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Untitled - 筑波大学図書館情報メディア系|図書館情報メディア研究科

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Untitled - 筑波大学図書館情報メディア系|図書館情報メディア研究科
表紙デザイン協力
「Gutenberg Bible : original leaf, ca. 1455」,「Grosses vollst_ndiges universal-Lexikon」,
「Catalogue de la Bibliotheque de la Sorbonne de 1290」,
「五方通語」:照山祐一 ( 図書館情報専門学群卒業 )
「筋電位信号によるロボットハンドの制御」:吉川雅博(図書館情報メディア研究科)
裏表紙デザイン協力
「コミュニティ情報空間統治システム InfoSpace Governor」:石川憲一、望月祥司(図書館情報メディア研究科)、兒玉麻莉子(図書館情報専門学群)
目 次
図書館情報メディア研究科のねらい 2
教育研究分野
6
教員紹介
16
研究紹介
修了まで
40
入学試験
44
学位論文一覧
45
49
大学へのアクセス
26
図書館情報メディア研究科のねらい
図書館情報メディア研究科とは
博士前期課程では、研究者としての基礎的能力
と専門知識を身につけ、博士後期課程に進学する
人材とともに、情報産業や図書館など情報提供サー
ビスの実務においてリーダーシップを担う専門職
業人として理論と実践および創造力の調和のとれ
た人材、著しく進歩する分野にあって将来の動向
を見通せる人材を養成します。具体的には、情報
技術に習熟するとともに情報の内容を理解し、著
作権・プライバシー・セキュリティを含む流通・
社会制度の問題にも明るい、図書館職員、情報シ
ステム運営管理者、メディア・クリエータ、シス
テムデザイナーなどの養成を目指しています。
博士後期課程では、理論的な展開力、洞察力、
独創性、創造性、グローバルな視点を兼ね備えた
知識情報社会のフロンティアを切り開く人材とし
て研究者や大学教員、実務的世界の指導者などの
養成を目指しています。
また、社会の知識情報基盤としての図書館と情
報システム、情報ネットワークなどの活動に積極
的に貢献することを重視しています。平成 18 年度
から 3 年間の予定で、「図書館流通センター図書館
経営寄附講座」を設置しました。寄附講座では、
社会への貢献を念頭に、新しい図書館経営に関す
る研究を進めます。また、博士前期課程の「図書
館経営管理コース」や公開講座では社会人を積極
的に受け入れます。
図書館情報メディア研究科は、筑波大学大学院
の博士課程7研究科の一つです。研究科には、博
士前期課程 2 年と博士後期課程 3 年からなる区
分制博士課程の図書館情報メディア専攻と知的コ
ミュニティ基盤研究センターが設けられています。
筑波大学大学院
博士課程研究科
人文社会科学研究科
}6研究科
図書館情報メディア研究科
図書館情報メディア専攻
知的コミュニティ基礎研究センター
修士課程研究科
研究科の目標
人間社会は、知識を記録し、蓄積し、それを基
盤として新しい知識を発展させるというユニーク
で重要な力を発揮してきました。この力こそ人類
に文化と文明をもたらした基礎であり、知識は社
会にとっての重要な資源ということができます。
現在は本と図書館の世界に加えて、ディジタル
情報、インターネット、携帯電話などの新しい世
界が共存し、ダイナミックに変化している時代で
す。また、知識資源・資産の社会的、文化的重要
性も強く認識されるようになってきました。
図書館情報メディア研究は、社会における知識・
情報の共有と、その仕組みとしての図書館や情報
ネットワークを対象とした、人文学、社会科学、
理工学などの多様なアプローチからなる研究を行
う総合的、学際的領域です。図書館情報メディア
研究科の使命は、「情報メディアによって社会の知
識共有とその仕組みに係る研究を発展させ、新し
い時代に向かって社会をリードする人材を養成す
ること」です。
多様な学生
図書館情報メディア研究は、学際的かつ総合的
な領域なので、大学で図書館情報メディアを学ん
だ人はもちろんのこと、その経験を持たない異な
る学問的・職業的背景の人にも、それぞれの能力、
知識を生かした学修の展開が可能です。文系や理
系といった分野を限定せず、21 世紀の知識情報社
会のフロンティアにおいて知識と情報の専門家に
なろうとするインセンティブのある人を幅広く受
け入れます。
大学で図書館情報学を学んだ学生は、さらに深
く専門領域を究めるとともに、研究テーマに応じ
た、人文学、社会科学、理工学などのそれぞれの
領域に固有の視点と知識、方法を学ぶことができ
ます。大学で他の領域を学んだ学生は、その知識
を生かしつつ、図書館情報メディア研究を学ぶこ
とができます。複数の領域を学ぶことによって、
図書館情報メディア研究科の前身は図書館情報大学大学
院情報メディア研究科です。図書館情報大学は、1921 年
に開設された文部省図書館員教習所をルーツとし、その後、
図書館短期大学(1964)を経て、1979 年に設置されました。
1984 年には、大学院図書館情報学研究科修士課程が開設さ
れ、1999 年には区分制博士課程として情報メディア研究科
が設置されました。2002 年 10 月の図書館情報大学と筑波
大学の統合により、大学院も新たな図書館情報メディア研
究科としてスタートし、現在の姿になりました。
2
複眼的な思考と技術を身につけた人材として育つ
ことを期待しています。
社会人、および企業や図書館等から派遣される
現職派遣社会人も積極的に受け入れ、学位の取得
とあわせて最新の理論と技術についての再教育を
行うリフレッシュ教育を実施しています。社会人
や現職者の存在は、豊かな実務経験を生かした問
題意識の導入、実践に基づく明確な研究課題の設
定と課題解決への反映、大学と企業・図書館・研
究機関との連携の充実などによる研究教育活動の
活性化にも役立っています。
大学院方式による連携講座を実施しています。これ
らの機関の研究者を連携教員として迎え、実践理
論と技術、先端的な応用の講義を展開するとともに、
最新の設備と機能を有する連携研究機関において
指導を受けて学位を取得することも可能です。
社会人に対する弾力的な就学方法として、東京
キャンパス(文京区)にサテライトを設け、夜間
開講(午後 6 時 20 分から午後 9 時までの 7・8 時限)、
土曜開講、夏休みの集中講義などを実施していま
す。春日キャンパスとサテライトを結ぶテレビ会
議システムを利用した遠隔授業も実施しています。
サテライトのコンピュータシステムでは、つくば
にいるのと同様な多くのサービスが受けられるよ
うになっています。社会人でない学生が夜間や土
曜の授業に参加し、あるいは、サテライトを利用
することもできます。
国際交流にも取り組んでいます。北京大学信息
管理系(中国)、上海図書館(中国)、ベトナム国
立図書館(ベトナム)、シェフィールド大学(イギ
リス)、デンマーク王立図書館情報大学(デンマー
ク)、ピッツバーグ大学(アメリカ)、ミシガン大
学情報学大学院(アメリカ)、メディア大学(ドイ
ツ)と研究交流協定を結び、グローバルな視点で
教育研究活動の活性化を図っています。
教育の特徴
学生は 4 つの教育研究分野のひとつに所属し、
専門分野を深めるとともに、複数研究指導教員体
制により、学際的な視点、総合的な視野を修得し
ます。すでに専攻した領域とこれから深化させる専
門領域に応じて、広い範囲から多様な講義科目が
選択できます。特定分野についての深い研究能力
とその基礎となる幅広い学識の修得をめざします。
応用への視点を重視し、先端的な研究を実践的
に展開するため、5 つの研究機関・企業(電通、理
化学研究所、NTT アクセスサービスシステム研究
所、メディア教育開発センター、凸版印刷)と連携
図書館員、情報管理専門家、
情報技術者、システムデザイナー、情報シ
ステム運営管理者、メディアクリエータ等
の高度専門職業人
図書館情報メディア研究者、教員、
実務世界の指導者
博士後期課程修了
博士前期課程修了
図書館情報メディア研究科
研究科の使命
「情報メディアによる、社会における知識共有とその仕組み」に係る研究を発展させ、
新しい時代に向かって社会をリードする人材を養成
5研究所・企業と
の連携
図書館流通センター
図書館経営寄附講座
図書館情報学を学んだ
学生
4教育研究分野による教育
情報メディア社会
情報メディアマネージメント
情報メディアシステム
情報メディア開発
文系、理系を問わず、
他の領域を学んだ学生
3
複数研究指導教員体制
による研究指導
多様な講義・演習
科目の受講
サテライト
(東京)
での就学
図書館経営管理コース
社会人、企業・図書館
等の現職者
留学生
図書館情報メディア研究の展開
図書館情報メディア研究は複合的、学際的な研
究領域です。その概要を示すため、図書館情報メ
ディア研究の中核である図書館情報学の概略をま
とめた上で、図書館情報メディア研究の展開の方
向性について簡単にご紹介します。
中心であり、紙と印刷技術を基盤としていました。
この情報メディアによりわれわれは時間を越えて
様々な情報を共有できるようになりました。しか
しながらその物理的存在と利用は一体的なもので
あり、たとえばある本が誰かに借りられていたな
らその本を読むことができません。レコードやビ
デオテープのような情報メディアも、表現の方法
は異なりますが基本的に同じ特性を持っています。
ラジオやテレビは同じ番組を複数の人が同時に
視聴できるという点で、図書や雑誌とは異なる特
性を持つ情報メディアです。しかしそれらは一過
性で、蓄積されるものではなく、空間的な共有は
できますが時間的な共有はできません。
コンピュータとネットワークという情報技術は、
新たな特性を持つ情報メディアを生み出してい
ます。その特性の一つは、電子ジャーナルに代表
されるような利用と物理的存在の分離です。電子
ジャーナルは誰かが利用していても関係なく利用
することができます。また、ケータイに代表され
るユビキタス性も新たな特性といえましょう。図
書館や家の本棚に行かないと読めなかった百科事
典の内容をケータイにより電車の中やお店で読む
ことができます。さらに、記録方式の変革は複製
を容易に行えるという特性も生み出しました。最
近では CD を買いに店に行くことなく、インター
ネットショップで音楽をダウンロードして購入す
ることが普及してきています。このように空間
的にも時間的にも共有できるという優れた特性を
持った情報メディアが生まれて来ているのです。
このような特性を持つ情報メディアは、その生
産、流通、提供のプロセスや仕組みがこれまでの
情報メディアと異なり、例えばプロセスの融合や
省略といった現象が生じつつあります。それは企
業活動や研究活動、教育活動などの社会活動の変
革をひき起こし、ひいては人々の情報行動のあり
方を変えつつあります。
図書館情報学とは
図書館情報学が扱ってきた研究内容は大きく以
下の5つがあるといわれています。
(1)社会的組織としての図書館や情報センター
の経営管理に関する研究:それらの人的な組織の
構成、運営、管理、戦略などとともに、そこで提
供する蔵書や資料、情報システム、サービスなど
の構成・評価、さらには図書館建築や図書館協力
などについて研究されてきました。
(2)社会的存在としての図書館や情報センター
の位置づけや意義に関する研究:図書館史や図書
館文化史などとともに、図書館や情報に関する法
制度、さらには学校や企業、地域といった特定の
社会との関係等について研究されてきました。
(3)図書館や情報センターが提供する文献や資
料などの蓄積と利用に関わる技術についての研究:
伝統的な分類と目録に加えて、コンピュータ技術
の発展に伴い、その特性を活用したオンライン目
録や情報検索システム、データベースの設計・構
築に関する技術等について研究されてきました。
(4)文献や資料などの発生や流通などに関わる
解析的な研究:図書館やデータベースなどの状況
を計量的に分析し、社会の知的活動や特定の学問
領域、さらに図書館等の特性を理解する、あるいは
数理モデル化することが研究されてきました。この
領域は計量情報学(計量書誌学)と呼ばれています。
(5)文献や資料等からわれわれがどのように
知識を得、それを利用して行くかという心理学的、
認知科学的、行動論的な研究:読書による人間の
特性の変化や、知識をどのように獲得して行くの
かというモデル、さらに人々の問題解決行動にお
ける情報利用などが研究されてきました。
このように、図書館情報学は必ずしも図書館だ
けを対象としてきたわけではありませんが、その
歴史的成り立ちを反映して、図書館と文献世界を
主たる研究対象として発展してきました。
情報技術の展開
新しい情報メディアの技術的根幹はディジタル
メディアであるということにあります。ディジタ
ルメディアは、パッケージやネットワークに乗せ
られたメッセージそのものを直接扱うことができ
ます。図書館が管理していたパッケージ(図書)は、
技術的・経済的な理由からそこに盛り込まれたテ
キストを直接処理することは行わず、その蓄積・
新たな情報メディア
図書館で提供する情報メディアは図書や雑誌が
4
提供のために分類や目録、索引といった技術を開
発して来ました。
テキストなどのメッセージを直接操作できるこ
とにより、自然言語処理に基づいたフルテキスト
検索のような技術が使えるようになりました。ま
た、そのような操作をより効率的に行えるような
様々な仕組みも研究されております。
ディジタルメディアにおいてはコンテンツ作成
における表現の自由度が飛躍的に高まりました。
テキストのような言語的な表現だけでなく、画像
や音のような非言語的な表現によるコンテンツを
複合的にパッケージやネットワークに盛り込むこ
とができます。それらをどのように表現すれば知
識や感性の伝達に良いのかを解析するとともにそ
れをコンテンツの制作にどのように活かすかの研
究も展開されています。
のです。その意味で人間の知的資源の共有を行う
基盤が情報メディアなのです。
知的資源にはいわゆる科学や技術などの知識だ
けではなく、小説や絵画・音楽等の感性的なもの
も含まれます。情報メディアは知識伝達ばかりで
なく感性伝達の側面も持っているのです。図書館
情報学ではどちらかというと知識共有という点か
らの研究が中心でした。しかし図書館情報メディ
ア研究は、狭い意味での知識だけでなく、広く感
性により得られる内容をも対象として展開する必
要があります。
また人間の知的活動は、情報メディアによる表現
とその獲得という二つの側面を持っています。その
ため図書館情報メディア研究にとって、人間の知的
活動を理解し、そこにいかに働きかけるかというこ
とは重要な位置を占めることになります。人間の認
知の仕組みの解明は現代科学の重要な研究課題の
一つであり、21世紀において大きく発展すること
が期待されています。図書館情報メディア研究は、
情報メディアを介した独自の切り口から、この問題
にアプローチすることが期待されます。
情報メディアの社会的側面
図書館や出版流通の世界では、様々な組織が活
動して、その役割を果たしています。インターネッ
トの世界も同様です。コンピュータディスプレイ
から覗き込む仮想世界の裏側でも、多くの人々が
社会的仕組みの中で活動しています。
情報メディアの社会的仕組みは、制度や様々な
組織、人々の社会的行為といった側面を含み、そ
れらに対して政治的、経済的、文化的な面からの
検討が必要です。著作権や特許権などの知的財産
権のような社会の約束事に関する研究、新たな情
報メディア社会における学会や企業、図書館の運
営に関する研究、情報メディアが形づくる社会に
おいて人々の活動がどのようになるかの研究、さ
らには社会の変化に伴う情報メディアのあるべき
姿を探る研究等が社会科学的、歴史的、文化的側
面から行われています。
現代は図書や文献を中心とした世界から、そ
こにネットワークとディジタルメディアが加わっ
た世界への移行期であり、図書館情報メディア研
究の社会的アプローチにとっては一種の実験場と
なっているのです。
図書館情報メディア研究の特徴
図書館情報メディア研究は、たとえば「健康」や
「食料生産」といった実際的な社会的価値を実現す
ることを目的とした領域と同じです。その目的は
「社
会の成り立ちの基本としての知的資源の共有」とい
う実際的なところにあります。そのため図書館情報
メディア研究の成果は、図書館や情報センターなど
の情報メディアの流通にかかわる組織の理念形成
や運営に実際に適用されます。その意味で、実践
的側面を強くもっている学問領域です。
さらに知的資源の共有という目的に向かって、対
象世界に内在する原理の解明から目的実現のため
の応用的理論の開発に至る多様なアプローチを含
むという意味で、総合的な性格を持ちます。その
ため、図書館情報学と同様に、人文学、社会科学、
情報技術を中心とした理工学、認知科学といった幅
広いアプローチからの研究が可能です。
図書館情報メディア研究の本質は、情報メディ
アによる知的資源の共有という人間社会の普遍的
現象の理解と、それに基づく社会的価値の実現に
あります。そして、そのような図書館情報メディ
アを研究した人々の活躍の場は、情報メディアの
展開とともに多方面に広がっております。
