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住宅産業フロンティア創造WGにおける検討の報告について

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住宅産業フロンティア創造WGにおける検討の報告について
資料5
住宅産業フロンティア創造WGにおける検討の報告について
第1章 マクロ経済における我が国住宅市場発展の可能性
(1)我が国人口動態と実質GDPの中長期見通し
人口は2005年以降減少傾向に転じており、今後も減少が続く。国立社会保障・人口問題研究所の予測によると、2005年には1億
3000万弱の人口が2025年には1億1900万人程度まで減少する。
また同予測によると、世帯数のピークは2015年(5048万世帯)であり、以降は減少に転ずる。
一方、我が国の2006年から2015年にかけての実質経済成長率は、2.2%程度と想定されている 。
日本の将来推計人口
世帯数の推移(総数)
(千人)
140,000
(千世帯)
51,000
130,000
50,000
120,000
49,000
110,000
48,000
100,000
47,000
90,000
46,000
80,000
45,000
70,000
44,000
2005
2010
2015
2020
2025 (年)
2005
資料:
国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」2002年1月推計
2010
2015
2020
2025 (年)
資料:
国立社会保障・人口問題研究所
「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」2003年10 月推計
実質GDP成長率
12.0
(%)
予測
10.1
10.0
8.0
6.0
4.4
4.0
4.0
2.0
1.5
1.5
1990-2000
2000-2006
2.2
2.2
2007-2010
2010-2015
0.0
1960-1970
1970-1980
1980-1990
資料:経済財政諮問会議「新経済成長戦略中間とりまとめ」(平成18年3月)
3
(2)住宅投資と人口増加の関係
住宅投資の増加は、人口増加と強く相関し、今後の人口減少にともない減少すると考えられがちである。しかし、先進国のデータ
(※1)からは、両者の相関は必ずしも高くないことがわかる。
住宅投資増加率の人口増加率に対する相関関係(先進国の最近約10年間の動向)
25.0%
y = 4.5383x + 0.0104
R2 = 0.0474
20.0%
15.0%
住宅投資増加率
10.0%
5.0%
0.0%
-0.5%
-5.0%
0.0%
0.5%
1.0%
1.5%
2.0%
-10.0%
-15.0%
-20.0%
-25.0%
人口増加率
資料:「National Accounts of OECD Countries Volume, 1994-2005 」をもとに作成
※1検証の対象は、先進国14カ国(オーストリア 、カナダ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、イタリア、日本、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、イギリス、
米国)。対象年度はデータ整備状況により、イタリア、フランスは1994~2006年、オーストリア、デンマーク、フィンランド、ドイツ、スウェーデン、イギリスは1994~2005年、カナ
ダ、日本、米国は1995~2005年、ポルトガルは1995~2003年、ギリシャは2000~2005年、スペインは2000~2004年。増加率は前年比。
4
(3)住宅投資・住宅関連支出と実質GDPとの関係
次に、住宅投資の成長率と実質GDP成長率との関係をみると、ある程度の相関はある。
しかし、更に住宅の売買や住替えに誘発されることの多い家具や建物の維持管理費用を、住宅関連支出(※2)としてまとめてみると、
GDP成長率との相関は特に高いことがわかる。従って、今後もGDPの成長に伴い住宅関連支出は増えることが期待される。
実質GDP成長率と住宅投資成長率・住宅関連支出成長率の相関
住宅関連支出成長率と実質GDP成長率との相関
住宅投資成長率と実質GDP成長率の相関
7.0%
スウェーデン
デンマーク
7.0%
フィンランド
カナダ
y = 1.5844x - 0.0176
R2 = 0.896
アメリカ
5.0%
5.0%
3.0%
フィンランド
住宅関連支出成長率
住宅投資成長率
y = 3.5182x - 0.0588
R2 = 0.6288
ポルトガル
イギリス
フランス
イタリア
やや不満
イタリア
1.0%
3.0%
フランス
スウェーデン
デンマーク
1.0%
オーストリア
日本
-5.0%
-3.0%
-1.0%
-1.0%
1.0%
3.0%
5.0%
7.0%
カナダ
ポルトガル
アメリカ
イギリス
-5.0%
-3.0%
-1.0%
-1.0%
ドイツ
ドイツ
どちらでもない
やや不満
1.0%
3.0%
5.0%
7.0%
イタリア
ドイツ
オーストリア
