べ たが 現在開発 中の種 々の燃 料電 池 と比 べ た発電性能 を図 8に 示 す。 θ0 第 2草 直接 形 メ タ ノール燃 料電 池 の 基 礎特 性 11 一 MCi'C ― SOiiC ― mFC ―-1'AliC 1 卜 \ Щ鯉ミ 押 09 -1,MFC 08 07 06 05 04 0 100 200 300 400 電 流 密 度 /111Acm 2 図8 各種燃料電池の電圧電流特性 (常 圧,利 用率 70∼ 85%) 電流密 度 の 大 きさに よ り起 電 力 が変 わ るので は言 えな いが 電池 MCFC(溶 一概 に どの タイプの 燃 料電 池 が一 番性能 が よ いか 融炭酸塩 形燃 料電 池 作動温 度 650て )SOFC(国 体酸化物 形燃 料 作動 温度 1000で )の 発電 性 能 が 優れ て い る こ とがわ か る.水 素 ―酸 素 で 作 動 す る PEFC (固 体 高 分 子 形 燃 料 電 池 作 動 温 度 室 温 マ イ ナ ス 120C)も 高 性 能 で あ る が それ に 比 べ て DMFCは その 性能 が他 の 燃 料電 池 に比 べ てか な り低 い こ とがわ か る。 32 321 メ タノールの 反応 反応 中間体 ,被 毒機構 メ タ ノールの 反応 は水 素 その もの に比 べ れ ば は るか に複 雑 で あ る。DMFCの 開 回路電 圧 は理 論 的 には 121Vで あ るが 実際 には lVを 切 って 08V程 度 にな る。 これ は メ タ ノールの ク ロスオ ーバ に よ る ところ も大 きいが メ タ ノール その ものの 反応速度 が遅 い ため に起電 力 が低 下 す る も の と考 え られ る。 メ タ ノール は (7)式 に沿 って反応 が進 めば 簡単 だが し 触媒表面 を覆 い て電極電 位 の低 下 ′ 実際 には い ろい ろな反応 中間 体 が [成 電 池電 圧 の 低 下 につ なが る. 被毒 を引 き起 こす反応 中間体 は これ までの研究 結 果 か らCO種 で あ ろ うと考 え られ てい る。 こ こで い うCO種 は気体 の COと 同 じ もの か ら 活性 点 に 非常 に付 きやす く か ? 被毒 を受 けず に COHの よ うな もの も合め てい る。 これ らは Pし の Pt触 媒 を不活性 に す る。 なぜ Pt触 媒 を使 わ な くて はな らな いの Ptと 同 じよ うな触媒 作 用 の あ る物 質 が 見つ かれ ば DMFCは 急 速 に 実 3ズ 超小型燃 料電池 の 開発 と今後の展 Ci8 用化 に向 か うで あ ろ う CO種 の 生成 に は次 の よ うな機 構 が報 告 され て い る 5.llx着 した メ タ ノール (CH30H)ads が Pt上 で順 に反応 して最終 的 に Pt(CO)adsに な り 被 毒 が起 こる機構 で ある Pt(CH80H)ads CH30+Pt 一 Pt(CH30H)ads ― Pt‐ (10) Pt― (CH20H)ads → Pt― (CH20H)ads+H +e (CHOH)adsttH tte Pt‐ (CHOH)ads → Pt‐ (COH)ads tt H+十 Pt― (COH)ads → Pt‐ (CO)ads tt H +e ― 方 (11) (12) e (13) (14) メタノールの 反応 を定量的 に調 べ た結 果 生成物 は C02の 他 ホル ムアル デ ヒ ドやギ酸 さらにギ酸 メチル な どが検 出 され てお り6 上記の よ うな順次 に反 応す る機 構 では説明 がつ か ず 反応 経路 はよ り複雑で あることがわか る。 CO種 は メ タノールの 濃度 反応 の電 位 に よ って い ろい ろな もの が生 じ る.反 応 す る と きの 電 位 と吸 着物 質 の吸 着 の 状 況 を示 す実 験 か ら epsが 1∼ 2と い うこ とがわ Ptの 活性 点 にplt着 した 被毒物 質 1個 を酸 化す るた か った ''_epsは electron per siteと 呼 ばれ め に何電子 必 要 か を示 す .