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11 Fuel Cell Seminar 2006

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11 Fuel Cell Seminar 2006
11
Fuel Cell Seminar 2006
(1) Fuel Cell Seminar 2006 の概要
1976 年より続いている Fuel Cell Seminar は、燃料電池に特化した会議・展示会として
草分け的存在である。隔年で開催されていたが、2002 年から毎年開催となり、最近は 2000
人超の参加者を集める、世界でも規模の大きな会議・展示会となっている。
2006 年の Fuel Cell Seminar は年 11 月 13 日(月)∼11 月 17 日(金)の 5 日間、ハワ
イ州ホノルルで開催された(表 11-1)。「Fuel Cells in Paradise - 30th Anniversary」の
テーマを掲げたが、初めて米国本土以外の開催であり、米国人の参加者が大幅に減って、
参加人数は 1700 人程度にとどまった。
調査日程の都合もあり、本調査団は 11 月 15 日(水)から 11 月 17 日(金)まで参加した。
会場
テーマ
日程
参加者
発表件数
出展社
表 11-1.Fuel Cell Seminar 2006 の概要
Hawaii Convention Center(ホノルル)
Fuel Cells in Paradise - 30th Anniversary
2006 年 11 月 13 日(月)∼11 月 17 日(金)
1696 名注(昨年 2332 名)
日本からの参加者
274 名 (昨年 247 名)
韓国からの参加者
40 名
台湾からの参加者
38 名
中国からの参加者
7名
85 件
122 社(昨年 177 社)
注:展示会参加者 550 名を含む
図 11-1.Fuel Cell Seminar 2006
出所:Fuel Cell Seminar 2006 ホームページ
< http://www.jeffreyasher.com/fuelcell/index.html >
- 132 -
(2) セミナースケジュール
Fuel Cell Seminar 2006 のスケジュールを表 11-2 に示す。
14 日 午前
(火)
表 11-2.Fuel Cell Seminar 2006 のスケジュール
プレナリーセッション
ウエルカムスピーチ
Fuel Cell Seminar アワード(John O’Sullivan)
各国の水素・燃料電池政策
昼
ポスターセッション
午後
セッション 1A – オーバービュー
セッション 2A – 高温燃料電池 I
セッション 3A – 低温燃料電池 I
15 日 午前
(水)
昼
午後
16 日 午前
(木)
昼
午後
17 日 午前
(金)
セッション 1B – 交通 I
セッション 2B – 高温燃料電池 II
セッション 3B – 低温燃料電池 II
ポスターセッション
セッション 1C – 交通 II
セッション 2C – 高温燃料電池 III
セッション 3C – 水素 I
セッション 1D – ポータブル
セッション 2D – 高温燃料電池 IV
セッション 3D – 水素 II
ポスターセッション
セッション 1E
セッション 2E
セッション 3E
セッション 1F
セッション 2F
セッション 3F
–
–
–
–
–
–
クリティカルパワー(バックアップ)
定置用燃料電池(発電用)
テスト・モデリング I
定置用燃料電池(住宅用)
燃料プロセッシング
テスト・モデリング II
(3) 展示会
Fuel Cell Seminar 2006 の展示会には 122 の出展社が集まった。出展社一覧を表
11-3 に示す(リストには 132 の出展社が登録されている)。
- 133 -
表 11-3.Fuel Cell Seminar 2006 の出展社
ACTA SpA
Gore
Phoenix Analysis & Design
AeroVironment
Haiku Tech
Technologies
Air Products and Chemicals Hawaii, The State of
Plug Power
Alicat Scientific
Haynes International
Polyfuel
American Reliance
Heliocentris Energy Systems Praxair Specialty Ceramics
Angstrom Power
Heraeus
Precision Flow Technologies
Antig Technology.
Hoku Scientific
Princeton Applied Research
Arbin Instruments
Hydrogen Executive
and Solartron Analytical
Arcotronics Fuel Cells SRL
Leadership Panel
Quest Air Technologies
Ballard Power Systems
Hydrogen & Fuel Cells
ReliOn
BTU International
Canada
Ricardo
Cabot Corporation
Hydrogenics Corporation
Scribner Associates
Caran Precision
Hydrogenics Test Systems
SEIKOH GIKEN USA
Casio Computer
INI Power Systems
Seimi Chemical
Ceramic Industry
International Fuel Cell
SGL Carbon Group
Cerium Laboratories
Competition
Siemens Power Generation
CD-adapco
INEOS Technologies
South Carolina Hydrogen
Chroma Systems Solutions
Ion Power
and Fuel Cell Alliance
CM Furnaces
ISTC International Science
Southern Fuel Cell Coalition
Columbian Chemicals
and Technology Center
Staubli Corporation
Company
Kikusui America
Stewart Warner South Wind
CSA International
Lynntech
Surface Measurement
Dana Corporation
Massachusetts Hydrogen
Systems
Delphi Headquarters
Coalition
Taiwan Institute of Economic
Dexmet Corporation
Methanol Institute /
Research
Direct Methanol Fuel Cell
Methanol Foundation
Tanaka Precious Metals
Corporation
Micromeritics Instrument
Group
DoD Fuel Cell Test and
Corporation
Teledyne Energy Systems
Evaluation Center
Microtherm
Tescom – Emerson Process
DPoint Technologies
Millennium Cell
Management
DuPont
Mesoscopic Devices
TesSol
ECS – The Electrochemical
MTI MicroFuel Cells
Therm-Omega-Tech Inc
Society
Multi-Contact USA
Thomas Products Division
Emerson Process
Nabertherm
ThyssenKrupp VDM USA
Management, Brooks
NanoDynamics
Toagosei
Instrument
National Research Council
Tobias Renz FAIR-PR
EMTEC
Canada, Institute for
University of South Carolina
Engineered Materials
Fuel Cell Innovation
U.S. DOE, National Energy
Solutions
Nex Tech Materials,
Technology Laboratory
Entegris
NH Development LLC.
