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「大衆宇宙観光旅行」STA/NASAのレポートの日本語

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「大衆宇宙観光旅行」STA/NASAのレポートの日本語
大衆宇宙観光旅行 - 第 1 巻 全体概要
Daniel O'Neil
編著
アラバマ州ハンツビル、マーシャル宇宙センター
Ivan Bekey 、 John Mankins
ワシントン D.C. 、NASA 本部
Thomas F Rogers 、 Eric W Stallmer
バージニア州アーリントン、宇宙輸送協会
宇宙活動に関する協定についての研究の要約
(1997 年 2 月にワシントン D.C.ジョージタウン大学で開催された
ワークショップも含む)
内容一覧
略語集
要約
概要
序文
作業フォーラム
米国の大衆宇宙観光旅行に関する研究の運営グループ
大衆宇宙観光旅行に関するワークショップ
大衆宇宙観光旅行 に関する展望宇宙輸送と発着施設に関する検討
旅行客、乗員、生命維持、保険に関する検討
規制、認証、法律、実施方針、環境問題
短期的な規制に関する事項
短期的な方針に関する事項
長期的な事項
財政、経済、ビジネス面でのプラニングと市場に関する検討
初期の地上施設、宇宙観光テーマパーク、その他の軌道旅行の『先駆け』に関
する検討
研究および技術開発要求と、既存の宇宙関連資産の利用
調査結果の概要と提言
結果
提案
最終的な所見
参考文献等
付録 A 観光旅行に関する調査結果
付録 B 研究の主担当者
付録 C 運営グループのメンバー
付録 D ワークショップ参加者
付録 E 宇宙活動に関する協定
略語集
ASTP
先進宇宙輸送計画
CSTS
商業宇宙輸送に関する研究
EO
地球周回軌道(輸送)
HRST 高度再利用型宇宙輸送
IRR
内部利益率
ISS
国際宇宙ステーション
LEO
低周回軌道
NASA 連邦航空宇宙局
PST&T 大衆宇宙観光旅行
R&D
研究開発
RLV
再利用型ロケット
ROI
投資利益率
STA
宇宙輸送協会
要約
観光旅行は、この世界で最も巨大なビジネスの一つである。 観光収入の総額は
米国だけで年間 4000 億ドルを超え、雇用源としては第 2 位である。
宇宙情報分野における米国の民間企業ビジネスの収入は、現在のところ年間約
100 億ドルにのぼり、急激に成長しつつある。だが有人宇宙飛行分野については
そうではない。数千億ドル(1998 年時ドル換算)の公的資金を当該分野につぎ
込み、その後は年間 50 億ドルを使っているが、有人宇宙飛行の製品やサービス
に関しては、いまだに政府機関が唯一の顧客である。
まず 30 年前に、大衆宇宙旅行の市場を開拓するという宇宙の可能性に対して重
大かつ詳細な決定がなされ、そのための初期の試みが十数年前に幾つか実行さ
れた。しかし、それが困難を極めたことと、チャレンジャー号の事故によって、
その試みは終わりを迎えたのである。
近年、専門的な宇宙観光の研究が英国やドイツ、そして特に日本において実施
されてきている。米国では技術的進歩が顕著であり、宇宙飛行士が地球の低周
回軌道まで往復する研究について 10 年近い経験を有している。また本年は、6
名を収容する LEO 宇宙ステーションの組み立てが開始される見込みである。さ
らに、NASA と関連宇宙企業では、前途有望な新しい宇宙輸送の開発プログラ
ム、特に X-33 や X-34 プログラムが進行中であるとともに、関連する次世代の
基盤技術新規開発プログラムを抱えている。また、民間企業 5 社も新型の低周
回軌道往還機の設計に取り組んでいるところである。
最初の宇宙観光市場に関する研究では、ここ数年間いくつかの国、特に日本と
我が国で行われてきた。米国の研究によると、適当な安全性や快適性、信頼性
を有し、許容範囲内の値段であれば、数千万の米国民が宇宙旅行をしたいと思
っている、ということが明らかとなった。初期のビジネスでは、これらの要望
に対して、もっと高い費用を支払い、もっと大きなリスクを許容するように求
めることになるだろう。
我々連邦航空宇宙局(NASA)と宇宙輸送協会(STA)は、2 年にわたり、宇宙
活動に関する協定についての共同研究を行ってきた。この研究は、NASA と STA
の研究主導者達により、運営グループの能力と経験、不屈の想像力、そして何
日かのワークショップに参加した多数の人々を活用して行われた。共同研究に
は様々な分野から専門家や実業家らが参加している。たとえば、宇宙飛行士や
宇宙ロケット技術や運用の専門家、ホテル設計者や運営者、航空会社の企画担
当、保険会社、宇宙酔いの専門家、宇宙テーマパークの設計者、宇宙観光旅行
協会と経営者、宇宙関連の投資家、観光や宇宙政策に関する大学の専門家、政
府当局の現役(または元)宇宙関連担当官、宇宙関連の起業家、宇宙関連のラ
イターなどである。
この研究は、今現在の地球圏外観光ビジネスの拡大と宇宙空間観光旅行ビジネ
スの開拓を可能にしうる各種活動に対して、今こそ世界の目を本格的に向ける
べきだと結論づけている。実際には、やがて宇宙観光ビジネスが我が国の商業
全体と、民間の事業計画の枠組みにおいて極めて重要な役割を占めるようにな
ると結んでいる。なぜなら、有人宇宙飛行にかかる継続的な多額の経費を活用
し、宇宙に関する専門家の人的資源や設備、組織の新たな使途を見出すであろ
う、個人やビジネスの新しいチャンスが提供されるからである。
この研究では、潜在的に巨大で確固たる市場を生み出すだめに、米国政府、特
に商務省と運輸省、連邦航空宇宙局(NASA)が如何にして互いに協力すべきか、
航空宇宙関連の民間企業や観光・旅行業界と協力すべきか、という具体的な提
案も行っている。
これは、地上での観光と宇宙観光との両方を援助し、早期に適切な利益を得る
ことのできる交通手段やホテル、宇宙旅行に関する規定を作り上げるとともに、
有人宇宙飛行の資産、すなわちプロの宇宙飛行士部隊やシャトル、国際宇宙ス
テーションを利用する最善の方法を見出し、宇宙関連の活動の主導者達自身が
宇宙への旅行を検討し、宇宙船や地球周回軌道上のホテルの両方について、一
般大衆向けの宇宙旅行の安全性と快適性、信頼性を何十倍か向上し、乗客一人
あたりのコストを何十分の一に低減させるような研究開発活動を助成すること
によって、実現されるかもしれない。
大規模な宇宙ビジネスをいつ作り出せるのかについての判断は、しばらく保留
しなければならない。なぜならば、今のところ我が国の航空宇宙関連企業は主
として、米国政府が線引きをして予算を割り当てた有人宇宙飛行の方針に従っ
て動いているからである。かたや、個人の宇宙観光旅行サービスは、自由企業、
すなわち個人事業体方式で提供されなければならない。
つまり、一般大衆がいつ、どのようにして宇宙往還旅行を始められるかは、起
業家の牽引力と財源、それと市場の本質によって決定されるのである。すでに、
個人企業が宇宙船の初期設計に取り組んでいる。また、観光旅行業界は、ここ
数年のうちに始まる見込みの宇宙旅行サービスを販売しつつある。未来は我々
全員にかかっているのだ。機を逸してはならない。
概要
現在、宇宙観光旅行は航空機による地表付近の無重力旅行に限られている。そ
れでも、毎年 1000 万人を超える人々が宇宙博物館やスペースキャンプ、ロケッ
ト射場、そして政府の宇宙研究開発施設を訪れており、概算で年間 10 億円にの
ぼる市場であると見積もられる。特に、今後 10 年間のうちの早い段階で実現さ
れる宇宙往還旅行について、それを確実に約束するものである現在進行中の計
画を我々一般市民が確認できるのであれば、この市場は拡大する可能性がある。
さらに、この市場拡大は、宇宙空間でのビジネスの可能性に対して起業家や投
資資本の注意をひきつけることになるだろう。
航空機を使った無重力旅行は、現在ではさらに広く行われており、超高高度ま
で乗客を運ぶという新しいタイプの乗り物による別種の旅行があと 2、3 年のう
ちに実現されるだろう。また、いまや民営化されつつあるシャトルが、大衆宇
宙観光に関する調査とマーチャンダイジングを目的として、我々一般市民のう
ちごく少数の者を軌道上まで運ぶということもありうる。
今後、軌道上への旅行と LEO ホテルでの 1 週間にわたる滞在が一般化されると
いうことは、確実に実現可能のようであるし、実現が望まれている宇宙輸送や
居住に関してベースとなる技術的、実用的な進歩は、すでに進行中である。
米国政府は、宇宙輸送関連の民間企業と協力して、現在、打ち上げ 1 回につき
数億ドルにのぼるシャトルのコストを引き下げようとしている。これにあたっ
て、新しいタイプの乗り物を使えば、コストが数千万ドルまで低減されると見
込まれる。言い換えると、現在の技術では一人あたりの旅行経費が数十万ドル
かかるところを次世代技術が実現されると数万ドルまでコストダウンし、定期
航空便のような運用形態となり、巨大な市場が約束されているということであ
る。それと同時に、安全性や信頼性は数十倍向上するだろう。一般人用の安全
で恒久的な住宅をどのように実現し運用するか、国際宇宙ステーション計画に
よってわかり始めているだろう。
NASA と STA の合同グループは、現在の民間定期航空路線よりも大きなリスク
を伴う、高額の個人的な宇宙「冒険」旅行が今後 2、3 年で実現されるというよ
うに宇宙関連の思慮深い専門家達や観光旅行業界の人々が結論を下すのを調査
してきた。遥かに大規模で低価格な、地球軌道上での操業が今後 10 年ほどで可
能になるかもしれない。だが、こういった可能性が現実のものとなるには、心
理学、技術、運用、制度上における数多の問題を克服しなければならず、数十
億ドルの投資も必要である。調査では、先に述べた可能性について詳しく検討
するとともに、可能性を実現するための政府や民間企業の行動方針について提
案を行っている。
我が国は、今やこの方向に動き始めている。我々国民は、少し詳しく、公共投
資や民間投資がとるべき手順について考え始めるべきで、特に民主的な自由企
業経済においては、思わぬ形で国民が自由選択することによって未来が形作ら
れるのだということを肝に銘じておくべきである。真に洗練された宇宙船が毎
年 10 万人の市民を宇宙に運ぶようになる時代には、少なくとも現在の衛星通信
と同程度の規模の新規宇宙ビジネスを作り上げており、一人ひとりの宇宙に対
する見方も大いに変わっているであろうし、宇宙での活動と、国民の日常のビ
ジネスや私生活の一体化も始まっていることだろう。
序文
観光旅行は、世界で最も規模が大きいビジネスのひとつである。米国だけでも、
年間 4000 億ドル以上の売り上げが観光旅行によってもたらされている。雇用の
面で言い換えると、観光旅行ビジネスは米国内で第 2 位の雇用元である。