す なわ ち その 被毒効果 も異 な C01分 子 が Pし 活 性 サ イ トを 1個 占有すれ ば C02に な る まで に 2電 子必要 で epsが 2と な る。 322 触 媒 の働 き 以 外で効果的 な触媒 が な い ことか ら Iltを 中心 に開 発 が進 め られ てい る、被毒機 構 が CO種 Pじ に よ る こ とか ら DMFCl刊 の 触媒 は改 質 ガス対 策の 触媒 と基本 的 には同 じと考 えて よ い。 被 毒 した Ptを f慶 活 させ るに は Pt上 の CO種 を取 り除 く必 要 が あ る.そ の ため には COを 酸 化 して しまえば よい。酸化 の 方法 は ll 空 気 で酸 化 す る.被 毒 した電極 を空 気 に触れ させ れ ば 瞬 時 に COは 酸化 され 毒物 の な い Pt表 面が 復活す る.改 質 ガ スを使 う燃 料電 池 では改 質 ガ スに微 量 の 酸 素 を混 入 させ る 方 法 も考 え られ てい るでDMFCに 対 して これ を実施 す るこ とは困難 で あ る。 ② Ptに 隣 り合 う位置 に酸 素種 を引 き込 む助 触媒 を置 く方法で ある。Pt― Ruが 現 在最 もよい触 媒 と考 え られ て いるが て Ruが Ru上 に Oあ るいは OH基 を取 り込 む働 きが あ るこ とを利 用 し Pt上 の CO種 を酸 化 Ptの 活性 復活 を行 う.Snゃ Auも 同 じ作用 が あ る といわれ てい る。 いずれ に して もPtに 隣接 して助 触媒 が存在 す ることが必 須条件 であ る'。 32 M tt H20 一 M‐ (H20)ads (15) M (H20)adS → M― (OH)ads+H十 +e (16) Pt― (COH)ads+M‐ (OH)ads → Pt― (CO)ads+M‐ (OH)ads → Pt+M tt C02+2H'+2e Pt+M+C02+HI十 e (17) (18) 直接形 メ タノール燃料電池 の基礎特性 第 2章 C 電位 を瞬時 lV以 上に分極 し 電気化学的 に CO種 を酸化す る方法が考えられて い る。電 極表面の活性復活法 としては非常によい方法であるが 実際 に燃料電池の運転下 でこれ を行 うことは無理であろう。 結局 現在 の ところ 2)の 助触媒 を使 う方法が一番有効 で Ptに 代わる触媒 の開発だけ でな く 資源量 として乏 しい Ruに 代わ る助触媒 の開発 が望 まれ ている。 3.3 電 池特性 の向上 いろい ろな情報 が各方面 か ら入 り それぞれ が前後す るので記述 に整合性 が取れてい ない場合 がある. 先 に示 した日立の ゴル フカー トでは 38セ ルの電池 を直列 に し 6× 11(cm)の 電極 で 13V 52Wの 出力 が得 られ てい る。電池 の寸法 は 196w× 190d× 160h(cm)重 量 6kg。 この ゴル ハ フカー トは 12V 27All容 量の パ ッテ リーを積載 してお り 燃料電池 と イプ リッ ドで作動 させ ている。 10 ‐ JARI(Q) O JARI(Air) ,New Castle 08 ‐ LANL '06 日 04 02 00 200 400 600 800 1,000 電 流密度 (ntAcm 2) O JARl(Air) O New Castlc 0 0 0 0 1 2 → tミ〓︶毬椰 択■ ‐ JARI(02) 200 400 600 800 1,000 1,200 電流密度 (mAcm り 図9 左はVl特 性 0MFCの 特性 Iの 関係 右 は出力密度‐ θ3 超小型燃料電池 の開発 と今後の展望 LANL(Los Alamos Na,onal Laboratorv)の 電池特性 を図9に 示す °、 日本自動車研究 所の デ ー タもい っ しょに示す " LANLの 特性は 130℃ の もので あるので一概 によヒ較 はで きないが これだけの性能 が持続すれば自動車 への搭載 も期待 され る.19“ 年 に発表 され た ものであるが その後 1998年 にはセル効率 18-34 36%を ク リア。