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家庭分野におけるユニバーサルデザインの考え方を取り入れた授業方法
家族分野におけるユニバーサルデザインの考え方を取り入れた授業方法について 千葉県立○○○○高等学校 ○○ ○○(家庭科) 1 はじめに 授業を実施するにあたっては,障害の有無にかかわらず,どの生徒にとってもわかりやすい授 業を実施していくことが大切である。そのためには,一人一人の実態と教育的ニーズを把握し, それを踏まえ,発問や指示,板書,教材教具,授業形態,場の設定や内容の難易度など,様々な 工夫を行う必要がある。いわゆるユニバーサルデザインの考え方を取り入れた取組が望まれる。 家庭科の授業では,講義形式や実習などの授業があり,様々な工夫が考えられる。 本研究では,授業にユニバーサルデザインの考え方を取り入れて,生徒一人一人の実態と教育 的ニーズを踏まえた「わかる授業」を創造し,生徒の「やる気」を引き出すことを目標とする。 2 研究計画 平成26年9月~平成27年3月 指導内容の検討と計画 平成27年4月~7月 指導内容の実施 平成27年7月 学習後の意識調査 平成27年7月~9月 考察と今後の課題 3 研究内容 (1)授業のユニバーサルデザインについて ユニバーサルデザインとは,年齢や障害の有無にかかわらず,すべての人が使いやすいよう に工夫された用具・建築物などのデザインを意味する。授業におけるユニバーサルデザインと は,教材・教具,黒板の文字・掲示物などについて,障害の有無にかかわらず,どの生徒にも 分かりやすい,あるいは使いやすい形・大きさ・色などのことを指す。また,発問や指示など も含め,分かりやすくするための工夫全般を意味する。次に,ユニバーサルデザインの内容と 実践( ア は,本研究で重点的に取り入れたもの)を示す。 内 容* 実 践 クラス内の理解促進 全員発表を取り入れた。生徒には自分の考えを表現 「生徒同士の相互理解」や「参加の促進」をする。 する力と人の意見を聞く力をつけるために全員が発 表し,きちんと聞くようにと説明した。最初になぜ このようなことをするのか,趣意を説明してから全 員に発表させた。 イ ウ エ ルールの明確化 年度当初の授業で授業のルールを明確に説明し,さ 授業中のきまりなどをはっきり示し,暗黙のルールを作らない。 らに,パワーポイントで表示し視覚化した。 刺激物の調節 「あのー・・・」 「えーと・・・」などの言葉を減 掲示物や音など,授業の妨げとなる刺激を減らす。そして,授業 らしたり,言葉が多すぎる説明や,一度に,3つも 中に,不要な言葉は極力使わない。言葉が多すぎる説明や一度に 4つも指示を出すことをやめて,ひとつひとつ明確 3つも4つも指示を出すなどしない。 なたった1つの指示を出すよう心がけた。 場の構造化 被服室や調理室,そこで使用する道具を整理整頓す 教室や特別室などの場や,そこで使用する道具を整理整頓する。 るよう心がけた。実習で使う道具だけを出した。 家-1-1 オ カ キ 内 容* 実 践 時間の構造化 毎時間プリントを配付して授業の流れを説明し,授 授業全体の見通しを目に見える形で示す。 業全体の見通しが分かるようにした。 焦点化 本時の目標を授業の前に必ず説明し,目標をパワー 1時間の授業で何を教えるか,その焦点を絞る。 ポイントなどで視覚化した。 展開の構造化 説明をする,生徒に問題やクイズなど解かせる,ペ 授業の焦点化に基づいて授業の展開を構成する。授業の進め方, アワークやグループワークを取り入れる,発表す 説明の方法,何を体験させるか(何を,どのタイミングで,どう る,などいろいろな方法を入れて授業を構成する。 つなげるか)などを決める。 