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図書館情報メディア研究 - 筑波大学図書館情報メディア系|図書館情報

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図書館情報メディア研究 - 筑波大学図書館情報メディア系|図書館情報
裏表紙掲載のシステムは藤井研究室(http://www.slis.tsukuba.ac.jp/~fujii/)
目次
CONTENTS
図書館情報メディア研究科のねらい
2
教育研究分野
6
情報メディア社会分野
6
情報メディアマネージメント分野
10
情報メディアシステム分野
16
情報メディア開発分野
20
国際連携
26
貴重資料と大型コレクション
27
図書館流通センター図書館経営寄附講座 28
図書館経営管理コース
29
知的コミュニティ基盤研究センター 30
連携機関
32
学位論文一覧
34
修了まで
38
入学試験
41
社会人学生の声
42
大学へのアクセス
45
図書館情報メディア研究科のねらい
図書館情報メディア研究科とは
図書館情報メディア研究科は、筑波大学大学院
の博士課程7研究科のひとつです。研究科には、
博士前期課程 2 年と博士後期課程 3 年からなる区
分制博士課程の図書館情報メディア専攻と知的コ
ミュニティ基盤研究センターが設けられています。
筑波大学大学院
博士課程研究科
人文社会科学研究科
6研究科
図書館情報メディア研究科
図書館情報メディア専攻
知的コミュニティ基盤研究センター
修士課程研究科
図
書
館
情
報
メ
デ
ィ
ア
研
究
科
の
ね
ら
い
研究科の目標
人間社会は、知識を記録し、蓄積し、それを基
盤として新しい知識を発展させるというユニーク
で重要な力を発揮してきました。この力こそ人類
に文化と文明をもたらした基礎であり、知識は社
会にとっての重要な資源ということができます。
現在は本と図書館の世界に加えて、ディジタル
情報、インターネット、携帯電話などの新しい世
界が共存し、ダイナミックに変化している時代で
す。また、知識資源・資産の社会的、文化的重要
性も強く認識されるようになってきました。
図書館情報メディア研究は、社会における知識・
情報の共有と、その仕組みとしての図書館や情報
ネットワークを対象とした、人文学、社会科学、
理工学などの多様なアプローチからなる研究を行
う総合的、学際的領域です。図書館情報メディア
研究科の使命は、
「情報メディアによって社会の
知識共有とその仕組みに係る研究を発展させ、新
しい時代に向かって社会をリードする人材を養成
すること」です。
図書館情報メディア研究科の前身は図書館情報大学大学
院情報メディア研究科です。図書館情報大学は、1921 年に
開設された文部省図書館員教習所をルーツとし、その後、図
書館短期大学(1964 年設置)を経て、1979 年に設置されま
した。1984 年には、大学院図書館情報学研究科修士課程が
開設され、1999 年には区分制博士課程として情報メディア研
究科が設置されました。2002 年 10月の図書館情報大学と筑
波大学の統合により、大学院も新たな図書館情報メディア研
究科としてスタートし、現在の姿になりました。
2
博士前期課程では、研究者としての基礎的能力
と専門知識を身につけ、博士後期課程に進学する
人材とともに、情報産業や図書館など情報提供サー
ビスの実務においてリーダーシップを担う専門職
業人として理論と実践および創造力の調和のとれ
た人材、著しく進歩する分野にあって将来の動向
複眼的な思考と技術を身につけた人材として育つ
ことを期待しています。
社会人、および企業や図書館等から派遣される
現職派遣社会人も積極的に受け入れ、学位の取得
とあわせて最新の理論と技術についての再教育を
行うリフレッシュ教育を実施しています。社会人
を見通せる人材を養成します。具体的には、 情報
技術に習熟するとともに情報の内容を理解し、著
作権・プライバシー・セキュリティを含む流通・
社会制度の問題にも明るい、図書館職員、情報シ
ステム運営管理者、メディア・クリエータ、シス
や現職者の存在は、豊かな実務経験を生かした問
題意識の導入、実践に基づく明確な研究課題の設
定と課題解決への反映、大学と企業・図書館・研
究機関との連携の充実などによる研究教育活動の
活性化にも役立っています。
テムデザイナーなどの養成をめざしています。
博士後期課程では、理論的な展開力、洞察力、
独創性、創造性、グローバルな視点を兼ね備えた
知識情報社会のフロンティアを切り開く人材とし
て研究者や大学教員、実務的世界の指導者などの
養成をめざしています。
社会の知識情報基盤としての図書館や情報シス
テム、情報ネットワークなどの活動に貢献するこ
とも重視しています。平成 18 年度から「図書館流
通センター図書館経営寄附講座」を設置しました。
寄附講座では、社会への貢献を念頭に、新しい図
書館経営に関する研究を進めています。また、博
士前期課程の「図書館経営管理コース」や公開講座
を設けて社会人を積極的に受け入れています。
多様な学生
図書館情報メディア研究は、学際的かつ総合的
な領域なので、大学で図書館情報メディアを学ん
だ人はもちろんのこと、その経験を持たない異な
る学問的・職業的背景の人にも、それぞれの能力、
知識を生かした学修の展開が可能です。文系や理
系といった分野を限定せず、21 世紀の知識情報社
会のフロンティアにおいて知識と情報の専門家に
なろうとするインセンティブのある人を幅広く受
け入れます。
大学で図書館情報学を学んだ学生は、さらに深
く専門領域を究めるとともに、研究テーマに応じ
た、人文学、社会科学、理工学などのそれぞれの
領域に固有の視点と知識、方法を学ぶことができ
ます。大学で他の領域を学んだ学生は、その知識
を生かしつつ、図書館情報メディア研究を学ぶこ
とができます。複数の領域を学ぶことによって、
講座を実施しています。これらの機関の研究者を
連携教員として迎え、実践理論と技術、先端的な
応用の講義を展開するとともに、最新の設備と機
能を有する連携研究機関において指導を受けて学
位を取得することも可能です。
社会人に対する弾力的な就学方法として、東京
キャンパス(文京区)にサテライトを設け、夜間
開講(午後 6 時 20 分から午後 9 時までの 7・8 限)、
土曜開講、夏休みの集中講義などを実施していま
す。春日キャンパスとサテライトを結ぶテレビ会
議システムを利用した遠隔授業も実施しています。
サテライトのコンピュータシステムでは、つくば
にいるのと同様のサービスが受けられるようになっ
教育の特徴
学生は 4 つの教育研究分野のひとつに所属し、
専門分野を深めるとともに、複数研究指導教員体
制により、学際的な視点、総合的な視野を修得し
ます。すでに専攻した領域とこれから深化させる
専門領域に応じて、広い範囲から多様な講義科目
が選択でき、特定分野についての深い研究能力とそ
の基礎となる幅広い学識の修得をめざします。
応用への視点を重視し、先端的な研究を実践的
に展開するため、4つの研究機関・企業(電通、
理化学研究所、NTT アクセスサービスシステム
研究所、凸版印刷)と連携大学院方式による連携
図書館情報メディア研究者、教員、
実務世界の指導者
ています。社会人でない学生が夜間や土曜の授業
に参加したり、あるいはサテライトを利用することもでき
ます。
国際交流にも取り組んでいます。北京大学信息
管理系(中国)、上海図書館(中国)、ベトナム国
立図書館(ベトナム)、シェフィールド大学(イギ
リス)、デンマーク王立図書館情報大学(デンマー
ク)、ピッツバーグ大学(アメリカ)、ミシガン大
学情報学大学院(アメリカ)と研究交流協定を結び、
グローバルな視点で教育研究活動の活性化を図っ
ています。
図
書
館
情
報
メ
デ
ィ
ア
研
究
科
の
ね
ら
い
図書館員、情報管理専門家、
情報技術者、
システムデザイナー、情報システム運営管理者、
メディアクリエータ等の高度専門職業人
博士後期課程修了
博士前期課程修了
図書館情報メディア研究科
研究科の使命
「情報メディアによる、社会における知識共有とその仕組み」に係る研究を発展させ、
新しい時代に向かって社会をリードする人材を養成
4研究所・企業と連携
図書館流通センター
図書館経営寄附講座
図書館情報学を
学んだ学生
4教育研究分野による教育
情報メディア社会
情報メディアマネージメント
情報メディアシステム
情報メディア開発
複数指導教員体制
による研究指導
サテライト(東京)での
学修
多様な講義・演習
科目の受講
図書館経営管理コース
文系、理系を問わず、
他の領域を学んだ学生
社会人、企業・図書館等の
現職者
留学生
3
図書館情報メディア研究
− 2009 知識情報を構成するキーワード −
図
書
館
情
報
メ
デ
ィ
ア
研
究
科
の
ね
ら
い
百科全書
図
書
館
情
報
メ
デ
ィ
ア
研
究
科
の
ね
ら
い
グーテンベルク42行聖書
サイクロペディア
4
5
教育研究分野
情報メディア社会分野
情
報
メ
デ
ィ
ア
社
会
分
野
原
図書館情報学,図書館史
★研究対象
★★人材育成方針
研究のキーワードは、デルタ(Δ)です。三つ
の測点を結びつけて、三角形の網をつくり、その
網にかかるものを研究対象とします。
基本は、
《人》
《情報》を、
《文化》
《政策》
《知識》
といった、さまざまな点から理解した上で、問題
解決、目的達成の方法を的確に考えられる人材を
その第一は、
《人》と《情報》と《政策》を測点
とする網、
【情報政策・情報制度研究】です。
その第二は、
《人》と《情報》と《文化》を測点
とする網、
【情報文化・情報メディア史研究】です。
そして、その第三は、
《人》と《情報》と《知識》
育成することです。具体的には、以下のような人
材育成をめざしています。
①情報を、歴史や文化をふまえて、見たり、扱っ
たりすることができる
②情報を加工して、有益な知識情報にできる
を測点とする網、
【情報知識・情報資料研究】です。
それだけではありません。第四の網もあります。
以上の第一から第三までを測点とし、三角錐の網
にかかったものを研究対象とします。とがった角
を過去に向けて掘り下げ、とがった角を未来に向
けて突き抜ける【情報メデイア社会研究】です。
③著作権といったことを視野にいれて、情報知識
を知的財産制度に的確に位置づけることができる
これらは、人が社会を形成している限り、図書
館に限らず、多くの業種、職業で求められるもの
であり、それはまた、組織のためばかりではなく、
個人の人生にも有用と考えられるからです。
教員紹介
黒古 一夫
近・現代文学研究,近代書
誌学,出版・著作文化論
木暮 啓*
情報メディアとコミュニ
ケ ー シ ョ ン の 研 究 ,消 費
者と市場の調査・分析
後藤 嘉宏
社会情報学,コミュニケー
ション思想史
図 書 館 情 報 学 ,図 書 館 文
化史
中山 伸一
応用情報学
松本 浩一
中国史,中国目録学
近代における「著作文化」の発生と実態について、明治以降の新聞、雑誌等のメディアを
通して研究するとともに、
「近代文学」を例として書誌作成の意味について考察する。併
せて、近代文学研究の「基礎」として書誌作成および書誌(資料をある一定の方式に基づ
いて整理したもの)がいかに重要な意味を持つかを検討する。
溝 上 智恵子
高等教育政策,文化政策
武者小路 澄子
コミュニケーション研究,
知識社会学
村 井 麻衣子
著作権法
持続可能な市民社会を形成するために、情報メディアが果たす役割とコミュニケーショ
ンのあり方について研究する。ユビキタス社会の将来展望を、情報メディアとコミュニケー
ションの研究を踏まえて未来学の手法を用いて構想し、その社会的便益を考察する。ま
た消費者、有望市場に関する調査を解説し、事例を分析する。
情報社会論
図書館の「これから」を考えるための図書館文化史を主たる研究テーマとする。図書館
の未来を考えるには、現在の図書館を取り巻く環境や図書館の現状認識だけではなく、
図書館に関する歴史的な認識が不可欠である。歴史的時間軸の中で、図書館が文化的・
社会的に、どのように進展してきたのか、また、図書館が取り扱う対象でもある情報メディ
アが、どのように発展してきたのかについて、知識情報基盤の形成という視点から分析
する。
タンパク質や化学物質の構造や性質などからの知識抽出に関する研究、化学や生化学領
域などにおける知識の分析研究、小説の読後感など感性データの計測と予測研究、創造
技法やデータマイニングなど知識化技法や知識抽出技法の開発と評価研究を行う。
主たる研究テーマは高等教育政策と文化政策である。高等教育政策は日本、アメリカお
よびカナダの高等教育政策に関して研究を行っている。また文化政策はカナダとアメリ
カの文化関連施設の形成や展示物と多文化主義との関連性について、国民文化形成の視
点から研究を行っている。
コミュニケーションが成立する際には、情報伝達という問題以前に、他者と関係し、相
互理解や共感を図り、相手との共生を築いていくことが必要である。こうした基盤的な
事柄を、非言語コミュニケーションや身体感覚等にも着目し、人と異種の生きもの(動
物や植物等)との「異種間コミュニケーション」の可能性に焦点を当てて研究する。
情報知識化分析論、情報メディア社会特別研究
湯川 朋彦*
戦前、映画を議論の中心に据えた独自の美学を構築し、戦後NDL初代副館長を務めた
中井正一の“媒介”論を、社会思想史的に研究している。さらにその研究を敷衍して、図
書館からマスコミ、電子媒体までを射程に入れたコミュニケーションの基礎理論の構想
を目論み、現在そのための理論と実証との兼ね合いを模索中である。
道教の呪術儀礼、道士と民間宗教者の役割の関係、祠廟信仰などを、主として宋代の文
献と台湾の実態調査から解明することをめざしている。同時に研究者の立場に立って、
自分たちの用いる資料のデータベース化に取り組み、また中国古典の分類・目録を始め、
文献学的研究もテーマとしている。
国際教育文化政策論、国際教育文化政策研究
著作文化論、著作文化研究
情報メディア・コミュニケーション論、情報メディア・コミュニケーション研究
図書館、情報およびメディアの文化的な研究。日本、ドイツ、英国における 19 世紀以降
の図書館や読書行動の変遷についての社会史的研究。具体的には図書館や読書サークル
を扱う。また、現代の日本、ドイツ、英国における図書館情報制度、読書行動についての
比較研究。
専門知識形成論、専門知識形成研究
(*は連携教員)
専門情報・資料論 III(社会)、情報メディア社会特別研究
呑海 沙織
淳之
知的財産法、特に著作権法についての研究を行っている。インターネットやデジタル技
術が発達した現代における著作権法のあり方を検討している。
情
報
メ
デ
ィ
ア
社
会
分
野
情報著作権法論、出版・流通論
情報化あるいはメディアの発展が、人間の行動や社会に与える影響について、歴史、産業、
政策という 3 つの視点から考える。特に産業と政策の関連に注目し、具体的な事例を取
り上げて、考察を行う。
情報化社会論、情報化社会研究
横山 幹子
哲学,知識論
私の研究テーマは、知識の本質や知識を共有する可能性について、分析哲学的な視点か
ら考察することである。たとえば、知識と実在論の関係を考えることや相対主義の諸問
題を考えることなどが、このテーマに属している。また、最近は、上記のテーマに関連し
て、蓄えられた知識の正しさについて考えることにも、非常に興味を持っている。
情報知識論
四元 正弘*
消費者研究
綿抜 豊昭
日本文学,日本図書学
情報メディア接触行動の分析、メディアビジネスの分析、消費者意識・行動の分析なら
びに消費者インサイトの開発。
情報メディア産業論、情報メディア産業研究
江戸時代の情報伝達手段のひとつは手紙のやりとりであった。その手紙の模範文例集で
ある「往来物」は様々なものが出版された。それには注釈のあるもの、絵入のものなどが
ある。その「往来物」を中心に、当時の庶民向け書物について、図書学、図像画などを視
野に入れて、人文科学的な観点から研究をしている。
専門情報・資料論 II(文学)、専門情報・資料研究 II(文学)
情報知識化方法論、情報知識化方法研究
6
7
情
報
メ
デ
ィ
ア
社
会
分
野
黒古研究室
後藤研究室
国際色豊かに、書誌学的手法を用いた近・現代文学研究
社会学、マス・メディア論、図書館学、思想の学際研究
図書館情報学(書誌学)を基底にした近・現代文学
に関わる「作家」研究や著作文化研究、メディア誌研
究などを行っているわが研究室は、現在さながら『三
国志』に出てくる“梁山泊”のような様相を呈してい
ます。中国から2人、マレーシアから1人、トルコか
ら1人、韓国から1人、それに日本人学生6人、それ
に仕事先の関係で休学している学生を入れると 15 人
近い院生(常時参加しているのは留学生を中心に6∼
7名)が、週1回の大学院ゼミ日に集まって提出され
たレポートの内容を巡ってディスカッション(質疑応
答)を繰り広げます。詳しいことは個人情報保護法にひっかかるので書きませんが、学部を卒業してすぐ
の者から何十年も前に修士課程を修了した者まで、多士済々です。