近年、地表から離れる観光旅行という概念に関する提案が増加している。これ
は、冒険や娯楽、ビジネスといった個人的な理由のためではなく、普通の人々
が科学者や技術者としてではなく参加する旅行である。この概念は新しいもの
ではなく、過去 30 年に渡って何回か検討されてきており、また、10 年ほど前
に実際の観光旅行ビジネスに関する幾つかの試みが米国で行われたが失敗に終
わっている。1990 年代初頭には、日本ロケット協会が、市場調査なども含め宇
宙観光に関する広範な研究の取りまとめを働きかけていた。1994 年には、我が
国の航空宇宙企業のうち主要 6 社が、商業宇宙輸送に関する研究(CSTS)にお
いて、実質的に宇宙輸送の安全性と信頼性が急激に向上し、乗客 1 人あたりの
コストが低減されうるならば、大衆宇宙観光旅行が非常に大きな市場となる可
能性があると結論づけている。 (参考文献を参照のこと。)
専門的な宇宙観光旅行市場に関する最新の調査は、米国内において非宇宙関連
企業によって行われた。この調査では、数千万という極めて多くの「平均的な」
成人国民は、自分が宇宙旅行(この宇宙旅行とは、彼らが今現在想像している
宇宙旅行の様子である)をし、多額の代金を支払っている姿を想像できるであ
ろうことが示唆されている(付録 A 参照のこと)。
だが、大規模なビジネスを迅速に立ち上げるにあたり妨げとなる障害が、かな
り残っている。
現在のところ、人々が現在実用化されている宇宙船を使って宇宙に触れるため
のコストは高額のままである。1 回につき 4 億ドルかそこらの経費がかかるシャ
トル飛行で、ペイロードを宇宙に運ぶにあたり、6 人の宇宙飛行士しか同行でき
ない。さらに、稼働中の宇宙貨物船の安全性や信頼性は、現在のところ相当低
い。現在のところ、国の任務や何人かの冒険心に富んだ旅行者については、犠
牲者が出るような失敗が 100 回に 1 回かそこらは許容される。しかし、その何
十倍も安全であることが必要とされる、一般客を運ぶエアラインのような任務
ではそうはいかない。
結局、相変わらず信頼性が欠如しているのは、現在、人々を宇宙へと送り出す
ことができるのは NASA とロシア政府だけであり、その人物は熟練したプロの
宇宙飛行士でなければならない、と一般的に考えられているからである。こう
いった、いわゆる「失笑をかうような要因」は、最近の技術の進歩に内在する
新たなる可能性や、大衆が宇宙に滞在することによって、とりわけ有人宇宙飛
行の方面で経済成長が拡大すると議会における主張が強まっていることをあま
り知らないような、いくらかの経験を積んだ航空宇宙システムの技術者達の間
で特に広まっている。また、この技術者達は、たった 2、30 年の間に商業航空
において実現された、急速な進歩を思い出さないかもしれない。実際には、一
般市民は大衆宇宙旅行という考え方を、こういう技術者達よりも素直に受け入
れるのである。
幸いにもこの 10 年間、宇宙飛行士ではない人々による宇宙旅行を技術的、経済
的の両側面において実現可能にする重要な進展が数多くの技術分野であり、さ
らなる進展も予測されている。結果として、まさに今後 2,30 年も経たないうち
に「大衆宇宙観光旅行」ビジネスで年間 100 億から 200 億ドルが産み出される
可能性がある。
それとともに、初期採算と経験の獲得、それと信頼性向上活動を周回軌道への
旅行や長期滞在が全面的に行われるのに先立って開始できるように、初期段階
の活動は地球上で、次に大気圏内、その後宇宙で実行することができる。
1996 年から 1997 年にかけて、宇宙輸送協会(STA)と連邦航空宇宙局(NASA)
は、宇宙活動に関する共同協定を通じて、大衆宇宙観光旅行の未来の可能性に
関する研究を実施し、いくつかの重大な発見をした。ここでは、ビジネスを産
み出すにあたり、それに対する障害を克服するために実施しなければならない
事項に関する提案が明示された。
いくつかの重要事項が判明してはいるが、航空宇宙関連企業と観光旅行業界が
互いに協力しながら、また必要に応じて米国政府とも協力しながら、判明して
いる障害を悉く克服し、将来非常に大きくなる可能性を秘めている大衆宇宙観
光旅行ビジネスが今後 10 年かそこらで芽生え始めるのではないか、という共通
認識が、この研究において育まれたのである。
NASA と STA による研究の基本的な目的は、米国において政府の奨励や協力、
鍵となる科学的な研究および技術開発上の投資を伴いつつ民間企業が民間資源
により作り上げている、商業的に実行しうる大衆宇宙観光旅行ビジネス の実
現可能性を見定めることである。
すでに示したとおり、実質、宇宙活動についての国民の関心が一般的に高まり
ながら、このようなビジネスが成長して米国経済に多大な利益をもたらすよう
になるかもしれないと考えられている。大規模な宇宙観光ビジネスが成功する
ために必要な、安全性と信頼性における急激な向上と単価の急激な低減がひと
たび達成されたならば、こういった顕著に進歩した宇宙の可能性を利用して、
その他たくさんの事項が宇宙で実施される。
(STA と NASA による研究の主担当者一覧は付録 B を参照のこと)
作業フォーラム
米国の大衆宇宙観光旅行に関する研究の運営グループ
NASA と STA の研究に関する運営グループは 1996 年の秋に結成された。この
グループは、宇宙観光旅行ビジネスを作り上げることに興味を持っているかも
しれない人々が出会うチャンスや問題に関して、事前評価を実施し、こういっ
たチャンスが非常に魅力的なものであり、問題のほうは対処しやすいものであ
るということを明らかにした。この運営グループでは、大衆宇宙観光旅行に関
する Workshop(下記参照)と、個人的に参加する多数の人々のための枠組みの
概要がまとめられた。最終的に、STA と NASA の研究責任者と運営グループの
報告書編集担当メンバーによって、本レポートの草稿(第 1 巻)が運営グルー
プに提出された。(運営グループのメンバーは付録 C 参照のこと。)
大衆宇宙観光旅行に関するワークショップ
大衆宇宙観光旅行という概念をさらに発展させ、我が国における宇宙関係政府
機関や大学などの組織、金融業界や航空宇宙関連企業からの参加者をまとめる
ため、1997 年の 2 月 19~21 日にワークショップが開催された。本ワークショ
ップはジョージタウン大学の Thomas and Dorothy Leavey センターにおいて
開催され、その主目的は、潜在的に大きなものと見込まれる宇宙関連の新しい
市場を発展させ、ゴールに向けての予備的な戦略方針とマイルストーン、組織
構成を決めるために実施しなければならない事項を特定することであった。ワ
ークショップは活発にアイディアが交換されるように、リラックスした作業環
境にて実施されるよう計画された。
参加者は、次のトピックについてグループ討議を行った。
宇宙輸送と発着施設に関する検討
旅行客、乗員、生命維持、保険に関する検討
規制、認証、法律、実施方針、環境問題
財政、経済、事業計画、市場に関する検討
初期段階の地上施設、宇宙観光テーマパーク、周回軌道旅行の先駆けと
なる事業に関する検討
研究・技術開発に対する要求と現在の宇宙関連資産の活用
•
•
•
•
•
•
参加者
•
•
•
観光旅行ビジネスの上層部
ホテル設計者、エアラインとビジネスの上層部
保険業者
•
•
•
宇宙関連企業
航空宇宙技術の専門家
宇宙における健康と医療の専門家
いくつかのワーキングセッションについての議題はそれぞれ、(a) 各トピックの
詳細を定める (b)大衆宇宙観光旅行に関して鍵となる事項を特定する (c) 障害
を克服するきっかけを見つける (d) 今後の処置について提言する ことであっ
た。ワークショップが終了するまでに、各チームはワークショップにおける発
表と NASA-STA 研究指導者に提出された書類から採択した一連の成果を形に
した。この結果は NASA と STA の本共同研究に関する最終報告書の中核となす
ために、前述の指導者達によって他の情報ソース(例えば第 2 巻と参考文献を
参照のこと)と共に纏め上げられた。
本ワークショップで強く打ち出された統一見解としては、大規模で収益が高く、
商業的動機に基いた大衆宇宙観光旅行ビジネスが、今後ほんの 2,3 年の間に立ち
上げられる件について、非常に現実的な可能性を有しているということであっ
た。
(ワークショップの参加者一覧は付録 D を参照のこと)
大衆宇宙観光旅行 に関する展望
宇宙輸送と発着施設に関する検討
安全に、かつ高い信頼性をもって宇宙と往復し、許容範囲内の費用と適度の快
適性であり、宇宙に行くための場所などがあるということは、大衆宇宙観光旅
行という概念の基本である。検討する内容は広範囲にわたり、宇宙輸送船とそ
の運用(既存の宇宙船を使う場合と、特別な輸送船を開発する場合の両方とも)
や、最終的には発着点となる宇宙での宿泊施設と他の施設などである。初期の
宇宙輸送船のうち一部のものは、短期旅行の宿泊施設としても使われるかもし
れない。一方、宇宙居住施設は地球上の旅行と同じだけの長期滞在に対応でき
るように発展するものと思われる。地球と周回軌道間で旅客を運ぶ適切な輸送
船は、明らかに重要なものである。これは比較的近い将来に実現可能となるだ
ろうが、その寸法や全長、旅行の洗練度によっては、必要とされる投資額が高
くなるかもしれない。極端な場合、極めて高額だろう。現在、程度に差はある
もののいくつかの米国政府関係の航空宇宙企業と、数件の純民間プログラムが
進行中である。できるだけコストが安い宇宙船とできるだけ大きな市場の発展
を実現するためには、推進システムと構造において劇的な進歩が必要である。
このようなシステムを開発するためのコストは高いものと見込まれ、研究開発
における政府の共同出資が必要となる。
大衆宇宙観光旅行について、実際の市場を検証することは、最も重要なステッ
プになる。果たして現行の宇宙船で妥当であるという評価を得ることは可能か、
ということが検証の要点になるだろう。基本的には、現在開発中の宇宙船を使
ったシャトル部隊と小規模旅行により、市場を徐々に開拓できるだろう。
市場とシステムサービスの同時発展は、概念的だがけして不可能という訳でも
なく、以下に述べるような道程を辿るかもしれない。
•
•
•
•
•
地球圏外に関連する観光旅行ビジネスの拡大
さらに高度を上げた、準軌道への冒険的な観光小旅行
準軌道への大規模な宇宙船の貨物輸送と旅客輸送サービス
周回軌道への短期間の観光旅行
低周回軌道の発着地点での滞在など、周回軌道にもっと長期間滞在する
旅行。
行く行くは LEO よりも高高度の旅行が行われることになるだろうが、本研究は
LEO を超えない旅行についての検討に限るものとする。
現在の宇宙飛行士がスペースシャトルで過ごすように、各サービスは宇宙船内