U.S. DOE, Office of Clean
ESL Electro-Science
North of England Inward
Coal
EWI
Investment Agency
U.S. DOE, Hydrogen
FC Expo
NPL Associates
Program
FCO Corporation
Ohio Fuel Cell Coalition
U.S. Fuel Cell Council
Franklin Fuel Cells
Palmetto Fuel Cell Analysis
UTC Power
Freudenberg & Nok Group
& Design
Vairex Corporation
Fuel Cell Energy
Palton Technology.
Varian
Fuel Cell Markets
Parker Hannifin Energy
Versa Power Systems
Fuel Cell Store
Systems
Wasatch Molecular
Fuel Cell Technologies
PaxiTech
Incorporated
Fuel Cell Today
PDC Machines
Wright Fuel Cell Group
FuelCon Systems
PEMEAS Fuel Cell
Yamatake Sensing Control
FuMA – Tech GmbH
Technologies/E-TEK
Zircar Ceramics
Gashub Technology, Pte
Division
Zircar Zirconia
GenCell Corporation
Perma Pure LLC
出所:出所:Fuel Cell Seminar 2006 ホームページ
- 134 -
(4) セッション:交通(I、II)
① 2010-2025 Scenario Analysis(S. Gronich, Department of Energy)
•
米国科学アカデミーは「The Hydrogen Economy Report」(2004 年)におい
て、DOE に対し、水素経済への移行戦略・シナリオを作成するように要請した。
また「2005 年エネルギー政策法」はエネルギー省長官に対して、水素経済への
移行の方策を議会に提示するように求めている。
•
DOE はこれらの要望にこたえるべく、2006 年 1 月 26 日に「Hydrogen
Transtion Analysis Workshop」を、2006 年 8 月 9∼10 日に「2010-2025
Scenario Analysis for Hydrogen Fuel Cell Vehicles and Infrastructure」を開
催した。また 2007 年 1 月にはシナリオ分析ワークショップを開催した。2007
年 3 月に正式な報告書を米国科学アカデミーに提出する。
•
DOE が想定する 2010 年∼2025 年のシナリオを図 11-2 に示す。2015 年の FCV
商業化判断のタイミングに向かい、R&D を推進するとともに、現在実施してい
る FCV デモンストレーションプログラム(Learning Demonstration)を 2015
年まで継続する。
•
これまでのワークショップにおいて、3 つの FCV 普及シナリオが提案されてい
る(表 11-4)。シナリオ 3 が最も意欲的なシナリオである。このシナリオに基
づいた FCV 普及予測を図 11-3 に示す(シナリオ 1 とシナリオ 2 は、米国にお
けるハイブリッド車の普及パターンに倣うとしたたものである)。
図 11-2.DOE の 2010 年∼2025 年シナリオ
- 135 -
シナリオ 1
表 11-4.3 つの FCV 普及シナリオ
2012 年まで
FCV 導入台数:数百∼数千台/年
2018 年まで
FCV 導入台数:数万台/年
2025 年
FCV 普及台数:200 万台
シナリオ 2
2012 年まで
2015 年まで
2018 年まで
2025 年
シナリオ 3
2012 年まで
(科学アカデミー 2021 年まで
のシナリオ)
2025 年
FCV 導入台数:数千台/年
FCV 導入台数:数万台/年
FCV 導入台数:数十万台/年
FCV 普及台数:500 万台
FCV 導入台数:数千台/年
FCV 導入台数:数百万台/年
FCV 普及台数:1000 万台
米国におけるハイブリッド車普及パターン(実際と予測)
FCV 普及シナリオ 3
FCV 普及シナリオ
FCV 普及シナリオ 2
米国におけるハイブ
リッド車普及パターン
(開始年=2012 年)
米国におけるハイブ
リッド車普及パターン
(開始年=2015 年)
FCV 普及シナリオ 1
図 11-3.FCV 普及シナリオ(シナリオ 1、2、3)
- 136 -
•
DOE の委託で、National Renewable Energy Laboratory(NREL)は全米に
おける水素需要の評価を行った(人口密度、自動車利用実態、教育、所得、州
の政策などを総合的に分析)。その結果、FCV 普及の初期市場としては、カリ
フォルニア州と北東州が有望であることが分かった(図 11-4)。また、移行シ
ナリオワークショップで分析した、水素ステーション設置のシミュレーション
結果(ロサンゼルス、ニューヨーク)を図 11-5 に示す。
図 11-4.NREL による水素需要の試算
・
・
・
・
・
・
水素ステーションに適した場所
「Consumer Strategy」における評価が「Good」以上の地域
米国国勢調査標準地域(Census Tract)において、車両登録台数が平均以上(3000 台以上)
1 日 20 万台以上の交通量がある道路から 2 mile 以内の地域
商業地域(リテールセンター)から 2 mile 以内、空港から 5∼6 mile 以内の地域
主要道路、あるいはその側道からアクセス可能な地域
地域バランスを考慮
移行シナリオワークショップにおけるステーション設置場所の分析例
ロサンゼルスにおけるステーション候補地(40 ヶ所)
