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公共交通の「快適性・安心性評価指標」と 携帯電話端末活用への期待

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公共交通の「快適性・安心性評価指標」と 携帯電話端末活用への期待
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︻
﹁気持ちよく利用できる﹂
指標︼
、︻
﹁分かりやすく利用できる﹂
指標︼
○﹁車内快適性指標﹂
、﹁ホームでの情報の分かりやすさ︵ホームL
ED設置率︶
﹂
、
﹁駅構内での情報の分かりやすさ︵駅構内LED
設置率︶
﹂
、
﹁車内での情報の分かりやすさ︵車内LED等設置
率︶
﹂については、全体的に高い数値となっている。
︻
﹁安心して利用できる﹂指標︼
○﹁駅員への連絡のしやすさ﹂については全体四十三路線中、す
べての路線で一〇〇%を達成している。
○﹁車内での連絡のしやすさ︵車内インターホン設置率︶
﹂につい
ては、全体四十三路線中、十六路線で八〇%以上となっている。
以上のように、公共交通における合計九項目の﹁快適性・安心
性評価指標﹂については、国土交通省を始め地方自治体、公共交
通機関等の関係者の努力により、着実に向上している。
二 公共交通の﹁快適性・安心性﹂の向上に向けた
情報通信技術の活用への期待
前述の九項目の﹁快適性・安心性評価指標﹂はいずれも、国土
交通省が、
﹁優先的に計測を行う指標﹂として位置付けているも
のであるが、これらの指標以外にも﹁計測について今後更に検討
する指標﹂があり、それらを含めて合計四十九種類の指標が提案
されている。
そして、そのうちのどの分野に重点的・集中的に投資するかは、
各事業者が、
それぞれの判断で実施するものとしている。したがっ
て、
﹁快適性・安心性評価指標﹂は、同一指標の事業者間比較をす
るのではなく、それぞれの投資実績の推移を分かりやすく示すこ
とを目的としている。
我が国では、既に総人口の減少が始まっており、今後、各事
業者が、公共交通の﹁快適性・安心性﹂の向上に振り向けること
ができる投資額も縮減していくことが予想される中で、各社の従
来の枠にとらわれない斬新な投資アイデアも必要と考えられる。
この点に関して、筆者は、今後、公共交通の﹁快適性・安心性﹂
の向上を図る上で最大のポイントは、情報通信技術の活用にある
と考えている。情報化社会という用語はかなり使い古された用
語ではあるが、ネットワーク化、ダウンサイジング、光ファイバー
網の整備、
携帯電話端末の普及等は急速に進展している。
インター
ネットの世帯利用率も二〇〇八年には九一・一%︵出所 総務省情
52
一
公共交通の﹁快適性・安心性評価指標﹂
(出所)公共交通の「快適性・安心性評価指標」について
(平成21年12月25日 国土交通省)
国土交通省で
は、 平 成 十 六 年
三月に公共交通
機 関 の 快 適 性・
安 心 性 向 上の 取
組みを促進する
た め の 方 策 の一
つ と し て、
﹁快適
性・ 安 心 性 評 価
指 標 ﹂を 提 案 し
た。 そ し て、 公
共 交 通 機 関 等の
関 係 者の協 力 を
得 て、 現 在 ま で
に図 表1に示し
た 合 計 九 項 目の
指 標 を 公 表 して
いる。
本 稿では紙 面
に制限があるため、公表されている詳細な資料の分析は省略する
が、首都圏の鉄道事業者及びバス事業者を対象とした平成二十
年度末現在の各指標の数値を見ると、その特徴はおおむね以下
のとおりとなっている。
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︻
﹁やさしく利用できる﹂指標︼
○﹁ピーク時車両混雑率﹂については、東京圏の鉄道では依然と
して高い混雑率を示している路線が多いが、トレンドをみると、
毎年少しずつ混雑率は解消に向かっている。
○﹁段差解消率﹂については、全体としておおむね順調に段差の
解消が進んでいる。
○﹁ノンステップバス導入率﹂についても、おおむね順調に導入が
進んでいる。
図表1 現在までに公表されている公共交通の「快適性・
安心性評価指標」
公共交通の「快適性・安心性評価指標」と
携帯電話端末活用への期待
報通信政策局︶にまで達している。
そうした中で筆者は携帯電話端末の可能性に期待したい。
﹁計測について今後更に検討する指標﹂のうち、
﹁分か
例えば、
りやすく利用できる﹂
指標では