-3.0%
-3.0%
日本
-5.0%
-5.0%
実質GDP成長率
実質GDP成長率
資料:「National Accounts of OECD Countries Volume, 1994-2005 」をもとに作成
※2住宅関連支出には次の8項目(Maintenance & repair of the dwelling、Actual rentals for housing、Furniture and furnishings, carpets and other floor coverings、household textiles、household appliances、
Glassware, tableware and households utensils、Tools and equipment for house and garden、Goods and services for routine household maintenance)が含まれる。
※3成長率はそれぞれの期間の年間平均成長率。
対象年度は、データ整備状況により、オーストリア 、カナダ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、イタリア、スウェーデン、イギリス、米国は1995~2005年、日本は1996~2005年、ポルトガルは1995
~2003年、ギリシャとスペインについてはデータの期間が短いため対象外とした。
5
(4)住宅関連支出の成長要素
住宅関連支出成長率が特に高いフィンランド、カナダ、ポルトガル、アメリカの例をみると、「家具・内装」などのインテリア分野の需要
や、「家賃」、すなわち建物の利用価値を購入することに対する需要の伸びが大きく、住宅関連支出全体の成長に寄与していること
がわかる。
これらの国の例にならうと、ストック活用の促進等により、インテリア分野や建物の利用価値を提供する産業中心の構造に転換して
いくことが、今後の住宅産業の発展の一つの方向性として示唆される。
一人当たりの住宅関連支出の内訳
ポルトガル
フィンランド
(ユーロ)
2,000
Goods and services for routine
household maintenance
Tools and equipment for house and
garden
1,600
(ユーロ)
2,000
Goods and services for routine
household maintenance
Tools and equipment for house and
garden
1,600
Glassware, tablewa re and households
utens ils
1,200
household appliances
household textiles
800
Glassware, tableware and
households utensils
1,200
household appliances
household tex tiles
800
Furniture and furnis hings, carpets
and other floor cov erings
400
Actua l rentals for housing
0
1994
1995
1996 1997
1998
1999
2000
2001 2002
2003 2004
2005
Maintenance & repair of the dwelling
Furniture and furnishings, carpets
and other floor covering s
400
Actual rentals for housing
0
Maintenance & repair of the dwelling
1994
1995
1996 1997
1998
1999
カナダ
(ユーロ)
2,000
Goods and services for routine
household maintenance
2000
2001
2002
2003
2004
2005
アメリカ
(ユーロ)
2,000
Goods and services for routine
household maintenance
Tools and equipment for house and
garden
1,600
Tools and equipment for house and
garden
1,600
Glas sware, tableware and
households utensils
Glassware, tableware and
households utensils
1,200
household a ppliances
1,200
household appliances
800
household textiles
400
Furniture and furnishings, carpets
and other floor coverings
800
household tex tiles
400
Furniture and furnishings, carpets
and other floor covering s