人間の知的活動
情報メディアは何のためにあるかを考えると、
そこには人間の知的活動の支援という位置づけが
浮かび上がります。情報メディアはわれわれの精
神活動に働きかけることによって価値が生まれる
5
教育研究分野
情報メディア社会分野
前期課程修了者の進路としては、以下のような
多様なコースがあります。
★研究対象
・博士後期課程への進学
情報メディア社会分野の研究は、英米独仏およ
・公共図書館、大学図書館、学校図書館、専門図
びアジア諸国など、国内外の図書館情報学に関す
書館など
る文献・資料を駆使して行われています。古代メ
・情報サービス系企業、各種企業の情報部門
ソポタミアの粘土板からインターネットに及ぶ情
・出版、マスコミ、情報通信業界
報メディアの歴史とその展開過程で生産された各
種文書・資料や著作物、リアルワールド(現実世界)
★★★科目構成
とサイバースペース(仮想空間)にまたがる高度
本分野の研究領域は、情報政策・情報制度研究、
情報通信ネットワーク社会に関する法制度、人類
情報文化・情報メディア史研究、情報知識・情報
社会とそれを包含する生物社会における情報知識
資料研究の 3 つのユニットで構成されています。
の生産・流通などが、本分野の研究対象です。
本分野が博士前期課程において開設している科目
すなわち、本分野の教育研究は、図書館情報学、
を、この3つのユニットに即して整理すると以下
情報メディア研究のなかで展開される技術的研究、
のようになります。
(1)情報政策・情報制度研究
実務理論を支える社会経済的条件、文化的側面、
制度的基盤に関する研究領域をカバーしています。
情報メディア制度論、ネットワーク社会法制度論、
本分野の研究成果の一端は、図書館情報学、法学、
情報著作権法論、情報化社会論、情報メディア産
教育学、社会学、文学、歴史学、哲学、応用情報
業論
(2)情報文化・情報メディア史研究
学などの関係諸学会において発表されるとともに、
これらの学会誌等に掲載されています。
図書館情報文化史論、古文献・書誌論、著作文化論、
国際教育文化政策論、情報メディア・コミュニケー
★★人材育成方針
ション論
(3)情報知識・情報資料研究
デジタル・ネットワーク社会は、高等教育機関
に対して、情報知識の生産・流通・取扱いに関し
情報知識論、情報知識化方法論、情報知識化分析
て社会的・文化的素養のある人材の育成を要請し
論、専門知識形成論、知識コミュニケーション論、
ています。コミュニティや一定規模以上の組織に
専門情報・資料論Ⅰ
(歴史)、専門情報・資料論Ⅱ
(文
サービスを提供する図書館をはじめとする諸機関
学)、専門情報・資料論Ⅲ(社会)
は、伝統的な紙媒体情報知識とデジタル情報知識
の両方を自在に探索・利活用できるハイブリッド
情報人材によって担われなくてはなりません。本
分野がねらいとしている、情報メディアの歴史を
ふまえ、情報知識の生産・加工技術を身につけ、
情報知識を知的財産制度に的確に位置付けること
のできる人材は、この社会のどの業種、職業でも
強く求められています。
6
情報メディアマネージメント分野
大学における研究・教育等を担当できる能力を育
成することを目標としています。
★研究対象
大学院修了者の進路としては、以下のようなと
本分野では、知識や情報メディア資源、および
ころが考えられます。
その活用の場を研究の対象としています。すなわ
・図書館、情報センター、資料センター
ち、知識の認知や探索・利用行動、情報メディア
・大学教員、研究員
資源の組織化・構築・利用、および情報メディア
・コンテンツおよびその処理システムの開発・供
資源の活用のための社会システム(情報サービス
給を行う機関
機関・図書館等)の計画・経営に関する理論と技
・シンクタンク、情報分析機関
術の研究を行っています。これらの研究は、知識
・企業や官公庁の企画、調査、情報管理、情報分
や情報メディア資源を家庭、職場、コミュニティ
析に携わる部門
その他さまざまな機関・組織において、誰でも十
分に活用できるような社会の形成に貢献すること
★★★科目構成
を目標としています。
本分野の授業科目は 24 科目から構成されてお
このためには、知識や情報メディア資源とその
り、以下の4つの領域−(1)図書館・情報センター
活用の場についての基礎研究、理論研究に加え、
の経営、(2)情報サービスの計画、(3)情報メディ
それらに関する応用研究・開発研究も求められま
ア資源の組織化と構築、(4)情報メディア資源の評
す。また情報メディア資源にかかわる現場からの
価と活用−に分類されます。
課題に、早急に対処できるような研究も必要とな
なお、上記のうち、公共経営論、公共サービス論、
ります。
ライブラリー・ガバナンス論、図書館施設計画論は、
図書館経営管理コース(p. 11 参照)の専門科目です。
★★人材育成方針
(1)図書館・情報センターの経営
本分野の研究領域で扱う、知識や情報メディア
資源の組織化と構築、およびそれらの評価と活用
図書館情報センター機能論、図書館情報センター
の能力は、現代の高度情報化社会において、知的
経営管理論、学校メディアセンター運営論、情報
業務に携わるすべての組織とその構成員にとって
メディアサービス論、人的資源構成論、公共経営
不可欠になってきています。また、知識や情報メ
論、公共サービス論、ライブラリー・ガバナンス論、
ディア資源を適切に活用するためには、その機能
知識情報サービス政策論
を主に担う社会システムとしての情報センターや
(2)情報サービスの計画
図書館等において、急速に変化する情報技術と社
図書館施設計画論、情報サービスシステム構成論、
会環境に適合した経営・計画を行う必要がありま
図書館情報センター利用分析論、情報コミュニティ
す。さらに、これからはネットワークを通じた情
計画論、児童青少年情報メディア論、学術情報流
報サービスの展開が極めて重要であり、その計画・
通システム論
(3)情報メディア資源の組織化と構築
管理のための人材が必要となります。
このような認識から、本分野においては、社会
情報分析論、情報メディア組織化方法論、データ
のさまざまな分野・組織で必要とされる情報の組
ベース構築論、知識集積管理論
(4)情報メディア資源の評価と活用
織化と活用、および図書館情報センター等の経営
と計画に関する高度な専門的知識を持った知的人
情報評価論、データベース資源活用論、研究情報
材を養成します。特に、大学院教育においては、
基盤方法論、バイオインフォマティクス論、科学
そのような業務に関する企画、経営管理、社内教育、
教育コンテンツ論
7
情報メディアシステム分野
間中に学会発表ができる研究を行なわせ、経験
を積ませる。
★研究対象
・結果よりも過程を重視する教育(失敗原因を
われわれは情報メディアの技術的基盤について
分析し「失敗から学ぶ」ことを身に付けさせ
システム的アプローチから研究し、その対象を次
る。)
に示す 5 つに大別しています。
博士後期課程では、次に示す人材を育成します。
・情報メディアシステム
・情報メディアシステムに関する研究者、研究開
情報メディアシステム、ディジタルメディアシ
発従事者、大学教員
ステム、画像情報メディア、協調情報メディアシ
・この分野で日本と世界に貢献しうる人材
ステムなどが研究対象として考えられます。
・将来、この分野あるいは関連分野において新た
・情報資源システム
な道を切り開きうる人材
ディジタル図書館システム、電子化ドキュメン
これらの人材を育成するための教育指導方針とし
トシステム、情報資源管理システムなど
て、以下に述べることを重視します。
・情報アクセスシステム
・シーズ発掘型研究、ニーズ重視型研究を問わ
情報アクセスシステム、情報システムインタ
ず、研究成果を、学会誌、国際会議などで原著
フェース、情報抽出システムなど
論文として発表するように指導する。
・ネットワークシステム
・世界の研究水準を知り、その中で自分の研究を
情報ネットワークメディア、高速ネットワーク
展開できるように指導する。
システム、ネットワークメディアシステムなど
・博士の学位とは一人前の研究者の証であり、博
・情報メディアシステム基盤技術
士後期課程とは、学生から、指導教官の共同研
量子論的情報メディア、システム解析、プログ
究者へと進化する過程と言える。これを認識さ
ラミング言語など
せ、研究者としての能力を身に付けさせる。
★★人材育成方針
★★★科目構成
社会のニーズに応え、博士前期課程では
以下の 5 つのカテゴリーから構成されます。
(1)情報メディアシステム
・情報メディアシステムに関係する専門的技術者
(システム設計、開発、研究、コンサルティン
情報メディアシステム論、ディジタルメディアシ
グなどに従事する技術者)
ステム論、画像情報メディア論、協調情報メディ
・問題解決型技術者(企業等において、自ら提案
アシステム論
(2)情報資源システム
を行うことができ、他人との間のインタフェー
スを明確にして協調連携でき、そして、チャレ
電子化ドキュメントシステム論、情報資源管理論
(3)情報アクセスシステム
ンジ精神の旺盛な技術者)
を育成します。また、これらの人材を育成するた
情報アクセスシステム論、情報システムインタ
めの教育方針は次のとおりです。
フェース論、情報抽出システム論
(4)ネットワークシステム
・世界の技術水準を知り、情報化社会から要請さ
れる技術ニーズに合致した専門的教育を行う。
情報ネットワークメディア論、高速ネットワーク
・専攻科目のみでなく、修士論文研究の実施過程
システム論、ネットワークメディアシステム論
(5)情報メディアシステム基盤技術
において、情報メディア技術の基本と実践的応
用力を身に付けるよう指導する。
メディア物理論、情報物理論、数値演算論、数式
・博士後期課程を目指すことが明確である場合
処理システム論、プログラミング言語処理系論、
は、技術ニーズ重視の課題に限定せず、修士期
シミュレーション物理
8
情報メディア開発分野
・ネットワーク応用ソフト産業(SE、プログラ
マ、営業など)
★研究対象
・大学、専門学校等の教員
「コンテンツの科学」が本分野のキーワードです。
・図書館や情報センターなどの情報専門家
情報は、かつては紙に印刷され、本として収まり、
・ディジタルコンテンツの管理を行うコンテンツ
図書館に集積されました。人々はそこから知識を
マネージャ
抽出しました。今や、情報はデジタル化・マルチ
・ディジタルコンテンツの蓄積や流通、利用技術
メディア化されて CD-ROM・DVD 等で提供される
を持つコンテンツエンジニア
のみならず、ネットワークを介して私達の手元ま
で配信されます。人々は居ながらにして世界中の
★★★科目構成
情報にアクセスできます。巨大な図書館の出現で
本分野の科目構成は (1) 基礎、(2) 基盤とに大分
す。しかし、単なる情報のデジタル化・マルチメディ
類されます。基礎では主にコンテンツの素材分析、
ア化は情報の洪水を引き起し情報の有効利用に結
人間の特性把握、新材料の開発などを扱います。
びつきません。情報を要素に要約し、要素間の関
基盤では、コンテンツの表現技術、共有技術、イ
係を記述して構造化し、さらに、使い方やアクセ
ンターフェイス技術などを扱います。
スの仕方に応じて可視化したり、抽象化して使い
(1)基礎
勝手を高め、高いユーザビリティを付加したデジ
タル化・マルチメディア化が必要となります。
・コンテンツ構造化の科学「情報の構造を扱う」
本分野では構造化されて高いユーザビリティが
文字・画像情報構造化論、音楽・音響情報構
付与されたデジタル・マルチメディア情報をコン
造化論、科学技術コンテンツ構造化論
テンツと称し、コンテンツを実現するための各種
・コンテンツ評価の科学「人間の認知構造を扱う」
技術について研究しています。
マルチメディア学習論、マルチメディア教育
具体的には、情報の要約・構造化手法、情報の
応用論、知覚・感性心理論
認知・理解機構、コンテンツと人とのインタフェー
・コンテンツ媒体の科学「物質の構造を扱う」
ス技術、コンテンツの記録・表示媒体技術、コン
コンテンツ記録媒体論、情報メディア素材
テンツの表現・作成技術、コンテンツの共有技術
論、コンテンツ表示媒体論
などを扱います。
(2)基盤
★★人材育成方針
・コンテンツ表現の技術
ネットワークやコンテンツの作成・利用・提供
コンテンツ形成手法論、映像コンテンツ製作
技術に関する研究者、技術者、教育者などを育成
論、情報デザイン論、画像情報表現メディア
します。また、コンテンツ素材となる各種情報の
応用基盤論、マルチメディア情報表現システ
分析、コンテンツの評価法など人の心理的側面、
ム開発手法論、情報表現システム技術開発論
コンテンツを記憶したり表示したりするための材
・コンテンツ共有の技術
料などに関わる専門家を育成します。
コンテンツ流通基盤技術論、コンテンツ共
修了後の進路は例えば次のようなものが考えら
有基盤技術論、メタデータ技術論、コミュニ
れます。
ケーション環境技術論、ネットワークコミュ
・コンテンツ作成産業(コンテンツ設計、評価、
ニケーション基盤論、マルチメディア通信活
人間側の機能評価業務、営業など)
用論
・コンテンツ材料開発産業(ディスプレイ、メモ
リ、MRインタフェース開発・設計など)
9
図書館流通センター図書館経営寄附講座
公共図書館を巡る今日の環境において図書館経
情報の作成・流通等の図書館サービスへの支援に
営のための人材養成が重要かつ喫緊の課題である
深く関わっています。寄附講座では平成 18 年 4 月
ことを認識し、図書館流通センターから提供され
から2名の教員を採用し、公共図書館等の経営の
た奨学寄附金により、平成 18 年度より3年間の
基本的な枠組みである公共サービスと公共経営に
予定で「図書館流通センター図書館経営寄附講座」
関する教育を行うとともに、公共サービス研究、
を設置しました。株式会社図書館流通センターは、
公共経営研究、図書館情報メディア研究を総合的
1979 年に出版界の総意によって社団法人日本図書
に結合して、図書館の新経営論に関する研究に取
館協会事業部の業務を継承する形で設立され、現
り組んでいます。
在では全国の図書館への図書の流通・販売、目録
社会のI T化に伴う要請
●「 I T新改革戦略( I T戦略本部)」
(平成18年1月19日)において、
図書館を始めとした、公共施設
の情報化と I Tに通じた図書館司
書の養成の推進が指摘される
多様化・高度化する
住民ニーズ
●生涯学習の普及による
新しい読書・情報検索
ニーズ
●子どもの読書支援
●ニートの就業支援
●団塊世代の退職後の活
動支援
●生活に密着した医療情
報・法律情報の提供
●新たな起業・地域の中
小企業への支援
自治体を取り巻く
環境の変化
公共図書館
●財政難
●団塊世代の退職による熟練
職員の減少
●官から民への流れ
大学における
図書館職員養成の現状
●資料選択や情報探索などの
実務が中心
●図書館経営管理に関する充
実した教育を必要としている
図書館流通センター図書館経営寄附講座
●時代に即応した図書館経営に関する最新の実際的知識を提供
●学生だけでなく、現職図書館職員や出版・流通関係者など、多様
な人材に学習機会を提供
●新しい公共経営を理解し、高い経営管理能力を持った図書館経営
管理担当者を養成
10
図書館経営管理コース
「図書館流通センター図書館経営寄附講座」の設
生として受講)。コースは、寄附講座による公共サー
置を受けて、平成 18 年度より博士前期課程に図書
ビス論、公共経営論に加えて、新設及び既存科目
館経営管理コースを開設しました。このコースは、
(ライブラリー・ガバナンス論、図書館施設計画論、
大学院生、現職図書館員、社会人等を対象として、
図書館サービス論、出版・流通論、システム管理論)
公共図書館や中小規模の大学図書館の経営管理、
の7科目で構成され、これらの単位を取得するこ
大規模図書館の部門管理などに携わるうえで必要
とにより、修了認定を申請できます。なお、修了
な知識と能力を開発するため、最新の実際的知識
認定を申請する時点で,司書資格を有するか,ま
を学ぶ機会を提供することを目的として、博士前
たは司書資格相当の図書館に関する知識や経験を
期課程の学生以外にも開かれています(科目等履修
有することを条件とします。
株式会社図書館流通センター
寄附
研究
公共サービス研究
公共経営研究
教育
図書館流通センター
図書館経営寄附講座
図書館経営管理コース
(7科目)
公共サービス論
公共経営論
構成:助教授、講師
期間:平成18年∼20年
図書館の新経営論
研究の発展
図書館経営
関連新設科目
社会人等
科目
履修
情報メディア社会分野
情報メディア
マネージメント分野
情報メディア
システム分野
図書館情報
メディア研究
図書館情報メディア専攻
博士前期課程科目群
情報メディア開発分野
受講
前期課程学生
図書館情報メディア研究科
平成 18 年度の受講者数
授 業 科 目
専門科目
基礎科目
担当者
東京サテライト
春日キャンパス
公共サービス論
濱田幸夫
25
8
公共経営論
小山永樹
22
14
ライブラリー・ガバナンス論
逸村裕
23
12
図書館施設計画論
植松貞夫
30
15
図書館サービス論
永田治樹ほか
22
9
出版・流通論
緑川信之ほか
22
11
システム管理論
石川徹也ほか
20
8
11
知的コミュニティ基盤研究センター(http://www.kc.tsukuba.ac.jp/)
本センターは、ネットワーク上で、あるいはネッ