ニューヨークにおけるステーション候補地(40 ヶ所)
図 11-5.水素ステーションの設置に適した場所の分析結果
- 137 -
② Harmonization and Sharing of Data from International Fuel Cell Bus
Demonstrations(L. Eudy, National Renewable Energy Laboratory)
•
米国運輸省 連邦公共交通局は、燃料電池バスデモンストレーションにおける情
報共有、測定データの共通化、コラボレーションの促進を目的に、「燃料電池
バス(FCB)ワークグループ」を 2003 年に設置した。燃料電池バスワークグ
ループでは、これまでに 4 回の国際的なワークショップを開催した(図 11-6)。
•
運用に関わるデータの共有に関しては、知財にも関わるため、3 段階のレベル
を設定した。Phase I(デモンストレーションの一般情報)と Phase II(バスの
燃費、運行の実態、充填の実態)についてはデータを共有し、FC システムに関
わるデータは共有しないことにした(図 11-7)。
図 11-6.燃料電池バス ワークショップ
図 11-7.測定データのレベルと共有の有無
- 138 -
•
サンタクララバレー交通局に導入された燃料電池バス(車体:Gilling 社、FC
システム:Ballard Power Systems)の稼働状況を図 11-8 に、同交通局におけ
る燃料電池バスとディーゼルバスの仕様・燃費の比較を図 11-9 に示す。燃料電
池バスの燃費(3.52 mile/ガロン)がディーゼルバスの燃費(3.98 mile/ガロン)
よりも悪いのは、二次電池を搭載してないためと思われる。
図 11-8.サンタクララバレー交通局における燃料電池バスの稼働状況
図 11-9.ディーゼルバスと燃料電池バスの比較(サンタクララバレー交通局)
- 139 -
③ Hydrogen Learning Demonstration Project: Fuel Cell Efficiency and Initial
Durability(K. Wipke, National Renewable Energy Laboratory)
•
米国における水素 FCV のデモンストレーションの目的は、水素 FCV と水素イ
ンフラを並行して実証し、現状における技術とその進展状況について明らかに
することである。プロジェクトの主要な目標を表 11-5 に示す。
•
本プロジェクトでは現在 63 台の FCV が米国内で走行中であり、9 ヶ所の水素
供給ステーションが稼動中である。車両のほとんどは高圧水素タンク搭載車で
あるが、一部液体水素タンク搭載車もある。
•
走行データは FAT(Fleet Analysis Toolkit)で解析する(図 11-10)。その結
果、FC システム効率は 53∼58%であり、DOE の目標値である 60%に迫る数
値であった。スタックの耐久性(10%劣化点)では、最大 950 時間、平均で 750
時間が確認できており、DOE 目標値(1,000 時間)に近い値になっている。
•
水素供給ステーションも大きな問題はなく稼動しているが、水素純度が 99.99%
以下のステーションも存在する。
表 11-5.プロジェクトの主要目標
図 11-10.FAT(Fleet Analysis Toolkit)
- 140 -
④ Automotive Fuel cell Performance in the Real World: Early Field Testing Results
from UTC Power's S700 Fuel Cell Power Plant(B.Fleming, UTC Power)
•
UTC Fuel Cells が開発した S700 パワープラント(図 11-11)を搭載した現代
自動車「Tucson FCV」で、走行試験を実施し、特段の問題がないことを確認し
た(図 11-12、表 11-6)。
図 11-11.UTC Fuel Cells 製 S700 パワープラント
高外気温下での
テスト(2005 夏)
高地テスト
(2005 秋)
寒地テスト
(2005∼2006 冬)
・外気温:
・高度:
・車速:
・勾配:
・高度:
・車速:
・勾配:
・外気温:
・氷点下始動:
図 11-12.Tucson FCV による走行テスト
表 11-6.高外気温下でのテスト結果
- 141 -
30℃∼45℃
1.5∼1511 m
28∼50 mph
∼10%
1600∼3290 m
∼70 mph
∼15%
-10℃∼10℃
23 回
⑤ The Development of an Ultra-Low Cost Electrolyte Membrane for PEMFC
(M. Takami, Toyota Motor Corp)
•
電解質膜の低コスト化のために、2 種類の膜(表 11-7)を試作し、電解質膜と
してのポテンシャルとコスト削減の可能性について、検討した。
(i) ポリエチレンをベースとするポリビニルスルホン酸とビニルポリマー
をランダムにコポリマー(共重合体)としたもの
(ii) ポリエチレンをベースとするポリビニルスルホン酸とポリエチレンを
ブレンドしたもの
•
(i)はフッ素系膜や芳香族系炭化水素膜に比べてイオン交換容量が 1.2 meq/cm3
と低いものの、プロトン伝導度は他の電解質膜に比べて優れていた。しかし、
コポリマーの IV 特性は、内部抵抗が高いために Nafion 112 よりも劣っていた。
•
(ii)は、イオン交換容量が 0.46meq/cm3 と Nafion112 の約 30%であるにも関わ
らず、プロトン伝導度が非常に優れていた。
•
ポリエチレン系電解質膜の実用化には多くの課題があるが、(ii)のポリマーは、
1000m2/月の生産量であれば、コストが 10 ドル/m2 以下になる可能性がある。
表 11-7.ポリエチレンをベースとした電解質膜
表 11-8.ポリエチレンをベースとした電解質膜の評価結果
- 142 -
⑥ Automotive PEM Fuel Cells Durability via Advanced Catalysts
