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f
rom
NTTドコモ
PushTalkサービスのシステム開発
NTTドコモは,FOMAにおいて音声電話,TV電話に続く新たなコミュニケーションツールとして「PushTalk」サービスを開
始しました.1対1またはグループで,移動端末を用いてトランシーバのような半二重型1対多通信を実現し,通話用ボタンを
押して,複数の相手に対して音声を同時に届けることができます.ここではPushTalkサービスを提供するために開発されたシ
ステムについて,アーキテクチャ,機能概要および制御方式について解説します.
提供条件
Project)で標準化されている,パケット通信にてマルチメ
ディアサービスを提供するための基盤機能です.
PushTalkサービスは,ターゲットユーザに応じて,次
プレゼンスに代表されるデータサービスと音声をIP
の2つのサービスを提供しています.
①
個人向けサービス:PushTalkサービスを気軽に利
用できる,新たなコミュニケーションツールとして
(Internet Protocol)上にて統合的に提供が可能となります.
PushTalkサービスのネットワーク構成および主な機能
を図1に示します.PushTalkはSIP(Session Initiation
提供.
②
IMSでは,アクセスネットワークに依存しないかたちで
法人向けサービス:個人向けサービスに加えて,ネ
ットワークでのユーザグループ管理,プレゼンス登録,
閲覧などサービスを最大限に生かしたソリューション
を提供.
ALADIN
PoCサーバ
GLMS
CCCI
AS(PoC)
サービス開始時点での詳細提供条件を表に示します.
Web
実現方式
HSS
SGW
HLR
GW
MRFC
PushTalk用APN
PushTalkサービスの実現にあたってはIMS(IP
RNC
た.IMSとは,3GPP(3rd Generation Partnership
W−CDMA
PoC端末
表 サービス提供条件
提供形態
1対1通信
1対N通信
(同時通話可能最大人数:発信者含)
グループリスト管理
ネットワーク電話帳
PC・移動端末からのネット
ワーク上グループリスト
登録編集,閲覧
通話中プレゼンス
ユーザ登録プレゼンス
対象移動端末
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個人向けサービス
基本サービス
○
法人向けサービス
付加契約サービス
○
○
(5人)
○
(20人)
移動端末
移動端末
ネットワーク
(ネットワーク電話帳)
−
○
最大200グループ
最大1 000人登録/契約
最大20人/グループ
○
−
902i
○
○
902i
NTT技術ジャーナル 2006.7
MSC
GGSN/SGSN
Multimedia Subsystem)に即した機能配備を行いまし
プレゼンス
MRFP
CSCF
■アーキテクチャ
機能ブロック
CSCF
MRFC
MRFP
HSS
HLR
主な機能
SIP登録・SIP転送(PoC呼制御)・SIPアプリケーション振分け・
PoC着信要求(SMS Push)
SIP終端,PoC呼制御(B2BUA 制御)・MRFP制御・発言権課金制御
発言権管理制御・パケット複製制御
加入者情報管理
AS
グループID管理・ネットワーク電話帳・プレゼンス問合せ,通知
PoC (PoC)
サーバ Web Webカスタマコントロールインタフェース
GLMS メンバ,グループリスト管理
ALADIN:ALI Around DoCoMo INformation systems
APN:Access Point Name
CCCI:Customer CDR Collector for IMT2000
GGSN:Gateway General packet radio service Support Node
MSC:Mobile Switching Centre
RNC:Radio Network Controller
SGSN:Serving General packet radio service Support Node
SGW:Signaling GateWay
図1 ネットワーク構成および主な機能
Protocol)呼制御を行うCSCF(Call Session Control
F u n c t i o n ), 加 入 者 情 報 管 理 を 行 う H S S ( H o m e
その他のアプリケーション群
ネイティブ
電話帳
Subscriber Server)およびアプリケーション機能を担う
発信履歴
着信履歴
SMS-Push
PoCサーバとMRFC(Media Resource Function
Controller)/MRFP(Media Resource Function
C-Plane
制御
Processor)から構成されます.
PoCサーバはPushTalkサービスを実現するアプリケー
ション機能としてメンバ,グループリスト管理およびネッ
トワーク電話帳を提供し,MRFC/MRFPはPoC呼制御,
パケット複製制御および発言権管理制御を行います.