マス・メディア研究を看板に掲げるゼミです。ただし教員の後藤は学部では仏文学を専攻し、社会学専
攻の大学院でマス・メディア論を勉強し、今では思想史を囓ってと、色々渉り歩いています。
今、行っている研究は中井正一(1900-1952)論です。中井は戦前、日本で最初の着色映画を作り、投書
で構成される新聞『土曜日』を創刊し、それらの経験を盛り込んだ美学理論を構築し 1948 年から亡くなる
1952 年まで国立国会図書館副館長の職にあった人物です。
私は一人で黙々と読書を進めながら個人研究を遂行しており、そのかたわらでゼミ生の行う社会調査や
文献調査のコメントを付けていくというのがゼミ運営の基本です。
そういうわけで私の専門はガチガチに狭めつつ、学生のテーマの間口は少し広げています。でも、個人
研究をしている私のインスピレーションを掻き立てる刺激的な人、そして広い教養に裏打ちされた狭いテー
マを設定できる人を求めます。
学群生の場合、コスプレ、ディズニーランド、モダンガール、読者モデルなど、図書館とは関係ないけど、
うきうきするようなテーマも選ばせています。しかし大学院生たちには硬派のテーマを選ばせています。
院生は、カール・ポパーという哲学者の客観的知識論の図書館への適応を研究する人、マス・メディア効
また、それぞれの研究テーマは、中国人学生が「中国における村上春樹」、トルコ人学生が「原爆文学研
究」、マレーシア人学生が「アジアにおける村上春樹」、韓国人学生が「在日社会における多文化サービス」、
日本人学生が「明治から戦前期における英文学翻訳史の研究」、
「三島事件を社会はどう受け止めたか」で、
当たり前のことではありますが、出身国によって文化や風土が異なるため、議論は百家争鳴状態になるこ
ともしばしばです。その理由は、議論において教師も学生も基本的には「対等・平等」の立場であるとい
う考え方を各人が了解しているからです。
在籍中あるいは巣立つ際の成果物として、修士論文や博士論文の「付録」でもあった書誌記録や、研究
の途中で得られた「書誌情報」や論文をまとめたものが書籍として刊行されています。
果論を過去の調査票を再検討して研究する人、ドイツの社会学者ハーバーマスの公共圏概念と公共図書館
の理念との関係を研究する人、児童書の出版戦略を出版社の類型ごとに比較しながら研究する人です。一
見多士済々、ある意味バラバラです。
私から院生に求めることは、図書館情報学の主流からは距離を保ちつつ、狭い意味での図書館学を意識
した研究をするようにということと、
「行為の意味理解」という社会学者ウェーバーの方法を常に念頭に
置くことです。
情
報
メ
デ
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ア
社
会
分
野
私のゼミでは、学群、大学院共に図書館情報学の主流の研究をする人は多くありません。でも、周縁か
ら主流に新たな光を当てることができる点に、われわれの存在意義があると思います。マス・メディア論
を学びつつ、それを図書館学、社会学、思想研究へと巧く繋いでいく力なり野心のある人と一緒に学んで
いきたいと思っています。
【ゼミの概要図】
社会学
・行為の動機、
意味理解
・文化への
まなざし
図書館学
後
藤
研
究
室
周縁から
主流に
新たな光
マス・メディア論
8
9
情報メディアマネージメント分野
情
報
メ
デ
ィ
ア
マ
ネ
ー
ジ
メ
ン
ト
分
野
植松 貞夫
建築計画学,図書館情報学
★研究対象
★★人材育成方針
私たちのまわりには書籍、雑誌、書類、インター
ネットなど様々な情報メディアが溢れています。
これらを有効に活用するためには、関連する情報
図書館や情報センターの管理運営:図書館等の
人材や設備を適切に管理し、サービスの質を評価
して維持・向上に努める。利用者の特性を把握し、
メディア(あるいはそのタイトルや作者名、内容
説明などのデータ)を一カ所に集めて、整理をし、
必要なときに取り出して利用できるようにする必
要があります。これを行っているのが図書館やデー
タベース、サーチエンジンなどです。
本分野では、情報メディアの収集、整理、検索、
提供に関わる知識・技術についての研究、図書館
やデータベースなどを効率よく運営するための研
究、図書館などに関わる人材、施設、環境につい
ての研究を行っています。また、図書館や情報メディ
アの利用者は様々ですので、研究者や児童といっ
た特定の利用者ごとの研究も必要です。さらに、
集積された情報メディアやそのデータを利用して、
研究や製品開発の動向などを分析するための研究
も行っています。
他館との連携や地域との連携も視野に入れる
情報メディアの収集・整理・蓄積・提供:図書館、
データベース等において、情報メディアを選択・
収集し、整理・蓄積して、利用者の要求に適する
ものを検索・提供する。また、こうした知識・技
術をもとにデータベースや情報システム、ウェブ
サイト等を設計・構築する
情報管理・情報分析:企業や官公庁、情報分析
機関等において、適切な情報を収集・蓄積して管
理する。また、情報を分析して製品開発動向等を
把握し、企画・立案・提言を行う
研究・開発:大学等の研究機関において、上記
の内容に関わる研究・開発を行う
教員紹介
池内 淳
図書館情報学
図書館施設計画論、図書館施設計画研究
戎崎 俊一*
天体物理学,計算科学
大澤 文人
教育工学
大庭 一郎
図書館情報学
日本の公共図書館政策に関する規範的・実証的研究を行っています。たとえば、1) 自治
体における公共図書館サービスの最適供給、2) 図書館の最適規模、3) 現在における図書
館の公共性の再定義、などです。
三 波 千穂美
鈴木 佳苗
社会心理学,教育工学,社
会情報学
知識情報サービス政策論
石井 啓豊
図 書 館 情 報 学 基 礎 論 ,図
書館経営論
図書館のような情報システムと情報メディアによる知識共有に関する基礎的な研究に関
心がある。具体的には、知識の構造分析、研究領域の形成プロセス、情報と情報ロジスティ
クスのモデル構築、図書館成立の理論的基盤、情報サービスのビジネスモデル、情報利
用などを単独で、あるいは院生と共に手がけている。システム思考によるアプローチに
も関心を持っている。
学 術 情 報 流 通 論 ,学 術 図
書館論,情報探索行動論
電子情報環境が急速に進展しつつある中、学術情報流通におけるオープンアクセスや機
関リポジトリの展開、大学図書館機能の高度化と経営問題そして情報利用者の探索行動
に関心がある。関連して図書館及び大学諸活動の認証評価の問題、情報リテラシーの動向、
物理的な資料情報源の保存、情報専門職を研究テーマとして扱っている。
研究情報基盤方法論、研究情報基盤方法研究
専攻分野は教育工学で、教育現場におけるコンピュータの利用(コンピュータによる授
業支援、教育評価など)と教育機関と企業の連携に関心をもっている。今後はコンピュー
タを含めたメディアリテラシーについての教育に関しても研究を行いたいと考えている。
米国の公共図書館における人的資源管理について、専門的職務と非専門的職務の区分の
観点から研究してきた。それらの研究を踏まえて、日本の公共図書館や大学図書館にお
ける図書館職員の職務のあり方について研究している。さらに、公共図書館や大学図書
館における情報サービスの新たな動向についても研究を進めている。
科学技術と社会という枠組の中で、専門情報を一般市民に正確かつ明解にわかりやすく
伝達するための制度・技術について研究している。伝達する相手の状況に配慮した、情
報を最適表現するための制度や技術についてとも言えよう。具体的にはテクニカルコミュ
ニケーション、サイエンスコミュニケーション関連のテーマなどがあげられる。
児童青少年の活字メディア、映像メディア、電子メディアの利用実態とメディア利用が
児童青少年の発達に及ぼす影響に関する研究を行っている。活字メディアとしては、図書、
新聞、マンガなど、映像、電子メディアとしては、テレビゲーム、テレビ、インターネッ
トなどが含まれる。影響の内容としては、学力的側面と対人的・心理的側面について広
く検討している。
情
報
メ
デ
ィ
ア
マ
ネ
ー
ジ
メ
ン
ト
分
野
児童青少年情報メディア論、図書館サービス論
谷口 祥一
情 報 メ デ ィ ア 組 織 化 ,情
報組織化
情報サービスシステム構成論、情報サービスシステム構成研究
逸村 裕
1)宇宙における高エネルギー諸現象の解明 ; 2) 超高速専用計算機による数値シミュレー
ション ; 3)コンピュータを利用した新しい教育方法の創造
人的資源構成論、図書館サービス論
テクニカルコミュニケー
ション
(*は連携教員)
ディジタル情報時代における図書館建築について研究している。知識や情報流通のディ
ジタル化に伴って、館種を問わず、図書館は変化を迫られている。こうした時代にあっ
て図書館と図書館建築は如何にあるべきかを建築を主体に考察する。具体的にはディジ
タル化への対応先進国である北欧や英国の図書館建築の方向性を把握するとともに、国
内における館員や利用者の意識調査を行っている。
情報メディア組織化手法のうち、対象とする情報メディア(情報資源)のメタデータ(サ
ロゲート、書誌データ、アノテーションなど)を作成し管理することをもって有効な組
織化を図る手法を研究テーマとしている。特に、メタデータの設計を段階化し、そのう
ち要求・特性定義および概念モデリングに焦点を当てるアプローチを採用している。加
えて、メタデータの有効活用や作成を支援するシステムの開発に取り組んでいる。
情報メディア組織化方法論、出版・流通論、情報メディア組織化研究
田村 肇
図書館情報学,計量経済学
ライブラリー・ガバナンス論、ライブラリー・ガバナンス研究
公共図書館の利用(特に貸出し)の量がどのような要因によって決まるのかを計量的な(統
計的な)手法で明らかにする研究を行っている。またそれから派生してどのようにすれ
ば図書館の効率性を測定することができるかを明らかにするための研究も行っている。
今後は公共図書館に限らず図書館情報学、情報学分野における様々な数理的・計量的分
析を行っていきたい。
図書館情報センター利用分析論、情報メディアマネージメント特別研究
岩 澤 まり子
情報組織化論,情報検索論
データベース資源の特徴を、情報の蓄積および検索の両面から明らかにし、情報資源と
しての活用について研究を行っている。具体的には、利用者による情報要求、情報検索
の機能、提供する情報、情報の蓄積法等を検討し、医療情報、レファレンス経験および特
許情報を用いて、情報提供モデルを提案している。
データベース資源活用論、出版・流通論、データベース資源活用研究
10
辻 慶太
自然言語処理,図書館情報
学教育
現在、次の 2 つの研究に取り組んでいる。 1) 翻訳や文章作成に有効な訳語対、同義語、
上位語下位語を Web から自動抽出する手法の開発、2) 電子環境と多様な雇用形態が増
えている現代社会での図書館員教育のあり方
知識集積管理論
11
歳森 敦
行動モデル
平久江 祐 司
図書館情報学,学校図書館
池内研究室
コミュニティの知的基盤としての地域公共サービスと地域施設、特に図書館や情報セン
ターを対象として研究する。地域間の格差のような広域的な視点から、施設単体の評価
あるいはサービスに対する利用者の選好のような微視的な視点までを総合し、サービス
や施設の運営・計画に資する知見を得ることをめざす。
公立図書館政策に関する定量的研究
情報コミュニティ計画論、情報メディアマネージメント特別研究
■ 概要
学校図書館の活動および学校図書館と公共図書館の連携・協力に関する領域について、
教育学的側面から研究を行っている。具体的な研究テーマとしては、主として日本およ
び米国の学校図書館の支援システム、学校図書館活動の評価、情報リテラシー教育、利
用者への情報提供などがあげられる。
現在、日本には、約 1,800 の自治体が存在し、3,000 以上の公立図書館(Public Library)が設置・運営さ
れていますが、図書館はそれぞれ、量的にも質的にも様々です。自治体を取り巻く環境の変化と情報メディ
アの多様化の中で、公立図書館をどれだけ設置し、どのように運営することが、社会的厚生という観点か
ら、より望ましいのかについて、種々の定量的研究を行っています。
学校メディアセンター運営論、図書館サービス論、学校メディアセンター運営研究
深海 薫*
バイオインフォマティクス,
分子進化学
情
報
メ
デ
ィ
ア
マ
ネ
ー
ジ
メ
ン
ト
分
野
理研バイオリソースセンターが取り扱うバイオリソースを中心に、それらの所在情報な
らびに特性情報を収集し、研究者に提供している。また、リソースの提供が円滑になさ
れるためのシステム作りを行っている。さらに、多くのバイオリソースに関する情報の
中から生物学的に有意義な情報を抽出するための新しい情報解析技術の開発を行ってい
る。分子進化、特にタンパク質の進化に興味があり、バイオリソースの情報を進化とい
う切り口から見た時に何が分かるかに関心を持っている。
バイオインフォマティクス論、バイオインフォマティクス研究
松 林 麻実子
情報行動論,メディア分析
研究活動における主たる関心は、社会情報学的な観点から情報を利用する人間について
考えることにあり、具体的には二種類のアプローチを採用している。ひとつは、人間が
日常的に行っている情報行動は彼らにとってどのような意味を持つのかという疑問につ
いてフィールドワークを使って解明することである。もうひとつは、人間と情報とが関
わる際に必ず存在するメディアに焦点を当て、その構造と情報行動との関わりを解明す
ることである。
■ 最小効率規模に関する実証的研究
一般に、図書館や書店は大きければ大きいほ
ど良いと考えられていますが、財政的制約、ある
いは、効率性という観点からは必ずしも支持さ
れません。これは自治体の人口規模についても
同様のことが言えますが、一定の水準までは「ス
ケールメリット(規模の経済)」がはたらいて効
率的になるものの、ある水準を超えると、再び非
効率になっていく現象が認められます。そこで、
図書館の効率性を代表する様々な指標を用いて、
公立図書館の最適な規模を定義しています。
学術情報流通システム論、出版・流通論
緑川 信之
図書館情報学
分類理論の研究を行っている。これまでは、図書を書架に配架するための分類(書架分類)
を中心に研究が行われてきているが、これは一次元的な配列しか考慮に入れていない。
しかし、電子資料などは必ずしも一次元的に配列される必要はない。こうした点をふまえ、
従来の図書館分類法の構造等を明らかにするとともに、より一般的な観点から目的に応
じた分類法のあり方を研究する。
情報分析論、出版・流通論、情報分析研究
薬袋 秀樹
図 書 館 情 報 学 ,公 共 図 書
館論
わが国の公共図書館について、その理念・目的、 サービス方法、利用傾向、経営・管理、
職員の専門性・教育、法令・制度、行財政、政策等を、地域社会や自治体行政との関係の
観点から研究している。これまでの主な研究は、専門職員の職務内容・資格・資質、利用
者サービスの改善、図書館行政と図書館運動の評価である。
図書館情報センター機能論、図書館サービス論、図書館情報センター機能研究
芳鐘 冬樹
計量書誌学,計量情報学
■ 費用便益分析
情
報
メ
デ
ィ
ア
マ
ネ
ー
ジ
メ
ン
ト
分
野
自治体が、図書館を設置すべきか否かの意思決定は、本来、図書館が存在し、それを利用することによっ
て得られる住民の便益(利益)が、その図書館を設置・運営するための費用(初期投資+運営費用)より
も大きいかどうかを予測することによってなされることが望ましいのですが、図書館は基本的に無料で利
用できますので、住民がどのくらいの便益を得ているのかを測定することが困難です。一方、市場で取引
されない(価格を持たない)が希少価値のあるもの(非市場財)は数多くあります。たとえば、環境資源、
公衆衛生、家庭内での教育、ボランティアなどです。そういった非市場財の価値を測定するための手法を
公立図書館サービスに適用して、公立図書館の便益を測定しました。
公立図書館における借覧と来館に対する支払い意思額
ビブリオメトリクスに基づく学術コミュニケーションの分析と、自然言語処理技術を応
用した知的情報検索システムの構築に関する研究を行っている。現在の主たる研究関心
は、1) 共同研究ネットワークと研究者の生産性との関連、および 2) 専門用語の異形認
識を応用したシラバスの検索・分類手法の開発である。
情報評価論
吉田 右子
図書館情報学
主たる研究テーマ:
(1)生涯学習の場としての北欧公共図書館の機能に関わる実証的研
究、
(2)アメリカ公共図書館の理念および実践にかかわる歴史的研究、
(3)日本におけ
る地域住民と公共図書館の関係性にかかわる理論的研究
情報メディアサービス論、出版・流通論、図書館サービス論、情報メディアマネージメン
ト特別研究
12
13
鈴木佳苗研究室
逸村研究室
メディア利用・メディア教育の影響に関する研究
学術情報基盤としての大学図書館に関する研究
家庭や学校へのメディア普及が進み、私たちは多くの時間をさまざまなメディアとともに過ごしていま
す。このようなメディア利用は私たちにどのような影響を与えているのでしょうか?