で過ごす旅行から開始すると思われるが、いずれは発着点の居住施設が開発さ
れる必要がある。どちらの場合も、宇宙酔いの問題は大抵解決されなければな
らない。あるいは、人工的に重力を発生する必要がある。幸い、前者について
は多大な関心が向けられており、後者についても可能であることが研究によっ
て示されている。
LEO の居住施設は、地上の居住施設よりも洗練された高価なものになるだろう。
突き詰めれば、地上の海を走り顧客の支持を集める巨大なクルーザーに匹敵す
るような快適さとプライバシーのサービスレベルは、宇宙空間におけるインフ
ラを改善するにあたり、極めて強い動機となりうる。
新しいタイプのビジネスを作り出すときによくあるように、論点や議論が堂々
巡りになる傾向があり、市場と財政は、一方が現存する場合にはそれに左右さ
れる。前述のような国の施設をシャトルや国際宇宙ステーション(ISS)の米国
担当部分としてある程度使用することが極めて強く要望される。これは (a) 一
般市民旅行客に関する研究開発が必要とされている (b) 鍵となる技術やサブ
システムの運用が実証されなければならない (c) 一般市民への販促を目的と
した実演が有益であると考えられる という理由による。また、ISS を居住施設
用途に近い形で、それらの施設と合同で設置することは、建築家や建設業者、
運営者と客にとって好都合ではないだろうか。
旅行客、乗員、生命維持、保険に関する検討
大衆宇宙観光旅行に付随する『人間』に関する事項や問題は、人々が宇宙と往
復するための技術的課題と同じくらい重要である。一般大衆に対応するために
要求される宿泊施設がどのようなものかを決める必要がある。経験を積んだ乗
員とキャビンアテンダントに加え、そういった人材の役割についてのニーズも
ある。また、旅客宇宙船や居住施設に要求される生命維持装置についてのニー
ズもある。宇宙酔いとその影響や、対処方法とその相互関係といったものもあ
る。宇宙飛行や宇宙船保険に対するニーズもある。できれば、これらすべてを
早期に見積もる必要がある。
多くの事項が解決されなければならず、大規模で安全、かつルーチン化した大
衆宇宙観光旅行が開始できる前までにその処置がなされなければならない。
陸上から離れた低高度大気圏内における宇宙観光旅行には、さまざまな価格帯
や宿泊施設、準備や将来多様な客が負担するリスクのレベルなど、各種オプシ
ョンというものが求められてくる。
そのオプションには、次の項目が含まれる。
•
•
•
•
準軌道旅行(1 時間未満の旅程で、宇宙輸送船の中だけで過ごす)
3 つの周回軌道の旅行(5 時間までの長さで、宇宙輸送船の中だけで過ご
す)
3 日間の旅行(LEO 上の施設での滞在も考えられる)
リゾート・パック旅行(LEO 上の施設に 1~2 週間滞在し、他の施設で
の行動も考えられる)
どのケースについても、宇宙輸送船と宇宙空間の施設については、ある少人数
の人員を収容でき、社会的基準に合致して提供されなければならない。この基
準とは、安全性、プライバシー、手荷物の取り扱い、娯楽、トレーニングや運
動用の施設、トイレやシャワー、飲食施設、医療能力の運用が容易であること
などである。たとえば、打ち上げや大気圏再突入の際の重力加速度は地上の 2
倍かそこらに制限するべきである。
大衆宇宙観光旅行(特に初期の比較的短期の旅行の場合)に関する重要な問題
の一つは、無重力状態における宇宙酔いの防止または改善である。宇宙に行っ
たことのある人間の半数近くが、重量がないことが原因で吐き気を催し調子を
崩している。処置をしない場合、吐き気やその他の症状は 2、3 時間から数日間
続く可能性がある。まず第1には、ほぼ全ての旅行者の役に立つ薬が存在する。
この薬は、眠気という副作用のためスペースシャトルの操縦士に処方するのは
不適切なものだが、今のところこの薬が多くの(場合によってはほとんどの)
旅行者の救いとなりえないだろうと考える理由は何も無い。さらに、より長期
間の滞在では、人工重力を作り出し、あらゆる宇宙酔いを根本的に予防するで
あろう技術が存在する。後者のケースでは、技術面・実用面のアプローチは、
ほかの短期滞在向け『無重力』居住施設内の回転遠心力やターンテーブルから、
果ては長期滞在において地上の通常の重量と同程度の重力を発生可能な自転す
る大規模な居住施設に至るまでさまざまである。
全体として、宇宙観光旅行ビジネスにおける有料の顧客に提供する宿泊施設、
生命維持およびその他の装備などの問題には、注意深く検討することが要求さ
れる。これらは、旅行者(特に『冒険旅行客』とされる人々)の性格や期待、
各人の宇宙滞在期間によって規模やタイプが変わることが期待される。
もう一つの重要な検討事項は乗客にサポートと個人対応のサービスを提供する
乗員の規模と技量だろう。(初期段階における商業航空の乗客サービスを振り
返ることは有益だろう。)快適度と安全性における信頼性を確保するため、お
そらくは比較的大人数の乗員が必要となる。そのような乗員のメンバーは、『エ
イリアン』のような状況になりかねない事態に対応するために並外れた技量を
必要とする。問題が生起した際に、不安を抱かせずに情報を伝達し、孤立させ
ることなく沈静化するということだ。また、乗員の一部か乗員全員は適切な医
学の素養を身につけていなければならない。さらに場所によっては、特定のサ
ービスが提供される期間と見合った、適切な医療施設が設置されなければなら
ない。さらに、より長期間の旅行(たとえば 1 週間にわたる滞在)について、
かなりの量の身体運動(宇宙空間でのスポーツなど)が期待される場所では、
適切な訓練をうけた経験豊富な医師がいなければならない。
乗客については、適切かつ徹底した準備が極めて重要になる。多分、一部のケ
ースにおいては特別な訓練が準備の中に盛り込まれるだろう。たとえば、居住
施設内のシステムに習熟することは、健康と安全を確保するという側面もあろ
う。準備作業が面倒くさいものというよりは大衆宇宙観光旅行体験では貴重な
部分であることがわかるだろう(多分、スペースキャンプに参加するようなも
のだ)。準備プロセス自体で幅広く経験を積むことは、大衆宇宙観光旅行ビジ
ネスにおいて、地上での利益を生み出す要素となりうる。
たとえ観光旅行を手頃なものにするために必要とされる技術が成熟し、それら
のシステムが開発され、試験され、配備された後でも、不確実性やリスクは残
る。これは宇宙空間の施設について当てはまり、地上~周回軌道間の輸送につ
いては特にそうであろう。乗客、乗員、宇宙船に対する保険が登場すると考え
られるが、往還輸送が長期に渡り繰り返し使用されることで信頼性が証明され
るまでは高額なものとなるだろう。第 3 者の責任という問題について、宇宙船
の開発元と運用者の両方、さらに米国政府が取り組まなければならず、この件
は現在ますます注目を集めている。旅行者が責任放棄の書類にサインをして自
分自身のリスクで行うヒマラヤ登山などといった、いわゆる『冒険の旅』にお
ける慣例のようなものは、宇宙旅行のケースについても適用できるかもしれな
い。
繰り返しになるが、輸送手段やホテルは、一般民衆の身体面や精神面、社会面
についての基本的な検討を考慮して設計と開発を行い、運用しなければならな
い。
規制、認証、法律、実施方針、環境問題
大衆宇宙観光旅行における法律上、規則上の無数の問題は、実行できそうな大
規模ビジネスが登場する前に解決しなければならず、市民の安全のためにも、
規制する責任を伴った民間代理店については特に当てはまる。この作業には、
乗客と宇宙船、発着許可と上空通過についての検討、大気汚染や太陽熱輻射(フ
レア)、周回軌道上のデブリなど、環境と安全に関する事項について、ビジネ
スの立ち上げ、ライセンス供与、認証と承認プロセスを実現するための社会政
策や既存の(または今後制定しなければならない)法の検証が含まれる。
国内外の規制に関する問題が大衆宇宙観光旅行に及ぼす影響は非常に大きい。
この新しいビジネスが適切な規格により安全なものとなり、宇宙旅行をする人
間にとっては許容範囲であるということを、議会にも一般市民にも確約するこ
とが不可欠だろう。たとえば、最初期のサービスは、現在の商業航空における
規格ではなく、スカイダイビングの規格を適用することで安全になると見込む
ことが合理的かもしれない。後者は現在の高いレベルの安全性を実現するまで、
数十年に渡る改善を要したということを思い出して欲しい。どのような規格が
適用されるにせよ、規制プロセスを整備し、それらの規制とその適用先に一貫
性を持たせることが重要になるだろう。
短期的な規制に関する事項
実験的な飛行規定、宇宙港の規制
参加同意書、宇宙交通管理
短期的な方針に関する事項
政府資産の利用、無重力飛行の民営化
大気圏再突入機の認可権限
長期的な事項
輸送システムの商業運営
商業輸送システムの運営に関する認証
所有権:請求権の登記、証書と先取得権、不干渉
環境:騒音とデブリ、陸地の上空での超音速飛行
軌道上のデブリの除去と軽減
財政、経済、ビジネス面でのプラニングと市場に関する検討
財政、経済、ビジネス面でのプラニングと市場に関する検討
さまざまな規模や価格の、いろいろなサービスを提供する、現実味のあるビジ
ネスを立ち上げる能力は、大衆宇宙観光旅行というコンセプトを実現するにあ
たり、最終的な課題となるだろう。財政上の計画や主要なニーズとそのニーズ
の発信元、現実的なビジネスのプラン作成は、確固たる新規ビジネス分野を開
拓するにあたり、基幹を成すものである。
この研究は、民間企業の関与とビジネス・チャンスに関する企業判断を残して
いるが、特定の投機などを促しているものではない。だが、この研究によって
一般的な事項とビジネス・チャンスの種類などが特定される。
たとえば、初期の宇宙観光飛行は、既存の運輸省 FAA 商業宇宙輸送担当部門の
権限のもとに運航が認可された宇宙機で行なうべきである。この事務局は、す
でに宇宙輸送機の打ち上げを認可しており、安全にかかる方針、手順や、打ち
上げ担当部署の運用と装備を厳密にモニタする法的権限を有している。
宇宙機の各種タイプとその想定される破壊モードに関する数年の検討が終了し
たら、連邦政府は旅客宇宙機の認可基準を策定できると考えられる。認可に向
けての評価を行なうことにより、宇宙機の運航者は、ライセンス体制下で要求
されるような、個々の旅行についての個別承認から開放される。
大衆宇宙観光旅行ビジネスを立ち上げるにあたり、まず最初に影響するであろ
う主要な不確定要素には、市場の需要と弾力性、輸送用宇宙機の取得と運航管
理コスト、旅行費用、旅行の安全性、信頼性と快適性、保険・規制という重荷
などが含まれる。国内のビジネス・モデルは、最終的には真に巨大な規模とな
るサービス運営の採算性が、最大でも 100~200 万ドル(概略でスペース・シャ