Actual rentals for housing
Actual rentals for housing
0
1994
1995
1996
1997
1998
1999 2000
2001 2002
2003 2004
2005
Maintenance & repair of the
dwelling
0
1994
1995
1996 1997
1998 1999
2000 2001
2002 2003
2004 2005
6
Maintenance & repair of the dwelling
第2章 国内市場におけるフロティア創造の考え方
(1)住宅産業における潜在需要掘り起こしの方向性
ワーキンググループメンバーの推薦する先進企業の例をもとに、住宅産業における潜在需要掘り起こしの可能性を導き出した。
事例企業の取り組み内容やその狙いを集約すると浮かび上がるのは、以下の3つの方向性である。
①新たなライフスタイルを提案すること、②既存ストックから新たな価値を生み出すこと、③地域全体の価値を高めること
これら3つが、今後の住宅産業における潜在需要掘り起こしの方向性なのではないか。
先進企業の取り組み例
„三菱地所(カスタムアイズ)
• マンションにインテリアもセットで提供するサービスを行うととも
に、家具の配置に合わせて間取りを調整するサービスを提供し、
住宅の生活の場としての価値を高めている。
„ネクストアイズ
• 工務店、建築家、住宅メーカーなど様々な家づくりの方法の中
から生活者が最適なものを選ぶためのコンサルティングを実施
し、生活者と供給者の情報の非対称性を解消。家づくりに対す
る生活者の安心感を高めている。
取り組みの方向性
„ 生活価値の向上
• 新たなライフスタイルを提案する
„インテリックス
• 通常不動産流通市場では評価されにくい古い物件を新築同様
にリノベーションし魅力を高めることで、中古住宅需要を創出し
ている。
„ ストック価値の向上
• 継続的な利用価値を支える仕組みを提供する
„東京R不動産
• 中古住宅の価値を性能や利便性ではない新たな切り口(レトロ、
改装許可など)で発掘し需要を創出。
„アフタヌーンソサエティ
• 神田や馬喰町などの老朽化したビルをまちのコンセプトにあわ
せて再生し、テナント集めまでも行う。更に周辺のビルにも有望
なテナントを集めることで、地域全体の価値を高めることを狙っ
ている。街の風情を活かすため既存ストックを有効活用するの
も特徴である。
„ エリア価値の向上
• 地域全体で価値を高める仕組みを提供する
„東京急行電鉄(アライエ事業)
• 東急田園都市線沿線の住宅のうち独自の基準を超えるものを
買取り、新築同様にリノベーションした上で販売。
• 沿線の住宅ストックを活用し、多様な世代の入居者を集めるこ
とで街の活力を高めることを狙っている。
8
(2)住宅産業における潜在需要掘り起こしの可能性
住宅産業においては、将来性は未知数ではあるものの、今回取り上げた事例以外にも様々な切り口により、この3つの方向で潜在需要の
掘り起こしが行われている。
潜在ニーズを掘り起こすビジネス例
古さを新しい価値に転換
①ストック価値の向上 技術で長寿命化を実現
資産価値評価
• 住宅履歴データなどをもとにした建物評価を含めるなど従来の不動産鑑定とは異
なる新しい観点での資産価値評価
リノベーション・コンバージョン
• 中古住宅・マンションの改修・再販やオフィスビルの住宅転用といった中古物件の
再生ビジネス
メディア有効活用
• 古い住宅のよさを新たな価値観で発掘し、インターネットや雑誌などのメディアを
有効活用しながら、紹介・仲介を行う
メンテナンスフリー
• 光触媒コーティング外壁など、技術革新によりメンテナンスフリーを実現することで
ランニングコスト削減効果による買替え需要を喚起
インスペクション
• 売主にも買主にも属さない第三者機関による中古住宅の検査サービス。ハードの
検査だけでなく、住まい方・利用の仕方などについても診断・提案
建物情報を収集・管理すること
で安心を提供
住宅部品のトレーサビリティ
管理システム
イニシャルコストだけでなくラン
インフィルリース
ニングコストで収益を得る
団塊世代の生活支援
ハードだけでなくライフスタイル 子育て支援
(ソフト)とその実現に向けた支
二地域居住/非定住
援サービスをセットで提供
②生活価値の向上
情報格差の解消により安心を
提供
③エリア価値の提供
コミュニティ運営・活性化を支
援
• 業界共通で利用可能なICタグの活用
• SI工法におけるインフィルをリース・レンタル形式で提供
• 高齢者の賃貸居住を支援する「高齢者向け家賃保証サービス」や、生涯学習が
可能な「カレッジリンク型シニア住宅」など、団塊世代の生活を支援するサービス
• 「子育てにやさしい住まいと環境の基準」に基き物件評価するサービスや、託児所
併設マンションなど、子育てを支援するサービス
• サービスアパートメント、セカンドハウスといった「定住」を前提としない居住形態を
サポートするサービス
エコ/LOHAS
• 「省エネ」「健康」といったテーマによる暮らし方とセットになった住宅提供
ネットコンペ
• 建築家、工務店、ハウスメーカーなどをネットワーク化し、インターネット上でコン
ペサービスを提供
情報発信・事業者紹介
