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日本酒をめぐる状況
資料 4 日本酒をめぐる状況 平成28年3月22日 農林水産省 政策統括官 1 「日本酒原料米の安定取引に向けた情報交換会」の開催について 日本酒をとりまく状況 情報交換会の開催に至る背景 ◯ 原料となる酒造好適米の需要は、国内における特定名称酒の販売が堅調に推移していることや、輸出も増加傾向にあ ることから高まっている。 ◯ 政府では、農林水産物・食品の輸出拡大を推進しており、日本酒についても、関係者と一丸となって取り組んでいる ことから、農林水産省としても、日本酒の輸出拡大を見据えた生産体制を構築し、需要に応じた日本酒原料米の確保に ついて取り組む必要がある。 情報交換会の進め方 ◯ こうしたことから、今回、日本酒原料米の生産及び酒造メーカーの方々などに参集いただき、情報交換会を開催し、 ① 日本酒原料米の取引の現状やその課題を踏まえ、 ② 需要に応じた安定的な生産に向けて、関係者が取り組むべき方策等について集中的に議論を進め、今後の方向性 等をとりまとめることとしたい。 論 ① 点 日本酒原料米の安定供給に向けた取組み ・ 生産者は需要者の購入計画を踏まえ、種子の手配、作付けを実施しているが、更なる酒造好適米の安定生産・安定 調達を実現するためには、複数年契約の拡大が必要。 ② 作況変動等に対応する仕組みの構築 ・ 作柄等の不確定な要因による過不足を回避するための仕組みを構築する必要。 ③ 日本酒の輸出拡大等を踏まえた需要量を見通した上での、日本酒原料米の生産・供給体制の構築 ・ 日本酒原料米の需要量の的確な把握とそれを踏まえた作付けについて、関係者間で共有すべき情報について検討が 必要。 ※ 今回の情報交換会を経て、さらに検討を深める必要が生じた場合は、別途情報交換会を開催(持ち回り開催も含む。) 1 2 日本酒をとりまく状況 日本酒の出荷状況 ◯ 日本酒の国内出荷量は、ピーク時には170万㎘を超えていたが、他のアルコール飲料との競合などによ り、現在は60万㎘を割り込む水準まで減少。 ◯ 近年、日本酒全体の国内出荷量が減少傾向で推移する中で、消費者の志向が量から質へと変化してきてお り、特定名称酒(吟醸酒、純米酒等)の出荷量は堅調に推移。 日本酒の国内出荷量の推移 特定名称酒の種類別出荷量の推移 (千㎘) 1,200 (千㎘) 350 1,133 300 1,000 871 35 日本酒全体 250 25 200 62 800 659 600 634 593 599 291 592 580 566 553 (日本酒全体の内数) 221 200 54 特定名称酒 291 174 165 159 159 161 100 164 167 30 26 150 400 221 173 50 174 20 24 165 18 23 159 18 23 159 18 25 161 18 27 164 21 29 167 173 24 25 32 37 純米吟醸酒 57 56 54 55 56 58 59 62 純米酒 68 64 61 60 56 52 49 本醸造酒 169 吟醸酒 111 73 0 0 10年 15年 20年 21年 22年 23年 24年 25年 26年 27年 資料:日本酒造組合中央会調べ。年は暦年。 注:27年は概算値。 10年 15年 20年 21年 22年 23年 24年 25年 26年 27年 資料:日本酒造組合中央会調べ。年は暦年。 注1:清酒は、一般酒のほか、原料米及び製造方法などの諸条件(使用原料、 精米歩合など)により、吟醸酒、純米酒等8種類に分類され、これらを総称 して「特定名称酒」という。 注2:27年度は概算値。 2 3 日本酒をとりまく状況 酒類別の出荷量の推移 ◯ アルコール飲料全体の出荷量は、消費者志向の変化等により、酒類間での移動はあるが、全体ではやや減 少傾向で推移。 ◯ 近年では、日本酒、焼酎、ビールなどが減少する一方で、チューハイなどのリキュール、果実酒(ワイン)、 ウイスキー、ブランデーなどは増加。 酒類別の出荷量の推移 (千㎘) 12,000 10,000 その他 8,000 果実酒 リキュール 6,000 発泡酒 4,000 ビール 2,000 焼 酎 日本酒 0 45年50年55年60年元年 2年 3年 4年 5年 6年 7年 8年 9年 10年11年12年13年14年15年16年17年18年19年20年21年22年23年24年25年 昭和 平成 資料:「酒のしおり」(国税庁) 注:焼酎は連続式蒸留焼酎及び単式蒸留焼酎の合計、果実酒には甘味果実酒を含む、その他は合成清酒、みりん、スピリッツ、その他醸造酒等の合計。 3 4 日本酒をとりまく状況 コメの輸出戦略 ◯ 農林水産省が平成25年8月に策定・公表した「国別・品目別輸出戦略」においては、農林水産物・食品の 輸出額を2020年(平成32年)までに1兆円とするとの目標を掲げ、このうち、日本酒を含めたコメ・コメ 加工品については、2020年の輸出額目標を600億円としている。 ◯ 2015年(平成27年)のコメ・コメ加工品の輸出額は201億円であり、前年比19.2%増。 