鈴木佳苗研究室では、この身近な問いの答えを探求しています。また、メディアの影響研究の結果を参
考にして、メディアの悪影響をできるかぎり低減し、よい影響を高めることができる新しい授業を考案し、
その効果を検討する研究などを行っています。
逸村研究室では大学図書館、情報環境と高等教育機関に関わる情報活動を対象に研究活動を行っていま
す。電子情報環境が急速に進展し、高等教育機関が下記に見られるような多様な環境の変化におかれてい
る今日、様々な活動を支援するために大学図書館は幅広い活動が求められています。
研究の活発化・論文量増大
教育の実質化
外部資金増強・財政緊縮
■ 研究紹介 1:メディア利用の影響(1)
小・中学生を対象として、読書が共感性などに及ぼす長
期的な影響について検討しました。
一般的に読書は子どもたちの発達によい影響を及ぼす
と考えられていますが、図 1 のように、本のジャンルによっ
て悪い影響が見られる場合もあることが分かりました。
情
報
メ
デ
ィ
ア
マ
ネ
ー
ジ
メ
ン
ト
分
野
〈ジャンル〉
+
サイエンス・フィクション
絵 本
*
共感性の一部
*
−
共感性の一部
高等教育期間
図1 中学生における本のジャンル別の読書量と共感性
(注: *仮想の状況・場面に自分を置き換えて想像する傾向)
全球化
英語化
■ 研究紹介 2:メディア利用の影響(2)
小・中学生を対象として、テレビ番組の暴力描写が暴力
行為への規範意識(暴力行為をどのくらい悪いと思うか)
に及ぼす長期的な影響について検討しました。
一般的にテレビ番組の暴力描写の視聴は子どもたちの
発達に悪い影響を及ぼすと考えられていますが、図 2 のよ
うに、暴力描写の内容によって、よい影響が見られる場合
もあることが分かりました。
〈暴力描写の内容〉
+
暴力実行者への罰
繰り返しの暴力など
暴力行為への規範意識
−
暴力行為への規範意識
図2 小学生におけるテレビ番組の暴力描写の視聴内容と
暴力行為への規範意識
■ 研究紹介 3:メディア教育の効果
高校生を対象として、
(1)メディアが伝える情報の読み解きや、
(2)携帯依存の予防のための授業案を
作成して実施し、その効果を検討しました。
その結果、
(1)メディア教育の授業を受けたグループではメディア・リテラシーの一部が伸びた、
(2)
メディア教育の授業を受けたグループでは携帯依存が低くなったことなどが示されました。
■ 研究から得られるものは?
メディア利用の影響は、上記の研究に見られるように、
よい影響、悪い影響の両方があり複雑です。日常生活にメ
ディアが浸透している現在、メディア利用のよい影響と悪
い影響を予測する要因を発見し、この要因をメディア教育
に組み込んでその効果を検討していくことは、学術的な意
義だけでなく、社会的な意義もあると言えます。
表1
少子・高齢化
情報通信技術
大学の国際競争
研究力競争
留学生増加
ボローニャプロセス
生涯学習
地域貢献
財政危機
アカウンタビリティ
大学統廃合
■ 大学図書館の学習・研究支援、社会貢献
情
報
メ
デ
ィ
ア
マ
ネ
ー
ジ
メ
ン
ト
分
野
今日の情報環境下において、大学図書館は「館」に閉じこもったサービスだけではその目的を達成する
ことはできません。ボローニャプロセスに代表される国際的な高等教育状況の変貌にどう対応するか、電
子ジャーナルや電子ブックをどのようにサービスに取り入れるか、機関リポジトリ構築を通じて大学のア
カウンタビリティをどう高めるか、利用者の情報利用行動に対応した効果的なサービスの提供、これらは
どれも現代大学図書館の課題です。さらにシリアルズクライシス、オープンアクセスといった学術情報流
通の課題に対応することが求められています。
■ 現在の研究課題
オープンアクセス運動と機関リポジトリの展開とその利用実態、ラーニングコモンズに関わる運営と評
価指標、大学図書館機能の高度化と経営問題、そして情報利用者の探索行動等をテーマに研究を進めてい
ます。関連して図書館及び大学諸活動評価の問題、情報リテラシーの動向、物理的な資料情報源の保存、
情報専門職の問題を研究課題としています。
写真1:研究室の様子
研究室の学生の声(研究に取り組んだ感想・コメント)
研究室では、学生同士がお互いに刺激し合って、また、 「社会に出る前に、自分の関心のあるテーマにとことん取り組めた」
協力し合って意欲的に研究に取り組んでいます。研究の大 「自分の研究が社会とつながっていることを実感できた」
変さを実感しながらも、今後に活かすことのできる多くの 「(外部機関に)研究協力の依頼状を送ったり、電話をかけたり
するのは大変だったけれど、
この経験がこれから役に立つと思う/
経験をすることができているようです(写真 1、表 1)。
研究協力機関の人から結果を楽しみにしていると言われてうれし
かった」
14
15
情報メディアシステム分野
情
報
メ
デ
ィ
ア
シ
ス
テ
ム
分
野
佐藤 哲司
情 報 ア ク セ ス 論 ,デ ー タ
工学
★研究対象
★★人材育成方針
ネットワークワイドにオープンなディジタル図
書館や、協調作業の基盤となるドキュメント共有
管理システムなど、多様な情報資源の生成から蓄
システム設計、開発、研究、コンサルティング
等に従事する専門的技術者を育成すると同時に、
単に技術面だけでなく、自ら課題発掘、テーマ選
積・管理、さらには利用の諸側面から研究を推進
しています。日々成長を続けるネットワーク情報
を効率的に管理する技術、有用な知識を抽出する
技術など、情報化社会を支える重要な基盤技術と
なります。また、快適に情報を活用するための人
とシステム、システムとシステムのインターフェー
スや音声・画像の認識技術、それらを統合したロボッ
トシステムなども研究しています。また、それら
の研究を支える理論や数理などの基礎研究にも取
り組んでいます。
定を行い、解決のアイデアを洗練するなどシステ
ムの企画から実装・評価まで実践的な研究に取り
組むことで、専門的技術者+問題解決型技術者の
育成を図っています。
また、博士後期課程はもちろんのこと、博士前
期課程においても、学会等での発表や国際会議、
学術雑誌への投稿を積極的に行ってきています。
修了者の多くは、技術者だけでなく、大学教員を
はじめ、研究者としても活躍しています。
教員紹介
石塚 英弘
ディジタル・ドキュメント,
情報知識システム
(*は連携教員)
XML(Extensible Markup Language)に基づく電子化ドキュメントシステムの概念
を発展させて、学術情報の構造化表現・処理加工・検索・配布を行う Web ベースのシス
テムを研究している。また、これに関連して、コンテンツすなわち情報資源の観点からディ
ジタル図書館システムを研究し、分散型情報システムにも興味を持っている。
情報アクセスシステム論、情報アクセスシステム研究
鎮目 浩輔
情報物理,量子力学
宇陀 則彦
情報資源管理,電子図書館
黒河 賢二*
光通信システム
鈴木 伸崇
構造化文書,データベース
小林 聖*
田中 和世
音 声 音 響 情 報 処 理 ,デ ィ
ジタル信号処理
無線通信システム
辻村 健*
計測工学,ユビキタス通信
時井 真紀
計算物理
将来のIP系トラヒックの急増に対応するため、現行光ファイバに比べ飛躍的に伝送容
量を拡大できる新しい伝送媒体技術を研究している。具体的にはホーリーファイバの伝
送性能の見極めと超大容量伝送システム設計技術の確立をめざしている。また、通信容
量の増大等に伴う光ファイバ内光パワーの上昇傾向を鑑み、光ファイバのハイパワー特
性の研究も行っている。
コ ン パ イ ラ 構 成 法 ,プ ロ
グラミング
情報科学
1)ディジタル図書館基盤技術 : ディジタル図書館の構築やサービスの展開に適応した基
盤技術の開発;2)分散型情報システムとその開発環境 :WAN や LAN に分散した情報の
特性に基づくシステム構成方式とその開発;3)知的活動のための情報基盤 : 研究・教育
における情報の蓄積・加工・利用のための手軽なソフトウェア環境の構築
ディジタルメディアシステム論、システム管理論、情報メディアシステム特別研究
16
ロボット工学に関する計測制御技術を基盤として、オプティクスおよび IT 技術との融合を図り、
ユビキタス情報通信ネットワークサービスの研究開発を進めている。主要研究テーマは、FSO(Free
Space Optics: 光空間通信技術)、アクティブレーザレーダ、電磁位置計測システムなど。
画像情報メディア論、画像情報メディア研究
長谷川 秀 彦
ハイパフォーマンスコン
ピ ュ ー テ ィ ン グ ,数 値 線
形代数
長谷部 紀 元
情報科学
情報ネットワークメディア論、情報ネットワークメディア研究
阪口 哲男
音声・音響メディア処理を情報工学的立場から研究している。具体的テーマとしては、 1)
言語系に共通なユニバーサル音声符号系を用いた音声の符号化・認識・検索、2)音声生
成過程のモデル化に基く話者依存要因や言語系依存要因の分析・合成、3)環境音や楽器
音の分析・認識・ノイズ低減、音場の局所再生など。
情報メディアシステム論、情報メディアシステム研究
中井 央
ディジタル信号処理技術を基盤として、将来の無線通信、衛星通信システムや、これら
を応用したユビキタスネットワークサービスの研究開発を進めている。主要研究テーマ
は、衛星通信/無線アクセスシステムに関わる変復調、同期制御、多元接続、ソフトウェ
ア無線技術、システムおよびサービスなどである。
XML 等の構造化文書に関する研究を行っている。たとえば、スキーマ進化に伴う XML
変換アルゴリズムの開発、XPath 充足可能性問題を解くための効率のよいアルゴリズム
の開発を行っている。また、それら問題の計算複雑さについても考察している。
ネットワークメディアシステム論
情報資源管理論、出版・流通論、情報メディアシステム特別研究
高速ネットワークシステム論、高速ネットワークシステム研究
1)情報物理:情報メディアが物理法則に従うため情報が持つことになる物理的性質。特
にエントロピーを中心とした情報理論と物理法則の関係;2)量子力学の基礎:普通の力
学と量子力学の間に現れる概念的および定量的な違い。特に(a)カオス系での量子古典
転移、および(b)量子的な情報処理への応用。
情報物理論、情報物理研究
電子化ドキュメントシステム論、情報資源管理システム研究
1)学術情報リンキング:知的生産に必要な学術情報をリンクし、最適なパスを提供する。
2)情報資源共有:図書館、博物館、文書館などの情報資源を透過的に利用できるように
する。3)資料研究支援:コンテンツを再構成することによって資料の新たな側面を引き
出す。
情報ネットワーク時代の本格的な到来を迎えて、相互に関連づけられた情報空間の構造
を知識として表現し、変換・統合・共有・アクセスするための情報アクセス高度化、知識
写像に関する研究を進める。情報を発信する著者コミュニティの変遷・変容にも興味が
あり、データ工学や情報検索などの工学的アプローチによって解明する。
情
報
メ
デ
ィ
ア
シ
ス
テ
ム
分
野
磁性材料の理論計算の研究を行っている。1) 強磁性金属、酸化物の電子状態の計算 ; 2)
理論計算から得られた結果の可視化
シミュレーション物理
近年、様々な要求に対応するために、新たなプログラミング言語を開発することはめずらしくない。
また、携帯電話やゲーム機など、汎用のコンピュータ以外のためのプログラミングの要求も大き
い。このため、プログラミング言語およびそのコンパイラの構成法について研究を行なっている。
プログラミング言語処理系論
1)数値線形代数:科学技術計算に現れる大規模な疎行列に対する連立一次方程式の解法や
固有値計算のアルゴリズムの開発・評価 ;2)ハイパフォーマンスコンピューティング:並列コン
ピュータやインターネット上で手軽に利用できる高速な数値計算ソフトウェアの開発とその性能
評価 ;3)数値計算ソフトウェアの応用:たとえばコンピュータ教材の作成やデータマイニング
数値演算論、数値処理研究
・情報システムの構築方法:分散オブジェクトなどのインターネット技術にもとづく情
報提供システムの構築方法を研究する。 ・文献の単語統計:分野毎の特徴的な語群の抽
出、文献検索、文献の分野への分類、文献分野間の親疎の定量化などを研究する。
情報システムインタフェース論
藤井 敦
自然言語処理,情報検索,
音声言語処理,人工知能
人間が日常使う言葉(自然言語)を計算機処理する研究について、基礎から応用まで行っ
ている。具体的には「自然言語処理」、
「情報検索」、
「音声言語処理」、
「人工知能」などの
分野について、個別の分野に特化したテーマから、複数分野を横断する複合的なテーマ(自
然言語解析に基づく情報検索、音声データ検索など)まで幅広く行っている。
情報抽出システム論、情報メディアシステム特別研究
17
松村 敦
情報学
自然言語処理を利用した情報アクセスおよび情報検索に関する研究を行っている。具体的
には、自然言語で書かれた文書からキーワードとそれらの関係を抽出し構造化する方法、構
造化された言語情報を情報アクセスシステムに活用するための枠組みの研究を行っている。
知識情報統合システム論
松本 紳
計算物理,計算機実験
物性物理の理論的研究とそれに関連するバンド計算システム等の開発を行う。具体的には以
下のとおりである。1) 磁性媒体材料等に対する計算機実験 ;2) 理論あるいは実験結果等の
可視化のためのシステム開発;3)陽電子消滅角相関やコンプトンプロフィールの理論的研究
メディア物理論、メディア物理研究
三河 正彦
ロボティクス,インタフェ
イス,ロボットビジョン
ネットワークを介して、人間と人間、あるいは人間と機械間で円滑にコミュニケーショ
ンおよび共同作業を実現するには、音声や映像だけではなく、指し示す、触る、動かす等
の実世界へ働きかける動作と、それらを知覚する機能の連携が重要である。そこで、ロ
ボティクスを利用した知的システムまたは知的インタフェイスの研究を行っている。
協調情報メディアシステム論
森継 修一
情報科学
情
報
メ
デ
ィ
ア
シ
ス
テ
ム
分
野
情報システムのひとつとしての数式処理システムの機能を高度化するため、基本となる
アルゴリズムの研究を行なう。自然科学の立場から、数学的な基礎理論に基づいて計算
のメカニズムを明らかにすることにより、さらに効率のよいアルゴリズムの開発をめざ
すとともに、実際のプログラム開発と実験的検証までを行なう。
数式処理システム論、数式処理システム研究
田中・三河グループ
音声・音響、視覚、ロボティクスに基づく知的システムの研究
■ 概要
人間は複雑な環境下でも、五感を巧みに使いながら様々な行動を実行します。とりわけ、聴覚と視覚に
よるところが大きいと言われています。本研究グループでは、実環境下で柔軟に振る舞える知的システム
の構築を目指し、音声言語・音響メディア処理に関する研究と、知覚情報処理とそれに基づくロボット制
御に関する研究を行っています。
■ 語彙や語順の制約がない音声認識、音声検索の研究
音声認識システム構築には大規模な辞書と文法規則が必要で、情報の
更新も大きな負担となります。ここで提唱している方式はこうした弱点
を解消するもので、音声を言語に共通なユニバーサル音声符号系へ変換
し、音声認識システムなどを構築します。この方式を応用したマルチメ
ディア情報を音声で検索するシステムを開発しています。辞書には存在
しない人名、曲名などをピンポイントに検索することができます。
検索結果の表示
音場再現領域
■ スピーカアレイを用いた再生音場制御の研究
宇陀・松村グループ
実践的な学術情報システムへの挑戦 ∼前人未到の電子図書館研究∼
日本の科学技術の発展には、研究者が効率的に学術情報を得るための環境整備が不可欠です。本研究グ
ループでは真に実用的かつ汎用的な学術情報システムの実現をめざし、学習者の情報行動に適合した学術
情報システム、人の認知能力を考慮した学習インタフェース、学術情報システムの評価指標の 3 つのアプ
ローチによる研究を行っています。
複数のスピーカ(スピーカアレイ)から出る音をコンピュータを用いて制御
し、音場を再生する範囲や方向を制御する手法の開発を進めています。この
方法では物理的遮蔽などを用いることなく音の伝播する場所や方向を制御す
ることができます。
情
報
メ
デ
ィ
ア
シ
ス
テ
ム
分
野
無音領域
■ 筋電位信号を利用したヒューマン - マシンインタフェイスの研究
脳からの運動指令が筋肉に伝えられ筋肉が収縮す
る際、筋肉上に電気的な信号(筋電位信号)が発生し
ます。本研究では、皮膚表面から計測した筋電位信号
を利用し、信号処理、認識技術に基づき、ロボットハ
ンドや電動義手等の複数の関節を自在に操作できる
インタフェイスを研究開発しています。
ロボットハンド
(CG)
筋電位信号
計測装置
ロボットハンド
(実機)
オペレータ
■ 人間の睡眠覚醒機能に基づく並列知覚情報処理システムの研究
柔軟な知覚情報処理系を有するロボットを構築するために、人
間の睡眠 / 覚醒状態を表現する数理モデルの研究を進めています。
本数理モデルにより、覚醒時には知覚(外界)
情報を処理し、睡眠時には記憶情報を処理
したり、処理を休止したりする動的な情報
処理系が構築できます。同時に、図書館司
書ロボットへの応用も進めています。
電子世界の未来を先取りしませんか?