トワークを利用して形成される多様なコミュニ
ティについて、それらに必要な知的情報基盤に関
する研究を行い、コミュニティの発展に寄与する
ことを目的としている。
本研究センターでは、開設以来、研究談話会、
国際シンポジウムの開催など、国内外のコミュニ
ティとの連携を念頭においた活動を続けてきてい
る。本研究センターでは、岡山県との共同研究協
定に基づく岡山県立図書館とのメタデータや郷土
情報ネットワークに関わる協調的活動、沖縄やハ
ワイ大学と協調したメディカルインフォームドコ
ンセントに関する研究活動を進めた。また、2006
年度には、筑波の地域コミュニティとの連携によ
る公開講習会や談話会を開催し、第 9 回アジア電
子図書館国際会議に主催組織として参加した。
「知の表現基盤」研究部門
知的コミュニティにおける知識伝達を考えると
き、その知識をどのように表現するかは重要な課
題である。例えば、多元的な内容を含む知識はそ
の理解が困難であるが、三次元 CAD に見られるよ
うに、その表現法を工夫することにより的確な知
識伝達が可能となる。そこで本部門では、このよ
うな知識を解りやすく表現する技術・手法の研究
を行い、複雑な事象を視覚的に観察し、インタラ
クティブに操作できるビューアの開発を目指す。
また、知的コミュニティの構成員が必ずしも単
一の知識レベルにある訳ではない。そのような状
況を想定すると、知的コミュニティ内のコミュニ
ケーションを円滑に進めるための知識レベルの違
いを緩衝するようなシステムが必要になってくる。
本部門では、異なる知識レベルの人々のコミュニ
ティ形成を支援する技術・手法の研究を行い、科
学技術の知識を社会に情報発信していくための専
門家向け支援システムの開発を目指す。
「知の共有基盤」研究部門
ネットワーク上では、誰もが知識の提供者であ
りかつ、知識の利用者にもなり得る。知的コミュ
ニティは、ネットワーク上で知識と情報を協調的
に共有する環境を利用して、知識や情報の資源と
して利用できるコンテンツ、すなわち情報資源を
多く作り出す。本部門は、いろいろなコミュニティ
12
と連携し、知識と情報を協調的に共有する環境に
関わる研究を進めている。
本部門では、ネットワーク上においてコミュ
ニティが生産した情報資源を蓄積し、共有し、そ
して利用するために必要な情報技術の研究開発を
行っている。特に、情報資源の共有と相互利用性
の向上を中心的な研究トピックとして、ネットワー
ク上で利用するディジタル・ライブラリとそれを
支えるメタデータ技術、それらの基礎となる XML
やデータベース技術を中心に研究を進めている。
具体的には、サブジェクト・ゲートウェイなどの
ディジタル・コンテンツ・アクセスのための共有
基盤技術、メタデータ規則を蓄積共有するための
メタデータ・スキーマ・レジストリなど、ディジ
タル・ライブラリの相互運用性向上のためのメタ
データ技術、Web 上のコンテンツの保存や一貫性
管理のための技術、XML を基礎としたデータ統合
に関わる技術等について、国内外の組織とも協調
しながら研究を進めている。
「知の伝達基盤」研究部門
本部門では、“情報伝達”という要素について、
コミュニティの構成員という利用者側からの視点
から、図書館・情報サービス機関といった提供者
側の視点に至るまでの広範な領域を扱い、社会学
的な分析を行っていく。
知的コミュニティを支えるネットワーク・ライ
ブラリ機能について、主として社会・コミュニティ
との関わりの観点から研究する。これは、コミュ
ニケーション行為や知的コミュニティの形成・維
持といった知識伝達の様態に関する研究と知的コ
ミュニティにおいて取り扱われる各種情報の集積
や組織化に関する研究とに分けて考えることがで
きる。
前者では、様々な種類の知的コミュニティにお
ける知識伝達のあり方や、各情報サービス機関の
機能評価の方法や組織デザインの解明を目指す。
後者では、機関レポジトリ構築に関する研究や、
大学国書館を中核に置いた高等教育機関における
新しい学習環境モデルの構築を目指し、海外と国
内の学習資源構成法の比較調査および学習者の視
点で組み替え可能な非定型学習を支援するシステ
ム設計などをすすめている。
「知の環境基盤」研究部門
高速大容量半導体メモリや次世代光ディスク用の
深紫外発光デバイス、(3)非従来型の新しい情報処
理方式を実現するデバイスとして、量子コンピュー
ティング素子などがある。こうしたデバイスの性
能、信頼性、生産性を向上させるための評価研究
を産官学組織と連携して行っていく。
このような研究活動と並行して、エレクトロニ
クス分野の研究者を対象とした、専門学術分野に
おける知的コミュニティ形成のための活動を進め
ている。
情報通信技術が発展していくためには、新しい
エレクトロニクス技術の開発が不可欠である。本
部門では、知的コミュニティの形成を支える情報
通信環境のさらなる発展を目指して、新しいエレ
クトロニクス技術につながる基幹デバイスの研究
を行う。
対象となるものに(1)ユビキタス・ネットワー
ク技術に関するデバイスとして、携帯情報機器に
も搭載可能な低消費電力半導体メモリ、無線通信
網を支える小型高出力 RF デバイス、(2)情報の高
速・大容量記録を可能にするデバイスとして、超
連携機関
株式会社電通
電通は今でこそ国内最大手の広告会社ですが、
その社歴はトリビアの連続でした。1901 年に創業
したときの社名は、実は電報通信社で、当時勃興
しつつあった新聞業向けに記事を作って売ってい
たのです。電通という今の名称は、この電報通信
社に由来しています。
新聞社の業績が伸びれば電報通信社の業績も伸
びるという意味で、当時の両者は言わば一蓮托生。
新聞の経営を助けるために、電報通信社は広告業
も営んでいました。戦争の足音が近づく 1936 年に
は、通信部門を国策企業の同盟通信社 ( 後の共同
通信社、時事通信社 ) に移譲し、広告専業となり
ます。戦後は 1951 年の民間ラジオ放送、53 年の
民間テレビ放送の開始とともに、業容を拡大。通
称だった電通という呼び名を正式社名にしたのが
55 年で、現在に至るというわけです。
このように時代の変化に柔軟に対応しつつ、時
には副業を本業にするほどの大胆さを身上とする
企業 DNA こそ、電通の最大の武器なのかもしれ
ません。さて、過去 100 年を振り返っても、今ほ
どのメディア環境の大変革期はそうはありません。
13
おそらくはテレビの登場に匹敵すると言っても間
違いではないでしょう。変化はチャンス。情報メ
ディアに関連して、さまざまなビジネスチャンス
が見つかるはずです。
今年度は、電通の中で消費者研究を得意とする
消費者研究センターが担当します。一応講義とい
う形を採りますが、メディア大変革を前にして、
講師も学生も同じチャレンジャーです。その心意
気で、一緒に勉強してみませんか。
理化学研究所
理化学研究所(理研)は、日本で唯一の自然科
学の総合研究所として、物理学、工学、化学、生
物学、医科学などに及ぶ広い分野で研究を行って
いる。研究成果を社会に普及させるため、大学や
企業との連携による共同研究、受託研究、産業界
への技術移転等を積極的に進めている。埼玉県和
光市の和光研究所のほか、筑波、播磨、横浜、神
戸などに研究所がある。
連携講座として、コンピュータを用いた新しい
教育法、コンピュータビジュアリゼーション、超
高速計算機による宇宙現象等のシミュレーション
研究、バイオインフォマティクスの研究手法(相
同性検索、配列アライメント等)、生物学分野での
コンピュータ利用などを担当する。
NTT アクセスサービスシステム研究所
NTT アクセスサービスシステム研究所は、21 世
紀の情報流通社会を支えるアクセスサービスシス
テムの研究開発を行っています。現在、アクセス
サービスへの要求は多様化し、たとえば、いつでも、
どこでも、何でも情報アクセスが可能なユビキタ
スサービスが求められています。これに対して本
研究所は、光 IP 接続サービスに続く多彩なサービ
スメニューを提供するため、光ファイバ技術等に
よって 10M ∼ 1Gbps を実現し、さらに情報量の制
14
約を超越する次世代技術である 1Tbps の光アクセ
ス技術、そして空間の制約を超越する無線アクセ
ス技術、またそれらの関連技術を研究開発してい
ます。
本連携講座では、前述の研究開発の成果を基に
企業の研究所として大学とは異なる視点から講義
を行います。また、講義内容に関する研究を希望
する院生があれば、その指導も検討します。
凸版印刷株式会社
凸版印刷は、文字処理、画像処理、
データベース構築・運用などの情報
処理技術とコンテンツの加工・編集と
いった感性表現力を駆使して、企業の
コミュニケーション、インタフェース
の創造を続けている。一方、超高精細
画像処理技術によるバーチャルリアリ
ティの実用化、デジタルアーカイブの
構築など、デジタル化とメディア表現
の融合する新しい領域にも実績を重ね
ております。
本連携講座では印刷における文字
や画像の情報表現技術、デジタルアー
カイブの表現手法、バーチャルリアリ
ティなどのインタラクティブメディアの開発手法
などの理解を、事例をもとにした講義とディスカッ
ションで進めていきます。
「唐招提寺展」でのVRコンテンツ上映風景
メディア教育開発センター(NIME)
NIME は「大学、短期大学及び高等専門学校に
おける多様なメディアを高度に利用して行う教育
の内容、方法等の研究及び開発、並びにその成果
の普及等を行うことにより、大学等の教育の発
展に資すること」を目的にしています。研究開発
業務の中では現在世界的に重視されてきている
e-Learning の支援研究を始め、メディア環境、学
習リソース、メディア活用、調査・国際の研究を
行っています。普及促進業務では、教育情報ポー
タルの提供・運用、教育用コンテンツ開発・普及、
衛星通信を利用した教育通信ネットワークの運
用、さらに、さまざまな研究や国際シンポジウム
の開催などを行っています。また、大学と連携し
て大学院教育も担当しています。
本連携講座では、①“教育工学”の視点に立ち、
教授や学習の“設計・実施・評価・改善”という
各プロセスを踏まえ、
“教育”におけるメディアの
利活用を中心として、教育の効果や学習の質保証
を実践的な研究として扱った「マルチメディア教
育応用論・応用研究」、②マルチメディアにおける
情報の送り手と受け手の相互作用(メディアの構
造と学習効果の関連)に関する具体的課題、研究
法、さらにはメディアを活用した学習の最適化に
15
関する応用研究の課題を扱った「マルチメディア
学習論・学習研究」、③マルチメディアの発展を
支える通信技術のしくみと応用の理解、それらに
よる社会生活の変容・変貌を扱った「マルチメディ
ア通信活用論・活用研究」を、講義と討論・発表
による授業構成で進めていきます。
教員紹介
*は、連携教員
情報メディア社会分野
太 田
勝 也
(日本史,日本史
史料学)
黒 古
一 夫
(近・現代文学研
究,近代書誌学,
出 版・ 著 作 文 化
論)
啓 *
木 暮
(情報メディア
とコミュニケー
ションの研究 , 消
費者と市場の調
査・分析 )
後 藤 嘉 宏
(社会情報学,コ
ミュニケーショ
ン思想史)
新 保
史 生
(情報法学,公法
学)
寺 田
持続可能な市民社会を形成するために、情報メディアが果たす役割とコミュ
ニケーションのあり方について研究する。ユビキタス社会の将来展望を、情
報メディアとコミュニケーションの研究を踏まえて未来学の手法を用いて構
想し、その社会的便益を考察する。また消費者、有望市場に関する調査を解
説し、事例を分析する。
[情報メディア・コミュニケーション論、情報メディア・コミュニケーション
研究]
戦前、映画を議論の中心に据えた独自の美学を構築し、戦後 NDL 初代副館長
を務めた中井正一の“媒介”論を、社会思想史的に研究している。さらにそ
の研究を敷衍して、図書館からマスコミ、電子媒体までを射程に入れたコミュ
ニケーションの基礎理論の構想を目論み、現在そのための理論と実証との兼
ね合いを模索中である。
[専門情報 ・ 資料論Ⅲ(社会)、情報メディア社会特別研究]
情報法学を専門とし、ネットワーク社会の法律問題を公法学的側面から研究
している。情報通信関連政策、プライバシーの権利、個人情報保護制度、捜
査手段としての通信傍受、迷惑メール規制、情報セキュリティ対策などの問
題を、RFID やバイオメトリクスなどの技術利用に伴う問題も含めて比較法的
観点から研究を行っている。
[ネットワーク社会法制度論、システム管理論、情報メディア社会特別研究]
西欧の図書館文化史の研究を行っている。図書館文化史では、図書館の歴史
のほかに書物・書誌・事典や読書の歴史なども問題とする。フランスの図書
館史が中心で、特にフランス革命以後の近代的な図書館再編や人物史を問題
にしてきた。
[図書館情報文化史論、図書館情報文化史研究]
伸 一
タンパク質や化学物質の構造や性質などからの知識抽出に関する研究、化学
や生化学領域などにおける知識の分析研究、小説の読後感など感性データの
計測と予測研究、創造技法やデータマイニングなど知識化技法や知識抽出技
法の開発と評価研究を行う。
[情報知識化方法論、情報知識化方法研究]
(応用情報学)
原
近代における「著作文化」の発生と実態について、明治以降の新聞、雑誌等
のメディアを通して研究するとともに、「近代文学」を例として書誌作成の意
味について考察する。併せて、近代文学研究の「基礎」として書誌作成およ
び書誌(資料をある一定の方式に基づいて整理したもの)がいかに重要な意
味を持つかを検討する。
[著作文化論、著作文化研究]
光 孝
(図書館史)
中 山
日本近世の歴史情報と史料に関する研究を行っている。特に、江戸時代の対
外関係に関わる専門情報(鎖国政策・長崎貿易関係を中心とする)とそれに
関わる史料(古文書・古記録類)についての研究を中心とする。電算機利用
による歴史情報の処理方法(データベースの作成・利用)の開発にも積極的
に取り組んでいる。
[専門情報 ・ 資料論Ⅰ(歴史)、専門情報 ・ 資料研究Ⅰ(歴史)
]
淳
之
(図書館情報学,
図書館史)
図書館、情報およびメディアの文化的な研究。日本、ドイツ、英国における
19 世紀以降の図書館や読書行動の変遷についての社会史的研究。具体的には
図書館や読書サークルを扱う。また、現代の日本、ドイツ、英国における図
書館情報制度、読書行動についての比較研究。
16
松 本
浩 一
(中国史,中国目
録学)
溝上
智恵子
(高等教育政策,
文化政策)
武者小路 澄子
(異種間コミュニ
ケーション,知
識社会学)
村井
麻衣子
(著作権法)
山 本
順 一
(比較図書館情報
学,情報法)
湯 川
朋 彦 *
(情報社会論)
横 山
幹 子
(哲学,知識論)
四 元
正 弘 *
(消費者研究)
綿 抜
豊 昭
(日本文学,日本
図書学)
道教の呪術儀礼、道士と民間宗教者の役割の関係、祠廟信仰などを、主とし
て宋代の文献と台湾の実態調査から解明することを目指している。同時に研
究者の立場に立って、自分たちの用いる資料のデータベース化に取り組み、
また中国古典の分類・目録を始め、文献学的研究もテーマとしている。
[専門知識形成論、専門知識形成研究]
主たる研究テーマは高等教育政策と文化政策である。高等教育政策は日本、
アメリカおよびカナダの高等教育機関における成人学生の動向や遠隔教育関
連政策に関して研究を行っている。また文化政策はカナダとアメリカの文化
関連施設の形成や展示物と多文化主義との関連性について、国民文化形成の
視点から研究を行っている。
[国際教育文化政策論、国際教育文化政策研究]
コミュニケーションが成立する際には、情報伝達という問題以前に、他者と
関係し、相互理解や共感を図り、相手との共生を築いていくことが必要である。
こうした基盤的な事柄を、非言語コミュニケーションや身体感覚等にも着目
し、人と異種の生きもの(動物や植物等)との「異種間コミュニケーション」
の可能性に焦点を当てて研究する。
[情報知識化分析論、情報メディア社会特別研究]
知的財産法、特に著作権法についての研究を行っている。アメリカ著作権法
におけるフェア ・ ユースを題材として、インターネットやデジタル技術が発
達した現代における著作権法のあり方を模索したいと考えている。
[情報著作権法論、出版 ・ 流通論]
主として、日米の情報メディア制度について研究している。具体的な研究対
象は二つあり、ひとつはアメリカの図書館の歴史と制度に関する比較図書館
情報学的研究で、いまひとつはインターネットの普及とデジタル・コンテン
ツの流通により変容を強いられている著作権制度を含む知的財産権制度、情
報政策に関する研究である。
[情報メディア制度論、情報メディア制度研究]
情報化あるいはメディアの発展が、人間の行動や社会に与える影響について、
歴史、産業、政策という3つの視点から考える。特に産業と政策の関連に注
目し、具体的な事例を取り上げて、考察を行う。
[ 情報化社会論、情報化社会研究 ]
私の研究テーマは、知識の本質や知識を共有する可能性について、分析哲学
的な視点から考察することである。たとえば、知識と実在論の関係を考える
ことや相対主義の諸問題を考えることなどが、このテーマに属している。また、
最近は、上記のテーマに関連して、蓄えられた知識の正しさについて考える
ことにも、非常に興味を持っている。
[情報知識論]
情報メディア接触行動の分析、メディアビジネスの分析、消費者意識・行動
の分析ならびに消費者インサイトの開発。
