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日本・中米友好橋建設計画 基本設計調査報告書
エルサルバドル共和国 公共事業・運輸・住宅都市開発省 ホンジュラス共和国 公共事業・運輸・住宅省 エルサルバドル共和国/ホンジュラス共和国 日本・中米友好橋建設計画 基本設計調査報告書 平成18年11月 (2006年) 独立行政法人 国際協力機構 (JICA) 委託先 セントラルコンサルタント株式会社 日 本 工 営 株 式 会 社 序 文 日本国政府は、エルサルバドル共和国政府、ホンジュラス共和国政府の要請に基づき、 両国国境に位置する日本・中米友好橋建設計画にかかる基本設計調査を行うことを決定し、 独立行政法人国際協力機構がこの調査を実施いたしました。 当機構は、平成18年2月14日から3月8日まで第一次基本設計調査団を、平成18年5月10 日から6月3日まで第二次基本設計調査団を現地に派遣しました。 調査団は、エルサルバドル・ホンジュラス、両国政府関係者と協議を行うとともに、計 画対象地域における現地調査を実施しました。帰国後の国内作業の後、平成18年9月16日 から9月25日まで実施された基本設計概要書案の現地説明を経て、ここに本報告書完成の 運びとなりました。 この報告書が、本計画の推進に寄与するとともに、日本と両国との友好親善の一層の発 展に役立つことを願うものです。 終りに、調査にご協力とご支援をいただいた関係各位に対し、心より感謝申し上げます。 平成18年11月 独立行政法人国際協力機構 理事 黒木 雅文 伝 達 状 今般、エルサルバドル共和国、ホンジュラス共和国における日本・中米友好橋建設計画 基本設計調査が終了いたしましたので、ここに最終報告書を提出いたします。 本調査は、貴機構との契約に基づき弊社が、平成18年2月より平成18年11月までの9.5 カ月にわたり実施いたしてまいりました。今回の調査に際しましては、エルサルバドル、 ホンジュラスの現状を十分に踏まえ、本計画の妥当性を検証するとともに、日本の無償資 金協力の枠組みに最も適した計画の策定に努めてまいりました。 つきましては、本計画の推進に向けて、本報告書が活用されることを切望いたします。 平成18年11月 共同企業体 セントラルコンサルタント株式会社 日本工営株式会社 エルサルバドル共和国・ホンジュラス共和国 日本・中米友好橋建設計画 基本設計調査団 業務主任 立川 孝 a 日本・中米友好橋 プロジェクト位置図 日本・中米友好橋完成予想図 写 真 集 既存ゴアスコラン橋の現況 1.既存ゴアスコラン橋及び「エ」国国境施設 2.狭い橋梁幅員 3.地覆及び車道を通る歩行者 4.橋梁上で渋滞する大型トレーラー 5.橋梁に向かう大型トレーラー 6.「ホ」国税関前の渋滞状況 7.既存橋付近の「エ」国取付道路の急カーブ 8.「エ」国税関前の渋滞状況 9.ひび割れの著しい床版上面 10.鉄筋が露出している床版 11.劣化の進む床版下面 12.老朽化の進むトラス 13.老朽化の進む石積み橋脚 14.腐食により機能不全となった支承 15.補強用の仮支柱 16.老朽化の著しい高欄及び地覆 略 語 集 AASHTO :American Association of State Highway and Transportation Officials (米国道路・運輸技術者協会) ASTM :American Standard for Testing and Materials (アメリカ合衆国材料・試験規格) B/D :Basic Design Study BCIE (CABEI) :Banco Centro-americano de Integracion Economics (中米経済統合銀行) BID (IDB) :Banco Inter-americano de Desarrollo (米州開発銀行) CA :Carretera Centrio Americana (中米道路) CBR :California Bearing Ratio (路床土支持力比) DGC :Direccion General de Carreteras (「ホ」国道路局) EIA :Environmental Impact Assessment (環境影響評価) E/N :Exchange Note GDP :Gross Domestic Product (国内総生産) GH :Ground Height (地盤高) HS20-44 :(AASHTO により規程された設計活荷重) H15-S12 :(AASHTO により規程された設計活荷重) IMF :International Monetary Fund (国際通貨基金) JICA :Japan International Cooperation Agency (国際協力機構) M/D :Minutes of Discussion MARN :Ministerio del Medio Ambiente y Recursos Naturales (「エ」国環境天然資源省) MOPTVDU :Ministerio de Obras Publicas,Transporte y Viviendas Desarrolo Urbano (基本設計調査) (交換公文) (協議議事録) (「エ」国公共事業・運輸・住宅都市開発省) ODA :Official Development Aid (政府開発援助) PMRTN :Plan Maestro de la Reconstruccion Transformacion Nacional (国家再建計画) PC :Prestressed Concrete PPP :Plan Puebla Panamá (プエブラ・パナマ計画) PRSP :Poverty Reduction Strategy Paper (「ホ」国貧困削減戦略ペーパー) RC :Reinforced Concrete RICAM :Red Internacional de Carreteras Mesoamericanas (メソアメリカ国際道路網) SERNA :Secretaria de Recursos Naturales y Ambiente (「ホ」国天然資源環境省) SETCO :Secretatia Tecnica de Cooperacion (「ホ」国国際協力庁) SICA :Sistema de la Integración Centroamericana (中米統合機構) SIECA :Secretaría de Integración Económica Centroamericana (中米経済統合事務局) SN :Structural Number SOPTRAVI :Secretaria de Obras Publicas, Transporte y Vivienda (「ホ」国公共事業・運輸・住宅省) UGA :Unidad de Gestion ambiental (「ホ」国環境ユニット) VOP :Viceministro de Obras Publicas (「エ」国公共事業局(道路局)) WB :World Bank (プレストレスト・コンクリート) (鉄筋コンクリート) (舗装構造指数) (世界銀行) 要 約 要 約 (1) 国の概要 エルサルバドル共和国(以下「エ」国)は、中米地域のほぼ中央に位置し、西はグアテマラ共和国、 北、東はホンジュラス共和国と国境を接し、南は太平洋に面している。国土面積は 21,040km2 と中 米諸国で最も小さい。一方、総人口は 676 万人(2004 年)で、人口密度(321 人/km2)は中南米諸 国で最も高い。気候は国土の大半が熱帯気候に属しており、雨期(5~10 月)と乾期(11~4 月)に 分かれ、年中高温である。また、環太平洋地震帯の活動的な地域に位置するため地震が多く、2000 年 2 月に発生した大地震により 164,000 人が被災し、315 人の死者、27,500 戸の家屋倒壊等の被害 が生じたことは記憶に新しい。 「エ」国は、10 数年続いた内戦が 1992 年に終了したが、その後も 2 度の大地震やハリケーン等 の自然災害に見舞われ、特にハリケーン・ミッチは、被害総額約 20 億ドル(国家予算の約 90%)とい う未曾有の大被害をもたらした。このような内戦や自然災害に襲われながらも、経済成長率は 2.0~ 1.5%(03~04 年)とプラス成長を維持し、物価上昇率も 2.5~4.5%(03~05 年)と安定している。 一方、ホンジュラス共和国(以下「ホ」国)も、中米地域のほぼ中央に位置し、西はグアテマラ共 和国、東はニカラグア共和国、南はエルサルバドル共和国と国境を接し、南は一部太平洋のフォンセ カ湾に面し、北はカリブ海に面している。国土面積は 112,492 km2 で、中米諸国の中で 2 番目に広 い国であり、総人口は 714 万人(2004 年)である。気候は「エ」国と類似している。 本プロジェクト対象地域は両国の海岸平野地域に属し、年平均気温は 27℃、年間平均降雨量は 1,600~2,000mm であり、降雨は雨季に集中している。 「ホ」国は、中南米において最も開発の遅れた国の一つであり、特にハリケーン・ミッチは、中米 の中でも「ホ」国に最も大きな被害を及ぼし、国家経済に約 36 億ドルという未曾有の損害をもたら した。被災後直ちに「国家再建計画(PMRTN)」を策定し、復興と経済構造の改革を図り、復興プ ロセスは終了したものの、依然国際社会からの経済支援が必要となっている。経済成長率は 4.2%(05 年)、物価上昇率は 7.7%(05 年)と比較的安定しているが、一人当たり GDP は 972~1085 ドル (02~05 年)と依然として停滞している。 (2) 要請プロジェクトの背景、経緯および概要 「エ」国、「ホ」国とも国家開発計画の目標として、国際経済力の強化、国家・地域の発展、貧困 の削減を掲げており、これらの目標を達成するために、特に交通インフラ整備に重点が置かれている。 その中でもプエブラ-パナマ計画(PPP)は、最も上位に掲げられている。PPP は、メキシコ南部 と中米 7 カ国の地域を対象(人口約 6,400 万人)に「地域の人的・天然資源を利用して、文化的・ 民族的多様性を尊重しつつ持続可能な発展と地域住民の生活水準の向上・平等を目指して共に努力す る」との理念のもとに、2001 年に発効された。 PPP は、エネルギー、運輸、通信、人的資源開発等のイニシアティブを設定しており、その一つ である「メソアメリカ運輸構想」にある「メソアメリカ国際道路網(RICAM)」では、6つの根幹的 な道路網を設定している。その中に、メキシコと中米の道路を東西に結ぶ太平洋回廊と、 「エ」国ラ・ ウニオン港と「ホ」国コルテス港を南北に結ぶ大洋間ロジスティック回廊(ドライカナル路線)がその i 整備プロジェクトとして挙げられている。 「エ」「ホ」両国の国境地域・エル・アマティージョ地区のゴアスコラン川に架かるゴアスコラン 橋は、パンアメリカン・ハイウェイの一部として第2次世界大戦中の 1943 年に米国により建設され、 中米地域の貿易関係発展、観光客の移動、両国間の人的・物的交流において重要な役割を果たしてき た。現在でも約 3,000 台/日の通行量を有するとともに、前出の太平洋回廊、大洋間ロジスティック 回廊の交差点にあたり、国際幹線上の重要な橋梁である。しかし、建設後 60 年が経過し、老朽化に よる床版、橋桁の損傷が顕著であること、通過する大型トレーラーに対する耐荷重が不足しているこ と、幅員が狭いことによる渋滞が激しいこと等から、国際幹線道路上のボトルネックとなっている。 このような状況の下、 「エ」 「ホ」両政府は既存橋に代わる新橋の建設につき、わが国に対し無償資 金協力を要請し、2005 年 10 月、独立行政法人国際協力機構(JICA)により予備調査が実施された。 同調査では、現在わが国有償資金協力により改修が実施されている「エ」国ラ・ウニオン港が開港 (2008 年 4 月予定)すれば、本橋梁を含む路線はパン・アメリカンハイウェー(CA-1 号線)とし てさらに重要な路線となり、メソアメリカ運輸構築における本橋梁が果たす役割は非常に大きいもの の、建設後 60 年が経過しているため、近年におけるトレーラーの大型化に対し耐荷重が不足する等 安全面の問題を抱えており、一刻も早い既存橋に代わる新橋建設が必要であることが確認された。一 方、対象サイトは河川両岸の高低差が大きく、また想定される取付道路線形上には既存家屋・公共施 設が多数あることから、慎重に架橋地点・取付道路の線形を検討することが必要であることもあわせ て確認された。以上の結果を踏まえ、わが国政府は本計画に係る基本設計調査の実施を決定した。 (3) 調査結果の概要とプロジェクトの内容 これを受けて、JICA は 2006 年 2 月 14 日から 3 月 8 日まで第一次現地調査団を「エ」国および 「ホ」国に派遣した。第一次現地調査では「エ」「ホ」国関係者との協議を通じ、要請の背景・内容 を再度確認するとともに、既存橋の状況、自然条件(地形、水文)、交通量、既存家屋・公共施設の 現状を含むサイト状況、両国における道路・橋梁の設計基準等を調査した。帰国後、同調査の結果に 基づき、既存ゴアスコラン橋の評価・検証を行い、本計画の妥当性を再度確認するとともに、新橋の 架橋地点および取付道路線形の検討を行なった。 同検討結果の説明・協議のため、2006 年 5 月 10 日から 6 月 3 日まで第二次現地調査団を両国に 派遣し、最終的な架橋地点および取付道路線形を決定した。この結果を受け、引き続き自然条件(地 質)、建設資材等の調達事情、運営・維持管理体制等を調査した。同調査の結果に基づき、日本国内 で橋梁・取付道路の仕様、施工計画の検討、概算事業費積算等、基本設計を実施した後、基本設計概 要説明調査団を 2006 年 9 月 16 日から 9 月 25 日まで両国に派遣し、基本設計の内容、両国による 負担事項について協議・確認し、合意を得た。 対象橋梁の架橋地点については、教会・学校等の公共施設に抵触せず、家屋等の移転が極力低減さ れるよう、社会環境への影響を最小限に抑えるとともに、河川両岸の高低差等、地形的制約による影 響が最も少ない架橋地点・道路線形を選定した。橋梁の形式・取付道路の仕様については、コスト縮 減を考慮し、両国で採用されている AASHTO、PPP で規定された中米地域における幹線道路基準等 を採用しつつ、当該橋梁が果たすべき役割を達成するため、妥当な規模・仕様となるよう基本設計を ii 実施した。特に施工方法の選定に際しては、ラ・ウニオン港開港後の影響に対応できるよう、可能な 限り早期の完工を目指しつつ、経済性を追及した方法を採用した。 以上の結果、最終的に提案された計画概要は以下のとおり。 架 橋 位 既存ゴアスコラン橋の下流側 725m 位置 置 支間割りおよび橋長 幅 構造形式 基礎工 道路 護岸工 員 1.5m×2 = 3.0m、計 13.3m(有効幅員) (総幅員 14.1m) 上部工 下部工 取付 車道幅員 3.65m×2=7.3m、路肩幅 1.5m×2 = 3.0m、歩道幅 員 橋梁 延長 45.0m+80.0m+45.0m =170m 3 径間連続 PC 箱桁 橋台 逆 T 式橋台 2 基(A1、A2) 橋脚 壁式橋脚 2 基(P1、P2) A1 直接基礎 P1、P2 直接基礎 A2 杭基礎(場所打ち杭:杭径 1.2m、本数 11 本、杭長 7.0m) 右岸側(「エ」国) 約 395m 左岸側(「ホ」国) 約 1,156m 幅員 車道幅員 3.65m×2=7.3m、 路肩幅 2.4m×2 = 4.8m、保護路 肩幅 1.0m×2 = 2.0m、計 14.1m(総幅員) 右岸側(「エ」国) 蛇かご 289.3 m2 左岸側(「ホ」国) 蛇かご 1,213.6 m2 (4) プロジェクトの工期および概算事業費 本計画を日本の無償資金協力で実施する場合、概算事業費は約 15.84 億円(日本側負担分は 13.57 億円、 「エ」国側負担分は 0.51 億円、 「ホ」国側負担分 1.76 億円)と見積もられる。また、本計画の 全体工期は、入札工程を含め約 26.5 ヶ月(詳細設計:4.0 ヶ月、施工:22.5 ヶ月)が必要とされる。 (5) 本計画の実施ならびに運営・維持管理体制 本計画の実施機関は「エ」国公共事業・運輸・住宅・都市開発省(MOPTVDU)、「ホ」国公共事 業・運輸・住宅省(SOPTRAVI)である。 本計画にて「エ」「ホ」両国が負担すべき事項は、住民移転を含む用地確保、既存公共施設の移設 等、一般的事項だけでなく、国境橋という特殊条件から、国境施設建設、橋梁建設中における両国間 の往来に必要な措置(工事関係者への ID、工事車両用許可証の発給等)も含まれる。このような状 況から、本計画が支障なく実施されるため、2006 年 10 月、本計画実施に関する協定書が「エ」 「ホ」 両政府間で署名された。同協定書には、一般的な条項(国境位置、橋梁の管轄範囲等)のみならず、本 計画をわが国無償資金協力で実施した場合に必要となる手続きとその実施方法、両国が調整・共同し て実施すべき負担事項等が規定されている。なお、これら負担事項(国境施設建設を除く)の実施に 必要な費用は、MOPTVDU 年間新規建設予算の 0.52%、SOPTRAVI 年間道路建設予算の 1.63%で iii あることから、国境施設建設費用を含めても、十分な負担が可能と考えられる。 一方、橋梁完成後必要となる主な維持管理作業として、① 橋梁および取付道路の定期点検や清掃、 軽度の保守・補修(毎年)、② 橋面・取付道路の舗装におけるパッチング、オーバーレイ(5年毎)、 ③ 伸縮継手の取替え(10 年毎)等が想定されるが、これまで両国にてわが国無償資金協力により建 設された橋梁の維持管理においては、特段問題は見られない。