私たちと一緒に。
18
http://niccoli.slis.tsukuba.ac.jp/
ニ ッ コ リ
上記以外の研究テーマも実施しています。詳しくはホームページをご覧下さい。
田中研究室 : http://www.slis.tsukuba.ac.jp/~ktanaka/ 三河研究室 : http://www.slis.tsukuba.ac.jp/~mikawa/
19
情報メディア開発分野
情
報
メ
デ
ィ
ア
開
発
分
野
小高 和己
パターン認識,文字認識
★研究対象
★★人材育成方針
情報のデジタル化・マルチメディア化だけでは、
情報の洪水を引き起し、情報の有効利用に結びつ
きません。情報を要素に要約し、要素間の関係を
ネットワークやコンテンツの作成・利用・提供
技術に関する研究者、技術者、教育者などを育成
します。また、コンテンツ素材となる各種情報の
記述して構造化し、さらに、使い方やアクセスの
仕方に応じて可視化したり、抽象化して使い勝手
を高め、高いユーザビリティを付加したデジタル
化・マルチメディア化が必要となります。
本分野では構造化されて高いユーザビリティが
付与されたデジタル・マルチメディア情報をコン
分析、コンテンツの評価法など人の心理的側面、
コンテンツを記憶したり表示したりするための材
料などに関わる専門家を育成します。
コンテンツ作成産業(コンテンツ設計、評価、
人間側の機能評価業務、営業など)
テンツと称し、コンテンツを実現するための各種
技術について研究しています。
具体的には、情報の要約・構造化手法、情報の
コンテンツ材料開発産業(ディスプレイ、メモリ、
MRインタフェース開発・設計など)
ネットワーク応用ソフト産業(SE、プログラマ)
大学、専門学校等の教員
認知・理解機構、コンテンツと人とのインタフェー
ス技術、コンテンツの記録・表示媒体技術、コン
テンツの表現・作成技術、コンテンツの共有・流
通技術などを扱います。
ディジタルコンテンツの管理を行うコンテン
ツマネージャ
ディジタルコンテンツの蓄積や流通、利用技術
を持つコンテンツエンジニア
文字・画像情報構造化論、パターン認識研究
加茂 竜一*
デジタルアーカイブとメ
ディア表現
高度な画像処理技術によるVR表現技術など、将来の様々なメディア表現手法やデバイ
スに高品質に応用しうるデジタルアーカイブを、コンテンツ表現の視点から考察。素材
となる作品が持つ広範な情報を、適切なメディアによって保存・公開するための手法を、
実践の蓄積をもとに研究を進めている。
画像情報表現メディア応用基盤論、画像情報表現メディア応用基盤研究
川原崎 雅 敏
情報通信ネットワーク
実社会と仮想社会を融合する新たな環境を構築するユビキタスネットワークを研究対象
とし、1) P2P ネットワークにおけるファイル共有や映像配信の適応型トラヒック制御、
2) 携帯電話を用いた生活習慣病のインタラクティブな管理支援システム、3) P2P ネッ
トワークにおける音楽コンテンツの著作権管理方式などの研究を行っている。
ネットワークコミュニケーション基盤論、ネットワークコミュニケーション基盤研究
金 尚泰
ビジュアルコミュニケー
ション,情報デザイン,コ
ンテンツ制作
コンテンツ開発に必要とされるデザイン表現・CG 関連先端テクノロジーの応用に関す
る研究を行っている。企画・制作のための造形表現やデザインのあり方を探求するとと
もに、コンテンツとしての表現可能性を広げることを主な研究テーマとし、ダイナミッ
クでインタラクティブな情報表現について、表現理論・技術などを芸術・デザインの観
点に基づいて制作を行っている。
情報デザイン論
教員紹介
磯谷 順一
情 報 媒 体 の 材 料 評 価 ,量
子情報処理
(*は連携教員)
大量のコンテンツを蓄積する大容量記録媒体や誰でもどこでもネットワークへのアクセ
スをもたらすユビキタス・ライブラリ媒体、量子コンピュータの固体素子での実現などを
目的に、シリコン LSI の極限的技術開発、シリコンに代わる新しい半導体材料による新機
能の発現など、新しい情報媒体の開発を材料評価の面から取り組む研究を行っている。
情報メディア素材論、情報メディア素材研究
井上 智雄
情報工学,教育工学
梅田 享英
半導体エレクトロニクス,
電子スピン共鳴
人と人とのやり取り(ヒューマンインタラクション)は、人間の最も基本的な活動であ
ると同時に、あらゆる社会活動の基礎です。テーブルを囲んでの作業、ネット上の人のつ
ながり、廊下の立ち話など、様々なヒューマンインタラクションの仕組みを先端技術によっ
て調べ理解したり、ヒューマンインタラクションを支援・拡張する新しいメディアシステ
ムを生み出したりしています。
小川 恵司*
情報表現技術
杉本 重雄
デ ィ ジ タ ル 図 書 館 ,情 報
システム工学
鈴 木 誠一郎
コ ン テ ン ツ・プ ロ デ ユ ー
ス論,映像・音声における
表現
情報通信技術を支える半導体技術の研究開発を行っています。主な研究対象は超低消費
電力のシリコン LSI メモリ、炭化ケイ素を使った超低損失パワーエレクトロニクス素子
などで、半導体企業、国内外の大学、産総研、日本原研などと連携して研究を行っていま
す。研究手法としては電子スピン共鳴分光技術を用いており、半導体研究分野において世
界有数の技術力をもっています。また、半導体研究分野での学術専門知識を有効活用する
Web システムの開発運用も行っています。
情報科学
情報表現システム技術開発論、情報表現システム技術開発研究
放送、通信という媒体は問わずとも、いまやコンテンツ制作はあらゆるジャンルのテク
ノロジーを組み合わせ、メッセージを世に問うツールとして不可欠なものになっている。
そうした状況をふまえた上で、主として放送メディアを中心とした映像表現の研究、開
発を行なう。またコンテンツ開発における発想法のひとつとして、絵画、音楽、パフォー
ミングアートといった芸術のメディアからの援用に関する研究も行なう。
映像コンテンツ製作論
永森 光晴
出版系の事業領域において組版処理を中心とした CTS(Computerized Typesetting
System)全般の技術開発に従事。現在は総合研究所においてEビジネス領域の研究開発
を担当しており、主に次世代情報端末などを対象としたテキスト系の表現技術の研究開
発を行なっている。
ネットワーク時代における知識と情報の共有基盤として重要な役割を持つディジタルラ
イブラリに関心を持つ。その中でも、特にメタデータに関心を持ち、XML 等の WWW の
基盤技術を利用したメタデータのためのシステムの構成方式や、ディジタルライブラリ
やインターネット上でのメタデータ応用システムの研究を進めている。
情
報
メ
デ
ィ
ア
開
発
分
野
コンテンツ流通基盤技術論、コンテンツ流通基盤技術研究
コミュニケーション環境技術論、情報メディア開発特別研究
コンテンツ記録媒体論、情報メディア開発特別研究
20
文字・画像の機械によるパターン認識技術の諸プロセスを研究の対象としている。人間が文字を発生
する過程を各種センサを用いて直接計測し手書き文字に内在する変形・個性の構造を明らかにする
こと、複雑な背景中にある文字や図形等を分離する際の文字構造の利用法等について研究している。
ディジタル図書館に関する研究を行っている。具体的には、メタデータの相互利用性や
長期保存性を高めることを目的としたメタデータスキーマレジストリの研究や、メタデー
タスキーマに基づく応用ソフトウェアの構築支援環境の開発を行っている。
メタデータ技術論
西岡 貞一
メ デ ィ ア 論 ,コ ン テ ン ツ
制作
平賀 譲
認知科学,人工知能,音楽
情報科学
デジタル技術を応用してゲーム、携帯電話に続く新しいデジタルコンテンツの研究に取
り組んでいる。実際のコンテンツ制作を通じてバーチャルリアリティ、ウェラブルコンピュー
タ、ユビキタスコンピュータ等の作り方や楽しみ方について開発を進めている。
コンテンツ形成手法論、コンテンツ形成手法研究
人間が音楽を聴き、楽しむ背景には、膨大で複雑な情報処理過程が存在している。その
ような認知過程、特に高次の構造認識的な面を、コンピュータ上の認知モデル構築を通
じて理解・解明することが主要なテーマであり、また音楽情報検索への応用なども取り
上げる。ゲーム・パズルの解決過程など、他の認知過程のモデル化にも関心がある。
音楽・音響情報構造化論、情報認知研究
21
真榮城 哲 也
知識の構造および操作,計
算生物学
(1)知識の構造の解析と表現方法、利用者の専門レベルに適応させる情報提示の方法、
(2)
遺伝子や蛋白質等の生体分子の複雑な相互作用の解析、予測および高速シミュレーション
手法、および身体レベルの現象との関連,
(3)実世界に見られる様々な複雑な関係性につ
いての研究を行っている。
森嶋 厚行
データ工学,データベース
科学技術コンテンツ構造化論、情報メディア開発特別研究
水落 憲和
応用物理,量子情報科学
コンテンツ共有基盤技術論、情報メディア開発特別研究
量子通信・計算のような新たな情報の通信・記録・処理法の創出が期待されているが、こ
れに応えるべく、光やスピンによる新たな情報技術開発をめざしている。また、コンテンツ
の伝送・記録・表示を担う技術の発展を目的として、半導体材料研究に取り組んでいる。
森 田 ひろみ
実験心理学,認知心理学
コンテンツ表示媒体論
情
報
メ
デ
ィ
ア
開
発
分
野
心理実験手法を用いて人間の視覚や認知に関する基礎および応用研究を行っている。具体的な研究対
象は、視覚的特徴の統合過程、形態情報の脳内表現、視覚的注意、そして手続き記憶の特性などであ
る。またその手法と知識を基に、文章の読みやホームページの閲覧等の認知過程の研究も行っている。
知覚・感性心理論
西岡・金グループ
井上研究室
21世紀のメディア環境のテーマは「楽しく、気持ちよく」
ヒューマンインタラクションを支援・拡張するメディアシステム
映画、物語、音楽、ゲームといったコンテンツは文化的にも産業的にもそ
の重要性が高まっています。われわれはこのコンテンツの教育・研究に二つ
のアプローチで取り組んでいます。
1)科学、工学をコンテンツ制作に応用し、表現力や市場の拡大を図る。
2)コンテンツそのものを対象とした学問体系を構築する。
映像、表現、デザインといった技術を実践的に学ぶと同時に、これらを統
合し実際に利用できるコンテンツを提案・制作します。
コンピュータは省力化や効率化だけでなく、人々の生活を豊かにしてくれ
る道具です。
“楽しい”、
“きれい”、
“ゆかい”、
“ふしぎ”を合言葉に 2020 年の
メディアとコンテンツを一緒に創ってみませんか。
人が人とやり取りをするということは、人間の最も基本的な活動であると同時に、あらゆる社会活動の基
礎です。この「人と人とのやり取り」をヒューマンインタラクションといいます。テーブルを囲んでの作業、
ネット上の人のつながり、廊下の立ち話などはすべてヒューマンインタラクションです。このような様々な
ヒューマンインタラクションの仕組みを先端技術により分析し理解したり、ヒューマンインタラクションを
支援・拡張する新しいメディアシステムを生み出したりしています。
超高精細大型VR映像を利用し伊藤若冲の
絵画世界をウォークスルーする
■ バーチャルリアリティを応用したデジタルミュージアム研究
没入感と対話性を利用し「あたかもそこにいる」ような感覚を伝えたり、物語や
出来事を身体的に伝えるコンテンツを開発しています。映画レベルの映像品質と
テレビゲームの操作性を組み合わせた、デジタルミュージアムのための展示コンテ
ンツの研究に取り組んでいます。
■ コンテンツ制作研究
オリジナル脚本をもとに演出、撮影、作曲、編
集等のワークフローを開発するコンテンツ制作
研究
「使ってわかる、創ってわかる」をモットーに脚本制作から撮影・編集までのコ
ンテンツ制作のワークフローを実践研究しています。また、映画、ゲーム制作の体
験を通じてインタラクティブメディアの文法やプロデュース技術を研究しています。
■ インタラクティブコンテンツを中心とした
情報デザイン研究
グラッフィクデザイン手法をデジタル技術と融合させ、新しい表現技術やコミュニ
ケーション手法として再構築する研究に取り組んでいます。静的表現、動的表現、
対話的表現をWebテクノロジーと組み合わせ Multi-Dynamic Documentation
として提案します。
22
高度計算機ネットワーク環境やユビキタスコンピューティング環境の出現などによる近年の計
算機利用パラダイムの変化に対応して、これからの社会に必要とされる高度なディジタルコン
テンツ管理、検索、統合、変換等を実現するための先端ソフトウェア技術の研究開発を行って
いる。主にデータベース関連技術や XML 等の WWW 関連技術などを用いたアプローチを行う。
情報デザインの立場から、MDDを利用した
教材、
プレゼンテーションを開発
情
報
メ
デ
ィ
ア
開
発
分
野
■ 食事状況の実時間認識に基づく追加料理推薦システム
レストランでは、ウェイターやウェイトレスが品目の「おす
すめ」をしてくれることがあります。一方で、人手不足等でな
かなかそこまで至らない店も多くあります。また、多くの品目
があって選ぶのに迷うこともあります。
このシステムはそんな状況を助けます。システムが箸を持つ
手の動きと皿とを実時間で認識し、現在の食事状況を認識しま
す。これにより、たとえば「メインディッシュをほぼ食べ終わっ
たようなので、デザートをすすめる」といった、食事状況に合
わせた品目の推薦が可能になっています。推薦は直感的に分か
るように、テーブル上に画像を表示しています。
■ 直感的に理解できる動作学習メディア
動作の習得は文章や絵による説明
よりも、その動作の「見よう見まね」
によって直感的・効果的に行われて
きましたが、これまでの e-Learning
ではうまく扱えませんでした。複合
現実感を利用することで、お手本と
なる人があたかもその場にいるよう
に動作を表示でき、
「見よう見まね」
の学習を可能にします。
23
川原崎研究室
磯谷・梅田・水落グループ
社会ニーズに応える情報通信ネットワークシステム
半導体材料開発−明日の情報技術をめざして
当研究室では、社会が提起している様々な問題に対して、情報通信ネットワークを利用したソリューショ
ンの提供をめざしています。
ブロードバンド化・ユビキタス化の進展には、シリコンでは得られない特性・機能をもつ新半導体材料
のデバイス開発を必要としています。半導体の微量の欠陥や不純物は、重要なデバイス機能を担う一方、
悪役としてデバイス特性を大きく損なう原因ともなります。百万分の一レベルの微量の不純物・欠陥の詳
細な構造決定が可能な電子スピン共鳴(EPR)を用いて、新半導体材料の研究を行っています。EPR の分