• 建築家、工務店、ハウスメーカーの紹介や、住宅購入ノウハウなど住宅取得全般
に関する情報発信サービス
ネットオークション
• インターネットによる住宅オークションサービス
日本版HOA(Homeowners
Association)
• 住民自らが居住環境の総合管理と生活支援を目的とする組織を運営
マンションコミュニティ支援
コーポラティブハウス
• マンション管理組合の運営支援や、マンション内でのイベント開催などによるコミュ
ニティ活性化支援等
• 良好なコミュニティと住環境形成を目的としてコーポラティブ形式でのマンション建
設の支援
9
【参考】3軸と関係の深い住宅産業キーワードについて
以下に示すように、住宅産業100のキーワード「2007年~2008年版」(発行:創樹社)で取上げられているものも、3つの方向性と関連が深
い。
生活価値
これからの住まいと住生活基本法
転換期を迎えた住宅行政
これからの住まいと地球環境問題
住生活基本法
住生活基本計画(全国計画)
住生活基本計画(都道府県計画)
住宅性能水準、居住環境水準、居住面積水準
住生活安定向上施策推進会議
建築基準法の改正
宅建業法の改正
建築士法の改正
アスベスト対策
移住・住みかえ支援
(独)住宅金融支援機構
(独)都市再生機構
住宅品質確保促進法
登録住宅性能評価機関
指定確認検査機関
瑕疵保証
特定瑕疵担保責任保険
性能表示・評価
景観法
消費生活用製品安全法の改正
京都議定書
CASBEE-すまい(戸建て)
改正省エネルギー法
次世代省エネルギー基準
環境共生住宅
自立循環型住宅
パッシブデザイン
太陽光発電
省エネリフォーム
グリーン購入法
マンション環境性能表示制度
燃料電池
建設リサイクル法
ゼロエミッション
ロ・ハウス
家電リサイクル法
光触媒
国産材活用
森林認証
バイオマス
分散型電源
ESCO
ヒートアイランド現象
緑化建築
SEGES(社会・環境貢献緑地評価システム)
オール電化住宅
ストック価値
(健康、安全・安心、
教育、情報格差の解
消、環境等)
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
生活価値
ストック価値
エリア価値
ストック社会の到来
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
これからの住まいと少子高齢化
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
さらなる安全・安心の確保
さらなる健康住宅の追求
多様化するライフスタイル
○
○
変わる住宅マーケットと住宅産業
※住宅産業100のキーワード「2007年~2008年版」(発行:創樹社)をもとに作成
変わる不動産マーケット
これからの住宅税制・金融
既存住宅流通
リフォーム市場
リフォームネットワーク
リノベーション
コンバージョン
200年住宅
SI
団地再生
コミュニティ再生
ホームインスペクション
新リフォームメニュー
改正介護保険法
高齢者居住法
高齢者専用賃貸住宅
地域密着型サービス
グループリビング
介護施設
高齢者賃貸住宅
バリアフリーリフォーム
子育て支援マンション認定制度
キッズデザイン
巣づくり支援
耐震リフォーム
防災住宅
制震・免震構法
水資源の有効活用
火災警報器
防犯住宅
CP部品
防犯認定マンション
シックハウス
ケミレスタウン
LOHAS
快眠
癒し効果
健康管理
都心居住
田舎暮らし
マルチハビデーション
ペット共生住宅
SOHO(テレワーク)
近居
団塊世代
団塊ジュニア
高齢者単独世帯
ユビキタス
ホームネットワーク
ロボット
CSR(企業の社会的責任)
住生活エージェント
トレーサビリティ
エスクロー
不動産情報の開示
住宅ローンアドバイザー
リバースモーゲージ
(健康、安全・安心、
教育、情報格差の解
消、環境等)
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
エリア価値
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
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○
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○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
10
(3)住宅産業におけるフロンティア開拓の方向性
多くの事例企業はその事業により、複数の価値を同時に実現している。
z東京R不動産の例(ストック価値と生活価値の実現)
ストック住宅の隠れた魅力を発掘し、その住宅でこそ実現できるライフスタイル(借り手が自由に改装できる等)を提案
zアフタヌーンソサエティの例(ストック価値とエリア価値の実現)
街のコンセプトに合わせて地域の物件をまとめてマネジメントすることでエリア全体の価値を向上
ストック価値、生活価値、エリア価値という3つの方向性の中にある具体的なビジネスの形は今後の検討課題であるが、新たなビジネス
の多くは、軸の組合せの中から生まれてくるものと考えられる。
生活価値の向上
フロンティアC?