ク ケ スモールステップ化 実習で起きる失敗などを想像し,どんな対策をとる 授業で起きるつまずきを想像し,どんな対策をとるべきかを,指 べきかを,指導の工夫,個別の配慮として予想して 導の工夫,個別の配慮としてまとめておく。 おく。 視覚化 授業で必要な事象・事物は,写真カードやビデオ映 目で見た情報を活用する。授業で必要な事象・事物は,写真カー 像で紹介する。黒板への板書とともにパワーポイン ドやビデオ映像で紹介する。 トを活用した。調理実習では,作り方をビデオ撮影 して,説明に使用した。 コ 身体性の活用(動作化・作業化) 調理実習や被服実習だけでなく普段から, 「全員起 体や感覚を使った授業を行う。 立,読んだ人は座りなさい」 「出来た人は持ってき なさい」などの作業を伴う活動を取り入れた。 サ 共有化 生徒がペアやグループで考えを伝え合ったり,教え 生徒がペアやグループで考えを伝え合ったり,教え合ったりす 合ったりする場面を取り入れた。 る。 シ ス セ スパイラル化 前回の授業内容を簡単に説明してから,本時の内容 既習事項を授業に取り込む(スパイラル化する)ことで,どの生 に入ったりして,随時復習する内容を授業に取り込 徒にも再理解や習得の深まりの機会をつくる。 んだ。 適用化 調理実習で作った料理を入れた献立を考えさせたり 学んだことを応用したり,ほかのことに適用する。 した。 機能化 ホームプロジェクトを実施して,授業で学んだこと 授業で学んだことを実生活で使えるようになること。 を実生活で使えるようになるよう指導した。 *( 「授業のユニバーサルデザイン入門」と「ADHD 症状を抑える授業力!」より抜粋) (2)年間指導計画(家庭基礎2単位) *本研究では,上記のア,ケ,コ,サを重点的に取り入れた。 ユニバーサル化 月 学習内容 4 自分らしい生き方と家族 1 自分を見つめる 学習のねらい ア 自分について考え,長所をたくさん見つける。 ○ ケ コ サ (実践例1) 2 自立した生き方,共に生きる人生 理想のライフスタイルや仕事について考える。 家-1-2 ○ ○ ユニバーサルデザイン化 月 学習内容 3 パートナーと出会う 結婚生活で大 切なことを考えるペアワーク 学習のねらい ア ケ 結婚についての日本の歴史と現状を理解する。 ○ ○ コ サ ○ 結婚生活で大切なことを考える。 (実践例2) 4 5 未来をデザインする 将来の自分の夢や目標を考えて,筆記する。 ○ ○ 宝地図を書く(実践例3) 具体的に紙に自分の夢をまとめる。 ○ ○ 現代の家族の特徴や家事労働について考える。 ○ ○ 家族と法律 家族の法律について明治から現在までの変化を ○ ○ 相続と遺留分を考えるグループワー 理解する。 5 家族って何だろう 家事分担を考えるペアワーク 6 ク(実践例4) 6 衣生活をつくる 服の修繕について理解する。 2 衣服の素材を見てみよう 繊維について理解する。 ○ ○ 衣服の管理の仕方を理解する。 ○ ○ 3 すべての人が快適な衣生活を 環境に配慮した衣生活を理解する。 ○ ホームプロジェクトと学校家庭クラブ活 ホームプロジェクトと学校家庭クラブ活動につ 動 いて理解し,ホームプロジェクトの実践発表に取 7 9 ○ 1 エプロン製作 布の繊維を考えるグループワーク ○ ○ り組む。 食生活をつくる 1 私たちの食生活 ○ 食生活の変化と食生活指針について理解する。 内食・中食・外食の長所と短所を考え るグループワーク 2 食事バランスガイド 食事バランスガイドについて理解する。 ○ ○ ワーク用シールの中から選んで,献立 を立てる 10 栄養価の計算 ○ 食事摂取基準を理解し栄養価の計算を理解する。 3 調理 12 第1回調理実習 青菜の磯辺あえ 副菜の作り方を理解する。 ○ ○ ○ 第 2 回調理実習 親子丼 主食と主菜について理解する。 ○ ○ ○ 第 3 回調理実習 ハンバーグ 主菜について理解する。 ○ ○ ○ 第4回調理実習 チャンプルー 郷土料理を理解する。 ○ ○ ○ 持続可能な食生活について考える。 ○ 1 発達のすばらしさ 人間の体の発達を理解している。発達する力を伸 ○ 2 すこやかに育つ環境 ばすために大切なことを理解する。 4 これからの食生活 子どもとかかわる 1 ○ 高齢者とかかわる 1 高齢者の生活とサポート(DVD 視聴) 高齢者を理解し,サポート方法について考える。 家-1-3 ○ ユニバーサルデザイン化 月 学習内容 学習のねらい ア ケ ホ 2 高齢社会に生きる私たちの暮らし 介護保険制度を理解する。 ○ 3 3 豊かな高齢期を迎えるしくみ 年金について理解する。 ○ コ サ 4 社会とかかわる ○ 5 1 社会保障制度について 2 3つのモデルについて考えるグルー 社会保障制度の3つのモデルを理解する。 プワーク 経 経済的に自立する 1 1 格差社会の現状 多様な労働形態を理解する。 ○ 2 2 将来のための経済計画(DVD 視聴) ファイナンシャルプランニングについて考える。 ○ 3 家計を管理する 4 1 一人暮らしでどのくらいお金が必要 住 住生活をつくる 1 1 一人暮らしの部屋探しから住生活を 3 考える(DVD 視聴) ○ ○ 家計の収入と支出について理解する。 ○ 部屋さがしに必要な知識を身に付け,住居の機能 や住空間の計画について理解する。 2 消費行動を考える 1 1 消費者の権利と責任 ○ これからの消費者に必要な知識を身につけ,消費 者としての権利と責任を理解する。 家庭科の授業では,ユニバーサルデザインの考え方が取り入れやすく,これまで,無意識に行 っていたものもあったが,今回の研究では,ユニバーサルデザインの授業実践を意識的に行うよ うにした。特に, 「ア クラス内の理解促進」 「ケ 視覚化」 「コ 身体性の活用(動作化・作業化)」 「サ 共有化」について,重点的に取り入れので,次に,これらを取り入れた授業実践を報告す る。 (3)授業実践例 ア 実践例1「自分を見つめる」 これからの授業の中で,ペアワークやグループワークを取り入れていくための準備として, 自分の長所を1つ発表する全員発表を取り入れた。全員が発表することにより,アのクラス内 の理解促進が期待できる。 [学習目標]ライフステージの中の青年期の課題を意識させ,自己を表現する。 [授業展開] 学習内容・活動 指導上の留意点・評価の規準 導入 10 分 シラバス説明,家庭科を学ぶ目的を考える。 年間の学ぶ内容を理解させる。 展開 35 分 自分を見つめる 自分について考えさせ,記入させる。 関心・意欲・態度 自己紹介のプリントに自分の長所を20個以 これまでの自分を振り返って「自分」 ワークシート 上考えて,記入しながら,改めて「自分」を見 は何が好きで,どんな長所があるの つめる。 か,具体的に考えている。 家-1-4 評価観点・評価材料 展開 学習内容・活動 指導上の留意点・評価の規準 評価観点・評価材料 自分の長所を1つ発表 「生徒同士の相互理解」や「参加の促 関心・意欲・態度 自分の考えをまとめ,長所を発表する。他人の 進」をさせる。 行動観察 長所を聞く。 自分の長所をわかりやすく発表し, 他人の長所を肯定的に受け入れてい る。 まとめ ふりかえり 他人の長所を参考にして,自己理解 関心・意欲・態度 5分 発表を通して,新たな気づきを記入する。 を深めようとしている。 ワークシート [生徒たちの様子と感想] クラスのほとんどの生徒が,長所を10個以上記入し,過半数以上の生徒が20個以上の長所 を記入した。全員が発表でき,クラスメイトの話をよく聞いていた。感想として,みんなの長所 が聞けて楽しかったという意見があった。この発表で,自分の意見を発表しやすい雰囲気をつく り, 「生徒同士の相互理解」や「参加の促進」ができた。