MRFC/MRFPは,ユーザエージェントサーバ(UAS)と
PushTalk
電話帳
PushTalkアプリケーション群
ディス
プレイ
PushTalk
アプリケーション
PushTalk
ボタン
Tool Kit
マイク
して発移動端末からCSCF経由で転送されたSIPリクエスト
PoC Library
DSP
を受け取り,着移動端末に対してはユーザエージェントク
スピーカ
ライアント(UAC)としてSIPリクエストを送出します.
ハードウェア群
本動作はUASとUACを連結した機能を持つB2BUA
呼処理・プレゼンス
PushTalk
専用ブラウザ
PoC
Engine
音声 発言権制御
SIP RTP RTCP
HTTP
UDP
OS
TCP
IP
(Back-to-Back User Agent)処理と呼ばれます.
ネットワーク
IMSでは呼制御プロトコルとしてSIPを利用します.ネッ
トワークにおいてSIP呼制御を担うCSCFでは,移動端末か
ら送出されたSIPメッセージを受信すると,加入者情報を
図2 PushTalk機能搭載移動端末システム構成
管理するHSSからダウンロードした情報を基に,各アプリ
ケーションサーバ(AS:Application Server)への振分処
タック部を制御することで実現しています.そしてPoC
理を実施します.このように,サービスに依存する処理をAS
Library部で提供されるサービスを抽象化して,GUI
へ局所化することにより,サービス拡張が容易となります.
(Graphical User Interface)により容易にアクセス可能
■プロトコル
とする役割をTool Kit部が果たしています.
PushTalkでは,TCP(Transmission Control
またPushTalk機能を搭載した移動端末にはPushTalkボ
Protocol)またはUDP(User Datagram Protocol)/
タンと呼ばれる専用ハードボタンを配備し,手軽にサービ
IP上に,IMSなどの標準で既定されている各アプリケー
ス利用が可能となりました.このボタンは,PushTalk電
ションプロトコルを実装しています.呼制御およびユーザ
話帳やPushTalk専用ブラウザの起動,PushTalk呼の発信
のPushTalk参加状態などを示す通信中プレゼンス提供プ
およびPushTalk通話中における発言権制御に用いられま
ロトコルにSIP,音声伝送プロトコルにRTP(Real-time
す.発言権取得時には,PoC Library部がDSP(Digital
Transport Protocol),半二重通信において必要となる発
Signal Processor)を起動し,マイクからの入力音を
言権制御プロトコルにRTCP(RTP Control Protocol)
AMR(Advanced Multi Rate CODEC)データへ変換し
を採用しています.また法人向けサービスとしてWebによ
ながら,RTPパケット形式で,順次ネットワークへ送出し
るネットワーク電話帳機能を提供していますが,本機能提
ます.反対に着移動端末では,ネットワークからAMRデー
供にあたってはi-mode通信にて利用されているHTTP
タを含むRTPパケットが到着した場合,そのデータをDSP
(HyperText Transfer Protocol)を採用しています.
■移動端末システム構成
PushTalk機能を搭載した移動端末のシステム構成を
図2に示します.
PushTalkアプリケーション処理の中核を担うのが,今
回開発したPoC Engineと呼ばれるモジュールです.PoC
へ引き渡し,AMRデータのデコード(スピーカからの音声
再生)を行います.
さらに,PushTalk機能を搭載した移動端末は,
PushTalk専用ブラウザを搭載しており,これによって,
NTTドコモネットワーク内に構築されているサーバへのア
クセス,ネットワーク電話帳の参照が可能です.
Library部で呼制御,プレゼンス情報制御,発言権制御,音
声エンコードおよびデコードなどの処理を行います.また
実現機能
移動端末からネットワークへのデータ送信およびネット
ワークから移動端末へのデータ受信が必要となる際は,
PoC Library部がSIP,RTP,RTCP等の各プロトコルス
■発着信制御
PushTalkでは簡単な操作で発着信が可能です.処理概
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要を図3に示します.音声やTV電話通信と同様,電話番号
他サービスとの同時通信競合およびNTTドコモ全ユーザ収
の直接入力,または移動端末電話帳(ネイティブ電話帳お
容を前提にしたネットワークリソース保護の観点から,着
よびPushTalk電話帳),ネットワーク電話帳,発信履歴,
側ユーザがアイドル状態(パケットセッション未確立)か
着信履歴から通信相手を選択後,PushTalkボタンを押下
らでも着信を可能としました.着移動端末はネットワーク
することで発信処理が行われます.ボタン押下後,まず移
登録後,INVITEメソッドを受信応答することでPushTalk
動端末はパケットベアラのセッションを確立し,CSCFに
セッションが開設されます.