また、年間の維持管理費(平均)は、 MOPTVDU 維持管理予算の 0.01%、SOPTRAVI 維持管理予算の 1.27%程度であり、必要経費は十 分確保が可能と考えられる。 (6) プロジェクトの妥当性の検証 本プロジェクトの実施により、以下の直接的および間接的効果の発現が期待される。なお、裨益対 象の範囲は、 「エ」国「ホ」国の国民、約 1,309 万人と考えられる。 1) 直接効果 ① 通行可能な車両重量が、24.5 トンから 40.8 トンに増大され、交通量の増加、特に大型貨物車の 増加に対応できるようになる。 ② プロジェクト対象橋梁が十分な幅員を有することにより、幅員が狭かったことによる対向車の すれ違い待ちの停車が不必要になり、橋梁上での平均走行速度の向上が可能となる(約 20km/h→約 50km/h)。 ③ ラ・ウニオン港の改修により現状の交通量 2,973 台/日(2006 年)が 3,500 台/日(2009 年)に増 加する。 2) 間接効果 ① 歩道が設置されることにより、歩車道が明確に分離され、円滑な道路交通が確保されるととも に、歩行者を巻き込む事故発生の危険性が低減する。 ② 対象橋梁の耐荷力が増強され、安定的な輸送路が確保されることにより、「エ」国および「ホ」 国間の物流の安全・正常化が図られる。 ③ 「エ」国のラ・ウニオン港の改修との相乗効果により、「ホ」国のコルテス港を結ぶドライカ ナル路線上の物流車両ならびに貨物輸送量が増大し、両国間のみならず、中米諸国間の流通お よび経済関係の維持・発展に資する。 ④ 物流の促進のみならず、文化交流、観光振興および地域開発のための交流強化と中南米諸国間 の友好関係の強化に寄与する。 本計画は、国際幹線道路上のボトルネックを解消し、両国間の円滑な交通の確保、交流強化ならび に国境周辺地域の発展のみならず、中米ロジスティック回廊の一部を整備するものとして、重要な役 割を果たす。さらには、現在わが国有償資金協力によりラ・ウニオン港改修が実施されており、当該 地域における海運施設整備との相乗効果も期待されることから、本プロジェクトをわが国無償資金協 力により実施する意義が高いことが確認された。 iv 目 次 序文 伝達状 位置図 完成予想図 写真集 略語集 要 約 プロジェクトの背景・経緯 ............................................................................1 第1章 1-1 当該セクターの現状と課題 ...................................................................................................1 1-1-1 現状と課題 .....................................................................................................................1 1-1-2 開発計画.........................................................................................................................4 1-1-3 社会経済状況 .................................................................................................................8 1-2 無償資金協力要請の背景・経緯及び概要..............................................................................9 1-3 わが国の援助動向 ...............................................................................................................10 1-4 他ドナーの援助動向............................................................................................................ 11 第2章 2-1 プロジェクトを取り巻く状況.......................................................................12 プロジェクトの実施体制.....................................................................................................12 2-1-1 組織・人員 ...................................................................................................................12 2-1-2 財政・予算 ...................................................................................................................15 2-1-3 技術水準.......................................................................................................................16 2-2 プロジェクトサイト及び周辺の状況...................................................................................18 2-2-1 関連インフラの整備状況..............................................................................................18 2-2-2 既存ゴアスコラン橋の評価・検証 ...............................................................................22 2-2-3 自然条件.......................................................................................................................25 2-2-4 環境社会配慮 ...............................................................................................................32 i プロジェクトの内容 .....................................................................................38 第3章 3-1 プロジェクトの概要............................................................................................................38 3-1-1 上位目標とプロジェクト目標 ......................................................................................38 3-1-2 プロジェクトの概要.....................................................................................................38 3-2 協力対象事業の基本設計.....................................................................................................39 3-2-1 設計方針.......................................................................................................................39 3-2-2 基本計画.......................................................................................................................52 3-2-3 基本設計図 ...................................................................................................................82 3-2-4 施工計画.......................................................................................................................87 3-3 相手国側分担事業の概要.....................................................................................................96 3-3-1 本計画の実施体制 ........................................................................................................96 3-3-2 我が国の無償資金協力事業における一般事項 .............................................................96 3-3-3 本計画固有の事項 ........................................................................................................97 3-3-4 負担事項の実施可能性・妥当性...................................................................................97 3-4 プロジェクトの運営・維持管理計画...................................................................................98 3-5 プロジェクトの概算事業費 .................................................................................................99 3-5-1 協力対象事業の概算事業費 ..........................................................................................99 3-5-2 運営・維持管理費 ......................................................................................................100 第4章 プロジェクトの妥当性の検証.....................................................................101 4-1 プロジェクトの効果..........................................................................................................101 4-2 課題・提言 ........................................................................................................................103 4-2-1 国境施設の建設..........................................................................................................103 4-2-2 維持管理.....................................................................................................................103 4-2-3 環境社会配慮 .............................................................................................................104 4-3 プロジェクトの妥当性 ......................................................................................................105 4-4 結論...................................................................................................................................105 ii 資 料 資料―1 調査団員氏名・所属 .................................................................................................... A-1 資料―2 調査工程 ...................................................................................................................... A-2 資料―3 関係者(面会者)リスト ............................................................................................. A-5 資料―4 討議議事録(M/D)................................................................................................. A-6 資料―5 事業事前計画表(基本設計時)................................................................................... A-41 資料―6 基本設計図................................................................................................................. A-44 資料―7 収集資料リスト ......................................................................................................... A-53 iii 表 目 次 表 1-1-1 「エ」国道路の整備状況.............................................................................................1 表 1-1-2 「エ」国道路の舗装状況.............................................................................................2 表 1-1-3 「ホ」国道路の整備状況.............................................................................................2 表 1-1-4 「ホ」国道路の舗装状況.............................................................................................2 表 1-2-1 要請内容と協議・確認事項 .........................................................................................9 表 1-3-1 我が国の援助による運輸交通整備プロジェクト.......................................................10 表 1-3-2 我が国の援助による運輸交通整備プロジェクト.......................................................10 表 1-4-1 他ドナー国・国際機関による運輸交通整備プロジェクト......................................... 