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日本の食文化形成を支え焼ける「柿(Di。spyms kaki)」

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日本の食文化形成を支え焼ける「柿(Di。spyms kaki)」
日本の食文化形成を支え続ける「柿(Diospyroskaki)」
名古屋女子大学家政学部食物栄養学科教授山揮和子
柿は、神の食べ物と称されるほど美味な果実。原産地は
店に美しく整然と並べられ、誰でもが
東アジア、品種は1000種に近いとか。主要生産国は、中国、
様々な品種の柿果実を食すことがで
韓国、日本。国内主要柿生産県は和歌山・奈良・福岡・岐
きるようになった。一般に柿果実は、
阜・愛知の各県であるが、ほぼ全国各地で栽培されている。
“柿食へば鐘がなるなり法隆寺’‥‘里古りて柿の木持たぬ家
甘柿はそのままデザートやなますとし
もなじ’等、柿は古くから庶民の生活に浸透し親しまれ、私達
る。この渋抜き法も先人の知恵と工
の食・健康を支えてきた大切な樹木である。近代化の波は
夫。その他、渋柿は干柿や柿巻とし
生活様式の簡便化・多様化をもたらし、庭先果樹であった
て古くから厳冬期の甘味保存食として珍重されてきたが、こ
柿は柿生産者により大量生産され各地のマーケットや果物
れらも現在では加工技術の進歩で大量生産されている。ま
て、渋柿は熟柿や渋抜きし生食す
た、柿の葉は柿の葉寿司・柿の葉餅・柿の葉茶として、食用
外であるが柿渋が染料・妨水剤・防腐剤そして葉や帝が民
間薬として利用されている。まさに柿は、実も葉も帝も無駄な
く利用できる植物として先人達の工夫を範に今なお研究の
的となっている。
柿の食品としての評価と柿文化の継承・創出
一般に、食品は機能面から栄養(一次)、晴好(二次)、生
理(三次)の3機能に分けられる。“柿が赤くなれば医者は
青くなる”の諺は‘‘柿が実る秋には気候も良くなり食料も豊か
になり病む人が減る”の意で柿そのものを指すのではないと
写真2庭先に植えられた柿の木岐阜県大野郡自川村萩町にて
する。岐阜県は富有柿や堂上蜂屋柿の発祥地で、これらに
関連する商品が岐阜ブランドとして全国に紹介されている。
この産業発展の陰で流通システム上不適格となる廃棄柿は
年間2,000t程に及ぶという。そこで、これらを原料に柿ワイ
ン・柿ジャム・柿ペースト柿飲料等の新製品の創出に力を
いれている。例えば、岐阜県産業技術センターではこれらの
不適格品を原料とした柿ワイン製造方法を開発した。が、こ
写真3 色々な柿果実
もされるが、日本食品標準成分表2010(食品成分表)によると
柿100gには炭水化物が甘柿で15.9g・干柿で71.3g、ビタミン
A(レチノール当量)が35ノ塔・12恥g、ビタミンCが70mg・2
mgと、果物に期待される栄養素が豊富に含まれている。果
実の‘‘柿色”は鮮やかな赤みを帯びた黄色をいい、デザート
や副食材料に用いて食欲増進を図る効果が期待できる(二
次機能)。そして、今話題の生理(三次)機能である。柿から
は数多くの生理活性物質が見つけられている。例えば、βク
リプトキサンチンには骨の健康保持作用・抗酸化作用・がん
抑制作用が確認され、柿100gに生で500媚、干柿で2100
媚(食品成分表値)と温州ミカンの1/3∼1.3倍含まれてい
る。また、目の網膜を光から守る機能を持つゼアキサンチン
(生柿100gに500媚程度)はオレンジ類の5倍程度と豊富で
の時二次廃棄物の柿ワイン残直が大量にでる。そこで、岐
阜県水産研究所や著者らの研究グループは、養殖アユに
品質向上目的でこの柿ワイン残造混合飼料を給餌した。結
果、養殖アユの体色が、柿ワイン残液中の柿成分のカロテン
類(β−クリプトキサンチンやゼアキサンチン)により天然鮎には
及ばないまでも従来の養殖アユと比べ著しく改善、その上