ソフトの付加
住宅関連支出
の拡大
フロンティアA?
ハード
住宅投資
住空間
都市空間
エリア価値の向上
売切り
継続利用
ストック価値の向上
フロンティアB?
11
第3章 海外市場への展開について
(1)海外住宅市場の現状
主要国で毎年の新設住宅着工が日本を上回るのは、中国、インド及びアメリカの3カ国である。中でも中国市場は日本の4倍の着
工規模に達しており、現状でもまだ住宅不足が続いていることから今後の成長も期待できる。
こうした現状をふまえ、本検討においては、アジア最大の貿易相手国であり、市場規模、成長性ともに期待できる中国をモデルに
参入シナリオの検討を行った。
主要国の住宅着工規模
アジア・オセアニア・欧州・北米・南米各国の成長性と人口規模
高成長
中国
9.0
ベトナム
インド
7.0
実質GDP成長率(%)
オー スト ラ リ ア
カ ナダ
韓国
日本
ア メリ カ
イ ンド
中国
(戸)
4,500,000
4,000,000
3,500,000
3,000,000
2,500,000
2,000,000
1,500,000
1,000,000
500,000
0
11.0
シンガポール
インドネシア
タイ
(原典は各国統計データ、中国2003年、インド1997~2000年までの累計を
年平均に換算、アメリカ2002年、日本2005年、韓国2003年、カナダ2005年、
オーストラリア2005年)
フィリピン
韓国
4.0
オーストラリア
メキシコ
カナダ
3.0
アメリカ
日本
ネパール
ブラジル
EU
ニュージーランド
1.0
低成長
資料:「Housing & Home Warranty Programs World Research」(2005)
住宅保証機構
マレーシア
5.0
0
50,000 100,000 150,000 200,000 250,000 300,000 350,000 400,000 450,000 500,000
1,310,000
-1.0
市場小
人口(千人)
資料:東南アジア・EUは「CIA World Fact Book」(2005)
その他は「OECD Country Statistical Profiles」(2005)
市場大
13
(1)海外住宅市場の現状
【参考】対アジア各国 輸出額(総額)と対中国輸出額内訳
中国は、アジア市場で最大の貿易相手国であるが、中国への「ハコ」(建材・設備関連)の輸出は、他産業に比べて少ない。
対アジア各国 輸出額(総額)
(億円)
100,000
90,000
80,000
70,000
60,000
50,000
40,000
30,000
20,000
10,000
ベト ナ ム
イ ンド
イ ンド ネ シ ア
フ ィリ ピ ン
マ レー シ ア
シ ンガ ポ ー ル
タイ
台湾
韓国
中国
0
資料:財務省貿易統計より作成
対中国品目別輸出額上位30品目(2007年1月~9月の累計)
(億円)
1,800
スチ レン
1,600
電話機の部品
1,400
印刷機部品のその他
テレビ カ メラ 、デジタルカ メラ 、ビ デオカ メ
輸出額
印刷回路
1,200
パラ -キシレン
電気機器のその他の機器
銅のくず
半導体デバイ ス、集積回路製造用機器
多層セラ ミックコン デン サー
データ読み取り機等部品
盤や数値制御の機器
自動車車体の部分品のその他
その他の化学品
集積回路の部分品
600
自動車のギヤボックス,部分品
精製銅の陰極銅及びその切断片
偏光材料製のシート,板
光ファ イ バー等のその他
1,000
800
液晶デバイ ス等のその他
合金鋼のフラ ットロ ール製品の方向性けい素
織機
電気機器の部分品
塩化ビ ニル
電動機、発電機の部品
アルミニウム電解コン デン サー