11 表 1-4-2 他ドナー国・国際機関による運輸交通整備プロジェクト......................................... 11 表 2-1-1 「エ」国道路局及び公共事業省の職種別職員数(2005 年) ...................................12 表 2-1-2 「ホ」国道路局及び公共事業省の職種別職員数(2005 年) ...................................14 表 2-1-3 「エ」国公共事業・運輸・住宅・都市開発省及び道路局の予算の推移 ...................15 表 2-1-4 「エ」国道路基金維持管理局の維持管理実績 ..........................................................15 表 2-1-5 「ホ」国公共事業・運輸・住宅省及び道路局の予算の推移 .....................................16 表 2-1-6 「ホ」国道路基金維持管理局の予算の推移 ..............................................................16 表 2-2-1 ドライカナル計画路線の整備状況 ............................................................................18 表 2-2-2 ゴアスコラン橋を渡る自動車交通の車種別交通量 ...................................................19 表 2-2-3 ゴアスコラン橋を渡る軽車両及び歩行者数 ..............................................................19 表 2-2-4 ゴアスコラン橋を渡る車両の登録国別分類 ..............................................................20 表 2-2-5 「エ」国側トラックターミナル近傍での CA-1 の 14 時間車種別交通量..................20 表 2-2-6 「ホ」国側トラックターミナル近傍での CA-1 の 14 時間車種別交通量..................20 表 2-2-7 国境施設における車種別滞留時間 ............................................................................21 表 2-2-8 対象地域のライフライン...........................................................................................21 表 2-2-9 気象および水文観測所一覧 .......................................................................................27 表 2-2-10 パサキーナにおける平均気温 .................................................................................28 表 2-2-11 パサキーナにおける月最高気温 ..............................................................................28 表 2-2-12 パサキーナにおける月最低気温..............................................................................28 表 2-2-13 ラ・ウニオンにおける相対湿度(%) ........................................................................28 表 2-2-14 チョルテカにおける月最多風向(度)と月平均風速(ノット)............................28 表 2-2-15 アリアンザにおける月最多雨量、月最少雨量、平均雨量.......................................29 表 2-2-16 ゴアスコランにおける月最多雨量、月最少雨量、平均雨量 ...................................29 表 2-2-17 カリダードにおける月最多雨量、月最少雨量、平均雨量.......................................29 表 2-2-18 ゴアスコラン流域の平均雨量 .................................................................................29 表 2-2-19 ゴアスコランにおける年最大流量(m3/s) ............................................................30 表 2-2-20 ラ・セイバにおける年最大流量................................................................................30 表 2-2-21 「エ」国において 20 世紀に発生した主要地震 ......................................................31 表 2-2-22 本計画の実施に伴う環境影響 .................................................................................33 iv 表 2-2-23 「エ」国側公立学校に通学する児童の内訳 ............................................................34 表 2-2-24 施工段階のミティゲーション方策の概要................................................................35 表 2-2-25 既存橋周辺の中小商業従事者へのヒアリング調査結果(「エ」国側) ...................36 表 2-2-26 既存橋周辺の中小商業従事者へのヒアリング調査結果(「ホ」国側) ...................36 表 3-2-1 MOP による将来交通量予測.....................................................................................42 表 3-2-2 SOPTRAVI による将来交通量予測...........................................................................43 表 3-2-3 設計に用いる将来交通量予測 ...................................................................................44 表 3-2-4 設計活荷重比較表 .....................................................................................................46 表 3-2-5 舗装設計用車両(軸荷重) .......................................................................................49 表 3-2-6 路線案検討結果表(エルサルバドル側)..................................................................62 表 3-2-7 路線案検討結果表(ホンジュラス側) .....................................................................63 表 3-2-8 道路設計条件表.........................................................................................................65 表 3-2-9 計画高水流量と余裕高の関係(河川管理施設等構造令).........................................67 表 3-2-10 橋梁形式比較検討案................................................................................................72 表 3-2-11 橋梁形式比較代替案 ................................................................................................72 表 3-2-12 標準適用径間 ..........................................................................................................73 表 3-2-13 下部工形式選定表 ...................................................................................................74 表 3-2-14 基礎工形式選定表 ...................................................................................................75 表 3-2-15 下部工構造および基礎形式 .....................................................................................76 表 3-2-16 橋梁形式比較表.......................................................................................................77 表 3-2-17 設計交通..................................................................................................................80 表 3-2-18 ESAL(等価単軸荷重) ..............................................................................................80 表 3-2-19 設計条件表 ..............................................................................................................80 表 3-2-20 各区間の現況及び設計・施工方針 ..........................................................................81 表 3-2-21 各層の厚さ ..............................................................................................................81 表 3-2-22 施設概要..................................................................................................................82 表 3-2-23 日本及び「エ」国・「ホ」国両国政府それぞれの負担事項.....................................89 表 3-2-24 品質管理項目一覧表(案)..........................................................................................92 表 3-2-25 主要建設資材の可能調達先 .....................................................................................93 表 3-2-26 主要建設機械の調達可能先 .....................................................................................94 表 3-2-27 業務実施工程表.......................................................................................................95 表 3-5-1 概算事業費 ................................................................................................................99 表 3-5-2 「エ」国側及び「ホ」国側負担経費.........................................................................99 表 3-5-3 主な維持管理項目と費用.........................................................................................100 表 4-1-1 本プロジェクトでの直接効果及び成果指標 ............................................................101 表 4-1-2 本プロジェクトでの間接効果及び成果指標 ............................................................102 表 4-2-1 プロジェクト対象橋梁維持管理計画表 ...................................................................103 v 図 目 次 図 1-1-1 「エ」国及び「ホ」国の上位計画と日本・中米友好橋の関係 ...................................5 図 1-1-2 各国の提案路線を含む最新の PPP 路線網図 ..............................................................7 図 2-1-1 「エ」国公共事業・運輸・住宅・都市開発省(MOPTVDU)組織図 .....................12 図 2-1-2 「エ」国道路基金維持管理局(FOVIAL)組織図 ...................................................13 図 2-1-3 「ホ」国公共事業・運輸・住宅省組織図..................................................................13 図 2-1-4 「ホ」国道路基金維持管理局(FONDO VIAL)組織図 ..........................................14 図 2-2-1 既存ゴアスコラン橋現況図 .......................................................................................24 図 2-2-2 対象サイト地形図 .....................................................................................................26 図 2-2-3 観測所位置図 ............................................................................................................27 図 3-2-1 橋梁部標準横断面構成 ..............................................................................................45 