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6. 土壌−植物−大気連続系における水とエネルギーの移動

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6. 土壌−植物−大気連続系における水とエネルギーの移動
6.
土壌−植物−大気連続系における水とエネルギーの移動
植物は,その生命活動に必要な物質を光合成によって自ら生成する.その原料は水と二酸
化炭素と光であるが,自由に移動できない植物にとって水の確保が最も重要でかつ難しいと
いえる.なぜならば,水はその存在が局所的であり,かつ,その存在量も不変ではない.す
なわち,消費すれば消失し,補給は保証されていないからである.
植物は根を通じて土壌から水分を吸収する.したがって,土壌の水分環境は,植物の影響
を強く受けることになる.一方で,土壌の乾燥は植物による吸水を困難なものにする.その
結果,植物の生命活動は土壌の水分状態の影響を受けることになる.すなわち,土壌と植物
には水を通じた相互作用が絶えず働いているのである.このような場における水の移動現象
は,土壌と植物,さらには大気をも一つの系(システム)として捉えることによってのみ正
しく理解できる.ここでは,土壌−植物−大気連続系(Soil-Plant-Atmosphere-Continuum System,
SPAC system)における水とエネルギーの移動について学ぶ.
6.1
植物根による吸水と植物体内の水輸送
根に吸水された土壌中の水は,植物体内の導管あるいは仮導管を通じて根∼茎∼葉へと輸
送される.水の流れを電流に,各部位間のポテンシャル差を電圧差に見立てると,この水の
流れは,オームの法則と同様の形式で表される.これをオームのアナロジーと言う.単純な
例を Fig. 6.1 に示す.
rL
φxL
φL
φxr
E
φr
φs
rx
rr
rso
Fig. 6.1
オームのアナロジーによる SPAC における水の流れのモデル化
E:蒸散速度,φs, φr, φxr, φxL, φL:土壌,根,根と木部の境界,葉と木部の境界,
葉のポテンシャル,r so ,r r,r x ,r L :土壌,根,木部,葉の抵抗
29
Fig. 6.1 のモデル化により,蒸散速度 E と各部のポテンシャルと抵抗は次式のように関係
付けられる.
E=−
φ L − φ xL
=−
rL
φ xL − φ xr
rx
=−
φ xr − φ r
rr
=−
φr − φs
(6.1)
rs
各部のポテンシャルは負となるため,根から葉への水の流れを正と見なして(6.1)式にマイナ
スをつけている.蒸散速度(植物体を流れる水のフラックス)と土壌水のポテンシャルが既
知であれば,(6.1)式から各部のポテンシャルが求められる.
また,(6.1)式を変形すると,
E=−
φL − φs
rL + rx + rr + rs
=−
φL − φs
(6.2)
r
φ L = φ s − Er
(6.3)
となり,葉の水ポテンシャルは土壌水の水ポテンシャルよりも蒸散速度と合成抵抗(R)と
の積の分だけ低くなる.
6.2
葉面からの蒸散
葉に到達した水は,Fig. 6.2 のように葉肉細胞の壁面で気化し,細胞間隙を通じてそれに
続く気孔から葉外に輸送される.葉外に達した水蒸気は葉の外皮表面に形成された葉面境界
層を通って周辺の大気に運び去られる.
水蒸気
孔辺細胞
二酸化炭素
クチクラ層
葉肉細胞
気孔
Fig.6.2 気孔における水と二酸化炭素の流れ
この現象を蒸散という.蒸散は光合成を行うために気孔を開放することで必然的に生じる
現象であり,それ自体は植物にとって必要な生理的機能ではない.蒸散による葉内水分の減
少は,葉の水ポテンシャルの低下を引き起こす.前節で述べた土壌→根→茎→葉の水の流れ
は,蒸散に伴う葉のポテンシャルエネルギーの低下が駆動力となっているのである.