これをきっかけに,ペアワークやグルー プワークに発展させていく。 イ 実践例2「パートナーと出会う」 この授業で,サの共有化として,生徒がペアで考えを伝え合う場面を取り入れた。 [学習目標]結婚についての日本の歴史と現状を理解する。結婚生活で大切なことを考えさせ, 男女で協力して家庭を築いていくことを理解する。 [授業展開] 導入 10 分 学習内容・活動 指導上の留意点・評価の規準 結婚とは何かを考える。 結婚について考えさせる。 評価観点・評価材料 結婚の歴史クイズで日本の結婚の歴史を知る。 展開 35 分 現在の結婚の実態について知る。 現在の結婚について考えさせる。 結婚生活で大切なことを考え,ペアになって話 男女が協力して家庭を築いていくた し合う。 めには,どのようなことが必要かを 関心・意欲・態度 発表する 考え,ペアワークや,発表などの活動 ワークシート 他のペアグループの発表を記入する。 に取り組んでいる。 行動観察 まとめ 内容のまとめ 思考・判断・表現 5分 ふりかえり 授業をふまえて,男女が協力して家 ワークを通して,気づいた結婚生活で大切なこ 庭を創造していくことの大切さに気 とを考え,記入する。 付き,まとめている。 ワークシート [生徒たちの様子と感想] ペアワークに積極的に取り組んでいた。 「結婚生活で大切なこと」の生徒の意見は, 「愛,信頼, 経済力,家事を協力すること,共通の趣味を持つこと,子供についての考えを合わせる,一緒に いる時間をつくる」等だった。生徒たちは,よく考えていると感じた。様々な意見が出て,活発 な発表となった。感想として,話し合ってからの方が自信を持って発表できるとあった。 参考資料として,高群逸枝著「日本婚姻史」から「日本の結婚の歴史」を載せた。まとめでは, 別紙で,中野信子著「コミックエッセイ脳はなんで気持ちいいことをやめられないの?」から「と 家-1-5 きめきが減っても大丈夫」を配付して,男女の違いや個人の違いを理解して,コミュニケーショ ンをとることが大切であると説明した。 [ワークシート] *結婚生活で大切なことは? パートナーと出会う 1 変わる結婚 となりの人と話し合ってみよう。 (1)結婚とは何か 話し合った結果 [結婚の歴史クイズ] 日本の昔の結婚とは,どのようなものだったのだろう。 実は,結婚の形も時代の変化とともに様々に移り変わってきた。 他のペアの意見 表中に,その時代の特徴的な結婚の形だと思うものを選んで, 記号を書き入れてみよう。同じものを何回使ってもよい。 時代 先土器・縄文・弥生 大和 奈良・平安・鎌倉 室町・江戸 明治・源代 【まとめ】 結婚形式 ペアになる人を指示する。有意義 な話し合いをするように説明す ア 嫁入り婚:妻が夫の家に入る イ 群婚:特定の相手が決まっていない ウ 寄り合い婚:妻と夫がそれぞれの家を出て,新しい世帯をつくる エ 妻問い婚:夫が妻の家にかよって来る オ 婿取り婚:夫が妻の家に入る る。5分間話し合いなさいと指示 する。発表する人は右の人と指名 する。 カ 一夫多妻制:ひとりの男性が複数の妻を持つ (2)現在の結婚 (3)いろいろな結婚形態 ( )→婚姻届を出さないでともに暮らす。 ( )→共働きで子どもをもたない。 ( )→共働きで子どもをもち,二人で子育てをする。 ( )→互いの仕事やライフスタイルを尊重し別居するが,必要な時に会う。 ( )→夫,妻の一方または両方が,子ども連れで再婚したカップル ( )→同性の者どうしが支えあいながら共に暮らす。 *この授業により,あなたにとって結婚生活で大 切なことは何だと思いますか。 ウ 実践例3「未来をデザインする」 この授業で,ケの視覚化とコの身体性の活用(動作化・作業化)を取り入れた。事前に,目 標を持つことの大切さを説明し,次の授業で「宝地図」制作をした。 [学習目標]将来の自分の夢や目標を考えて,未来をデザインする。 [授業展開]2時間 導入 10 分 学習内容・活動 指導上の留意点・評価の規準 目標を持つことの大切さを学ぶ。 計画して,筆記することの重要性を理解 評価観点・評価材料 させる。 展開 30 分 意識することの大切さを学ぶ。 意識することの大切さを理解させる。 高校生活の目標を具体的に書く。 自分で考えて行動し,自分に責任を持つ 思考・判断・表現 ことの大切を自覚し,目標の実現に向け ワークシート て,何が大切かを考えている。 行動観察 家-1-6 学習内容・活動 指導上の留意点・評価の規準 まとめ スポーツ選手や芸能人の卒業文集を読み,参考に 目標を持って,筆記して,夢を叶えた人 10 分 する。 の事例を紹介する。 評価観点・評価材料 宝地図の作り方と次回用意するものを理解する。 資料①を配付し,次回の授業で行う宝地 図作成の作業を理解させる。 導入5分 宝地図の作成方法を確認する。 宝地図の作成方法を復習させ,確認させ る。 架空人物の千葉北子さんの宝地図(資料 ②)を見せ,本時の活動内容を確認する。 展開 35 分 自分の将来の人生設計を A3 サイズの紙 宝地図の作成をする。 にまとめさせる。 これからの人生の生活設計を考えてい 技能 る。 行動観察 主体的な生活設計を具現化するために必 要な情報を収集・整理することができる。 まとめ 宝地図の評価 教師に理解できるように宝地図の説明が 技能 10 分 教師に宝地図を説明する。 できる。 作品 机間巡視して,作品を説明させる。 目標を持って,筆記して, [ワークシート] 1 目標を持とう 計画することの大切さを説 明する。 2 目標を書く 高校時代の目標 アメリカの名門大学・エール大学卒業生の調査 高校時代の 具体的な目 標を書く。 Ⅰ Ⅱ Ⅲ 20年後の再調査 意識することの重要性を簡単に Ⅲグループは,1人あたり,平均Ⅰ,Ⅱグループ 実験する。目を閉じてもらい, の( 周りに赤いものがいくつあるか )倍の資産を手に入れていた。 を思い出して数えさせる。その 〈意識することの大切さ〉 欲しいものがあれば,なりたいものがあれば, いろいろ意識できる。 後,目を開けてもらい,赤いも のが目に飛び込んできたことを 確認し,これが意識の力だと説 明する。目標があれば,意識で きることを体験させる。 家-1-7 [資料①]* [資料②] あなたの人生の「宝地図」を作ろう A3サイズの紙に好きなものや夢,理想などを書いたり,貼 り付けたりしよう。 1 自分自身のキャッチフレーズ 「理想の自分」を思い浮かべ,将来像を明確にする。 2 あなたの名前 目立つ場所に大きく書く。 3 夢を表現したイメージ 夢に直接結びつく写真やイラストを貼る。または,イラ ストや文章で書く。 4 夢の期日や条件 夢を実現する 5 自分自身を勇気づける言葉 自分の好きな言葉があれば,書きましょう。 6 最後に「すべてうまくいきました。ありがとうございま す。 」と記入すると,夢が確実になる!? 7 「宝地図」をひんぱんに目にする場所に飾り,眺める。 【次回の持ち物】夢に直接結びつく写真やイラスト・のり・ はさみ・カラーペン *( 「[図解]本当にあった! 世界一簡単に夢を実現する『宝地図』」より抜粋) [生徒たちの様子と感想] 生徒たちは,1年の最初に高校生活の目標を持つことが大切であることを理解し,きちんと目 標を記入することができていた。参考資料として,望月俊孝著「幸せな宝地図であなたの夢がか なう」の一部を配付して,次回の授業で作成する宝地図をイメージさせた。感想として,マンガ で説明されているとわかりやすくて良いとあった。 将来の人生設計が決まっている生徒は,楽しく出来た作業であった。しかし,将来の人生設計 が全く決まっていない生徒は,記入することに苦戦していた。