19%の 時 027W/cm2(05V)36%の 時 01師Wcln2(05V)を 報告 してお リ デ ー タの 更新 が期待 され る. 1999年 には Siemensが DMFC7セ ル ス タックを開発 した,05V メ タノール ー酸 素 で 025Wた m2 空気で olヽ ヽ 7cm2の 出力である。 図 2に 示 した携帯電話の DMFC"で は実際 に電池 を作動 させた実験例 としての報告はあるが メタノールが loo%反 応 して生成物 が C02と 水 にな ってい るのか メタノールや中間体 としての ホルムアル デ ヒ ド等のlll出 に関 しては どうかな どについての詳細 な報告 は 見られない 。 3.4 DMFCの 技術課題 図 10に 水素 ―酸素 PEFC DMFCの 電極電位 と電流密度の関係が示 されてい る 1° は電解質膜の抵 抗 に よる起電 力の 低下 は 含まれて いな い。酸素 カツー ドの 分極 .こ の 図 に 改質 ガス中の COに よる分極 の 大 きさがぃかに影響 を与えているかがわか るが メタノールの反応の さ 遅 極 の大 きさ)が さらに大 きな問題になっているかが わか るであろう。 (分 改質 ガスを燃料 とするPEFCで は coに よる被毒 が生ずるため 電極触 と して 媒 現在有望視 されている Pt_Ru以 上の性能 を持 った電極 を開発す ることが重要 で ある .DMFCで は メタ ノールの反応が水素 に比 べ て遅 い上 中間生成物 で あるCOに よる被毒の 問題 が PEFCの 時 0 0 3 0 0 2 0 0 1 ︵ T日ツピ ︶ 盤 裡斌 ぼ E/ア vs RHE 図 10 34 H2,CH00H,o2の 分極特性 第 2章 直接形 メ タノール燃 料電 池の 基礎持性 と同様 に起 こるため ,こ れ を解 決 しない限 り実用化 は難 しいて PEFCで は電 解 質膜 の 問題 は ,主 に高温 下 での 膜 の乾燥 を防 ぎ 性 を上 げ るかで あ るが DMFCで は それ らの 問題 点 に加 え 伝導性 をよ くす るか 耐熱 さらに メ タ ノールの 透 過 をい か に防 ぐか が大 きな問題 とな ってい る。水素 ―酸 素の透 過性 に比 べ て メ タノールの 透 過性 は 非常 に大 き く メ タノール が酸素極 へ透 過 す れば 酸 素極 の 特性 が大 き く低下 す る。 PEFCと DMFCを 比 較 してみ る と PEFCで 一 番問題 とな って い る酸 素 の 還 元反応 は どち ら PEFCは 実 用 にな らな い と も言 わ も同 じ課題 と して残 され て い る.こ れ が解 決 しない限 り れ てい る。 現状 は Lの 3点 共 に 未解決 で あ り 大 きな課 題 で あ る。以 下に問 題点 と最近 の 研究 につ いて述 べ る ` 35 電解 質膜 の伝 導性 とメタノ ール の クロス オ ーバ 電 解 質 部分 は電 気 化学 システ ム を使 う限 りな くて はな らな い もの で あ リ イオ ン伝導 性 で な く て はな らな い。 しか し 必ず しも固体 高分子 に限 った もの で な くて もよ い。宇宙 船 内 で 使 われ て い る燃 料電 池 の電 解 質 はアル カ リ液 で ある し 高温 作動用 の もの では固 体酸 化物 セ ラ ミック ス も 使 われ て い る. この 中 で アル カ リ電 解 質 は生成物 の C02が 電 解 質 と反応 し電 解 質 が 劣化 す るの で DMFCに は 向 かない し 固体酸 化物 の よ うな セラ ミック スは瞬 時 に作動温 度 まで昇温 はで きな い こ とと 常 時 温 度 を保 つ こ と も難 しい 。 この よ うな こ とか ら DMFCで は現在 ン導電性 で あ リ る。 一方 車載用 携 帯機 器 小 型 の 電 池 を考 え た 固 体高 分子 電解 質 を使 う とい うの が 主流 で あ る。