Comments
Description
Transcript
奏功事例分析から見た住宅用火災警報器の効果 - 東京消防庁
消防技術安全所報 46号(平成21年) 奏功事例分析から見た住宅用火災警報器の効果 町井雄一郎キ,金子公平ぺ鎌形健司キ 概 要 平成 1 8年から 20年にかけて発生した住宅用火災警報器に係る奏功事例について、焼損程度、出火箇 所、警報音の認知位置等の観点から分析し、そこから住宅用火災警報器の設置効果について考察した。 その結果、以下のことがわかった。 -住警器の奏功によって、火災による被害が軽減されている。 ・台所での奏功事例が多く、煙式の住警器の奏功事例が多い。 -住警器は、火点の居住者だけでなく、近隣の住民に対しても、火災発生の認知を促すことができる。 1 はじめに そして、この火災によって 98 名の死者(自損を除 東京消防庁管内で平成 20年中に発生した火災の総件 く)が発生している。これは、火災全体の死者の約 9割 数は 5763件であり、そのうち 2243件が住宅や共同住宅 以上を占めており、住宅防火対策を推進していくことが、 で発生している。(図 1) 即ち火災による死傷者の低減につながることを示してい る。(図 2) 図 1 平成 2 0年中の総火災件数に対する 図 2 平成 2 0年中の総死者数に対する 住宅火災の発生件数 住宅火災による死者数 また、過去 5年間の住宅火災の発生件数をみると、ほ ぼその水準で推移しているのがわかる。(図 2) 6年に行われ その住宅防火推進の一環として、平成 1 た消防法(昭和 2 3年法律第 1 8 6号)の改正により、既 S制加 存を含む一般住宅全てに対し、住宅用火災警報器(以下 幻8 7 2 2 7 1 「住警器 J という。)の設置が義務付けられた。 < 4 3 2 2 これを受けて、東京消防庁管内では、火災予防条例 2副lO a 証 (昭和 37年東京都条例第 6 5号)により、各居室、台所 t 及び階段に、平成 22年 3月 3 1日までに設置しなければ 1 0 0 0 ならないとされている。しかし、平成 2 0年 7月に実施 された消防に関する世論調査によると、実際に設置して HI8 H17 HI8 H I骨 いる住宅の割合は約 34%となっているのが現状である。 H10 ( 図 3) 図 2 住宅火災(共同住宅を含む)発生件数の推移 *装備安全課 102 60 1 0 0 . 0 也 5 1 伺 40 旭町 u d 20 副 s¥岨宵帽 M 量 ま 生 15 .4~ L o0 ム 。 」 1 4, 7¥ 全焼 0 . 0 包 HI8 HI 7 HI8 HI9 H20 図 3 住宅用火災警報器の設置率 (消防に関する世論調査) 半焼 昔草分焼 l まや その他火災 非火災 図 5 奏功事例における焼損程度 ( 2 ) 出火箇所(非火災における発煙等が起きた箇所を含 む。以下同じ。) 一方、住宅火災における住警器の奏功事例が年々増加 出火箇所に関する結果を図 6に示す。 傾向にあり、確実にその効果が現れてきているのも事実 であるといえる。(図 4) 各年とも台所での出火または発煙等に対する奏功が圧 倒的に多いことがわかる。これをさらに細かく見ていく と、台所で出火(または発煙等)した場合に作動した住 1 5 0 警器の種別の半数以上が、煙式のものであることがわか った。(図 7) 1 0 0 主 誕 生 100 5 0 82 o 63 平成 1 8年 平成 1 9年 平成 2 0年 ま50 図 4 奏功事例件数(平成 2 1年 1月 2 8日まで 報告されたもの)の推移 そこで、これらの奏功事例を分析し、その結果から住 O 平成 18年 警器の設置効果について考察した。 なお、本文中の奏功事例とは、当庁管内で発生した火 平成 19年 平 成20年 図 6 奏功事例における出火箇所 災又は非火災(鍋の空焚き等で火災に至らなかったも の)において、住普器が有効に作動し、死者発生や類焼 の防止、焼損面積の低減等火災の被害低減に寄与したも ので、当庁生活安全課に報告されたものを示すこととす る 。 複合(県式+ガス) 8% 2 分析結果及び考察 8年から 2 0年にかけて発生した住警器に係る奏 平成 1 功事例について、以不の観点から分析し、そこから住警 器の設置効果について考察を行った。 ( 1 ) 焼損程度 年毎の奏功事例における焼損程度について図 5に示す。 極合(煙式+ガス) 各年とも、ぼや・非火災が多くの割合を占めているの がわかる。このことから、住普器の奏功により火災の早 図 7 台所で出火文は発煙した場合に作動した 感知器の種別 期発見や未然防止が行なわれ、火災による被害の軽減が 図られていることがわかる。 また、煙式住警器の場合、熱式のものより非火災とな 103 る割合が大きい結果となっている。