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都市観光の魅力とその要因

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都市観光の魅力とその要因
(649)−225一
都市観光の魅力とその要因
一 観光魅力要因の主成分分析一
吉 村
弘
Abstract:
This paper aims to indicate general factors of attractiveness in urban tourism, making
use of the principal component analysis, based on recent data which clarify the images
Japanese people tend to have of Japanese cities. This paper also investigates into some
of the cities in Yamaguchi prefectUre to illustrate the applicability of such factors. The
main results are as fbllows.
1)We can find out three factors as the a柱ractiveness in urban tourism in Japan.
2)The first one is”the urbanity with identity”which includes two concepts:the
concept of,,urban and artificia1,1 as oPPosed to 脚rural and natural,四 and the concept of
”
unique, original and characteristic.1,
3)The second factor is”a sense of the times”which includes the concepts of
”
historical, traditional and healing”in contrast to”modem, advanced and active.”
4)The third one is”substance”which includes the idea of”economical benefits,
materials−oriented and reality−based,,l not the idea of”cultural, spirit−oriented and
abstract.,,
Key words:urban tourism, factors of attractiveness, principal component analysis
1.はじめに
本稿の目的は,最近の都市観光魅力度データに主成分分析を適用し,それ
によって都市観光の魅力の一般的要因を明らかにすることである。併せて,
その要因を都市観光地の特性分析に応用する1例として山口県内の都市観光
地について若干の考察を行う。
はじめに,平成16年度「観光白書」より,我が国の観光産業を一瞥しよ
う1)。平成15年の国民1人当たりの宿泊観光旅行回数は平均1.28回であり,宿
1)国土交通省[5]。
一 226−(650)
山口経済学雑誌 第53巻 第5号
泊数は2.01回である。これはバブル崩壊後低落傾向にあり,ピークであった
平成3年にはそれぞれ1.73回,3.06回であった。また,国内宿泊観光旅行(観
光十兼観光)の1人当たり年間消費額は47,700円であり,これも近年減少傾
向にある。
しかしながら,それでも,平成14年旅行産業の日本経済への貢献度は,旅
行総消費額21.3兆円(うち直i接効果20.7兆円)であり,これは同年における
大型小売店(百貨店・スーパー)の販売額合計にほぼ匹敵する。その付加価
値への直接効果は10.5兆円でGDPの2.1%であり,農林漁業1.4%,一般機
械1.9%より大きく,輸送用機械2.3%や食料品2.5%に迫る。また,観光産業
の直接雇用効果は187万人で全産業の2.8%であり,農林漁業の6.2%には及ば
ないものの,輸送用機械1.6%,一般機械2。1%,食料品2.4%より大きい。さ
らに,その波及効果は生産で49.4兆円(全産業に占める割合5.4%),付加価
値で26.1兆円(同5.2%),雇用効果で398万人(同6.0%)に達する。
他方,平成15年日本人海外旅行者数は1,330万人,訪日外国人旅行者数は5
21万人であり,国際旅行収支(収入マイナス支出)(平成13年)のマイナス
は232億ドルに達し,ドイツに次いで第2位である。
このような現状に対して,観光産業の将来は更なる発展が予想される。内
閣府「国民生活に関する世論調査」(平成15年6月)によれば,「今後の生活
の力点」はレジャー・余暇生活が35.5%であり,食生活25.5%,住生活20.9
%,耐久消費財7.6を抑えて,トップである。余暇活動の潜在需要でも,海
外旅行36.6%,国内観光旅行(避暑・避寒・温泉など)17.9%,オートキャ