同体 高 分子 電解 質 は プ ロ ト プ ロ トンが数個 の 水分子 を伴 って移動 す るため 水 と メ タ ノールは相溶 性 で無限 に溶 解 す るため 常 に加湿状態 で使 う必要 が あ 水 分子 の 移動 に 合わ せて メ タ ノール もア ノー ドか らカ ソ ー ドヘ リー クす る。 この 現 象 は ク ロスオ ーバ ー と して電 池性 能 を著 しく低 下 させ る。 メ タ ノールの電 極 反応 が遅 い こ とや 被毒 をで きるだけ回避 す るため に 少 しで も高温 で行 うこ とが望 まれ る。電 解 質膜 は高温 で は膜 が乾燥 す る とい う問題 が生 じるの で Si02等 を含 ませ て い 膜 中の 水分 を保 つ工 夫 も行 われ てい る 。その 他 に メタ ノールの クロスオ ーパ ー を防 ぐ ため に 従来 の 膜構 造 に スチ レン基 を導 入 してパ リア性 を高 め る工夫 も行 われ てい る。耐 熱性 で は スル ホ ン イ ミ ドを含む 高 分子 が開発 され てお り 3.6 200℃ での特性 が報 告 され て い る。 酸素 カ ソー ドの 反応性 酸 素 の 還元 反応 に 対 しては Ptが 一 番 よ い触 媒 とい われ て い るが それ で も十 分 な反応 性 が得 超小型燃料電池の開発 と今後の展望 °‐° ° Y 手 Pt (a) 「 Pt (b)rda Pt (c) H 92H十 +2e2恥 0 0 2 蹄 % H+ H 911土 e01,9H++e9 (d) Pt o: 2r' Pt Pt 5d″ 5d斤 OJ吸 着‖の増加 O― Pth:介 力の‖珈 lt r移 ■の低 ド ! 1 O-0結 合力の低 〓ヽR”δ `′ 5dt rの 欠‖1増 加 0 20 40 60 80 100 Ni CO Fe atOm% 図 1l Pt合 金触媒の02還 元活性増大機構 られ て い な い 。Pt上 に吸 着 した 02の 結 合 をゆ るめ て OH結 合 を作 れ ば酸 素還 元 が起 こ りやす い と考 え られ 5d電 子 を含む金属 とPtと の 合金の特性 が調 べ られ てい る。図 11に 原理 図 を示 す u)。 4 DMEを 燃 料 と す る DMFC形 燃 料 電 池 DME(dimethyl ether)は メタノール 2分 子を脱 水 した もので あるが メタノール に比 べ て電 解質膜の透過性 が低 い 易 に液化がで きる等 メタノール に比 べ毒性 がない。常温で気体であるが 少 し加圧すれば容 多くの利点があり 研究 が進め られている。水素 に比 べてエ ネルギ ー密度 は大 きく 反応性 が向上 して DMFCと 同 じように扱 うことがで きれば用途 は格段 に広が りを見 せ るもの と考えられ る。 しか し まだ実験段階で DMFCと 比 べ て電池特性はよくない。図 12 に DMEFCの 特性を DMFCと 比較 して示す 2)。 5 DMFCの 小型化 に向けた新 しい技術 と今後の展望 DMFCで は メ タ ノール の 電 解 質透 過 が深亥1な 問題 で あ るが フラー レン系 の プ ロ トン伝導 体 13)や 常温 溶融塩 を電解 質 にす る研究 が進 め られ てい る Na■ on`系 の場 合 は プ ロ トンの (図 θθ B)。 第 2章 直接形 メタノール燃料電池の基礎特性 0 60 ―-130 皇 ―――― 100 160 1/"ハ mo 260 ∞ “ Ю 田 つ Ю m 一 Ю O ]: 言 ・ 一│・ ゴ lI'・ ミ ∞ol′ ミ ミ : 000 (-0-IPい aη 2 m2■ ω ,′ "′ "' ●uro md■ ―■― ′ い0■ヽ● ●面o,● oc,os 山 ●:Щ d u sooこ n● Tcm"`,ure l]● C lo● usm=● ●hmol、 ●dl ■― )負 山 Щ●● mienc,.` 1-。 一 りPO m2,00● _ur● ●ユ u`:■ 8D∼ E、 い●:ut』 o,● ● 。 