対してSIPのREGISTERメソッドを用いて認証,ネット
(1)
移動端末電話帳発信
ワーク登録を行います.この段階で発移動端末は
PushTalkの発信は移動端末が持つ既存電話帳(ネイ
PushTalk発信が可能となり,SIPのINVITEメソッドを
ティブ電話帳)から行うことも可能ですが,これだと複数
ネットワークに送信します.INVITEメソッドはCSCFから
の相手を選択して発信することができないことから,
AS(PoCサーバ)へ転送され,グループメンバ数超過確認
PushTalk対応移動端末では,ネイティブ電話帳に加えて
や認証処理後にMRFCへ転送されます.INVITEを受信した
PushTalk電話帳と呼ばれるPushTalk専用の電話帳を実装
MRFCはMRFPのリソースを確保し,着移動端末に対する
しています.
INVITEメソッドをCSCFに転送します.
PushTalk電話帳には,メンバリストとグループリスト
1対多通信においてはMRFCが複数INVITEメソッドを生
の2つの表示画面があります.メンバリストは発信時に個
成し各ユーザに転送することにより,複数移動端末への同
別に発信対象メンバを選択する用途に用いられ,複数メン
時着信が可能となります.CSCFは着移動端末のネット
バを同時にチェックすることで,それらのメンバに同時発
ワーク登録有無をHSSに対して着側ユーザ状態問合せにて
信を行うことが可能です.グループリストは事前に登録さ
行い,ネットワーク未登録であればSMS(Short
れたグループに対して発信する用途に用いられ,グループ
Message Service)Pushによる呼出しを行い,着移動端
に登録されたメンバ全員に発信することが可能です.
末のネットワーク登録を促します.PushTalkにおいては,
(2)
ネットワーク電話帳発信
法人ユーザには,より大規模なグループ通信,ユーザ間
でのグループ共有機能が求められます.そこで法人向け
移動端末 SGSN/
CSCF1
(発) GGSN1
HSS
MRFC/
MRFP
CSCF2
SGSN/ 移動端末
GGSN2 (着)
UE2
パケットベアラ接続
(IPアドレス割当て)
サービスではPushTalk電話帳に加え,ネットワークで一
元的に情報管理するネットワーク電話帳機能を提供しまし
た.ネットワーク電話帳からの発信では発信者を含む最大
SIP Registration
20人までのグループ通信を可能としています.
■発言権制御およびパケット複製制御
INVITE(UE2,
3宛) INVITE(UE2,
3宛)
ユーザが移動端末のPushTalkボタンを操作することに
INVITE(UE2宛)
よって,RTCPによる発言権制御が行われます.PushTalk
着側ユーザプロファイル/SIP登録(Registration)有無確認
ボタンを押下しているユーザにだけ発言権が与えられ,移
着側ユーザ
未Registration時
SMS転送要求(NWMP)
動端末からRTPによってMRFPへ音声データを送信しま
SMS-Push
す.MRFPは受信した音声データをIPレイヤにて複製し,
パケットベアラ発信
(IPアドレス割当て)
SIP Registration
特定ユーザが発言権を取得している状態で他ユーザが発言
着側Registration完了通知
権を要求した場合は,MRFPから要求拒否信号が当該ユー
ザへ通知されることにより発言権取得を1ユーザだけに限
INVITE(UE2宛)
発言権制御
発言権空き通知
他メンバに配信することで1対多通信が可能となります.
発言権空き通知
発言権要求
定しています.また同一ユーザが一定期間発言権を取得し
移動端末
(着)
UE3
AMRパケット
AMRパケット
AMRパケット
パケット複製処理
NWMP:NetWork Management Protocol
図3 PushTalk発着信処理概要
ているときは,ユーザへ開放予告音を通知します.その後,
発言権を強制開放することにより1ユーザの発言権占有を
防ぎます.