ンプ10.3%であり,以下,音楽会・コンサート,陶芸,料理(日常的なもの
を除く),水泳(プールでの),スポーツ観戦(テレビは除く),観劇(テレ
ビは除く),ピクニック・ハイキング・野外散歩と続く。また,WTO(世
界観光機関)による地域別外国人旅行者受入数の将来推計によれば,その平
成12∼22年の年平均増加率は,日本を含む東アジア・太平洋が7.7%でトッ
プであり,以下,中東7.0%,南アジア6.7%,と続く。
以上のように,我が国の観光産業はバブル崩壊以後やや停滞気味とはいえ,
都市観光の魅力とその要因
(651)−227一
なお国民経済に占める役割は大きく,その将来展望も可能性を秘めているこ
とが分かる。
以下では,本論である観光の主成分分析に入る前に,まず現代における観
光及び都市観光の意義についての筆者の立場をサービス経済化との関連にお
いて概説する。
2.観光と都市観光
そもそも「観光」は五経の1つである易教の「観国之光,利用賓干王」(国
の光を観るは,もって王に賓たるによろし)に由来するとのこと,これより
「その国の威光をよく観察する」こと,転じて「よその土地の風景・風俗・
文化などを見物する」(鎌田正・米山寅太郎著『大漢語林』大修館書店)と
いう意になったとのことである。現在では,「観光tuorism」とは,玉村教授
によれば,「自由時間における日常生活圏外への移動をともなった生活の変
化に対する欲求から生じる一連の行動」としてとらえられている。2)そこで
は,「自由時間」「日常生活圏外への移動」「生活の変化に対する欲求」「一連
の行動」に対する説明が敷衛されている。また,『観光読本』では,「国民の
自由時間(余暇)活動の中で,特に日常生活圏を離れた移動を伴う活動を総
称」して「観光(活動)」ないし「観光レクリエーション(活動)」とされて
いる。ほぼ妥当な概念規定であるといえよう。
本稿ではこのような観光一般ではなく,「都市観光urban tourism」を扱う。
都市観光とは,北條教授によれば,「(魅力ある)近代的・現代的都市機能な
どを享受するために行う日常生活圏を離れた余暇活動である。… 一般に,
観光対象には自然的なものではなく人工的なものが多く,主に人工的観光対
象を指向する。」3)また,『観光読本』によれば,都市観光は「さまざまな人々
が生活している都市のもつ複合的な機能そのものが,都市観光の魅力」であ
2)玉村和彦「観光」,長谷政弘[10]。その他に参考文献[1][2][3][4][6][11][12]
[13][14][15][16][19][20][21]も参考となる。
3)北條勇作「都市観光」[10]。その他に参考文献[3][14][20]も参考となる。
一 228−(652)
山口経済学雑誌 第53巻 第5号
り,「都市観光は,さまざまな人間が集まることによってのみつくり出され
る”魅力”が決定的なのである。」4)このように,都市観光は,「近代的・現
代的」な都市機能,「人工的」観光対象,人間が集まることのみによる魅力
すなわち「にぎわい」の魅力,などを特徴としてもつものと考えられている。
しかしながら,以下でみる都市観光は,これとは若干異なる。すなわち,
京都,奈良,萩,小布施など,必ずしも「近代的・現代的」な都市機能に惹
かれて訪れるとは思われない都市も含まれており,また,そこには「人間が
集まること“のみ”によってつくり出される魅力」すなわち専ら「にぎわい」
だけを求めて訪れるとは考えられない。「近代的・現代的」な魅力や「にぎ
わい」を求めてというようりも,むしろ,歴史的文化的伝統的なものを求め
て,あるいは場合によっては「静けさ」を求めて訪れると考える方が妥当な
場合もある。
したがって,上記の都市観光の概念規定において,観光対象の「人工的」
という性質は残しながら,「近代的・現代的」という限定,および,「人間が
集まること“のみ”によってつくり出される」という限定は取り除かれるべ
きであると考える。その意味で,「都市観光とは,観光のうち,ある程度の
都市集積をもつ地域の観光であって,観光対象・観光資源が主に自然的資源
である場合を除く観光」ととらえるのが妥当である。自然観賞や温泉そのも
のを楽しむ観光は,それに人工的要素は伴うものの,その魅力の源泉を自然
そのものに直接求め得るので,これは都市観光から除き,たとえ時代的に古
いものであっても,自然というよりは人工的・人為的なもの(建造物に限ら
ず文化・伝統を含む)に魅力の主要な源泉がある場合には,都市観光と考え
るのが妥当である。そうはいっても,境界を明確に定めることは容易ではな
い。たとえば,芭蕉の句で有名な山形県の山寺・立石寺は歴史と文化をはぐ
くむ人工的・人為的なものであるが,ここは都市観光地というに相応しいか
どうか疑問である。むしろ,都市集積に起因する魅力よりも,自然と分かち
がたく一体となった寺の停まいにこそ魅力があると考えて,ここでいう都市
4)日本交通公社調査部[9]。
都市観光の魅力とその要因
(653)−229一
観光から除くのが妥当であろう。そうすれば,都市観光の要素の中に,幾分
かの都市集積性が求められるのも自然であろう。
都市観光をこのようにとらえることの意義は大きい。すなわち,次節で述
べるように,今後サービス経済化の第2段階を迎えて,本稿で扱うような都