﹁ルート・時刻情報の提供状況﹂
、﹁輸
送障害情報の提供状況﹂
、
﹁バス接近表示設置率﹂
、
﹁案内表示の分
かりやすさ﹂
、
﹁沿線情報の発信﹂などがあるが、これらの情報発
信については携帯電話端末を活用することによって、鉄道やバス
事業者の投資コストを軽減することができる。
また、携帯電話端末の利用により、駅やバスの停留所に向か
う途中でも、鉄道やバスのロケーション、運行状況を携帯電話端
末で確認できるようになる。公共交通利用者は駅の構内、
ホーム、
停留所、車内など鉄道やバス事業者の施設に限定せずに情報を
提供できるので、より利便性が高まる。
三
マートフォンの活用による新たなサービス
ス
の広がり
さらに、海 外ではスマートフォンと呼ばれるタッチパネルや
パーソナルコンピュータのようなキーボードを搭載した携帯電話
端末の市場が急成長している。日本でも iPhone
やブラックベリー
携帯端末、
アンドロイド携帯端末等は発売以来、
根強い人気を誇っ
ており、利用者は急速に拡大している。
スマートフォンの定義は定まっていないが、We bメール、フ
ルブラウザ、無線LAN、タッチパネル、キーボード、表計算ソ
フトやスケジュール管理ソフトなどを備えた携帯電話端末を指す
ことが多い。
また、スマートフォンを利用したマーケティングサービスも成
長しつつある。位置情報やインターネット上の情報を利用した技
術が開発されつつあり、スマートフォンを利用することで、街中
の情報を取得したり、商品の情報を取得できるようなサービスが
可能になりつつある。駅や商業施設、駐車場などの建物内で、ス
マートフォンの位置情報を利用することにより、建物内の地図表
示や案内のほか、商品やサービスの検索、家族や友人の位置把握、
店舗からのプロモーションやマーケティングといったサービスに
結び付けていく活用方法は今後も成長していくであろう。
鉄道やバス事業者にとって、本業である輸送事業収入は我が
国の総人口の減少により、今後あまり多くを期待できないことか
ら、物販、飲食、サービスなど新たな収益分野の育成がますま
す重要になってきている。このような視点からも、スマートフォ
ンなどの高機能携帯電話端末を活用して、公共交通の﹁快適性・
安心性﹂の向上と収益事業の育成を軸にした新たなビジネスモデ
ルを構築することも重要と考えられる。
四
共交通機関の﹁快適性・安心性﹂の向上の取
公
組みと地域産業への経済効果
最後に、公共交通機関の﹁快適性・安心性﹂の向上の取組みと
地域産業への経済効果について考えてみたい。
これまで、公共交通機関の整備効果については、鉄道新線の建
設や複々線化事業、駅舎建設、連続立体交差事業などによる建
設需要により、土木・建設や電気工事などのインフラ関係の事業
者の有効需要の創出に大きな効果があった。
一方、公共交通機関の﹁快適性・安心性﹂の向上の取組みによ
る経済効果については、これらのインフラ関連の産業のみならず、
車両メーカーやサインシステム、LED関連産業、IT関連産業、
We b製作にかかわるコンテンツ産業、デザイン産業、セキュリ
ティ産業などにもビジネスチャンスをもたらしている。
﹁やさしく利用できる﹂
、
﹁気持ちよく利用できる﹂
、
﹁分
さらに、
かりやすく利用できる﹂
、
﹁安心して利用できる﹂といった公共交
通機関の﹁快適性・安心性﹂のコンセプトは、高齢化社会や観光
立国を目指す我が国にとって、重要な意味を持つものと考えられ
る。
日本では今後ますます高齢化が進展することにより、人々の
ニーズは相当変化していくだろう。高齢者にはより木目の細かい
多様なサービスが必要であり、都市に居住する高齢者と地方に
居住する高齢者では公共交通機関に対するニーズが異なる。身
障者ももちろん異なるニーズを持っている。そのような多種多様
なニーズに合ったサービスを提供していく上で、各地域の関連産
業が活躍できる場は大きいと考えられる。
さらに、我が国は観光立国戦略の下で将来的に外国人観光客
を三千万人誘致することを目標としている。これまでの公共交通
機関の﹁快適性・安心性﹂の向上については、日本人の利用者を
中心に考えているが、例えば、訪日外国人にも分かりやすい外国
語標記サインや情報システムの整備等を促進することにより、各
地域で新たなビジネスチャンスが生まれることが期待できる。
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早川康弘
株式会社 野村総合研究所 
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