楽しく作成した生徒も,苦戦して いた生徒もいたが,ほとんどの生徒が宝地図を記入していた。目標をイラストや写真などでイメ ージ化する方法は,生徒たちにとって効果的であると感じた。 エ 実践例4「家族と法律 相続と遺留分を考えるグループワーク」 この授業で,サの共有化として,生徒がグループで考えを伝え合ったり,教えあったりする 場面を取り入れた。家族法を理解して,遺言を作成する。自分で考えてから,グループワーク で教え合い,発表する。 [学習目標]家族の法律について明治から現在までの変化を理解する。 家-1-8 [授業展開] 学習内容・活動 指導上の留意点・評価の規準 評価観点・評価材料 導入5分 前回のプリントを見る。相続について知る。 前回のプリントを復習させ,確認させる。 展開 【例題1】法定相続の配分 教科書を参考に配分を計算させる 40分 法定相続について学ぶ。 法定相続分の計算ができる。 知識理解 遺留分について学ぶ。 遺留分について理解させる。 ワークシート 【例題2】遺言による相続 遺言による相続について,理解している。 遺言による相続について,グループで考える。 【例題3】どちらの姓を選ぶか 家族構成によって,どちらの姓を選ぶか 家族構成により,どちらの姓を選ぶかを考える。 を考えている。 まとめ 民法改正の動きを理解する。 関心・意欲・態度 行動観察 民法改正に関する基本的な趣旨を理解さ 5分 せる。 [ワークシート抜粋] 【例題1】 法定相続人の組み合わせにより,順位や割合が決まり配分される。1000万円の遺産があった場合,それぞれの 法定相続分はいくらになるだろうか。 遺留分とは?兄弟姉妹以外の( )が受け取ることができる。( )の最低限の( ) 。 *父母,両親など直系尊属だけの場合,法定相続分の( *兄弟姉妹が相続人の場合,( )。 )。 *その他(配偶者・子ども・直系尊属である父母の組み合わせ)の場合,法定相続の( )。 【例題2】Aさん(男性)には,妻と子ども3人がおり,現在,長男夫婦と同居している。財産は,自宅不動産2700万円・預貯 金2千万円・上場株式700万円で合計5400万円ある。長男の嫁がよくしてくれたので,相続させたいができるか。 法定相続分 遺留分 遺言による配分 4,5人班を指定して,話し合いを指示し 妻 た。発表する人は一番小さい番号の人と指 長男 名した。 長女 次男 長男の嫁 家-1-9 【例題3】千葉君と北山さんは,熱愛中で結婚の予定です。それぞれの家族構成によってどちらの姓を選ぶか,考えてみましょう。 ①千葉君が一人っ子で北山さんに兄ありの場合→ 千葉・北山 ②千葉君が次男で北山さんが一人っ子の場合→千葉・北山 ③千葉君も北山さん一人っ子の場合→千葉・北山 [生徒たちの様子] ある資産家 A さんが,遺留分を考慮に入れながら遺言による相続配分を考えるという設定で話 し合った。内容として難しいと感じる生徒もいて,グループで教え合いながら考えていた。生徒 の感想として,グループで教え合うことによって理解できたという感想があった。 (4)学習後のアンケート調査と考察(対象:平成27年度1年生 [ケ 家庭基礎281名) 視覚化]パワーポイントの授業は分かりやすかったか。 ①大変分かりやすかった ②分かった ③普通④あまり分からなかった ⑤分からなかった 視覚化するために多くの授業で,パワーポイントを取り入れた。パワ 1 ⑤ ーポイントを取り入れた授業は, 「大変分かりやすい」と「分かった」を 10 ④ 65 ③ 合わせて,72%となった。スマートフォンや iPhone などに慣れてい 118 ② るので,ワープロの文字のほうが分かりやすいのではないかと考える。 80 ① 0 50 100 感想の中には,もう少し色を変えてもらいたい,写真を多く取り入れて 150 もらいたいなどの意見があった。