図 3-2-2 取付道路部標準横断面構成 .......................................................................................45 図 3-2-3「エ」国、「ホ」国における最大軸重上限値................................................................46 図 3-2-4 全体路線計画概要図..................................................................................................54 図 3-2-5 対象サイト状況図 .....................................................................................................56 図 3-2-6 路線案平面線形図 .....................................................................................................58 図 3-2-7 各路線案縦断図.........................................................................................................59 図 3-2-8 第 3 案、第 4 案横断図..............................................................................................60 図 3-2-9 選定路線図(第 3 案~B 案平面線形図) .................................................................64 図 3-2-10 計画流量に対する高水位と計画高水位 ...................................................................66 図 3-2-11 径間長の設定手順 ...................................................................................................69 図 3-2-12 橋長による断面積の減少率 .....................................................................................70 図 3-2-13 橋長と水位上昇量の関係.........................................................................................71 図 3-2-14 橋長と流速増加の関係 ............................................................................................71 図 3-2-15 架橋位置断面図.......................................................................................................78 図 3-2-16 護岸工の設置範囲 ...................................................................................................79 図 3-2-17 取付道路平面図.......................................................................................................83 図 3-2-18 取付道路縦断図.......................................................................................................84 図 3-2-19 取付道路横断図.......................................................................................................85 図 3-2-20 橋梁全体一般図.......................................................................................................86 vi 第1章 プロジェクトの背景・経緯 第1章 第1章 1-1 1-1-1 (1) プロジェクトの背景・経緯 プロジェクトの背景・経緯 当該セクターの現状と課題 現状と課題 国の概要 エルサルバドル共和国(以下「エ」国)は、中米地域のほぼ中央に位置し、西はグアテマラ共和国、 北、東はホンジュラス共和国と国境を接し、南は太平洋に面している。国土面積は 21,040km2 で、 中米諸国の中で最も小さく、総人口は 676 万人(2004 年)であり、人口密度(321 人/km2)は中 南米諸国で一番高い。地形は、北部のグアテマラから南東へ続く火山性の高地、中央部の広い丘陵台 地および太平洋に面した海岸平野地域の 3 地域に大別される。気候は国土の大半が熱帯気候に属し ており、雨期(5~10 月)と乾期(11~4 月)に分かれ、年中高温であり、年間平均降雨量は、1,200 ~2,800mm である。また、「エ」国は、環太平洋地震帯の活動的な地域に位置するため地震が多い。 一方、ホンジュラス共和国(以下「ホ」国)は、中米地域のほぼ中央に位置し、西はグアテマラ共 和国、東はニカラグア共和国、南はエルサルバドル共和国と国境を接し、南は一部太平洋のフォンセ カ湾に面し、北はカリブ海に面している。国土面積は 112,492 km2 で、中米諸国の中で 2 番目に広 い国であり、総人口は 714 万人(2004 年)である。地形は、北部海岸低地域(カリブ海側)、中央 山岳地域、及び南部海岸低地域(太平洋側)に区分される。気候は「エ」国と類似しており、国土の 大半が熱帯気候に属しており、雨期(5~10 月)と乾期(11~4 月)に分かれ、年中高温であり、年 間平均降雨量は 1,340mm である。 本プロジェクト対象地域は「エ」国海岸平野地域、「ホ」国南部海岸低地域に属し、年平均気温は 27℃で月の変動は少なく、年間平均降雨量は 1,600~2,000mm であり、降雨は雨季に集中している。 なお、1998 年 10 月に中米を襲ったハリケーン・ミッチは、「エ」国、「ホ」国において大きな 被害をもたらし、国土のほぼ全域に渡り道路網が寸断されるなど、社会基盤に甚大な被害を及ぼした。 (2) 道路網整備の現状と課題 「エ」国の道路総延長は現在、約 6,053km(2005 年)でその内訳は、特別道路(国際道路)約 297km、 一級道路(主要国道)約 600km、二級道路(国道・県道)約 949km、三級道路(市町村道)約 1736km、 地方道 2,471km である(表 1-1-1)。 表 1-1-1 「エ」国道路の整備状況 道路分類 特別道路(国際道路) 一級道路(主要国道) 二級道路(国道・県道) 三級道路(県市町村道) 地方道 総 延 長 出典:道路網 道路延長(km) 296.66 599.82 949.40 1,736.36 2,470.91 6,053.15 2005 年 12 月-道路管理局-UPV-MOP 1 第1章 プロジェクトの背景・経緯 総延長の内、アスファルト舗装道路は約 2,626km、砂利舗装道路は約 274km、未舗装道路は約 3,153km であり、アスファルト舗装率は約 43%である(表 1-1-2)。 表 1-1-2 「エ」国道路の舗装状況 道路延長(km) 舗装タイプ 2,625.64 アスファルト舗装 43.4 274.43 砕石・砂利舗装 未舗装 3,153.08 総 延 長 6,053.15 出典:道路網 舗装率(%) 2005 年 12 月-道路管理局-UPV-MOP これらの主要幹線道路は公共事業、運輸、住宅都市開発省(MOPTVDU:Ministerio de Obras Públicas, Transporte Vivienda y Dessarollo Urbano)の道路局(VOP:Viceministerio de Obras Públicas)が管轄しているが、維持管理は主に道路基金(Fovial)が担当している。 一方、 「ホ」国の道路総延長は、現在約 14,036km(2006 年)で、そのうち主要幹線道路(国際道 路・国道)約 3,275km、2 次幹線道路(県道等)約 2,555km、地方道路(市町村道)約 8,206km で ある(表 1-1-3)。 表 1-1-3 「ホ」国道路の整備状況 道 路 分 類 道路延長 3,275.40 主要幹線道路(国際道路・国道) 2 次幹線道路(県道等) 2,554.70 地方道路(市町村道) 8,206.20 14,036.30 総延長 出典:国内道路網 2006 年-SOPTRAVI 総延長の内アスファルト等の舗装道路は約 2,245km、砂利等舗装道路は約 10,367km、未舗装道路 約 1,424km であり、アスファルト舗装率は約 16%である(表 1-1-4)。 上記の主要幹線道路と2次幹線道路網は公共事業・運輸・住宅省(SOPTRAVI:Secretaría de Obras Públicas, Transporte y Vivienda)の道路局(DGC)が管轄しているが、これらの道路網の維持管理 は主に SOPTRAVI とは別組織の道路基金(FONDO VIAL)が担当している。 表 1-1-4 「ホ」国道路の舗装状況 道路延長(km) 舗装タイプ アスファルト舗装 砕石・砂利舗装 未舗装 総 延 長 出典:国内道路網 2,245.10 10,367.38 1,423.82 14,036.30 2006 年-SOPTRAVI 2 舗装率(%) 16.0% 第1章 (3) プロジェクトの背景・経緯 国境の現状 「エ」国と「ホ」国を結ぶ道路は3ヶ所あり(エル・アマティージョ、サバネタス、シタラ)、こ の内、サバネタスとシタラは陸路であり、エル・アマティージョ地区を流れる国境の川(ゴアスコラ ン川)に架かる既存ゴアスコラン橋が唯一の国境橋である。ゴアスコラン橋は、パンアメリカン・ハ イウェイの一部として第 2 次世界大戦中の 1943 年に米国により建設され、中米地域の貿易関係発展、 観光客の移動、両国間の人的・物的交流において重要な役割を果たしてきた。現在でも約 3,000 台/ 日の通行量を有するとともに、PPP の太平洋回廊(CA-1)、大洋間ロジスティック回廊(CA-5)の交差 点にあたり、国際幹線上の重要な橋梁である。しかし、建設後 60 年が経過し、老朽化による床版、 橋桁の損傷が顕著であること、通過する大型トレーラーに対する耐荷重が不足していること、幅員が 狭いことによる渋滞が激しいこと等から、国際幹線道路上のボトルネックとなっており、早急な架け 替えが「エ」国、「ホ」国両国の最重要課題として位置付けられている。 3 第1章 1-1-2 (1) プロジェクトの背景・経緯 開発計画 国家開発計画 「エ」国の国家開発計画では、 「2004~2009 年中期公共投資プログラム(改訂版)」において下記の 3 つの主な目的が掲げられている。 ① 国家の競争力を助長すること。 ② 国内の差別を撤廃し、隔離を減らして、開発の機会を民主化すること。 ③ 人々の生活の質を改善すること これらの目的を達成するために、特に交通インフラ整備に重点が置かれており、下記の3つの主な 道路整備計画が掲げられている。 a) 国家の統合を促進し、国際的競争力のある経済を達成するためのハイウェーの建設 b) 都市における人々の生活の状態を改善するための都市内道路の建設 c) 地方の開発を促進し、地方から都市へのアクセスを確保するための地方道の建設 「エ」国道路局が作成した道路整備計画では、これらの目的を実現するために CA-1(国際幹線道 路)並びに CA-2(国道)を積極的に整備することが図られている。 一方、 「ホ」国は、1998 年 10 月末に襲来したハリケーン・ミッチの未曾有の降雨量により甚大な 被害を受けた。インフラ施設の被害の殆どが橋梁及び道路であり、ほぼ国土全域にわたって道路網が 寸断されたが、被災後直ちに、「国家再建計画(PMRTN)」を策定し、交通インフラ施設の復旧を実 施してきた。また、2001 年に国際通貨基金と世界銀行により承認された「貧困削減戦略ぺ-パー」 (PRSP)では、下記の 6 つの目標を掲げ、貧困削減を目指している。 ① 均衡のある、そして持続可能な経済成長の促進 ② 地方の貧困の削減 ③ 都市の貧困の削減 ④ 教育等による人的資源に対しての投資 ⑤ 子供、女性、老人、障害者等特定の人々に対する社会的な保護の強化 ⑥ 戦略の持続可能性の保障 これらの国家再建計画及び貧困削減戦略の目標の実現には交通インフラ施設の整備が必須であり、 道路政策については、プエブラ・パナマ計画(PPP)にある太平洋回廊(CA-1)、大西洋回廊、カリ ブ観光回廊及び大洋間ロジスティック回廊(CA-5)の四大道路網整備計画に沿って策定されており、 これらの計画の中の対象路線である CA-1 並びに CA-5 の整備計画に重点を置いている。 「エ」国及び「ホ」国の上位計画と日本・中米友好橋の関係を図 1-1-1 に示す。 4 第1章 プロジェクトの背景・経緯 CA-5 太平洋回廊 CA-3 CA-2 CA-1 日本・中米友好橋 CA-5 CA-1 凡 例 太平洋回廊 大西洋回廊 ドライカナル 支線及びコネクション 首都 主要都市、国境都市 主要港 図 1-1-1 「エ」国及び「ホ」国の上位計画と日本・中米友好橋の関係 5 第1章 (2) プロジェクトの背景・経緯 プエブラ・パナマ計画(PPP) プエブラ・パナマ計画(PPP: Plan Puebla-Panama)は、メキシコ南部と中米 7 カ国の地域(メ ソアメリカ)を対象(人口約 6,400 万人)に、 「地域の人的・天然資源を利用して、文化的・民族的 多様性を尊重しつつ、持続可能な発展と地域住民の生活水準の向上・平等を目指して共に努力する」 との理念のもとに、地域プロジェクトを推進する政治的コーディネーションのメカニズムとして 2001 年にスタートしたものである。 PPP は、エネルギー、運輸、通信、人的資源開発等の 8 つのイニシアティブを設定しており、そ の一つである「メソアメリカ運輸構想」にある「メソアメリカ国際道路網(RICAM)」では、下記の 6つの根幹的な道路網を設定している。 ① 太平洋回廊 ② 大西洋回廊及びカリブ観光廊 とそれらを横断的に結ぶ、 ③ 大洋間ロジスティック回廊 ④ グアテマラ大洋間回廊 ⑤ コスタリカ大洋間回廊 ⑥ パナマ大洋間回廊 上記の 6 つの根幹的な道路網の中でも、メキシコと中米の道路を東西に結ぶ①太平洋回廊と、 「エ」 国ラ・ウニオン港と「ホ」国コルテス港を南北に結ぶ③大洋間ロジスティック回廊(ドライカナル路 線)は開発ポテンシャルが高く、輸送需要が多いとの認識から、重要な整備プロジェクトとして挙げ られている。なお、RICAM で最重要路線として位置づけられているこの太平洋回廊は、これまでパ ンアメリカンハイウェイと呼ばれてきた北米から南米に達する路線とほぼ一致する。 本計画調査の対象橋梁である日本・中米友好橋(既存ゴアスコラン橋)は、この太平洋回廊と大洋間 ロジスティック回廊の交差地点に位置し、その重要性と架け替えの緊急性は広く認識されている。 各国の提案路線を含む最新の PPP 路線網図を図 1-1-2 に示す。 6 プロジェクトの背景・経緯 図 1-1-2 各国の提案路線を含む最新の PPP 路線網図 第1章 図 1-1-2 各国の提案路線を含む最新の PPP 路線網図 7 第1章 1-1-3 プロジェクトの背景・経緯 社会経済状況 「エ」国は、1979 年以降、90 年代初頭にかけて反政府勢力と政府軍との間で激しい内戦が続き、 治安情勢の悪化と経済の停滞を招いた。1992 年にクリスティアーニ政権下において内戦が終了した が、その後も、2 度の大地震やハリケーン等の自然災害に見舞われ、特に 1998 年に襲来したハリケ ーン・ミッチは、被害総額約 20 億ドル(国家予算の約 90%)という未曾有の大被害をもたらした。 このような内戦や自然災害に襲われながらも、経済成長率は 2.0~1.5%(03~04 年)とプラス成長を維 持している。また、2001 年の通貨統合法により、国内経済のドル化が進展し、金利は低下、物価上 昇率も 2.5~4.5%(03~05 年)と安定している。 一人当たり GDP は 2,400 ドル(05 年、IMF)、その産業別内訳は第 1 次産業が GDP の 9.5%、 第 2 次産業が 30.9%、第 3 次産業が 59.6%である。コーヒーを主要産品とする農業とマキーラ(輸 出保税加工地区)による繊維産業が中心であり、モノカルチャー(単一栽培)に近い体質から脱却で きておらず、新たな産業の育成が課題となっている。