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浄水場浄水汚泥の有効利用に関する基礎的研究

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浄水場浄水汚泥の有効利用に関する基礎的研究
京都府中小企業技術センター技報№3
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浄水場浄水汚泥の有効利用に関する基礎的研究
田 中 康 司*1
河 村 眞 也*2
[要 旨]
浄水場で発生する浄水汚泥の有効利用を目的とした資材加工法の開発を行うに先立ち、当該技術の実
用化に対する不確定要因を除くため、事業環境の検討を行った。具体的には、汚泥供給量と加工資材の
需要量のバランスを見通しつつ、利用法(適用対象)を探索し、事業化に必要な基盤を有する(共同研
究開発の相手として好適な)府内企業の有無について調べた。
検討の結果、該当する企業(候補)が7社存在することがわかった。
1 はじめに
表1 京都府営水道乙訓浄水場浄水汚泥の組成
浄水汚泥は、浄水場で河川等の原水を浄化する
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際、不可避に発生する。これらは一部グランド 改
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浄水汚泥を高付加価値の資材に加工する方法と
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新規用途を確立できれば、廃棄物の有効活用だけ
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でなく製品としても環境負荷低減に寄与できる。
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資材化を考えるにあたり、浄水汚泥のおよその
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組成として、京都府営水道乙訓浄水場の浄水汚泥
を蛍光X線分析した結果を表1に示す。汚泥には
度、特定の物質の吸脱着、湿分調整、化学反応促
土砂等に由来するケイ酸塩、浄水処理の過程で注
進(触媒)などの機能によって、環境負荷低減型
入される凝集剤のポリ塩化アルミニウムが含まれ
の材料開発につながるものと期待される。
ている。このケイ酸塩とアルミ化合物の混合物は
しかし、リサイクル素材技術開発においてまま
水熱合成反応させることでポーラスシリカ、ゼオ
見受けられるのは、事業化の見通しを欠いたまま
ライトを得ることができる。また、汚泥中に含ま
開発を進め、結果、採算問題や、需給バランスが
れる有機物からは、活性炭又はそれに類似する炭
解決できず頓挫してしまうケースである。
素化合物を得ることも可能である。
浄水汚泥のリサイクル資材を開発する上で整理
これらの機能素材は、どちらも微細な空孔を多
しておくべき事業環境の諸元について、以下の3
数有するその構造から、軽量な割に高い機械的強
点にまとめ調査したので報告する。
① 文献調査によるゼオライト等多孔質材料の
工業的用途の可能性確認
*1 基盤技術課 副主査 *2 基盤技術課 主任研究員
② ゼオライト系リサイクル材の市場規模(出
-6
3
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2.3 市場性が伺える適用先(品目)業種の
荷量、出荷額)の確認
府内企業立地状況の確認
③ ②から市場性が伺える適用先(品目)業種
の府内企業立地状況の確認
2.2において市場性が伺えた適用先(品目)
の多くが建設・建築業(建材)と土石・窯業の2
2 調査内容
業種であった。このうち、研究開発系企業の比率
2.1 ゼオライト等多孔質材料の工業的用途
が高いと推測される土石・窯業を市場性が伺える
の可能性確認
適用先(品目)業種として、当所の企業登録デー
文献探索を行い、ゼオライト及びゼオライトに
タである「企業情報システム」から検索し、そこ
類似した多孔質構造を有するケイ酸化合物である
から通常の社業と平行して研究開発を行うだけの
メソポーラスシリカ並びに浄水汚泥のリサイクル
企業規模の要件として法定の小規模企業者区分で
材及び浄水汚泥に類似する窯業系廃棄物のリサイ
ある従業員数2
0
人未満の企業を除いた上で、更に、
クル材(以下「ゼオライト系リサイクル材」とい
当該企業のHP等による業容確認を踏まえ、可能
う。)について、それぞれの論文において目論まれ、
性のある企業を選出した。
期待されている用途(機能)を確認した。
今回は、更に、上記のとおり選出された企業の
所在地と、府内の河川表流水を原水とし一定規模
2.2 ゼオライト系リサイクル材の市場規模
(出荷量、出荷額)の確認
を有する浄水場の所在地を地図にプロットし、立
地適性についても確認して、浄水汚泥リサイクル
2.1の確認から絞り込まれたゼオライト系リ
材開発の事業化に必要な基盤を有する(共同研究
サイクル材の用途(機能)を踏まえ、経済産業省
開発の相手として好適な)企業とした。
が取りまとめ、発表している工業統計調査「平成
2
0
年確報 品目編」のデータを用い、ゼオライト
3 調査結果及び考察
系リサイクル材の市場(=ゼオライト系リサイク
3.1 ゼオライト等多孔質材料の工業的用途
の可能性確認
ル材によって既存材を代替し得る)として可能性
があると思われる適用先(品目)をピックアップ
文献探索の結果は表2のとおり。
した。
対象物質として溶質、ガスを合わせると「吸着」
さらに、技術開発を行った現場で事業化するこ
機能に着目したものが7件とほぼ半数を占め、次
とを想定し、ピックアップしたデータから、京都
に「保水・調湿」機能が3件、他は窯業材料、土
府内において出荷数量50
0
トン以上又は出荷金額
木資材、電波吸収材となった。
1億円以上の規模がある適用先(品目)に絞り込
しかし、これらの機能については、概ね従来か
んだ。これは、浄水汚泥が相当の規模で排出され
ら、ゼオライトが有するあるいは有する可能性が
ることを考慮するものである。例えば、府南部7
あるものと認められてきた既知の機能といえ、
「電
市3町に水道水を供給している府営水道は1日の
波吸収」の機能がわずかに新規性が認められる程
実績送水量が約1
1
0
千m3であるが、年間1
,
6
0
0
トン
度のものであると思われる。
もの浄水汚泥が発生している。
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表2 ゼオライト、メソポーラスシリカ及びゼオライト系リサイクル材についての文献検索結果
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3.2 ゼオライト系リサイクル材の市場規模
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(出荷量、出荷額)の確認
3.1の結果を踏まえ、工業統計データからの
3.3 市場性が伺える適用先(品目)業種の
府内企業立地状況の確認
ピックアップにあたってはコンクリート関連製品、