実際の圃場における水の流れをモデル化するには,Fig. 6.1 のモデルに葉から大気への水
の移動を組み込まねばならない.葉から大気への水の輸送は,Fig. 6.2 に示したように,気
孔を通じて行われる.この流れもオームのアナロジーでモデル化でき,そのときの抵抗を気
30
孔抵抗という.よく知られているように,植物は自身の水分状態に応じて気孔の開閉を行っ
ている.したがって,気孔抵抗は,他の抵抗とは異なる可変抵抗としてモデル化しなければ
ならない.また,葉内で気化する水蒸気の出口は気孔だけではない.葉肉細胞から直接クチ
クラ層を通じて放出される水分も存在する.クチクラ層とは,植物の表面を覆うロウ状物質
で構成された層であり,ここを通じての水分放出をクチクラ蒸散という.クチクラ抵抗とは
クチクラ蒸散に関わる抵抗であり,10000 s m-1 という大豆の測定例がある.これらの流れは
同時に起こりうるため並列抵抗の形でモデル化しなければならない.
ところで,気孔あるいはクチクラ層から葉外に放出された水蒸気は,葉面に発生する境界
層(葉面境界層)を通過して大気に放出される.この葉面境界層を通過する流れは葉面境界
抵抗を導入することでモデル化できる.
Fig. 6.3 は,上記の水分輸送をモデル化したものである.
ea
葉面境界抵抗
クチクラ抵抗
rb
rcu
rs
気孔抵抗
e0
Fig.6.3 蒸散システムのモデル化
ea, e0:外気と葉内蒸発面の水蒸気密度(絶対湿度)
葉内から外気への水蒸気フラックス(蒸散速度)を E とすると,
E=−
e a − e0
rL + rb
(6.4)
ただし,rL はクチクラ抵抗と気孔抵抗の合成抵抗であり,
1  1
1
= 
+ 
rL  rcu rs 
(6.5)
と定義される.気孔抵抗 rs は,気孔の開き具合(気孔開度)をモデル化したものに他ならな
いが,その大きさは様々な因子の影響を受けて変化する.例えば,日射が強くなれば光合成
のため葉内の CO2 濃度が低下して気孔が開く.また,葉温が増加すると気孔開度は増すが,
25∼35℃の高温になると光合成よりも呼吸作用が大きくなり CO2 濃度が高くなって気孔開
31
度は小さくなる.もちろん,土壌水分が減少し水ストレスが発生すれば孔辺細胞の膨圧が小
さくなるため気孔開度も小さくなる.Fig. 6.4 は,大豆の気孔抵抗と日射およびマトリック
ポテンシャルとの関係を表したものである.
20
気孔抵抗 (s/cm)
pF4.2
pF3.8
pF3.5
10
pF3.1
pF2.8
0
0
500
1000
1500
2
日射量 (J/cm )
Fig. 6.4
気孔抵抗と日射およびマトリックスポテンシャルとの関係
(長ら,1988)
Fig. 6.4 より,日射が小さくなると気孔抵抗は大きくなり,土壌が乾燥するのに伴って,気
孔抵抗は大きくなっていることがわかる.このように気孔抵抗の変化は複雑で,これまでに
も様々な関数形が提案されているが,ここでは Shawcroft et. al (1970)の式を紹介しておく.
rs = rmin (ψ soil ) +
β
Rs leaf +
(6.6)
β
rcu − rmin (ψ soil )
ここで,rmin は最小抵抗(s m-1 ),ψ soil は土壌のサクション(cmH2 O),Rsleaf は葉面日射量(W m-2 ),
βは定数(例えば,80)である.なお,最小抵抗 rmin の測定例として次式を紹介する(中野,
1987).
ψ soil < 774
rmin = 100
(6.7)
ψ soil ≥ 774
rmin = 653 ⋅ ln 98.1 × 10 −6 ⋅ ψ soil + 1780
前述した通り,葉の外表面と周辺大気の間には葉面境界層と呼ばれる薄い空気の層が形成
される.層内は層流状態が維持されていると考えられている.層の厚さは,葉が大きいほど
厚く,風速が大きくほど薄い.そこで,葉の有効幅(Wl )と葉面上の平均風速(u av)を用い
32
て,(6.8)式で求められる.
rb = 1.8 Wl u av
(6.8)
なお,(6.4)式におけるマイナスは,葉内から葉外への水蒸気流れを正として取り扱うため
であり,水蒸気は密度の大きい方(葉内)から密度の小さい方(葉外)へと移動する(ea <e0).
6.3
SPAC 系における水分移動のモデル化
Fig. 6.1 と Fig. 6.3 を組み合わせ,さらに葉面境界層から大気への流れを組み込むことで土
壌から大気への水の流れをモデル化できる.