野では、単結晶の角度変化の精密測定や複雑なスペクトルの解析に加え、パルス法や EDMR(電流検出 ESR)
法といった測定技術を半導体に応用している点で世界でも数少ないグループのひとつとなっています。
われわれは、日本原子力開発機構、産業技術総合研究所、物質・材料研究機構、リンチェピン大学(スウェー
デン)、LMGP(フランス)、ウォーリック大学(イギリス)、シュツットガルト大学(ドイツ)と共同研究
を行っています。
■ 携帯電話を用いた生活習慣病の自己管理支援システム
多くの生活習慣病では血糖・血圧などの自己測定や食事管理が十分にできておらず、これらの診療が理
想的に運んでいるとは言い難い状況です。当研究室では、筑波大学附属病院と共同して、携帯電話を疾病
管理や健康管理に活用し,患者のセルフケアをインタラクティブに支援すると同時に、医師が診療時に有
効に活用できるシステムを開発しました。すでに糖尿病患者を当面の対象に実験を開始しています。開発
したシステムは、血糖管理のみではなく汎用性があり、ネット接続環境があれば医療機関を問わず利用で
きます。また、許容範囲を超えるようなコントロール状況を自動的に捉えてアラートを送ることができる
設計になっており、現在、インタラクティブに患者の行動変容を促したり、連携する医療機関間の協働診
療を支援するシステムに発展させる開発を行っています。
情
報
メ
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ア
開
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分
野
■ 地球に優しい半導体材料
あらゆる機器に多くのコンピュータが組み込まれるようにな
ると、コンピュータが消費する電力量も莫大になってきます。炭
化ケイ素(SiC)は高速性・高温特性(冷却が簡便)において優れ
ているばかりでなく、低損失のパワーデバイス(様々な電源の基
幹部品となるデバイス)として、地球に優しい半導体です。しか
し、SiC においては、欠陥のために期待される性能の実用的なデ
バイスの開発が遅れてしまっています。われわれは、欠陥の正体
を明らかにし、この課題への貢献をめざしています。
情
報
メ
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ア
開
発
分
野
■ 量子情報処理用固体素子の開発
図 1 システム概要
図 2 患者個人ページ
■ P2P ネットワークの性能向上技術
P2P はコンテンツ流通のコア技術ですが、管理面、性能面では問題も多くあります。当研究室では、
P2P ネットワークを利用したファイル共有や映像配信を効率化する技術として、①ファイル転送残量に着
目したファイル取得の効率化方式、②映像コンテンツをダウンロードしながら再生可能とするプログレシ
ブダウンロード方式、③ P2P とインターネットの連携制御によりネットワーク資源の利用効率を高める
方式などを研究しています。
■ 音楽コンテンツの著作権管理 − P2P ネットワークにおける著作権管理方式−
P2P ネットワークにおける著作権管理は、ネットワーク上に多くの著作権侵害コンテンツが流通してい
る現状において、実効的な対策が急務となっています。当研究室では、P2P による音楽コンテンツの利用
に対して著作権処理を確実に行う方式として、オーディオフィンガープリント(AFP)を利用した著作権
管理方式を検討しています。 ユーザがアップロード/ダウンロードしようとする楽曲から AFP を抽出し、
データベースと照合することにより、アップロードの許諾確認やダウンロード数のカウントが正確に行え
るようになります。AFP 照合をリアルタイムに実現するために、AFP 照合サーバを分散配置する諸形態
の性能評価も行っています。
24
現在のコンピュータでは計算時間がかかりすぎて解けない問
題を解く量子コンピュータや難攻不落の量子暗号通信など、
「重
ね合わせ」や「量子もつれ」などの量子世界の奇妙な現象を利用
した新しい情報技術が注目されています。ダイヤモンドの NV セ
ンターを用いて、2 量子ビット、3 量子ビットの「量子もつれ」を
室温で実現し、さらに多量子ビット化をめざしています。
■ 研究者への有用性を重視したデータベースの開発・運用
半導体 EPR を評価の道具として用いる現場の研究者向けに、
EPR データを直接比較できるシミュレーションスペクトルを提
供するデータベース「EPR in Semiconductors」を運用していま
す。膨大な論文の中からの収集・選別の自動化を実装し、論文内
容のタグ付けのプロセスに専門家の視点・経験を盛り込んだ「半
導体の結晶欠陥」に関する重要な学術論文のデータベース「Defect
Dat@base」を開発・提供しています。
25
情報学の教育研究の新しい潮流を探る国際連携
図書館情報学図書館の貴重資料と大型コレクション
国際的なコミュニティと連携した教育研究活動は現在の大学にとって欠くことができません。特に、情
報技術の進化と情報環境の発展の速度が非常に速い現代においては、ネットワーク情報化社会に向けた新
しい教育研究におけるグローバルな潮流を知り、また私たち自身がグローバルなコミュニティに対して発
■百万塔及び自心印陀羅尼
信していくことが求められています。国際的な連携を進めるために、図書館情報メディア研究科では、海
外の大学や図書館との交流協定を結び、研究者の交流を進めてきています。
インターネットの爆発的な発展にともなう情報環境の大きな変革に従う形で、北米の有力な図書館情報
学の大学院では、伝統的な図書館情報学の枠組みからネットワーク情報化社会を志向した Information
School へのシフトが進められてきました。Information School というのは、従来の図書館情報学や情報
科学・工学、経営情報学といった枠を越えて、情報と人を結ぶ、あるいは情報を介して人と人、コミュニティ
とコミュニティを結ぶための学問領域の研究教育を行う大学院や学部を意味します。
本研究科では、こうした新しい情報学教育研究の潮流をいち早く取り入れ、これまでも国際的な活動を行っ
てきました。そのひとつとして、本研究科では数年前からアジア太平洋地域における情報学領域の高等教育
国
際
連
携
機関の連携組織作りの努力をしてきました。そして、2008 年 12 月に、Consortium of Information Schools
in Asia-Pacific (CiSAP)を設立しました。CiSAP の設立時において、10 カ国 15 大学が参加しており、そ
の中で本研究科は中心的な役割を果たしています。発展の著しいアジア太平洋地域は、先進国と発展途上
国が混在し、かつ文化や言語の多様な地域です。CiSAP の目的は、色々な面で多様性を持つアジア太平洋
地域において、研究者や学生の交流や、国際連携によるプロジェクトなどを進めることです。CiSAP のも
うひとつの役割は、アジア太平洋地域が持つ多様性を情報学の発展に活かすことです。たとえば、先進国
の学生が、発展途上国においてもその知識や技術を活かすための柔軟性を持つことを学ぶ場が得られるこ
とを期待しています。
また、国際的な活動として、第 3 回アジア太平洋地域の図書館情報学教育と実践に関する国際会議(ALIEP 2009)をはじめとして、ディジタルライブラリなどの関連分野の国際会議を数多く主催し、図書館
情報メディア領域の国際的なコミュニティの中で先導的な役割を果たしてきています。
A-LIEP 2009 では、本研究科が交流協定を結んでいるアメリカのピッツバーグ大学、中国の北京大学に
加え、タイやシンガポール、インドからも大学教員を招き、国際的な環境における新しい情報学の教育研
究に関する討論を行いました。このように、本研究科では、伝統的な図書館情報学を基礎にしつつ、その
枠にはとらわれることなく、新しい情報学の教育研究の新しい潮流を国際環境の中でつかむ努力を続けて
きています。
百万塔陀羅尼は日本における現存最古の印刷物です。
『続日本紀』などによ
れば、奈良時代に藤原仲麻呂の乱が平定された(764 年)後、称徳天皇の発
願によって小さな三重の木製塔が百万基つくられ、それぞれに無垢浄光大陀
羅尼経のうち、根本、相輪、自心印、六度のいずれかの陀羅尼(呪文)が納
(所蔵は自心印陀羅尼。
められ、法隆寺などの諸寺に寄進されました(770 年)
[ 写真 ])。このとき奉納された印刷物が百万塔陀羅尼と通称されるものです。
使用された紙は麻や楮から作られたものです。書誌学などの研究成果によれば、
印刷方法は木版あるいは銅版によるという二つの説があります。日本における
現存最古の印刷物が仏教と深いかかわりをもって製作されたことは、当時の社
会や文化とあわせて考える必要があります。
■グーテンベルク42 行聖書零葉
グーテンベルク(Johannes Gutenberg, 1400 頃 -1468)は15 世紀半ばに金
『42 行聖書』はグーテンベルクがドイ
属活字による活版印刷術を開発しました。
ツのマインツで印刷したとされる聖書であり、2 段組みで1 段がおもに42 行となっ
『42 行聖書』にはヴェラム(羊皮紙)に印刷されたものと、手漉き紙
ています。
に印刷されたものがあり、図書館情報学図書館には手漉き紙を使用した零葉(一
葉)があります。内容は旧約聖書の「エゼキエル書」の一部です。
グーテンベルクによって発明された機械的印刷は、その後ヨーロッパで急速に
広まり、書物の大量生産を可能にしました。というのも、ヨーロッパ中世の写本
貴
重
資
料
と
大
型
コ
レ
ク
シ
ョ
ン
は人手によって書き写すことで生産されていたからです。近世以降、豊富なコレ
クションを所蔵する大規模な図書館が西欧でつくられてきた背景にはこうした書
物の大量生産がありました。欧米ではグーテンベルクによる活版印刷術の発明
が社会や文化に及ぼした影響についても研究されています。
● アメリカ図書館学・書誌学基本文献集
「本についての本」を収集したコレクションで、図書館の管理運営一般や図書館利用法、図書館の歴史、書誌学の基本図書はも
ちろん、読書論、図書印刷技術の歴史、装丁とその歴史、活字の開発史、原始・古代の印刷、古書・稀覯書の蒐集、手書き本、
バイブル印刷史、ブック・イラストレーション、銅版画の歴史、新聞の歴史、著名な図書館創立者の伝記、絵本の歴史をはじめ、アン
ダーグラウンド出版物の歴史や日本の浮世絵のフランス印刷技術への影響を考察しためずらしいものなども含め、図書館学、書誌学
の広い範囲をカバーするものです。
● ロシア・ソ連書誌図書館学資料集成
古代より現代に至るロシア・ソ連において生みだされたあらゆる写本・古版本、活字印写本、自筆文書に関する書誌、科学アカデ
ミー・大学・政府機関・国会・神学校・修道院・宗教会議・博物館など公的図書館および貴族愛書家個人の蔵書目録、出版社・
古書店・有力書店の図書目録、書物史・印刷史・書物取引・図書館学史など、およそ出版物に関する図書・雑誌・逐次刊行物
の一大集成で、IDC 社(International Documentation Co.)のマイクロフィッシュ版です。
● “Encyclopedie methodique, ou, par ordre de matieres” Chez Panckoucke(パンクック「系統的百科全書」
) フランスの『百科全書』補遺の出版元としても知られるパンクック(Charles Joseph Panckoucke, 1736-1798)が企画した百科事
典コレクション(全 200 冊)です。主題別配列を特色とし、娘の代になって漸く完成した大事業でした。
26
27
図書館経営管理コース(http://www.slis.tsukuba.ac.jp/grad/education/LM/)
図書館流通センター図書館経営寄附講座
図書館への図書の流通・販売、目録情報の作成・
公共図書館を巡る今日の環境において図書館経
営のための人材養成が重要かつ喫緊の課題である
ことを認識し、株式会社図書館流通センターから
流通等の図書館サービスへの支援に深く関わって
います。
提供された奨学寄附金により、平成 18 年度より
27 年度までの予定で「図書館流通センター図書館
経営寄附講座」を開設しています。
株式会社図書館流通センターは、1979 年に出版
界の総意によって社団法人日本図書館協会事業部
の業務を継承する形で設立され、現在では全国の
寄附講座では 2 名の教員を採用し、公共図書館
等の経営の基本的な枠組みである公共サービスと
公共経営に関する教育を行うとともに、公共サー
ビス研究、公共経営研究、図書館情報メディア研
究を総合的に結合して、図書館の新経営論に関す
る研究に取り組んでいます。
社会の IT 化に伴う要請
図
書
館
経
営
寄
附
講
座
●「IT新改革戦略(IT戦略本部)」
(平成18年1月19日)におい
て、図書館を始めとした、公共
施設の情報化とITに通じた図
書館司書の養成の推進が指
摘される
多様化・高度化する
住民ニーズ
●生涯学習の普及による新しい
読書・情報検索ニーズ
●子どもの読書支援
●ニートの就業支援
●団塊世代の退職後の活動支援
●生活に密着した医療情報・ 法律情報の提供
●新たな起業・地域の中小企業
への支援
自治体を取り巻く
環境の変化
公共図書館
●財政難
●団塊世代の退職による熟練職
員の減少
●官から民への流れ
大学における
図書館職員養成の現状
●資料組織化や情報探索など
の実務が中心
●図書館経営管理に関する充
実した教育を必要としている
「図書館流通センター図書館経営寄附講座」の
設置を受けて、平成 18 年度より博士前期課程に
図書館経営管理コースを開設しています。このコー
構成され、これらの単位を取得することにより、コー
スの修了認定が申請できます。
なお、修了認定を申請する時点で、課程の学生
スは、公共図書館や中小規模の大学図書館の経営
管理、大規模図書館の部門管理などに携わるうえ
で必要な知識と能力を開発するため、最新の実際
的知識を学ぶ機会を提供することを目的として、
大学院生、現職図書館員、社会人等に開かれてい
ます。コースは、寄附講座による公共サービス論、
公共経営論に加えて、前期課程のライブラリー・
ガバナンス論、図書館施設計画論、図書館サービ
ス論、出版・流通論、システム管理論の 7 科目で
は修士の学位と司書資格(または相当する図書館
に関わる実務経験と知識)を有し口頭試問に合格
すること、科目等履修生は図書館に関わる 3 年程
度の実務経験と司書資格(または相当する図書館
に関わる実務経験と知識)を有することが必要です。
図書館経営管理コースでは、講義内容を世界に公
開するオープンコースウェア OpenCourseWare に
参加しており、講義内容は http://capricorn.slis.