■再入室制御
移動通信では,弱電界などにより通信が切断され,参加
している着信者が意図に反してPushTalkセッションから
退出してしまうことがあります.このような着信者が,継
続しているPushTalkセッションに再度加わる機能として
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NTT技術ジャーナル 2006.7
再入室制御機能を備えました.PushTalkサービスでは,
PoCサーバから送信されるユニークなIDが移動端末に記録
され,このIDで該当PushTalkセッションを一意に特定す
Web管理機能
ることにより再入室が可能となります.
Web
①
移動端末からのIDを受信したPoCサーバでは,まずその
IDが現在も通信中のPushTalkセッションのIDであるか,
次に,PushTalkセッションに参加しているメンバに差分
法人ユーザ管理者
ページ取得
HTTP GET
場合には,認証結果良好としてCSCFに応答します.それ
法人ユーザ
を受信したCSCFが,移動端末を該当通信に接続させるこ
セッションが終了している場合にも接続不可とせず新規発
②ネットワーク電話帳
(グループ選択)
呼として扱い,該当PushTalkセッションに参加していた
■ネットワーク電話帳機能
Web管理機能
③ネットワーク
電話帳閲覧⇒発信
発信
xGSN
ユーザ登録プレゼンス機能
HTTP Request
れており,法人ユーザの管理者が表示名の設定,グループ
⑤
HTTP Response
の作成,グループメンバの追加・削除,プレゼンス種別な
HTTP Request
この操作は,ユーザの利便性を考慮し,PCだけでなく移
グループ
情報
③
メンバ選択・発信
HTTP POST
ネットワーク電話帳はWebサーバにHTML形式で作成さ
どをインターネット経由で事前に行います(図4①).
ユーザ
認証
②
HTTP GET
メタファイル
④
INVITE生成
(自動) SIP INVITE
メンバへ新たな呼として着信します.
(1)
①ネットワーク
電話帳設定
ネットワーク電話帳閲覧機能
がないかについて判定し,通信中かつメンバに差分がない
とで再入室完了となります.さらに,仮に該当PushTalk
GLMS
HTTP
ユーザ
認証
⑤プレゼンス登録
法人ユーザ
登録
※上記端末画面内の氏名は,参考例のための架空の名称です.
動端末からも可能としています.法人ユーザの管理者はこ
図4 ネットワーク電話帳機能概要
のようなネットワーク電話帳設定作業以外にも,グループ
別,またはプレゼンス別ユーザ一覧にて,全グループメン
バのプレゼンス状態を確認することが可能です.これによ
定しているプレゼンス状態を表示します(図4⑤).本機能
り,外出している社員の状態を管理者が一元的に管理でき,
により,企業またはユーザごとにプレゼンス種別をカスタ
法人ユーザの業務効率の向上が図れます.
マイズし,掲示板や伝言板のようなサービス利用も可能と
(2)
ネットワーク電話帳閲覧機能
しました.
ネットワーク電話帳は,PushTalk専用ブラウザから閲
覧します.この際,サーバ側ではユーザ認証を行い,ユー
今後の展開
ザが所属しているグループだけを一覧表示させます(図4
②).ユーザは自分の所属しているグループ一覧より,発信
したいグループを選択し,サーバからグループ情報を取得
します.取得したグループメンバのプレゼンス状態などを
確認し,発信先グループメンバの選択を行います(図4③)
.
発信操作を行うと,発信対象者として選択したメンバの
情報,および番号通知の有無がWebサーバ経由でGLMS
(Group List Management Server)に通知されます.す
ると,サーバ側から移動端末が発信するのに必要となるメ
タファイルが発移動端末に返信されます(図4④).このメ
タファイルはテキスト形式となっており,この中には「グ
PushTalkサービス提供システムに関する概要,制御方
式などについて説明しました.
今後は通信中の話者追加などのサービス拡張,画像・映
像を組み合わせたマルチメディア化など,さらなるコミュ
ニケーション領域の開拓・展開を目指し検討を進めます.
◆問い合わせ先
NTTドコモ
研究開発企画部
TEL 03-5156-1749
FAX 03-5156-0232
ループID」など発信処理に必要な情報が含まれていて,こ
れを用いて発信を行います.
(3)
ユーザ登録プレゼンス機能
ネットワーク電話帳に接続し,ユーザがプレゼンス登録
を選択すると,サーバ側ではユーザ認証を行い,すでに設
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