(R. Makharia, General Motors)
•
自動車用触媒のコスト目標(0.2 g Pt/kW)を達成するには、カソード極の白金
担持量を 0.4 mg/cm2 から 0.1 mg/cm2 に低減しなければならない。反応速度論
に基づくと、白金担持量を 1/4 にすることは 40 mV の性能低下に相当する。
•
この低下は自動車用途としては受け容れられないので、質量活性度(mass
activity)を 4 倍に改善することが要求される。このような高質量活性度を実現
するために、触媒メーカや MEA メーカから白金合金が提案されている。しか
し、自動車の厳しい環境下で 1000∼5500 時間を達成する耐久性について、更
なる改良が必要である。
•
自動車は約 30000 回のスタート/ストップが必要で、システム効率向上のために
高燃料利用率な条件で運転を行うため、これがカソード極のカーボン担体の腐
食を引き起こす。システムレベルで対応できる可能性はあるが、MEA は残留応
力への耐性が必要である。カーボンの 5∼10%のロスは、電極構造の破壊を引き
起こす。より安定した担体(例.黒鉛化)がカーボンブラックを代替する可能
性もある。電極触媒開発には、関係するメーカ間の密なる協力が必要である。
図 11-13.白金合金系触媒の質量活性度の安定性
図 11-14.カーボン担体の安定性(許容カーボン重量ロス)
- 143 -
(5) セッション:低温燃料電池(I、II)
① PEM Fuel Cell Electrocatalyst Durability Measurements
(R. Borup, Los Alamos National Lab)
•
LANL では、サイクルを繰り返したときの触媒(白金)の凝集(図 11-15)に
ついて詳細に調査をしている。
•
触媒粒径は、サイクル温度が高いほど、またシステムの湿度が高いほど、増大
割合が大きかった(図 11-16)。
図 11-15.サイクルを繰り返したときの触媒(白金)の凝集
図 11-16.触媒(白金)の凝集
(左)サイクル温度との関係
(右)湿度との関係
- 144 -
•
触媒でも、合金系触媒(Pt-Co)は白金よりも凝集の程度が低いことが分かった
(図 11-17)。
•
白金の凝集度は、白金の溶解度に大きく依存すると思われる。多様な白金触媒
について電位と溶解度の関係を測定したところ、高電位ほど溶解度が高い(低
電位と高電位では 3 桁もの違いがある)ことが観測された(図 11-18)。
•
凝集の原因としては以下のことが考えられる。
-
白金がサポート材から剥がれ落ちてしまう。
-
白金は、高電位で急速に溶解度が増加し、凝集が加速される。
-
熱サイクルにおいて集合と凝集が加速される。
図 11-17.合金系触媒(Pt-Co)の凝集度
図 11-18.白金の溶解度と電極電位の関係
- 145 -
② NanoStructured Thin Film Ternary Catalyst Activities for Oxygen Reduction
(M. Debe, 3M Company)
•
3M では、DOE プロジェクトとして、新規のカソード触媒である「ナノ構造薄
膜電極(NanoStructured Thin Film Catalyst:NSTFC)」を開発している。
NSTFC は有機ウィスカを密集させ、その上に白金などの触媒金属を真空蒸着さ
せたものである(図 11-19)。
•
100 以上の 3 元系合金触媒の比活性を 50cm2 の単セルを使って評価した(図
11-20)。
-
Pt-Co-Mn(NSTF)は白金に対して 2∼2.5 倍の比活性を示した(従来の
Pt-Co/C と同等)。
-
白金-マンガン系(PtM1Mn)は白金-鉄系(PtM1Fe)よりも高い比活性を示し
た。また比活性は Pt/TM 比とともに増加することが分かった。
図 11-19.ナノ構造薄膜電極
図 11-20.様々な 3 元系合金触媒(NSTFC)の比活性
- 146 -
•
Pt/TM 比を変えた Pt-Co-Mn カソード NSTFC の IV 性能を図 11-21 に示す。
Pt/TM 比を変化させても、IV 特性には変化は見られなかった。
•
有機ウィスカの形状・密度は、特に高電流側で IV 性能に影響することが分かっ
た(図 11-22)。
図 11-21.Pt-Co-Mn カソード NSTFC の IV 性能(Pt/TM 比の比較)
(0.1 mg-Pt/cm2)
図 11-22.IV 性能に対する有機ウィスカの形状・密度の影響
- 147 -
③ Low Precious Metal Alloy Catalysts and Durable Carbon Supports
(P. Atanassova, Cabot Corporation)
•
Cabot では、スプレードライ法を用いて白金合金触媒(3 元系)を合成、その
比活性を研究した(図 11-23)。その結果、白金よりも 2 倍の比活性を有する
触媒を見出した。
•
白金合金触媒の試験を、5 セルのショートスタックにて実施した(Hydrogenics)。
その結果、この白金合金触媒は 0.6 g-Pt/kW(0.7 V)を達成できることが分か
った(図 11-24)。
図 11-23.白金合金触媒(3 元系)
図 11-24.ショートスタックによる試験
- 148 -
•
カーボン支持材は、粒子サイズ、全体的な構造、表面形体が影響する。Cabot
では、カーボンブラックの表面にジアゾニウム塩を付加した構造を有するカー
ボン支持材を開発した(図 11-25)。このカーボン支持材は、一般のカーボン
ブラックよりも高い耐久性を示した(図 11-26)。
図 11-25.ジアゾニウム塩を付加したカーボンブラック
図 11-26.ジアゾニウム塩を付加したカーボンブラックの耐久性
- 149 -
④ Highly Durable MEA for PEMFC under High Temperature & Low Humidity
Conditions(E. Endoh, Asahi Glass Co. Ltd.)