ゴム、プ ラ スチック等の射出成形機
ゴム、プ ラ スチック等の加工機部品
ステン レス鋼くず
自動車のブ レーキ等の部品
400
200
(9,539)
(5,022)
(4,507)
(3,541)
(3,514)
国内市場規模
(億円)
(188,841)
(315,764)
(250,615)
(38,215)
(67,352)
輸出額の多いもの上位30品目の産業分野
(2,704)
(979,961)
建材・
設備
輸出額(億円)
自動車
金属
精密機械
化学
機械
電気機械
0
(315)
(125,721)
建材関連
【建材・設備の品目】
ガラス繊維及びその製品
ガラス繊維及びその製品
フロート板ガラス及び磨き板ガラス
フロート板ガラス及び磨き板ガラス
木製建具及び建築用木工品
木製建具及び建築用木工品
その他のプラスチック製の床用敷物
その他のプラスチック製の床用敷物
パーティクルボード、オリエンテッドストランドボード等
パーティクルボード、オリエンテッドストランドボード等
木材
木材
繊維板
繊維板
スラグウール,ロックウールその他これらに類する鉱物性ウール
スラグウール,ロックウールその他これらに類する鉱物性ウール
合板、ベニヤドパネルその他これらに類する積層木材
合板、ベニヤドパネルその他これらに類する積層木材
戸及び窓並びにこれらの枠並びに戸敷居
戸及び窓並びにこれらの枠並びに戸敷居
セメント・コンクリート・人造石製品の建築用、土木建設用のプレハブ式の構築材
セメント・コンクリート・人造石製品の建築用、土木建設用のプレハブ式の構築材
化粧ばり用単板
化粧ばり用単板
瞬間ガス湯沸器
瞬間ガス湯沸器
ステンレス鋼製の台所用流し及び洗面台
ステンレス鋼製の台所用流し及び洗面台
プラスチック製の便座及び便器用の覆い
プラスチック製の便座及び便器用の覆い
シャンデリアその他の天井用又は壁掛け用の電気式照明器具
シャンデリアその他の天井用又は壁掛け用の電気式照明器具
台所において使用する種類の木製家具
台所において使用する種類の木製家具
窓又は壁に取り付けるエアコンディショナー
窓又は壁に取り付けるエアコンディショナー
磁器製の衛生用備付品
磁器製の衛生用備付品
パネル、ボード、タイル、ブロックその他これらに類する物品
パネル、ボード、タイル、ブロックその他これらに類する物品
加工をいずれかの縁、端又は面に沿つて連続的に施した木材
加工をいずれかの縁、端又は面に沿つて連続的に施した木材
れんが、ブロック、タイルその他の陶磁製品
れんが、ブロック、タイルその他の陶磁製品
プラスチック製の浴槽、シャワーバス、台所用流し及び洗面台
プラスチック製の浴槽、シャワーバス、台所用流し及び洗面台
石綿セメント・セルロースファイバーセメント製品のシート、パネル、タイル等
石綿セメント・セルロースファイバーセメント製品のシート、パネル、タイル等
石綿繊維、石綿をもととした混合物及び石綿と炭酸マグネシウムとをもととした混合物
石綿繊維、石綿をもととした混合物及び石綿と炭酸マグネシウムとをもととした混合物
並びにこれらの混合物又は石綿の製品
並びにこれらの混合物又は石綿の製品
•• 断熱用複層ガラス
断熱用複層ガラス
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資料:輸出額は財務省貿易統計より作成、国内市場規模は平成17年工業統計調査
(2)中国住宅市場のニーズと日本の技術
中国住宅市場では、以下に示すような様々な課題を有している。これらの課題に対して日本が有する、国際的にみても競争力のある
技術(次頁参照)による対応が可能だと考えられる。
中国住宅市場の現状とニーズ
ニーズに対応可能な日本の技術