トルの経費の 100 分の 1、現在の再使用型宇宙機計画が目標とする経費の 10 分
の 1)という、周回軌道往復旅行 1 回あたりのコスト次第である、ということを
示唆している。さらに、全体として 99.99%以上(シャトルの 100 倍以上)の安
全性が必要とされる。宇宙旅行中に非常事態が発生した場合に、宇宙機が地球
に帰還して安全に着陸できるように設計される必要がある。最終的に、宇宙輸
送機の利用率が極めて重要となり、点検時間も 24 時間程度(現在、個々のシャ
トルの飛行後点検に対して、約 100 分の 1)となる。
これらの技術上、運用上の目標が達成されると、チケット 1 枚あたりの価格は
乗客 1 人につき 50,000 ドル未満にまで下がり、行く行くは 10,000~20,000 ド
ルの範囲に達するかもしれない(その時までに、米国経済が過去 10 年と同じペ
ースで成長し場合、実効価格だと 1997 年ドル換算で 1.5 分の 1 弱程度に下がる
こともあるし、1000 万世帯を超える家庭が、1997 ドル換算で年間 10 万ドルの
収入を得ることもあり得る)。市況予測はいずれも、大規模な市場が実現する
ことを示唆しているが、市場の弾力性という面では予測の内容が著しく異なる。
だが、チケット料金が 5 万ドルを十分下回れば、年間 50 万人程度の宇宙旅行客
がいると考えられる(年間、これだけの大人数を輸送するためには、年間数億
ポンドのペイロードを宇宙まで往復させる必要があり、この量は現在の米国に
おける、民間の商工業宇宙輸送ペイロードの約 1000 倍にあたるが、商業エアラ
インで輸送される量の何十分の 1 にも満たない)。
ビジネス概念のモデルが構築され、そのいくつかは高い年間内部収益率を達成
可能であると示唆している。だが、このような結果は、発展の初期段階におけ
る、市場の弾力性に関する調査と、宇宙輸送サービスのコスト算定によって大
きく左右されるものと認識されている。これらは、それぞれ結構な割合で不確
定要素を有しており、宇宙旅行に対して一般大衆が現在持っている希望も、10
年経つうちに変わるかもしれない。したがって、このような経済的実現可能性
の見積もりが根本的に間違っている場合もあり、2、3 年ごとに更新すべきであ
る。
ビジネスの立ち上げ過程の一部として、ニッチ市場も含めた付加的なビジネス
の形成が非常に重要となる。たとえば、世論調査データによると、非常に高価
な「宇宙冒険旅行」を、たとえチケット 1 枚あたり 100 万ドルになろうかとい
う額で、肉体的なリスクをかなり伴うものであったとしてもし続ける人々もい
るだろう。この過程の中には、このチャンスに対する一般市民の意識を改革し、
リスクと実現性に関する大衆のイメージを変えるために注意深く計画された広
報活動と、商業キャンペーンが必要である。これは、来るべき顧客への情報提
供という見地だけではなく、潜在的な投資家の関心に応えるという見地からも
非常に重要である。
大衆宇宙観光旅行という冒険的事業において考えられるリスクと不確実さのレ
ベルは、もちろん、このような事業に対して利用できる資金とコストに直接影
響する。
全体として、これまでの予想では、許容範囲内の安全性と信頼性、快適性と手
頃感を持ち、十分に大きな市場を提供するように計画された地球周回軌道への
輸送システムサービスが成長すれば、財政上実現可能な大衆宇宙観光旅行ビジ
ネスが民間企業によって産み出される可能性がある。
また、どのような性格の宇宙空間旅行であろうと、それが一旦始まって、定期
的に続けられれば、今日の地球圏外観光ビジネスが活況を呈することになるだ
ろう。
初期の地上施設、宇宙観光テーマパーク、その他の軌道旅行の『先駆け』に関
する検討
大衆宇宙観光旅行事業の形成をサポートするため、各種地上施設や地上活動が
利用される。この宇宙観光旅行事業には特に、一般大衆が実際の宇宙旅行を利
用できるようになる前であっても、潜在的な市場の需要を開拓するために立ち
上げられるビジネスも含まれる。これらの施設としては、大衆宇宙観光旅行の
発着施設周辺で発展するような、テーマパーク、旅行のための訓練施設、その
他のそういった公共の準娯楽施設が含まれ、その施設の機能としては、一般大
衆に宇宙体験の準備をさせるのと同時に、この事業によって収益をあげること
の両方が考えられる。これらのビジネスが成功することは、公衆の意識の向上
と、それに続く一般大衆による実際の宇宙観光旅行に対する資本額の増加の両
方に置いて、非常に重要となりうる。この場合もやはり、これらの活動は、現
在の地上を対象とした観光旅行業界に関して移行のための活動も提供する。
前述のとおり、地球をベースとした宇宙観光旅行が既に存在し、繁盛している。
だが、一般大衆の宇宙旅行に向けての効果的な『先例』を実現するためには、
地球圏外の観光旅行がその市場対象を『スターウォーズ』的なアプローチの子
供や青年から、かなり成功した平均的な知的職業の成人に重点を置くように拡
大しなければならない。民間企業は、トレーニングキャンプや宇宙キャンプ、
テーマパーク、宇宙関連商品による収益のほか、このようなタイプの施設と娯
楽活動、たとえば将来の商業宇宙港の周辺施設や活動によって、多額の利益を
得るとも考えられる。このような活動は、実際の宇宙観光が始まるよりも前に
は十分に開始されるだろうし、一旦宇宙旅行が現実のものとなった後は、成長
を続けるだろう。
大衆宇宙観光旅行ビジネスを急速に生み出すためには、おそらく、情報重視の
各種『先行』活動が必要となるだろう。たとえば、宇宙観光旅行グループを発
展させ、関連するもの、たとえば映画や賞品、CD、本などの娯楽を促進するた
め、コミュニケーションの努力を大幅に拡大する必要がある。さらに、一般大
衆の宇宙旅行を促進するために映画やその他のメディアの有名人を利用するこ
とも、確固たる戦略となりうる。民間の非営利組織(新たに創設された宇宙観
光旅行協会など)がこのような情報重視の活動を主導し、各種の事項について
コンセンサスを得るのを助けることができるだろう。これは、重要なステップ
である。
たとえば、バーチャル・リアリティ体験が提供されることもあるだろう。地上
において、宇宙飛行士に先導された客が、ある程度の有人宇宙飛行を体験する。
こういった体験は、「本物」を求める一般大衆の欲求を刺激すると期待される。
また、民間・個人企業の宇宙投資を担当する、連邦政府の上級職員2、3名が、
今や軌道への旅行を行なう時期だといえる。彼らの担当範囲は基本的に宇宙自
体であり、地上は管轄外である。また、彼らが軌道旅行を実施することは、宇
宙旅行がもはや宇宙飛行士だけのものではない、ということを国家の目の前に
提示できるのではないか。確かに、宇宙を一般市民に開放する出だしとして彼
ら個人が旅行に参加することは、太陽系に探査機を送り込むのと同じくらい重
要である。そうするなかで、大統領や国防省長官、国務長官、つまり、我が国
の関心をよく理解してもらい、十分支援を得られるようにすうことを保証する
ため、地球の周りの危険な領域をしばしば訪れる立場の人のような連邦政府職
員の旅行も同じように行なうことになるだろう。
最終的には、『先行』的な活動が、初期の大衆宇宙観光旅行ビジネスにおいて
手始めに収入をもたらし、友人宇宙飛行活動は NASA の活動とは別物であると
いう大衆の理解を新たに得るにあたり、重要なものとなる。
研究および技術開発要求と、既存の宇宙関連資産の利用
将来、民間資本による大衆宇宙観光旅行ビジネスの立ち上げを可能にするため
に連邦政府が引き受けるべき、適正な研究と技術開発がいくつか存在する。こ
れには、これまでにない市場環境のもとで民間企業が受け持つには、あまりに
も危険で長期に渡るような技術開発や実証、従来から政府主導で実施している
ライフサイエンスのような研究プログラムが含まれる。我が国の衛星通信やリ
モートセンシング業界において投資を進める中で政府が果たす役割は、有益な
先例となり続けるだろう。
政府が所有する宇宙関連の資産、たとえばスペースシャトルや国際宇宙ステー
ションは、科学、技術、実用面での調査の実施や、さらには市場の振興、初期
の民間人の旅行用に利用されるべきである。シャトルの運用に関する米国の方
針は、この後者の用途を可能にすることに対する要望の度合いを見込んで、検
討すべきである。シャトルの民営化は、現在民間企業の宇宙共同体によって実
施されている初期運用とともに、進行中である。同じような ISS 運営の民営化
も、熱心に研究される必要がある。
現行の技術と運用方法をベースにした EO 輸送宇宙機は、幅広く一般大衆を対
象とした輸送用としては安全性や信頼性が不十分で、運航にもコストがかかり
過ぎる。たとえば、50 名の乗客を運ぶように構成された現在の NASA のスペー
スシャトルを利用した宇宙観光旅行ビジネスは、運航と整備コストをカバーす
るだけでも、チケット 1 枚あたり 1000 万ドルかそこらの料金がかかることにな
る。比較的短期間で、シャトルの改良と運航の拡大により、この料金レベルの 2
分の 1 から 4 分の 1 にすることが可能かもしれない。こういった料金であれば、
ビジネスを立ち上げることが可能だが、よくて年に 2、3 人の客にサービスを提
供するにすぎない事業になるだろう。
高価な公共資産の利用を、根本的に平等主義のやり方で行なうことを保証する
ため、民間企業は国の協力によって宝くじやオークションを検討することがで
きるだろう。
宝くじにより、専門家ではない宇宙旅行者の訓練やサポートの手続きにあてる
ために必要となる資金が得られる。オークションの目的は、個人旅行サービス
の最初のチケットを、いくらで販売できるかを決めることだろう。この答えに
より、初期の宇宙観光市場にるいての不確実性が著しく低減されるだろう。宝
くじとオークションは、それぞれ 2 回だけ実施され、1 回はシャトル旅行用の宝
くじとオークションで、2 回目はシャトルと宇宙ステーションを組み合わせた旅
行用である。これらのテストを行なった後、宇宙観光は民間団体単独で実施さ
れることになるだろう。米国移民帰化局が現在、国際ビザの抽選を行っており、
連邦通信委員会(FCC)が電磁スペクトルの一部を競売にかけていることに注
目すべきである。これは、興味深く、かつ心強い先例である。
一般に、スペースシャトルは R&D 用途や、市民を対象とした適度な初期にお
ける『冒険旅行』用、基本的な教育的活動や商業的活動に適している。その他
の R&D には、国際宇宙ステーションで実施できるものもあるが、その能力は
民間企業の旅客モジュールによって補強されるべきである。これらのシステム
へのアクセスは大衆宇宙観光旅行ビジネスを発展させるうえで、非常に役立つ
ことになるだろう。
宇宙へアクセスする際の単価を低減するために、R&D プログラムが進行中であ