市観光は益々発展してくると予想されるが,それは,単に「近代的・現代的」
な都市機能の魅力や,専ら「にぎわい」を求めるというだけでなく,もっと
広く,精神的な豊かさ,多様性を実感する喜び,歴史や伝統文化を通じての
安らぎなど,「より豊かな社会」の高度で多様なニーズに応える観光という
側面をもっている。都市観光は,このようにとらえてこそ,今後の社会にお
ける意義をよりよく理解できると思われる。
3.サービス経済化と観光産業
観光は現在脚光を浴びている。しかし,それは来るべき将来の主導産業の
1つとして把握されるべきである。かつて,「地方の時代」が言われはじめた
昭和40年代後半以後,観光は地域振興の1つとして注目を浴びてきた。しか
し,その中には,種々の産業振興の可能性を検討したが,いずれも可能性が
低いので,仕方なく観光を選択したという要素がないわけではない。いわば
観光でもするか,観光しかないなという程度の消極的な「でも・しか」観光
産業である。しかし,今後の観光はそうではないであろうし,そうであって
はならない。観光にとって時代の追い風が吹く条件が整いつつあり,今や観
光には新しい光が当てられるべきである。
観光サービス業は,福祉系サービス業と同様に,現在進行中のサービス経
済化の第1段階の次に来ると予想される第2段階のサービス経済化を牽引する
主要な産業の1つである5>。サービス経済化は,経済に占めるサービスの地
位及び機能がモノに比べて大きくなり,サービス産業が経済発展の主導産業
となることを意味する。アメリカでは1955−60年頃に,また我が国では,そ
5)拙稿[17]参照。
一 230−(654)
山口経済学雑誌 第53巻 第5号
れより15−20年程度遅れて1975年頃にサービス経済化時代に突入したとみて
いいであろう6)。
サービス経済化の第1段階は,「物化」の容易なサービス業が発展し,経済
全体の生産性を直接に向上させる時代である。ここに物化とは,サービスを
モノに体化させることによってサービスの特性を失わさせモノの特性をもた
せることを意味する。たとえば,音楽・映像・講演などのサービスをCDに
記録することによって,生産・消費の同時性や在庫・運搬の不可能性という
サービスの特性を失わさせ,モノとしての取引を可能とすることを意味する。
この第1段階は,いわゆる対事業所サービス業あるいは産業支援サービス業
が主導する。
これに対して,サービス経済化の第2段階は,第1段階の成果(生産性向上)
によって「より豊かな社会」が実現した後に,人々の欲求が自ずと向かう高
度なニーズを提供する産業,すなわち,対個人サービス業が産業をリードす
る時代である。この第2段階の対個人サービスは,第1段階の対事業所サービ
スと比べて,物化のより困難なサービスであり,直接的に経済全体の生産性
を高める程度は弱い。したがって,第2段階は第1段階を成功裏に終えた後に
受け入れられるべきであり,しかも,第1段階と同様に,第2段階も経済全体
の絶えざる生産性向上を前提にしない限り持続し得ない点に注意すべきであ
る。
観光産業は,観光サービス業だけでなく,それに直接関連するモノ産業を
も包含する産業概念であるが,それは,何よりもサービス経済化の第2段階
をリードする産業の1つであるという視点を見失ってはならない。
4.資料と調査の概要
本稿の分析資料は次の通りである。
「都市観光地の魅力度評価調査」『日経グローカル』No.1(2004.4.5)日経産
6)拙稿[17]参照。
都市観光の魅力とその要因
(655)−231一
業消費研究所
調査の概要は次の通りである。(詳しくは上記資料を参照されたい。)
1.調査期間:2003年2∼3月
2.調査方法:調査票を郵送し,ファックス・メールで回収
3。回答依頼先:①観光や都市計画の研究者,コンサルタント,都市観光
に詳しい旅行作家などの学識経験者,②都道府県庁所在都市の観光行政
部門,都道府県の観光連盟やコンベンション振興団体などの担当者,③
旅行会社の観光に詳しい人
4.有効回答数:167(学識経験者54,観光行政・進行団体担当者85,旅
行会社社員28)有効回答率:57.8%
5.注意
(1)観光行政・振興団体担当者は所管地域の都市中心部の回答は集計対
象から除く。
(2)都市観光地として都道府県庁所在都市の他に都市観光で注目される
都市を加えた130都市を選び,最近5年以内に来訪した地区について,
1∼10の10段階で都市中心部の総合魅力度を評価し,評価点数の回答
者平均を求める。ただし,回答者数10人未満の地区(1地区:福島県
二本松)は除く。この1地区を除く129都市は図6,図7・図8に示す都
市である。
(3)総合魅力度の他に,「魅力を感じる要素・特色」について,各都市
の評価を◎○で記入し,◎==1点,○=0.5点,空欄=0点として点数
化する。
(4)評価点数はいずれも偏差値に換算して示す。
(5)本稿で使用するのは,上記資料のうち「表5魅力を感じる要素・
特色」である。
一 232−(656)
山口経済学雑誌 第53巻 第5号
5.観光魅力要素とその相関行列
以上の資料に基づいて,観光魅力要素の相関行列を求め,それによって主
成分分析を行う。
まず都市観光の観光魅力要素は表1に示す11要素である。その相関は表1の