今後,工夫を加えていきたい。 [ア クラス内の理解促進] 【自分を見つめる】自分について考えることが出来たか。 ①良く出来た 1 6 ⑤ ④ ③ ② ① ②出来た ③いつも通り ④あまり出来なかった ⑤出来なかった 51 157 61 0 100 200 自分について考えることが「良く出来た」と「出来た」合わせて79% となった。自分について考えるきっかけとなり,良い結果となった。 他の人の長所は参考になったか。 ①大変参考になった ②参考になった ③やや参考になった ④あまり参考にならなかった ⑤参考にならなかった 4 6 ⑤ ④ ③ ② ① 75%となった。 「生徒同士の相互理解」や「参加の促進」につなが 59 128 80 0 [サ 他人の長所は「大変参考になった」と「参考になった」を合わせて, 50 100 った。学習目標は,おおむね達成できたと考えられる。 150 共有化]【パートナーと出会う】 結婚について考えることが出来たか。 ペアワークでの話し合いの取組はどうだったか。 ①良く出来た ②出来た ③いつも通り ④あまり出来なかった 家-1-10 ⑤出来なかった 1 ⑤ ⑤ ④ ③ ② ① 18 ④ 75 ③ 132 ② 48 ① 0 50 100 2 9 69 124 70 0 150 50 100 150 他のペアワークの意見の感想 ①大変良かった ②良かった ⑤ ④ ③ ② ① ③普通 ④あまり良くなかった ⑤良くなかった 結婚について考えることが「良く出来た」と「出来た」合わせて66%となった。 0 2 ペアワークでの話し合いの取組は「良く出来た」と「出来た」合わせて81%と 58 なった。そして,他のペアグループの意見は「大変良かった」と「良かった」合 148 60 0 [コ 50 わせて77%になった。ペアワークは,学習目標を達成するのに有効と考える。 100 150 200 身体性の活用(動作化・作業化)]【目標を持つ】 高校生活の目標を持つことは出来たか。 目標を持つことの大切さを理解できたか。 ①良く出来た ②出来た ③いつも通り ④あまり出来なかった ⑤⑤ 0 0 4 ④④ 10 ③③ ②② ①① 0 0 4358 104126 121 80 5050 ⑤出来なかった 100 100 150 150 「目標を持つことの大切さを理解できたか」の質問で, 「良く出来た」45%, 「出来た」38%となり,合わせて93%とな り,肯定的な感想が一番高い結果になった。そして, 「出来なかった」生徒は,0であった。説明と実験,その後に,高校生 活の目標を書き,実際に目標を実現した人の話をすることによって,色々な方法を取り入れて理解が深まったと考える。学習 目標は,おおむね達成できた。ユニバーサルデザインの考えを取り入れて,生徒たちの理解が深まったといえる。 [コ 身体性の活用(動作化・作業化)]【宝地図を書こう】 宝地図を書いて,自分の夢について考えることが出来たか。 ①良く出来た ②出来た ③いつも通り ④あまり出来なかった 18 わせて,68%となった。1年生対象の授業で,将来の人生設計 64 107 を考えるのは,難しかったかもしれない。将来を考えるきっかけ 79 0 [サ 自分の夢について考えることが「良く出来た」と「出来た」が合 5 ⑤ ④ ③ ② ① ⑤出来なかった 50 100 150 になってもらえれば良いと考える。 共有化]【家族と法律】 家族法について理解できたか。相続と遺留分を考えるグループワークでは,話し合いが出来たか。 ①良く出来た ②出来た ③いつも通り ④あまり出来なかった 家-1-11 ⑤出来なかった ⑤ ⑤ 2 ④ ④ 23 ③ 146 ① 0 85 ② 100 200 今後は,小テストなど行って確認していきたい。話し合い 115 ① 39 来た」53%となった。