る。たとえば、NASA とロッキード・マーチンの X-33 技術開発・実証プロジェ
クト(再利用型ロケット(RLV)プログラムの一部である)は、新技術と運航
という両方のアプローチに力を注いでいる。この投資は、チケット 1 枚あたり
のコストを各 10 万ドルまで削減することにより、新たなビジネスの立ち上げを
可能にしうるものである。だが、このコストレベルは真の『巨大市場』を発展
するには、やはり高額すぎる。おそらく、シャトルや RLV についてはもっと安
い『目玉商品』価格が設定でき、地上での宇宙旅行関連の商業活動も含めるこ
とによって全体としては、許容範囲内の利益が獲得されるだろう。
先進宇宙輸送(AST)プログラムを通じて、NASA は最終的にチケット価格を 5
万ドル未満まで引き下げるような技術の開発も続行している。
このプログラムには、次の内容が含まれる。
•
•
•
•
•
再利用度の高いエンジンと機体
複合推進、またはコンバインド・サイクル推進
打ち上げ補助用の機外の動力か、燃料の大半をなくす
先進的な製造、運転・運航(自動化、ロボットシステムを含む)、推力
増強システム(最終段よりも上を含む)
地上要員と機上の運航要員の人数をさらに劇的に削減できる、先進運航
技術
これらの技術の検証は、将来の X-33 技術実証プログラムの後継プログラムに引
き継がれるべきである。
軌道上の居住施設でたった 1 週間程度滞在することでも、この種の大衆宇宙観
光旅行にかかるコストが著しく増大するだろう。許容範囲内の単価とするため
には、国際宇宙ステーションで使われている技術やコンセプトよりも、もっと
先進的な技術と、運用コンセプトが必要となるだろう。また、政府はこういっ
たインフラにかかるコストを低減するために R&D 活動を開始すべきである。
調査結果の概要と提言
宇宙の最前線は、政府のミッションや宇宙飛行士にだけ開かれているだけでは
なく、今や個人や民間企業ビジネスにも開かれており、宇宙に関して包括的な
重要性を有する課題である。これは、民主主義のアメリカ合衆国にとって特に
重要である。この調査研究は、米国政府と民間企業が 21 世紀の早い時期に大勢
の一般市民が宇宙にアクセスするにあたっての障害を認識し、それを克服する
ためのプロセスを本格的に開始するうえで、重要な役割を果たすべきである。
全く新しい人類の体験は、大半の人々が想像しているよりもずっと実現に近づ
いているのではないか。
この実現に資すると期待される、研究の所見と提案を以下に示す。
結果
NASA と STA の研究で判明した事項は以下のとおりである。
•
宇宙観光旅行に関する専門的な研究が英国、ドイツ、あと特筆すべきは
日本で実施されている。日本の研究には、大勢の観光客を輸送する宇宙
機の概念設計も含まれている。
•
実質、『宇宙観光』は米国で既に存在するものである。これは、一般に
は宇宙志向の博物館、宇宙機発着施設、宇宙研究開発センター類、宇宙
キャンプ、宇宙関連活動センター類などを訪れる数百万人の観光客とい
う形態で存在している。そして、航空機での無重力旅行も提供され始め
ようとしている。
世論調査では、本当に宇宙に行くことに対する公衆の関心が、大きく広
がりつつあり、また現実のものとなっているという結果が、一貫して得
られている。だが、高度に訓練された政府から給料を貰っている宇宙飛
行士だけではなく、じきに普通の人たちが、宇宙時代の黎明期以来、ほ
んの僅かな人々しか享受できなかったような宇宙旅行に行くことが可能
になることを理解している者はほとんどいない。
現在の地球圏外観光旅行ビジネスを拡大するため、迅速な措置をとるべ
きである。さらに、近く実現する宇宙機や技術を使って、小規模の事業
を開始することが可能である。
たとえば、新しい企業 2 社は、宇宙関連の地上および大気圏内旅行を提
供し、5 年以内に高度 100km の旅行を実現できるようにするため、会社
を設立したと公表している。他の企業も同様の宇宙観光サービスを検討
しつつあることがわかっている。
意見広告と宣伝によって、この件に関する一般大衆の意識を高めるうえ
で、著しい差異が生じうる。大衆宇宙観光旅行に関連する販売促進と教
育キャンペーンにおいて、著名な公人や宇宙担当の高級官僚は、非常に
効果的な役割を果たすかもしれない。
投資に対する経済的収益は、大規模な冒険的事業の資本をひきつけるの
に十分なほど高いものとなるのではないか。だが、初期の解決すべき問
•
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•
題は、高価格で小規模な市場を提供するような利益の多いビジネスを作
り上げることに重点をおいている。このようなビジネスが成功する方向
に動き、主要な問題が十分に対処されれば、財政上実現可能な、大規模
低価格ビジネスが始められるだろう。
結果として、大衆宇宙観光旅行は次の世紀の最初の数十年で大規模で成
長し続ける営利事業として頭角を現す可能性を秘めている。急速に成長
した大規模な民間奇病の衛星通信、航法・位置標定、遠距離センシング
といったビジネス分野における、我々の有する経済面での肯定的な経験
は、宇宙観光旅行に関する見込みに希望を与えるはずだ。
半ダースの人間(と 40,000 ポンド以上の積荷)が周回軌道へのシャトル
往復飛行を行なうコストは、現在のところおよそ 4 億ドルで、1 回のシャ
トル飛行につき整備機関が約半年である。また、致命的な事故が発生す
る確率は約 1%である。宇宙飛行のこういった特徴は、次世代の技術によ
ってだいたい数十分の 1 に低減することができるし、言い換えれば商業
航空における成功の根底を成すパターンに従えば、そのまた次世代では
さらに数十倍程度低減される。
だが、幅広い層が参加できる一般大衆の観光旅行向けの『大衆相手の市
場』が発展できるためには、遥かに低コストで安全性・信頼性がずっと
高い、新しい宇宙機が必要である。また、この宇宙機を取得するために
は、宇宙関連企業と政府が進める比較的大規模で継続的なプログラムが
必要となる。
米国防総省と NASA の DC-X/『Clipper Graham』技術の開発と成熟し
たプログラム、それと民間企業と連邦政府の協力による現在進行中の
X-33、X-34 プログラムが最も有望な前進ステップである。
NASA が提示した 1998 年の戦略計画(NASA 方針(NPD-1000 - 1000.1)
は、『管理者の戦略的展望』の項目で『誰でも、好きなときに実現でき
る宇宙旅行を提供するための革新的な技術進歩をいかにして実現できる
か?』と問うているので、正しい方向に動いている。
一般旅行客の深刻な宇宙酔いを、無くすとは言わないまでも低減する方
法を研究しなくければならない。
ロケットの打ち上げが今よりもずっと多くなると、打ち上げ施設の騒音
と大気汚染に関する懸念が増大し、スペース・デブリの衝突に関する心
配も増える。現実的な話として、これらの懸案事項に対処しなければな
らない。
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さらに、近年のミールでの経験により、宇宙ホテルの火災探知・消火機
能の必要性が、その他の安全性向上に関する要求と共に、重要視されて
いる。
新しい旅客宇宙機の一群を取得するための、迅速で大胆な年賦償還要求
を検討するうえで、年間数十億ドルの NASA と DoD の宇宙輸送市場を
検討すべきである。
宇宙空間での体験を輸送機内だけに制限することは、初期段階のビジネ
スでは許容できる(たとえば、短時間だけ宇宙空間に出る『飛行』など)。
このような感じで、初期の準軌道往還旅行が後の軌道往還飛行への初期
のステップとなるはずである。
ただし、大規模市場の拡大を可能にするためには、軌道上の居住施設が
必要となるだろう。進歩しつつある現在の技術(たとえば、国際宇宙ス
テーションの場合など)は適正なスタート地点だが、宇宙で人が暮らす
には、そのコストを著しく低減するため、さらなる研究が明らかに必要
とされる。
規制や指針、立法・法定、保険に関する疑問は、公衆の安全性と比較的
リスクの高い冒険旅行を立ち上げるビジネスの実現とのバランスをとる
という観点から対処する必要がある。
スペースシャトルを運航するための統合宇宙アライアンスは、シャトル
を公共用途とのほかに民間での利用にも供することに繋がるもので、こ
のアライアンスの設立は、制度の重要かつ前向きな変化である。これは、
有人宇宙飛行分野において、有人宇宙飛行ビジネスのチャンスに関して
連邦政府と同様に民間企業の市場を模索している航空宇宙企業にとって
の先達となることもあり得る。
非常に高速で飛行する長距離型の準軌道旅客・貨物輸送の展望も登場し
てきており、概念的に関連のある、軍用機や運航面での開発プログラム
によって、この見込みがいっそう強められることとなるだろう。これは、
大規模宇宙旅行の発展に関する、最初期の手段を提供することになるか
もしれない。
既存の組織と非営利団体は両方とも、主要な新規ビジネス活動として成
長するために、一般大衆の宇宙へのアクセスを実現するにあたり、重要
な役割を果たしうると考えられる。
大規模な民間企業の宇宙観光旅行ビジネスが、民間の宇宙科学と探査活
動について、一般大衆の支持基盤を強化するだろうということは、民間
の宇宙関連主導者達から十分に評価されるべきである。支持基盤の強化
•
がなければ、これらの活動は、一般大衆による財政面での支援が削られ
ることにより、だんだん抑制されていく状態が続くことになるだろう。
米国政府ではなく、自由企業体制のビジネス業界だけによって市場が前
向きに判定されるについて、幅広い宇宙観光旅行ビジネスサービスが利
用可能となる、ということを十分理解しなければならない。また、大規
模な一般大衆の観光旅行ビジネスは、もし以下に述べるような事象が 1
つ、または複数発生した場合には、そうでない場合よりも長い年月がか
a. チャレンジャー号のような、人命の損失を伴う宇宙関連の事故
b. 我が国の経済状況における、長期に渡る著しい景気の下降
または、あるいは上記に加えて
c. ビジネスの本当の経済情勢に対する、航空宇宙業界、観光旅行業
界、政府の不十分な認識
提案
大衆宇宙観光旅行ビジネスの発展を促進するため、以下に述べるステップを提
案する。
•
•
•
•
宇宙関連の米国の方針は、大規模な大衆宇宙観光旅行ビジネスの立ち上
げを積極的に推進するという目で検証されるべきである。
短期的には、地球圏外の観光旅行ビジネスの拡大が奨励されるべきであ
る。テーマパークとバーチャル・リアリティ宇宙パーク、宇宙キャンプ、
訓練、製造、発着施設、利益を生み出すその他の宇宙旅行の『先行モデ
ル』を検討するべきである。
宇宙産業関連企業、宇宙関連の金融・保険業界、テーマパーク開発会社、
エアラインと客船の運航者、ホテル建設業者と運営者、冒険ツアーの経