水の吸源(大気)
一般大気
ra
葉面境界層
rb
クチクラ層
rcu
水蒸気
rs
木部
rx
根
rr
土壌
気孔
液状水
rso
水の湧源(土壌)
Fig.6.5 SPAC 系における水の流れ(Rose,1966)
Fig.6.5 は SPAC 系における水分移動をオームのアナロジーで表したものである.Fig.6.1 で
は土壌の抵抗を一定として表記したが,実際には水分量によって変化する可変抵抗として扱
うのが正しい.ところで,SPAC 系における水の流れは,オームのアナロジーを用いて連続
した形で表現できるが,移動の形態は必ずしも同一ではない.すなわち,土壌から葉までは
液状水として移動する質量流れであり,葉から大気へは水蒸気として移動する拡散輸送とな
っている.したがって,土壌∼葉はポテンシャル勾配が駆動力となるが,葉∼大気では水蒸
気濃度(絶対湿度)勾配が駆動力となる.
この SPAC モデルによって,外部大気と土壌の水分状態の測定結果から蒸散速度が推定さ
33
れ,それによって各部のポテンシャル状態を知ることができる.また,蒸散速度の変化によ
って各部のポテンシャルがどのような変化を示すか,逆に,各部のポテンシャルの変化が蒸
散速度にどのような影響を及ぼすかなどの相互作用について理解を深めることが可能とな
る.
6.4
Big Leaf モデル
6.2 で述べた蒸散モデルは個葉を対象としたものであったが,群落全体を一枚の大きな仮
想葉(Big Leaf)とみなすことで,個葉モデルを群落モデルに拡張することができる(Fig.6.6).
この概念に基づく SPAC モデルを Big Leaf モデルという.Big Leaf モデルには,蒸発散フラ
ックスの取り扱い方の異なる2つのタイプのものがある.
zm
zH
zc
Big Leaf Model
Fig. 6.6 Big Leaf モデルの概念図
(1)Penman-Monteith 法
蒸発散量は,土壌面からの蒸発と葉面からの蒸散量との合計である.両者の蒸発メカニズ
ムは異なるので,理論的には分離して取り扱うべきであるが,計算に必要な微気象データは,
群落の土壌面,葉面上で別々に測定されるわけではない.そこで,Monteith は群落を一枚の
大きな葉とみなし(仮想葉,big leaf),この仮想葉上で熱のやりとりが行われると仮定した.
Monteith は,仮想葉からの潜熱伝達量として次式を提案した.これが Penman-Monteith 式で
あり,Penman 法が基本となっているため,Penman-Monteith 法と呼ばれることが多い.
34
∆(Rn − G ) + C p ρ a
lE =
∆+γ
(ecs − ea )
(rc + ra )
ra
(6.9)
ra
ここで,C p :定圧モル比熱(1.02×10 -3 MJ kg-1 ), ρa :空気の密度(1.20 kg m-3 ),γ:乾湿計定
数(hPa K-1 ),ecs :仮想蒸発面の飽和水蒸気量,ra ,rs,rc:空気力学的抵抗,気孔抵抗,群落
抵抗 (s m-1 ) である.
  z − d 

ln
z
 0 
ra = 
κ 2 ⋅u
2
(6.10)
ここで,d:地面修正高さ(m),z 0 :群落の粗度長(m),κ:Karman 定数 0.41,u:ある高
度における風速 (m s-1 )である.d および z について群落高(h)を用いた経験式が提案されてい
る(Monteith, 1993).
d = 0.63 ⋅ h
(6.11)
z = 0.13 ⋅ h
(6.12)
群落抵抗 rc は植物生理学的作用の他に風速などの影響も受ける(Thom,1972).しかし,植
物生理学的作用に支配される気孔抵抗と密接な関係があり,第一近似として LAI を介して次
式のように表現できる(Federer,1975).
rc = rs ⋅
2
LAI
(6.13)
(6.9)式で求めた蒸発散量を後述する植物根の吸水モデルに組み込むことで,土壌∼大気へ
の流れをシミュレートできる.
(2)改良 Big Leaf モデル
Monteith の提案した Big Leaf モデルでは土壌面蒸発と蒸散を分離せずに取り扱っている
が,圃場における水やエネルギーの移動をより詳細に解析するためには土壌面蒸発と蒸散を
分離して取り扱わねばならない.そこで,群落の地上部分のみを一枚の仮想葉とみなし,仮
想葉表面と土壌面において熱収支式とフラックス式を立てて,蒸発散量を評価する改良 Big
Leaf モデルが提案された.