ようにかなり低いものが多い。最高は「買い物・にぎわい性」と「モダン・
先進性」の間の0.683である。全55のうち絶対値が5割を超えるものは8であ
る。逆に絶対値が3割未満のものは33もある。したがって,観光魅力要素間
の(単)相関は…般には高くない。しかし,高いものも含まれている点に注
意が必要である。
表1観光魅力要素の相関行列
歴史・
モダン・
文化性
先進性
(*)
(*)
買い物・
にぎわ
い性
食べ物
公園・
散歩道
宿泊
施設
(*)
美術館
や
博物館
音楽
ホール
や
劇場
祭り
夜間
や
イベント
の
景観
自然
の
豊かさ
tOOO
歴史・文化性(*)
モダン・先進性(*)
一
〇135
1,000
買い物・にぎわい性(*)
一 〇〇45
α683
1,000
食ぺ物
0,224
0,114
0,377
1000
公園・散歩道
0,590
0,155
0,099
0,110
tOOO
宿泊施設
美術館や博物館
音楽ホールや劇場
α111
0−348
0418
α289
α239
1000
O,420
0,124
0,080
0,035
0,558
0,126
1000
α601
α634
α010
0,064
0,274
0,238
1,000
一 〇.173
一
祭りやイベント
0,326
0,104
0,223
α309
0,314
0,299
0,133
0,060
1,000
夜間の景観
0,117
α640
α587
0,357
0,276
0,516
0095
0,363
0,238
自然の豊かさ
0301
α363
0,231
0,293
0120
0,098
一 〇.338
0,175
一
〇352
一
1,000
一
〇130
1000
6.固有値と採用する主成分の個数
主成分分析の結果,固有値は表2のように求められ,そのスクリープロッ
トは図1のとおりである。その結果,主成分として第1から第3までの3つを採
用する。その理由は,固有値の上位3つまでとる場合には,次の3つの基準を
全て満たすが,4つまでとるとその全てを同時に満たすことは出来ないから
である。
①「累積寄与率が60%以上ある。」
都市観光の魅力とその要因 (657)−233一
寄与率は第1主成分が31.68%で 表2 固有値表
あり,以下漸減するが,その累
主成分
番号
積寄与率は,第3主成分までとる
1
3,485
31.68%
2
2,474
22.49%
54」8%
と66.48%となって,60%を超え
3
4
5
1,353
12.30%
66.48%
0,761
6.92%
73.39%
0,703
6.40%
79.79%
6
0,638
5.80%
85.59%
7
0,484
4.40%
90.00%
8
0,378
3.44%
93.43%
96.13%
る。
②「固有値が1以上である。」
これは,本分析が相関行列に
基づいているので,主成分の寄
固有値
寄与率
累積
寄与率
3t68%
9
0,297
2.70%
10
0,247
2.24%
98.38%
11
0,179
1.62%
100.00%
与率がもとの変量1個分以上あ 図1固有値スクリープロット
4.o
ること,あるいは,もとの変 3.5
3.0
量がもつ分散よりも大きな分
固2・5
散をもつ主成分のみを採用す 有2・o
値1.5
ることを意味する。 1.o
これによれば,固有値が1以 α5
o.o
上の主成分は第3主成分までで 1234567891011
主成分番号
あり,第4以下はこれを満たさ
ない。
③「スクリープロットにおいて,曲線が折れ曲がる直前までの固有値であ
る。」
図1によれば,固有値は主成分1から4まで急減し,4以後は緩やかに減
少する。すなわち,主成分4で折れ曲がっているので,その直前の主成
分3までを採用する。
7.主成分負荷量と主成分の意味づけ
前節で求めた3つの主成分の主成分負荷量を図2−1・2・3に示す。また,第
1主成分と第2主成分について,都市観光地の主成分得点を示したのが図3で
ある。同様に,図4は第3主成分と第2主成分,図5は第1主成分と第3主成分に
一 234−(658)
山口経済学雑誌 第53巻 第5号
ついて示す。
これらの図より,それぞれの主成分について,次のように意味づけを行う。
主成分の意味づけ
第1主成分
第2主成分
第3主成分
個性的にぎわい性
個性的都市性
時代性
実質性
都市的一一一田舎的
歴史性一一一先進性
にぎわい一一一自 然
伝統一一一モダン
物質的(団子)一一一精神的(花)
個性的一一一没個性的
癒し系一一一活動系
具体性一一一抽象性
実利性一一一文化性
7.1第1主成分の意味づけ
第1主成分は,図2−1に示すように,「買い物・にぎわい性」「夜間の景観」
が上位に位置し,「自然の豊かさ」「歴史・文化性」などが下位に位置する。
したがって,紛れもなく都市的性格が強く,自然的・田舎的性格が弱い。し
かも,最小の負荷量をもつ「自然の豊かさ」以外は全てプラスであるので,
都市観光の魅力要素を総合的に表す指標とみることができよう。その意味で
は,単に「都市性」あるいは「都市的にぎわい性」と特徴づけるのがいいよ
図2−1主成分負荷量Nα1(個性的にぎわい性)
図2−2主成分負荷量卜b.2(時代性)
買い物・にぎわい性(*)