tsukuba.ac.jp/~ocw/moodle/ でご覧になれます。
株式会社図書館流通センター
図書館流通センター
図書館経営寄附講座
修了認定
科目履修
図書館経営管理コース
科目開講
博士前期課程
開設
公共サービス論
公共経営論
ライブラリー・ガバナンス論
図書館施設計画論
図書館サービス論
出版・流通論
システム管理論
社会人等
受講
前期課程学生
図書館情報メディア研究科
東京サテライト、
春日キャンパスの
両方で夜間開講
平成 20 年度の受講者数
専門科目
28
新しい公共経営を
理解し、高い経営
管理能力を持った
図書館経営管理
担当者養成
寄附
図書館流通センター図書館経営寄附講座
●時代に即応した図書館経営に関する最新の実際的知識を提供
●学生だけでなく、現職図書館職員や出版・流通関係者など、多様な人材に学習機会を
提供
●新しい公共経営を理解し、高い経営管理能力を持った図書館経営管理担当者を養成
図
書
館
経
営
管
理
コ
ー
ス
基礎科目
授 業 科 目
公共サービス論
公共経営論
ライブラリー・ガバナンス論
図書館施設計画論
図書館サービス論
出版・流通論
システム管理論
担当者
濱田幸夫
小山永樹
逸村裕
植松貞夫
薬袋秀樹ほか
緑川信之ほか
石川徹也ほか
東京サテライト
16
14
17
18
14
15
16
春日キャンパス
13
12
12
13
8
10
5
29
知的コミュニティ基盤研究センター(http://www.kc.tsukuba.ac.jp/)
知
的
コ
ミ
ュ
ニ
テ
ィ
基
盤
研
究
セ
ン
タ
ー
本センターは、ネットワーク上で、あるいはネッ
トワークを利用して形成される多様なコミュニティ
について、それらに必要な知的情報基盤に関する
一の知識レベルにある訳ではありません。さらに、
必要とする知識の側面や視点は構成員により異な
ります。そのような状況を想定すると、知的コミュ
研究を行い、コミュニティの発展に寄与すること
を目的としています。図書館情報メディア研究科
に属する研究センターとして、本センターは図書
館情報メディア研究と、国際連携、コミュニティ
連携活動のフロンティアを担っています。
本研究センターでは、開設以来、研究談話会、
国際シンポジウムの開催など、国内外のコミュニ
ティとの連携を念頭においた活動を続けてきてい
ます。これまで、岡山県との共同研究協定に基づ
く岡山県立図書館におけるメタデータや郷土情報
ネットワークに関わる協調的活動、沖縄やハワイ
大学と協調したメディカルインフォームドコンセ
ントに関する研究活動を進めてきました。また、
室温固体素子量子コンピュータの開発に関する日
独共同研究(JST)や Dublin Core Metadata Initiative
との連携によるメタデータスキーマレジストリの
運用など、国際環境での活動を進めています。こ
のほか、アジア電子図書館国際会議(第 9 回)や
ニティ内のコミュニケーションを円滑に進めるた
めの知識レベルの違いを緩衝でき、さらに様々な
視点から知識を表現できるシステムが必要になっ
てきます。本部門では、異なる知識レベルの人々
のコミュニティ形成を支援する技術・手法の研究
を行い、科学技術の知識を社会に情報発信してい
くための専門家向け支援システムの研究開発を進
めています。
DBWeb(2006 年、2007 年)の共催、地域コミュ
ニティとの連携による公開講演会の開催等を進め
てきています。
また、本研究センターでは知的コミュニティ情
報システムを運用し、各部門の研究での利用と、
知的コミュニティを支えるメタデータの研究開発
などに活用しています。
「知の表現基盤」研究部門
知的コミュニティにおける知識伝達を考えると
き、その知識をどのように表現するかは重要な課
題です。たとえば、多元的な内容を含む知識はそ
の理解が困難ですが、三次元 CAD に見られるよう
に、その表現法を工夫することにより的確な知識
伝達が可能になります。そこで本部門では、この
ような知識を解りやすく表現する技術・手法の研
究を行い、複雑な事象を視覚的に観察し、インタ
ラクティブに操作できるビューアの研究開発を進
めています。
また、知的コミュニティの構成員が必ずしも単
30
「知の共有基盤」研究部門
ネットワーク上では、誰もが知識の提供者であ
りかつ、知識の利用者にもなり得ます。知的コミュ
ニティは、ネットワーク上で知識と情報を協調的
に共有する環境を利用して、知識や情報の資源と
して利用できるコンテンツ、すなわち情報資源を
多く作り出します。本部門は、いろいろなコミュ
ニティと連携し、知識と情報を協調的に共有する
環境に関わる研究を進めています。
本部門では、ネットワーク上においてコミュニ
ティが生産した情報資源を蓄積し、共有し、そし
て利用するために必要な情報技術の研究開発を行っ
ています。特に、情報資源の共有と相互利用性の
向上を中心的な研究トピックとして、ネットワー
ク上で利用するディジタル・ライブラリとそれを
支えるメタデータ技術、それらの基礎となる大量
の情報資源を適切に効率よく管理する情報ガバナ
ンスを中心に研究を進めています。具体的には、
サブジェクト・ゲートウェイなどのディジタル・
コンテンツ・アクセスのための共有基盤技術、メ
タデータ規則を蓄積共有するためのメタデータ・
スキーマ・レジストリなど、ディジタル・ライブ
ラリの相互運用性向上のためのメタデータ技術、
Web 上のコンテンツの保存や一貫性管理のため
の技術、XML を基礎としたデータ統合に関わる
技術等について、国内外の組織とも協調しながら
研究を進めています。
「知の伝達基盤」研究部門
本部門では、
“情報伝達”という要素について、
コミュニティの構成員という利用者側からの視点
から、図書館・情報サービス機関といった提供者
側の視点に至るまでの広範な領域を扱い、社会学
的な分析を行っています。
知的コミュニティを支えるネットワーク・ライ
ブラリ機能について、主として社会・コミュニティ
との関わりの観点から研究します。これは、コミュ
ニケーション行為や知的コミュニティの形成・維
持といった知識伝達の様態に関する研究と知的コ
ミュニティにおいて取り扱われる各種情報の集積
や組織化に関する研究とに分けて考えることがで
きます。
前者では、様々な種類の知的コミュニティにお
ける知識伝達のあり方や、各情報サービス機関の
機能評価の方法や組織デザインの解明をめざしま
す。後者では、機関レポジトリ構築に関する研究や、
大学図書館を中核に置いた高等教育機関における
新しい学習環境モデルの構築をめざし、海外と国
内の学習資源構成法の比較調査および学習者の視
点で組み替え可能な非定型学習を支援するシステ
ム設計などをすすめています。
信環境のさらなる発展を目指して、新しいエレク
トロニクス技術につながる基幹デバイスの研究を
行っています。
対象となるものに(1)ユビキタス・ネットワー
ク技術に関するデバイスとして、 携帯情報機器
にも搭載可能な低消費電力半導体メモリ、無線通
信網を支える小型高出力 RF デバイス、
(2)情報
の高速・大容量記録を可能にするデバイスとして、
超高速大容量半導体メモリや次世代光ディスク用
の深紫外発光デバイス、
(3)非従来型の新しい情
報処理方式を実現するデバイスとして、量子コン
ピューティング素子などがあります。こうしたデ
バイスの性能、信頼性、生産性を向上させるため
の評価研究を産官学組織と連携して行っています。
このような研究活動と並行して、エレクトロニ
クス分野の研究者を対象とした、専門学術分野に
おける知的コミュニティ形成のための活動を進め
ています。
知
的
コ
ミ
ュ
ニ
テ
ィ
基
盤
研
究
セ
ン
タ
ー
「知の環境基盤」研究部門
情報通信技術が発展していくためには、新しい
エレクトロニクス技術の開発が不可欠です。本部
門では、知的コミュニティの形成を支える情報通
知
的
コ
ミ
ュ
ニ
テ
ィ
情
報
シ
ス
テ
ム
31
連携機関
連
携
機
関
理化学研究所
凸版印刷株式会社
理化学研究所(理研)は、日本で唯一の自然科
学の総合研究所として、物理学、工学、化学、生
凸版印刷は、文字処理、画像処理、デー
タベース構築・運用などの情報処理技術
物学、医科学などに及ぶ広い分野で研究を行って
いる。研究成果を社会に普及させるため、大学や
企業との連携による共同研究、受託研究、産業界
への技術移転等を積極的に進めている。埼玉県和
光市の和光研究所のほか、筑波、播磨、横浜、神
戸などに研究所がある。
連携講座として、コンピュータを用いた新しい
教育法、コンピュータビジュアリゼーション、超
高速計算機による宇宙現象等のシミュレーション
研究、バイオインフォマティクスの研究手法(相
同性検索、配列アライメント等)、生物学分野で
とコンテンツの加工・編集といった感性
表現力を駆使して、企業のコミュニケー
ション、インターフェースの創造を続け
ている。一方、超高精細画像処理技術に
よるバーチャルリアリティの実用化、デ
ジタルアーカイブの構築など、デジタル
化とメディア表現の融合する新しい領域
にも実績を重ねております。
本連携講座では印刷における文字や画
像の情報表現技術、デジタルアーカイブ
の表現手法、バーチャルリアリティなど
のインタラクティブメディアの開発手法
などの理解を、事例をもとにした講義と
ディスカッションで進めていきます。
のコンピュータ利用などを担当する。
NTT アクセスサービスシステム研究所
NTT アクセスサービスシステム研究所は、21
世紀の情報流通社会を支えるアクセスサービスシ
ステムの研究開発を行っています。現在、アクセ
スサービスへの要求は多様化し、たとえば、いつ
でも、どこでも、何でも情報アクセスが可能なユ
ビキタスサービスが求められています。これに対
して本研究所は、光 IP 接続サービスに続く多彩
なサービスメニューを提供するため、光ファイバ
連
携
機
関
「唐招提寺展」でのVRコンテンツ上映風景
株式会社電通
技術等によって数百 M ∼ Gbps を実現し、さらに
情報量の制約を超越する次世代技術である 1Tbps
の光アクセス技術、そして空間の制約を超越する
無線 LAN などのアクセス技術、またそれらの関
連技術を研究開発しています。
本連携講座では、前述の研究開発の成果を基に
企業の研究所として大学とは異なる視点から講義
を行います。また、講義内容に関する研究を希望
する院生があれば、その指導も検討します。
電通は今でこそ国内最大手の広告会社ですが、
その社歴はトリビアの連続でした。1901 年に創業
したときの社名は、実は電報通信社で、当時勃興
しつつあった新聞業向けに記事を作って売ってい
たのです。電通という今の名称は、この電報通信
社に由来しています。
新聞社の業績が伸びれば電報通信社の業績も伸
びるという意味で、当時の両者は言わば一蓮托生。
新聞の経営を助けるために、電報通信社は広告業
も営んでいました。戦争の足音が近づく 1936 年
には、通信部門を国策企業の同盟通信社(後の共
同通信社、時事通信社)に移譲し、広告専業とな
ります。戦後は 1951 年の民間ラジオ放送、53 年
ません。さて、過去 100 年を振り返っても、今ほ
どのメディア環境の大変革期はそうはありません。
おそらくはテレビの登場に匹敵すると言っても間
違いではないでしょう。変化はチャンス。情報メディ
アに関連して、さまざまなビジネスチャンスが見
つかるはずです。
今年度は、電通総研(消費者研究・メディア研
究を担当)、ソーシャル・プランニング局(環境な
ど社会テーマの各種プランニングを担当)など複
数部署の専門家によって、
「メディアビジネス」
、
「最
新の生活者動向」等に関する講義やディスカッショ
ンを実施していきます。
の民間テレビ放送の開始とともに、業容を拡大。
通称だった電通という呼び名を正式社名にしたの
が 55 年で、現在に至るというわけです。
このように時代の変化に柔軟に対応しつつ、時
には副業を本業にするほどの大胆さを身上とする
企業 DNA こそ、電通の最大の武器なのかもしれ
32
33
学位論文一覧
学
位
論
文
一
覧
(平成20年度修了)
★ 修士(図書館情報学)
★ 博士(図書館情報学)
・ボローニャ・プロセスとポルトガルの大学図書館における学習支援機能の発展
・小島為善献上の料理書について
・中国の祠廟についてのデータベース作成
・日本の公立図書館における雑誌資料−都道府県立・政令指定都市立図書館の場合−
・博物館資料情報の電子化について∼民具資料を中心として∼
・日野市立図書館における図書館サービスの形成
・電子番組案内を指向したビデオコンテンツのためのメタデータモデル
・大学図書館の機関リポジトリにおける Articles コンテンツの検証
・中小事業者の情報行動からみた公共図書館のビジネス支援サービス ・日本の国語科教育における大村はまの読書生活指導
・大学生の情報リテラシーにおける批判的思考
・大学図書館における業務アーキテクチャの研究
・命題間の連接関係に基づくマクロ構造の分析−マニュアルテキストを対象として−
・日本の新聞に取り上げられる科学論文の傾向について
・開発途上国研究者の情報生産と利用−医学分野における HINARI イニシアチブが与える影響−
・横浜市図書館におけるサービス・運営の改革について
・浦安市立図書館の運営に関する考察−主として 1985 ∼ 2000 年を対象に−
◆ 大学図書館におけるアウトカムに関する研究−学生の図書館利用と学習成果 ★ 修士(情報学)
・研究者の論文生産性と特許生産性の相互関係
・プラネタリウムにおけるマーケティング概念に関する研究 利用者増加に重要な7つのC
・イメージ操作における色と形の統合に関する心理学的研究
・強相関ペロブスカイト型酸化物CaVO 3の電子状態
・個体差を考慮した楽器の音源同定に関する研究
・携帯を利用したコミュニケーションの影響と教育実践への応用−高校生に対する調査−
・評判情報の検索における隠語的造語法の応用
・Webサイト閲覧時の注目点の移動とその誘因−認知心理学的実験による検討−
・視覚運動性手続き系列の記憶に関する心理学的研究
・回答の根拠を提示するヘルプデスク型質問応答システム
・語の反復度と共起関係を用いた包括的Webナビゲーションに関する研究
・高校生を対象としたメディア・リテラシー育成のための授業の開発と評価
・代数方程式のガロア群と折紙による解法について
・法情報の利活用へ向けた法情報データベースのあり方−変革期における法情報提供サービスの展望−
・境界音場制御の原理を利用した音場の局所再生および音の指向性制御方法の研究
・XPath充足可能性問題の多項式時間可解な部分問題に関する研究
・場面の連鎖構造を用いた物語の表現
・説明に用いられる視点に着目した知識メタデータの構築
・青少年とインターネット−違法・有害情報対策に関する近年の動向−
・分散ファイル群高度管理のためのミドルウェアの開発
・キリルモンゴル語Webページの縦書きモンゴル語への自動変換システム
★ 修士(学術)
・新規プロセスで作製されたシリコン微細 MOS トランジスタの EDMR 分光研究
・鹿児島県立図書館長・椋鳩十
・日常的な学習環境を活かしたメディア・リテラシー育成のための体験型学習モジュールの開発
34
戸田 あきら
本研究は、大学図書館が大学教育の目的で
調査利用
ある学生の成長、学習成果獲得にどのように
2.00
1.50
貢献しているか探索したものである。海外を
資料利用
おしゃべり利用
1.00
含む4大学の学生に対して質問紙とフォー
0.50
カス・グループ・インタビューによる利用者
0.00
場所利用
軽雑誌等利用
調査を行い、図書館利用と学習成果の関連を
探った。
学習グループ
調査結果の分析により、図書館利用と大学
知的散策グループ
書架ぶらつき
PC利用
拡張利用グループ
生活で学生が獲得する学習成果の間に一定
場所利用グループ
グループ利用
の関連があることが確認された。また、学生
の図書館利用にはいくつかのパターンがあり、
利用上の特徴によるグループ
そのパターンによって獲得する学習成果に
特徴があることも示された。たとえば、図書館で資料や情報を探すという行動をよく行い、図書館の資料
をよく利用する学生は、もっぱら閲覧席を自習の場として利用する学生に比べて、知識教養や学ぶ力にか
かわる学習成果など多くの項目においてより大きな成果を獲得していることがわかった。
学生の図書館利用パターンには、調査対象大学に共通に存在するものとその大学独自のものとがあった。
これは、大学ごとの図書館サービス提供のコンテクストに関連していると考えられる。一方、同じ利用パ
ターンの学生は、どこの大学においてもほぼ同様の学習成果を獲得していた。このことは、図書館利用内
容と獲得される学習成果内容の一般的関連性を示唆している。 (研究指導教員 永田 治樹)
学
位
論
文
一
覧
★ 博士(図書館情報学)
◆ 電子ジャーナルアーカイブの拡充と活用に関する研究
本研究は、国内外の主な電子ジャーナルアー
カイブの現状と課題を明らかにした上で、課題
を解決するための対策を検討した。
まず、タイトル数、購読機関の支出額、研究
者への普及状況等のデータを基に、電子ジャー
ナルのアーカイビングの必要性を明らかにした。
次に、先行研究の議論やアーカイブの現状を論
点ごとに整理し、アーカイブに関する課題を明
らかにした。その上で、課題に対する解決策に
ついて検討を行った。
課題の解決策として、まず、課題に取り組む
調整機関の設立を検討した。さらに、その調整
機関がゲートウェイとなり、アーカイブのコン
テンツを途上国の研究機関に提供するという方
策を検討した(図参照)。この方策は、先進国と
発展途上国の情報格差是正の一助にもなると考
えられる。
(研究指導教員 綿抜 豊昭)
出 版 社
後藤 敏行
1
購 読 者
(図書館など)
2
アーカイブ
調整機関
3
途上国の
研究機関
アーカイブへは多くのアクセスがあることが望ましい。だが、矢印①(通常の購読契約に
よる利用)に影響が出ることを懸念し、矢印②は限定的なものになることが多い。この問
題に対して、矢印③を設ける。その際、調整機関がゲートウェイとして機能する。
図 途上国の研究機関からのアーカイブへのアクセス
35
★ 博士(図書館情報学)
◆ 専門図書館の多様な運営形態に対応するための人材育成に関する研究 ★ 博士(情報学)
長谷川 昭子
◆ Loanword Extraction and Lemmatization in Natural Language Processing for Mongolian
Khaltar Badam-Osor
(モンゴル語のための自然言語処理における外来語抽出と接辞処理)
学
位
論
文
一
覧
本研究の目的は、専門図書館における人材活用の状況を分析し、それをもとに、非正規職員の配置や業
務委託のもとでの人材育成(現職者研修・自己啓発)のあり方を提示することである。そのため、文献を
もとに戦後の人材活用の変遷を明らかにし、それを踏まえて、4 つの実態調査によって、非正規職員の配置・
業務委託のもとでの人材活用の実態と人材育成の現状を明らかにした。
専門図書館職員の研修の機会は他業種よりも少なく、特に非正規職員の研修の機会は少ないが、研修を
受講した場合、業務に関する知識に対する評
正規職員と非正規職員の差
価の向上が見られる。同様に、自己啓発を行っ
項 目
比 較
差
た場合は、全体に知識に対する評価の向上が
司書資格の保有率
正規職員 <非正規職員
**
見られた。今後の人材育成策としては、研修
正規職員 <非正規職員
**
「自学自習」の実施率
教育訓練に対する評価
正規職員 <非正規職員
n.s.