„ 資源エネルギー対策の進展
社会的ニーズ
z環境配慮型技術
– 2006年にスタートした「第11次五箇年計画」では「2010年にはGDP成長1ポイントあたりにかかるエネル
ギー消費量を2005年と比べて20%削減する」という目標が掲げられているなど、環境保全・省エネは国家目
例:「省エネ住宅」に関する技術
標となっている。
„ 高齢化社会に向けた対応
– 70年代から実施されている計画生育政策(一人っ子政策)の影響で、中国の高齢化は急速に進展している
(2050年には3人に1人が60歳以上)。
– 日本と異なり経済成長を伴わない高齢化の進展により、高齢化に対応できるだけのインフラ・社会保証制度
等の整備が大幅に遅れており、今後急速に高齢者対応に対するニーズは高まると考えられる。
z高齢者配慮型技術
例:「バリアフリー住宅」など住宅における高齢者対応技術
„ 建物品質の向上
生活者ニーズ
– 中国では厳格な施工管理が行われていないことや建築材料の不良による質の十分でない住宅が少なくない
と言われており、所得水準の向上とともに、プレファブ化も含めた現場施工の品質管理技術の体系整備など
z工業化構法等の施工技術
質への要求水準が高まっている。
„ 内装工事の品質向上
z現場施工の品質管理技術
– 中国では内装設計・工事は住手が個別に内装業者に委託することが一般的であるが、近年、業者による施
工品質のばらつきや業者の信用力低下などを背景に、内装工事の品質向上に対するニーズが高まっている。zプランニング技術
– 合わせて、2006年5月「住宅供給構造の調整と住宅価格安定に関する意見」が発表され、中低価格でかつ
中小規模の一般住宅の建設を重点とするという方向に政策転換(1戸当り建築面積が90㎡以下の物件を全
戸数の7割以上とする)されていることもあり、限られた面積で機能的なプランニングを実現できる内装工事
技術に対するニーズも高まっている。
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【参考】日本の住宅関連技術の競争優位性
特許出願数による国際比較により日本の住宅関連技術のうち競争優位性があると考えられる技術を抽出した。先に挙げた中国住宅市
場のニーズへの対応可能な技術は、国際的に見ても高水準にあるといえる。
なお、特許で評価しづらいプランニング関連技術については、日本がこれまで使い勝手の良いコンパクトな住宅を大量に供給してきた
実績があることから、ノウハウが十分に蓄積されているものと考えられる。
日本の住宅関連技術の国際競争力
高い
2
●●潜熱蓄熱材利用技術、
通風換気技術
●調湿技術
●低VOC化技術
●雨水再利用技術
●断熱技術
1
●バリアフリー設計技術
●●免震技術、制震技術
●●防汚技術、高耐久コン
クリート技術
●施工管理技術
●工業化住宅
●健康管理技術
●燃料電池技術
●RFIDタグ技術
●防犯技術
競争力
●ヒートポンプ技術
0
●防犯設計技術
●使用エネルギー管理技術
●屋上緑化技術
●太陽熱利用技術
●節水技術
‐1
低い
‐2
温熱環境
空気環境
環境配慮型技術
資源循環
高齢者配慮技術
構造安全
劣化軽減・維持管理
品質管理
工業化構法等の施工技術/現場施工の品質管理技術
評価軸
●技術の競争力は、各国の出願件数※(日/米/独/中の4カ国)の標準得点(=(得点-平均値)/標準偏差)により評価した
(※)欧州特許庁esp@cenet にてキーワード検索した結果
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(3)日本の住宅産業の強みを活かした対中国への住宅供給の在り方
日本型住宅供給モデルの展開