歴史・文化性(*)
夜間の景観
自然の豊かさ
モダン・先進性(*)
公園・散歩道
音楽ホールや劇場
藁術館や博物館
宿泊施設
祭りやイペント
食べ物
食べ物
公園・散歩道
宿泊施設
祭りやイベント
夜間の景
美術館や博物館
歴史・文化性(*)
自然の
一 〇.4 −02 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
一
〇.6 −0.4 −0.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
都市観光の魅力とその要因
図2−3主成分負荷量No.3(実質性)
(659)−235一
うにみえる。
食べ物
しかしながら,図3及び図6によれ
自然の豊かさ
ば,第1主成分(横軸)の大きな都
宿泊施設
市は,札幌,横浜みなとみらい,神
祭りやイベント
夜間の景観
買い物・にぎわい性(*)
戸,福岡であり,これら上位4都市
はいずれも東京ではない。銀座,六
モダン・先進性(*)
本木と六本木ヒルズ,新宿,渋谷,
歴史・文化性*)
大阪・キタ,新橋,池袋などは,
「都市性」も「にぎわい性」も大き
いにもかかわらず,上位4都市の次
に位置している。上位4都市は,「都
一
〇.8 −0.6 −04 −0.2 0 02 0.4 0.6 0.8
市性」「にぎわい性」に加えて,何
かしら,それらしい強い個性が感じられ,即座にイメージを描くことが出来
る都市である。
他方,第1主成分値の小さいのは,岡崎,福井,上越,福島,和歌山など
であるが,この下位5都市は,確かに最上位に位置する都市よりは小規模で
「都市性」も「にぎわい性」も小さい。しかし,単に「都市性」「にぎわい性」
だけなら,小布施,内子,萩などのように,もっと劣る都市があるにもかか
わらず,それらの都市の第1主成分得点は,これら下位5都市よりも遙かに大
きい。萩など「都市性」「にぎわい性」では劣るにもかかわらず,第1主成分
値の大きい都市は,その都市のイメージをかき立てる強力な個性をもってい
ることが分かる。それに対して,第1主成分の下位5都市は,その都市のイメー
ジが明確でない,その意味で個性的とは言い難い都市である。
以上の点を勘案すると,第1主成分は,単に「都市性」「にぎわい性」とい
うだけでなく,そこに「個性」の感じられる要素を含んでいる。そこで,
「個性的都市性」ないし「個性的にぎわい性」として意味づける。第1主成分
値が大きな都市と小さな都市とを比べると,都市的一田舎的,にぎわい一自
然,個性的一没個性的として特徴づけることができる。
一 236−(660)
山口経済学雑誌 第53巻 第5号
図3 第1主成分得点と第2主成分得点
5
1
奈塁 ◇高山一◇ 鎌倉
↑
4
歴
史
性
松江一象怖。金沢 響 ◇ ◇ 長崎一 ◇ 偽 ◇ ◇ ◇
3
【萩
%。暢・
第
2
◇$◇
主
墓3宇和島
成
分
繕関/◇◇神戸 ⊥_ ____一一____L__ 凪
上越凝
時
代_ 1 甥和歌、。◇
性
脊◇∵1} 福島 % 埼玉碁
)
}
◇
参 ◇
◇◇ ◇ ◇ 横浜◇ 《ρ ◇ みなとみらい
先
進
性
宮翻慮貌鷲 東京・新宿
↓
4
←弱い
強い→
第1主成分(個性的にぎわい性)
図4 第3主成分得点と第2主成分得点
瀞鉾、
↑
歴
小布施
史
◇
性
◇倉敷
2
蝶
札幌
沢
◇長崎
◇
ss 帯広夢館
◇那覇o◇魂II路
◇◇絡島
・曜漁 下関
%◇
主
↓成
分
A
時一
◇
松江
語京・上野
第
高山
鉱」鍾・8 8♂%◇銚子
◇
一
6
代
性
一
4
山
◇
・。◇為
8Q
◇2
◎◇
八戸
゜
9。大阪・鶴橋
顔。大阪・・ナ
東京・秋葉
罫新橋◇大阪・キタ
先
進
性
◇東京・新宿
東京・
←抽象的文化性
第3主成分(実質性)
座
具体的実利性→
都市観光の魅力とその要因
(661)−237一
図5 第1主成分得点と第3主成分得点
↑
具
体
諭罵ll
的
実
利
性
第
呈
東京・銀座
東京・六本
横浜
雰
みなとみらい
曇
袈甚
翠)
㌣
←弱い 第1主成分(個性的にぎわい性) 強い→
7.2 第2主成分の意味づけ
第2主成分は,図2−2にみるように,「歴史・文化性」「自然の豊かさ」「公
園・散歩道」などが上記に位置し,逆に「音楽ホールや劇場」「モダン・先
進性」「買い物・にぎわい性」などが下位に位置する。これからみると,第1
主成分とは反対に,田舎的一都市的,自然一にぎわいという傾向を認めるこ
とができる。しかし,その他に,歴史性一先進性,癒し系一活動系,伝統一
モダンという傾向も認められる。文化性が上位に位置しているが,しかし,
最下位にある「音楽ホールや劇場」も文化性という性質をもつので,第2主
成分については「文化性」を取り上げるのは適当でない。
次に,図3,図4,図7に目を転じる。第2主成分値の上位5都市は,奈良,
高山,鎌倉,松江,小布施であり,正に「歴史・文化性」を特徴とする。こ
れに対して下位5都市は,新宿,六本木・六本木ヒルズ,銀座,池袋,新橋・
汐留であり,これは,大都市の「にぎわい性」とともに,「モダン・先進性」
を象徴している。「文化性」は上記のように,第2主成分としては相応しくな
一 238−(662)
山口経済学雑誌 第53巻 第5号
:懸田
一 ii…i.