[情報メディア産業論、情報メディア産業研究]
江戸時代の情報伝達手段の一つは手紙のやりとりであった。その手紙の模範
文例集である「往来物」は様々なものが出版された。それには注釈のあるもの、
絵入のものなどがある。その「往来物」を中心に、当時の庶民向け書物について、
図書学、図像画などを視野に入れて、人文科学的な観点から研究をしている。
[専門情報 ・ 資料論Ⅱ
(文学)、専門情報・資料研究Ⅱ
(文学)
]
17
情報メディアマネージメント分野
池
内
淳
(図書館情報学)
石 井
啓 豊
(図書館情報学基
礎論,図書館経
営論)
逸
村
裕
(学術情報流通論,
学術図書館論,情
報探索行動論)
岩澤
まり子
(情報組織化論,
情報検索論)
植 松
貞 夫
(建築計画学,図書
館情報学)
戎 崎
俊 一 *
(天体物理学,計
算科学)
大 澤
図書館のような情報システムと情報メディアによる知識共有に関する基礎的
な研究に関心がある。具体的には、知識の構造分析、研究領域の形成プロセス、
情報と情報ロジスティクスのモデル構築、図書館成立の理論的基盤、情報サー
ビスのビジネスモデル、情報利用などを単独で、あるいは院生と共に手がけ
ている。システム思考によるアプローチにも関心を持っている。
[情報サービスシステム構成論、情報サービスシステム構成研究]
電子情報環境が急速に進展しつつある中、学術情報流通におけるオープンア
クセスや機関リポジトリの展開、大学図書館機能の高度化と経営問題そして
情報利用者の探索行動に関心がある。関連して図書館及び大学諸活動の認証
評価の問題、情報リテラシーの動向、物理的な資料情報源の保存、情報専門
職を研究テーマとして扱ってきている。
[ライブラリー・ガバナンス論、ライブラリー・ガバナンス研究]
データベース資源の特徴を、情報の蓄積および検索の両面から明らかにし、
情報資源としての活用について研究を行っている。具体的には、利用者によ
る情報要求、情報検索の機能、提供する情報、情報の蓄積法等を検討し、医
療情報、レファレンス経験および特許情報を用いて、情報提供モデルを提案
している。
[データベース資源活用論、出版・流通論、データベース資源活用研究]
ディジタル情報時代における図書館建築について研究している。知識や情報
流通のディジタル化に伴って、館種を問わず、図書館は変化を迫られている。
こうした時代にあって図書館と図書館建築は如何にあるべきかを建築を主体
に考察する。具体的にはディジタル化への対応先進国である北欧や英国の図
書館建築の方向性を把握するとともに、国内における館員や利用者の意識調
査を行っている。
[図書館施設計画論、図書館施設計画研究]
1)宇宙における高エネルギー諸現象の解明; 2) 超高速専用計算機による数値
シミュレーション; 3) コンピュータを利用した新しい教育方法の創造
[研究情報基盤方法論、研究情報基盤方法研究]
文 人
専攻分野は教育工学で、教育現場におけるコンピュータの利用(コンピュー
タによる授業支援、教育評価など)と教育機関と企業の連携に関心をもって
いる。今後はコンピュータを含めたメディアリテラシーについての教育に関
しても研究を行いたいと考えている。
一 郎
米国の公共図書館における人的資源管理について、専門的職務と非専門的職
務の区分の観点から研究してきた。それらの研究を踏まえて、日本の公共図
書館や大学図書館における図書館職員の職務のあり方について研究している。
さらに、公共図書館や大学図書館における情報サービスの新たな動向につい
ても研究を進めている。
[人的資源構成論、図書館サービス論]
(教育工学)
大 庭
1) 数理的手法を用いて、自治体における公立図書館の最適供給量を導出する
ことを試みている。2) 公立図書館の公共性の論拠、並びに、その現在的意義
について検討している。3) ウェボメトリクス、ウェブマイニング、インフォ
グラフィクス等にも関心がある。
[知識情報サービス政策論]
(図書館情報学)
18
小野寺
夏生
(計量文献学)
小 山
永 樹
(公共経営論)
三波 千穂美
(科学技術コミュ
ニケーション)
鈴 木
佳 苗
(教育・社会心理
学,教育工学,
社会情報学)
谷 口
祥 一
( 情報メディア組
織化,情報組織
化)
田 村
肇
( 図書館情報学,
計量経済学)
辻
慶
太
(自然言語処理,
図書館員教育)
歳
森
研究のテーマは、我が国の地方行財政制度である。なかでも、近年、地方自
治体において行われている政策評価、P F I など、民間企業における経営理念・
手法を行政現場に適用する新しい公共経営(NPM)について研究する。
[公共経営論]
科学技術と社会という枠組の中で、専門情報を一般市民に正確かつ明解にわ
かりやすく伝達するための制度・技術について研究している。伝達する相手
の知的状況に配慮した、情報を最適表現するための制度や技術についてとも
言えよう。具体的には科学コミュニケーション、テクニカルコミュニケーショ
ンなどがあげられる。
児童青少年の活字メディア、映像メディア、電子メディアの利用実態とメディ
ア利用が児童青少年の発達に及ぼす影響に関する研究を行っている。活字メ
ディアとしては、図書、新聞、マンガなど、映像、電子メディアとしては、
テレビゲーム、テレビ、インターネットなどが含まれる。影響の内容として、
学力的側面と対人的・心理的側面について広く検討している。
[児童青少年情報メディア論、図書館サービス論]
情報メディア組織化手法のうち、対象とする情報メディアのサロゲート(メ
タデータ、書誌データなど)を作成し管理することをもって有効な組織化を
図る手法を研究テーマとしている。特に、サロゲートの設計を段階化し、そ
のうち要求・特性定義および概念モデリングに焦点を当てるアプローチを採
用している。加えて、サロゲートの有効活用や作成を支援するシステムの開
発に取り組んでいる。
[情報メディア組織化方法論、出版・流通論、情報メディア組織化研究]
公共図書館の利用(特に貸出し)の量がどのような要因によって決まるのか
を計量的な(統計的な)手法で明らかにする研究を行っている。またそれか
ら派生してどのようにすれば図書館の効率性を測定することができるかを明
らかにするための研究も行っている。今後は公共図書館に限らず図書館情報
学、情報学分野における様々な数理的・計量的分析を行っていきたい。
[図書館情報センター利用分析論、情報メディアマネージメント特別研究]
現在、次の 2 つの研究に取り組んでいる。1) 翻訳や文章作成に有効な訳語対、
同義語、上位語下位語を Web から自動抽出する手法の開発、2) 電子環境と
多様な雇用形態が増えている現代社会での図書館員教育のあり方。
[知識集積管理論]
敦
コミュニティの知的基盤としての地域公共サービスと地域施設、特に図書館
や情報センターを対象として研究する。地域間の格差のような広域的な視点
から、施設単体の評価あるいはサービスに対する利用者の選好のような微視
的な視点までを総合し、サービスや施設の運営・計画に資する知見を得るこ
とを目指す。
[情報コミュニティ計画論、情報メディアマネージメント特別研究]
治 樹
コミュニティにおける人々の知識伝達基盤(たとえば、地域コミュニティに
おいては公共図書館、学術コミュニティにおいては大学図書館など)に対す
る顧客(住民・利用者)の選好行動を把握するとともに、これらの組織の社
会的役割 ・機能のあり方や活動の評価を行う。具体的には、経営論的なアプ
ローチから図書館効果やサービス品質の測定や、業務アーキテクチャ分析を
行っている。
[図書館情報センター経営管理論、図書館サービス論、図書館情報センター経
営管理研究]
(行動モデル)
永 田
計量文献学に関する研究を行っている。具体的には、文献集合に現れる分布
(用語の出現頻度、著者の発表論文数、論文の被引用数等)に関する確率モデ
ルの研究と、特定の主題分野についての計量文献学的分析に別れる。この他、
化学物質の性質(物性)の統計モデルによる説明についても関心を持っている。
[情報評価論、情報評価研究]
(図書館情報学)
19
濱 田
幸 夫
(図書館情報学)
平久江
祐司
(図書館情報学,
学校図書館)
深 海
薫 *
(バイオインフォ
マティクス,分
子進化学)
松林
麻実子
(情報行動論,メ
ディア分析)
緑 川
信 之
(図書館情報学)
薬 袋
秀 樹
(図書館情報学,
公共図書館論)
吉 田
右 子
(図書館情報学)
地方財政の悪化等を契機として、図書館業務の委託化などが進められようと
している状況を踏まえ、公立図書館の役割や運営・経営のあり方について様々
な観点から検証を行い、住民の要望に応える図書館のあり方について提言を
行っていきたい。また、図書館業務の専門性について、図書館の運営形態やニー
ズの高度化への対応の観点から検証を行っていきたい。
[公共サービス論]
学校図書館の活動および学校図書館と公共図書館の連携・協力に関する領域
について、教育学的側面から研究を行っている。具体的な研究テーマとしては、
主として日本および米国の学校図書館の支援システム、学校図書館活動の評
価、情報リテラシー教育、利用者への情報提供などがあげられる。
[学校メディアセンター運営論、図書館サービス論、情報メディアマネージメ
ント特別研究]
理研バイオリソースセンターが取り扱うバイオリソースを中心に、それらの
所在情報ならびに特性情報を収集し、研究者に提供している。また、リソー
スの提供が円滑になされるためのシステム作りを行っている。さらに、多く
のバイオリソースに関する情報の中から生物学的に有意義な情報を抽出する
ための新しい情報解析技術の開発を行っている。分子進化、特にタンパク質
の進化に興味があり、バイオリソースの情報を進化という切り口から見た時
に何が分かるかに関心を持っている。
[バイオインフォマティクス論、バイオインフォマティクス研究]
研究活動における主たる関心は、社会情報学的な観点から情報を利用する人
間について考えることにあり、具体的には二種類のアプローチを採用してい
る。一つは、人間が日常的に行っている情報行動は彼らにとってどのような
意味を持つのかという疑問についてフィールドワークを使って解明すること
である。もう一つは、人間と情報とが関わる際に必ず存在するメディアに焦
点を当て、その構造と情報行動との関わりを解明することである。
[学術情報流通システム論、出版・流通論]
分類理論の研究を行っている。これまでは、図書を書架に配架するための分類
(書架分類)を中心に研究が行われてきているが、これは一次元的な配列しか
考慮に入れていない。しかし、電子資料などは必ずしも一次元的に配列される
必要はない。こうした点をふまえ、従来の図書館分類法の構造等を明らかにす
るとともに、より一般的な観点から目的に応じた分類法のあり方を研究する。
[情報分析論、出版・流通論、情報分析研究]
わが国の公共図書館について、その理念・目的、サービス方法、利用傾向、経営・
管理、職員の専門性・教育、法令・制度、行財政、政策等を、地域社会や自
治体行政との関係の観点から研究している。これまでの主な研究は、専門職
員の職務内容・資格・資質、利用者サービスの改善、図書館行政と図書館運
動の関係である。
[図書館情報センター機能論、図書館サービス論、図書館情報センター機能研究]
公共図書館における情報サービスの歴史的展開について分析を行っている。
多様なメディアをいかにして図書館サービスと関連づけていくのか、あるい
は図書館が同時代のメディアとどのように切り結んでいくのかという課題に
対し、カルチュラル・スタディーズの枠組みを援用し、情報サービスの基層
に存在する文化政治的課題を討究している。
[情報メディアサービス論、出版・流通論、図書館サービス論、情報メディア
マネージメント特別研究]
20
情報メディアシステム分野
石 塚
英 弘
(ディジタル ・ド
キュメント,情
報知識システム)
宇 陀
則 彦
(情報資源管理,
電子図書館)
黒 河
賢 二 *
(光通信システム)
阪 口
XML(Extensible Markup Language) に基づく電子化ドキュメントシステム
の概念を発展させて、学術情報の構造化表現・処理加工・検索・配布を行う
Web ベースのシステムを研究している。また、これに関連して、コンテンツ
すなわち情報資源の観点からディジタル図書館システムを研究し、分散型情
報システムにも興味を持っている。
[電子化ドキュメントシステム論、電子化ドキュメントシステム研究、情報資
源管理システム研究]
1) 学術情報リンキング:知的生産に必要な学術情報をリンクし、最適なパス
を提供する。2) 情報資源共有:図書館、博物館、文書館などの情報資源を透
過的に利用できるようにする。3) 資料研究支援:コンテンツを再構成するこ
とによって資料の新たな側面を引き出す。
[情報資源管理論、出版・流通論]
将来の I P系トラヒックの急増に対応するため、現行光ファイバに比べ飛躍
的に伝送容量を拡大できる新しい伝送媒体技術を研究している。具体的には
ホーリーファイバの伝送性能の見極めと超大容量伝送システム設計技術の確
立を目指している。また、通信容量の増大等に伴う光ファイバ内光パワーの
上昇傾向を鑑み、光ファイバのハイパワー特性の研究も行っている。
[高速ネットワークシステム論、高速ネットワークシステム研究]
哲 男
1) ディジタル図書館基盤技術:ディジタル図書館の構築やサービスの展開に
適応した基盤技術の開発; 2) 分散型情報システムとその開発環境:WANや
LANに分散した情報の特性に基づくシステム構成方式とその開発; 3) 知的活
動のための情報基盤:研究・教育における情報の蓄積・加工・利用のための
手軽なソフトウェア環境の構築。
[ディジタルメディアシステム論、システム管理論、情報メディアシステム特
別研究]
佐 藤 哲 司
(情報アクセス論)
情報ネットワーク時代の本格的な到来を迎えて、相互に関連づけられた情報
空間の構造を知識として表現し、変換・統合・共有・アクセスするための情
報アクセス高度化、知識写像に関する研究を進める。情報を発信する著者コ
ミュニティの変遷・変容にも興味があり、データ工学や情報検索などの工学
的アプローチによって解明する。
[情報アクセスシステム論、情報アクセスシステム研究]
鎮 目
1) 情報物理:情報メディアが物理法則に従うため情報が持つことになる物理
的性質。特にエントロピーを中心とした情報理論と物理法則の関係; 2) 量
子力学の基礎:普通の力学と量子力学の間に現れる概念的および定量的な違
い。特に(a)カオス系での量子古典転移、および(b)量子的な情報処理への
応用。
[情報物理論、情報メディアシステム特別研究]
(情報科学)
浩 輔
(情報物理,量子
力学)
鈴 木
伸 崇
(構造化文書,
データベース)
X M L等の構造化文書に関する研究を行っている。例えば、X MLデータの管
理、複数の文書データの統合、XM Lデータとスキーマ間の最適編集距離の計
算等に関する問題に関して、これらを効率よく解くためのアルゴリズムの開発
を行っている。また、それら問題の計算複雑さについて考察を行っている。
[ネットワークメディアシステム論]
21
田 中
和 世
(音声音響情報処
理,ディジタル
信号処理)
辻 村
健 *
(計測工学,ユビ
キタス通信)
時 井
井
磁性材料の理論計算の研究を行っている。1) 強磁性金属、酸化物の電子状態
の計算;2) 理論計算から得られた結果の可視化
[シミュレーション物理]
央
近年、様々な要求に対応するために、新たなプログラミング言語を開発する
ことはめずらしくない。また、携帯電話やゲーム機など、汎用のコンピュー
タ以外のためのプログラミングの要求も大きい。このため、プログラミング
言語およびそのコンパイラの構成法について研究を行なっている。
[プログラミング言語処理系論]
(コンパイラ構成
法,プログラミ
ング)
長谷川
秀彦
(ハイパフォーマ
ンスコンピュー
ティング,数値
線形代数)
長谷部
紀元
(情報科学)
藤
井
敦
(自然言語処理,
情報検索,音声
言語処理,人工
知能)
松
村
本
1) 数値線形代数:科学技術計算に現れる大規模な疎行列に対する連立一次方
程式の解法や固有値計算のアルゴリズムの開発・評価; 2) ハイパフォーマン
スコンピューティング:並列コンピュータやインターネット上で手軽に利用
できる高速な数値計算ソフトウェアの開発とその性能評価; 3) 数値計算ソフ
トウェアの応用:たとえばコンピュータ教材の作成やデータマイニング
[数値演算論、情報メディアシステム特別研究]
・情報システムの構築方法:分散オブジェクトなどのインターネット技術に
もとづく情報提供システムの構築方法を研究する。
・文献の単語統計:分野毎の特徴的な語群の抽出、文献検索、文献の分野へ
の分類、文献分野間の親疎の定量化などを研究する。
[情報システムインタフェース論]
人間が日常使う言葉(自然言語)を計算機処理する研究について、基礎から
応用まで行っている。具体的には「自然言語処理」、「情報検索」、「音声言語
処理」、「人工知能」などの分野について、個別の分野に特化したテーマから、
複数分野を横断する複合的なテーマ(自然言語解析に基づく情報検索、音声
データ検索など)まで幅広く行っている。
[情報抽出システム論、情報メディアシステム特別研究]
敦
自然言語処理を利用した情報アクセスおよび情報検索に関する研究を行って
いる。具体的には、自然言語で書かれた文書からキーワードとそれらの関係