•
フッ素系メンブレンを H2O2 ガス雰囲気中(120℃)におき、加速試験を実施し
た(図 11-27)。その結果、従来いわれている、OCV で発生する OH ラジカル
よるメンブレンの攻撃のほかに、発生した OH ラジカルがメンブレン中に移動
して、ポリマー鎖を分解する反応があることが分かった(図 11-28)。
図 11-27.H2O2 ガス雰囲気中での加速試験
図 11-28.MEA 劣化メカニズム
- 150 -
•
旭硝子では、自動車用 PEMFC への応用を想定した、高温メンブレン(120℃、
低湿度)を開発した。1200 時間の耐久性テストにおいて、フッ素イオンの溶出
度は、通常のメンブレンの 1%のレベルであった(図 11-29)。また 120℃、
50% RH の条件では、4,000 時間以上の作動を確認した。
•
4000 時間後の MEA を調べたところ、カソードの厚みの減少が見られた。これ
は、サポート材であるカーボンが酸化されて、CO2 となったためと考えられる
(図 11-30)。
図 11-29.AGC 製メンブレンの耐久性
図 11-30.4000 時間後の MEA(カソードの劣化メカニズム)
- 151 -
⑤ Sartorius HT-PEMFC Membrane Electrode Assembly
(A. Reiche, Sartorius AG)
•
Sartorius は 1870 年に設立した企業で、メンブレン技術に強みがある。
•
現在、高温で作動する燃料電池のために、リン酸をドープした PBI を使用した
高温・無加湿の燃料電池を開発している(図 11-31)。2007 年中に、MEA と
スタックの販売を開始する予定である。
•
Sartorius の MEA の特徴を図 11-32 に示す。
図 11-31.Sartorius による燃料電池開発
図 11-32.Sartorius による MEA の特徴
- 152 -
•
Sartorius の高温 MEA の性能を図 11-33 に示す。
•
試作した高温 PEMFC スタック(2 kW)の外観を図 11-34 に、その特徴を図
11-35 に示す。
図 11-33.高温 MEA スタックの特徴
図 11-34.高温 PEMFC スタック
(試作、2 kW、60 セル)
図 11-35.高温 PEMFC スタックの特徴
- 153 -
⑥ Platinum-Free Electrocatalysts for Direct Alcohol Fuel Cells
(X. Ren, Acta Spa)
•
Acta(イタリア)では、非貴金属系の触媒の開発を行っている(図 11-36)。
•
電極触媒に非貴金属系「HYPERMEC」を、電解質にアルカリ溶液を用いたダ
イレクトアルコール FC(DAFC)を開発している(図 11-37)。エタノールを
用いた場合(DEFC)、室温で 100 mW/cm2 を達成した。
カソード触媒
アノード触媒
図 11-36.非貴金属系触媒の開発
図 11-37.アルカリ電解液を使用するダイレクトアルコール FC(DAFC)
- 154 -
(6)
セッション:高温燃料電池(I、II、III、IV)
① Real SOFC – A Joint European Effort to Improve SOFC Durability
(R. Steinberger-Wilckens, Forschungszentrum Jülich58)
•
「Real SOFC」は、欧州連合が第 6 次フレームワークプログラム(FP6)で実
施している平板型 SOFC の開発パートナーシップである。代表的 SOFC メーカ
である Sulzer など、欧州の 26 の企業・研究所が参画している(図 11-38)。
•
Real SOFC の目的は、SOFC の劣化・エージング現象を解明し、スタック寿命
10,000 時間、
(1,000 時間での劣化度 0.5%)を達成することである(図 11-39)。
•
材料開発としては、アノードでは酸化還元安定性の向上、硫黄やコーキング耐
性の向上が、カソードでは出力密度の向上、クロム耐性の向上が課題である。
また、電解質やスチールの改良も課題である。
図 11-38.Real SOFC 参加企業・研究所
図 11-39.Real SOFC の目的
58
ユーリッヒ研究センターは、ドイツ連邦ヘルムホルツ研究センターに属する準国家的な研究機関。
スタッフ数 4200 人で、医療、情報通信、環境・エネルギー・材料科学などの研究を行っている。
- 155 -
② Results of Solid Oxide Fuel Cell Development at Forschungszentrum Jülich
(R. Steinberger-Wilckens, Forschungszentrum Jülich)
•
Forschungszentrum Jülich では、定置用 SOFC と、補機駆動 APU 用 SOFC
を開発している(図 11-40)。
•
APU 用 SOFC は BMW との共同研究であり、反応面積 100 cm2 のセルで 0.6
W/cm2 を達成している(図 11-41)。今後は、起動時間の短縮、熱負荷への対
応などが課題である。
図 11-40.Forschungszentrum Jülich における SOFC 開発
図 11-41.APU 用 SOFC の開発
- 156 -
•
定置用として数 kW のシステムを試作し試験中である。将来的には 20 kW 級の
システムを構築する予定である(図 11-42)。