:趣霞
照iiii野翻ii 3i田iiii− i:…一 :i撒1目iii…:ii田……
峠・(劇籔藤)
:翼峠
:潤駅
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侵(略嵐瞭)
:郭侵
腱(劇鷹藤)
コK腱
:驕票
:掌撒
コ属臨
コく医
医’HくH龍
:牌ベ
べ蕉’ぐ頓
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K鰍榊卑
コ杓二
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喫べ葦’に賦捉
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都市観光の魅力とその要因
(663)−239一
いので,「歴史性」と「モダン・先進性」に着目して,時代の古さと新しさ
の対照として把握する。そうすれば,第2主成分は,その値が高ければ古き
伝統・歴史の魅力を表し,低ければ新しさ,「モダン・先進性」の魅力を表
すものと意味づけ,総体として「時代性」を表すものとして特徴づけること
ができる。
7.3 第3主成分の意味づけ
図2−3のように,第3主成分値の上位は「食べ物」「自然の豊かさ」「宿泊施
設」「祭りやイベント」であり,下位は「美術館や博物館」「公園・散歩道」
「音楽ホールや劇場」である。これからみると,実利性一文化性,物質的一
精神的という構i図を描くことができる。いわば,「花より団子」の団子一花
の関係であり,具体性一抽象性ととらえることもできる。
これについて,図4,図5,図8をみると,第3主成分値が高い5都市は,札
幌,釧路,函館,帯広,輪島であり,低い5都市は,上野,倉敷,奈良,水
戸,小布施である。これは,前者が食べ物に象徴される実利性・具体性を示
し,後者が美術館に象徴される文化性・抽象性をしめすものとして把握する
のが適当であろう。
8.都市観光の総合魅力度
上記第4節「資料と調査の概要」の注意(2)の方法による都市観光の総合
魅力度は図9のとおりである。この総合魅力度はアンケートによって直接回
答者に尋ねたものであり,その評価点数の回答者平均(偏差値表示)である。
これも1つの総合魅力度の尺度である。そこで,これを「直接回答総合魅力
度」ということにする。これによれば,総合魅力度の上位5都市は,京都・
四条と祇園周辺,札幌,神戸,鎌倉,横浜・中華街と元町周辺である。他方,
下位5都市は,津,岡崎,桑名,東京・八王子,千葉である。
これに対して,上記の主成分分析による第1主成分得点も1つの都市観光の
一 240−(664)
山口経済学雑誌 第53巻 第5号
:
… i i
区トト(劇鰻蝶)
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製三
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(665)−241一
都市観光の魅力とその要因
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… … …
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齢障ト(ゆ三藤)
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肺輪杓
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く凪(
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鐵庫(
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鐸直(に三藤)
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一 242−(666)
山口経済学雑誌 第53巻 第5号
鮫
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曜慰(劇最瞭)
瞭岬(II欄賦)
{ヨ輔
4く麟望ヤH⊃卜・
1【時臆’峯眠
橿候’くH呼
岬栂画
桜1喚’樋盤楡
杓二喫桶’耀に
十牒
狸爾
什瀬佃
酵詣ヨ
寝鄭
鯉紮
弊聴’輝畷駈曜日
似{瑛’→廓
興田(ヨ凄欧)
領霞
齢時(脚…ミ瞭)
く1【L(質嶺瞭)
憾岨
理嘱
桜慣’倒≡
獺廓(碧叶蝶)
米トト(虞爵瞭》
概展’試e擢
禦叫
杓二喫桶層→く加
偲駅雌
段竃(駆匿藤)
謡偏
Kトト(劇襲顧)
6
卑ヨ
齪掘(煙瑚蝶)
肝燦
悩慣’矯十く《嘩
→ nv(矯曜眠)
椙
6
哩爵
嘩ヨ
頼 IK
{瑛縁’JRI【時糧匿暎目
概{【時゜纒紳
(
橿桜日賄聾刃桑即
三製(翁困峠)
卑皆(略蝋蝶)
娼艇柵卑
〈U
ド認
曙曝(纐嘱吸)
辱州(鵬囲蟹)
(
ヨ鍛
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Hく蹴
報断(施櫟唾)
略匿(#霞蟹)
宿撒
〈ロ
Kロ
綴綻
6田踵(席櫃ミ薩)
裸1瑛’躯ヨ
掻{1時‘踵㌍
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)
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男終
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四
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K團’KHh
興三
慨1咲’翠即ヨ
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一
1