改良 Big Leaf モデルでは,仮想葉表面と土壌面に Fick の法則を適用してその蒸発フラッ
クス(kg m-2 s-1 )を求める.なお,蒸発フラックスに水の蒸発潜熱 l(J kg -1 )を乗じたものを潜
熱伝達量(W m-2 )という.
仮想葉の蒸発フラックスを Eleaf とすると,
lEleaf =
C p ρ a esat (Tleaf ) − eair (Tair )
γ
(6.14)
ra + rs
ここで,e sat (Tleaf ):葉面における飽和水蒸気圧(hPa),e air (Tair ):大気の水蒸気圧(hPa)で
ある.ra ,rs は境界層抵抗ならびに気孔抵抗であるが,本モデルでは,境界層抵抗を①風速
35
の測定高度(zm)から実際の群落高さ(zH)との間の抵抗(r1 ),②群落高さから仮想葉の設
定高さ(zc)までの間の抵抗(r2 ),および③葉面境界抵抗(rb )の 3 層の抵抗の和として取
り扱う.すなわち,
ra = r1 + r2 + rb
(6.15)
r1 =
(6.16)
ln[( zm − d ) ( z H − d )]⋅ ln[( zm − d ) z0 ]
κ 2u ( z )
r2 は,風速が群落内で指数減衰することから次式で求められる.
r2 =
− z h [1 − exp{− α( z c z H + 1)}]
α ⋅ κ ⋅ u∗ ⋅ ( z H − d )
(6.17)
zc は Sinclair et al.(1976)を参考とし, z c = d + z 0 とした.葉面境界抵抗 rb は(6.8)を援用し
て算出すればよい.
一方,土壌面の蒸発フラックスを Esoil とすると,
lE soil =
C p ρ a esoil (Tsoil ) − eair (Tair )
⋅
γ
rg
(6.18)
ここで,rg :土壌面拡散抵抗(s m-1 ), e soil (Tsoil ):土壌面の水蒸気圧(hPa)である.土壌面近傍
には乱流拡散層の下に,さらに分子拡散の卓越する層が存在する.したがって,土壌面拡散
抵抗は,乱流拡散抵抗と分子拡散抵抗の和となる.ここでは,Owen and Thomson(1962)によ
る式を用いる.
rg =
ln ( z z 0 soil )
1
+
κ ⋅ u*
B ⋅ u*
(6.19)
ここで,z0soil:土壌面の粗度長(m),u*:高さ z における摩擦速度(m s-1 ),B:スタントン数で
ある.高さ z における u *は次式より求められる.
u∗ = u z
κ
ln ( z z 0 soil )
(6.20)
ここで,u z:高さzでの風速(m s-1 )である.群落内の風速分布は次式より推定できる(中野・
長,1985).
u z = u H exp[− δ u (1 − z H )]
(6.21)
ここで,u H:群落高 H における風速(m s-1 ),δ u:葉の大きさ,傾き,空間密度によって決ま
る減衰係数である.B は次式より求められる(Chamberlain,1967).
B
−1
u ⋅ξ
= 0.52 ∗ 
 ν 
0.45
 ν

 Da



0.8
(6.22)
ここで,ξ:土壌面の有効起伏量(m),ν:空気の動粘性係数(1.501×10 -5 m2 s-1 at 20 ºC),Da :
空気の分子拡散係数(m2 s-1 )である.
36
(6.14),(6.18)式で仮想葉面ならびに土壌面の温度が必要となるため,これらを解くに
は各面での熱収支項を知る必要がある.このように,本モデルは Big Leaf モデルよりも物質
やエネルギーの移動について詳細な解析が可能となる反面,必要となるパラメータは増加し,
計算も複雑にならざるを得ない.
(3)植物根による土壌水分の吸水
Big Leaf モデルを特徴づけるのは地上部(群落)の取り扱いであり,これに土壌中の植物
根による吸水モデルを組み合わせることで,SPAC 系の水分移動を表現するモデルが完成す
る.
土壌中の根の分布は非常に複雑である.これは種による相違のみならず,同一種において
も生育段階での水分供給履歴の影響を強く受けるからである.一般論としては,根は表層に
多く下層にいくほど少なくなる.特に,水分供給が頻繁に行われる場合にはその傾向が著し
い.一方で,水分供給頻度が少ない場合には,根は土壌深く伸長していく.