•
システムデリバリー先はイギリス、フランス、ドイツ、フィンランド、イタリ
ア、韓国である(図 11-43)。
図 11-42.20 kW レベルの定置用 SOFC(モデル)
図 11-43.Forschungszentrum Jülich の SOFC システムデリバリー先
- 157 -
③ Status of The Solid Oxide Fuel Cell System Development at Wartsila
Corporation(E. Fontel, Wärtsilä Corporation)
•
Wärtsilä(フィンランド)では、定置用および船舶用の SOFC(天然ガスの部
分改質方式を採用)を開発している(図 11-44)。
•
2004 年に1kW 級のシステムを試作した。現在は 20∼50 kW 級システムを開
発しており、2007∼2008 年にデモンストレーションを実施する予定である。
2010 年以降には 50∼250 kW 級システムを開発する(図 11-45)。
図 11-44.天然ガス改質形 SOFC のコンセプト
図 11-45.定置用・船舶用 SOFC システム開発の計画
- 158 -
•
20kW 級システム(WFC20 α-prototype)は、2007 年の第 1 四半期よりテス
トを開始する予定である。発電効率 46%LHV、総合効率 80%LHV を目標とし
ている(図 11-46)。
•
SOFC のアプリケーションとしては、定置向け電源(ビル、病院、非常用)と、
船舶用電源としての展開を考えている(図 11-47)。
•
250kW 級システムのコスト目標は 1500∼2500 ドル/kW である。
図 11-46.20kW 級システム(WFC20 α-prototype)の効率目標
図 11-47.SOFC のアプリケーション
- 159 -
④ Portable Tubular Solid Oxide Fuel Cell Systems for Military Applications
(A. Crumm, Adaptive Materials, Inc.)
•
Adaptive Materials は 2001 年に設立された企業で、出力 1 kW 以下のチュー
ブ形 SOFC を移動体用・軍事用に開発している。2006 年には年間で 10 万セル
を生産可能な製造ラインを設置した。
•
SOFC の燃料には、手軽に入手できるもの(例.プロパン)を考えている。
•
シングルセルの耐久性試験を 2,300 時間実施し、劣化率は 1,000 時間で 3.9%レ
ベルを達成した。また急速起動のサイクル試験では、劣化なしで 160 サイクル
を達成した(図 11-48)。
•
現在、国防総省の委託で、無人偵察機用の電源を開発中である(図 11-49)。
第一世代は 250 Wh/kg で 4 時間程度の飛行時間であったが、第二世代は 660
Wh/kg で 11.5 時間の飛行に成功した(第二世代は軸に固定した風洞実験)。
急速起動試験
(100 回目)
耐久性試験
出力(15 分)
起動
クールダウン
(9.3 分) (30 分)
図 11-48.SOFC セルのパフォーマンス試験
図 11-49.SOFC の無人偵察機用への応用
- 160 -
•
現在、20∼50W のモデルを開発中である(表 11-9)。なお、スケールアップ
としては 200W までが可能な範囲であり、それ以上は困難である。
•
50W モデルの「e50」は、軍事用として高耐久性・低温排気でデザインされて
いる。現在アルファバージョンとして 25 ユニットを開発しており、2006 年第
4 四半期には政府機関に納品する段階である。2008 年第 1 四半期までにはベー
タバージョンを完成させ、広範囲のユーザーに展開する予定である。
•
25W モデルの「e25」はより小型のユニットで、2007 年にはサンプル出荷する
予定である。価格は 100 ユニットで数千ドルになる見通しである。
•
急速起動のためにバーナーによる昇温を採用している。10 分で 800℃に達する。
表 11-9.現行モデルの仕様
e50(50W モデル)
e25(25W モデル)
出力:
重量:
使用温度:
相対湿度:
落下テスト:
排気温度:
起動時間:
50 W(連続)
100 W(ピーク)
2.25kg 以下
-20∼50℃
5∼95%
3 ft からの落下
55℃以下
15 分以下
重量:
体積:
総合効率:
エネルギー密度:
(最終テスト段階)
- 161 -
0.96kg
1.6L
20%
3 日用 925 Wh/kg
10 日用 1450 Wh/kg
⑤ Application of Continuous Manufacturing Methods to Reduce Bipolar Plate Costs
(D. Connors, GenCell Corporation)
•
GenCell Corporation は 1997 年に設立された企業で、MCFC を中心に燃料電
池システムを開発している。特に、低コストバイポーラープレートの作成のた
めに、スタンプシートメタル技術を開発している。
•
スタンプシートメタルで作成したバイポーラプレートは、コスト低減、出力密
度向上、熱マネジメント改善、耐久性向上を図ることができる。小型(DMFC
用:18 cm2)から大型(MCFC 用:4,300 cm2)まで対応可能で、シングルレ
イヤーのプレートだけではなく、ダブルレイヤーも作成可能である。生産能力