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①
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禦膚(障ミ蟹)
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①
図
震燦
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鞘齪
囲蟄
繹腿’心kt A」椅・D二
ξ攣
嘱堰
→く團’銅弊
樋騨(麺嘱峡)
狸眩
桜慨’皿幡弊
肺輪枳(狸噛蝶)
概1【時’畷型
層蜜
国田(1く訳酸)
継画
瞼瞬
鈴罎商(劇鰻膿)
米嘱(ヨ凄眠)
慨ヨ(督叫藤)
頓嘱
郵腿’・}僻縮司IR量暉
鋸匿(ヨ漿9)
纏K
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繕軸 嗜
# IL
RR旨82$專專
#撃
帽康
理踏(日一裸膿)
1咲鍛’団眼へ」瓢圖曜「曳
略蹴
8i孚?霧8RR
都市観光の魅力とその要因
(667)−243一
総合魅力度である。これを「主成分分析総合魅力度」ということにする。こ
れによれば,図10に示すように,上位5都市は,札幌,横浜・みなとみらい,
神戸,福岡,東京・銀座であり,下位5都市は,岡崎,福井,上越,福島,
和歌山である。なお,第2および第3主成分についても,図10−2・3に示して
おいたが,これらと「直接回答総合魅力度」との関係は,予想されるように
薄くなる。
2種類の総合魅力度は,作成の仕方が異なるので,必ずしも同じ結果をも
たらさない。実際,上位5都市で共通な都市は札幌と神戸の2つであり,下位
5都市では岡崎だけである。「直接回答総合魅力度」は文字通り直接に各都市
観光地の総合魅力度を尋ねた結果であり,「主成分分析総合魅力度」は「観
光魅力要素」別の各都市観光地評価を要素別にウェート付けして総合化した
ものである。両者の関係を図示したのが図10である。両者の相関は75.6%で
あり,相関はかなり高く,「主成分分析総合魅力度」は「直接回答総合魅力
度」を56%程度説明することが分かる。
そこで,「直接回答総合魅力度」と観光魅力要素との問の単相関と偏相関
をみたのが表3および図11である。これによれば,観光魅力要素の中には
「夜間の景観」「美術館や博物館」「音楽ホールや劇場」「祭りやイベント「公
園・散歩道」のように,「直接回答総合魅力度」との関係が,単相関と偏相
関で大きく異なる要素が存在する。とくにはじめの3つの要素は符号まで逆
転している。偏相関は,他の要素の影響を除いた場合の関係であるが,単相
関はそうではないので,表1のように要素間の関係が深い要素がある場合に
は,扱いに注意が必要である。
9.山ロ県内観光地の特色と評価
以上のような主成分分析によれば,各観光地の特色とその評価を行うこと
ができる。たとえば,山口県内の3観光地(萩,下関,山口)については次
のようである。
一 244−(668)
山口経済学雑誌第53巻第5号
図10−1 第1主成分得点(個性的にぎわい性)と
都市観光地魅力度総合偏差値
80
3都市はいずれも「個性的に
ぎわい性」「個性的都市性」で
70
は平均以下であり,中でも山口
舅・・
の評価が低い。下関は平均以下
幕
慧
ではあるが健闘している。確か
カ o
轟
に「にぎわい性」では全国区に
葺・・
蓋
PRするのは難しいかもしれな
30
いが,しかし,3都市とも,「個
20
一
4
一
8
2 0 2 4 6
第1主成分褐点(個性的にぎわい性)
性」を豊かにもっているので,
それを全国区に向けてもっとP
図10− 2 第2主成分得点(時代性)と
Rする余地があるではないか。
都市観光地魅力度総合偏差値
80
「時代性」という観点からは,
70
萩は歴史性の評価は高く,下関
箒
発・・
のそれも平均以hであるが,山
箋
カ50
轟
口は,歴史性も先進性もどちら
罫
葛・・
も大きな特徴をもち得ない。先
蓋
進性は,ごく限られた分野にお
30
いては可能であろうが,全体と
20
一
80
4−3−2−1012345
第2主戒分得点(時代性)
して先進性を売り物にすること
図10−3 第3主成分得点(実質性)と
都市観光地魅力度総合偏差値
は無理であろう。それよりも,
むしろ歴史性に訴える工夫が必
70
要であり,その可能性は十分もっ
発・・
ているように思われる。
奮
謹
「実質性」では下関の評価が
カ50
轟
高い。これは,「ふぐ」など食
菖・・
蓋
べ物の印象が強いせいと思われ
30
る。萩と山口は,食べ物など実
20
一
8
一
6
一
4 −2 0
第3主成分得点(実質性)
2
4
利性でも,また,その対局に位
(669)−245一
都市観光の魅力とその要因
表3 直接回答総合魅力度と観光魅力要素と
の単相関係数・偏相関係数
単相関係数 偏相関係数
観光魅力要素
歴史・文化性(*)
0.6798
0.8297
モダン・先進性(*)
0.4837
0.6212
買い物・にぎわい性(*)
0.5374
0.4179
食べ物
0.4790
0.3522
公園・散歩道
0.6146
0.2534
宿泊施設
0.4812
0.2954
美術館や博物館
音楽ホールや劇場
0.3981
一 〇.0187
0.2574
一 〇.0526
祭りやイベント
0.4397
0.0893
夜間の景観
0.5590
一 〇.0640
自然の豊かさ
0.1406
α2283
図11 直接回答総合魅力度と観光魅力要素との単相関係数・偏相関係数
0,9
◇
0.8
歴史・文化性
O.7
モダノ先進性
◇
0.6
0.5
,’
買い物・にぎわい性
偏
相 0.4
関
係 0,3
数
◇
食ぺ物◇
◇
宿泊施設
◇
0.2
◇公園・散歩道
自然の豊かさ
0.1
◇
祭りやイベント
O.O
◇
◇
一
一
〇,1
音楽ホー
ルや劇場
45度線
〇.2
美術館や