営者などはすべて、投資対象を見極めるために、大衆宇宙観光旅行ビジ
ネスの前途に対する知識を持つべきである。
これらの提案に続いて、あらゆる分野の人材や業界が従事することが、
今のところ非常に重要である。あらゆる分野とは、たとえば金融、エア
ライン、客船、ホテル、地上の観光旅行、航空宇宙である。小規模なビ
ジネスや起業家の抱きこみを促進することは、特に重要である。
•
•
•
•
•
非営利の非政府組織(たとえば宇宙観光旅行協会)の設立や、既存のそ
ういった組織の支援は、必要なコミュニケーション活動においてある役
割を果たすことを目指すべきである。
航空宇宙工業協会(AIA)、アメリカ航空宇宙学会(AIAA)、米国電気
電子学会(IEEE)、全米旅行産業協会(TIAA)は、ビジネス面での関
心と専門家の目を、宇宙観光旅行に対してこれまでよりも向け始めてい
る。
観光旅行に関する教育プログラムを提供している大学は、これから地球
上、大気圏内、宇宙空間における旅行とビジネスにすいて検討し始める
べきである。
商務省は、国による民間宇宙プログラムが観光旅行ビジネス業界を適正
に促進し、またそれをサポートするように、運輸省や国防総省に絡む事
項や発展中の宇宙観光旅行ビジネスも含め、大衆宇宙観光旅行に関する
事項の調整に焦点を合わせるべきである。各省および NASA はこの潜在
的に巨大な、新しい宇宙ビジネスの可能性に対して、今こそ本気で取り
組むべきである。
連邦政府の役割は、成功をおさめた航空業界や衛星通信業界、宇宙遠隔
センシングビジネスの発展で経験したリスクと同じだけの、民間企業の
初期段階における技術的、運用上、市場に関するリスクを低減するため
に、民間企業と密接に協調するものであるべきである。つまり、 次のよ
うにあるべきである。
a. 現在の民間航空業界のように、宇宙旅行の安全性と信頼性、快適
性を何十倍かに向上させ、単位コストを何十分の 1 に引き下げる
技術の開発と実証を実証する。ロケットの打ち上げ頻度が高いこ
とによる騒音問題と、大気汚染、デブリの衝突に関する懸案事項
に対していかに対応するかを検討する。低コストの軌道上居住施
設の提供方法を考える。さらに、一般市民の旅行者が被る宇宙酔
いの症状を緩和する方法を考える。
b. NASA の学生が低重力における飛行を体験するプログラム(この
プログラムでは、大学生が NASA の KC-135 機上で微小重力環境
下の実験を行なう)は、一般旅行者の R&D と初期の基本的な『実
証的』販売促進活動を、衛星通信ビジネス分野で続けているもの
と同程度に実施するために、シャトルや国際宇宙ステーションの
米国部分(民間のモジュールによって拡大する)といった公共の
宇宙資産を利用することを、認めるものである。
•
•
•
c. 年間数十億ドルの費用がかかる、連邦政府自身の宇宙輸送に関す
るニーズを、想像力を働かせて民間企業が宇宙機の取得にかかる
初期コストを確実に償還するための市場として利用する。
d. 一般大衆に宇宙観光旅行の可能性についての情報を提供する。こ
のようなコミュニケーションは、比較的近い未来に政府と民間企
業の協調の結果として、宇宙飛行士だけではなく普通の人々も宇
宙旅行に行き始めることができるべきだ、という考えに焦点を当
てたものである必要がある。
e. 民間宇宙業界と宇宙ビジネス業界を担当する連邦政府の上級職員
が、自ら宇宙旅行に行くことで『宇宙を一般大衆に市場開放する』
うえで主導権を握る検討を行なうのかどうか確認する。
f. 新手の運用環境下において、公衆の安全にかかる規制と、ビジネ
スの成功の促進のバランスを慎重にとる。
g. 大衆宇宙観光旅行に関する会議を毎年開催することに協力する。
政府後援の R&D に対する投資は、下記のとおり特別に対処するべきで
ある。
a. 旅行代金を引き下げるため、特に技術の発展と熟成を進めること
により、1 フライトあたりのコストを 10 分の 1~100 分の 1 に低
減する。この技術には、ロケットエンジンなどが含まれ、低コス
トで高い安全性、信頼性、快適性を備えた輸送機のために必要と
される技術である。
b. より長期間、LEO 訪れるのにかかるコスト、つまり人間が宇宙に
居住するコストを、高い安全性と低コスト、高信頼性を実現する
技術を発展・熟成することで、劇的に引き下げる。
c. 宇宙酔いの影響を、一般市民が許容可能なレベルにまで低減する
ための、実証方法。
d. 高品質、高信頼性の『生命維持』能力(たとえば非常脱出や宇宙
空間での健康管理など)の利用が可能となる。
e. 大枠で環境に関する事項。
エアロアストロ、ボーイング、ケリースペース、キスラー、ロッキード
マーチン、パイオニアロケットプレーン、ロータリーロケット、ビラテ
クノロジーなどの企業の民間宇宙輸送活動が大衆宇宙観光旅行の前途を
特に注視するべきであるのと同じように、宇宙産業企業と NASA の協力
による X-33・X-34 プログラムの主導者達もそれに注目すべきである。
一般市民が利用する初期段階の R&D や商業目的の宇宙旅行のうち、特に
公共資産を利用するものが、平等主義のやり方で実施され、個人や民間
企業がそれに支払うことができる額を確認するために、民間資本は宝く
じやオークションを利用する可能性について、検討すべきである。
最終的な所見
我が国の民間企業が宇宙観光旅行システムやサービスを一般大衆に提供する可
能性についてまともに取り組む中で、我々はここで議論されている事項が、地
球外活動に対するものの見方や、その活動に参加することに関する根本的なチ
ャレンジにほかならない、ということを十分に認識するべきである。このチャ
レンジを政治、社会、経済面における革命と特徴づけるのは、適切ではない。
我々は今、宇宙の門戸を一般大衆に開くチャンスを見ているのだ。これは、宇
宙に出る人数が非常に限られたものであり続けるだろうとか、人体へのリスク
を抱えつつ、政府の権限において、ほとんど納税者に支えられている科学的・
技術的活動を行なう、高度に訓練された専門家に限られるだろうという、ここ
50 年の風潮からすると『180 度の大転換』である。
今や、アポロの時代に非常に多くの人々が抱いた、いつか私的な目的で宇宙旅
行をできるだとうという夢は、ついに実現に近づきつつある。
だが、このような旅行を実現するためには、科学者、技術者、システムサービ
ス運営者、政府職員、投資信託会社、実業家、産業界の重鎮、起業家などが宇
宙関連のインフラを作り出したり、宇宙関連サービスを提供したりするやり方
を根本的に変える必要が出てくる。
この報告書が、宇宙におけるまったく新しい人間のあり方に対して広く注目を
集めることを望む。この人間のあり方とは、実現可能なもので、そして実現す
べきものである。また、多くの人々が責任を持ちつつ比較的早い時期に、これ
が実現するのをサポートできるようなやり方を提案することが望まれる。
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", Final Report, by (the then companies of) Boeing , General
Dynamics, Lockheed , Martin Marietta , McDonnell Douglas and
Rockwell, sponsored by NASA 's Langley Research Center; see
especially Sections 3.5.6 'Space Tourism'
5. Thomas F Rogers , Winter 1995, " Space Tourism: The Perspective
from Japan and Some Implications for the United States ", The
Journal of Practical Applications in Space , Volume VI, Issue No. 2,
pages 109-149
6. P Collins , R Stockmans and M Maita , 1995, "Demand for Space
Tourism in America and Japan, and its Implications for Future Space
Activities ", Advances in Astronautical Sciences, Vol. 91, pages
601-610
7. Papers from the International Symposium on Space Tourism ,
Bremen, Germany; March 20-22, 1997.
8. National Research Council , July 1997, " Advanced Technology for
Human Support in Space ", National Academy Press, Washington,
D.C.
9. G Harry Stine , October 1997, " Living in Space: A Handbook for Work
and Exploration Beyond the Earth's Atmosphere ", M Evans and Co.
Inc, New York
10. (Anon), 7 April 1997, " Studies claim space tourism feasible
", Aviation Week and Space Technology , April 7, 1997; page 58
11. (Anon), 4 August 1997, " USAF Set to Fly 'Mini-Spaceplane'
", Aviation Week and Space Technology , August 4, 1997; pages 20-21
12. John C Mankins , August 1997, " Highly Reusable Space
Transportation: Strategies that May Enable $200/kg Transportation
to Earth Orbit ", Paper S7088, NASA Headquarters; Washington,
D.C.
13. Jay P Penn and Charles A Lindley , " Requirements and design for
space tourist transportation ", The Aerospace Corporation, 2350 E. El
Segundo Blvd., El Segundo, California 90245-4691, unpublished.