を抽出し構造化する方法、構造化された言語情報を情報アクセスシステムに
活用するための枠組みの研究を行っている。
紳
物性物理の理論的研究とそれに関連するバンド計算システム等の開発を行
う。具体的には以下のとおりである。 1) 磁性媒体材料等に対する計算機実
験; 2) 理論あるいは実験結果等の可視化のためのシステム開発; 3)陽電子
消滅角相関やコンプトンプロフィールの理論的研究
[メディア物理論、メディア物理研究]
(情報学)
松
ロボット工学に関する計測制御技術を基盤として、オプティクスおよび I T技
術との融合を図り、ユビキタス情報通信ネットワークサービスの研究開発を
進めている。主要研究テーマは、FSO (Free Space Optics: 光空間通信技
術)、アクティブレーザレーダ、電磁位置計測システムなど。
[画像情報メディア論、画像情報メディア研究]
真 紀
(計算物理)
中
音声・音響メディア処理を情報工学的立場から研究している。具体的テーマ
としては、 1)言語系に共通なユニバーサル音声符号系を用いた音声の符号
化・認識・検索・インデキシング、 2)音声生成過程のモデル化に基く話者
依存要因や言語系依存要因の分析・合成、 3)信号処理技術を用いた環境音
や楽器音の分析・認識・ノイズ低減、音場の局所再生など。
[情報メディアシステム論、情報メディアシステム研究]
(計算物理,計算
機実験)
22
三 河
正 彦
(ロボティクス,
インタフェイ
ス,ロボットビ
ジョン)
森 継
修 一
(情報科学)
ネットワークを介して、人間と人間あるいは人間と機械間で円滑にコミュニ
ケーションおよび共同作業を実現するには、音声や映像だけではなく、指し
示す、触る、動かす等の実世界へ働きかける動作と、それらを知覚する機能
の連携が重要である。そこで、ロボティクスを利用した知的システムまたは
知的インタフェイスの研究を行っている。
[協調情報メディアシステム論]
情報システムのひとつとしての数式処理システムの機能を高度化するため、
基本となるアルゴリズムの研究を行なう。自然科学の立場から、数学的な基
礎理論に基づいて計算のメカニズムを明らかにすることにより、さらに効率
のよいアルゴリズムの開発を目指すとともに、実際のプログラム開発と実験
的検証までを行なう。
[数式処理システム論、情報メディアシステム特別研究]
情報メディア開発分野
磯 谷 順 一
(情報媒体の材料
評価)
伊 藤
秀 子 *
(学習教授科学,
メディア心理学)
井 上
智 雄
(情報工学,教育
工学)
梅 田
享 英
(半導体エレクト
ロニクス,電子
スピン共鳴)
大量のコンテンツを蓄積する大容量記録媒体や誰でもどこでもネットワーク
へのアクセスをもたらすユビキタス ・ ライブラリ媒体、量子コンピュータの
固体素子での実現などを目的に、シリコン LS I の極限的技術開発、シリコン
に代わる新しい半導体材料による新機能の発現など、新しい情報媒体の開発
を材料評価の面から取り組む研究を行っている。
[情報メディア素材論、情報メディア素材研究]
1)「学習教授科学(Learning and Instructional Sciences: LIS)」の研究 :
人間のさまざまな営みにおける学習教授現象を科学的に解明し、問題解決に
役立てる。2) マルチメディア学習材の構造分析と効果測定:画像情報や言語
情報の構造分析や効果測定を行い、効果的なマルチメディア学習材開発のた
めの理論基盤の構築と実践技法の開発に役立てる。
[マルチメディア学習論、マルチメディア学習研究、マルチメディア教育応用
研究]
高度情報基盤の上に豊かな人間生活を実現するためには、人間の基本的な活
動である協調活動の支援が不可欠である。このために、人間と人間あるいは
人間と機械のインタラクションについて研究している。よりよいコラボレー
ション、コミュニケーションを実現する情報メディア技術と、その教育・学
習の場への応用が主な研究テーマである。
[コミュニケーション環境技術論、情報メディア開発特別研究]
情報通信技術の進化を支える半導体デバイスや材料の研究開発を行っていま
す。現在の主な研究対象は、シリコンの大規模集積回路(主にメモリ)と、
炭化ケイ素による高出力・高速 RF デバイス、ダイヤモンドによる深紫外線発
光デバイスなどです。また、最新の半導体評価実験法の開発や、半導体産業
を支援するためのインターネットベース知識集積システムの開発など幅広い
活動も行っています。
[コンテンツ記録媒体論、情報メディア開発特別研究]
23
小 川
恵 司 *
(情報表現技術)
小 高
和 己
(パターン認識,
文字認識)
加 茂
竜 一 *
(デジタルアーカ
イブとメディア
表現)
川原崎
雅敏
(情報通信ネット
ワーク)
金
尚
泰
(ビジュアルコミュ
ニケーション,情
報デザイン,コン
テンツ制作)
篠 原
正 典 *
(IT活用教育工学)
杉 本
重 雄
(ディジタル図書
館,情報システ
ム工学)
永 森
(情報科学)
光 晴
出 版 系 の 事 業 領 域 に お い て 組 版 処 理 を 中 心 と し た CTS(Computerized
Typesetting System)全般の技術開発に従事。現在は総合研究所において
Eビジネス領域の研究開発を担当しており、主に次世代情報端末などを対象
としたテキスト系の表現技術の研究開発を行なっている。
[情報表現システム技術開発論、情報表現システム技術開発研究]
文字・画像の機械によるパターン認識技術の諸プロセスを研究の対象として
いる。人間が文字を発生する過程を各種センサを用いて直接計測し手書き文
字に内在する変形・個性の構造を明らかにすること、複雑な背景中にある文
字や図形等を分離する際の文字構造の利用法等について研究している。
[文字・画像情報構造化論、パターン認識研究]
高度な画像処理技術による VR 表現技術など、将来の様々なメディア表現手
法やデバイスに高品質に応用しうるデジタルアーカイブを、コンテンツ表現
の視点から考察。素材となる作品が持つ広範な情報を、適切なメディアによっ
て保存・公開するための手法を、実践の蓄積をもとに研究を進めている。
[画像情報表現メディア応用基盤論、画像情報表現メディア応用基盤研究]
ユビキタス情報社会の基盤技術として、意識しないでも状況に応じた最適な
情報が利用できる情報システムや、自己情報コントロールが可能なプライバ
シー保護システムの研究を行っている。テーマとしては、1) セマンティック
Web の概念を用いたコンテキストアウェアネス(状況理解)方式、2) 状況
適応型コンテンツ配信、3) P2P における情報検索 ・ 取得の効率化方式、4) セ
キュアな医療情報の横断検索システムなど。
[ネットワークコミュニケーション基盤論、ネットワークコミュニケーション
基盤研究]
コンテンツ開発に必要とされるデザイン表現・CG 関連先端テクノロジーの応
用に関する研究を行っている。企画・制作のための造形表現やデザインのあ
り方を探求し、情報コンテンツとしての表現可能性を広げる。ダイナミック
でインタラクティブな情報表現について、表現理論・技術などを芸術・デザ
インの観点に基づいて制作を行っている。
[情報デザイン論]
統計データや白書、報告書、研究内容、シラバスなどの高等教育で役立つコ
ンテンツを、それらの Web ページが有するリンク構造から自動的に収集、分
類し、その分類化された情報内を検索する方法を研究し、システムとして実
現する。
[マルチメディア通信活用論、マルチメディア通信活用研究]
ネットワーク時代における知識と情報の共有基盤として重要な役割を持つ
ディジタルライブラリに関心を持つ。その中でも、特にメタデータに関して
関心を持ち、XML 等の WWW の基盤技術を利用したメタデータのためのシス
テムの構成方式や、ディジタルライブラリやインターネット上でのメタデー
タ応用システムの研究を進めている。
[コンテンツ流通基盤技術論、コンテンツ流通基盤技術研究]
ディジタル図書館に関する研究を行っている。具体的には、メタデータの相
互利用性や長期保存性を高めることを目的とした メタデータスキーマレジス
トリの研究や、メタデータスキーマに基づく 応用ソフトウェアの構築支援環
境の開発を行っている。
[メタデータ技術論]
24
西 岡
貞 一
(メディア論,
コンテンツ制作)
波多野 和彦*
(教育工学,教師
教育)
平
賀
譲
(認知科学,人工知
能,音楽情報科学)
真榮城
哲也
(知識の構造およ
び操作,計算生
物学)
水 落
憲 和
(応用物理,量子
コンピュータ)
森 嶋
厚 行
(データ工学,
データベース)
森田
ひろみ
(実験心理学,認
知心理学)
デジタル技術を応用してゲーム、携帯電話に続く新しいデジタルコンテンツ
の研究に取り組んでいる。実際のコンテンツ制作を通じてバーチャルリアリ
ティ、ウェラブルコンピュータ、ユビキタスコンピュータ等の作り方や楽し
み方について開発を進めている。
[コンテンツ形成手法論、コンテンツ形成手法研究]
メディアや情報通信ネットワークを利活用する教育の効果や学習の質保証に
関わる研究を行う。教授・学習過程を支援する情報通信技術の活用や人材の
育成に関わる研究を行う。
[マルチメディア教育応用論、マルチメディア教育応用研究]
人間が音楽を聴き、楽しむ背景には、膨大で複雑な情報処理過程が存在して
いる。そのような認知過程、特に高次の構造認識的な面を、コンピュータ上
の認知モデル構築を通じて理解・解明することが主要なテーマであり、また
音楽情報検索への応用なども取り上げる。ゲーム ・ パズルの解決過程など、
他の認知過程のモデル化にも関心がある。
[音楽・音響情報構造化論、情報認知研究]
知識の構造の解析と表現方法、利用者の専門レベルに適応させる情報提示の
方法、そして遺伝子や蛋白質等の生体分子の複雑な相互作用の解析、予測お
よび高速シミュレーション手法、および身体レベルの現象との関連について
の研究を行っている。
[科学技術コンテンツ構造化論、情報メディア開発特別研究]
コンテンツの伝送・記録・表示を担う技術の発展を目的として、電子スピン
共鳴法等の分光法を用いた半導体材料研究に取り組んでいる。また、近年、
量子論に基づく新たな情報の通信・記録・処理法の創出が期待されているが、
これに応えるべく、光やスピンによる新たな情報技術開発を目指している。
[コンテンツ表示媒体論]
高度計算機ネットワーク環境やユビキタスコンピューティング環境の出現な
どによる近年の計算機利用パラダイムの変化に対応して、これからの社会に
必要とされる高度なディジタルコンテンツ管理、検索、統合、変換等を実現
するための先端ソフトウエア技術の研究開発を行っている。主にデータベー
ス関連技術や XML 等の WWW 関連技術などを用いたアプローチを行う。
[コンテンツ共有基盤技術論、情報メディア開発特別研究]
心理学実験手法を用いて人間の視覚情報処理過程に関する基礎研究を行って
いる。具体的な研究対象は、視覚的特徴の統合過程、形態情報の脳内表現、
視覚的注意や視覚的作業記憶の特性などである。またその手法と知識を基に、
文章の読みやホームページの閲覧等の認知過程の研究も行っている。
[知覚・感性心理論]
25
研究紹介
言語コンテンツの理解・構築・検索:藤井研究室
人間の主要なコミュニケーション手段である「言葉」を中心とした情報学や計算機科学の研究を行ってい
ます。「人間が言葉を自在に操る仕組み」を科学的に解明し、当成果に基づいて計算機による言語理解を目
的としています。これが実現すれば、高度情報化社会に氾濫するテキストや音声などの言語コンテンツを自動
的に解析し、利用者が必要としている情報を効率よく提供することが可能になります。また、良質の言語コ
ンテンツを自動的に構築することが可能になります。具体的には、以下に示す領域について研究を行ってい
ます。
自然言語処理
◆ 機械翻訳:日英中韓蒙を対象に、ある言語で書かれたテキストを別の言語に翻訳します
◆ 自動要約:要点を落とさずにテキストの内容を簡潔にまとめます
◆ マイニング:評判やレビューなどのテキスト集合から世論や動向を分析します
情報検索
◆ 検索モデル:大量で多様な文書(Web、特許、論文、新聞、小説)を対象に検索します
◆ 多言語検索:外国語情報の検索と閲覧を支援します
◆ 質問応答:質問文に対して具体的な回答を提供するヘルプデスク型の検索を行います
音声言語処理
◆ 音声認識:人間が発話した内容をテキストに転記します
◆ 音声分割:連続した音声データを内容ごとに分割して、内容解析や検索を支援します
◆ 音声コマンド:音声発話によってシステムに指示を出します
複合研究・応用研究
◆ 百科事典の構築:Web 上のテキストや画像から事典的なコンテンツを構築します(*)
◆ オンデマンド講演システム:講演ビデオから聞きたい内容や見たいシーンを検索します
◆ ネーミングの自動化:商品や組織の特徴を表す名前を自動的に生成します
(*)事典検索サイト Cyclone
言葉や事柄の説明に関するテキスト
や画像をWebから自動収集して、調
べ物を支援する検索サイトです
http://cyclone.slis.tsukuba.ac.jp/
外部資金による研究プロジェクトの実績
・IPA「未踏ソフトウェア創造事業」
・NEDO「産業技術研究助成研究」
・科研費「ITの深化の基盤を拓く情報学研究」
・JST CREST「高度メディア社会の生活情報技術」
もっと知りたい方へ
http://www.slis.tsukuba.ac.jp/~fujii/
26
ディジタルアーカイブ研究
−資料研究者とシステム研究者のコラボレーション−
松本(浩)、綿抜、宇陀、松村、時井、松本(紳)グループ
貴重な古典資料等をディジタルアーカイブ化し保存・公開することにより、従来、利用が制限されてい
た資料もより広くそして効率よく活用できるようになる。このようなディジタルアーカイブは近年多くの図
書館、文書館、資料館で公開されているが、われわれは単に資料を電子化するだけでなく、これらの資料を
利用する研究者の立場に立ったアーカイブシステムの構築を目指す。すなわち、電子化された資料をどのよ
うに組織化し、どのような形式で提供すればより有用なのかを資料研究者とシステム研究者とのコラボレー
ションによって実現する。
道法會元における護符分析支援システム
道法會元は道教における呪術
や護符等を解説した書物であり、
道教研究における基本資料であ
る。その中には約4,000種類の護
符があり、それぞれ細かいパー
ツから構成されている。
道教研究においては、この護符
の分析は重要課題のひとつであ
るが、これを人手で分析するこ
と は 困 難 で あ っ る 。 そ こ で、
護符名分析支援機能とパーツ分
析支援機能を有する護符分析支
援システムを構築し、道教研究者
とともに支援機能の有効性の検
証を行っている。
源氏物語錦絵のディジタル化と分析支援システム
本学が所有している歌川豊国による源氏物語
錦絵をディジタルアーカイブ化した。この源氏
物語錦絵は欠落がなくすべて揃っていること
や、源氏物語絵としてはスタンダードな物であ
ることなどから研究利用に対する需要や価値は
大きいと思われる。
そこで、錦絵すべてを画像データとして取り
込み、それぞれの画像中の部分領域に対して研
究者ごとにアノテーション(注釈)を付加でき
る機能や、顔、文様の比較などができるような
機能を持つシステムを構築している。
27
利用者と設計者の視点の違いを吸収可能な資源共有化システム
宇陀,松村グループ
研究概要∼ダブルプロファイル方式のシステム設計∼
本研究グループは、国文学研
究資料館、国立民族学博物館、
国立歴史民俗博物館などの機関
と、文化科学に関する情報資源
の共有化に関する共同研究を進
めている。ここでの共同研究で
は、これまでに異種データベー
スの横断検索を実現したが、利
用者ごとのシステムの使い方は
考慮されてこなかった。
そこで本研究では、システム
側のデータ設計と利用者側のア
クセスインタフェースを分離し、
それぞれを最適化した2つのプ
ロファイルを作成した後に両者
を結びつける「ダブルプロファ
イル方式」のシステム設計を行
う。これにより、資源に対する
利用者とシステム設計者の視点
の違いを吸収することを目指し
ている。
これまでの成果∼利用者行動分析によるユーザプロファイルの導出∼
ダブルプロファイル方式のシステム設計の第1段階として、利用者のシステムに対する要求を調査によっ
て明らかにし、ユーザプロファイルとして導出することを試みた。これまで、研究者や図書館員など計8名
を対象に調査を実施した。各調査は以下の2つの検索実験とインタビューからなる。
1. 検索課題や検索システムなどの条件を等しくし、発話思考法を用いた定型実験
2. 日頃使っているシステムを用いて利用者の検索システムへの考えを自由に回答してもらう非定型実験
調査の結果、まず定型実験の分析から利用者の詳しい探索行動を抽出した。特に、検索項目の使い方の違
いから、簡易検索、詳細検索、組み合わせ検索の3つの探索パターンで利用者を分類できることを明らかに
した。そこで、これらのパターンに対応する3種類の検索項目集合をユーザプロファイルとして導出した。
一方で、コンピュータの使用頻度や検索項目に対する理解度など6つの個人差要因によって利用者の特徴
付けを行い、その多様性を明らかにした。また、非定型実験からは個々の利用者を特徴付ける多数の興味深
い意見が得られた。
今後の展開
今後は調査結果の分析を進め、探索パターンと個人差要因の関係を明らかにするとともに、非定型実験で