また、220 万人といわれる在米エルサルバドル 人による家族送金は約 28 億ドル(05 年)に達し、中米地域ではグアテマラに次いで多く、家族送金 への依存の度合いは大きい。 2004 年の海外直接投資は対前年比 36%増で、チリ、ブラジルと並び中南米地域で最も増加した国 の一つである。また、2006 年に米国との自由貿易協定(DR-CAFTA)が発効した。 一方、「ホ」国は、中南米において最も開発の遅れた国の一つであり、特にハリケーン・ミッチは、 中米の中でも「ホ」国に最も大きな被害を及ぼし、国家経済に約 36 億ドルという未曾有の損害をも たらした。被災後直ちに「国家再建計画(PMRTN)」を策定し、復興と経済構造の改革を図り、復 興プロセスは終了したものの、一時的な応急復旧を施したものが多く、依然国際社会からの経済支援 が必要となっている。また、2006 年 1 月に就任したセラヤ大統領は、新規雇用創出・マクロ経済安 定を柱とした経済発展、中米統合の促進等を公約に掲げている。 経済成長率は 4.2%(05 年)、物価上昇率は 7.7%(05 年)と比較的安定しているが、一人当たり GDP は 972~1085 ドル(02~05 年)と依然として停滞している。その産業別内訳は第 1 次産業が GDP の 13.6%、第 2 次産業が 31.0%、第 3 次産業が 55.5%であり、コーヒー、バナナ、エビ等を 主要産品とする農水産業が中心であり、貿易赤字は約 17→24 億ドル(03→05 年)と拡大傾向にあ る。最近は、観光業やマキーラによる繊維産業が成長しているが、貿易赤字を埋めるまでには至って おらず、新たな産業の育成が課題となっている。 また、「ホ」国は、拡大重債務貧困国イニシアティブの適用国として認定されており、2001 年に は、貧困削減戦略ペーパーが世銀、IMF により承認された。その後、2002 年に貧困削減・成長ファ シリティー(PRGF)が IMF により認められ、2005 年に PRGF プログラムの進捗が見られたこと から、約 1,910 百万ドルの債務免除が実施された。 なお、2004 年に署名された米国との自由貿易協定(DR-CAFTA)が将来的に発効されることによ り、米国との経済関係強化、国内投資の拡大が期待されている。 8 第1章 1-2 プロジェクトの背景・経緯 無償資金協力要請の背景・経緯及び概要 「エ」国、「ホ」国とも国家開発計画の目標として、国際経済力の強化、国家・地域の発展、貧困 の削減を掲げており、これらの目標を達成するために、特に交通インフラ整備に重点が置かれている。 その中でもプエブラ-パナマ計画(PPP)は、最も上位に掲げられている。PPP は、メキシコ南部 と中米 7 カ国の地域を対象(人口約 6,400 万人)に「地域の人的・天然資源を利用して、文化的・ 民族的多様性を尊重しつつ、持続可能な発展と地域住民の生活水準の向上・平等を目指して共に努力 する」との理念のもとに、2001 年に発効された。 PPP は、エネルギー、運輸、通信、人的資源開発等のイニシアティブを設定しており、その一つ である「メソアメリカ運輸構想」にある「メソアメリカ国際道路網(RICAM)」では、6つの根幹的 な道路網を設定している。その中に、メキシコと中米の道路を東西に結ぶ太平洋回廊と、 「エ」国ラ・ ウニオン港と「ホ」国コルテス港を南北に結ぶ大洋間ロジスティック回廊(ドライカナル路線)がその 整備プロジェクトとして挙げられている。 「エ」「ホ」両国の国境地域・エル・アマティージョ地区のゴアスコラン川に架かるゴアスコラン 橋は、パンアメリカン・ハイウェイの一部として第2次世界大戦中の 1943 年に米国により建設され、 中米地域の貿易関係発展、観光客の移動、両国間の人的・物的交流において重要な役割を果たしてき た。現在でも約 3,000 台/日の通行量を有するとともに、前出の太平洋回廊、大洋間ロジスティック 回廊の交差点にあたり、国際幹線上の重要な橋梁である。しかし、建設後 60 年が経過し、老朽化に よる床版、橋桁の損傷が顕著であること、通過する大型トレーラーに対する耐荷重が不足しているこ と、幅員が狭いことによる渋滞が激しいこと等から、国際幹線道路上のボトルネックとなっている。 このような状況の下、 「エ」 「ホ」両政府は既存橋に代わる新橋の建設につき、わが国に対し無償資 金協力を要請し、2005 年 10 月、独立行政法人国際協力機構(JICA)により予備調査が実施された。 同調査では、現在わが国有償資金協力により改修が実施されている「エ」国ラ・ウニオン港が開港 (2008 年 4 月予定)すれば、本橋梁を含む路線はパン・アメリカンハイウェー(CA-1 号線)とし てさらに重要な路線となり、メソアメリカ運輸構築における本橋梁が果たす役割は非常に大きいもの の、建設後 60 年が経過しているため、近年におけるトレーラーの大型化に対し耐荷重が不足する等 安全面の問題を抱えており、一刻も早い既存橋に代わる新橋建設が必要であることが確認された。一 方、対象サイトは河川両岸の高低差が大きく、また想定される取付道路線形上には既存家屋・公共施 設が多数あることから、慎重に架橋地点・取付道路の線形を検討することが必要であることもあわせ て確認された。以上の結果を踏まえ、わが国政府は本計画に係る基本設計調査の実施を決定した。 なお、表 1-2-1 に要請内容と予備調査時時の協議・確認事項を示す。 表 1-2-1 項 目 要請内容 橋 長 約 150m 幅 員 10m 設計速度 設計活荷重 取付道路 予備調査時 現橋より下流側 600m~650m 架橋位置 車線数 要請内容と協議・確認事項 2 車線 B/D で決定 車線幅員 3.65×2+路肩幅員 1.5×2+歩道幅員 1.5×2=13.3m(有効幅員) 2 車線 80km/h AASHTO の HS20-44 の 25%増し 未定 9 第1章 1-3 プロジェクトの背景・経緯 わが国の援助動向 我が国による当該セクターに関する援助(技術協力、無償資金協力、有償資金協力)実績及び実施 中の運輸交通分野のプロジェクトの概要を表 1-3-1 及び表 1-3-2 に示す。 (1) エルサルバドル国 表 1-3-1 援助形態 開発調査 実施年度 我が国の援助による運輸交通整備プロジェクト (単位:億円) 案 1998 件 名 供 与 概 限度額 要 ラ・ウニオン県港湾活性化 ラ・ウニオン県における港湾再活性化のための 計画調査 マスタープランの策定及び短期整備計画のため のフィージビリティー調査。 ラ・ウニオン県港湾再活性化 有償資金 2005-2008 クスカトラン橋、サンマルコ 69.31 ス橋建設計画 1987 サン・サルバドル市復旧計画 5.0 1992 道路建設・保守機材整備計画 7.1 1993 全国主要国道橋梁架替計画 8.5 1994-1996 東部主要国道橋梁架替計画 15.6 東部地域道路舗装用アスファル 1995 6.4 ト・プラント配置計画 2001-2002 (2) ナターミナル、バルクターミナルの建設、航路 の整備、道路等の港湾関連施設の建設。 1997-2000 協力 112.33 計画 協力 無償資金 クトゥコ港の国際貿易港としての再建。コンテ 11.61 主要幹線上橋梁緊急復旧計画 レンパ川に架かる橋長 400mのPC橋梁 2 橋の 建設。 サン・サルバドル市でのアスファルト・プラン トを含む道路建設・保守機材の整備。 サン・サルバドル市でのアスファルト・プラン トを含む道路建設・保守機材の整備。 旧国道1号線上の1橋及び国道2号線上の4橋の架 替。 国道1号線上の1橋及び国道7号線上の1橋の 架替。 東部サン・ミゲル市でのアスファルト・プラン トの設置 国道2号線上の2橋及び旧国道2号線上の1橋の 架替 ホンジュラス国 表 1-3-2 我が国の援助による運輸交通整備プロジェクト (単位:億円) 援助形態 実施年度 1991 1995-1998 1999-2002 無償資金 協力 1999-2003 案 件 供 名 限度額 9.27 北部地方橋梁架け替え 新チョルテカ橋建設 テグシガルパ地域 橋梁架け替え イラマ橋及び デモクラシア橋建設 1999-2002 チョルテカ・バイパス橋建設 1999-2002 グアサウレ橋架け替え 与 要 4 橋梁、橋長計 230m の架け替え 12.02 1橋梁、橋長190mの建設 23.06 3橋梁、橋長計292の架け替え 36.04 2橋梁、橋長計370mの建設 21.04 2橋梁、橋長計262mの建設 7.12 10 概 1橋梁、橋長171mの架け替え(ニカラグア国 との国境に架かる橋梁) 第1章 1-4 プロジェクトの背景・経緯 他ドナーの援助動向 他ドナーの援助によって近年に実施された、又は実施中の運輸交通分野の援助動向を下表に示す。 (1) エルサルバドル国 表 1-4-1 他ドナー国・国際機関による運輸交通整備プロジェクト (単位:千 US$) 援助形態 実施年度 機関名 案件名 金額 要 有 償 2001~2005 BCIE 全国道路改修 無 償 2002~2003 BID 地方道路の災害復旧 2002~2005 BID 地方道路の改良・修理 2005~2006 BID 地方道路改修 3,900 サンビセンテ~サンタマリア間 20.35km の道路改修 2005~2006 BID 地方道路改修 3,800 チャペリティケ~サンフランシスコデゴテラ間 21.33km の 道路改修 2005~2006 BID 地方道路改修 4,400 サンタエレナ~フクアパ間の道路改修 2005~2006 BID 地方道路改修 2,600 ラコフラダ~サンアレホ間の道路改修 2005~2006 BCIE 59 通り拡幅 不明 サンサルバドル都市部の道路 800m を拡幅 2005~2006 BCIE ベルナル道路拡幅 不明 サンサルバドル都市部の道路 260m を拡幅 2005~2006 BCIE 国道 4 号線改修 不明 シェル~コマサグア間 1.02km の道路改修 2006~実施中 BCIE ウスルタン市バイパス整備 不明 12km のバイパスの新規建設 有 (2) 償 271,446 概 7,020 39,939 全国の主要道路改修 ミッチ台風被害を受けた地方道の復旧 地方の小都市間の道路を対象 ホンジュラス国 表 1-4-2 他ドナー国・国際機関による運輸交通整備プロジェクト (単位:千 US$) 援助形態 有 償 無 償 有 無 有 償 償 償 実施年度 機関名 案件名 2002 BID ロアルケ橋建設 2002 WB アグアン川架橋建設、テビ橋建設 2002 WB ブランコ川架橋建設 金額 900 1,100 300 概 要 橋長 80m の 1 橋建設 橋長計 135m の 2 橋建設 橋長 40m の 1 橋建設 レンパ川架橋建設 シヌアパ川架橋建設 フィニシル川架橋建設 アンゴストラ川吊橋修復 1,000 橋長計 190m の 4 橋建設 2002~2003 オーストラリア 2003 BID ジェグアレ橋建設 1,100 橋長 120m の 1 橋建設 2003 BID チョルテカ吊橋修復 1,600 橋長 268m の 1 橋建設 ハイティケ橋建設 アグアカリエンテ橋建設 チョルテカ・タマリンド橋建設 アグアフリア橋建設 グアサウレ橋建設 900 橋長計 167m の 2 橋建設 2,400 橋長計 360m の 3 橋建設 ナカオメ橋建設 1,900 橋長 165m の 1 橋建設 BCIE CA-1 改修とグアリケメ橋建設 5,400 延長 84km の道路改修 橋長 120m の 1 橋建設 BCIE CA-13 コルテス港とガテマラ国境間整備( ) 2003 WB 2003 WB 2003 スウェーデン 2000~2006 2003~2006 25,240 延長 34km の道路改修と建設 20,116 延長 26.46km の道路改修と建 設 2004~2006 BCIE CA-13 コルテス港とガテマラ国境間整備( ) 2003~実施中 BID サンタエレナ~セデーニョ道路修復 7,500 延長 34km の道路改修 2004~実施中 WB サンタリタ~ジョロ道路修復 18,000 延長 46km の道路改修 2004~実施中 スペイン テグシカルパ~ダンリ間の改修(CA-6) 20,100 延長 84km の道路改修 2004~実施中 BCIE コルテス~ガテマラ国境道路修復 26,000 延長 34km の道路改修 11 第2章 プロジェクトを取り巻く状況 第2章 第2章 2-1 2-1-1 (1) プロジェクトを取り巻く状況 プロジェクトを取り巻く状況 プロジェクトの実施体制 組織・人員 エルサルバドル国 1) 公共事業・運輸・住宅・都市開発省 「エ」国の主管官庁及び実施機関は、公共事業・運輸・住宅・都市開発省(以下「MOPTVDU」) である。MOPTVDU は、日本をはじめとする外国からの援助による道路・橋梁分野の整備事業を数 多く実施した実績を有している。同省は、3 つの部局(公共事業局(VOP :Viceministro de Obras Publicas)、交通運輸局、住宅・都市開発局)から成り、2005 年時点の総職員数は 955 名で、その 内訳は一般職員 368 名、技術専門職 121 名、技術支援職 466 名である。プロジェクトの実施部署は、 公共事業局(実質的には道路局)であり、464 名の職員を擁している。MOPTVDU の組織図を図 2-1-1 に、職種別職員数を表 2-1-1 示す。 公共事業大臣 副大臣 交通運輸局 副大臣 公 共 事 業 局 (道 路 局 ) 道路維持管理部 道路計画部 副大臣 住 宅 ・都 市 開 発 局 道路調査開発部 道路投資部 生 コ ン ・ア ス フ ァル ト製 造 課 計画管理・ 評価課 調 査 ・開 発 課 街路課 建機管理課 道路計画・ 設計課 資材課 地方道路課 内部協力課 環境管理課 品質管理課 機材配置課 道路調査課 プロジェクト 管理課 道路用地課 サ ン ミゲ ル プラント 図 2-1-1 「エ」国公共事業・運輸・住宅・都市開発省(MOPTVDU)組織図 表 2-1-1 職種 「エ」国道路局及び公共事業省の職種別職員数(2005 年) 公共事業局(道路局) 公共事業・運輸・住宅都市開発省 職員数(人) 構成比(%) 職員数(人) 構成比(%) 一般職員 技術専門職 64 29 13.8 6.3 368 121 38.5 12.7 技術支援職 371 80.0 466 48.8 合計 464 100 955 100 構成比(%) 48.6 100 12 第2章 プロジェクトを取り巻く状況 2) 道路基金維持管理局 「エ」国で道路・橋梁等の公共事業を執行している機関は、MOPTVDU の道路局であるが、道路 整備に関しては、2001 年に道路維持管理部門を独立させ、道路基金維持管理局(FOVIAL)を設立 した。同維持管理局は、ガソリン及びディーゼルオイル販売額の内、1ガロン当たり US$0.20 が資 金となり、道路局管轄道路の補修事業を行っている。FOVIAL の組織図を図 2-1-2 に示す。 道路基金評議会 総 財務・総務部 図 2-1-2 (2) 技 裁 術 部 調 総務課 施工監理課 技術課 企画課 達 部 「エ」国道路基金維持管理局(FOVIAL)組織図 ホンジュラス国 1) 公共事業・運輸・住宅省 「ホ」国の主管官庁及び実施機関は、公共事業・運輸・住宅省(以下「SOPTRAVI」)である。 SOPTRAVI も、同様に外国からの援助による道路・橋梁分野の整備事業を数多く実施した実績を有 している。同省は、公共大臣を頂点に公共事業・住宅担当次官と運輸担当次官に分かれ、前者は道路 局(DGC:Direccion General de Carreteras)、公共事業局、住宅開発局を管轄し、後者は運輸局、 民間航空局を管轄している。同省の 2005 年時点の総職員数は 12,148 名で、その内訳は一般職員 6,074 名、技術専門職 462 名、技術支援職 5,612 名である。プロジェクトの実施部署は、道路局であり、 1,498 名の職員を擁している。組織図を図 2-1-3 に示す。 大統領府 公共事業・運輸・住宅大臣 公共事業・住宅担当次官 道路局 運輸担当次官 運輸局 公共事業局 民間航空局 住宅開発局 道路基金 道路局長 次長 法律顧問質 資産・検査室 建設部 道路工事部 橋梁調査課 土質検査ラボ 機械整備部 道路用地部 地質部 人事部 構造部 総務部 技術支援部 緊急支援部 世銀・中米統合 銀担当 調査・プロジェ クト部 道路調査課 電算室 図 2-1-3 「ホ」国公共事業・運輸・住宅省組織図 13 第2章 表 2-1-2 職種 プロジェクトを取り巻く状況 「ホ」国道路局及び公共事業省の職種別職員数(2005 年) 道路局 公共事業・運輸・住宅省 職員数(人) 構成比(%) 職員数(人) 構成比(%) 一般職員 1,107 73.9 6,074 50.0 技術専門職 139 9.3 462 3.8 技術支援職 252 16.8 5,612 46.2 合計 1,498 100 12,148 100 構成比(%) 12 100 2) 道路基金維持管理局 「ホ」国で道路・橋梁等の公共事業を執行している機関は、SOPTRAVI の道路局であるが、道路 整備に関しては、「ホ」国も 2000 年に道路維持管理部門を独立させ、道路基金維持管理局(FONDO VIAL)を設立した。同維持管理局は、ガソリン及びディーゼルオイル販売価格の 10%を国家が徴収 し、そこから割り当てられた資金と国際援助機関からの援助資金によって運営され、道路局管轄道路 の補修事業を行っている。 