14. (Anon), 17 February 1998, " Ambitious Entrepreneurs Planning to
Send Tourists Into 'Astronaut Altitude' ", New York Times, Page A-16
15. Robert L Haltermann , 30 November 1996, "Evolution of the Modern
Cruise Trade and Its Application to Space Tourism ", unpublished,
available on STA Website.
以下も参照のこと。
a. 宇宙観光に関する日本のウェブサイト: http://www.spacefuture.com
b. 宇宙観光に関するSTAのウェブサイ
ト: http://www.spacetransportation.org
付録 A
観光旅行に関する調査結果
フロリダの Yesiawich, Pepperdine and Brown は、コネチカットの Yankelovich
Partners とともに、宇宙旅行をすることに関する米国民の関心について、1500
世帯の家庭を対象としたアンケートを 1997 年に実施した。
この調査の結果は、1 億 3 千万人の米国民に対しても当てはまる。この人数は、
『宿泊が必要な 75 マイルよりも遠い場所への観光旅行を 1996 年に 1 回以上行
った 米国の全消費者である。つまり、宇宙観光旅行市場の見込みを推定する
ために、スペースシャトルで旅行しそうで、かつ(宇宙機のような)乗り物で
の遊覧旅行をしそうな人の割合をこの人数に当てはめることができる。』
Yesiawich, Pepperdine and Brown の調査戦略マーケティング部門の上級副社
長である Dennis A. Marzella は、わざわざこの調査データを多少詳しくレビュ
ーして、下記の表に入れる値を考えてくれた。
質問
割合
(%)
将来、2 週間のスペースシャトル旅行をすることに興味がありますか?
33.9
もし興味があるならば、そういった体験に対して 1 人あたり幾ら支払
えますか?
500 ドル未満
11.7
500 ドル~1,999 ドル
22.5
2,000 ドル - 4,999 ドル
26.7
5,000 ドル~9,999 ドル
22.5
10,000 ドル~24,999 ドル
9.1
25,000 ドル~49,999 ドル
<1
50,000 ドル~99,999 ドル
<1
100,000 ドル以上
7.5
平均
この先 10 年間に期待できる宇宙旅行の進歩を予想した場合、乗客を宇
宙に送り出し、客船のような居住空間と催し物を提供する、宇宙遊覧
船での旅行に対して、興味はありますか?
付録 B
研究の主担当者
*1997 年 1 月以降。 民間コンサルタント。
10,812
ドル
42.2
** 1996 年の 11 月以降。民間コンサルタント。
NASA
Ivan Bekey*
John Mankins
Daniel O'Neil
William Piland
Barbara Stone**
STA
Thomas Rogers
Eric W Stallmer
研究関係者
David Gump
Robert Haltermann
STA 行政支援
Bernice Coakley
Ann Pryor Spitsbergen
付録 C
運営グループのメンバー
Dr. Buzz Aldrin
宇宙飛行士-始めて月面に降りたメンバーの一人。米国宇
宙協会理事会の議長。作家。
Ben Bova
未来物小説の作家で、最新刊は宇宙観光旅行を提唱したも
のである。また、宇宙関連のノンフィクション作家でもあ
る。Analog and Omni magazine の編集者。
Robert Citron
キスラー・エアロスペースの共同設立者。NASA の契約で
スミソニアン研究所の宇宙研究プロジェクトを運営してい
る SPACEHAB 株式会社の発起人。早期『宇宙観光』関連
の起業家。
Dr. Suzanne D
全米旅行産業協会の上級取締役。
Cook
Dr. Patricia S
Cowings
NASA エームズ研究センターの精神生理学研究所のトッ
プ。いくつかのシャトル・ミッションの主任担当者。
Duane Edelman
ノースウエスト航空の将来プロジェクト担当者。
Donald Fuqua
米国航空宇宙工業会(AIAA)理事長。元下院議員。元下院
科学部会議長。
Jake Garn
元・NASA プログラム監督担当上院議員。技術者以外でシ
ャトル飛行を行なった数少ない人間の一人。
Lori Garver
NASA 本部の政策計画局の上級政策アナリスト。元・NASA
役員連絡補佐官。米国宇宙協会の元理事、NASA 諮問委員
会メンバー。
Frederick H Hauck AXA の社長兼最高経営責任者。数回の宇宙飛行を行なった
元宇宙飛行士。
Professor Donald E ジョージワシントン大学経営・公共政策研究科観光政策学
教授、国際観光研究学会理事長
Hawkins
Neil Hosenball,
Esq.
連邦航空宇宙局(NASA)元弁護士
Dr. Max Hunter
宇宙組合会長、航空工学エンジニア、軌道まで単段ロケッ
トで打ち上げる(SSTO)完全に再使用可能な宇宙輸送機
というコンセプトの主要な提唱者。
Dr. John M
Logsdon
ジョージワシントン大学教授。GWU 宇宙政策機関会長。
作家。宇宙政策に関する米国専門誌の編集者。
Michael
McCullough
Booz-Allen-Hamilton 会長
Dr. John McLucas 元 FAA 役員。空軍事務官、NASA 諮問委員会長、『Space
Commerce』筆者。
G Harry Stine
(1997 年没)
作家、宇宙観光旅行と低コスト宇宙輸送を専門に長年提唱。
David
Vankeelsbeek
ITT シェラトンの上級副社長、マーケティング部門長。
Thomas W Watts
Merrill Lynch、Pierce、Fenner、 Smith とともに今やウ
ォルマートの主要な投資銀行であるニューヨーク市 Bear,
Stearns & Co.Inc.宇宙融資グループの元副会長。
Dr. Laurence R
Young
宇宙分野の科学者にしてエンジニア。アポロ計画に参加。
宇宙工学教授。マサチューセッツ工科大学、国立宇宙生命
医学研究機関の長。米国研究評議会の航空工学、宇宙工学
委員会と宇宙ステーション委員会のメンバー。
兼任メンバー
General Daniel O
Graham
(1995 年没)
米陸軍(退役)
Dr. John E
Mansfield
元 NASA 副局長(宇宙交通・技術担当)。
Tidal W McCoy
STA 議長。Thiokol の政府業務部長。
Keith
Calhoun-Senghor
商務省の航空宇宙商業化事務局長。
Frank C Weaver
元。運輸省商業宇宙輸送担当副長官。
付録 D
ワークショップ参加者
Buzz Aldrin (Starcraft Enterprises)
Robert Armstrong (NASAマーシャル宇宙センター)
Victoria Beckner (LunaCorp株式会社))
Ivan Bekey (BDI; NASAの初期の研究主任)
Collette Bevis
Study Lead(X プライズ財団)
William Blerbauer (弁護士)
Gloria Bohan (Omega World Travel)
Steve Brody (NASA OSS/Mission From Planet Earth Office)
Keith Calhoun-Senghor (DOC/航空宇宙商業化局)
Robert A Citron (Kistler Aerospace)
Kelvin B Coleman (運輸省 FAA/運輸省・商業宇宙輸送局)
Ed Cooper (Omega World Travel)
Peter H Diamandis(X プライズ財団)
Marcus Dinsmore(Omega World Travel)
Norman Fast (F.B. Partners/Incredible Adventures)
Stephen Fogleman (NASA OLMSA; 一般参加者)
Jerry Grey ( AIAA)
David Gump (LunaCorp, Inc.)
Robert L Haltermann (Haltermann & Associates)
Rick Hauck (AXA Space)
Professor Donald E. Hawkins (ジョージワシントン大学)
Patt Hill (Omega World Travel)
Joe Howell (NASA マーシャル宇宙センター)
Walter Kistler (Kistler Aerospace)
Sandra Morey Kreer (Travel Network)
Chuck Larsen (DOT/FAA/AST)
Charles J Lauer (Orbital Properties, LLC)
John C Mankins (NASA 研究主任)
Gregg Maryniak(X プライズ財団)
Neville Marzwell (カリフォルニア工科大学)
Wallace McClure (ボーイングノースアメリカ)
Tidal W McCoy (Thiokol)
James Muncy (下院議員)
Dan O'Neil (NASA 研究監督者)
Scott Pace (RAND/Critical Technologies Institute)
Michael R Paneri (Wimberly, Allison, Tong and Goo)
William M Piland (NASA ラングレー研究センター)
Gene Pinder (米国宇宙ロケットセンター)
Carl S Rappaport (運輸省・商業宇宙輸送局)
Tom Rogers (STA 研究主任)
Larry Rowell(NASA ラングレー研究センター)
T C Schwartz (T.C.S. Expeditions)
Charles Scottoline(ボーイングノースアメリカ(元)、一般参加者)
David Smitherman (NASA マーシャル宇宙センター)
Eric W Stallmer (STA 研究事務局)
Thomas C Taylor (Global Outpost, Inc.)
Harvey Willenberg (ボーイング防衛宇宙グループ)
Lawrence R Young (MIT)
John Spencer (Design Finance International)
Harvey Wichman (クレアモントマッケンナ大学)
Howard Wolff (Wimberly, Allison, Tong and Goo)
Gordon Woodcock(相談役)
Dr. Molly Brennan (CCI; ワークショップ主催者)
Jack Pozza (CCI; ワークショップ主催者)
付録 E
宇宙活動に関する協定
本研究の実施根拠である NASA と STA 間の『宇宙活動に関する協定』
宇宙輸送協会と連邦航空局
の間における
宇宙観光研究についての
無償の宇宙活動に関する協定
米国の宇宙観光市場の構築
1. 背景と目的
宇宙輸送協会(STA)は、大きな宇宙観光ビジネスを米国で作り出そうと取り
組んでいるところである。事業としての宇宙観光旅行というコンセプトは、特
にここ 10 年で、頻繁に更新されてきた。過去 2 年間、国が主導する 2 つの研究
(米国電気電子学会によって実施された『宇宙における経済的な成功を実現す
るために米国は何をしなければならないか』という研究と、NASA の支援を一
部得て実施された、米国の宇宙関連 6 社の連合による『商業宇宙輸送に関する
研究』)では、宇宙観光に対する真剣な取り組みが必要である、ということが
提案された。国際的には、日本で昨年実施された専門家による市場研究の結果
は、宇宙に精通した専門家達や商業資本家達に、年間 100 億ドルの宇宙観光ビ
ジネスが実現しうる、ということを確信させるものであった。
NASA は、X-33 宇宙輸送開発・実証計画を現在進めており、これは宇宙輸送の
安全性と信頼性を大いに高め、旅客の単位コストを著しく削減するものである。
米国の次世代(シャトル後継)宇宙輸送機は民間からの資本が必要なため、政
府関連の市場だけではなく商業市場にも対応するように設計されなければなら
ない。商業市場は投資が利益をもたらすくらい十分に大きなものでなければな
らない。宇宙観光はこういう市場のなかでも、最も早期に、また最も大きな市
場となる可能性を秘めている。
STA には、有人宇宙飛行や宇宙空間で生活したり作業をしたりした場合の生理
学など、NASA が独自の経験を持つ技術分野における研究で NASA の支援を要
請している。この研究で STA は、宇宙観光の大きな市場の発展を促すために民
間企業が特に何を検討し、何をする必要があるか、という疑問に取り組んでお
り、NASA は R&D 活動を必要とするような、なくさなければならない、また
は軽減しなければならない技術的な制限事項やその他の制限事項を見積ること
になる。
2. 権限
この協定は、ヴァージニア 22206 アーリントン Suite 405、2800 Shirlington
Road にある宇宙輸送協会(以後、STA と呼ぶ)と、ワシントン D.C.にある連
邦航空宇宙局(NASA)本部によって締結されたものである。この協定の一部を
なす NASA に関する法的権限は、NASA 運営指示 1050.9A によって施行されて
いるとおり、1958 年の宇宙活動 203 (c) (5)、(6)、42 U.S.C. 2473 (c)に示され
ている。
3. 責任
本研究は STA の Mr. Thomas F. Rogers と NASA の Mr. Ivan Bekey により、
共同で監督されることになる。その他、各組織から数名がこの研究に任命され
ている。米陸軍(退役)の Lt. Gen. Daniel O. Graham、米陸軍(退役)の Brig.