コメ・コメ加工品の輸出状況 700 (億円) 目標 600 2015年輸出額 201億円 (前年比19.2%増) 600 500 400 中間目標 280 300 200 100 126 150 169 201 22 コメ 39 米菓 10 35 14 39 89 105 115 140 2012年 2013年 2014年 2015年 7 29 日本酒 0 2016年 2020年 資料:財務省「貿易統計」(政府による食糧援助を除く。) 注:数量1トン未満、金額20万円未満は計上されていない。 4 5 日本酒をとりまく状況 日本酒の輸出の状況 ◯ 日本酒の国内出荷量が減少傾向にある中、輸出量は、日本食ブーム等を背景に近年増加傾向にあり、平成 27年の輸出数量は18,180kℓと、この10年で倍増。また、日本酒の全出荷量のうち輸出量が占める割合は 3.2%となっている。 ◯ 日本酒の輸出金額については、平成25年に初めて100億円を突破して、平成27年には140億円となり、 この10年で約3倍の伸び率となっている。 ◯ 平成27年における日本酒の輸出国は、62ヶ国。全体数量及び金額のうち、アメリカ、韓国、台湾、香港、 中国の5ヶ国で約7割を占めている。 ◯ 平均輸出単価は、1ℓ当たり771円となっている。国別では、1ℓ当たり香港1,308円、アメリカ1,045 円と平均を上回る水準であるのに対し、中国、台湾、韓国は平均を下回る水準。 日本酒の輸出量の推移 日本酒の輸出金額の推移 (単位:㎘) (億円) 19,000 18,180 4,600 15,000 13,770 14,022 14,131 13,000 12,151 11,949 3,775 11,000 3,458 9,000 8,089 7,000 1,772 56 734 5,000 3,000 1,000 4,001 8,270 2,401 314 1,026 2,191 1,491 2,204 10年 15年 3,246 482 1,213 485 1,308 1,626 1,381 3,843 3,575 625 1,436 1,639 3,409 3,512 375 1,660 666 1,492 1,680 1,603 4,071 3,952 3,853 896 1,716 1,747 4,489 3,705 その他 1,074 4,341 1,529 1,954 20年 21年 22年 2,828 2,904 23年 24年 3,502 3,221 1,576 中国 100 香港 80 1,745 2,112 4,780 台湾 アメリカ 3,367 26年 27年 72 17 40 韓国 資料:「貿易統計」(財務省)。年は暦年。 77 60 0 25年 33 その他 29 12 中国 7 23 香港 17 18 9 台湾 6 6 39 41 50 アメリカ 韓国 105 1,613 1,742 115 120 4,322 20 2,590 140 140 16,202 16,316 17,000 39 34 3 9 5 17 2 10 4 85 88 89 20 21 21 4 13 5 2 15 4 15 5 5 32 32 32 24 5 8 0 3 13 9 0 10 1 5 6 35 30 17 1 7 8 12 12 12 14 13 14 10年 15年 20年 21年 22年 23年 24年 25年 26年 27年 資料:「貿易統計」(財務省)。年は暦年。 輸出先国別平均輸出単価 日本酒の全出荷量のうち輸出量が占める割合 (単位:円/ℓ) 平均 10年 15年 20年 21年 22年 23年 24年 25年 26年 27年 0.7% 0.9% 注:年は暦年。 1.8% 1.9% 2.3% 2.3% 2.3% 2.7% 2.8% 3.2% 27年 771 香港 1,308 アメリカ 1,045 資料:「貿易統計」(財務省)。年は暦年。 中国 744 台湾 421 韓国 405 5 6 日本酒をとりまく状況 日本酒原料米の使用状況 ◯ 日本酒の原料として使用される米には、 ① 主に「もと米」(麹米)として使用される「酒造好適米」(山田錦、五百万石など) ② 仕込みに使用する「かけ米」(主食用米、加工用米など) の2種類があり、契約栽培を中心に取引が行われている。 ◯ 平成26年産における日本酒原料米の使用量は約25万トン程度で、その内訳は、酒造好適米約9万トン (36%)、加工用米約11万トン(42%)、主食用米約3万トン(11%)、特定米穀約3万トン(10%) となっている。 ◯ 近年、日本酒の出荷量が減少傾向で推移する中、特定名称酒が堅調に推移していることから、特に、酒 造好適米の使用量が増加。 日本酒原料米の使用状況 加工用米の生産状況 (単位:千トン) (単位:千トン) 10 年産 15 年産 20 年産 21 年産 22 年産 23 年産 24 年産 25 年産 26 年産 原料米 酒造好適米 主食用米 加工用米 その他 405 99 165 86 55 315 75 92 89 59 261 77 60 74 50 246 71 54 72 49 232 65 43 77 47 注1:原料米の全体使用量は国税庁公表値。 