博物館
1
一
〇.2
0.0
0.2 0.4
◇夜間の景観
1
I I
0.6
0.8
単相関係数
置する文化性・精神性においても,特徴ある都市とは評価されていない。こ
の点では,地産地消の特産品を使った食べ物の開発が待たれる。
総合的には,「直接回答総合魅力度」によれば,萩と下関の評価は高い。
しかし山口の評価はむしろ低い。
一 246−(670)
山口経済学雑誌 第53巻 第5号
以上のように,山口県内の都市は,都市観光として大都市的なにぎわいで
勝負することは不可能であるので,「個性」を育て,創り,売り出す「こだ
わり」が必要と思われる。大きな都市規模をもたない場合には,「特化」と
「多様性」という都市集積の2大要素をともに満たすことは不可能であるので,
「特化」に目を向けて,個性ある街づくりや観光資源の創造が望ましい7)。
人口1万1千人の小布施町,同2万人の内子町,同3万7千人の喜多方市な
ど,小さくても,何かにこだわって,「個性」をつくり出すことは可能であ
る。山口県内の都市は,中都市として,中途半端に「多様性」を求めない方
がいいのではないか。「小さくてもきらりと光る」街づくりこそ,将来が開
けてくるものである。そのための観光資源は十分もっている。いま最も必要
なのは,観光を産業として育てる明確な「戦略」である。その方向性は,多
様性ではなく,特化・個性化・こだわり,である。
10.おわりに
本稿の目的は,最近の都市観光魅力度データに主成分分析を適用し,それ
によって都市観光の魅力の一般的要因を明らかにし,併せて,その結果の応
用例として山口県内の都市観光地について若干の分析を行うことであった。
その主要な結果は以下の通りである。
(1)都市観光の魅力の要因として3つの要因を見いだすことができる。
(2)第1の要因は「個性的なにぎわい性」である。それには2つの概念
が内包されている。第1は「にぎわい性」であるが,これは,「田舎的,自
然的」と対照的な「都市的,人工的」という要素が内包されている。第2の
概念は「個性的」であり,これには「独自性,ユニークさ,特徴的」などの
概念が内包されている。重要なことは,単に「にぎわい性」ではなく,それ
が「個性的」である必要があるという点である。
(3)第2の要因は「時代性」である。それは,「近代的,先進的,活動
7)拙稿[18]参照。
都市観光の魅力とその要因
(671)−247一
的」に対するものとしての「歴史的,伝統的,癒し系」の概念を含む。
(4)第3の要因は「実質性」である。これは,「文化性,精神的,抽象的」
と対照的な概念としての「実利性,物質的,具体的」という意味が内包され
ている。いわば「花より団子」の「花」に対する「団子」を意味する。
(5)山口県内の都市は,都市観光として大都市的なにぎわいで勝負する
ことは不可能であるので,「個性」を育て,創り,売り出す「こだわり」が
必要と思われる。大きな都市規模をもたない場合には,「特化」と「多様性」
という都市集積の2大要素をともに満たすことは不可能であるので,「特化」
に目を向けて,個性ある街づくりや観光資源の創造が望ましい。「小さくて
もきらりと光る」街づくりこそ,将来が開けてくるものである。いま最も必
要なのは,観光を産業として育てる明確な「戦略」である。その方向性は,
多様性ではなく,特化・個性化・こだわり,である。
最後に一言付言したい。今回の主成分分析は,「都市観光」の観点からで
あった。観光は都市観光だけでなく,自然的観光資源に主に依存する観光も
重要であり,「より豊かな社会」に相応しい”still life” (がつがつしない,
ゆったりした,ほどほどの静かな生活)や「癒し系」の観光ニーズにも注目
すべきである。これについては次の機会に譲る。
(米谷先生には出雲の仕事でお会いしてから30余年,長い間のご厚誼有り難うござい
ました。2004.12.24)
参考文献
[1]石原照敏・吉兼秀夫・安福恵美子『新しい観光と地域社会』古今書院,2000年。
[2]岡本伸之『観光学入門』有斐閣,2001年。
[3]川口貢『観光文化の振興と地域社会』ミネルヴァ書房,2002年。
[4]河村誠治『観光経済学の原理と応用』九州大学出版会,2004年。
[5]国土交通省「観光白書』(平成16年版)。
一 248−(672)
山口経済学雑誌 第53巻 第5号
[6]塩田正志・長谷政弘『観光学』同文舘出版,1994年。
[7]重森安雄『旅館・ホテル 21世紀は地球観光の時代』創英社,2001年。
[8]日経産業消費研究所「都市観光地の魅力度評価調査」『日経グローカル』Nal(2004.4.
5)。
[9]日本交通公社調査部『観光読本』(東洋経済新報社,1994年)。
[10]長谷政弘編著『観光学辞典』(同文館出版,平成9年12月)。
[11]塑江隆『観光と観光産業の現状』文化書房博文社,2001年。
[12]増田辰良『観光の文化経済学』芙蓉書房,2000年。
[13]溝尾良隆『観光学』古今書院、2003年。
[14]山上徹・堀野正人『ホスピタリティ・観光事典』白桃書房,2001年。
[15]山上徹『現代観光へのアプローチ』白桃書房,2003年。
[16]山村順次『新観光地理学』大明堂,1995年。
[17]吉村弘「サービス経済化と大都市圏への経済力集中」広島大学地域経済研究センター
『地域経済研究』第2号,57−78頁,1991年。
[18]吉村弘「山口県勢活性化への提言」山[経済研究所『やまぐち経済月報』NQ354・357,
2004∼2005年。
[19]M.T.シンクレア・M.スタブラー『観光の経済学』(小沢健市監訳)学文社,2001
年。
[20]ダグラス・ピアス『現代観光地理学』(内藤嘉明訳)明石書店,2001年。
[21]S.ページ『交通と観光の経済学』(木谷直俊・図師雅脩・松下正弘訳)日本経済評
論社,2001年。
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