Gen. Robert C. Richardson 111、STA の Mr. Steve McCormick が参加予定で、
他に STA 相談役の Mr. Michael Marks も参加する。STA 評議会メンバーと、
構成員の組織も招聘される。STA は、大学院生 2 名を本研究に携わらせようと
している。うち 1 名は宇宙政策専攻で、もう 1 名は観光旅行専攻である。NASA
では、Dr. Barbara A. Stone(本部)、Dr. William Piland(ラングレー研究セ
ンター)、Mr. Steve Creech(マーシャル宇宙センター)が参加予定である。
NASA は連邦政府の他組織からも適切な人材の協力を求めている。
約 10 名のメンバーからなり、2 名の理事長が共同議長を務める運営グループが、
研究の監督を行なうために STA によって編成される。運営グループのメンバー
には、研究の共同理事長、宇宙飛行士、航空宇宙産業の重役、宇宙輸送機設計
の専門家、商業エアラインの重役、財政当局、観光旅行の専門家が含まれるべ
きである。米陸軍(退役)の Lt. Gen. Daniel O. Graham(STA 議長)、米陸
軍(退役)の Brig. Gen. Robert C. Richardson 111(STA)(STA 理事長)、
Mr. Daniel S. Goldin(NASA 長官)、Dr. John E. Mansfield(NASA 宇宙交
通・技術担当副長官)が運営委員会の兼任メンバーとして招かれる予定である。
STA は、技術、ビジネス、法律分野の専門家を代表するメンバーからなる、よ
り大きな作業グループも編成する予定である。この作業グループのメンバーは
彼らが専門とする分野やビジネス分野を扱う草案を作成し、それをレビューし
て意見を述べることになる。
この研究は、共同理事長の指導のもとで作成される報告書をもって終了となる
予定である。そのレポートは 2 つのパートに分かれることになるだろう。最初
のパートは比較的短い小レポートで、興味を持つ大衆が容易に理解できるもの
である。この小レポートは宇宙観光旅行をなるべく早く実現するために必要な
ステップをまとめたものになる。レポートの 2 番目のパートは、宇宙観光ビジ
ネスの発展に関連した、個々の専門的事項、ビジネスに関する事項、政府に関
する事項を扱った、個々の論文で構成されることになるだろう。
研究の成果を公表し、報告書を大衆や専門メディア、ビジネスメディアに示す
ため、STA と NASA の共同記者会見が行なわれる。
この研究には、9 ヶ月を要すると見込まれる。研究を延長するという合意がとれ
た場合 X-33 計画や政府、政府以外の参加組織に対して 9 ヶ月経過時に、報告の
進捗に関する状況説明が行なわれる。
A. STA が責任を負う事項
•
•
•
•
STA は、保険、広報、市場調査、財政見積もり、関連する地上活動、周
回軌道上の宿泊施設等、販売促進、宇宙機の特性、発射・着陸時の物理
的環境、旅客の地上輸送、運用開始日の算定、国際的活動、米国政府の
政策、規制、法、国際的な合意、その他 NASA と STA によって合意され
た事項など、宇宙観光ビジネス関連の事項を扱う草案を作成する。研究
に関して STA が収集し作成した全情報は、NASA にも開示される。
STA は大衆向けの小レポートを作成する。
STA は運営グループと作業グループを編成する。
STA は大学院生 2 名の採用を試みる。
B. NASA が責任を負う事項
•
NASA は有人宇宙飛行や宇宙空間で生活したり作業したりするときの生
理学、技術面での要求、宇宙機の認証、宇宙酔い、乗客に対する肉体的
負荷、その他 NASA と STA によって合意された事項などを扱う草案を作
成する。研究に関して NASA が収集し作成した全情報は、STA にも開示
される。
•
最終報告書を 1000 部コピーして配布する作業は、NASA が所内、または
政府の印刷局で実施する。
NASA は行政機関の適切な部署との連絡をとる窓口となる。NASA は政
府に研究の実施についての情報を連絡し続けることについて、主たる責
任を負う。
•
C. 共同責任
•
•
•
•
•
•
研究の最終報告書を作成する。
政府、宇宙産業界、観光ビジネスに対する概略説明資料を作成する。
必要に応じて宇宙産業各社、エアライン、観光関連企業、その他企業等
と連絡をとる。
立法部門との連絡をとる。
最終報告書の配布先リストを作成する。
記者会見を実施する。
4.財政上の義務
本協定に関して、NASA と STA 間における資金の移転や財政上の義務は無いも
のとする。両組織は、本協定のもとで自分の関わる範囲で資金を供出すること
になる。
5. 利益を得ない関係者について
議会への出席者、つまり地方代表は、この協定から生じた利益に対する持分は
無いものとする。だが、本条項は、本協定が法人の一般的な利益のためにある
法人から作られている限りは適用されない。
6. 財政上の義務
本協定のもとで、または本協定に準拠して実施される活動はすべて、適切な資
金の供給を受けるものとし、本協定の条項はいずれも、Anti-Deficiency Act(政
府の高官や職員が、予算歳出法で計上されている以上の金額を支出したり、認
可したりすることを禁じる法律)の 31 U.S.C. 1341 項に違反した債務や資金提
供を要求するとは解釈されない。
7. スケジュールとマイルストーン
本研究について計画された重要なマイルストーン付属書 1 に記載されている。
8. 利用の優先度
スケジュールとマイルストーンは当事者が現在認識している状況に基づいて見
積もられる。いずれかの当事者で状況が変化した場合には、スケジュールとマ
イルストーンをそれに応じて調整できるように、他方の当事者はその変化に関
する適切な情報を得られるものとする。
9. 不利益とリスク負担
一方の当事者のミーティング会場以外の装備や施設を、他方の当事者は利用し
ないものとする。したがって、両当事者とも重大な不利益やリスク負担を被る
ことがないと見込まれる。
10. 知的財産
本協定の内容はいずれも、当事者やその主契約会社、下請け会社の特許や発明
の知的財産所有権を譲渡したり暗示したりするようには解釈されないものとす
る。各当事者は、本協定のもとで譲渡当事者の責任を果たすために必要な技術
データのみを他の当事者に譲渡する義務を負う。以下の各項に従って、利用や
公表に関する制限事項なしにそういった譲渡を行なうことが当事者の意図する
ところである。
1. ある当事者が、責任を全うするなかで知的財産権を持つ技術データを転
送する必要があると認め、その権利の保護が継続される場合、そのよう
な技術データは、本協定のもとで譲渡された側の当事者が責任を果たす
目的でのみ、譲渡された当事者や主契約会社、下請け会社によって利用
と開示が行なわれ、前もって譲渡した当事者の書面による許可を得るこ
となしに、第三者に開示されたり再譲渡されることがないものである、
ということを示す通知によって、明らかにされる。譲渡された当事者は
通知の条項を遵守することと、そのように指示された技術データを未許
可使用・開示から保護することに同意する。
2. 当事者は、指示されていない技術データの保護について責任を負わない。
本協定の実施中に作成された報告書や出版物の著作権が保護される場合
は、当事者はその成果について、自らの目的のために著作権使用料なし
で複製・利用・頒布する権利を有するものとする。
11. 契約の排除
NASA と STA 間には、契約行為は無い。
12.権利の譲渡
本協定とそこから発生するいかなる利益も、本協定を実施する関係者の書面に
よる同意の表明なしに STA や NASA によって譲渡されない。
13. 協定の期限と合意の解消権
本協定の期限は、下記の署名の最後の日付から 9 ヶ月間とする。どちらの当事
者も、30 日前に書面による通知を他の当事者に渡すことにより、期限期日より
も前に、責任を負うことなく一方的に、本協定を解消してよい。本協定を解消
する場合、各当事者は本協定の実施にあたり支援のために提供されたデータを、
他の当事者に返還するものとするが、本協定をその当事者の責任範囲において
実施することで得られたデータは、その当事者が保有することができる。署名
者や指名された者は、本協定をいつでも改正できるが、署名による双方の合意
が必要である。
14. 主担当者
以下の人員は、それぞれの組織について主要関係者として指定された人員であ
る。これらの主要関係者は、本協定の実施において、当事者間の主たる連絡窓
口である。
STA
NASA
Mr. Thomas F Rogers Mr. Ivan Bekey
会長
先進コンセプト担当上級役員
宇宙輸送協会
宇宙交通・技術局
405
Code XZ
2800 Shirlington Road NASA 本部
Arlington, VA 22206
Washington, DC 20546-0001
電話 703-671-4116
電話 202-358-4561
15. 情報公開
しかるべき当事者が、他の当事者を含めて適切な協議を経ていれば、本研究に
関して一般的な情報を、プログラムにおけるその当事者の所掌範囲で世間に公
表することができる。
16. 適用法令
当事者は、本協定において、本協定を規定する連邦政府法を本協定によって指
定し、この法には本協定の効力、条項の意味や、当事者の各種権利、責務、賠
償を決定する法を含むが、これに限定されるものではない。
17. 履行
宇宙輸送協会
連邦航空宇宙局
______________________________
______________________________
米陸軍退役 Lt. Gen. Daniel 0. Graham Dr. John E. Mansfield
理事会議長
宇宙交通・技術担当副長官
日付__________________________
日付__________________________
NP-1998-3-11-MSFC
1998 年 3 月
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