内容の拡充と、自己啓発のための教育体制の
Off-JTの受講回数
正規職員 >非正規職員
n.s.
整備が重要であることを明らかにしている。
希望する研修会への参加
正規職員 >非正規職員
n.s.
特に、後者については、その最終段階として
有料の研修会への参加
正規職員 >非正規職員
*
(可能性)
検定試験による認定資格制度の必要性を示
している。最後に当面の課題を提案している。 自己啓発に対する勤務先からの支援(3 項目) 正規職員 >非正規職員 *(可能性)
*:p<0.05, **:p<0.01, n.s.:非有意
(研究指導教員 薬袋 秀樹)
★ 博士(情報学)
◆ 伝統的モンゴル語と現代モンゴル語の電子化と双方向翻字手法の研究
学
位
論
文
一
覧
☆ 博士(情報学)
満 都拉
モンゴル語は、地域によって異なる表記文字が使われている。この異なる表記文字によって地域間の情
報流通が阻害されている。本研究では、モンゴル語の表記文字の誕生時期により昔から使用されてきたモ
ンゴル文字表記を伝統的モンゴル語、1940 年代に誕生したキリル文字表記を現代モンゴル語と分類した。
伝統的モンゴル語は、文字構造の特殊性により電子化が遅れている。本研究では、伝統的モンゴル語のロー
マ字転写による電子化手法を提案し、入出力インタフェースを構築した。また、地域間の情報流通を図る
ために両モンゴル語の双方向翻字手法を提案した。
伝統的モンゴル語は、昔からの発音表記規則に従って表記される。現代モンゴル語は、現在の発音に従っ
て表記される。よって、伝統的モンゴル語と現代モンゴル語は、表記文字だけではなく表記規則も異なる
点がある。そこで、本研究では、両モンゴル語の文字と表記規則の異なり点を規則化し、両モンゴル語の
双方向翻字方式を実現した。実験データを
用いて評価した結果、文節全体の 80% 以上
翻字
が正しく翻字され、誤翻字された 20% の文
システム
入出力
伝統的
現代
節も文脈から意味を理解できることを確認
インタフェース
モンゴル語
モンゴル語
した。この結果、本研究の両モンゴル語の
翻字規則
双方向翻字手法によって、モンゴル語にお
ける地域間の情報流通の促進に寄与するこ
本研究で構築したシステム
とが期待される。
研究指導教員 石川 徹也、藤井 敦、 石塚 英弘
36
科学技術や文化の発展に伴って、新しい技術や概念を表す外来語が急速に増加している。新しい外来語
は辞書に登録されていないことが多いため、自然言語処理、機械翻訳、情報検索、音声認識などの言語処
理技術において精度を低下させる。一方、人手による辞書の編集では即時性や客観性などの点において限
界がある。そこで本研究は、モンゴル語のオンラインテキスト集合から外来語とそれらの対訳を自動的に
抽出する手法を提案した。
モンゴル語では、自立語に付属語が接続して語形変化が生じることがある。たとえば、外来語「диск
(ディスク)」に付属語「д
(与格)」が接続して「дискэд
(ディスクに)」を構成する際、文字「э」が挿入
される。そこで、単語の原形を特定する「接辞処
理」の手法も提案した。接辞処理は情報検索にお
ける索引語の抽出にも重要である。新聞記事と
研究抄録を用いて大規模な実験を行い、提案手
法の有効性を評価した。モンゴル語の自然言語
処理は研究途上であるため、本研究の基礎技術
が今後の研究開発に与える波及効果は大きい。
(研究指導教員 田中 和世、藤井 敦)
◆ 情報提供者・利用者間相互作用の概念に基づく地理情報メディアシステム
山島 一浩
現状の地理情報システムは、情報提供者が用意した情報を利用者に提供する。その情報は基盤の地図の
上に主題情報を載せて一体化してあるため、利用者は主題情報の編集が困難という問題点がある。そこで
本研究では、情報の提供者と利用者の間、あるいは利用者間で相互作用することにより、利用者が主題情
報の提供者に変化すること、ある主題情報に啓発されて別の主題情報の提供者に変化することが可能なシ
ステムを上述の問題の改善策として提案した。本
研究の表題はそのシステム名である。なお、用語「メ
ディア」はマクルーハンの主張「メディアはメッセー
ジであり、それは個人および社会に変化を及ぼす」
の意味で用いている。
提案したシステムは、既存の地理情報システム
の情報モデルと技術に、主題情報を部品化して互
いの関係を RDF で記述する等の Web 関連技術を
加えて実現した。同システムは、地理情報の可視化、
主題情報編集の協働、多数のメッシュ地図から類
似の地図の検索等々、相互作用の支援機能を持つ。
システムを公開運用した結果、上述の変化の事例
を成果として確認した。
(学位論文審査委員会主査 石塚 英弘)
37
修了まで
授業と単位
科目
筑波大学は 3 学期制を採用しており、4 − 6 月が
1 学期、9 − 11 月が 2 学期、12 − 3 月が 3 学期です。
授業の 1 コマは 75 分で、1 時限目の開始は午前 8
時 40 分、8 時限目の終了は午後 9 時です。1 コマ 1
学期間で講義、実験・演習は 1 単位、特別実験は
0.5 単位となります。
時限
修
了
ま
で
1 時限
2 時限
3 時限
4 時限
5 時限
6 時限
7 時限
8 時限
授業時間
8:40
10:10
12:15
13:45
15:15
16:45
18:20
19:45
−
−
−
−
−
−
−
−
9:55
11:25
13:30
15:00
16:30
18:00
19:35
21:00
東京サテライト
東京キャンパス(文京区)における夜間開講(午
後 6 時 20 分から午後 9 時までの 7・8 時限)
・土曜
開講(午前10時10分から午後6時までの2∼6時限)
・
夏休みの集中講義の教室として東京サテライトが
用意されています。東京サテライトと春日キャン
パスでテレビ会議システムを用いた遠隔授業を行
うこともあります。東京サテライトでは、春日キャ
ンパスにいるのと同等なネットワークアクセスが
可能で、たとえば図書館のオンラインジャーナル
などにもアクセスできます。
博士前期課程
課程修了に必要な単位数は講義科目 24 単位(12
科目)、実験・演習科目 6 単位(3 科目)の計 30 単
位です。講義科目はこれから深化させる専門領域
に応じて、4 つの教育研究分野の講義科目から広
い範囲にわたって多様な選択が可能です。本研究
科の教育に有益と認められた場合、入学前に修得
した単位や、入学後に他研究科で修得した単位に
ついて、10 単位を限度として修了要件に認められ
る場合があります。実験・演習は講義を補完する
科目とともに二人の研究指導教員の科目を履修し
ます。
また、図書館経営管理コースの科目履修もできます。
38
講義
単位
履修方法
24
1・2 年次:12 科目以上で教育研
究分野を問わない(8 科目程度以
上は所属する教育研究分野から履
修する事が望ましい)
実験・
演習Ⅰ
実験・
演習Ⅱ
実験・
演習Ⅲ
2
2
2
1 年次:所属する教育研究分野
1 年次または 2 年次:
副に研究指導を受ける教員
2 年次:
主に研究指導を受ける教員
修士(図書館情報学・情報学・学術のいずれか)
の学位取得には、中間発表を含む必要な研究指導
を受けたうえで修士論文を提出し、論文審査及び
最終試験に合格することが必要です。学位論文審
査委員会は研究指導教員・副研究指導教員を含む
3 名の教員からなり、多面的な審査を行います。
修士論文の最終発表では、論文の内容とともにプ
レゼンテーション能力も問われます。
博士後期課程
課程修了に必要な単位数は講義科目 4 単位(2
科目)、実験科目 6 単位(4 科目)の計 10 単位です。
実験科目は、研究指導教員の特別実験以外に、2
名の副研究指導教員の総合特別実験を履修するこ
とにより、実質的に副研究指導教員の指導を受け
られるようにしています。
また、研究指導教員が教育に有益と認めた場合、
図書館経営管理コースの科目の履修もできます。
科目
講義
単位
博士論文を提出し、論文審査及び最終試験に合格
することが必要です。学位論文審査委員会は研究
指導教員、1 名以上の副研究指導教員、1 名以上の
他研究科または学外の有識者を含む 5 名からなり、
多面的な審査を行います。また、博士論文の発表
会は、学外者も含めて公開で実施されます。
複数研究指導教員体制
前期課程は入学後の早い時期に、後期課程は入
学試験を受ける前に、研究指導教員を決定します。
大学院生は 4 つの教育研究分野のうち研究指導教
員と同じ分野に所属することになります。前期課
程では 1 名の副研究指導教員、後期課程では2名
の副研究指導教員(同じ分野と異なる分野の教員
各 1 名)を加えた複数研究指導教員体制をとるこ
とにより、総合的な視点や多面的な視点からの研
究指導を展開しています。
連携大学院
連携大学院の教員を研究指導教員として選択し、
連携研究機関で主たる研究指導を受けることもで
きます。連携先には、NTT アクセスサービスシス
テム研究所(つくば市)、凸版印刷株式会社(千代
田区)、株式会社電通(港区)、理化学研究所(和
時に、関連する教員からの意見を聞き、研究の方
向性を確認します。これにより研究が円滑に進め
られ、遅滞なく学位が取得できるように図ってい
ます。
博士論文予備審査
博士論文を提出するには、学位論文予備審査委
員会による審査に合格しなくてはなりません。学
位論文予備審査委員会は論文の構成等を含めた大
局的な視点で審査を行います。これによって、博
士論文を総合的な視点から見直すことができ、そ
の後に行われる学位論文の審査が円滑に進むよう
になります。なお、予備審査に合格するには、査
読付き論文 2 報(うち 1 報は予備審査委員会が査
読付き論文に相当するものと認めたものに替えら
れる)が受理されていなくてはなりません。
早期修了
修
了
ま
で
前期課程、後期課程ともに、特に優秀な成績を
あげたと認められる者に対しては、在学期間 1 年
以上(後期課程にあっては大学院に前期・後期通
算して 3 年以上在学)で修了できるという制度が
あります。
光市・つくば市)があります。
中間発表会
前期課程は 2 年次の始め(分野によっては他の
時期にもう一回)、後期課程では 2 年次の中頃に
中間発表会を行います。中間発表会では、研究目
的やその進捗状況をプレゼンテーションすると同
履修方法
4 2 科目以上で、そのうち所属す
る教育研究分野の科目を 1 科目
以上
特別実験 A
総合特別
実験Ⅰ
総合特別
実験Ⅱ
特別実験 B
1.5 1 年次:研究指導教員
1.5 2 年次:所属する教育研究分野
の副研究指導教員
1.5 2 年次:所属する教育研究分野
以外の副研究指導教員
1.5 3 年次:研究指導教員
博士(図書館情報学・情報学・学術のいずれか)
の学位取得には、必要な研究指導を受けたうえで
39
入学試験
研究環境
学会等の発表支援
大学院生には個人用の机と、夜間・休日の図書
館情報学図書館を始めとする建物への入室、コピー
機などに使うICカードを貸与します。また、コ
ンピュータアカウントを申請すれば、メールアド
レス、Web ページスペースなど、潤沢なコンピュー
大学院生が学会に出席して発表する際の参加費
や旅費を研究科が支援する制度があります。平成
20 年度は延べ 50 人以上がこの制度を利用して学
会発表を行いました。
タ資源が利用できます。
学費と奨学金
入学時の経費(平成 21 年度)は
入学料 282,000 円
授業料 535,800 円
です。経済的理由により納付が困難で学業成績の
優秀な者には、授業料の全額または半額を免除す
る制度があり、平成 20 年度においては、前期課程
で 20% の学生が、後期課程で 7% の学生が授業料
免除を受けています。
奨学金としては、独立行政法人日本学生支援機構
修
了
ま
で
TAとRA
TA(Teaching Assistant)として学群や大学
院 の 授 業 の 補 助 を 行 う 機 会 や 、R A( R e s e a r c h
Assistant)として教員との共同研究を行う機会
もあります。平成 20 年度は、学群の TA として、
前期課程の院生のうち延べ 44 名、後期課程の院
生のうち延べ 5 名が任用されました。RA としては、
後期課程の院生 7 名が任用されました。
修了生の進路
博士前期課程(平成17∼19年度の合計)
その他 29名
進学 29名
現職復帰
9名
の奨学制度が利用できます。平成 20 年度においては、
前期課程で 47% の学生が、後期課程で 28% の学生
が利用しています。なお、平成 20 年度は前期課程 3 名、
後期課程 2 名が全額もしくは半額の返還免除となりま
した。この他に、地方公共団体、民間の育英団体の
奨学金事業も多数あります。後期課程の大学院生に
は日本学術振興会の特別研究員の道もあります。
学生表彰
合計109名
修士論文が優秀であった前期課程の学生や、優
れた研究成果をあげた後期課程の学生は、研究科
の学位記授与式において表彰されます。また、そ
の研究成果が学外においても高い評価を得た大学
院生が日本学生支援機構の第一種奨学金を利用し
ている場合は、奨学金返還免除選考の対象者とな
ります。
2009年度夏季 大学院説明会日程
会場
博士後期課程(平成17∼19年度の合計)
研究員 3名
その他 6名
現職復帰
1名
40
企業・公務員
3名
教員 6名
合計19名
前期課程にあっては大学を卒業した者と同等以
上の学力、後期課程にあっては修士の学位を有す
る者と同等以上の学力があると認められた場合に
も出願資格が与えられます。この条件で志願する
場合は事前に本研究科による出願資格審査を受け
る必要があります。出願資格審査は書類審査のみ
に分かれています。
社会人として 3 年以上経過している(現職の必
要はありません)か、あるいは勤務先からの派遣
により志願する場合(勤務年数を問いません)は
社会人特別選抜に該当します。外国人留学生の場
合は、研究調書等を英語で記載し、口述試験を英
語で受験することもできます。
で、費用は無料です。
定員は、博士前期課程は推薦入学が 7 名、一般、
社会人、外国人留学生合わせて 30 名です。また博
士後期課程は、一般、社会人、外国人留学生合わ
せて 21 名です。いずれも連携大学院の定員を含
みます。なお、筑波大学大学院修士課程あるいは
博士前期課程を修了し、引き続き後期課程に進学
する場合、検定料、入学料は不要です。
なお、学生募集要項は 5 月下旬に公表予定です。
2010年度入試日程(日は2009年4月から2010年2月)
課程 選抜
出願日
学力検査日
6月22日(月)
7月 6日(月)
・23日(火)
博士
一般 7月21日(火) 8月18日(火)
前期
・19日(水)
(8月) ∼23日(木)
課程
一般 1月 5日(火) 2月1日(月)
・2日(火)
(2月)
∼7日(木)
一般 7月21日(火) 8月20日(木)
博士
・21日(金)
(8月) ∼23日(木)
後期
一般 1月 5日(火) 2月2日(火)
課程
・3日(水)
(2月)
∼7日(木)
推薦
図書館
6名
企業 36名
入学試験は8月下旬と2月上旬に筑波大学春日キャ
ンパスにて実施します。博士前期課程には、学群・
学部における A(優)の割合が概ね 70% 以上の学
生が受験できる推薦入学制度もあり、7 月に選抜