• 中国市場への参入にあたっては、国際水準からみて競争優位のある技術力を市場ニーズに応じた形で提供していくことが必要不可
欠であることは言うまでもないが、その際、日本型住宅供給モデルの良さを活かした住宅供給を実践していくことが重要ではないか
と考えられる。
• これまで日本の住宅産業を質、量ともに牽引してきたプレハブメーカーの住宅供給モデルは、世界に類のない、日本特有の産業モ
デルである。プレハブ住宅供給モデルでは、下図に示すように、【ニーズを的確な把握】⇒【ニーズに対する最適なソリューションの提
案】⇒【ニーズを実現するために必要な技術・ノウハウのアセンブル】というプロセスを経ることが一般的である。
• 中国の住宅市場のニーズに対応するということは、 「ニーズを満足するための技術やノプランニングノウハウ(動線計画等)をコンパ
クトな住宅空間にパッケージ化する価値を提供すること」といえる。従って、市場のニーズに応じて複数の技術やノウハウをアセンブ
ルして供給する日本型住宅供給モデル自体に競争優位があるのではないかと考えられる。
日本型住宅供給モデルのイメージ
供給者
ニーズの把握
ニーズへの提案
ニーズを実現する
技術やノウハウの
アセンブル
市場のニーズ
産官学のポテンシャルを最大限活用
• これまでの実績を考慮すると、産業だけでは進出効率が低いことが考えられ、既存のポテンシャルを活かした官学との連携は必須
と考えられる。例えば、連携の際には、1980年代以降多くの中国からの留学生が日本において建築学等の修士、博士の学位を取得
して帰国しており、産学両方に日中双方の事情に通じた人材が多数存在していることから、こうした人材の活用が重要といえる。
• また、これまで多くの日本の建築家が招聘されるなど、日本の建築デザインに関する評価は高く、地域にもよるが、若い世代を中心
に日本の住文化に関する関心は以前より高くなっていると考えられる。こうした傾向を加速するためにも、提案した住宅によってどの
ような暮らしが実現されるか、日本が提案する住まいのライフスタイルとはどのようなものかを中国国民に対してわかりやすく示すた
め、官がイニシアチブをとり、主要都市部にモデル住宅を建設するプロジェクトを推進することも一つの方法として考えられる。
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おわりに 住宅産業のフロンティア開拓の方向性
住宅ストックが充足されつつあり、世帯数の増加に伴う新築需要が期待できない今後においては、従来の基礎的な住宅不足に対
応した産業構造は見直す必要がある。
今後、所得の拡大に応じて、住宅関連の新たな需要を創造していくには、単にハコを作るだけの産業から、暮らしの場そのものを
プロデュースできる産業になっていくことが重要と考えられる。
他方で海外については、国際水準からして非常に高いレベルの技術力や、これまで培われてきたプラニングノウハウ(動線計画な
ど)をアセンブルすること、すなわち日本型住宅供給モデルを実践することで、現地の生活者ニーズに対応できる産業としての地位
を確立することが重要と考えられる。また、その際、産官学のポテンシャルを最大限活用する仕掛けが必要不可欠ではないかと考
えられる。
これまでの住宅産業
「ハコ」づくりの産業
フロンティア①
フロンティア②
暮らしの「場」提案産業への転換(国内)
日本型住宅供給モデルの展開(海外)
生活価値の向上
フロンティアC?
ソフトの付加
住宅関連支出
の拡大
フロンティアA?
ハード
産官学のポテンシャルを最大活用
住宅投資
住空間
都市空間
エリア価値の向上
売切り
継続利用
ストック価値の向上
フロンティアB?
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