理解できたという感想が多いが, 9 ③ 65 ② 家族法について理解できたかは, 「良く出来た」14%, 「出 1 は「良く出来た」23%, 「出来た」42%, 「いつも通り」 62 0 100 31%となった。ペアワークをやった後だったので, 「いつ 200 も通り」という感想が多かったと考える。 [考察まとめ] ユニバーサルデザインの考えを取り入れて,指示を1つに絞ったところ,生徒の取組がよくな り,感動した。特に,普段落ち着きがない生徒や,やる気の見られない生徒が積極的に参加する ようになった。そして,ユニバーサルデザインの考えを取り入れた授業は,肯定的な感想が多か った。特に,目標を持つことの大切さを理解できたかの質問で,肯定的な感想が多い結果になっ た。説明と実験,その後に高校生活の目標を書き,実際に目標を実現した人の話をすることによ って,理解が深まったと考える。授業の中にいろいろな方法を取り入れることが,学習目標を達 成するのに,有効だといえる。また,ユニバーサルデザインの考えを取り入れ,アのクラス内の 理解促進から始め,サの共有化につなげることによって,例年よりスムーズに言語活動を行うこ とが出来た。段階的な取組が,学習目標を達成するのに,有効だといえる。 4 今後の課題 今回の研究で,ユニバーサルデザインの考えを取り入れた授業は,アクティブラーニングや言 語活動を取り入れた授業につながると言うことが分かった。今後も,より多くの生徒が参加する 授業展開を考えていきたい。今後の課題は,アクティブラーニングや言語活動を取り入れた授業 をどのように評価していくかである。生徒に分かりやすく評価の規準を示し,生徒のやる気につ ながるようにしていくためには,どのようにすればよいかを研究していきたい。 5 おわりに 「分かる授業」を展開して,生徒の「やる気」を引き出したいと考えて,授業を創造してきた。 生徒の中には,いろいろな学習スタイルを得意とする者がいる。学習スタイルには,聴覚系(「聞 く」ことを通して物事や情報を吸収したり,理解することが得意),言語感覚系(「思考」を通し て物事や情報を吸収したり,理解することが得意) ,触覚系(「体感」を通して物事や情報を吸収 したり,理解することが得意) ,視覚系(「見る」ことを通して物事や情報を吸収したり,理解す ることが得意)がある。それぞれの得意とする学習スタイルを考慮したユニバーサルデザインの 考えを取り入れた「分かる授業」を行っていきたい。「やる気」とは,「未来のプラスイメージ」 が強く, 「未来のマイナスイメージ」が弱いことから生まれる。ユニバーサルデザインの考えを取 り入れた「分かる授業」で,未来のプラスイメージを強くして,「やる気」を引き出し,さらに, これからの人生に前向きに取り組めるよう指導したい。家庭科を学ぶ目的は,人間の生涯にわた る発達と生活の営みを総合的にとらえ,主体的に創造する能力と実践的な態度を育て,幸せの拡 大をすることだと考える。家庭科の授業を通して,将来,生徒たちがより良く幸せになるために は,どうすればいいのかと常に考えてきた。 「分かる授業」を展開し,生徒の「やる気」を引き出 家-1-12 すことによって,生徒自身が人生の荒波を主体的に乗り越えて,幸せの拡大ができるようになっ てもらいたい。そのために,さらに,研究を重ねていきたい。 最後になりましたが,このような研究の機会をくださった先生方,御指導いただいた先生方, 協力していただいた勤務校の先生方, 授業でエネルギーをくれた生徒達に心から感謝いたします。 参考文献:「授業のユニバーサルデザイン入門」 「ADHD 症状を抑える授業力!」 小貫悟・桂聖 編著 平山諭・甲本卓司 編著 「[図解]本当にあった! 世界一簡単に夢を実現する『宝地図』 」 家-1-13 東洋館出版社 明治図書 望月俊孝 著 三笠書房