試験を行います。一般入学試験は、一般選抜、社
会人特別選抜、外国人留学生特別選抜のカテゴリ
日程
時間
18:30∼
春日キャンパス 6月26日(金)
19:30
東京サテライト 6月27日(土) 13:30∼
15:00
(茗荷谷)
選抜方法
前期課程の推薦入学試験は、所属長の推薦書の
ほかに研究計画(事前に希望する研究指導教員に
連絡をとって作成したもの)等を提出し、口述試
験を受ける必要があります。
前 期 課 程 の 一 般 入 学 試 験 で は 、提 出 書 類 、
TOEIC あるいは TOEFL の得点を換算したもの、
口述試験の結果を総合的に判定します。後期課程
の選抜は提出書類と口述試験の結果を総合的に判
定します。口述試験(前期課程は約 30 分、後期課
程は約 60 分)では、研究調書等に基づいた研究計
画や志望理由などについてのプレゼンテーション
(前期課程約 7 分、後期課程約 15 分)を行います。
後期課程の場合は入学願書に希望する研究指導
教員 1 名を明記する必要があります(前期課程の
場合は入学後に決めます)。出願までに指導を希望
入
学
試
験
する教員と連絡を取り、あらかじめ研究テーマな
どについての相談をすませておくことが必要です。
一 般 留学生 社会人 合計
志願 合格 志願 合格 志願 合格 志願 合格
推薦
博士
8
8
6
2
1 45 29
2月期 19 11 3
1
4
2 26 14
前期
課程
− − − − − −
2008 8月期 34 22 9
推薦
− − − − − −
8
7
2009 8月期 18 14 3
2
3
3 24 19
2月期 7
5
2
1
2
2 11 8
8月期 2
2
− −
4
4
2月期 1
0
2
2
8
6 11 8
8月期 7
6
− −
3
3 10 9
2月期 1
1
− −
5
5
入学資格
博士 2008
本研究科は、文系・理系といった区分を越えた
新しい学問領域の開拓をめざしており、学際的で
さまざまな領域の研究が行われています。そのよ
うなことから、前期課程にあっては学群・学部段
階での専門領域、後期課程にあっては修士段階で
の専門領域にこだわらず、多様な領域から幅広く
受け入れます。分野・経歴・年齢・国籍を問わず、
学ぶ意欲・研究意欲の高い人を募集しています。
後期
課程 2009
6
6
6
6
41
社会人学生の声
入学まで
安達 匠
思い立ったのが 11 月も末のこ
と。啓示を受けたかのごとく突
然進学を決めたため、試験の出
願すら慌てて準備の状態でした。
とにかく受験できる体勢作り、
そしてできる限りの受験準備を
進めました。
進学の動機は、最新情報を最前線で吸収したい、
その一言に尽きます。文献や研修レベルではなく、
研究者の集う場所で、受講し研究したく進学を決
意しました。
社
会
人
学
生
の
声
多くの社会人学生のみなさまは、おそらく合格
後に職場相談をして、進学の許可をとることにな
るでしょうし、それが賢明です。自分の場合、ま
ず職場で受験許可を取り、合格次第で進学の如何
を決めるという運びになりました。そのため合格
以外先はない、という「背水の陣」を敷いての受
験となり、プレッシャーは一方ではありませんで
した。その分、合格通知を頂いた時は、半生の合
格の中でも一番大きな安堵感を得たことは間違い
ありません。
授業のとり方
当然ですが、仕事をしながらの進学は簡単なこ
とではありません。職場の大学でも、社会人学生
は少なくありませんが、改めて彼らの苦労を痛感
しました。
大学院の授業は春日(つくば)と東京サテライ
ト(茗荷谷)で行われていますが、授業の開講数
では東京サテライトは春日に及びません。しかも
東京 23 区でも西部に職場を持つ自分には、茗荷
谷への通学時間も短くなく、ましてつくばエクス
プレス開通後とはいえ、つくばまで毎日通うのは
まず無理でした。それでもテレビ会議システムを
用いた授業などもあり、サテライトで取れる授業
はなるべく受講をモットーに、1 年目は特に積極
的に授業を履修しました。ただ職場は土曜日が隔
週休暇のため、社会人向けに開講している土曜日
がほとんど履修できないのは残念でした。
職場の理解なくしては授業、というより進学そ
のものが困難に陥ります。社会人進学そして安心
して講義を受講できる背景には、理解してもらえ
42
入学まで
る環境作りが必須です。
研究生活
受験の際に研究テーマを絞り込んでいたつもり
でしたが、合格後、どの研究にも興味が尽きず目
移りしました。しかし初志貫徹、何より自分の興
味があり、今の職場に生かせる内容でないと長い
修士の研究活動は続かないと再確認し、受験時の
テーマに肉付けした形でテーマを確定しました。
面識のある先生も知人もいない状況からはじめ
た大学院生活。ゼミを決める方法やタイミングも
良く分からない状態でした。また春日に行く機会
も少ないことから、ゼミの確定が遅くなったのも
事実です。
ゼミが始まると、先生と同僚を交えたディスカッ
ションに更に意識は高まります。少人数制の国立
ならではのゼミ環境は、研究意欲を高めるために
は打って付けの土壌です。職場という現場を離れ
た空間だからこそ、研究活動を継続できたのかと
思います。
当然ながら社会人学生の辛いところ、勤務時間
は業務をこなしながら、目の前を興味深い文献が
進んでいきます。また職場の大学院生たちが図書
館で研究している姿に、焦りを感じることも度々
です。昼休みに文献探索を行い、夜の帰宅時間は
文献に目を通し、休日は授業のリポートを進め、
文献の再確認という日々が続きました。蛇足です
が、職場ではシステムのリニューアルに、50 年ぶ
りの新館移転、委託化に伴う業務改善など、仕事
もハードな時で、無謀な進学だったと思うことも
しばしばありました。毎日が息つく暇もなく、ま
た研究進行の遅い自分にやきもきしましたが、半
生で一二を争って充実した時期であったことも間
違いありません。
最後に月並みですが、大学院という環境だから
こそ、また図書館情報学の最前線の研究者たちが
集う筑波大学だからこそ知り得る知識が沢山あり
ます。自分自身、図書館の現場に勤務した 10 数年
に匹敵するくらい、大学院で研究した 2 年は充実
したものになりました。その意味を体験して頂く
ためにも、是非進学をお勧めします。
(2007 年度博士前期課程修了、
國學院大學図書館勤務)
上田 直人
私は、前身のひとつとなった
図書館短期大学別科で最後の修
了生となって以来、28 年にわた
りいくつかの図書館に勤務を続
けてきました。その間、世の中
は機械化、電子化、インターネッ
ト化という流れを経て、バブル景気が膨らみ破綻し、
今また世界同時不況の波の中にあります。図書館
もそんな流れに少なからず翻弄されてきました。
私はキャリアのほとんどを大学図書館で過ごし
ましたが、2000 年以降は職場の環境が大きく変化
し、今では主要な業務の運用は業者に委託されて
います。個人的にも、40 歳代には両親の看護・介
護に付き合い、日々の生活がやっとといった状態
が続きました。その両親も先年相次いで見送るこ
ととなりました。
さてそうなってみると、ありきたりですが、何
か心に大きな空白のようなものを感じました。も
うすぐ定年というゴールが見える位置にきて、残
された時間で自分は何をすることができるのか、
身心の衰えを感じながら考え込まざるを得なかっ
たのです。そんなとき、筑波大学大学院図書館情
報メディア研究科の入学説明会の開催を知り、何
かに「乗り遅れてしまった」自分自身を取り戻すきっ
かけになるのではと考えてそれに参加し、受験す
ることを決心しました。
パス開講の実習を履修させていただきました。大
変ではありましたが、一定量の文章を短期間に集
中して書くことのとても良い訓練になったことを、
修論作成の際に強く感じました。
研究生活
修士の 2 年間は本当に短いです。なるべく早い
段階で修士論文のテーマを決めておくことが必要
だと思います。特に調査を考えているなら、早め
にその計画を立て、順を追って作業を進めておか
ないと、山場である中間発表に間に合いません。
私は、1 年目から指導教員の先生とテーマについ
て相談を繰り返しました。2 年目の夏に研究室の
学群 4 年生と協力して、テーマは異なるものの調
査対象を同じにした全国規模の質問紙調査を行い
ました。それでも、集計、まとめ作業などに時間
がかかり、論文完成は本当に期限ギリギリになり
ました。大きな反省点です。
テーマは、やはり自分が愛着の持てるものが良
いと思います。最後の一踏ん張りというところで、
自分で納得したテーマであることが、自分自身に
大きな力を与えてくれると思うからです。
修了した今は、親身にご指導くださった先生方、
同僚となった学生の方々に感謝の念でいっぱいで
す。みなさんも最後まで頑張ってください。
(2007 年度博士前期課程修了、
法政大学図書館勤務)
社
会
人
学
生
の
声
授業のとり方
運良く合格することができた後は、職場の上司
に通学の許可をもらい、いよいよ大学院の授業に
参加する段となりましたが、何分 50 歳代の社会
人学生には色々厳しい現実が待っていました。あ
りがたいことに、講義科目は東京サテライトでも
開講され、修了に必要な単位はすべてサテライト
の授業でとることができました。しかし、仕事の
後に夜 9 時まで授業を受けて帰る毎日には、相当
な体力と気力が必要でした。2 年での修了に拘ら
ずにゆとりを持った履修計画を立ててもよいかも
知れません。
授業選択で一番困ったのは、1年目に他分野の「実
験・演習 II」を選択しなければならなかったこと
でした。これについては T 先生にお願いして、毎
週レポートを郵送することを条件に、春日キャン
(安達 匠 画)
43
大学へのアクセス
バス約
10
ひたちの
うしく駅
常磐
0分
5分
線6
つ
く
ば
エ
ク
ス
プ
レ
ス
快
成田空港
上野駅
速
45
分
秋葉原駅
東京駅
研究
春日キャンパス
授業
授業準備
アルバイト
余暇
睡眠
10
20
30
筑波大学
天王台キャンパスへ
40
ローソン
1 週間の時間の使い道 (単位:時間)
北大通り
筑波大学
春日キャンパス
筑波学院大学
筑波大学
春日キャンパス
バス停
至池袋
セブン
イレブン
大塚1
筑波大学
附属小
文京スポーツ
センター
筑波大学
東京サテライト
春日口
デニーズ
吾妻小学校前
バス停
窪町東公園
ファミリー
マート
教育の森
公園
大塚車庫前
西
大
通
り
つくば
エキスポセンター
吾妻
小学校
お茶の水
女子大学
中
央
公
園
交番
つくばエクスプレス
つくば駅
郵便局
跡見学園中高
茗荷谷駅前
交番
りそな
銀行
第一中
市立図書館
つくばセンター
荷
茗
ショッピング
センター
つくばクレオ
スクエア
駅
谷
竹早公園
県立美術館
中央通り
ココス
オークラ
フロンティア
ホテル
郵便局
ノバホール
NTT
土浦学園線
跡見学園女子大学
ファミリーマート
至東京
44
バス約30分
羽田空港
ノ内線
トロ丸
東京メ
私は、栄養バランス、材料の類似、調理手順の類
似といった関連を分析し、レシピを検索するシステム
について研究しています。アパートにいると研究がは
かどらないので、授業などがなくても大学にいるよう
にしています。基本的に月∼金は研究、土日はアル
バイトをしたり、自分の時間として使ったりしています。
研究を続けていくと煮詰まってしまうこともあるので、
オンオフをしっかりと切り替えて研究を進める努力を
しています。
学会で発表することで今まで気付かなかった新し
い発見があったり、プレゼンテーションの勉強にもな
ります。また、他の人の発表を聞くことで、研究分野
やその背景などを学ぶことができます。
プログラミングの授業のTAとアルバイトで塾の講
師をしています。どちらも予習に授業の倍の時間が
かかってしまうので、とても大変です。こうすればよ
かったなと後悔したりしますが、とてもやりがいのあ
る仕事です。教えることを通して、プレゼンテーショ
ンやコミュニケーションの能力など様々なことを学べ
る貴重な時間です。
荒川沖駅
分
博士前期課程1年 情報メディアシステム分野
0分
70
約
バス
S.K.
つくば駅
つくばセンター
徒歩約1
速
高
研
究
生
活
私は、幕末に書かれた加賀藩の料理書の研究をして
います。当時の食材などは、調べてもわからない物が少
なくなく、困ることもありますが、当時の人や食に思いを
馳せながら研究しており、興味が尽きません。修士論文
を書くにあたっては、金沢へ調査に行ったり、定期的に論
文を投稿するなどしました。
単位は、就職活動や修士論文執筆など、後のことを考
え1年の時にほとんど取るようにしました。授業形態は
先生によって様々で、講義形式や数回の発表がある授業
いずれも内容は濃く、刺激になることが多
がありますが、
ティーチング・アシスタントの他、
いです。授業以外では、
指導教員、副指導教員のもとでデータ入力などのアル
バイトをしました。
普段は一人で行動することが多いのですが、友人が勉
強会や飲み会を企画してくれた時は、
お互いの研究のこ
とや近況などを話し合って、友人との時間を楽しみます。
気さくな先輩も多く、雑談だけでなく研究や授業、進路
のことなどを相談することもあります。
授業に研究に進路にと、
あっという間のあわただしい日々
でしたが、様々な人に出会い、様々な経験をし、
自分の世
界を広げることができたと思います。
土浦駅
分
30
約
ス
バ
分
約30
バス
筑波大学
春日キャンパス
分
博士前期課程2年 情報メディア社会分野
【ゼ ミ】特に日時は決まっていないため、必要に感じ
た時にその都度指導いただく。指導教員や副
指導教員、後輩とまめに連絡をとるように心
掛ける。
【授 業】体力的、精神的にも消耗するが、友人に会え
る数少ないチャンスでもある。発表間近は、
準備とプレッシャーに襲われる。
【研 究】主に研究科の紀要へ論文を投稿。論文を書く
訓練にもなり、査読者からは貴重な意見をい
ただき、論文の質を向上させる。
【息抜き】興味のある展示がある時は東京の博物館や美
術館へ出かける。その他、買い物や読書をす
るなどして気分転換。
00
Y.K.
高速
バス
約1
研 究 生 活
ガスト
三井ビル
つくば
中央警察署
セブン
イレブン
東
大
通
り
■徒歩
「つくば駅」(A1,A2出口)または「つ
くばセンター」から徒歩約10分です。
■鉄道
秋葉原からつくばエクスプレス 快速
に乗ると45分で「つくば駅」に到着し
ます。
JR常磐線 ひたち野うしく駅、荒川
沖駅、または土浦駅で下車し、「つくば
センター」行きもしくは「筑波大学中央」
行きのバスに乗ると、約30分で「つく
ばセンター」に到着します。
■高速バス
東京駅八重洲南口高速バスターミナル
発「筑波大学・つくばセンター」行きに
乗ると、約70分で「つくばセンター」
に到着します。
■車
常磐道「桜土浦IC」で降り、東大通り
を約5.2km北上し、左折して北大通り
に入り、2つ目の信号を左折すると「筑
波大学春日キャンパス」に到着します。
■飛行機
羽田空港からは高速バスで、成田空港
からはバスで「つくばセンター」まで約
100分です。
大
学
へ
の
ア
ク
セ
ス
東京サテライト
■地下鉄
東京メトロ丸ノ内線茗荷谷(みょうが
だに)駅下車。徒歩 2 分で「筑波大学
東京キャンパス」に到着します。
45
Fly UP