χ (Temp● ほt,ol=CC `d,■ 図 12 よ ヽ メ0 3 5ミ 0 ^ ヽミ お 、こ 「 :肇 :OO 叙蜘﹃硼卸費鋼調狙爛0 ミ酬卜 Ⅲ… =… …‐ボ イ000 `釉 0MFCと DMEFCの 特性 比較 左図 DMEFCと 右図 DMFC フ ラー レン 図 13 フラーレン系 プロ トン伝導体 移動 に水 分 を伴 うの で加湿 が 必要 であ るが これ ら新規電 解 質 は プ ロ トンの 移動 に水 を伴 うこと がないの で電 池特性 は飛躍 的 に向上 す る もの と思 われ る. メ タノール酸 化 には触媒性能 が 大 き く影響 す るが ン を担 体 に した 新 しい電 極 の 開発 で カーボ ンナ ノチ コ ー ブ 携 帯電 話 へ の DMFCの 搭 載 に弾 み がつ い た感 が あ る。試 作 品 が 公開 され て い る。 Pt微 粒子 は長 時 ]]使 用 して い る と凝 集 が起 こ るが ンで は表 面 にll着 した Pt微 粒 子 がナ ノホ ー ンの 突 起 の 隙 間 に 入 り込 み る ため カ ー ボ ンナ ノホ ー 従 来 の 活性 炭 を使 った電 極 に比 べ Ptの 使 用 が 少 な い上 カ ー ボ ンナ ノホ ー 凝 集 しに く くな って い 電 池性 能 の 低 ドが起 こ りに く い と考 え られ てい る。 電 池 その もの は基本 的 に は広 く使 われ てい る MEAタ イプの もの を積層 に す るの で は な く 平 面 に並 べ 回路 を直列 に構成 し 製造 工 程 コ ス ト削減 が図 られ て い る。図 14に は超 小型 llA料 電 池 の セル 基盤 の写 真 を示 す。 中空 フ ァ イパ ーの 壁面 に触 媒 を付 着 し 電 極 と した超 小型電 池 へ の 試 な が な され て い る。 lM H2S04+3M CH,OHで 270mV 143mWcm 2 3M KOH+3M CH30Hで 2 8mWcm 2が 得 超 小型燃料電 池 の 開 発 と今後の展望 図 14 超小型燃オ 1電 池 のセル基板 られ て い・ る .燃 料供給 廃棄物 の取 出 しな ど課題 は残 され て い るが 非常 に コ ンパ ク トで また 形状 が フ レキ シブル で あるので使 用状況 に あわせ た電池 の製 作 が 可能 で あ る。 DMFCの ゴル フカー トや ゴ ー カ ー トヘ の 搭 載 はデモ ンス トレー シ ョ ンとは い え 題 で あ る.さ らに 携帯電 話 や 夢 の あ る話 ハ ソコ ンの 電 源 と しての応 用 まで期待 が膨 らむ。本書の 企画 で あ る超 小型燃 料電 池 は燃 料 一つ を とって もメ タノール に限 った ことではない し 電 解 質 も固体高 分子 に限 った ことで もない て また 性 が (無 限 ?)に メ タノールの他 に もい ろい ろな燃 料 が検 討 され て 7_り ある とい って も過言 ではないだ ろ う。 超 小 型燃 料電 池 は安 い電 力を得 るエ ネル ギ ー変換 器 と考 えな くて もよいが き下 げ るために触 媒 量の 低減 津 久井動 しか し 価 格 を引 エ ネル ギ ー密 度 を上 げ る ための 工 大な どまだ まだ課 題 は 多い . 文 1)田 村ツ、 毅 加茂友 一 工藤徹 一 献 日立評論 66 49(1984) 2)R G HOckaday cι αι ,2000FUEL CELL SEMINAR,791(2000) 3)http:″ ― w Loshiba cojp/abou1/press/1ndexJ htm プ レス リ リース 2003年 3月 4)httpッ 7w、 ″w caSiO Cojノ NeWS Release 2002年 6月 3日 5)神 谷 信行他 固体 高分子型燃 料電池 の 開発 と応 用 6)K Otaθ ′αι,J 7)西 田仲道 Eι ecι NTS(2000) ″ m2α ′Cル れ ,179,179(1984) 修十論文 ,横 浜国立大学 (1991) 8)X Ren,M S Wilson,S Gottesfeld,J E72c`r∝ ″ れ Soc,143,L13(1996) 38 可能 5日 第 2章 直接形 メタノール燃料電池の基礎特性 9)前 田 啓他 自動車研究 22 