魚肉部分の風味や晴好性が向上し、魚の成長も良好となっ
た。ごみが養殖魚の品質改善に繋がった一例である。岐阜
の人々は、‘‘甘柿の王様”と称される富有柿を江戸期から、
食の世界遺産の別名を持つ“味の箱舟”に登録された堂上
蜂屋柿を平安期から慈しみつつ大切に伝え続けてきた。こ
のように柿は、各地に根付いた伝統が継承されながら、かつ
新たな柿パワーが発見され、人々の生活に潤いと健康に貢
献する食品として受け継がれていくと考える。
ある。“二日酔いに柿、飲む前に柿”は柿タンニンのアセトアル
デヒド分解能を期待したものであるが、このポリフェノールに
は血中コレステロール低下作用、脳卒中予防、血圧低下作
用、抗酸化作用等々が報告されている。“柿を食べて生活
習慣病予防!’’の期待が持てそうである。
写真5柿ワイン残漣混合飼料を供与した鮎
尾20 ぴ れ 15 10 5 0 供
△通常飼料 ●柿ワイン残5査入り飼料
●
●
● ヽ
● ●
食産業規模の拡充は、大量の流通不適格品や加工食
品製造残注の処理つまり産業廃棄物問題を招いた。柿産
地でもこの廃棄物の有効利用策構築が直近課題となって
いる。美しい地球環境を維持し、有限である自然の恵みを大
切にするためには必須課題である。この取組の一例を紹介
二′∴ ̄′●′二二 ̄三二● ●
追い星
与飼料別あゆ追い星および尾びれの黄色系色素の分布状態
写真6 柿ワイン残漣混合飼料供与鮎の体色変化
カフェ文化と伽排 名古屋女子大学松本貴志子
伽排の原産地は東アフリカ、エチオピアのカッフア州であ
場にはなくてはならない「癒しの空間(環境)」を作り、共に伽
り、カフェはこのカッフアのナマリとされる。伽排を最初に飲用
排を飲むことで人と人の杵を強くする。また、脳の活性化にも
したのは七世紀にアラビア人がエチオピアの伽排を液汁とし
役立つという利点を考えると、かけがえのない飲み物の一つ
て飲んだのが始まりで、豆を煎って用いるようになったのは九
としてさらに多くの人々に飲用されるきっかけになると期待さ
世紀末にペルシャ人が生豆を煎って砕いたものを煎じて胃
れる。
薬として飲んだとされている。伽排の歴史は、パリのフランス
革命を経て十七世紀末にカフェが登場し、コーヒー、ティー、
チョコレートなどの飲料だけでなく、菓子などが供され、人々
の憩いの場として親しまれてきた。近年では、劫排は晴好食
品として愛されるばかりでなく、多くの研究が進められ、ストレ
ス解消やアルツハイマーを予防する効果も期待されている。
伽排はアカネ科に属する熱帯性の常緑樹で、主に赤道を挟
む南北25度のコーヒーベルト地帯と呼ばれる地域で栽培さ
れる。伽排の実は熟すると紅色となり、その中に二個の種子
をもち。培煎はコーヒーの風味を左右する極めて大切な行
程で、原料豆の成分がアミノカルポニル反応を受けコーヒー
特有の香気物質や色素を生成する。1杯の伽排が、憩いの
ベトナム国の果実
グノーンウエルファームのコナコーヒー豆(ハワイ)
テイコク・インターナショナル・ベトナム(TIV)一川毅彦
私は、株式会社テイコクがベトナム国ダナン市に設立した
“テイコク・インターナショナル・ベトナム(TIVと略します)”の
社長として、1年あまり赴任しました。その間、私の健康を支
えてくれたのは、朝食に摂った“果物”のお陰と感謝していま
す。
地元の方に果物の効用を尋ねると、(Dリンゴ:体調を良く
する、②ミカン:甘みで疲労回復、(彰スイカ:水分補給、④マ
ンゴー:身体を温める、(参ドラゴンフルーツ:身体の熟をとる、
(む若いマンゴー:美肌になる、と言います。相反する効用の
組み合わせがありますが、果物を食べることが好きなので
「食べ合わせ」は気にしないようです。
街中の路上では実で販売しています。私には中身の想像
がつかないことが多く、外観からは全く見当がつかない食感
と味覚を与えてくれます。皆さんは写真と名前が一致します
か?
