結晶粒微細化SUS304ステンレス鋼板

その他
新日鐵住金株式会社
結晶粒微細化 SUS304ステンレス鋼板
SUS304 規格成分で平均結晶粒径 2μm 以下を実現
平滑に仕上がっている（写真 1）。さらに低炭素とした
1．開発の目的
ことでエッチング加工時のスマット生成が抑制される
ステンレス鋼の結晶粒を微細化することにより、
ため、エッチング速度向上も期待できる。
エッチング加工やレーザー加工など m オーダーの精
金属組織
金属組織
度が要求される精密加工製品の仕上り形状改善に顕著
エッチング加工面
エッチング加工面
な効果がある。近年、スマートフォンなどの携帯型電
子機器における小型化、高密度実装化の進展にともな
開発材
開発材
い、精密加工用途に適した高機能ステンレス鋼が求め
25μm
られている。新日鐵住金 ㈱ では SUS 301 L の平均結晶
粒径を 1 ∼ 2
5
Ra = 1.2 μm
25μm
m まで微細化した材料 1）、SUS 304 で
m 程度まで微細化した材料 2）を提供しており、エッ
従来材
従来材
チング加工により製造される精密部品や治具、および
25μm
プリント基板へのはんだペースト印刷用レーザーメタ
ルマスクなどに使用されている。
Ra = 3.8 μm
25μm
写真 1 金属組織とエッチング面の光学顕微鏡写真
SUS 304 は最も一般的に使用されるステンレス鋼
であり、その微細化材のニーズは以前よりあったが、
開発材は低残留応力化の効果によりハーフエッチン
オーステナイト（γ）組織の安定度の高さから細粒化
グ試験（腐食液によって板厚の 1/2 を溶削除去）での
には限界があった。そこで圧延加工性を低下させるこ
反りがほとんど生じていない（写真 2）。ハーフエッチ
となくγ組織の安定度を下げる成分系の適用により
ング加工によって段付き形状や部分的に減肉するよう
SUS 304 での微細化材を開発した。
な用途において、反り変形の防止に有効である。
2．開発の内容
開発材
開発材
開発材は SUS 304 の JIS 規格範囲内で成分調整し、
冷間圧延と熱処理条件を制御することにより結晶粒を
微細化したものである。炭素やマンガン等のγ安定化
元素の低減により、冷間圧延での加工誘起マルテンサ
イト（α ′）変態を促進し、次工程の熱処理において α ′
10mm
従来材
従来材
10mm
写真 2 ハーフエッチング試験後の反り形状
から微細なγ組織への逆変態を積極的に活用した。さ
3．開発の成果
らに微量のニオブ添加によって熱処理過程での結晶粒
成長を抑制する手法を併用することにより平均結晶粒
開発されたステンレス鋼板は量産化できる SUS 304
径 2 m 以下を達成した。
としては世界最小の微細結晶粒を有しつつ、JIS G
細粒化処理の後は、調質圧延によって SUS 304 H 仕
4313（ばね用ステンレス鋼帯）の成分および機械的性
様の強度を確保し（表 1）、次いでテンションレベラ矯
質の規格を満足しており、いっそう加工精度の厳しい
正と低温の熱処理を施すことで精密加工用材料に要求
エッチング加工製品やレーザーメタルマスクなどへの
される平坦性と低残留応力化を果たした。
適用が検討されている。
（文責：喜多勇人）
開発材は従来材に比べて微細な結晶粒が得られてお
り、塩化第二鉄水溶液で処理したエッチング加工面は
表 1 SUS304 H の JIS 規格と開発材の機械的特性（一例）
0.2 % 耐力
（MPa）
引張強度
（MPa）
硬さ
（HV）
SUS 304 H
880 以 上
1130 以 上
370 以 上
開発材
1051
1171
396
参考文献
1 ）平原一雄：素形材 Vol. 49，No. 1（2008），19
2 ）藤澤一芳：素形材 Vol. 53，No. 1（2012），33
新日鐵住金 株式会社
チタン・特殊ステンレス事業部
〒 100 - 8071 東京都千代田区丸の内 2 - 6 - 1
TEL. 03 - 6867 - 5613 FAX. 03 - 6867 - 4906
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SOKEIZAI
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2014/01/09
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