得られた個々の利用者の考えをユーザプロファイルに反映させる方策を検討する。さらに、システム側の最
適なデータ設計をシステムプロファイルとして作成し、ユーザプロファイルと結びつけることによって、シ
ステム設計者と個々の利用者の視点の違いを吸収できる資源共有化システムを構築する。
29
音声・音響、視覚、ロボティクスに基づく知的システムの研究
田中、三河グループ
◆概要
人間は複雑な環境下でも、五感を巧みに使いながら様々な行動を実行します。とりわけ、聴覚と視覚に依
るところが大きいと言われています。本研究室では、実環境下で柔軟にふるまえる知的システムの構築を目
指し、音声言語・音響メディア処理に関する研究と、視覚情報処理とそれに基づくロボット制御に関する研
究を行っています。
◆ディジタル信号処理技術を用いた音声強調、雑音低減、音場制御、環境音・楽器音分析の研究
人間は雑音が多い場所でも音声を「聞き分ける」ことができます
が、音声認識システムにとって雑音は大敵です。コンピュータによ
る音声処理には、雑音を低減する技術が大変重要です。また、周囲
の環境音を雑音として扱わず、音の
発生源が何かを識別することも有用
です。ここでは、複数のマイクロホ
ンを用いて雑音を低減したり、音場
を制御したりする手法の開発、モノ
ラルで収録された音響信号波形から
雑音を分離したり、環境音や楽器音
を認識したりする手法の開発を進め
ています。
マイクロホンアレイ
+18
聴取領域
0
無音領域
−18
[d B]
音場制御による空間の音圧分布
◆筋電位信号を利用したヒューマン-マシンインタフェイスの研究
脳からの運動指令が筋肉に伝えられ筋肉が収縮する際、
筋肉上に電気的な信号 ( 筋電位信号 ) が発生します。本
研究では、皮膚表面から計測した筋電位信号を利用して、
ロボットハンドや義手などの複数の関節を自在に操作で
きるインタフェイスを研究開発しています。
ロボットハンド (CG)
筋電位信号
計測装置
ロボットハンド
( 実機 )
◆人間の睡眠覚醒機能に基づく並列知覚情報処理システムの研究
柔軟な知覚情報処理系を有するロボットを構築するために、
人間の意識状態、特に睡眠 / 覚醒状態を数理モデルとして表
現する研究を進めています。本数理モデルを利用することに
より、覚醒時には外部 ( 視覚や聴覚 ) 情報を主に処理し、睡眠
時には内部 ( 蓄積 ) 情報を主に処理したり、処理を休止した
りすることができる動的な情報処理系の構築が可能となりま
す。その結果、限られた計算機資源を有効に利用できるよう
になります。
◆その他の研究テーマ
上記の他に、次のような研究テーマも実施しています。詳しくはホームページをご覧下さい。
・音声発生過程のモデル化に基づく音声分析と合成の研究
・ユニバーサル音声符号系を用いた音声の認識・検索の研究
田中研究室 : http://www.slis.tsukuba.ac.jp/~ktanaka/
三河研究室 : http://www.slis.tsukuba.ac.jp/~mikawa/
30
オペレータ
協調活動のための情報メディアシステム:井上研究室
高度情報基盤の上に豊かな人間生活を実現するためには、人間の基本的な活動である協調活動の支援が不可
欠です。このために、人間と人間あるいは人間と機械のインタラクションについて研究しています。よりよい
コラボレーション、コミュニケーションを実現するために、先進的な情報メディアや情報システムの設計と開
発を行い、また、それらを教育・学習など実際の場面へ応用するという形で研究を進めています。
臨場感のある分散会議システムの研究
複数の人間による協調活動の一つに会議があります。
人さえ集まればよく、簡単そうに思えますが、人間は
実に複雑なコミュニケーションをしているので、会議
メンバーが遠く離れていると、自然に会議を行うこと
は簡単ではありません。そこで、われわれの研究室で
はこれまでに、マルチメディア情報をどのように会議
メンバーに提示すべきかという問題に取り組み、新し
いビデオ会議システムの設計や、映像の演出手法につ
いて研究、提案をしてきました。さらに、拡張現実感、
複合現実感といった最新のメディア技術も利用して、
相手を活き活きと感じられる、臨場感のある分散会議
システムを開発しています。
体感を重視したテーブル型協調学習システムの研究
最近では学習教材がディジタルコンテンツということもよくありますが、学習教材はインターネットだけに
あるわけではありません。むしろ、学習者自身の身の回りに目を向けることが重要で、野外学習や体験学習が
盛んです。野外学習や体験学習を効果的なものにするには、その前後にも学習活動がなされます。たとえば、
野外で何かを採集したり観察スケッチを描いたりした後に、それらコンテンツを使って話し合いをしたりす
ることが重要です。
本研究ではこのような状況を想定しています。複数の学習者が、実物体とインターネット上の情報を含む電
子的情報の両方を利用することができ、テーブルの上でそれらを容易に操作できる協調学習システムを、慶應
義塾大学との共同研究により開発しています。
31
ユビキタス情報通信プラットフォーム:川原崎研究室
■ 概要
ユビキタスサービスの基本となる、コンピュータが人間の置かれた状況を認識するコンテキストアウェア
ネス技術や、状況に応じてサービスを変化させるアダプテーション方式について研究しています。一方、状
況を表す位置情報や嗜好情報は極めてプライベートな情報なので、ネットワーク的な開示・利用をユーザ自
身がコントロールできる仕組みについて研究しています。その他、P2Pネットワークにおける情報検索・取
得の効率化方式、医療情報のセキュアな横断検索方式についても研究を進めています。
■ セマンティックWebの概念を用いたコンテキストアウェアネスの研究
ユーザが置かれた状況を表すコンテキスト情報には、端末環境・ネットワーク環境・ユーザ特性・周囲環
境などがあり、IETFのプレゼンス情報記述など既に複数の国際機関がコンテキストを記述するメタデータ
を規定しています。しかし、それぞれ異なる目的や形式で規定されているため相互利用することができませ
ん。そこで、各種コンテキストメタデータの意味的な関係を記述し、それらを相互運用可能にする方法とア
プリケーションインタフェース(API)を研究しています。既にコンテキストを意味的に解釈・推論するコ
ンテキストインタプリタを試作し、コンテンツアダプテーションへの適用可能性を検討しています。
コンテキストインタプリタの仕組み
コンテンツアダプテーションサービスへの応用
■ 自己情報コントロールを実現する位置情報管理プラットフォームの研究
GPSを搭載した携帯電話が普及し、位置情報を利用したさま
ざまなサービスが提供されています。しかし、事業者に閉じて
運用されているため利便性には限界があります。そこで、位置
情報の共同利用を可能にし、提供者のポリシーに基いて開示制
御ができるプラットフォームを開発しています。特徴は、①位
置情報提供者の現在の状況と、開示する相手に応じて開示粒度
を動的に制御できる、②アクセス履歴を参照できる、③不審な
アクセスにはインフォームド・コンセントを行える、④位置情報
を暗号化し、暗号化したままで粒度変更ができる等です。携帯
電話に機能を実装し、実験システムを構築しています。
■ P2Pにおける情報検索・情報配信の効率化に関する研究
インターネット上にP2Pトラヒックが急増していますが、分散方式による情報の検索・取得は効率が悪
く、膨大な無効トラヒックを発生させています。そこで、情報検索に属性ベースの名前と名前解決機構を導
入し、名前解決に配信属性を反映させることにより、利用者には属性による検索と早い応答を、ネットワー
クには無効トラヒックの軽減によるリソースの有効利用を図る方式を研究しています。
32
計算物理システム:松本(紳)、時井グループ
磁性体、スピントロニクス物性
主にハードディスクや光磁気ディスクなどの磁性体の基礎物性を理論的に研究しています。また次世代メ
モリとして有用なスピントロニクス関係の物性研究も行います。
バンド計算システム
物性理論研究の有用な方法の一つにバンド計算と呼ばれる物があります。数万ステップにおよぶ計算プロ
グラムの改良や、新たなアルゴリズムの創出などの研究も行っています。
フェルミ面の理論的研究
金属の物性を特徴づける量にフェルミ面があります。物質ごとに大きく違っていることや実験的に観測さ
れることなどから、理論研究との比較に有用です。(磁気)コンプトン散乱実験や陽電子消滅角相関実験な
どと理論結果の比較を通してフェルミ面に関する研究をしています。
サイエンティフィックビジュアライゼーション
理論計算で得られた結果を可視化することにより、その解釈を容易にします。そのためのグラフィックス
処理のためのシステムなども研究の対象としています。
(a)
(b)
記憶合金TiNiの (a) 第7バンドによるフェルミ面
(b) 第8バンドによるフェルミ面
TiNiの3次元運動量密度(LCW図)と
フェルミ面の断面図
Ti Niのバンド構造
自由電子とAlのエネルギー依存の
コンプトン・プロフィール(理論)
33
半導体テクノロジーを支える評価研究とコミュニティ活動
磯谷、梅田、水落グループ
情報通信機器の中を見てみると、たくさんの「黒い石」が整然と並べられているのが見えると思います。
それらが「半導体デバイス」と呼ばれる情報通信機器の機能を担う基幹部品です。私達は、半導体の内部を
詳しく調べることで、半導体デバイスの性能をさらに引き出したり、劣化や故障の原因を解明したりしてい
ます。また、新しい半導体の開発を行ったり、半導体テクノロジーを支えるための学術コミュニティ活動も
展開しています。
【電子スピン共鳴分光(EPR)技術】私達が世界的な競争力をもつ実験技術で、半導体の内部を原子レベ
ルで調べることができます。当研究室には最新の測定器があり、それらをベースにさらに最先端の測定技術
の開発を行っています。
【シリコンの研究】シリコンは集積回路(IC)や大規模集積回路(LSI)を製造するための半導体です。わ
れわれは日本電気株式会社、エルピーダメモリ株式会社などと共同で、主に高速かつ低消費電力の次世代大
容量RAMの研究を行っています。また、「量子コンピュータ」と呼ばれる全く新しいコンピュータ技術の
基礎研究も行っています。
【ダイヤモンドの研究】つくば市は世界の半導体ダイヤモンド研究の中心地で、市内にある物質・材料研
究機構や産業技術総合研究所と連携して、半導体ダイヤモンドの実用化に向けた研究を行っています。半導
体ダイヤモンドは強力な紫外発光が可能で、光ディスクの超大容量化や高輝度ディスプレイなどへの応用が
期待されています。
【シリコンカーバイドの研究】シリコンカーバイド(SiC)は高出力・高速動作に適した半導体で、無線通
信、レーダー、エネルギーなどの分野で注目を集めています。日本原子力開発機構や国内外の大学と協力し
て、実用化への評価研究を展開しています。
【コミュニティ活動】半導体テクノロジーの学術コミュニティに向けて、インターネットとデータベースを
駆使したコミュニティ活動を展開しています。
累積度数︵%︶
シリコンの研究
ダイナミック RAM のデータ
保持時間の大幅延長に成功
(エルピーダメモリ・日本電
気・筑波大学):
IEDM (International Electron
Device Meeting) 2006 など .
データ保持時間(任意単位)
コミュニティ活動 半導体結晶欠陥に
関する2つのデータベースシステム :
http://www.kc.tsukuba.ac.jp/div-media/
ダイヤモンドの研究 【左】ダイヤモンドの n 型ドーピングに
成功した試料の EPR(NIMS1 信号): Appl. Phys. Lett. 85, 6365
(2004) など .【右】化学気相合成ダイヤモンドの高品質化に成功 :
Appl. Phys. Lett. 88, 091912 (2006) など .
シリコンカーバイドの研究 結晶中の炭素 AV 対の EPR
(SI5 信号): Phys. Rev. Lett. 96, 145501 (2006) など .
34
寄附講座プロジェクト研究
公共図書館の制度的枠組みと基盤機能の研究:
先導的経営モデルの設定を目指して
永田治樹、吉田右子、小山永樹、村井麻衣子、ロビーナ・カレン
現在、社会経済の発展によって生じた種々の課題に対応できる新たな公共経営が模索されている。情報提
供や学習活動支援などによって、これまで公共財として位置づけられてきた公共図書館も、情報化の急速な進
展やコミュニティ・ニーズの変化、そして自治体財政の逼迫といった状況に適合した展開が求められている。
本研究プロジェクトは、公共図書館が拠って立つ法制度、財政・会計制度などの枠組みと果たすべき基盤
機能を総合的に把握し、このような問題状況を克服できる公共図書館の先導的なモデルを構築しようとする
ものである。とくにNPM(新しい公共経営)の展開や、コミュニティで図書館を支える非営利組織(NPO)
の活動、図書館が提供する知的財産のあり方、コミュニティ統治の情報面での展開(電子政府)などに注目
する。
具体的な研究は、社会的財政的枠組みや基盤機能把握にかかる研究調査の部分と、各メンバーの個別研究
部分とで展開される。
平成18年度は、プロジェクトとして次の研究を実施している。
1.訪問調査:
①PFI調査:英国における4図書館(ボーンマス図書館、ブライトン・ジュベリー図書館、ハックニー
図書館・技術学習センター、オーダム図書館・生涯学習センター)と日本の2図書館(桑名市立図
書館、稲城市立図書館)を対象に、これらの図書館がどのような枠組みで資金を調達し、いかなる
パートナーシップで図書館は運営されているかなどの観点から調査
②ボランティア活動:デンマークにおける2図書館調査(リュンビュ図書館、ヘルシンガー図書館)
を対象に、多文化サービスに関わる市民のボランティア活動について調査
2.連続研究会の開催:外部の講師を招いた公開研究会
①公共図書館における行政コスト、②公貸権と著作権制度、③図書館と市民の協働、④電子政府と公
共図書館
3.調査紙調査:日本における公立図書館の経営形態に関する全自治体悉皆調査(直営・指定管理者・
PFIの経営実態と今後の趨勢の把握)
(左:ブライトン・ジュベリー図書館の内部、右:ハックニー図書館・技術学習センター)
36
寄附講座プロジェクト研究
地域の協働ネットワークを基盤とする公共図書館サービスモデルの構築に関する研究:
地域を支える情報拠点として
薬袋秀樹、濱田幸夫、平久江祐司、大庭一郎、西岡貞一、鈴木佳苗、宇陀則彦、阪口哲男
社会の変化と公共図書館改革の必要性
社会の急激な変化に伴い、地域社会と人々の生活は様々な課題に直面し、公共図書館に対しても、サービ
スに対する要求の高度化や多様化とともに、課題解決への支援が求められている。公共図書館は、情報サー
ビス、IT技術の活用、地域支援活動等に取り組んできたが、地域の格差が大きく、一層の取組が求められて
いる。他方、行財政改革の観点から、効率的な経営とニーズへの的確な対応が求められている。海外では、
中国、韓国、シンガポール等のアジア各国で、大規模公共図書館の建設、国レベルの図書館政策の確立、高
度なIT技術の活用等が急速に行われており、日本の公共図書館の立ち遅れが顕在化している。
『これからの図書館像』(これからの図書館の在り方検討協力者会議)
文部科学省生涯学習政策局に設けられた「これからの図書館の在り方検討協力者会議」は、各地の公共図書
館における改革の取組をもとに、2006年3月『これからの図書館像−地域を支える情報拠点をめざして(報
告)−』を発表した(http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/18/04/06040513.htm)。この報告書は、これから
の公共図書館の在り方を包括的に論じているが、図書館サービスの理論的裏づけやサービス改善のための具
体的な方策は必ずしも十分ではないため、これらの点について研究を進める必要がある。
公共図書館のサービスモデル構築のための実証的研究
この研究では、上記報告書と問題意識を共有し、公共図書館を「地域が、経済・社会・文化の発展をめざ
して問題解決を図るために、知識と情報を共有する情報拠点」と位置づける。3年計画(2006‐2008)の1年目
として、多様な組織との連携・協力による協働ネットワークを基盤とする新たなサービスモデルを構築する
ための実証的研究を行う。これは次の4つの個別研究によって展開する。
(1)新しい図書館サービスモデルの普及と実現プロセスに関する実証的研究:文部科学省の図書館施策
の実現可能性と普及状況を調査し、各図書館での実現プロセスを明らかにする。
(2)新しい図書館サービスの実現を支援する図書館活動の指標のあり方に関する研究:新しいニーズへ
の対応とサービス向上に対する各図書館の取組を簡便に評価できる指標を提案する。
(3)地方教育行政における公共図書館と学校の連携・協力の在り方に関する研究:子どもの読書活動を支
援するための公共図書館と学校図書館の連携・協力を推進する新しい施策の枠組みを提案する。
子どもたちを対象とした新しい図書館サービスの実践に関する研究:子どものためのワークショッ
プ(仲間と一緒の創作を通して創造性やコミュニケーション能力を引き出す活動)を研究する。
(4)電子的情報資源の公共的利用の仕組みと技術的展開に関する研究:電子的情報資源を公共的に利用