注2:各年産ごとの内訳は、日本酒造組合中央会による推計値 238 65 50 71 52 241 68 57 79 37 243 76 34 95 38 248 90 27 105 26 うるち米 23年産 24年産 25年産 26年産 27年産 123 149 178 232 208 もち米 32 32 29 34 48 合 計 155 181 208 266 257 全国流通 地域流通 46 108 66 115 83 125 111 155 96 161 資料:「加工用米生産量」(農林水産省) 注 :27年産は加工用米の取組として認定を受けた数量(平成27年10月15日現在) 6 7 日本酒をとりまく状況 酒造好適米の需給状況 ◯ 酒造好適米は、主食用品種に比べて栽培が難しく、収量が低いため、取引価格は高値で安定している。 ◯ 平成26年産から酒造好適米の使用増加分について、生産数量目標の枠外での生産を可能とする運用見直 し等を行った結果、概ね酒造メーカーの希望に見合った生産が行われた。 ◯ 一方、平成26年産主食用米(うるち米)の取引価格が大幅に低下したこと等により、平成27年産酒造好 適米の作付けが急増したことや、作柄が良好であったこと及び産地が急な作付面積の変更(減少)に対応で きなかったこと等から供給過剰の状況にあり、最近では産地品種銘柄によっては安値で取引されているケー スもある。 原料米の販売価格の推移 25,000 【イメージ】 日本酒の生産増に伴い生産数量目標の枠外として生産できる 酒造好適米の具体的取組み (円/60kg) 23,600 22,100 23,600 23,600 山田錦 (兵庫) 22,600 需要者A 20,000 16,600 16,800 16,600 16,400 五百万石 (新潟) 16,200 15,000 15,715 14,490 25年度(基準年)における使用実績 130トン 使用量の増加分 50トン 13,505 12,179 11,092 主食用米 (相対取引価格) 12,000 10,000 11,000 加工用米 9,600 9,600 8,750 5,000 23年産 24年産 25年産 26年産 生産数量目標の 枠内で生産 80トン 枠外生産 20トン 生産数量目標の 枠内で生産 50トン 枠外生産 30トン 27年産 注1:酒造好適米(日本酒造組合中央会からの聞き取り)は、1等米の販売価格 で、包装代、消費税相当額、運賃を含まない。 注2:主食用米(相対取引価格)は、出回りから翌年10月(27年産は28年1月)ま での通年平均価格であり、1等米の価格で、包装代、運賃を含み、消費税相当 額を含まない。 注3:加工用米(需要者からの聞き取り)は、需要者指定場所持込、包装代を含み、 消費税相当額を含まない。 農業者B 農業者C 7 8 日本酒をとりまく状況 酒造好適米の生産状況 ◯ 平成27年産酒造好適米の生産量は約10万トンで、そのうち、兵庫、新潟、長野、岡山、富山の5県で約 6割を占めている。 ◯ 酒造好適米の中でも、特に「山田錦」、「五百万石」は、全国の酒造メーカーからのニーズが多く、この 2銘柄だけで酒造好適米全生産量の約6割を占めている。 酒造好適米の産地別生産量の推移 27年産酒造好適米の主要銘柄の生産状況 (単位:トン) 23年産 全国計 兵 庫 新 潟 長 野 岡 山 富 山 その他 65,461 18,932 10,638 3,875 2,638 3,117 26,261 24年産 68,335 19,216 10,802 4,866 2,970 3,693 26,788 25年産 75,813 22,109 11,878 5,409 3,158 4,412 28,847 26年産 90,185 26,199 13,167 7,144 4,562 4,703 34,410 27年産 104,744 28,305 15,681 6,613 5,874 5,509 42,762 【山田錦】 【山田錦】 シェア 100% 27% 15% 6% 6% 5% 41% (単位:トン) その他 9,639 27年産 兵庫 23,866 山口 1,514 岡山 3,157 シェア 兵 庫 23,866 63% 岡 山 3,157 8% 山 口 1,514 4% その他 9,639 25% 資料:「農産物検査結果」(農林水産省) 注:平成28年1月31日現在の速報値。 【五百万石】 酒造好適米の銘柄別生産量の推移 (単位:トン) (単位:トン) 23年産 全国計 山田錦 五百万石 美山錦 雄町 出羽燦々 その他 65,461 20,027 18,888 5,367 1,397 1,668 18,114 24年産 68,335 21,217 18,798 6,052 1,538 1,600 19,130 25年産 75,813 23,081 20,602 6,426 1,700 1,719 22,285 26年産 90,185 29,812 22,596 7,786 2,312 2,044 25,635 27年産 104,744 38,176 25,593 7,831 2,847 2,247 28,050 27年産 その他 5,781 シェア 100% 36% 24% 7% 3% 2% 27% 資料:「農産物検査結果」(農林水産省) 注:平成28年1月31日現在の速報値 福井 2,897 シェア 新潟 新 潟 12,700 50% 12,700 富 山 4,215 16% 福 井 2,897 11% その他 5,781 23% 富山 4,215 資料:「農産物検査結果」(農林水産省) 注 :平成28年1月31日現在の速報値 8