このような根の分布,すなわち根密度が土壌の水分分布の不均一性を生み出す一因となる
ため,SPAC 系における水分輸送のモデリングでは,根による吸水項を Richards の式に組み
込んで計算を行う必要があるが,それは本講義のレベルを超える.ここでは,これまでに提
案されている吸水モデルをその考え方に従って大別した筑紫の分類(1995)を紹介するにとど
める.
1) 植物根のある点と土壌間におけるサクションの差を,その間の抵抗で割って吸水強度を評
価する.
Gardner(1964)
: S = Num ⋅ K ⋅ R L (ψ root − ψ soil )
θ
Herkelrath et al. (1977) : S = 
θs



Para
τ r ⋅ RL (ψ root − ψ soil )
(6.23)
(6.24)
ここで,Num:定数,ψ root :根のサクション(cmH2 O),ψ soil :土壌の全サクション(cmH2 O),
RL:根長密度(m m-3 ),θ s :土壌の飽和体積含水率,τ r :根の長さ当たりの透過係数(m s-1 ),
Para:補正パラメータである.
2) 何らかの方法で決定した蒸散量に一致するように土壌中での吸水量を配分する.
Molz and Remson(1970): S =
TR ⋅ RL ⋅ DW
∫
z2
z1
(6.25)
DW RL dz
ここで,TR:土壌面の単位面積当たりの蒸散速度(m s-1 ),z 1 ,z 2 :根が存在する土壌深の下
限値と上限値(m)である.
3) 最大吸水速度を決定し,吸水速度を水分の関数として与える.
Feddes et al. (1978)
: S = α ψ ⋅ S max
37
(6.26)
αψ = ψ ψ 1
αψ = 1
: 0 <ψ <ψ1
:ψ 1 < ψ < ψ 2
αψ = (ψ 3 − ψ ) (ψ 3 − ψ 2 ) :ψ 2 < ψ < ψ 3
:ψ 3 < ψ
αψ = 0
ここで,S max:根の最大吸水強度(m3 m-3 s-1 ),α ψ :土壌のマトリックサクションに対応する
吸水関数(0<α ψ <1),ψ 1 ,ψ 2 ,ψ 3:吸水関数の変曲点となるマトリックサクションである.
籾井ら(1992)は,これらの吸水モデルによる土壌水分分布の推定精度の比較を行い,根
密度が土層全体で一様な場合はどのモデルでも推定精度に差がないこと,および,根密度に
偏りがある場合には 1)のモデルが最も精度的に優れていることを明らかにした.しかし,1)
のモデルでは計算に必要でかつ測定の困難なパラメータが多いという弱点もある.したがっ
て,実際にはモデルを使う目的にあわせて,吸水モデルを選択するのが最も現実的といえる.
【演習 6.1】
群落高さ 1.0 m,葉面積指数(LAI)4.0 の圃場で微気象観測を行ったところ,ある時間の純
放射量が 600 W m-2 ,地中熱伝達量が 20.0 W m-2 飽和水蒸気圧の勾配が 1.93 hPa ℃ -1,風速が
2.2 m s-1 ,仮想葉面の飽和水蒸気圧が 32.44 hPa,水蒸気圧が 20.11 hPa であった.水の蒸発潜
熱を 2.439×106 J kg -1 ,乾湿計定数を 0.681 hPa K-1 として以下の問いに答えなさい.
(1)このときの群落の空気力学的抵抗 ra を求めなさい.
(2)このときの気孔抵抗 rs を 100.0 s m-2 として群落抵抗 rc を求めなさい.
(3)このときの潜熱伝達量を求めなさい.
(4)このときの潜熱伝達量を蒸発散フラックスの単位(cm s-1 )に換算しなさい.
【演習 6.2】
【演習 6.1】の蒸発散フラックスが生じている状況で,土壌水のポテンシャル φs が-100 cm だ
ったとます.
(1)この植物の葉のポテンシャル φ L を-5000cm として,このときの全抵抗を求めなさい.
(2)葉の水ポテンシャルと全抵抗が(1)の状態と同じだったとします.蒸発散フラック
スが 1/2 になるときの土壌の水ポテンシャルを求めなさい.
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