は 1 枚/秒で、MCFC ならば 1 MW/日以上の生産能力を有する(図 11-50)。
•
スタンプシートメタル バイポーラプレートを採用した 40kW MCFC をコネチ
カット大学でテスト中である(図 11-51)。すでに、サーマルサイクルを含む
4,000 時間の運転を実証した。この MCFC には、ガス漏洩がほとんど無いよう
に工夫したマニフォールドを採用している。
スタンプシートメタル技術で作成したバイポーラプレート
ダブルレイヤーバイポーラプレート
スタンプシートメタル技術のフロー
図 11-50.スタンプシートメタル技術によるバイポーラプレート
図 11-51.実証テスト中のス MCFC(40kW)とマニフォールド
- 162 -
•
PEMFC 用に水冷が可能なスタンプシートメタル バイポーラプレートも開発
している(図 11-52)。
•
現在、高温 PEMFC 用バイポーラプレートの耐久性についてアリゾナ州立大学
と共同研究中である。現在は 3,000 時間程度まで実施しているが、アリゾナ州
立大学と共同開発した「Alloy ASU」を用いたバイポーラプレートでは、2500
時間程度までの耐久性を維持している(図 11-53)。
図 11-52.PEMFC 用水冷バイポーラプレート
図 11-53.バイポーラプレートの耐久性試験(3000 時間)
- 163 -
⑥ Liquid Tin Anode SOFC for Direct Fuel Conversion Including Carbon and JP-8
(T. Tao, CellTech Power, LLC)
•
CellTech Power は 1997 年に設立された企業で、液体スズをアノードに用いた
SOFC(LTA-SOFC)を開発している(図 11-54)。JP-8 など硫黄分を含む燃
料を直接用いることができ、またアノードそのものがバッテリ機能を有するの
で、二次電池としても利用できるのが特徴である(図 11-55)。外部改質器が
不要で、補機損失がないため、高い効率を達成できる。。
図 11-54.LTA-SOFC の構造
図 11-55.LTA-SOFC の燃料電池モードとバッテリモード
- 164 -
•
炭素燃料は、アノードの液体スズ(1,000℃)の還元反応を利用して直接酸化さ
れ、電解質表面ではスズの酸化反応を利用して発電する。多様な燃料にも対応
でき、不純物の硫黄の影響も受けないので有利である(表 11-10)。
•
JP-8 燃料59で、80 mW/cm2(セル、スタックとも)を達成した。また 1,350 ppm
の硫黄分を含む JP-8 でも、200∼500 時間の耐久性能を示した。
•
これまでに第一世代から第三世代までを試作している。第三世代(10kg、12 L、
500W)は Defense Advanced Research Projects Agency(DARPA)のプログ
ラムにて開発しているもので、燃料には JP-8 を用いる(図 11-56)。
表 11-10.LTA-SOFC の多様な燃料への対応
図 11-56.第三世代 LTA-SOFC(JP-8 燃料用)
59
JP-8 は、米国の空軍・陸軍で使用されている燃料でケロシン(灯油)が主成分。JP は「Jet Propellant」
の意味。
- 165 -
⑦ Integrated SOFC Systems based on Microtubularcells -Reaching the kW-stage
(H. Wancura, ALPPS Fuel Cell Systems GmbH)
•
ALPPS Fuel Cell Systems は 2002 年に設立された企業で、1∼50 kW のマイ
クロチューブ形 SOFC(電解質支持形、アノード支持形)の開発を行っている。
•
3,000 回以上のサーマルサイクルの試験において、1,000 サイクルで 17.5%の劣
化があったが、劣化の大部分が最初の 50 回に集中しており、50 回以降の劣化
率は 1,000 サイクルあたり 7.8%であった(図 11-57)。よって、初期サイクル
でのアノード接触性を改良することで、性能向上は可能である。電解質支持形
と比較して、アノード支持形はサーマルサイクル特性が悪いが、出力は高い。
•
電解質支持形は 300 mW/cm2、アノード支持形は 800 mW/cm2 の出力が狙える
ようになってきた(図 11-58)。
図 11-57.マイクロチューブ形 SOFC の耐久性(電解質支持形、400 K/分)
図 11-58.マイクロチューブ形 SOFC の出力の向上
- 166 -
•
アノード支持形のスタックデザイン(8,100 セル、4kW)を図 11-59 に示す。
デザイン上は、5 分で起動が可能である。燃料としてはディーゼル、バイオデ
ィーゼル、ケロシン、天然ガスの使用が可能である。2010 年の商用化を目指し
て、現在試験中である。
•
出力密度の点では、チューブの長さは短いほうがよいと考えている。また、実
験では集電体には銀ワイヤを使用したが、現在他の材料への切り替えを検討中
である。
•
将来の R&D におけるコスト目標、出力目標を図 11-60 に示す。
図 11-59.アノード支持形のスタックデザイン(8,100 セル、4kW)
図 11-60.将来のコスト目標、出力目標
- 167 -
(7) セッション:定置用燃料電池(発電用)
① Stationary Fuel Cell Power Plants Status
(D. Brdar, Fuel Cell Energy, Inc.)