412(21X10) 10)山 田興一等 平成 11年 度自動車用燃料電池技術の現状 ・動向調査 、石油産業活性化 センター (RE)調 査研究成果報告書 (1999) 11)T TOda,H Igarash,M Watanabe,The ge∞ nd lnt Fuel Cell Workshop,p158(1998) 12)J T Mullereι 配,J EJecrracル s● ●,147,4058(20CЮ ) “ 13)燃 料電池 燃料電池開発情報 センター 1(3).33(2002) 14)石 九 岡田 `シ ンポ ジウム :21世 紀の燃料電池技術 p8(2001) 39 マ イ ク ロ燃料電 池 ・ マ イク ロ改 質器 第 3章 田中秀治 1 マ イクロ燃料電池 の魅カ マ イ クロ燃 料電 池 の 確 立した定 義 は な い が こ こでは マ イク ロ燃 料電 池 を 10W以 卜級 の 燃 ll 電池 と定義す る.マ イク ロ燃料電 池 が注 目 され る最大の理 由 は ある * た と えば その 高 い理 論 エ ネル ギ ー密 度 に 後述 す る能 動 形 直 接 メ タ ノール 形 燃 料電 池 (direct meし hanol fllel cell DMFC)は 20%の 発電 効 率 で も リチ ウム イオ ン電 池 の 数 倍 以 卜の エ ネ ル ギ ー密度 を実現 で き る.燃 料 を補充す るこ とに よって連続 使 用 で きる こと も 充電 を必要 とす る二次電 池 にはな いマ イク ロ燃 料電池 の 魅 力 で ある. 電 池 は投棄 または廃棄 され る と環境汚 染 の 原 因 にな るに もか か わ らず その リサ イクル は電 池 の種 類 が 多い こ とや採 算が取れ な い こ とか ら進 ん でいない 。消 費者 の 間 で 使用済電 池 の 処 分法が 周知 電 池 の リサ イクル を難 しく し 徹底 され てい な い こ とも 消 費 者に混舌しを与 えて い る上 廃棄電 池 に よる環 境汚 染 を助長 して い る したが って 使用済燃 料 カー トリッジが電 池 に比 べ て 処分 または リサ イクル しや す い こ と も マ イク ロ燃料電 池の 利 点 で あ ると考 え られ る。 ユ ビキ タス情報 社 会 が到 来す る と 携 帯電 話 PDA(personal digital assisし ソコ ンな どの 携帯情報機 器の 台数 と消 費電 力 とが増 加│し ant)ノ 小形 パ ワ ー源 の 重要 性 が益 々高 ま る こ 二次 電 池 の エ ネル ギ ー密度 に限 界 が 見 え始 めて い る現状 を考 え る とが 予想 され る. その一 方 で と 上述 の よ うな利点 を有 す るマ イ クロ燃 料電 池 が注 目 され るの は 当然 で あ ろ う。 また タス 情報社 会 で は ー トハ ユ ビキ マ イク ロセ ンサ や情報 チ ップが我 々を取 り巻 く様 々な もの に取 り付 け られ 携 帯 情報機 器 と通信 をす るよ うに な る こ とが期 待 され て い る。 これ らの マ イク ロセ ンサ や情 報 ICチ ソプは 維 持 管 理 な しに長 期 間稼働 しな くて は な らず を必要 とす る.こ の よ うなパ ワー源 と して マ イ クロ燃 料電 池 の 研究 PEFCは 自動 車 用同体高分子形燃料電 池 お よび そ の イ ン フ ラ の 「 数年 研究 ッフ大 の マ イク ロ燃 料電 池 が 有望 で あ る。 開発 が加 速 したの は 2000年 頃 か らで あ る。 その 背 景 には よ うな情報 社会 の 発展 に加 えて PEFC)技 術 の 進 歩 ICチ 開発期間 を経 て (polン mer 上述 の electrolメ e fuel ce■ , コ ス トの 問題 が あ る よ うに思 わ れ る。 自動 車 用 技 術 的 に は実用化段階 に 達 してい るが * ShuJi Tanaka 東北 大学 大学院 工学研究科 助 教授 `0 エ ネル ギ ー密 度 の 高 いパ ワー源 水 素 ステー