道路技術委員会 道路基金総裁 道路基金福総裁 総務・財務部 技 術 部 大規模請負企業 小規模請負企業 図 2-1-4 「ホ」国道路基金維持管理局(FONDO VIAL)組織図 14 第2章 2-1-2 (1) プロジェクトを取り巻く状況 財政・予算 エルサルバドル国 MOPTVDU の 2001 年から 2004 年までの予算の推移を表 2-1-3 に、道路基金維持管理局の 2002 年から 2004 年までの維持管理実績を表 2-1-4 に示す。道路局の過去 4 年間における予算執行額は、 省全体の 7 割強を占め、新規建設費は道路局予算の 8 割強を占めている。なお、2003 年以降維持管 理費が減少しているのは、2001 年 11 月に道路維持管理財源としてのガソリン税が導入・実施された ことにより、道路基金維持管理局が維持管理費を負担することになったためと考えられる。 表 2-1-3 「エ」国公共事業・運輸・住宅・都市開発省及び道路局の予算の推移 (単位:百万米ドル) 省・局 公共事業省 道路局 項 目 2001 2002 2003 2004 合計 一般管理費 54.81 92.31 89.51 107.86 344.48 新規建設費 196.27 201.43 211.69 83.43 692.83 維持管理費 7.95 18.68 5.09 4.13 35.85 259.03 312.43 306.29 195.42 1073.17 その他拠出額 58.10 70.22 16.52 79.96 224.79 予算の伸び率(%) - 20.6 -2.0 -36.2 一般管理費 46.05 9.09 10.32 18.74 84.19 新規建設費 191.09 201.43 211.04 83.43 686.99 維持管理費 13.14 18.68 5.09 4.13 41.04 250.27 229.21 226.45 106.30 812.23 その他拠出額 58.10 69.79 9.61 56.17 193.67 予算の伸び率(%) - -8.4 -1.2 -53.1 支出合計 支出合計 出典:Viceministro de Obras Publicas, MOPTVDU, October 2005 表 2-1-4 項 目 予算執行額 定期点検実績 日常的道路舗装実績 未舗装道路補修 「エ」国道路基金維持管理局の維持管理実績 単位 US$1,000 km km km 2002 69,730 172.36 - - 2003 73,000 243.70 2,602.26 3,060.78 出典:Viceministro de Obras Publicas, MOPTVDU, October 2005 15 2004 75,900 82.24 2,969.29 3,214.98 合計 21,863 498 5,572 6,276 第2章 (2) プロジェクトを取り巻く状況 ホンジュラス国 SOPTRAVI の 2001 年から 2005 年までの予算の推移を表 2-1-5 に、2001 年から 2005 年までの 道路基金維持管理局の予算を表 2-1-6 に示す。道路局の過去 5 年間における予算執行額は、省全体 の5割強を占めている。過去 5 年間における公共事業省の予算の伸び率は上下しているが、道路局 の予算の伸び率は着実に増加している。 表 2-1-5 「ホ」国公共事業・運輸・住宅省及び道路局の予算の推移 (単位:百万米ドル) 省・局 公共事業省 道路局 2001 1.45 113.92 0 0.00 115.37 1.45 42.71 項 目 社会的サービス 経済的サービス 安全サービス その他 予算総額 予算の伸び率(%) 予算総額 予算の伸び率(%) 2002 0.84 106.85 0 0.00 107.68 -0.37 44.88 0.28 2003 4.40 112.31 0 0.67 117.32 0.50 54.90 1.24 2004 9.58 81.85 0.61 0.00 91.98 -1.20 64.87 1.01 2005 21.88 114.92 0.61 0.00 137.42 2.75 97.16 2.77 合計 38.14 529.84 1.22 0.67 569.77 304.51 1US$=17.96 レンピラ 表 2-1-6 「ホ」国道路基金維持管理局の予算の推移 (単位:百万米ドル) 省・局 道路基金維持管理局 目 2000 2001 2002 2003 2004 2005 予算総額 1.97 2.19 1.92 2.00 2.04 2.17 1.11 0.88 1.04 1.02 1.06 項 予算の伸び率(%) 1US$=17.96 レンピラ 2-1-3 (1) 技術水準 エルサルバドル国 「エ」国 MOPTVDU の職員数は、表 2-1-1 に示すように、省全体で 955 人であり、その内技術 職員数は、技術支援職も含めると 587 人である。一方、本プロジェクトの実施部署である道路局は、 総職員数は 464 人であり、その内技術職員数は、技術支援職も含めると 400 人である。総職員数に 占める技術職員数の割合は 86%と極めて高い。道路局本部職員の特徴は、比較的少人数であるが、 意欲的で、業務遂行能力の高い技術職員が多く見受けられた。 「エ」国では、過去我が国の無償資金協力により、3 件計 10 橋の橋梁架け替え建設が実施された が、実施に当たって特段問題はなく、技術レベル、業務遂行能力は高い。また、これら架け替えられ た橋梁の維持管理に関しても特段問題は生じていない。したがって、本プロジェクトに関しても MOPTVDU は、「エ」国側実施期間として業務を遺漏なく果たすことが出来ると考えられる。 16 第2章 (2) プロジェクトを取り巻く状況 ホンジュラス国 「ホ」国 SOPTRAVI の職員数は、表 2-1-2 に示すように、省全体で 12,148 人であり、その内技 術職員数は、技術支援職も含めると 6,074 人である。一方、本プロジェクトの実施部署である道路局 は、総職員数は 1,498 人であり、その内技術職員数は、技術支援職も含めると 391 人である。総職 員数に占める技術職員数の割合は 26%と「エ」国と比べて低いが、これは一般職員が 1,107 人と極 めて多いためであり、技術職員数は、「エ」国とほぼ同じである。道路局本部職員の技術レベルは、 中南米の標準的な水準にあり、勤勉で、積極的に業務に取り組む姿勢がうかがえる。 「ホ」国では、過去に日本の無償資金協力により、6 件 13 橋の橋梁架け替え建設が実施されたが、 実施に当たって特段問題はなく、技術レベル、業務遂行能力は十分である。また、これらで架け替え られた橋梁の維持管理に関しても特段問題は生じていない。したがって、本プロジェクトに関しても SOPTRAVI は、「ホ」国側実施期間として業務を遺漏なく果たすことが出来ると考えられる。 17 第2章 2-2 2-2-1 (1) プロジェクトを取り巻く状況 プロジェクトサイト及び周辺の状況 関連インフラの整備状況 ドライカナル計画路線整備状況 プエブラ・パナマ計画(PPP)の 6 つの根幹的な道路網の中に、メキシコと中米の道路を東西に 結ぶ太平洋回廊と、「エ」国ラ・ウニオン港と「ホ」国コルテス港を道路で南北に結ぶ大洋間ロジス ティック回廊(ドライカナル計画路線)がある。既存ゴアスコラン橋は、この2つの国際幹線道路の 交差地点に位置している。 「エ」国及び「ホ」国は、ドライカナル計画路線を中米の物流の発展及び経済の活性化の最重要課 題の一つとして整備を進めている。ドライカナル計画路線は、インフラ整備が各所で進められており、 重要な関係にある日本・中米友好橋が他の沿線事業と並行で完成することが期待されている。 両国において整備が進んでいるドライカナル計画路線の各事業の整備状況を表 2-2-1 に示す。 表 2-2-1 整備区間 ラ・ウニオン港 「エ」国側 ドライカナル計画路線の整備状況 仕 様 スーパー・パナマッ クス対応 ラ・ウニオン港~ 4 車線の ラ・ウニオン市 バイパス ラ・ウニオン市~ エル・アマティージョ国境 2 車線道路 ・2 車線+ 日本・中米友好橋 両側歩道 ・橋長 170m 進捗状況 建設中 供用予定 2008 年 第 3 四半期 供用中 供用中 供用中 供用中 基本設計調査を 2006 年 11 月 実施済 BD 終了 4 工区に分割して 2008 年 機 関 JBIC 円借款 FOVIAL (「エ」国) FOVIAL (「エ」国) JICA 2 車線道路+ エル・アマティージョ国境~ 登坂車線 ビジャデサンアントニオ (将来 4 車線に拡 工事業者選定中 第 3 四半期 BCIE 借款 幅予定) ビジャデサンアントニオ~ 2 車線(将来 4 車線 用地取得 (未定)今年開始 コマヤグア に拡幅予定) 手続き中 の場合 2008 年末 2 車線(将来 3 車線 コンサルタント (未定)今年開始 に拡幅予定) 選定中 の場合 2008 年末 改良工事中 2006 年 11 月 2 車線(12.2km) 用地取得 (未定)今年開始 4 車線予定(13.1km) 手続き中 の場合 2008 年末 4 車線道路 供用中 供用中 4 車線道路 供用中 供用中 水深 12m 供用中 供用中 コマヤグア~タウラベ 「ホ」国側 BID 借款 MCA 無償 2 車線(26km) タウラベ~ラバルカ 3 車線予定(13.8km) 世銀借款 4 車線予定(12.2km) ラバルカ~ビジャヌエバ ビジャヌエバ~ サンペドロスーラ サンペドロスーラ~ コルテス港 コルテス港 18 BID 借款 FONDOVIAL (「ホ」国) FONDOVIAL (「ホ」国) 第2章 (2) プロジェクトを取り巻く状況 交通量 1) 交通量調査 本プロジェクト対象橋梁地点にある既存ゴアスコラン橋を渡る自動車、軽車両及び歩行者数の 24 時間観測、ならびに両国のトラックターミナルの国境と反対側の CA-1 上で自動車の 14 時間交通量 調査を実施した。以下に交通量調査の分析結果を示す。 i) 既存ゴアスコラン橋を渡る自動車及び歩行者 ゴアスコラン橋を渡る自動車交通の車種別交通量を表 2-2-2 に示す。 自動車交通に関しては、24 時間の交通量が 1,494 台で、車種別構成ではトレーラーが 36.2%で通 過車両の中では一番多く、次いで国境を跨いで乗客を輸送しているオート三輪が 23.4%、乗用車が 14.3%、小型貨物が 14.0%、大型貨物が 10.6%となっており、バスは国際線のみであることから 1.6% に限定されている。 表 2-2-2 方向 エルサルバドル → ホンジュラス ホンジュラス → エルサルバドル 合 比 計 率 乗用車 ゴアスコラン橋を渡る自動車交通の車種別交通量 オート三輪 バス 小型貨物 大型貨物 トレーラー 合計 137 171 12 63 94 295 772 76 178 12 146 64 246 722 213 14.3% 349 23.4% 24 1.6% 209 14.0% 158 10.6% 541 36.2% 1,494 100% 出典:基本設計調査団実施交通調査結果, 2006 年 2 月 一方、ゴアスコラン橋を渡る軽車両ならびに歩行者数に関しては、表 2-2-3 に示すが、これらの 歩行者及び軽車両は、幅員の狭いトレーラー等の大型車両の脇をすり抜けて橋を渡るような危険な状 況である。 表 2-2-3 ゴアスコラン橋を渡る軽車両及び歩行者数 歩行者 2,491 自転車 314 三輪車 581 合計 3,735 出典:基本設計調査団実施交通調査結果, 2006 年 2 月 また、ゴアスコラン橋を渡る車両の登録国別分類(オート三輪を除く)を表 2-2-4 に示す。ゴア スコラン橋を渡る自動車の登録国としては、エルサルバドルが 50.7%を占め、次いでホンジュラスが 22.7%を占めている。なお、トレーラーに関しては、グアテマラ登録の車がエルサルバドル登録の車 に次いで多い点が特徴的である。 19 第2章 プロジェクトを取り巻く状況 表 2-2-4 ゴアスコラン橋を渡る車両の登録国別分類 行き先 乗用車 バス 合計 比率 134 60 4 13 0 2 14 0 4 0 6 0 115 80 1 9 1 3 102 45 7 2 2 0 215 75 75 160 14 2 580 260 91 184 23 7 50.7% 22.7% 7.9% 16.1% 0.2% 0.1% 213 24 209 158 541 1,145 100% エルサルバドル ホンジュラス ニカラグア グアテマラ コスタリカ その他 合 計 小型貨物 大型貨物 トレーラー 出典:基本設計調査団実施交通調査結果, 2006 年 2 月 ii) トラックターミナル近傍の CA-1 上の交通量 エルサルバドル側ならびにホンジュラス側のトラックターミナル近傍で実施した、14 時間交通量 調査(6:00~20:00)の結果を表 2-2-5 及び表 2-2-6 に示す。 上記のゴアスコラン橋を渡る自動車の交通量と比較すると明らかであるが、乗用車(多くはタクシ ーであると考えられる)及びバスの大半がゴアスコラン橋を渡らずに U ターンしていることが判明 したが、これは、ナンバープレート調査結果の解析でも確認された。 表 2-2-5 方向 「エ」国側トラックターミナル近傍での CA-1 の 14 時間車種別交通量 乗用車 オート三輪 バス 小型貨物 大型貨物 トレーラー 合計 サンミゲル方向 国境方向 136 129 19 33 361 215 74 54 44 81 163 242 797 754 合 265 52 576 128 125 405 1,551 計 出典:基本設計調査団実施交通調査結果, 2006 年 2 月 表 2-2-6 方向 国境方向 ナカオメ方向 合 計 「ホ」国側トラックターミナル近傍での CA-1 の 14 時間車種別交通量 乗用車 オート三輪 バス 小型貨物 大型貨物 トレーラー 合計 487 277 51 115 152 301 109 97 52 66 123 217 974 1,073 764 166 453 206 118 340 2,047 出典:基本設計調査団実施交通調査結果, 2006 年 2 月 2) 国境滞留時間調査 本調査においては、プロジェクト対象橋梁が国境橋という特殊条件を有することから、国境での自 動車の滞留時間を把握する目的で、両国のトラックターミナルの国境と反対側の地点で、通過する自 動車のナンバープレートを記録するナンバープレート調査を実施した。 ナンバープレート調査の結果を表 2-2-7 に示す。平均滞留時間についてみると、乗用車及び小型ト ラックでは方向別に滞留時間に大きな差はみられない。一方、バス、大型トラック及びトレーラーに 関しては、エルサルバドルに向かう車両の滞留時間がホンジュラスに向かう車両の滞留時間と比較し て非常に長い。この滞留時間の大きな差の原因は明確ではないが、貨物の流れの方向性、エルサルバ ドル側税関施設における密輸、薬物等の厳しいチェックも、その一因であると考えられる。なお、ト 20 第2章 プロジェクトを取り巻く状況 レーラーに関しては、ホンジュラスに向かう車両で滞留時間が 15 分未満のケースが非常に多く、こ れらのトレーラーは空荷状態で走行している可能性が高いものと考えられる。 表 2-2-7 国境施設における車種別滞留時間 (単位:分) 項目 乗用車 バス 小型トラック 大型トラック トレーラー エルサルバドル→ホンジュラス 平均滞留時間 32 42 62 25 23 最短滞留時間 14 20 14 14 14 最長滞留時間 112 70 408 116 241 ホンジュラス→エルサルバドル 平均滞留時間 38 76 61 130 107 最短滞留時間 14 135 14 14 14 最長滞留時間 138 34 446 396 517 出典:基本設計調査団実施交通調査結果, 2006 年 2 月 (3) 調査対象地域のライフライン 建設現場付近にキャンプヤードを設置することを考慮し、主に付近の民家への聞き取りにより周辺 のライフラインを調査した。 調査の結果、 「エ」国側は給水システムが有り、サン・カルロス(対象サイトの西約 9km)の給水タン クからゴアスコランまで国道沿いに水道管(6 インチ)が設置され、各集落に安定的に供給している ことが判明した。電気、通信とも安定供給されている。 「ホ」国側は電気・電話が安定供給されているものの、水道は各家庭あるいは会社等の組織ごとに 井戸を所有していることが確認された。 表 2-2-8 対象地域のライフライン 整 備 状 エルサルバドル側 水道 電気 況 ホンデュラス側 水源 給水システム有り 各家庭あるいは組織ごとに井戸 供給機関 Administración Nacional de Acueductos Alcantarillas (ANDA) (国家水道管理局) - 常時性 安定している 安定している 電圧 110V、220V 110V、240V 供給機関 Enpresa Electrico Regional Sur (南部地域電気会社) Electrico Noroeste Sociedad Anonima (北西地域電気株式会社) 常時性 安定している 安定している 定置電話 有り 有り 携帯電話 圏内 (使用可能) 圏内(使用可能) 通信 21 第2章 2-2-2 プロジェクトを取り巻く状況 既存ゴアスコラン橋の評価・検証 「エ」国と「ホ」国の国境地域のゴアスコラン川に架かる既存ゴアスコラン橋は、第 2 次世界大 戦中の 1943 年に米国により建設された。同橋は、パンアメリカン・ハイウェイの一部として中米地 域の貿易関係発展、両国間の人的・物的交流において重要な役割を果たしてきたが、建設後 60 年以 上が経過していること、物流車両が大型化していること、橋梁上での渋滞が激しいこと等により、同 橋に代わる新設橋日本・中米友好橋の建設が要請されている。 新設橋の基本設計を実施するに際し、既存ゴアスコラン橋の現況調査を行ったが、その現況図を図 2-2-1 に示すと共に、以下にその検証結果を記す。 (1) 橋梁諸元 ・ 建設年:1943 年 ・ 日平均交通量:2,252~2,973 台/日(2006 年 2 月実施時の交通量調査結果より。3-2-1-2(2)2) 及び 3-2-1-2(2)3)参照) ・ 総幅員:8.5m ・ 車道幅員:7.3m ・ 設計活荷重:H15-S12 ・ 橋長:39.472+67.666+39.472=146.61m ・ 橋梁形式:鋼 3 径間連続トラス(鉄筋コンクリート床版) ・ 橋台及び橋脚構造:石積み構造 (2) 機能性(役割) 交通上における機能性を調査した結果は、下記のとおりである。 ・ 日平均交通量は 2,252~2,973 台/日であり、PPP の太平洋輸送回廊(CA-1 号線)であるこ と、さらにカナルセコ計画路線(CA-3 号線)でもあることを考えると、交通上の役割は非常に 大きい。 ・ トレーラーや国際バス等の大型車の交通量が多いが、橋梁部の車道幅員は 7.3m しかなく、大 型車の交互通行が困難であり、車両走行上問題がある。 ・ 歩道が無く、歩行者は車道または地覆を通行しており、危険な状態にある。 (3) 健全性(損傷度) 損傷度等の橋梁の健全性を調査した結果は、下記のとおりである。 ・ 鉄筋コンクリート床版の損傷が激しく、多くのひび割れがあり、床版鉄筋が露出している箇所 もある。 ・ トラス部材が腐食しており、老朽化が著しい。 ・ 橋台及び橋脚の腐食・老朽化が著しい。 ・ 側径間トラスの中央付近が損傷しており、補強用の仮支柱が設置されている。 ・ 高欄の老朽化が著しい。 22 第2章 (4) プロジェクトを取り巻く状況 構造性(安全性) 橋梁の構造的安定性を調査した結果は、下記のとおりである。 ・ 設計当時の活荷重は H15-S12(総重量 24.5t)であるが、現在は HS20-44(総重量 32.6t) 以上の大型トレーラーが走行しており、構造上および耐荷力上問題があり、落橋の危険性があ る。 ・ 床版の損傷が著しく、耐荷力上問題があり、床板の打ち換えが必要と判断される。 ・ 側径間トラスの損傷部に仮支柱が設置されているが、構造上および耐荷力上問題がある。 ・ 橋台及び橋脚は石積み構造であり、耐震性上問題である。 (5) 総合的所見 既存ゴアスコラン橋に関して、機能性、健全性及び構造性について検証した結果、幅員が狭くかつ 歩道が無いこと、床版の損傷が著しくかつトラスの腐食も激しいこと、重車両に対し耐荷力上落橋の 危険性があること、かつ下部工に耐震上問題があること等を考慮すると、同橋を架け替えることが望 ましいと考えられる。 23 第2章 図 2-2-1 プロジェクトを取り巻く状況 既存ゴアスコラン橋現況図 24 第2章 2-2-3 (1) プロジェクトを取り巻く状況 自然条件 地形 「エ」国の地形は、北部のグアテマラから南東へ続く火山性の高地、中央部の広い丘陵台地及び太 平洋に面した海岸平野地域の 3 地域に大別される。一方、 「ホ」国は、カリブ海側に面した北部海岸 低地帯、中央部の広く、高原・山地から成る中央山岳地帯及び一部太平洋のフォンセカ湾に面する南 部海岸低地帯の3地帯に大別される。プロジェクト対象地域は、両国の太平洋側に位置する南部海岸 平野地域に属する。 対象サイトを流れるゴアスゴラン川は「ホ」国ラ・パス州の標高 1,000m の山地を源流とし、「エ」 国と「ホ」国の国境を流れ、フォンセカ湾に注いでいる。流域面積は 2,719km2 であり、幹川流路延 長は、184km を有している。 プロジェクト対象地域は、「エ」国側は、CA-1(パンアメリカンハイウェイ)沿いに既存ゴアスコラ ン橋地点から西方約 1km までは小高い山が南北に連なっており、ゴアスコラン川の河川断面は、既 存橋より約 650m 下流までは急峻な崖となっている。崖の標高は約 60m であり、河床(標高約 33m) との高低差は約 27m となる。崖は、下流に行くにしたがって低くなり、既存橋より約 700m 下流で は、崖の標高は約 50m であり、河床(標高約 33m)との高低差は約 17m となる。 対象サイトである CA-1 の南側には、教会と民家があるが、そのさらに南側には平地が広がってい る。平地は牧草地の様相を呈しており、ゴアスコラン川まで続いているが、河岸近く及び河床には岩 石の露出が見られる。 一方、「ホ」国側では、既存橋地点では急峻な崖となっているが、下流に行くにしたがって低くな り、既存橋より下流約 600m 付近では崖はなく、なだらかな平地が拡がっている。平地は広大な牧 草地であり、川から「ホ」国東側に位置する未舗装道路までの間は、民家 1 軒と鉄塔がある以外は 特に構造物となるようなものは見当たらない。ただし、未舗装道路が CA-1 と T 字交差する付近には 50 件の民家、商店及び税関待ち用のトレーラーパークがある。なお、 「ホ」国側では川縁に砂利は見 られるが、岩石の露出は見られない。 対象サイトの地形図を図 2-2-2 に示す。 25 第2章 プロジェクトを取り巻く状況 ゴアスコラン橋 ゴアスコラン川 エルサルバドル国 ホンジュラス国 図 2-2-2 対象サイト地形図 26 第2章 (2) プロジェクトを取り巻く状況 気象 対象橋梁に近い気象観測所としては、 「エ」国側では西側 8km のパサキーナ、南南西 30km のラ・ ウニオンがあり、「ホ」国側では東南東 70km のチョルテカがある。 流域の気候は、ケッペンの分類によると熱帯サバンナに属し、気温は年平均 27℃で、月の変動は 少なく、降水量として 1,600~2,000mm である。また、乾季と雨季に分かれ、雨季は南からの熱帯 偏西風により雨がもたらされ、乾期は北からの乾燥した風が吹く。「エ」国側の過去 56 年の統計で は乾季は 11 月に始まり、4 月に終わり、雨季は 5 月に始まり、10 月に終わる。 (出典:Guzman , Pable Arnoldo: Atlas de El Salvador, Ministerio de Economia, Centro Nacional de Registros, Instituo Geografico Nacional, Cuarta Edicion, 2000.) 気象および水文観測所の一覧を表 2-2-9 に、その位置を図 2-2-3 に示す。 表 2-2-9 地点名 気象および水文観測所一覧 緯度 経度 標高(m) 観測項目と期間 パサキーナ(エ国) 13-35 87-50 60 気温(1969~1984)、雨量(1969~1987) ラ・ウニオン(エ国) 13-19.9 87-52.9 95 雨量(1970~2005)、雲量、相対湿度 チョルテカ(ホ国) 13-24-29 87-09-32 39 平均気温(1995~2004)、風向・風速(1995~2004) 雨量(1995~2004) アリアンザ(ホ国) 13-30-55 87-43-25 25 雨量(1974~2005) ゴアスコラン(ホ国) 13-56-30 87-45-15 50 雨量(1973~2005)、流量(1961~1969) ゴアスコラン(エ国) 13-36 87-46 カリダード(ホ国) 13-49-42 87-41-35 130 雨量(1973~2005) ラ・セイバ(エ国) 13-31-8.4 87-45-57.5 49.0 流量(2002~2004) これらの観測所のうち、パサキーナでは現在観測しておらず、ゴアスコラン(流量:「エ」国)では観 測所が廃止され、約 10km 下流のラ・セイバで最近観測が開始された。 ★ カリダード ★ ゴアスコラン パサキーナ アリアンザ ★ ★ ★ ラ・セイバ ★ ラ・ウニオン 図 2-2-3 観測所位置図 27 第2章 プロジェクトを取り巻く状況 1) 気温 架橋地点に近いパサキーナにおいて観測が行われていたが、観測期間としては 1969 年から 1984 年の 16 年間で、その結果を表 2-2-10~表 2-2-12 に示す。平均気温、最高気温、最低気温ともに月 による変化は少ないが 3 月から 5 月にかけて高く、9 月から 11 月にかけて低くなっている。また、 16 年間の平均気温は 27.3℃、最高気温の最大値は 39.2℃、最低気温の最低値は 16.2℃となっている。 表 2-2-10 パサキーナにおける平均気温 (℃:1969~1984 年) 平均 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 平均 27.1 27.5 28.8 29.6 28.4 27.0 27.2 26.8 26.0 26.1 26.3 26.4 27.3 表 2-2-11 パサキーナにおける月最高気温 (℃:1969~1984 年) 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 平均 平均 36.1 36.8 37.8 37.9 36.0 34.3 35.0 35.0 33.3 33.3 34.4 35.4 35.4 最高 37.0 37.9 38.8 39.0 39.2 35.7 37.2 37.6 35.1 34.5 35.8 36.4 37.0 最低 35.0 35.6 36.8 36.1 33.9 32.8 33.4 32.5 31.7 31.8 32.6 33.9 33.8 表 2-2-12 パサキーナにおける月最低気温 (℃:1969~1984 年) 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 平均 平均 20.5 21.8 23.2 24.2 24.1 23.2 22.5 22.3 22.5 22.4 21.3 20.4 22.4 最高 22.2 24.0 24.7 26.1 25.9 25.2 24.2 23.9 23.5 23.4 22.6 22.2 24.0 最低 17.7 19.8 21.7 22.1 22.3 22.3 21.7 16.2 21.7 21.9 20.0 18.6 20.5 2) 相対湿度 架橋地点の南南西 30km に位置するラ・ウニオン(北緯 13 度 19.9 分、東経 87 度 52.9 分)での年平 均湿度は 64%で、表 2-2-13 のとおり 6 月から 12 月にかけて湿度が高く 10 月には 76%となる。 表 2-2-13 ラ・ウニオンにおける相対湿度(%) 平均 1月 2月 3月 55 54 56 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 平均 56 58 68 72 67 70 76 74 66 64 3) 風向・風速 風向・風速に関しては、「エ」国の資料によると海風、陸風の変化があり、地形の影響を受けるこ とから、対象地点での観測が必要であるが、観測資料が無いことから参考として、「ホ」国チョルテ カにおける過去 10 年間(1995 年~2004 年)の最多月平均風向、月平均風速の観測結果を表 2-2-14 に示す。ここに、1 ノット=0.51444m/s であり、最大風速 8.6 ノットは、4.4m/s である。 表 2-2-14 チョルテカにおける月最多風向(度)と月平均風速(ノット) 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 平均 風向 30 40 20 270 180 180 30 180 180 180 30 20 112 風速 8.6 8.3 6.5 5.5 4.7 3.9 5.1 5.6 3.7 4.0 5.9 8.4 5.9 28 第2章 (3) プロジェクトを取り巻く状況 水文 1) 雨量 流域内に位置する下流からアリアンザ、ゴアスコラン、カリダードの過去約 30 年間の月最多雨量、 最少雨量、平均雨量を表 2-2-15~表 2-2-17 に示す。 表 2-2-15 アリアンザにおける月最多雨量、月最少雨量、平均雨量 (mm:1974~2005 年) 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10 月 11 月 12 月 最多 15 3 50 156 638 700 785 610 947 1271 111 28 最小 0 0 0 0 18 45 11 12 109 13 0 0 平均 1 0 8 29 233 268 178 223 387 254 41 4 表 2-2-16 ゴアスコランにおける月最多雨量、月最少雨量、平均雨量 (mm:1973~2005 年) 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10 月 11 月 12 月 最多 20 20 64 150 883 784 319 628 844 889 249 26 最小 0 0 0 0 29 36 13 9 124 0 0 0 平均 1 1 9 50 248 288 171 251 413 243 38 3 表 2-2-17 カリダードにおける月最多雨量、月最少雨量、平均雨量 (mm:1973~2005 年) 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10 月 11 月 12 月 最多 10 36 80 337 651 1398 558 846 1275 861 271 61 最小 0 0 0 0 13 26 4 25 125 0 0 0 平均 1 2 15 58 288 441 208 355 543 332 54 8 いずれの地点においても、5 月から 10 月までは降雨があり、12 月から翌年の 2 月まではほとんど 降雨が無い。なお、年平均雨量を表 2-2-18 に示す。なお、アリアンザはゴアスコラン川の流域内で はあるが、下流に観測値が位置し、ゴアスコラン地点の流域には入っていない。 表 2-2-18 観測所 年平均雨量 ゴアスコラン流域の平均雨量 アリアンザ ゴアスコラン カリダード 1,626mm 1,716mm 2,305mm 29 第2章 プロジェクトを取り巻く状況 2) 流量 ゴアスコラン川の流量観測は、既存橋の架橋地点において、1962 年~1969 年まで観測が行われて いたが、以後は行われていない。過去の結果は表 2-2-19 のとおりである。 表 2-2-19 ゴアスコランにおける年最大流量(m3/s) 観測年 1962 1963 1964 1965 1966 1967 1968 最大流量 500 536 416 888 2,346 6,500 1,946* 注:*は推定値 この観測値のうち、6,500m3/s に関しては異常に多いために、その根拠となる水位と信頼性を問い 合わせたが、不明であった。現地の水位観測所の井戸が残っていたが、高さが低く 6,500 m3/s の洪 水を観測できる状況には無い。また、災害の記録および現地でのヒアリングにおいても 1967 年に洪 水が生じたとの根拠はつかめなかったことから、この値は信頼性が低い。 現在、ゴアスコラン川の流量観測は、約 10km 下流のラ・セイバに移動し、2002 年から観測を開 始しており、その観測値を表 2-2-20 に示す。なお、ゴアスコランとラ・セイバの間に支川パサキーナ 川が流入している。 表 2-2-20 ラ・セイバにおける年最大流量 (m3/s:流域面積 912km2:「エ」国側) 観測年 2002 2003 2004 最大流量 710 730 665 これらの結果をまとめると、過去の年最大流量の観測値は、異常値と考えられる 6,500 m3/s を除 き、400 m3/s から 2,350 m3/s の範囲にある。 3) 河道形状 ゴアスゴラン川は山間を縫って流れ、現橋付近で峡谷をなし、下流に向かい河岸の高さを減じ、約 1km 下流では氾濫原なっている。平面形状としては、現橋から下流、新設橋の架橋地点まで緩やか に左岸側に湾曲している。縦断的には現橋を挟み上下流約 1km の区間で河床勾配は 1/480 となって いる。通常の流路幅は、地形図および航空写真によると 100m~200m と変動している。河道の横断 形状は流路内での水深の変化は少なく、一部湾曲の外岸側で深くはなっているが、顕著ではない。 河岸は右岸側では大きな礫と砂で構成され、横断方向に緩やかな勾配を持っているが、左岸側は岩 で急な崖となっている。河床には岩が点在し、特に右岸側に多く、崖に接続しているところも見られ る。 新設橋を計画している地点では、左岸側河岸は礫と砂であり、右岸側は河床の標高 35m 程度から 標高 55m 程度の高い崖から、下流に向かい標高 45m 程度へと高さを減じている。 河道の安定性を 1954 年、1982 年、2004 年の航空写真をから調べた結果によると、架橋地点付近 では右岸側に崖が存在していることから河道の変化は少ない。なお、約 1km 下流では 1954 年に比 較し、河道は広がっていたものが左岸側に寄っている。 30 第2章 (4) プロジェクトを取り巻く状況 自然災害 1) 洪水 橋梁に関連する自然災害としては、ハリケーンによる洪水および地震が考えられる。災害防止セン ター(CEPRODE)が 1991 年に作成した資料によると、ゴアスゴラン川に関する過去に発生した災 害の情報は少なく、今後の研究すべき地域としている。「エ」国ではハリケーンによる災害は間接的 であるが、唯一つ直接的な影響「エ」国に与えたハリケーンとして、1935 年(CEPRODE は 1934 年としている)巨大なハリケーンについての経路図が米国マイアミのハリケーンセンターにあり、こ れが両国国境付近に影響を与え、国境から数 km 離れたオコテペクの街が破壊されたことを確証して いる。このハリケーン(1934 年 6 月 6 日)によりエルサルバドル国では 394 名の死者、106 名の負傷 者を出し、14 の重要な河川で氾濫が生じ、少なくとも 7 つの州で影響を受けたとしている。 (出典:Velis,Luis y Napoleón Campos: Los Desastres en el Salvador una Visión Histórico Sosial, Vol.2 Desastres por Actividad Hidorometeorológica, San Salvador, CEPRODE, 1991.) 現地踏査とヒアリングを行った結果、1998 年のハリケーンミッチにより、左岸「ホ」国側で家が 一軒流されている。また、右岸「エ」国側では、ミッチの際の水位は、既存橋橋脚の天端までは達し ていないことを確認した。 2) 地震 西暦 2001 年 2 月に、クスカトラン、サン・ビセンテ、ラパスの各州に及ぶ 315 名の死者、164 千 人が被災し、27,500 戸の家屋が破壊されたように、 「エ」国では過去何回も地震の被害を受けている。 20 世紀に生じた主要な地震について、その震源の位置と深さ、規模の一覧を表 2-2-21 に示す。対象 橋梁地点付近が震源となった事例は少ないが、震源が離れていても地震の影響を受ける。対象橋梁に 関連しては約 100km 西に位置するサン・ビセンテ火山、約 50km 西に位置するサン・ミゲル火山を 震源とした地震が過去に発生している。 表 2-2-21 発生年月日 「エ」国において 20 世紀に発生した主要地震 震源位置 震源の深さ マグニチュード 1902 年 4 月 18 日 北緯 14.00° 西経 91.00° 1902 年 4 月 19 日 北緯 14.90° 西経 91.50° 10km 7.5 1906 年 6 月 20 日 北緯 13.90° 西経 89.30° 30km 6.07 1915 年 9 月 7 日 北緯 13.90° 西経 89.60° 60km 1917 年 6 月 6 日 北緯 13.70° 西経 89.53° 8.3 7.7 6.5 1924 年 5 月 1 日 北緯 14.00° 西経 89.00° 30km 6.58 1927 年 10 月 2 日 北緯 14.00° 西経 88.00° 80km 6.03 1930 年 7 月 14 日 北緯 14.12° 西経 90.25° 30km 6.85 1932 年 5 月 21 日 北緯 12.80° 西経 88.00° 150km 7.10 1936 年 12 月 20 日 北緯 13.72° 西経 88.93° 10km 6.1 1951 年 5 月 6 日 北緯 13.00° 西経 87.80° 96km 6.25 1961 年 4 月 12 日 北緯 13.33° 西経 88.80° 87km 6.9 1965 年 5 月 3 日 北緯 13.50° 西経 89.30° 23km 6.25 1982 年 6 月 19 日 北緯 13.30° 西経 89.40° 80km 7.3 出典:Posada,Madrid y Kaitia Isabel: Los Terremotos Destructores en El Salvador en el Siglo XX, San Salvador, El Salv. 1998. なお、 「ホ」国では地震観測所がないため地震のデータが記録として残っていないが、 「エ」国に比 較して地震の発生は少ない。 31 第2章 2-2-4 (1) プロジェクトを取り巻く状況 環境社会配慮 本基本設計における確認事項 1) 環境関連手続き 「エ」国では、環境天然資源省(MARN)から 2005 年 12 月 23 日付で、「ホ」国では、天然資源環 境省(SERNA)から 2006 年 1 月 23 日付で本計画に関する環境承認が取得されている。その後、両国 は最終決定路線に基づき、本計画の EIA 承認に必要な修正及び追加手続きを実施したが、両国とも 修正内容が環境承認事項の許容範囲内であることから、当初の承認書が有効であることを確認した。 2) 用地取得手続き 「エ」国では MOPTVDU(道路局道路計画部道路用地課)が同国の公共事業用地接収法に基づき、 また「ホ」国では SOPTRAVI(道路局道路用地部)が同国の土地収用法に基づき道路用地取得が行 われる。なお、現在、道路用地内における住居数は「エ」国側が4件、「ホ」国側が5件であり、両 国とも各所有者からの同意書(写)を本年9月に本基本設計概要説明調査団へ提出した。なお、両国 は、本計画実施までに必要な道路用地の確保(土地所有者への支払いを含む)を行うことで同意して いる。 (2) ミティゲーション方策の検討 1) 環境社会配慮調査実施の背景 本計画については、「エ」国側取付道路建設のためにコミュニティーの中心である「教会」および 「公立学校」の移転が想定されるなど、環境・社会への影響も少なからず生じる可能性が高いことか ら、予備調査段階において「JICA 環境社会配慮ガイドライン」に基づきカテゴリーB と判断された。 予備調査の環境社会配慮調査の結果、スコーピング・マトリックスにおいて影響が生じると評価さ れた内容は表 2-2-22 に示す通りである。 これらの影響のうち、特に非自発的住民移転、交通・公共施設、災害、地形・地質、河川流況に関 する負の影響については、設計段階において適切なミティゲーション方策を講じることで回避・低減 させる必要がある。 このほか、廃棄物、土壌浸食、動植物、公害等については大きな影響を及ぼす可能性は少ないが、 施工段階においてミティゲーション方策を実施することで、工事期間中の一時的な環境影響の最小化、 および供用後の環境の早期復元に努めていく必要がある。 32 第2章 表 2-2-22 区 分 社会環境 自然環境 公 害 項 プロジェクトを取り巻く状況 本計画の実施に伴う環境影響 目 影 響 の 内 容 非自発的住民移転 工事時の道路用地内の非自発的住民移転の発生 経済活動 工事時の雇用の発生、供用時の流通の促進、渋滞の減少、地域産業の発展 交通・公共施設 工事時の教会および公立学校の移転の可能性 地域分断 供用時の一部地域社会の分断、地域の便益向上 廃棄物 工事時の廃棄物の発生にともなう水質汚濁、土壌汚染 供用時における不法投棄の発生 災害(リスク) 供用時の盛土、橋梁による洪水流下の阻害、交通事故の発生 地形・地質 供用時の取付道路(盛土、切土)の土砂崩壊 気象 供用時の取付道路、橋梁周辺における小規模な風向、風速の変化 土壌浸食 工事時の雨水による土壌流出 河川流況 供用時の橋脚の存在に伴う河道形状、流路の変化 動植物 工事時の樹木の伐採、生物多様性の減少 景観 工事時の樹木の伐採、供用時の取付道路および橋梁建設による景観変化 大気汚染 工事時の建設機械及び工事用車両、供用時の自動車からの排気ガスによる局 地的な汚染 騒音・振動 工事時の建設機械及び工事用車両、供用時の自動車からの騒音の発生 2) 本基本設計におけるミティゲーション方策 環境への重大な影響を回避・低減するため、本基本設計においては以下のミティゲーション方策を 講じるものとする。 i) 社会環境への配慮 ・ 「エ」国側取付道路は、複数案の比較検討を行い、非自発的住民移転家屋が少なく、かつコミ ュニティーの中心である「教会」および「公立学校」の移転が生じない道路線形を採用する。 ・ 「ホ」国側取付道路は、複数案の比較検討を行い、非自発的住民移転家屋が少なく、かつ公共 施設であるトレーラーパークを分断しない道路線形を採用する。 ・ 道路横断面構成の検討に際しては、歩行者、オート三輪の安全性を確保する。 ii) 自然環境への配慮 ・ 地形や景観への影響を低減するため、架橋位置は大規模な盛土とならないように高低差の少な い箇所を選定する。 ・ 河川流況への影響を低減するため、橋脚については流況変化の少ない形式を採用する。 iii) 公害への配慮 ・ 自動車の排気ガスや騒音の発生を低減するため、架橋位置は高低差の少ない箇所を選定し、縦 断勾配に配慮する。 このほか、「エ」国側の取付道路と現道との交差点部については、公立学校への通学路の一部として 日常的に利用される可能性がある。 33 第2章 プロジェクトを取り巻く状況 今回、公立学校へのヒアリング調査を行った結果、現況で通学する児童の内訳は表 2-2-23 のとお りであることが確認された。また、交通事故の発生状況に関して、過去、児童の死亡事故はないが、 「エ」国側のトレーラーパーク付近で児童 1 名がトレーラーと接触し、怪我をしていることが確認 された。 取付道路北側の集落(エル・アマティージョ、 「ホ」国側集落)から通学する児童数は約 100 名と 多く、また低年齢の児童も含まれている。 したがって、この交差点部の設計に際しては、現況でみられるような横断歩道および注意標識設置 と併せて、車道部への小型の連続ハンプや安全帯の設置を検討し、交通事故の発生抑制に努めるもの とする。 表 2-2-23 No 集 落 「エ」国側公立学校に通学する児童の内訳 名 児童数(人) 割合(%) 年齢 1 エル・アマティージョ 85 20 6 歳~18 歳 2 ロス・カナレス 21 5 6 歳~18 歳 3 サン・ジョセ 21 5 10 歳~18 歳 4 サン・カルロス 9 2 15 歳~18 歳 5 サンタ・クラリータ 21 5 10 歳~18 歳 6 サンタ・クララ 255 60 4 歳~18 歳 7 「ホ」国側集落 13 3 12 歳~18 歳 425 名 100% 合 写真 2-2-1 計 写真 2-2-2 小型の連続ハンプの設置事例(CA-1 号線) 現況の横断歩道および注意標識 34 第2章 プロジェクトを取り巻く状況 3) 施工段階で実施すべきミティゲーション方策 施工段階におけるミティゲーション方策は表 2-2-24 に示す通りである。 なお、これら施工段階のミティゲーション方策の実施については、「エ」国の環境承認における尊 守条件となっており、施工段階で環境管理計画(EMP)を策定し、計画的に実施していく必要があ る。 表 2-2-24 項 目 大気汚染 環境影響 ・ ・ 騒 音 水質汚濁 施工段階のミティゲーション方策の概要 ・ ・ 工事用車両の走行 に伴う粉じん 建設機械からの排 出ガス 建設機械からの騒 音 建設時の水質汚濁 ミティゲーション方策 ・ 散水による粉じんの発生抑 制 ・ 工事用車両のスピード規制 による粉じんの発生抑制 ・ 建設機械の適切なオペレー ションとメンテナンス 夜間工事の回避 (※1) ・ ・ 建設機械の適切なオペレー ションとメンテナンス ・ 簡易トイレの設置によるし 尿の適切な処理(※2) ごみ集積場所の設置による 廃棄物(廃油、ごみ)の適切 な処理(※2) オイルや燃料の適切な管理 上記の取り扱いに関する人 員のトレーニング 水質汚濁、植物に関する環境 配慮事項の実施 芝や樹木によるのり面の緑 化 現状復旧した後、土地所有者 へ返還 ・ ・ ・ 土 壌 植 物 動 景 物 観 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 保健衛生 ・ 土壌の流出 土壌汚染 植物の消失 生物学的多様性、 野生の動物相の減 少 ・ 生物学的多様性、 野生の動物相の減 少 ・ キャンプサイト、 建設機械の存在に よる一時的影響 新たな道路の存在 による景観変化 労働者の流入によ る HIV の蔓延 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 実施箇所 実施期間 工事用道路 (周辺に民家等が存在する 区間) 工事用道路 (周辺に民家等が存在する 区間) 工事区域内 キャンプサイト 工事区域内 キャンプサイト 工事区域内 キャンプサイト 乾季施工時 (11~4 月) 工事期間中 工事期間中 工事期間中 工事期間中 工事区域内 キャンプサイト 工事期間中 工事区域内 キャンプサイト 工事区域内 工事期間中 キャンプサイト 採石場 工事終了時 違法な狩猟等の禁止(労働者 の環境教育と管理) 植物への環境配慮事項の実 施 影響を及ぼす期間(工事期 間)の告知 植物への環境配慮事項の実 施 工事区域内 キャンプサイト 工事期間中 工事区域内 キャンプサイト 工事期間中 工事関係者への意識啓発 キャンプサイト 工事期間中 工事期間中 ※1「エ」国側では EIA レポートにおいて、夜間(20:00~06:00)の住宅地における騒音レベルが 45 dB 以下とされて いることから、夜間工事を行う場合に騒音のモニタリングが必要である。 ※2 し尿及び廃棄物等については、最終的に「エ」国側(MOPTVDU)及び「ホ」国(SOPTRAVI)の承認した場所へ廃棄し なければならない。 35 第2章 (3) プロジェクトを取り巻く状況 中小商業従事者への影響 本計画の実施に伴い既存橋周辺の中小商業従事者は間接的な影響を受ける可能性がある。 BCIE の調査結果によると、既存橋周辺の主要な施設としては、銀行、ホテル、店舗、露天および 簡易食堂、免税店、ガソリンスタンド、ビリヤード場があるとされている。また、本計画の予備調査 において既存橋周辺の中小商業従事者の実態調査を行っており、「エ」国側 60 店舗、「ホ」国側 40 店舗で、営業年数は 8 年から 30 年でほとんど営業許可を取得しており、店舗の所有形態としては賃 貸が 80%を占め、残りは所有しているとの調査結果を得ている。また、予備調査では基本設計調査 段階において中小商業従事者の要望を把握し、相手国政府に配慮を求めていくことが課題とされてい る。 今回実施した既存橋梁周辺の中小商業従事者(「エ」国側 15 店舗、「ホ」国側 15 店舗)へのヒア リング調査結果を表 2-2-25、表 2-2-26 に示す。 表 2-2-25 No 既存橋周辺の中小商業従事者へのヒアリング調査結果(「エ」国側) 店の種類 所有形態 1日の売り上げ (ドル) 客の内訳(%) 移動客 本計画の周知 意見、要望 地元客 100 1 衣料品販売店 所有 2000~3000 0 ○ 2 衣料品販売店 賃貸 100~300 80 20 ○ 特になし。 3 靴販売店 賃貸 1000 100 0 × 新橋近傍に移転したい。 4 衣料品販売店 所有 2000~4000 0 ○ 新橋近傍に移転したい。 5 金融業 所有 3000 100 0 ○ 新橋近傍に移転したい。 6 ホテル 所有 100~200 100 0 ○ 経済的に移転は困難であり、既存橋も残してほしい。 7 飲料店(露天) 所有 30 100 0 ○ 経済的に移転は困難であり、既存橋も残してほしい。 8 衣料品販売店 賃貸 不明 80 20 ○ 特になし。 9 美容室・化粧品販売店 経済的に移転は困難であり、既存橋も残してほしい。 (他国からの買付け客) (他国からの買付け客) 100 (他国からの買付け客) 特になし。 所有 100 60 40 ○ 10 衣料品・電話販売店(露天) 賃貸 30 90 0 ○ 経済的に移転は困難であり、既存橋も残してほしい。 11 衣料品販売店(露天) 所有 10~20 90 0 ○ 経済的に移転は困難であり、既存橋も残してほしい。 12 簡易食堂 賃貸 20 0 100 ○ 特になし。 13 簡易食堂 所有 50 50 50 ○ 新橋近傍に移転したい。 14 電話販売店 賃貸 800 90 10 ○ 特になし。 15 雑貨、食料品店 所有 30~80 70 30 ○ 新橋近傍に移転したい。 表 2-2-26 No 既存橋周辺の中小商業従事者へのヒアリング調査結果(「ホ」国側) 店の種類 所有形態 1日の売り上げ (レンピーラ) 客の内訳(%) 本計画の周知 移動客 地元客 意見、要望 1 簡易食堂 所有 1500 50 50 ○ 経済的に移転は困難であり、既存橋も残してほしい。 2 アクセサリー販売店 賃貸 700 100 0 × 経済的に移転は困難であり、既存橋も残してほしい。 経済的に移転は困難であり、既存橋も残してほしい。 3 衣料品、時計、アクセサリー販売店 所有 1000 90 10 ○ 4 簡易食堂 賃貸 500~700 50 50 × 経済的に移転は困難であり、既存橋も残してほしい。 5 簡易食堂 所有 3500 50 50 ○ 新橋近傍に移転したい。 6 簡易食堂 所有 2500 50 50 ○ 経済的に移転は困難であり、既存橋も残してほしい。 7 雑貨販売店 賃貸 200~1000 40 60 ○ 経済的に移転は困難であり、既存橋も残してほしい。 8 食料品店 所有 6000 0 100 ○ 特になし。 新橋近傍に移転したい。 9 通関業 所有 不明 100 0 ○ 10 免税店 所有 1500~2000 90 10 ○ 経済的に移転は困難であり、既存橋も残してほしい。 11 飲食店 賃貸 7000 30 70 × 特になし。 12 ビリヤード店 所有 不明 10 90 ○ 特になし。 13 カー用品販売店 賃貸 3000 90 10 ○ 経済的に移転は困難であり、既存橋も残してほしい。 14 簡易食堂 所有 1000 30 70 ○ 特になし。 15 ホテル 所有 12000~15000 100 0 ○ 経済的に移転は困難であり、既存橋も残してほしい。 36 第2章 プロジェクトを取り巻く状況 既存橋の将来の活用形態については、現時点で決定していない状況にある。このため、今回の中小 商業従事者へのヒアリング調査の結果、下記の意見が数多く聞かれた。 a) 新橋完成後、新橋近傍に移転したい。 b) 移転することが経済的に困難であるため既存橋梁も引き続き残して欲しい。 なお、これらの意見に関しては、「エ」国側及び「ホ」国側に伝えられた。 また、二国間委員会の場での協議・合意を経ながら、下記の事項を実施するように提言を行った。 ① 既存橋梁の将来の活用形態の合意形成 ② 既存橋梁周辺の中小商業従事者への行政の配慮と施策の検討(例:計画的な代替地提供) ③ 中小商業従事者への説明会 37