•
FuelCell Energy の炭酸溶融塩 DFC は、これまでに廃水処理場、工場、ホテル
等に 45 基が導入されている(図 11-61)。
•
発電効率は 45∼47%であり、廃熱利用にて総合効率は 70∼80%可能である。
•
出力は 240 kW から 2400 kW までスケールアップが可能である(図 11-62)。
図 11-61.導入例(ホテル)
図 11-62.プロダクトライン
- 168 -
•
現状のコストは 4300∼4600 ドル/kW で、耐久性は 3 年間(24,000 時間)であ
る。2007 年(DFC 3000 の 2006 年モデル)では、3200∼3500 ドル/kW が達
成可能である(図 11-63)。
•
DFC とタービンを組み合わせたシステム(DFC/T)の実証実験を行っている。
効率では 56∼58%を達成している(図 11-64)。
図 11-63.DFC のコストの削減
図 11-64.DFC/T の実証実験
- 169 -
(8) セッション:定置用燃料電池(定置用)
① Market Introduction of Reformed Hydrogen Fuel Cells (RHFC) Based on High
Temperature Celtec-P 1000 MEAs(G. Calundan, PEMEAS GmbH)
•
PEMEAS では、高温 PEMFC 用に、PBI(Poly-benzimidazole)にリン酸を含
浸させたメンブレンを開発している。このメンブレンは、ポリリン酸から直接
キャスト成型し、加水分解することでリン酸含浸 PBI メンブレンを合成する(図
11-65)
•
PEMEAS のメンブレンを用いて合成した MEA(Celtec-P)は、CO 耐性があ
り、また湿度に影響されない(図 11-66)。
図 11-65.リン酸含浸 PBI メンブレンの合成
CO 耐性(CO 分圧、温度、電圧)
湿度(水分圧、温度、電圧)
図 11-66.Celtec-P の CO 耐性と湿度の影響
- 170 -
•
Celtec-P1000 を用いた製品を図 11-67 に示す。。
•
Celtec-P1000 は 160∼180℃での運用が可能で、CO を 1%含む水素でも十分な
セル特性を示した(1 A/cm2 では、水素に比べて約 100mV の電圧降下)。260
サイクル/6500 時間後のセル電圧低下は 0.3mV/サイクルであった(図 11-68)。
•
マルチサイクル運転での耐久性を向上させた CeltecP2000 を開発中である。IV
特性では、0.8A/cm2 では純水素に比べ約 100mV の電圧降下となる(180℃・
2%CO 存在下)。サイクルテスト(室温∼180℃、0.2A/cm2 で 12 時間運転→12
時間停止)では、2000 時間まで安定に運転が可能であった(図 11-69)。
Plug Power 製
5kW システム
ClearEdge Power 製
6kW システム
Ultracell 製
メタノール
改質型シ
ステム(5
∼10W)
図 11-67.Celtec-P1000 を用いた製品
図 11-68.Celtec-P1000 の性能
図 11-69.Celtec-P2000 の性能
- 171 -
② Clean Power for Your Home – Technical Challenges and Solutions for a
Market-Ready Product(K. Foger, Ceramic Fuel Cells Ltd)
•
Ceramic Fuel Cells は、住宅用コージェネレーション SOFC を開発中である。
•
ヨーロッパの多くの国では、建物のエネルギー効率が向上しており、熱エネル
ギーの需要は急速に減少してきている。ドイツでの各種建造物における熱エネ
ルギー需要、平均的家庭での一年間の熱/電需要、CHP システムの運転時間に対
する発電コスト等を考慮した結果、年 5 千時間以上フル負荷で運転することが
必要であることが分かった(図 11-70、図 11-71)。これは熱/電比率が<1 と
なるときに達成され、熱出力が 0.5kW を超えないことが必要である。
•
45%以上の発電効率を持つ SOFC システムは、この条件下で他の CHP システ
ムよりも利点がある。
図 11-70.マイクロ CHP の効率条件
図 11-71.熱/電需要からみたマイクロ CHP の経済性(運転時間)
- 172 -
•
CFCL 社では、システムの高効率化のためにシステムやスタックの詳細なモデ
ルを開発している(図 11-72)。
•
天然ガスを使った小さなシステムでも 50%の交流発電効率が可能であることが
示された。
-
まず改質器については、水蒸気改質が最も高効率な改質方法であり、電気化学
的発熱反応を吸熱改質反応とセル内で組み合わせることにより高効率化を図
った。
-
発電効率が 50%を超えるには、スタックの直流発電効率が 55%を超えること
が不可欠である。これはセル電圧 800mV、燃料利用率 80%以上のときに達成
可能である。
•
補機類による発電ロスは、空気ブロワーの寄与が一番大きい。このブロワーに
必要な電力は、スタックの内部改質の吸熱反応による熱伝導の最適化や、スタ
ックのガス圧損の低減などで減らすことができた。
•
CFCL の第 1 世代機・NetGenTM 4 台がニュージーランド、オーストラリア、
ドイツに設置されて実証試験が行われており、累計 1 万時間を達成した。
図 11-72.システムモデル
- 173 -
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