(図 8) s o 44 36 竺圃 │ ま 2 5 26 o 火点室 熱式住警器 煙式住警器 別室 隣棟・ 隣戸等 屋外 その他 不明 図1 0 警報音に気づいた場所 図 8 台所で出火又は発煙し住警器が奏功した事例にお ける火災・非火災の割合 不明火点室 3% 6% 主たる原因である鍋の空焚きや天ぷら油の使用放置で は、火災が発生するまで多量の煙が発生するため、その 煙によって煙式の住警器が早期に感知作動し、火災の未 然防止が図られているものと思われる。 別室 43% ( 3 ) 出火源 出火源について図 9に示す。 90 図1 1 火点室に対する住警器の警報音に 気づいた場所の割合 同 事例には、火元の居住者が留守であったり、高齢者等 訴 ま 耳が聞こえづらい方の住まいであったものもある。その 30 ような住宅で住普器が作動した場合、近隣の住民や通行 人などが住警器の警報音を聞きつけて火災の発見や通報、 初期消火を行っており、火災発生の未然防止や拡大防止 o ガス コンロ その他の 厨房犠器 たばこ 暖房 纏器 その他 不明 図 9 奏功事例における出火源 に結びついていることがわかる。 このことから、住普器の設置は、元来、火元の居住者 の安全を守るものであるが、その自助作用のみならず、 近隣の住民に対しても火災の認知を促すのに有効であり、 出火源として、ガスコンロが圧倒的に多いことがわか 共助の作用もあると言える。 る。これは、奏功した出火箇所(非火災の場合は発煙等 が起きた箇所)において台所が一番多いこととも一致し 3 おわりに ている。 ( 4 ) 警報音の認知位置 以上、住警器の奏功事例から、以下のことがわかった。 ( 1 ) 住普器の奏功によって、火災による被害が軽減され これは、住警器の警報音によって火災を発見した者や ている。 通報した者が、作動した住警器の警報音に、どこで気づ ( 2 ) 台所での奏功事例が多く、煙式の住警器の奏功事例 いたかについて集計したものである。結果を図 1 0 に示 が半数以上である。 ( 3 ) 住警器は、火点の居住者だけでなく、近隣の住民に す 。 火点室に対して同じ建物内にある別の部屋で気づく事 対しても、火災発生の認知を促すことができる。 例が一番多い結果となったが、興味深いのは、火災が発 これらの傾向は、今回分析の対象とした全ての年にお 生した建物(共同住宅の場合は住戸)以外の場所で住警 いて、共通して散見される。今後、住警器の設置が更に 器の作動に気づいた事例が比較的多く、屋外と隣棟・隣 促進されれば、より多くの奏功事例が見受けられるよう 戸等の割合の合計が、別室の割合に次いで多いというこ になるとともに、火災による死傷者の軽減につながるも とである。(図1l) のと考えられる。 104 E f f e c t so fH o m eF i r eA l a r mS y s t e m sB a s e do nt h eA n a l y s i s o fS u c c e s s f u lC a s e s YuuichirouM A C H I I *,K o u h e iK A N E K O * ,Kenji KAMAGATA 宇 A b s t r a c t W ea n a l y z e dt h e effective and s u c c e s s f u lc a s e so fh o m ef i r e alarm s y s t e m sf o rt h e f i r e s occurring between 2 0 0 6a n d2 0 0 8i nt e r m so f burning damage l e v e , l f i r e origin, a l a r r ns o u n d recognition position, e t c .,a n ds t u d i e dt h ee f f e c t so ft h eh o r n ef i r ea l a r m s h e following f i n d i n g sw e r eo b t a i n e d . i n s t a l l e d .A s aresult,t -I n s t a l l a t i o no f home fire alarm s y s t e r n si s effective i n reducing f i r ed a m a g e . n dt h e s m o k e -T h ea l a r m s installed i nk i t c h e n sa r e effective i n many c a s e s, a s e n s i t i v et y p ei s suitable t h e r e . -H o m ef i r e alarms c a nl e tt h er e s i d e n t sa n dt h e i r neighbors know t h eo c c u r r e n c eo f f i r e . 事 E q u i p m e n tS a f e t yS e c t i o n 1 0 5