日本には四季があり、季節毎の「旬」があります。この国で
は四季が無い代わりに雨季と乾季がありますが、最近の雨
季は、乾季と思える天候が多くなっています。雨季は9月末か
ら始まると言われていますが、雨天は続かず晴天が多い状
況が続いています。果物の種類も一年を通じて大きな変化
はありません。添付した写真の果物が、一年を通して朝食に
並んでいます。
地元の方によると、季節により旬の果物が違うので、季節
外れの物は近隣から運ばれて来るそうです。私は毎朝同じ
ような果物を食べていましたが、1年あまりの赴任期間中に
違いが判るようにはなりませんでした。
トチバニンジンとツルニンジン 一般財団法人自然学総合研究所清水政美
現在、韓国では野生のチョウセンニンジンを求めて山に入
また、同じような効果を持つと
る人たちが増加しているようである。チョウセンニンジンは昔
いわれる種にツルニンジンがあ
から、滋養強壮剤、精力剤として高い評価を受け、人気の野
る。上記の2種はウコギ科の植
草で、今もその人気は変わらず、驚くほどの高値で売買され
物であるが、こちらはキキョウ科
ている。例えば、150年物だと1,000万円、10年ものでも数万
の植物で、日本、韓国、中国など
円で取引されているようです。一攫千金を夢見て、365日、朝
に自生している。このため、漢方
から晩まで山中を彷径う人も少なくないようである。
薬として中国や韓国でも使われ
よく似た種が日本にも自生している。トチバニンジン(別名
ている。効能は滋養強壮、健胃、
を竹節人参)。外見はチョウセンニンジンと全く同じですある
整腸、去疾、解毒、疲労回復、
が、その効用はチョウセンニンジンには到底及ばない。しか
し、鎮静、解熱、去疾、ストレス性潰瘍抑制、消化性潰瘍抑
制痛作用などである。チョウセン
ニンジンは即効性があるようで
制、血糖低下などの薬理作用があることから、去疾、解熱、
すが、こちらは緩効性で保健薬
健胃薬などとして利用されている。中国でも漢方薬として用
として利用されている。
ツルニンジン
いられている。一部の
これら3種は、根を利用する。ホワイトリカーに半年以上漬
薬局では、チョウセン
け込んだ薬酒とし、また根をスライスして乾燥させ、煎じ薬と
ニンジンと同じように
して利用する。韓国では宮廷料理にこのツルニンジンが使わ
強壮効果があるとし
れていたようで、韓国TVドラマ「チャングムの誓い」では、ス
て、精力剤として販売
ライスした物を油で揚げ、砂糖をくるんで菓子のように食して
しているが、はたして
いた。また、先日のNHK・TVでは生の物をスライスし、味噌
その効果は……。
をつけてそのまま食していた。このように見ると、お隣の韓国
や中国と日本の食文化は本当によく似ている。
トチバニンジン
一言コラム ∼アフリカコマツナギ∼
アフリカコマツナギ(血成g(痢rα岬gCd坤まアフリカ大陸
原産といわれています。古くは染色材料として利用され
ていましたが、現在では人工の染料に置き換えられまし
た。また本種は被覆作物、緑肥植物、侵食防止および
土壌改良等に利用され、病虫害の影響をほとんど受け
ないので熱帯乾燥地における農業に有用な植物とされ
ています。この植物の有用性から世界の熱帯各地に導
入されたため、元来分布地がアフリカに限られた植物
でしたが、全世界に帰化しその分布域を広げていま
す。日本にはコマツナギ(丁.即e〟doJ摘cJorね)が分布して
いますが、薬用としての利用はされていません。
アフリカコマツナギ
は長さ7−8cmを目安とし、新鮮なものをよく岨曝していた
だきます。ウガンダの西部地域では媚薬の効果もあると
して伝統的に今でも使われています。その他、アフリカ
効能と用い万
大陸での伝統的利用法を見てみると、下痢、腹痛およ
乗アフリカのウガンダでは、強壮薬の代表として栽培
び咳等に効能があるとして本種が使われています。また
されています。根の直径が5−8mmくらいに成長したもの
西アフリカでは性機能不全に、東アフリカでは虚弱体質
を掘りとり、水洗いして土を取り除きます。一日の摂取量
や慢性病に効果があるとして用いられています。
(編集子)
発行:一般財団法人自然学総合研究所 〒502−0933岐阜県岐阜市日光町7−27 TEL:058−297−3368 FAX:058−297−3378
HomePageURL http://www.sizenken.jp/Mail sizenken@sizenken.jp
編集:D&U委員会
協賛:株式会社テイコク ランドアート&デザイン研究所㈱東海応用生物研究所
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