するための情報資源の組織化と図書館ポータルの構成方法の両面について研究する。
37
研究科プロジェクト研究
創造的人材育成のためのワークショップ型教育プログラムの開発
西岡貞一、鈴木佳苗
イノベーション創出に貢献する創造的人材育成を目指し、平成17年度から創造性育成ワークショップの研
究と実践を行なっている。本プロジェクトでは「考える」、「作る」、「つながる」、「発表する」、「ふ
りかえる」というワークショップの学びのプロセスを活用した創造性育成モデルの確立を目指している。
ワークショップを支えるファシリテーターの体験が学生のコミュニケーション能力やマネージメント能力を
高める効果があることに着目し、大学カリキュラムへの導入を目指した実証実験を進めている。
ワークショップはその参加体験性と楽しさから図書館、ミュージアム等社会教育施設の新しい教育サービ
スとして注目されている。しかしファシリテーション能力を有する人材の不足と制度の制約から一過性の取
り組みも多く、普及にはいたっていない。本プロジェクトでは社会教育施設のワークショップ継続的開催体
制の構築支援を目指している。ワークショップの共催を通じたファシリテーターの育成や企画ノウハウの提
供を行う一方、行政への働きかけや地域の科学館、美術館との連絡会の組織化を進めている。
本プロジェクトにはデジタルコンテンツ、子ども、図書館、プロデュース等をキーワードに教員と学生有
志が研究分野を超えて横断的に参加している。
牛久市立中央図書館での「デジかみしばいワークショップ」
子どもの創造性育成、図書館サービス領域拡大を目的に牛久市立中央図書館と共同で昨年度に引き続き
ワークショップを開催した。デジカメを使って自分で作ったストーリに合せて紙芝居を制作。子どもたち自
身が声優となり紙芝居を友達に紹介した。物語づくりや、ナレーションを体験する中で伝えることの楽しさ
難しさを学んだ。(協力:
(株)CSKホールディングス社会貢献推進室CAMP)
つくばエキスポセンターでの「つくばのこどもワークショップ」
松ぼっくり、色紙、ビーズ、レゴなど身の回りの素材を使った造形、マイコンやセンサーを使った工作、
子供達のアイデアを組み合わせ「動くオブジェ、動くおもちゃ」作りを体験した。(協力:
(株)CSKホール
ディングス社会貢献推進室CAMP、
(株)文化総合研究所)
大学近隣の社会教育施設と連携し、つくば市民のための創造性育成、メディアリテラシー教育を支援する
連絡会を組織した。
福島市こどものための夢をはぐくむ施設 こむこむ館での「映画制作ワークショップ」
平成18年夏東京都BumB東京スポーツ文化館で開催された映画ワークショップにボランティア参加。19年
春、福島の22名の中学生とともに脚本、監督、俳優、撮影を全員が体験する映像ワークショップを開催。
映像制作を通じ創造力、表現力を養う。仲間と共に協力し、知恵を出し合い、想像力を使い、子どもたち
の手によって映画をつくりあげた。ひとつの大きなプロジェクトを進める過程で子どもたちは多くの事を体
験し、学ぶことができた。
継続的開催体制確立に向け、つくば市行政機関と平成19年秋のワークショップ開催の検討を開始した。
(本事業の一部は平成18年度筑波大学社会貢献プロジェクトの支援により実施した)
牛久市立中央図書館での
「デジかみしばいワークショップ」
つくばエキスポセンターでの
「つくばのこどもワークショップ」
38
Bum B 東京スポーツ文化館での
「映画ワークショップ」
研究科プロジェクト研究
ベトナムにおける図書館支援を通じた読書環境改善モデルの開発・検証
黒古一夫、平久江祐司
研究の背景と目的
本研究プロジェクトは、ベトナムの児童・青少年の読書活動を効果的に支援するための図書館職員研修
用プログラムと研修用コンテンツの開発・実施・検証を行うことを目的とする。また、こうした実証的な研
究を通して、海外への図書館支援を持続的に行うための日本国内の拠点の在り方についても検証する。本研
究プロジェクトが研究対象地域をベトナムに設定したのは、本研究科とベトナム国立図書館との「学術交流
協定」の締結(2003)、ベトナム国立図書館国際部長の招聘(2004)、ベトナム国立図書館への「日本語図
書」800点の寄贈(2005)などの長年にわたる協力・信頼関係の構築によるところが大きい。その直接的な
契機は、ベトナム国立図書館館長Pham The Khang氏の本研究科の図書館支援に対する大きな期待にあった。
そこで、初年度はベトナム図書館の現地調査をベトナム国立図書館の協力を得て実施した。この現地調査の
目的は、これまで情報が乏しかったベトナムの公共図書館と学校図書館の現状と課題を明らかにすることに
あった。
研究の成果
ベトナムの現地調査は、2007年1月9日(火)∼1月13日(土)に実施した。調査対象は以下の地域と機関
である。調査方法は、主に図書館職員へのインタビュー調査と関連資料の収集と分析である。
<調査地・機関>
・初 日:ハノイ市ハディン区図書館、ハノイ市ホアンジェウ小学校図書室・チャンクオックトアン中学
校図書室・ヴィエットドック高等学校図書室
・2日目:ハイズオン市図書館、ハイズオン省タンミエン県図書館、ザロック県ザロック高等学校図書室・
タンビン小学校、ビンザン県ニャンクエン社(村)図書室
・3日目:ハタイ省図書館、ハドン市グエンチャイ中学校図書室・グエンフェ高等学校図書室、ツオンミ
県図書室・チョックソン社(村)図書室、ベトナム国立図書館
これらの調査結果から、ベトナムの公立図書館や学校図書館の施設・設備は依然として貧弱な状況にあ
るが、近年かなりの市立、省立図書館で改築、新築が行われており、施設・整備の充実が積極的に図られ
てきていること、また2007年度中には、国立、市立、省立図書館の分類法をソビエト連邦時代の分類法から
デューイ十進分類法(DDC)への変更が予定されており、ベトナム図書館界は大きな転換期を迎えているこ
となどが明らかになった。
また、ベトナム国立図書館の訪問調査の際には、国立図書館館長と本研究プロジェクト代表の間で、ベト
ナム図書館員の職員研修(FD)プログラムの開発のために今後とも連携・協力していくことが正式に確認
された。ベトナムの図書館界においては、図書館職員のスキルアップは喫緊の課題と強く認識されており、
本研究プロジェクトを通じたベトナム図書館への支援は重要な意味を持つといえよう。
ベトナム国立図書館
ハイズオン市図書館
39
タンビン小学校
修了まで
複数研究指導教員体制
修士(図書館情報学・情報学・学術のいずれか)
前期課程は入学後の早い時期に、後期課程は入
の学位取得には、中間発表を含む必要な研究指導
学試験を受ける前に、研究指導教員を決定します。
を受けたうえで修士論文を提出し、論文審査及び
大学院生は 4 つの教育研究分野のうち研究指導教
最終試験に合格することが必要です。学位論文審
員と同じ分野に所属することになります。前期課
査委員会は研究指導教員・副研究指導教員を含む
程では 1 名の副研究指導教員、後期課程では2名
3 名の教員からなり、多面的な審査を行います。
の副研究指導教員(同じ分野と異なる分野の教員
修士論文の最終発表では、論文の内容とともにプ
各 1 名)を加えた複数研究指導教員体制をとるこ
レゼンテーション能力も問われます。
とにより、総合的な視点や多面的な視点からの研
博士後期課程
究指導を展開しています。
課程修了に必要な単位数は講義科目 4 単位(2
博士前期課程
科目)、実験科目 6 単位(4 科目)の計 10 単位です。
課程修了に必要な単位数は講義科目 24 単位(12
実験科目は、研究指導教員の特別実験以外に、2
科目)、実験・演習科目 6 単位(3 科目)の計 30
名の副研究指導教員の総合特別実験を履修するこ
単位です。講義科目はこれから深化させる専門領
とにより、実質的に副研究指導教員の指導を受け
域に応じて、4 つの教育研究分野の講義科目から
られるようにしています。
広い範囲にわたって多様な選択が可能です。本研
また、研究指導教員が教育に有益と認めた場合、
究科の教育に有益と認められた場合、本研究科入
図書館経営管理コースの科目も履修できます。
学前に修得した単位や、入学後に他研究科で修得
した単位について、10 単位を限度として修了要件
科目
単位
に認められる場合があります。実験・演習は所属
講義
する研究分野以外のものも含めて、2 年間にわたっ
て履修します。
特別
実験 A
また、図書館経営管理コースの科目も履修でき
ます。
科目 単位
講義
実験・
演習Ⅰ
24
履修方法
1・2 年次:12 科目以上で教育研
究分野を問わない(3/4 ぐらいは
所属する教育研究分野から履修
する事が望ましい)
4
1.5
履修方法
2科目以上で、そのうち所属する
教育研究分野の科目を1科目以上
1年次:研究指導教員
総合特
1.5
別実験Ⅰ
2年次:所属する教育研究分野の
副研究指導教員
総合特
1.5
別実験Ⅱ
2年次:所属する教育研究分野以
外の副研究指導教員
特別
実験 B
1.5
3年次:研究指導教員
2
1 年次:所属する教育研究分野
実験・
演習Ⅱ
2
1 年次:
所属する教育研究分野以外
の学位取得には、必要な研究指導を受けたうえで
実験・
演習Ⅲ
2
2 年次:所属する教育研究分野
することが必要です。学位論文審査委員会は研究
博士(図書館情報学・情報学・学術のいずれか)
博士論文を提出し、論文審査及び最終試験に合格
指導教員、1 名以上の副研究指導教員、1 名以上の
40
他研究科または学外の有識者を含む 5 名からなり、
連携大学院
多面的な審査を行います。また、博士論文の発表
連携大学院の教員を研究指導教員として選択し、
会は、学外者も含めて公開で実施されます。
連携研究機関で主たる研究指導を受けることもで
きます。連携先には、メディア教育開発センター
授業と単位
(千葉市)、NTT アクセスサービスシステム研究所
本学は 3 学期制を採用しており、4 − 6 月が 1
(つくば市)、凸版印刷株式会社(文京区)、株式会
学期、9 − 11 月が 2 学期、12 − 3 月が 3 学期です。
社電通(港区)、理化学研究所(和光市・つくば市)
授業の 1 コマは 75 分で、1 時限目の開始は午前 8
があります。
時 40 分、8 時限目の終了は午後 9 時です。1 コマ
1 学期間で講義、実験・演習は 1 単位、特別実験
中間発表会
は 0.5 単位となります。
前期課程は 2 年次の始め(分野によっては他の
時期にもう一回)
、後期課程では 2 年次の中頃に中
間発表会を行います。中間発表会では、研究目的や
時限 授業時間
1時限
8:40 −
その進捗状況をプレゼンテーションすると同時に、
9:55
関連する教員からの意見を聞き、研究の方向性を確
2時限
10:10 − 11:25
3時限
12:15 − 13:30
4時限
13:45 − 15:00
5時限
15:15 − 16:30
6時限
16:45 − 18:00
7時限
18:20 − 19:35
位論文予備審査委員会は 5 名の教員からなり、論
8時限
19:45 − 21:00
文の構成等を含めた大局的な視点で審査が行われ
認します。これにより研究が円滑に進められ、遅滞
なく学位が取得できるように図っています。
博士論文予備審査
博士論文を提出するには、学位論文予備審査委
員会による審査に合格しなくてはなりません。学
ます。これによって、博士論文を総合的な視点か
ら見直すことができ、その後に行われる学位論文
東京サテライト
の審査が円滑に進むようになります。なお、予備
東京キャンパス(文京区)における夜間開講(午
審査に合格するには、査読付き論文 2 報(うち 1
後 6 時 20 分から午後 9 時までの 7・8 時限)・土
報は予備審査委員会が査読付き論文に相当するも
曜開講(午前 10 時 10 分から午後 6 時までの 2 ∼
のと認めたものに替えられる)が受理されていな
6 時限)・夏休みの集中講義の教室として東京サ
くてはなりません。
テライトが用意されています。東京サテライトと
春日キャンパスでテレビ会議システムを用いた遠
早期修了
隔授業を行うこともあります。東京サテライトで
前期課程、後期課程ともに、特に優秀な成績を
は、春日キャンパスにいるのと同等なネットワー
あげたと認められる者に対しては、在学期間 1 年
クアクセスが可能で、たとえば図書館のオンライ
以上(後期課程にあっては大学院に前期・後期通
ンジャーナルなどにもアクセスできます。
算して 3 年以上在学)で修了できるという制度が
あります。
41
研究環境
免除する制度があり、平成 18 年度においては、前
教育研究分野ごとに大学院生用の研究スペース
期課程で 13% の学生が、後期課程で 8% の学生が
があり、そこには個人用の机、パソコン、プリンタ、
授業料免除を受けています。
コピー機などが設置されています。大学院生には、
奨学金としては、独立行政法人日本学生支援機
夜間・休日の図書館情報学図書館を始めとする建
構の奨学制度が利用できます。平成 18 年度におい
物への入室、コピー機などに使う IC カードを貸与
ては、前期課程で 34% の学生が、後期課程で 15%
します。また、コンピュータアカウントを申請す
の学生が利用しています。この他に、地方公共団体、
れば、メールアドレス、Web ページスペースなど、
民間の育英団体の奨学金事業も多数あります。後
潤沢なコンピュータ資源が利用できます。
期課程の大学院生には日本学術振興会の特別研究
員の道もあります。
学生表彰
修士論文が優秀であった前期課程の学生や、優
れた研究成果をあげた後期課程の学生は、研究科
の学位記授与式において表彰されます。また、そ
の研究成果が学外においても高い評価を得た大学
院生が独立行政法人日本学生支援機構の奨学金を
利用している場合は、奨学金返還免除選考の対象
TAとRA
者となります。
TA(Teaching Assistant)として学群や大学院の
授業の補助を行う機会や、RA(Research Assistant)
として教員との共同研究を行う機会もあります。
平成 18 年度は、図書館情報専門学群の TA として、
前期課程の院生のうち延べ 25 名、後期課程の院生
のうち延べ 4 名が任用されました。RA としては、
後期課程の院生 5 名が任用されました。
修了生の進路
博士前期課程(平成 15 ∼ 17 年度の合計)
その他 26名
進学 36名
現職復帰
15名
学会等の発表支援
図書館 10名
大学院生が学会に出席して発表する際の旅費を
企業 38名
研究科が支援する制度があります。平成 18 年度は
合計 125名
延べ 40 名以上がこの制度を利用して学会発表を行
いました。
博士後期課程(平成 15 ∼ 17 年度の合計)
その他 2名
学費と奨学金
入学時の経費(平成 19 年度)は
企業・公務員
6名
入学料 282,000 円
授業料 535,800 円
現職復帰
11名
です。経済的理由により納付が困難であるが学業
成績の優秀な者には、授業料の全額または半額を
教員 3名
合計 22名
42
研究生活
N.Oさん
- 大学院生の生活 -
博士前期課程 1年
情報メディアマネージメント 分野
22:20
21:00
埼
ンパ
ス
大塚
)
玉
授業
18:10
大学の寮を借りています。埼玉の実家に、週に2日ほど
京)
くば→東
移動(つ
帰ります。東京サテライトの授業を週に3コマくらい受講している
ため、東京−つくばを週に何度か往復しています。
16:30
院生室
ミ
ゼ
や
業 備
授 準
の
つくば
授業
15:00
【授 業】 レポートが多く、発表形式も多いことから、
学部の頃とは違った意味で大変。準備に時間が
大学
かかります。また、人数は2∼15名と様々ですが
起床
授業や
ゼミの
準備
8:00
9:30
院生室
12:10
N.Oさんの一年
学部の授業と比べ少人数の授業が多い。
【バイト】 大学図書館で休日のカウンター業務(月に平均5∼6日)
。
バイトのない日はつくば脱出をもくろむ。
【ごはん】 大学にいれば、学食、もしくはコンビニ等のお弁当、
カップ麺。外食なら、近くのファミレス、駅前など。
【移 動】 自転車です。(雨の日はバス)
※車持ちの人はありがたがられる
K.I さん
睡眠
→
キャ
京
東
(
空き時間に友人や先輩とごはんにいく、たまに買い物へいくこ
ともあります。
動
ほとんどです。それ以外の時間は、図書館へ調べ物にいったり、
N.Oさんの一日
つくば → 実家の一日
24/0:00
就寝
移
大学にいる間は院生室で授業やゼミの準備をする時間が
実家
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
学期末(レポート・試験) 12月
集中講義
夏休み
1月
2月
3月
入学式
博士前期課程 2年
情報メディア開発 分野
21:30
寝
就
先生の指摘部分
を検討、反映
19:00
引っこし
睡眠
寝ないと効率が下が
るため、できるだけ
徹夜は避ける
5:00
起床
実験結果を
論文に反映
実験予想した
結果が出ず
焦る
6:00
先
に
輩
後
る
す 依頼
出
外 飯を
システム実装
夕
結
検
を
果
討
及び実験
15:00
と
生
16:00
【学 会】 論文の投稿前は徹夜が多くなります。初めての
ころと比べ、回数を重ねると徹夜頻度が減ります。
【バイト】 していません。学期によってはTAをやりました。
【休 日】 何もしないでボーっとしていることもあれば、