窯業(セラミックス)製品のほか、ゼオライトが
2.3に示した手順により条件に該当する企業
使用される無機工業品として、合成洗剤(ビ ル
を抽出したところ、10
社が該当した。各社の企業
ダー)
、研削・研磨材、触媒、調湿機材等を抽出し
規模、業種、主要製品の一覧表を表5に示す。表
た。今回の作業でピックアップした品目(全国デー
中のS社については、歯科材料を中心とした製品
タ)を表3に示す。
の製造を行っており、製品化において薬事法の許
また、京都府内の出荷量、出荷額データを表4
認可等の要件が厳しく、リサイクル材の適用分野
に示す。表4は、出荷数量5
0
0
トン以上又は出荷金
としては明らかに不適当であるため、除外するこ
額1億円以上の規模要件で絞り込みを行ったため、 ととした。
全国データでは38
品目であったものが13
品目に限
また、H社については、所在地が京丹波町であ
定されることとなった。
り、今回想定しているリサイクル材の原料供給が
1
3
品目の内容を見ると、コンクリート関連製品
規模と浄水工程の面で可能と考えられる浄水場が
5品目、それ以外の無機工業製品6品目、装置・
付近にないため、除外とした。
-6
5
-
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1
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表3 ゼオライト系リサイクル材の活用可能性が見込まれる品目の工業統計データ(全国)
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上記2社を除き、残る8社について、各企業の
3.4 考察
所在地と浄水場の位置関係を地図上にプロットし
今回、最終的に抽出された7社を、各社の主要
たものを図1に示す。
製品から見ると、研磨材メーカ等が4社、ファイ
図からも明らかなとおり、亀岡市内にあるS社
ンセラミックスメーカ3社となった。企業データ
(プロット番号2)が最寄りの浄水場(府営水道乙
を「土石・窯業」で絞り込んだため当然の結果と
訓浄水場)から10
k
m以上の距離にあるものの、他
いえる。本来であれば、市場性が確認された適用
の7社については全て最寄りの浄水場から概ね
先(品目)として挙がっていた建設・建築業(建
5k
m以内と近接した立地となることがわかった。
材)についても確認できればよかったが、施工の
みを行う企業と建材の開発・製造を行う企業が、
-6
6
-
京都府中小企業技術センター技報№3
9
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表5 「土石・窯業」企業(小規模企業者を除く)一覧表
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調査結果からは、距離の要因が輸送経費に大きな
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影響を及ぼす可能性が低いことが伺えた。
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4 今後の課題とまとめ
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今回は初めての検討ということもあり、考察で
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も触れたとおり、建材関連の企業探索には踏み込
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めなかった。しかし、「土石・窯業」からの探索の
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結果絞り込まれた企業数が10
社程度であることを
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考えれば、規模要件等で絞り込んだ後に、個別企
図1 浄水汚泥再生材の想定供給先候補企業の所在図
業の業容を確認する手順で探索できると見込まれ
システム上、分類されていないデータベースをも
る。来年度以降の課題としたい。
とに作業したために、今回は対象から外さざるを
また、今回、抽出された企業については、アン
得なかった。
ケートなどを用いたアプローチで、より具体的に
浄水汚泥は、ゼオライトに加工して付加価値を
共同開発を行うための条件を整理し、リサイクル
高める場合でも、重量あたりの単価には一定の限
材開発を行う大学研究者との仲介等関係づくりを
度がある。単価が相対的に低くなるおそれがある
行っていくべきものと考える。
こと(表2の「出荷金額/出荷数量」データで数
当初の計画で予定していたゼオライト系リサイ
値が出た品目の平均値は1
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,
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0
円/トン)を想定
クル材の物性データ取得等、未達項目についても、
すると、加工・販売にあたっては運搬距離を可能
引き続き課題として、実用的な材料を開発する必
な限り抑制しなければならない。この点で今回の
要があると考える。
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京都府中小企業技術センター技報№3
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いずれにせよ、大学や公設試験機関だけでは、
指導を賜りましたこと、厚く御礼申し上げます。
浄水汚泥のリサイクル材開発は困難であり、排出
者(水道事業者)、リサイクル材の需要者(企業) (参考資料)
との協力が欠かせないことから、今回、リサイク
1)京都府文化環境部,
京都府営水道環境レポー
ル事業化に必要な基盤を有する(共同研究開発の
ト(平成2
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年度決算版),
相手として好適な)府内企業のイメージを朧気な
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がらにも描く作業ができたのは成果といえるので
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はないかと考える。
2)経済産業省経済産業政策局調査統計部,工業
統計調査 平成2
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年確報 品目編,
謝辞
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本小論をとりまとめるにあたり、京都学園大学
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准教授 石本弘治氏には、適時適切なるご助言・ご
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