映画を見たり、東京へ出ることもあります。
平日ダラダラしていると休みも研究活動するはめに。
【ごはん】 学食を使うことが多く、それ以外はコンビニ等の
お弁当、その他安めの外食(500∼600円くらい)
【移 動】 車を持っていないので自転車です。
車を持っている友達に頼むことがあります。 就職活動開始
学期末(レポート・試験)
K.Iさんの一日
論文提出3日前の一日
22:00
研究室で指導教員やゼミ生と過ごすことが多い。
指導教員と過ごす事が多いのは珍しいのですが、こまめに
指導教員とコミュニケーションをとることは大切だと思います。
また、大学院での生活を送るにあたって、入学前に明確な
目標がなくとも、将来のことを考えながら、研究活動をする
ことが重要だと思います。
卒業研究だけではわからない研究のおもしろさがあり、
それを大学院での生活を通して体験することができます。
学期末(レポート・試験)
9:00
10:00
K. I さんの一年
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月 システム実装
論文投稿
12月
投稿論文締切
学会発表①
1月 学位論文提出
最終発表会
研究調査、打ち合わせ 2月
抄録提出
システム実装
3月 学会発表②、修了式
研究調査、打ち合わせ
作成:長屋 俊(博士前期課程 2年)
43
入学試験
一般入学試験は 8 月下旬と 2 月上旬に筑波大学
春日キャンパスにて実施します。博士前期課程に
は、学群・学部におけるA(優)の割合が概ね 70%
以上の学生が受験できる推薦入学制度もあり、7
月に選抜試験を行います。一般入学試験は、一般
選抜、社会人特別選抜、外国人留学生特別選抜の
カテゴリに分かれています。
社会人として 3 年以上経過している(現職の必
要はありません)か、あるいは勤務先からの派遣
により志願する場合(勤務年数を問いません)は
社会人特別選抜に該当します。外国人留学生の場
合は、出願時に申し出ることにより、研究調書等
を英語で記載し、口述試験を英語で受験すること
もできます。
定員は、博士前期課程は推薦入学が 7 名、一般、
社会人、外国人留学生合わせて 30 名です。また博
士後期課程は、一般、社会人、外国人留学生合わ
せて 21 名です。いずれも連携大学院の定員を含み
ます。なお、筑波大学大学院修士課程あるいは博
士前期課程を修了し、引き続き後期課程に進学す
る場合、検定料、入学料は不要です。
なお、学生募集要項は 5 月下旬頃に公表予定で
す。
選抜方法
前期課程の推薦入学試験は、所属長の推薦書の
ほかに研究計画等を提出し、口述試験を受ける必
要があります。
前 期 課 程 の 一 般 入 学 試 験 で は、 提 出 書 類、
TOEIC あ る い は TOEFL の 得 点 を 換 算 し た も の、
口述試験の結果を総合的に判定します。後期課程
の選抜は提出書類と口述試験の結果を総合的に判
定します。口述試験(前期課程は約 30 分、後期課
程は約 60 分)では、研究調書等に基づいた研究計
画や志望理由などについてのプレゼンテーション
(前期課程約 7 分、後期課程約 15 分)を行います。
後期課程の場合は入学願書に希望する研究指導
教員 1 名を明記する必要があります(前期課程の
場合は入学後)
。出願書類の提出は選抜試験のおよ
そ 1 ヶ月前なので、それまでに指導を希望する教員
と連絡を取り、あらかじめ研究テーマなどについて
の相談をすませておくことが必要です。
入試状況
一 般
留学生
社会人
合 計
志願 合格 志願 合格 志願 合格 志願 合格
入学資格
博士前期課程
本研究科は、文系・理系といった区分を越えた
新しい学問領域の開拓を目指しており、学際的で
さまざまな領域の研究が行われています。そのよ
うなことから、前期課程にあっては学群・学部段
階での専門領域、後期課程にあっては修士段階で
の専門領域にこだわらず、多様な領域から幅広く
受け入れます。分野・経歴・年齢・国籍を問わず、
学ぶ意欲・研究意欲の高い人を募集しています。
前期課程にあっては大学を卒業した者と同等以
上の学力、後期課程にあっては修士の学位を有す
る者と同等以上の学力があると認められた場合に
も出願資格が与えられます。この条件で志願する
場合は事前に本研究科による出願資格審査を受け
る必要があります。出願資格審査は書類審査のみ
で、費用は無料です。
2005
2006
*
2007
34
24
6
5
6
5
46
34
12
7
3
2
7
3
22
12
26
22
1
0
2
2
29
24
11
9
3
2
10
9
24
20
51
28
2
1
9
6
62
35
19
10
2
0
6
4
27
14
(* 推薦入試 志願者 9 名 合格者 8 名)
博士後期課程
2005
2006
2007
44
8月
期
2月
期
8月
期
2月
期
8月
期
2月
期
8月
期
2月
期
8月
期
2月
期
8月
期
2月
期
8
8
3
3
8
4
19
15
7
6
2
2
6
4
15
12
6
5
2
2
11
9
19
16
2
1
2
2
6
4
10
7
6
6
2
2
6
6
14
14
6
4
1
1
6
4
13
9
学位論文一覧
(平成 18 年度修了)
博士前期課程
★修士(図書館情報学)
・公共図書館における内部空間の連接に関する研究−多層型空間構成の可能性−
・Popper 理論の情報学への適用に対する批判的検討−反証可能性と客観的知識の関連性に着目して−
・読み聞かせにおける絵本の選択規準について
・闘病記を用いた患者と医療従事者のコミュニケーション分析
・公共図書館における資料提供のための協力に関する研究−相互貸借の方針と実際−
・社会的知識の構築プロセスに関する研究:Wikipedia に対する談話分析を通して
・学校図書館メディア・プログラムにおける偶然創出型学習−ワークショップを通した学習環境の検討−
・命題的意味とモダリティからみるマニュアルテキストの知識構成
・マスメディア効果論の実証的研究−血液型を扱うマスメディアから、人びとが影響を受ける過程に着目して−
・美術館における展覧会の記録
・20 世紀アメリカのライブラリアンそして図書館学者ジェシー・H・シェラ (1903 − 82) について
・公共図書館における視覚障害者への録音図書サービスと著作権問題
・中国におけるフォークロアの著作権保護についての研究
・ポルトガル王立図書館からブラジル帝国図書館への変遷
・大学図書館の品質保証
・公共図書館における問題利用者に関する研究−アメリカにおける図書館裁判を中心に−
・大学図書館の司書職制度確立運動 昭和 25 年 (1950) −昭和 41 年 (1966) における実態と意味
・戦後日本における図書館員養成教育の問題点に関する考察
・小・中学校図書館に対する市町村教育委員会の支援
・イタリアの公共図書館法制に関する研究∼国と地方の比較を通して∼
★修士(情報学)
・数式処理を用いた Gröbner 基底の Euclid 幾何への応用の研究
・計算機による Web ページ移動先探索の実用化に関する研究
・コミュニティのためのドキュメント空間管理システムに関する研究
・研究者支援を目的とした画像データアノテーションシステムの研究−錦絵における源氏物語を対象として−
・オブジェクトにおける三次元動作の関数化とその制御について
・旋律の記憶・歌唱における変形についての研究
・言語系特性の違いから予測する日本人英語発声の韻律に関する研究−音声分析再合成システムを用いた実験的検証−
・小説テキストを対象とした人物情報の抽出と体系化
・筋電位信号を利用した手のリアルタイム動作識別と関節角度推定
・「道法會元」におけるパーツ関連度の可視化
・民俗学論文中の引用資料について−女性と民俗、産育、婚姻、衣食の論文を中心に−
・ソフトウェア機能を対象とした質問応答
・大学公式 Web サイトデザインに関する研究−神戸市外国語大学サイトのリニューアルを事例に−
★修士(学術)
・TiNi のフェルミ面とコンプトン・プロフィール
・中国における村上春樹の受容∼済南・北京の大学生調査を中心にして∼
・「横川景三集」について−詩会の作品を中心に−
45
★博士(情報学)
◆視覚情報処理における大域および局所の優先性と干渉に関する研究
坂本 謡子
視覚対象は複雑な構造を呈しており、部分的な構造(局所)と全体的な構造(大域)を幾重にも同時に合
わせ持っている。そのような対象を前にするとき、視覚はどのようにまとまりのある見え方を作るのであろ
うか。本研究では、2階層の構造をもつ対象の視覚情報処理に影響を与える要因を検討し、Robertson(1996)
が構築した大域・局所処理モデルの改良を試みた。モデルの改良には、基となるモデルの処理過程に、実験
で影響が確認できた要因を配置(マッピング)し、配置
できなかった要因に関しては、配置できるようにモデル
を修正する手法を用いた。この手法を本研究では「マッ
ピング法」と命名した。
本研究で行なった 5 つの実験結果から、従来の大域・
局所処理に影響を与える要因に加え、新たな要因として、
知覚グルーピング、刺激の複雑性、局所刺激間距離、課
題差、刺激差が浮上した。そして、これらの諸要因をマッ
ピングすることによって、Robertson モデルの改良を行っ
た。その結果、Robertson モデルに Attention Controller(注
意調整器)を設け、Parse に空間周波数の選択特性を追加
し、実験結果に合うモデルに改良した。
(研究指導教員 椎名 健)
◆小学校ウェブサイトにおける発信コンテンツの分析とその基本的枠組みに関する実証的研究
ユ カイエン
本研究では、教育現場において重要な役割を担っている小学校ウェブサイトについて、その「発信内容」
(コ
ンテンツ)に焦点を当てて研究を進めた。研究の目的は、小学校のウェブサイト・コンテンツ項目(アイテ
ム)を目的別に体系化して、未来を見据えた小学校ウェブサイトに必要なコンテンツの基本的枠組みを作成
することであった。基本的枠組みとは①多数のアイテム
が目的に応じて構造化されている。②小学校のウェブサ
イト・コンテンツの作成時に参照できる、十分な選択範
囲を持つアイテムを含んでいることの 2 点である。その
ため、日本とアメリカの約 150 校のコンテンツについて
分析した。結果として、①日米小学校ウェブサイトのコ
ンテンツの違いと特徴、②本研究の最終成果である『小
学校ウェブサイトの基本的枠組み』として 128 アイテム
からなる「6 類 3 階層」構造が示された。本研究の最終
成果が利用されることで、より豊かなウェブサイトが作
成され、小学校の教育現場にも多様なポジティブな変化
が生まれることが期待される。
(研究指導教員 椎名 健)
46
★博士(学術)
◆日本近代文学研究における文学館の役割
−「全国文学館協議会」加盟文学館の発行物を中心に−
岡野 裕行
現在日本には、主に日本近代文学の領域を資料収集の対象とした、文学館という施設がある。それらは博
物館の一形態として見なされてきた一方で、日本近代文学研究者に対する専門図書館としての役割も果たし
てきた。それらが日本近代文学研究に寄与する部分は非常に大きいが、従来の図書館情報学においては、そ
れらが専門図書館のひとつとして認識され、研究対象となることはほとんどなかった。日本における文学館
研究は、1996 年に設立された「全国文学館協議会」
という団体に始まっており、その歴史は非常に
浅く、広がりを見せていない。
そこで本研究では、2005 年 5 月現在、
「全国文
学館協議会」に加盟する文学館 76 館を対象に、
それらの出版事業や発行物について網羅的な調
査を行った。存在が確認された 6,283 点の発行
物を分類し、それらの機能・目的の考察を行い、
さらに文学館の出版事業の性質や、日本近代文
学研究との関連性についての見解を示した。
(研究指導教員 黒古 一夫)
★博士(図書館情報学)
◆公共図書館におけるインターネットサービス提供のあり方に関する研究
ー図書館建築計画の視点からー
孫 誌衒
本研究は、今後の公共図書館はインターネット接続パソコンを利用者に開放するインターネットサービス
を充実すべきとの認識から、現状調査及び数種の実態調査等に基づき、パソコンの設置場所とその物理的な
環境、利用申込みや利用時間の制限など、運営方法の望ましいあり方について、計画上の指針を提案するこ
とを目的とした。コンジョイント分析法を用いた選好意識調査からインターネットへの習熟度別では、習熟
者は利用画面が他人に覗き込まれない環境を、非習熟者は
職員の援助が受けやすい環境を最重要と認識しているなど、
サービスの構成要素間の重要度に差異がみられることなどを
明らかにした。これらの結果を踏まえ、公共図書館における
今後のインターネットサービス提供のあり方として、調べも
のや習熟者の活字資料との併用に対応するセルフ・レファレ
ンス支援コーナー形式と、非習熟者やネットサーフィン的利
用に対応するアクセス支援コーナー形式の2種を備えるべき
こと及びその建築的な配慮や運営方法など種々の要件をまと
め結論の提案としている。
(研究指導教員 植松 貞夫)
47
インターネット習熟別の平均重要度
★博士(図書館情報学)
◆『四庫全書』の刊行およびその文化的意味に関する研究
李 常慶
『四庫全書』は 1770 ∼ 80 年代に、清の乾隆帝(1711 ∼ 1799)の直接指揮の下に編纂された中国古典の大
写本叢書である。本研究はまずこの編纂過程を明らかにしたうえで、その勅命事業に対する研究者等の肯定
的評価と否定的評価に検討を加えた。そして、『四庫全
書』刊行後 200 余年に及ぶ続修、影印、デジタル化な
どの諸活動を追跡し、中国における古典籍の収集、編纂、
保存、伝播の過程の中での『四庫全書』の文化的意義
を考察した。この巨大なコレクションについては、従来、
部分的あるいは限定的な解釈が多かった。本研究にお
いては、「知の集積」という新しい視角から、歴史に即
しまた歴史を超えた『四庫全書』像を求めようとした。
本研究を通じて、『四庫全書』の文化的特質を明らかに
しえたように思う。すなわち、知の集積としての『四
庫全書』、中国文化の特質を見事に反映した「知の集積」、
伝統文化継承に対する強い意思の表明、および現在なお
「活きている」知の集積という『四庫文書』のもつ4つ
の特質が挙げられる。
(研究指導教員 山本 順一)
中国国家図書館保存の『四庫全書』
★博士(学術)
◆2色配色における色彩調和と色彩感情の研究
伊藤 久美子
系統的に選出した多種類の2色配色色紙を用い、配色から得られる色彩感情、色彩調和について研究した。
2色配色について、SD 法(セマンティック・ディファレンシャル法)により、多面的に評価した。さらにファッ
ション雑誌掲載の服装写真から、服装の各種配色が与える色彩感情を多面的に評価した。
V ≧ 0 とした場合の V、
Cを縦
2 色配色を構成する色相差 H、明度差 V、彩度差 C を求め、
横軸にとり各配色をプロットして、明度差と
V
彩度差の組合せと各種色彩感情について検討し
た。その結果、
「調和」、
「好きな」、
「シンプル」、
「スポーティ」等は第二象限に、「緊張した」は
第一象限に分布した。これは多くの評価が2色
配色の明度関係と彩度関係が相補的であること
を意味し、従来の研究に無かった新しい知見で
ある。(右図は調和̶不調和の、上から順に同
一色相・異色相・無彩色を含む配色の第一・第
二象限上位配色例である。) C
(研究指導教員 椎名 健)
V − C図
48
大学へのアクセス
土浦駅
筑波大学
春日キャンパス
荒川沖駅
つくば駅
つくばセンター
ひたち野
うしく駅
成田空港
上野駅
羽田空港
秋葉原駅
東京駅
春日キャンパス
筑波大学
天久保キャンパスへ
ローソン
筑波大学
春日キャンパス
筑波学院大学
■鉄道
筑波大学
春日キャンパス
バス停
春日口
デニーズ
つくば
エキスポセンター
セブン
イレブン
吾妻小学校
前バス停
西
大
通
り
吾妻
小学校
秋葉原からつくばエクスプレス快速に乗ると 45
分で「つくば駅」に到着します。
J R 常磐線 ひたち野うしく駅、荒川沖駅、また
は土浦駅で下車し、「つくばセンター」行きもしく
は「筑波大学中央」行きのバスに乗ると、約 30 分
で「つくばセンター」に到着します。
■高速バス
中
央
公
園
県立美術館
交番
市立図書館
東
大
通
り
つくば駅
つくばセンター
ココス
三井ビル
東京駅八重洲南口高速バスターミナル発「つくば
センター・筑波大学」行きに乗ると、約 70 分で「つ
くばセンター」に到着します。
■車
常磐道「桜土浦 I C」で降り、東大通りを約 5.2 km
北上し、左折して北大通りに入り、2つ目の信号を
左折すると
「筑波大学春日キャンパス」
に到着します。
■飛行機
羽田空港からは高速バスで、成田空港からはバス
で「つくばセンター」まで約 100 分です。
オークラ
フロンティア
ショッピング
ホテル
センター
つくばクレオ
郵便局
スクエア
ノバホール NTT
土浦学園線
ガスト
■徒歩
「つくば駅」(A1、A2 出口)または「つくばセン
ター」から徒歩約 10 分です。
北大通り
東京サテライト
■地下鉄
つくば
中央警察署
東京メトロ丸ノ内線茗荷谷(みょうがだに)駅下
車。徒歩 2 分で「筑波大学東京キャンパス」に到着
します。
49
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